(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】オピオイドヘキサジエノエート及び選択的に置換されたヘキサジエノエートによってオピオイド受容体の結合を改善する組成物並びに方法
(51)【国際特許分類】
C07D 489/08 20060101AFI20240808BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20240808BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 23/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240808BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240808BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20240808BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C07D489/08 CSP
A61K31/485
A61P17/00
A61P23/00
A61P25/04
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/36
A61P39/02
(21)【出願番号】P 2022509137
(86)(22)【出願日】2020-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020021599
(87)【国際公開番号】W WO2021029914
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-03-07
(32)【優先日】2019-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522055865
【氏名又は名称】カッパ-ファーマ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】KAPPA-PHARMA LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコノフ,ゲオルギー
(72)【発明者】
【氏名】イサクリアン,リボン
(72)【発明者】
【氏名】ボロンコフ,マイケル・ブイ
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/095734(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0152266(US,A1)
【文献】国際公開第2018/191472(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0196851(US,A1)
【文献】米国特許第06569449(US,B1)
【文献】特表2014-501268(JP,A)
【文献】特開2015-180698(JP,A)
【文献】特表2014-508148(JP,A)
【文献】特表2013-500256(JP,A)
【文献】WEI, C. J. et al.,“Synthesis and antitumor activities of sinomenine derivatives on rings A and C”,Journal of Asian Natural Products Research,2017年,Vol. 20, No. 3,pp. 277-291,DOI: 10.1080/10286020.2017.1386659
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 219/00
C07D 221/00
C07D 489/00
A61K 31/00
A61P 17/00
A61P 23/00
A61P 25/00
A61P 39/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナルブフィノ―3―ヘキサジエノエートまたはナロキソン―3―ヘキサジエノエートである化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
前記
化合物は、患者に経口投与される際に、オピエートのオピオイド受容体の結合を増加させる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
疼痛管理、緩和ケア、術後麻酔、皮膚疾患、中毒、運動障害、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)、トゥーレット症候群、遅発性ジスキネジア及びハンチントン病に関連するジスキネジアの群からの医学的疾患のうちの1つを治療するための
医薬の製造における、請求項1に記載の化合物
の使
用。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物を含む、組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載の
組成物の有効量を被験体に投与することを含む、オピオイド受容体の結合を増加させる
ための医薬の製造における、請求項4に記載の組成物の使用。
【請求項6】
請求項
4に記載の組成物の有効量を被験体に投与することを含む、疼痛管理
のための医薬の製造における、請求項4に記載の組成物の使用。
【請求項7】
請求項
4に記載の組成物の有効量を患者に投与することによって、皮膚疾患、中毒、運動障害、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)、トゥーレット症候群、遅発性ジスキネジア又はハンチントン病に関連するジスキネジアを治療する
ための医薬の製造における、請求項4に記載の組成物の使用。
【請求項8】
請求項
4に記載の組成物の有効量を被験体に投与することを含む、オピオイド過剰摂取の治療
のための医薬の製造における、請求項4に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月14日に出願された米国正規特許出願番号16/540,058のPCT出願であり、優先する2019年8月11日に出願された発明の名称が「オピオイドヘキサジエノエート及び選択的に置換されたヘキサジエノエートによりオピオイド受容体の結合を改善する組成物及び方法」である米国仮特許出願番号62/885,311をU.S.C.§119に基づいて優先権を主張する。
【0002】
本発明は、オピオイド受容体調節に関連する治療領域で使用されるオピエート由来の組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ナルブフィン(ヌバイン)は、中等度から重度の痛みの鎮痛剤として1979年に発売され、それ以来、クリニックで効果的に使用されてきた。これは、主に、術前および術後の鎮痛のために麻酔薬と組み合わせて使用され、また急性及び慢性の疼痛管理のために分娩及び出産の際に使用される。最近、その用途は、運動障害、掻痒症等の皮膚疾患の治療及び依存症管理に拡大している。
【0004】
また、最近、ナルブフィンは、慢性疼痛管理におけるオピエート耐性及び依存性を予防できることが示された。安全な有用性の表示である規制物質法(Controlled Substance Act)の対象とならないそのタイプの唯一の麻薬性鎮痛薬である。ナルブフィンは、経口生物学的利用能が低い。
【0005】
その薬物動態学的及び薬力学的特性を改善するように設計されたナルブフィンプロドラッグが知られている。メリアム・ウェブスター(Merriam―Webster)は、プロドラッグを体内で(酵素作用によって)変換される薬理学的活性薬物の修飾型である薬理学的不活性物質と定義している。従って、フランクリン(Franklin)(WO 2010―GB52211)は、ナルブフィンがフェノール性ヒドロキシル残基で修飾され得ると教示している。
【0006】
さらに、ナルブフィンは、アミノ酸又は短いペプチドに結合できる(WO 2011007247,A1)。また、ナルブフィンは、ジカルボン酸に連結したアミノ酸及びペプチドで修飾できる(WO 2010112942,A1)。さらに、ナルブフィンは、カーボメート部分に連結したアミノ酸及びペプチドで修飾できる(WO 2009092071,A2)。さらに、Jenkins(WO 2007022535,A2)は、ナルブフィンがフェノール部分又は窒素部分でさらに修飾され得ると教示している。
【0007】
Wangは、ナルブフィンがエステルプロドラッグに変換できると教示している(Journal of Controlled Release,Volume:115,Issue:2,Pages:140―149,Journal,2006)。Flu(2005年1月11日、TW 226239、B)は、その生物学的利用能を高めるデリバリーシステム及びナルブフィンプロドラッグについて教示している。より具体的には、ナルブフィンの生物学的利用能を高めるための製剤には、植物油、共溶媒、及び有効量のナルブフィンエステルプロドラッグ又はその薬学的に許容可能な塩が含まれる。プロドラッグの1つの目的としてナルブフィンの経口生物学的利用能を高め、体内でのナルブフィンの保持時間を延ばし、それによって鎮痛期間を長く維持し、鎮痛剤コストを減少させることにある。
【0008】
Hilfinger(US 20050137141,A1)は、医薬種及びこの医薬種と共有結合を有するアミノ酸を含むナルブフィンについて教示している。Huang(International Jounal of Pharmaceutics,Volume:297,Issue:1―2,Pages:162―171,Journal,2005)は、ナルブフィン(NA)及びその2つの新規プロドラッグである、安息香酸ナルブフィン(NAB)及びセバコイルジナルブフィンエステル(SDN)の、溶液及びヒドロゲルからの経皮伝達に対するイオントフォレーシス及びエレクトロポレーションの効果について教示している。
【0009】
Crooks(WO 2005009377,A2)は、ナルブフィンを含むデュプレックスプロドラッグを形成することがヒトの皮膚中に薬物の経皮フラックスを有意に増加させ得ると教示している。Uhrichi(WO 2002009768,A2)は、ナルブフィンの治療用ポリエステル及びポリアミドについて教示している。Flu(EP 1149836,A1)は、ポリナルブフィン誘導体の製造について教示している。Pao(Journal of Chromatography,B:Biomedical Sciences and Applications,Volume:746,Issue:2,Pages:241―247,Journal,2000)は、セバコイルジナルブフィンエステルの生物学的利用能について教示している。
【0010】
Han(International Journal of Pharmaceutics,Volume:177,Issue:2,Pages:201―209,Journal,1999)は、新規のナルブフィンプロドラッグ制御伝達のための粘膜付着性口腔ディスク:薬物放出及び粘膜付着性能に対する製剤変数の効果について教示している。Sung(International Journal of Pharmaceutics,Volume:172,Issue:1―2,Pages:17―25,Journal,1998)は、生分解性ポリマーマトリックスからのナルブフィンプロドラッグの制御放出、すなわちプロドラッグの親水性とポリマー組成物の影響について教示している。Yoa―Pu(US 5750534,A)は、長時間作用型の鎮痛作用を有するナルブフィンエステルについて教示している。
【0011】
Shami(EP 85108258.6)は、ナルブフィンを3―アセチルサリチル酸塩にさらに修飾できると教示している。さらなるナルブフィンプロドラッグは、US 6569449,B1、CN 1107333,A、EP 615756,A1、及びInternational Journal of Pharmaceutics,Volume,38,Issue:1―3,Pages:199―209,Journal,1987に開示されている。
【0012】
ナルブフィン、その薬学的に許容可能な塩、若しくはエステル、又はそのプロドラッグの薬物動態学的及び薬力学的特性は、多様な伝達システムによってさらに調節できる。従って、Liu(International Journal of Pharmaceutics,Volume:257,Issue:1―2,Pages:23―31,Journal,2003)は、ナルブフィンプロドラッグの制御伝達のための生分解性高分子ミクロスフェアについて教示している。Sung(European Journal of Pharmaceutical Sciences,Volume:18,Issue:1,Pages:63―70,Journal,2003)は、エレクトロポレーションによるナルブフィン及びそのプロドラッグの経皮伝達について教示している。Fang(Arzneimittel―Forschung,Volume:51,Issue:5,Pages:408―413,Journal,2001)は、受動拡散並びにイオントフォレーシスによるヒドロゲルからのナルブフィン及びナルブフィンピバレートの経皮伝達について教示している。
【0013】
これらのオピオイド誘導体に対する経口生物学的利用能の改善とオピオイド受容体の結合の増加との間で区別しなければならない。例えば、ナルブフィン(例えば、ナルブフィンの3―ドコサノエート誘導体)(NB―39)のフェノキシ部分のエステル化は、経口生物学的利用能を改善したとこれまで主張されていた。しかし、経口投与される際に、NB―39によって産生された累積鎮痛効果は、ラットとヒトのナルブフィンの等価用量よりも劣っていた。さらに、NB―39は、経口投与後のヒトの瞳孔拡張(縮瞳)に有意な影響を及ぼさず、これは、オピオイド受容体の結合が劣っていることを示す。
【0014】
Narcan(及びその他)という商品名で販売されているナロキソンは、特に過剰摂取の状況において、オピオイドの効果を遮断するために使用される薬物である。さらに、ナロキソンは、オピオイドの誤用のリスクを減らすために、オピオイド(同じ丸錠剤又は化合物)と組み合わせることができる。例えば、過剰摂取につながる可能性のある徐放性化合物の粉砕を防ぐために、徐放性オピエート化合物のコーティングに添加され得る。
【0015】
静脈内投与される際に、ナロキソンは、通常2分以内に作用し、筋肉に注射された場合、5分以内に作用する。さらに、点鼻薬として使用できる。ナロキソンの効果は、通常、約30分から1時間続く。従って、ほとんどのオピオイドの作用持続期間は、ナロキソンの作用持続期間よりも長いため、ナロキソンの用量及び投与が複数回必要になる場合がある。
【0016】
オピオイド依存者へのナロキソンの投与は、例えば、落ち着きのなさ、興奮、悪心、嘔吐、心拍数の増加および発汗などのオピオイド離脱症状を引き起こし得る。これを防ぐために、所望の効果が得られるまで、数分ごとに少量のナロキソンを投与することができる。
【0017】
心臓病の既往歴ある個人又は心臓に悪影響を与える薬を服用している人において、さらなる心臓の問題が発生している。ナロキソンは、限られた数の被験者に投与し、試験した結果、妊娠中安全であるように見える。
【0018】
ナロキソンは、非選択的且つ競合的なオピオイド受容体拮抗薬である。それは、オピオイドによって引き起こされる中枢神経系及び呼吸器系の機能低下を逆転させることによって作用する。ナロキソンは、もともと1961年に特許を取得し、1971年に米国でオピオイド過剰摂取治療のために承認された。
【0019】
N―アリルノロキシモルフォン又は17―アリル―4,5a―エポキシ―3,14―ジヒドロキシモルヒナン―6―オンとしても知られているナロキソンは、合成モルヒナン誘導体であり、オキシモルフォン(14―ヒドロキシジヒドロモルヒノン)に由来し、オピオイド鎮痛剤のオキシモルフォンは、オピオイド鎮痛剤であり且つケシの天然成分であるモルヒネに由来する。
【0020】
ナロキソンは、(-)―ナロキソン(レボナロキソン)と(+)―ナロキソン(デキストロナロキソン)の2つのエナンチオマーのラセミ混合物であり、前者のみがオピオイド受容体で活性である。この薬は、親油性が高く、脳に急速に浸透し、モルヒネよりもはるかに高い脳と血清の比率を達成できる。ナロキソンに関連するオピオイド拮抗薬には、シプロダイム、ナルメフェン、ナロデイン、ナロキソール、及びナルトレキソンが含まれる。
【0021】
ナロキソンの化学的半減期は、注射型及び鼻腔型がそれぞれ24ヶ月及び18ヶ月の有効期限で市販されている程度である。2018年の研究によれば、鼻腔型及び注射型は、それぞれ36ヶ月及び28ヶ月まで化学的に安定していることが示され、これによって、いまだ不完全な5年間の安定性研究が開始された。これは、コミュニティおよびヘルスケアの環境で期限切れになった材料の貯蔵物は、ラベル付けされた有効期間を超えても実質的に有効であり得ることを示唆している。
【0022】
オピオイド拮抗薬に関する特定の記事は、現在知られている製剤の欠点と問題、及びオピオイド依存症に苦しむ患者に安全に使用できる改善されたより安定した化合物の必要性を強調している。
【0023】
「フェンタニルがヘロインに取って代わるにつれて、臨床医は何をすべきか?」と題されたAdam Bisagaによる記事(Addiction,Vol.114,pp.781-86,https://onlinelibrary.wiley.eom/doi/epdf/10.111/add.14522に公開)では、高親和性拮抗薬は、フェンタニルの効果を遮断するのに十分でないかもしれないため、体系的な安全性に対する懸念と境界をなすより高い用量が必要とされ得ると記載している。さらに、フェンタニルの過剰摂取防止には、より高用量のナロキソン及び繰り返しの投与が必要であり、ヘロインよりもフェンタニルの場合の方ではるかに短い過剰摂取防止期間によって妨げられる。
【0024】
Roger Chouらは、「救急医療サービス要員によるナロキソンによる疑わしいオピオイド過剰摂取の管理」(https://effectivehealthcare.ahrq.qov/sites/default/files/pdf/cer-193-naloxone-final_1.pdfのIn Comparative Effectiveness Review No.193に公開)というタイトルの記事では、ナロキソンの既存の投与ガイドラインは、フェンタニル及びフェンタニル類似体の過剰摂取を防ぐには十分でない可能性があると記載している。
【0025】
Rachael Rzasa Lynnらは、「オピオイド逆転のためのナラクソン用量:現在の証拠及び臨床的意味」(https://www.ncbe.nlm.nih.gOv/pmc/articles/PMC5753997/pdf/10.1177_2042098617744161.pdfのTherapeutic Advances in Drug Society Review,Vol.9(1),pp.63―88,2018年に公開)というタイトルの記事で、フェンタニルで麻酔された患者に投与されたナロキソンの2倍の用量によって、酸素摂取量の改善をもたらさなかったが、ナロキソンの4倍の用量によって、有意な改善をもたらしたと記載している。さらに、オピオイド作動薬とミューオピオイド受容体との間の相互作用は、多くのオピオイドの呼吸作用からの回復速度の最大の決定要因であり得、これは、ナロキソンの用量が増加するにつれて著しく加速化するのではなく、むしろ最小有効用量に反応するが、ブプレノルフィン等の化合物の場合、ナロキソンの用量が高いほど、効果を失う可能性があることを教示している。そして、彼は、フェンタニルの過剰摂取が最初はINナロキソンに反応せず、IVナロキソンで一時的に逆転するだけであり、毒性及び呼吸抑制の再発を防ぐためにさらなるIV用量又は持続的な注入を必要とすることを説明する多くの報告書を引用している。
【0026】
IA.Elkiweriらは、「P―糖タンパク質及び有機アニオンタンパク質トランスポーターの競合基質は、フェンタニル及びロフェラミドの血液器官輸送を差別的に減少させる:Sprague-Dawleyラットにおける薬物動態及び薬力学」(2009年にhttps://www.ncbinlm.nih.gov/pubmed/19095843にオンライン公開)というタイトルの記事では、ナロキソンとフェンタニルは、高い血漿濃度のフェンタニルによって飽和される細胞流入のためのトランスポーターを共有し、用量に関係なくBBBを介したナロキソンの急速な流入を防止すると記載している。
【0027】
Rebecca McDonaldらは、「オピオド過剰摂取の逆転のための濃縮ナロキソン点鼻薬の薬物動態:第1相健康志願者研究」(Addiction,113,pp.484-93に公開)というタイトルの記事で、高濃度の2mgナロキソン鼻腔内(i.n)スプレーは、筋肉内(i.m)0.4mg注射に匹敵する初期吸収率を有し、持ち帰り用解毒剤として使用できると記載している。彼は、高用量のi.n.ナロキソンが「過剰拮抗作用」のリスクなしに投与され得ると示唆している。
【0028】
Jiten Ranchhodbhai Patelらは、新規のヒドラジド基を含むナロキソンのカルバメートを開示している(公開番号WO 2013093931―出願番号PCT/IN2012/00590、2012年9月6日出願)。
【0029】
Baohua Huangらは、「インドールキノン系ナロキソンプロドラッグのヒト血漿媒介低酸素活性化」というタイトルの記事(Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters in 2009,19(17),5016―5020)に、インドールキノン系ナロキソンプロドラッグがオピエート誘発性低酸素症を逆転することが可能であると記載している。
【0030】
I.Ukrainetsらは、Chemistry of Heterocyclic Compounds(2009)発行、45(4),pp.405~416で、潜在的なプロドラッグとしてのナロキソンの3-O-アシル誘導体の研究を開示している。
【0031】
Xuemiei Pengらは、「ナルブフィン及びナラクソンにμ、δ及びκオピオイド受容体に連結した2価のリガンドを含むブトルファンの薬理学的特性」という記事(Journal of Medicinal Chemistry(2007年5月),50(9),2254-2258に掲載)で、ナロキソンに連結した2価のリガンドを含むブトルファンを開示している。
【0032】
I.Romanovらは、ロシア特許公開(RU 2221566―2004年1月20日公開)に、N―置換された14―ヒドロキシモルフィナンのエステルが、単回の皮下注射又は筋肉内注射後に持続的な抗保護効果を伴う非常に効果的な低毒性の再発防止剤として使用できると記載している。
【0033】
I.Romanovらは、ロシア特許公開(RU 2215741―2003年11月10日公開)に、N―置換された14―ヒドロキシモルフィナンエステルの製造方法について記載している。
【0034】
Euro-Celtique,S.a.,Chevchukらは、特許公開番号WO 2003070191(PCT/US/2003/004999―2003年8月28日公開)に、3-アシル置換された拮抗薬を含む改ざん防止経皮装置を用いて痛みを予防する方法について記載している。
【0035】
Lu Zhengtangは、中国特許番号CN1204649(1999年1月13日公開)にナロキソンエステルの製造について開示している。
【0036】
S.Lazarらは、「ナロキソン及びナルトレキソンのリン酸エステル及び硫酸エステルの合成並びに生物学的活性」というタイトルの記事(European Journal of Medicinal Chemistry(1994),Vol.29(1),pp.45―53)に、ナロキソンのリン酸エステル及び硫酸エステルの合成並びに生物学的活性について記載している。
【0037】
Husseinらは、Pharmaceutical Research(1988),vol.5(9),pp.615-18に、3―フェノキシ基がエステル化されたナロキソンの多様なプロドラッグは、苦味がなく、犬において口腔生体利用率がさらに優れたと記載している。
【0038】
Elie Gabriel Shamiは、欧州特許公開番号EP170090に、3―ヒドロキシモルフィナンの安息香酸エステルプロドラッグ誘導体について記載している。上記刊行物は、本明細書の一部として本明細書に組み込まれる。
【0039】
これらの引用された刊行物のいずれも、分子に含まれたヘキサジエノエートとのナロキソンの組み合わせを記載しておらず、又はそのような分子がヒトに投与される際に、実質的により効果的で長期的な中和/鎮静効果をもたらすことを示している。
【発明の概要】
【0040】
本発明は、経口投与された場合により高いオピオイド受容体の結合をもたらすオピオイド及びその拮抗薬の新規の修飾を含む。より具体的に、本発明は、経口投与される際に、オピオイド受容体のオピエートの結合を改善するために適切なオピエート受容体モジュレータ(例えば、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ヒドロモルヒネ、モルヒネ、ペンタゾシン、ブトルファノール、ナロキソン等)又は関連する化合物の修飾を含む。
【0041】
本発明はさらに、以下の疾患、すなわち疼痛管理、緩和ケア、麻酔(例えば、術後)、皮膚疾患(例えば、掻痒症)、中毒(解毒又は管理)、特定の運動障害(例えば、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)、トゥーレット症候群に関連するジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ハンチントン病等)に対してオピエートを使用する場合、オピエートの低い経口生物学的利用能を軽減する方法を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明は、経口投与される際に、オピオイド受容体の結合を増加させるという予期しない結果をもたらすオピオイド剤(例えば、ナルブフィン)の新規の修飾を含む。従って、この新規の修飾は、優れたケアの質を提供し、オピオイドの経口投与を必要とする慢性疾患を含むより広い範囲の治療適応を可能にする。
【0043】
本発明は、分子に含まれたヘキサジエノエートとのナロキソンの組み合わせ等のオピオイド拮抗薬の新規の修飾を含み、これは、ヒト又は患者に投与される際に、実質的により効果的で長期的な中和/鎮静効果を提供する。
【0044】
本発明の新規の特徴は、以下の図面を参照してさらに説明されるであろう。
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を有する本特許又は特許出願公開のコピーは、要求に応じて、且つ必要な料金の支払いに応じて特許庁から提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製されたNB―20化合物のNMR1Hスペクトルを示す。
【
図2】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製されたNB―33化合物のNMR1Hスペクトルを示す。
【
図3】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製されたNB―39化合物のNMR1Hスペクトルを示す。
【
図4】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製されたNB―51化合物のNMR1Hスペクトルを示す。
【
図5】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製されたNB―52化合物のNMR1Hスペクトルを示す。
【
図6】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製されたNB―56化合物のNMR1Hスペクトルを示す。
【
図7】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製されたNB―58化合物のNMR1Hスペクトルを示す。
【
図8】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製されたNB―78化合物のNMR1Hスペクトルを示す。
【
図9A】共結晶化リガンドβ-FNAと重ね合わされたナルブフィンの最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【
図9B】共結晶化リガンドβ-FNAと重ね合わされたナロキソンの最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【
図10A】4DKLの結合部位におけるNX―90の最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【
図10B】4DKLの結合部位におけるNB―33の最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【
図10C】最もエネルギー的に好ましい配座異性体に類似する結合モードを有するNB―33の配座異性体によって示されるMet 151との分子相互作用を示す。
【
図10D】4DKLの結合部位におけるNB―39の最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【
図11A】4DKLのオピオイド結合部位に重ね合わされたナルブフィン(黄)、ナロキソン(ピンク)、及び共結晶化β-FNA(白)の最もエネルギー的に好ましい配座異性体を示す。
【
図11B】4DKLのオピオイド結合部位に重ね合わされたNX―90(青)、NB―33(赤)、NB―39(シアン)及び共結晶化β-FNA(白)の最もエネルギー的に好ましい配座異性体を示す。
【
図12A】少なくとも1つの実施形態によるNX―90、NB―33及びNB―39のドッキングした配座異性体をそれぞれ有する4DKLの結合部位の分子表面上の疎水性(赤)及び親水性(黄)の接触優先領域を示す。
【
図12B】少なくとも1つの実施形態によるNX―90、NB―33及びNB―39のドッキングした配座異性体をそれぞれ有する4DKLの結合部位の分子表面上の疎水性(赤)及び親水性(黄)の接触優先領域を示す。
【
図12C】少なくとも1つの実施形態によるNX―90、NB―33及びNB―39のドッキングした配座異性体をそれぞれ有する4DKLの結合部位の分子表面上の疎水性(赤)及び親水性(黄)の接触優先領域を示す。
【
図13】親オピオイドNBの等モル用量と比較した、少なくとも1つの実施形態によるNB―33の優れた鎮痛特性を示すグラフ1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、オピオイド受容体の調節に関連する治療領域で使用される、単一分子にヘキサジエノエート及びオピオイド残基を含むオピエート由来の組成物の形成を含む。
【0047】
本発明及び組成物の多様な態様及び特徴は、化合物NB、NB―20、NB―28、NB―31、NB―32、NB―33、NB―39、NB―46、NB―51、NB―52、NB―56、NB―58、NB―76、NB―78の選択された特性を示す表1を参照して説明する。
【0048】
本発明の少なくとも1つの実施形態に従って調製された選択された化合物(NB―20、NB―33、NB―39、NB―51、NB―52、NB―56、NB―58、NB―78を含む例)のNMR1Hスペクトルの例を
図1~
図8にそれぞれ示す。
【0049】
驚くべきことに、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って生成されたオピオイドの3―ヘキサジエノエート誘導体は、親オピオイド化合物よりも高いオピオイド受容体の結合を生成した。従って、例えば、ナルブフィン3―ヘキサジエノエート(NB―33)は、経口投与される際に、ラット及びヒトにおいて、等価用量のナルブフィン3―ドコサノエート(NB―39)及びナルブフィン(NB)いずれよりも優れた鎮痛効果を生じた。さらに、瞳孔散大(縮瞳)に対するNB―33の有意な効果がヒトで観察され、これは、優れた受容体の結合を示す。
【0050】
予期せぬことに、本発明の少なくとも1つの実施形態の効果を検討した際に、フェノキシ部分のエステルの不飽和部位の位置及び数は、ヘキサジエン骨格に固有であり、オピオイド受容体の優れた結合に必要であることを発見した。従って、ヌルブフィン3―アルケノエート(例えば、NB―33)は、ラットにおいて親オピオイドよりも優れた鎮痛効果を生じたが、ナルブフィンの他の不飽和酸誘導体(例えば、NB―31、NB―32、NB―52又はNB―78)は、鎮痛効果を生じなかった。
【0051】
さらに、本発明の少なくとも1つの実施形態を評価しながら、ナルブフィン3―ヘキサジエノエートは、細胞で発現されたヒト組換えオピエート受容体と共にそれ自体の独特且つ別個のオピエート受容体シグネチャーを有することを見出した。
【0052】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明の化合物は、式I又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0053】
【0054】
ここで、R1、R2、R3、R4又はR5は、H、必要に応じて置換されたC1―3及びOAlkを含む群から選択され、二重結合は、E又はZの幾何学的構造を有し、Yは、オピオイド残基である。
【0055】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、さらに、オピエートが以下の疾患、疼痛管理、緩和ケア、麻酔(例えば、術後)、皮膚疾患(例えば、掻痒症)、中毒(解毒又は管理)、特定の運動障害(例えば、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)、及びトゥーレット症候群に関連するジスキネジア、遅発性ジスキネジア及びハンチントン病)等で使用される場合、オピエートの低い経口生物学的利用能を軽減する方法に関するが、これらに限定されない。
【0056】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、経口投与される際に、オピオイド受容体のオピエートの結合を改善するための適切なオピエート受容体モジュレータ又は関連化合物のフェノキシ部分修飾である、必要に応じて置換されるヘキサジエノエートである。
【0057】
別の実施形態において、本発明は、経口投与される際に、オピオイド受容体のオピエートの結合を改善するために調製されたヒドロモルヒネ、モルヒネ、ナルブフィン、ペンタゾシン、ブトルファノール、ブプレノルフィン、ナロキソン又は関連化合物を含むがこれらに限定されない、適切なオピエート受容体モジュレータの3―フェノキシ部分修飾である、必要に応じて置換されるヘキサジエノエートである。
【0058】
少なくとも1つのさらなる実施形態において、本発明は、経口投与される際に、オピオイド受容体のオピエートの結合を改善するために調製された適切なオピエート受容体モジュレータ又は関連化合物の3―ヘキサジエノエート修飾である。
【0059】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、経口投与される際に、オピオイド受容体の結合を改善するためのナルブフィン又はその薬学的に許容可能な塩の3―ヘキサジエノエート修飾である。
【0060】
さらに別の実施形態において、本発明は、経口投与される際に、疼痛管理の質を改善するためのナルブフィン又はその薬学的に許容可能な塩の3―ヘキサジエノエート修飾である。
【0061】
さらなる1つ以上の実施形態において、本発明は、静脈内、鼻腔内、経皮、舌下、直腸、局所、筋肉内、皮下又は吸入を介して投与される際に、疼痛管理の質を改善するためのナルブフィン又はその薬学的に許容可能な塩の3―ヘキサジエノエート修飾である。
【0062】
以下は、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って製造された化合物のさらなる例である。実施例1の各化合物の化学名、組成及びコード名を以下の表1に示す。
【0063】
(実施例1)
(E)―3―(シクロブチルメチル)―9―((3,7―ジメチルオクタ―2,6―ジエン―1―イル)オキシ)―1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ―4aH―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―4a,7―ジオール、ナルブフィノ―ゲラニル、(NB―20)。重炭酸カリウム(280mg,2.0mmol)を室温でアセトン(20mL)及びトルエン(20mL)中の、塩酸ナルブフィン(400mg,1.0mmol)の懸濁液に加えた。臭化ゲラニル(320mg,1.5mmol)を加えた。反応混合物を還流下で4時間及び室温で一晩撹拌した。反応混合物を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン/MeOH,1:1:0.10)で精製した。選択した画分の蒸発後に無色の油が形成され、HPLCによる収率は45%、純度は91%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0064】
3―(シクロブチルメチル)―9―(((2E,6E)―3,7,11―トリメチルドデカ―2,6,10―トリエン―1―イル)オキシ)―1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ―4aH―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―4a,7―ジオール、ナルブフィノ―ファルネシル、(NB―28)。この化合物は、臭化ゲラニルを臭化ファルネシルに置き換えてNB―20の手順に従って製造した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で精製した。選択した画分の蒸発後に無色の油が得られ、HPLCによる収率は53%、純度は93%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0065】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イルウンデク―10―エノエート、ナルブフィノ―ウンデセレノエート、(NB―31)。EDCI(1.04g,5.4mmol)を0℃でTHF(30mL)中のウンデシレン酸(1.0g,5.4mmol)に攪拌しながら加えた。反応混合物を10分間撹拌し、塩酸ナルブフィン(2.13g,5.4mmol)、トリメチルアミン(1.1g,10.9mmol)及び4―ジメチルアミノピジン(0.22g,1.8mmol)を0℃で加えた。撹拌を0℃で1時間及び室温で一晩続けた。反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で精製した。選択した画分の蒸発後に白色の固体が形成され、HPLCによる収率は2.2g(78%)、純度は95%であった。構造は、NMR1Hによって確認された。
【0066】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イル(E)―3,7―ジメチルオクタ―2,6―ジエノエート、ナルブフィノ―ゲラノエート、(NB―32)。この化合物は、ウンデシレン酸をゲラン酸に置き換えてNB―31の手順に従って製造した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で精製した。選択した画分の蒸発後に白色の固体が形成され、HPLCによる収率は67%、純度は96%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0067】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イル(2E,4E)―ヘキサ―2,4―ジエノエート、ナルブフィノ―ソルベート、(NB―33)。EDCI(1.16g,6.1mmol)をTHF(30mL)中のヘキサジエン酸(0.68g,6.1mmol)に0℃で撹拌しながら加えた。反応混合物を10分間撹拌し、塩酸ナルブフィン(2.39g,6.1mmol)、トリメチルアミン(1.2g,12mmol)及び4―ジメチルアミノピリジン(0.25g,2mmol)を0℃で加えた。撹拌を0℃で1時間及び室温で一晩続けた。反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で精製した。選択した画分の蒸発後に白色の結晶が形成され、HPLCによる収率は2.05g(75%)、純度は98%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0068】
3―(シクロブチルメチル)―9―(((2E,4E)―ヘキサ―2,4―ジエノイル)オキシ)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―3―イウムクロリド、ナルブフィノ―ソルベート、塩酸塩、(NB―56)。HCl(ガス)を0℃でMTBE(15mL)中のナルブフィノ―ソルベート(NB―33)(0.4g,0.89mmol)の溶液にバブリングした。すぐに白色沈殿物が形成された。反応混合物を1時間撹拌し、固体を濾過し、MTBEで洗浄し、真空乾燥した。HPLCによる収率は0.35g(81%)、純度は98%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0069】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イルドコサノエート、ナルブフィノ―ドコサノエート、(NB―39)。EDCI(0.56g,2.9mmol)をTHF(50mL)中のベヘン酸(1.0g,2.9mmol)に0℃で攪拌しながら加えた。反応混合物を30分間撹拌し、塩酸ナルブフィン(1.16g,2.9mmol)、トリメチルアミン(0.29g,2.9mmol)及び4―ジメチルアミノピリジン(0.12g,1.0mmol)を0℃で加えた。撹拌を0℃で1時間及び室温で一晩続けた。反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:2)で精製した。選択した画分の蒸発後に白色の固体が形成され、HPLCによる収率は1.45g(73%)、純度は97%であった。構造は、NMR1Hによって確認された。さらに、NB―39の合成及び特性は、米国特許5750534に記載されている。
【0070】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イルイソブチレート、ナルブフィノ―イソブチレート、NB―イソバレロエート、(NB―46)。この化合物は、ウンデシレン酸をイソ吉草酸に置き換えてNB―31の手順に従って製造した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で精製した。選択した画分の蒸発後に白色の結晶が形成され、HPLCによる収率は54%、純度は95%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0071】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イル3―メチルブト―2―エノエート、ナルブフィノ―3,3―ジメチルアクリレート、(NB―51)。この化合物は、ウンデシレン酸を3,3-ジメチルアクリル酸に置き換えてNB―31の手順に従って製造した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で精製した。選択した画分の蒸発後に白色の結晶が形成され、HPLCによる収率は77%、純度は95%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0072】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イル(E)―2―メチルブト―2―エノエート、ナルブフィノ―2,3―ジメチルアクリレート、(NB―52)。この化合物は、ウンデシレン酸を2,3-ジメチルアクリル酸に置き換えてNB―31の手順に従って製造した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で精製した。選択した画分の蒸発後に白色の結晶が形成され、HPLCによる収率は75%、純度は96%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0073】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イル2―メトキシブト―2―エノエート、ナルブフィノ―2―メトキシクロトネート、(NB―58)。この化合物は、ウンデシレン酸を2-メトキシ-クロトン酸に置き換えてNB―31の手順に従って製造した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で2回精製した。選択した画分の蒸発後に白色油が形成され、HPLCによる収率は27%、純度は94%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0074】
7―アセトキシ―3―(シクロブチルメチル)―4a―ヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イル―(2E,4E)―ヘキサ―2,4―ジエノエート、ナルブフィノ―ヘキサジエノエート―アセテート(NB―76)。NB―33(0.5g,1.1mmol)を40~50℃で無水酢酸(7.0mL)中で一晩撹拌した。EtOH(20mL)を加え、反応混合物を蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:2)で2回精製した。選択した画分の蒸発後に白色の結晶が形成され、HPLCによる収率は1.45g(50%)、純度は97%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0075】
3―(シクロブチルメチル)―4a,7―ジヒドロキシ―2,3,4,4a,5,6,7,7a―オクタヒドロ―1H―4,12―メタノベンゾフロ[3,2―e]イソキノリン―9―イルシンナメート、ナルブフィノ―シンナメート、(NB―78)。この化合物は、ウンデシレン酸を2―トランス―けい皮酸に置き換えてNB―31の手順に従って製造した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/ヘプタン,1:1)で精製した。選択した画分の蒸発後に白色の結晶が形成され、HPLCによる収率は67%、純度は94%であった。構造は、NMR1Hにより確認された。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
(実施例2)模擬胃腸液(sGIF)での安定性。
模擬胃腸液(sGIF)でのNB―33の安定性を以下のように評価し、個々の化合物データを表1に要約した。
【0083】
sGIFは、0.1N水性HCl中のペプシン(アルファエーザー、ペプシン、ブタ胃)の0.5%溶液である。各誘導体(50mg)をsGIF(50mL)と混合し、振とう機にて37℃でインキュベートした。ナルブフィンの加水分解及び放出は、T=0時間、0.5時間、1時間、2時間及び4時間でHPLCによってモニタリングした。
許容基準は、誘導体の80%が4時間後もそのままのNLTと定義された。
【0084】
(実施例3)ヒト血漿での安定性。
ヒト血漿でのNB―56の安定性を以下のように評価し、個々の化合物データを表1に要約した。
【0085】
NB―56(1.0mg)を10mLの血漿(血漿がたまった正常なヒト血漿、クエン酸ナトリウム、Innovative Research)に20℃で10分間撹拌しながら溶解した。この溶液を37℃でインキュベートした。各試験サンプルについて1mLの溶液を取った。このサンプル溶液にMeCN(0.05mL)を加えた。1分間振とうした後、遠心分離(15分、14.000r/m)した。上清を濾別し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。合わせた抽出物をMgSO4で乾燥し、真空下で濃縮した。残留物をMeOH(20μl)に溶解した。この溶液をHPLC注入に使用した。
【0086】
ナルブフィンの加水分解及び放出をT=0時間、0.5時間、1時間、2時間及び4時間でHPLCによってモニタリングした。許容基準は、4時間後の加水分解率が20%を超えるNLTと定義した。
【0087】
(実施例4)
【0088】
【0089】
CHO―K1細胞で発現されるヒト組換えオピエート受容体(μ、κ又はδ)を使用した。試験化合物(NB―33)/又はビヒクルを修飾HBSSpH7.4緩衝液で細胞(4×10E5/mL)と共に370℃で30分間インキュベートした。反応をTR―FRETによりcAMPレベルについて評価した。化合物をEurfins Pharma Discovery Servicesを用いて0.3、1及び3uMでスクリーニングした。
【0090】
化合物NB―33に関するデータを表2に要約する。
(実施例5)
スプラーグドーリーラットに対する試験は、ナルブフィン、NB―31、NB―32、NB―33、NB39、NB―51、NB―52、NB―76及びNB―78を使用して実施した。
【0091】
30匹のスプラーグドーリーラット(12週齢;雄)を10の群にランダムに割り当て、各群に以下の処理のうちの1つを強制飼養した:1.ごま油、2.ナルブフィン(ごま油内に60uM/kg)、3.NB―31(ごま油内に60uM/kg)、4.NB―32(ごま油内に60uM/kg)、5.NB―33(ごま油内に60uM/kg)、6.NB―39(ごま油内に60uM/kg)、7.NB―51(ごま油内に60uM/kg)、8.NB―52(ごま油内に60uM/kg)、9.NB―76(ごま油内に60uM/kg)、10.NB―78(ごま油内に60uM/kg)。各ラットは、1回だけ経口投与された。
【0092】
抗侵害受容(antinociceptive)活性は、Anesth Analg2003;97;806-9のように、冷エタノールテールフリック試験(ethanol tail-flick test)を使用して評価した。試験温度は、-20℃に設定し、カットオフ時間は40秒であった。全てのラットは、投薬の直前にT=0で試験した。生理食塩水、ナルブフィン及びヌルブフィン誘導体の抗侵害受容閾値の測定は、経口投与後のT=0時間、0.25時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間及び5時間で行われた。
【0093】
このデータは、表1の最後の列に示しているように、NB―33について優れた結果を示す。
【0094】
(実施例6)
健康な志願者における経口NB―33の抗侵害受容効果の二重盲検、NB塩酸塩及びNB―39の対照試験。3人の健康な志願者それぞれに対して、6つの不透明なゼラチンカプセルのセットを次のように割り当てた:2×NB塩酸塩(MW=393.4;39mg)、2×NB―33(MW=451.6;45mg)及び2×NB―39(MW=680.0;68mg)。毎週、健康な志願者は、割り当てられたセットからランダムに錠剤を受け取り、経口摂取する。経口投与後のT=0時間、0.25時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間及び5時間で熱痛閾値(50℃の温水)及び縮瞳を測定した。
【0095】
1週間の休薬期間の後、各志願者は、割り当てられたセットのすべての錠剤が投与されるまでプロトコルを繰り返した。%MPE=[(試験潜時-ベースライン潜時)/(ベースライン潜時)]×100としての熱痛閾値及び%MPE=[(試験直径-ベースライン直径)/(ベースライン直径)]×100としての縮瞳の個々のデータをそれぞれ表2及び表3に示す。
【0096】
表3、4、及び5A~Dは、NB―33が経口投与される際に、親オピオイドNB及び親オピオイドプロドラッグのNB―39のいずれよりも優れた鎮痛及び縮瞳をもたらしたことを示す。表5A~Dに示すように、鎮痛及び縮瞳の違いは、統計的に有意であった。
【0097】
【0098】
【0099】
2対のサンプル:NB―33とNB、及びNB―33とNB―39における%MPE鎮痛及び縮瞳の平均を比較するために、独立したサンプルのt検定を使用した。全ての分析は、SPSS(v.25)を用いて行われた。
【0100】
*太字は、α=0.05での統計的有意性を示す。
表5A~Dは、NB―33とNB、及びNB―33とNB―39の鎮痛及び縮瞳の比較を示す。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
表6A及び
図13のグラフ1は、ランダルセリットのラットにおけるNB―33のさらなる試験結果を示しており、基本化合物と比較してその効能及び利点(安定性の向上を含む)を示す。
【0106】
表6A及び
図13のグラフ1は、ランダルセリットのラットにおけるNB―33のさらなる試験結果を示しており、基本化合物と比較してその効能及び利点(安定性の向上を含む)を示す。
【0107】
【0108】
図13におけるグラフ1のデータは、NB―33が等モル用量の親オピオイドNBのより優れた鎮痛特性を有することを示す。
図13は、1310と記された1310NB―33の結果を、
図13において1320と記された基本NB化合物NBと比較して、グラフ形式で示す。
【0109】
(実施例7)
本発明は、以下に示す以下の化合物によって例示されるが、これらに限定されない。以下の表7に示す以下の化合物は、少なくとも1つの実施形態に従ってヘキサジエノエートによって修飾された多様なオピオイドの非限定的な例を提供する。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
(実施例8)ナルブフィン/ナロキソンオピオイド拮抗薬のμ―オピオイド受容体への分子ドッキング。
【0120】
ヒトm―オピオイド受容体の結晶構造は、RCSBタンパク質データバンク[PDBエントリー:4DKL、https://www.rcsb.org/structure/4DKL)からダウンロードした。インシリコスクリーニングは、MOEシミュレーションモジュール2014.0901の一部であるMOE Dockプログラムを用いて実行した。解離定数(Ki)は、方程式ΔG=RTln(Ki)から計算され、ここで、ΔGは、GBVI/WSA dGスコアリング関数と等しい結合自由エネルギーを表し、Rは気体定数であり、Tは温度である。Kiは、固定温度(300K)での結合自由エネルギー値から計算した。
【0121】
拮抗薬であるナルブフィン及びナロキソンはいずれも、Asp 147とそれらのアンモニウム基との重要な相互作用を示す。Asp 147へのこの結合は、最もよく知られているオピオイド作動薬/拮抗薬に典型的であることが知られている。ナルブフィンとナロキソンの他の重複する相互作用は、アリール環(3位)に付着したヒドロキシル基と水分子との結合であり、これは、オピオイド受容体の不活性状態の安定化に寄与する。ナルブフィンとは異なり、第3級炭素原子(14位)に付着したナロキソンのヒドロキシル基は、Asp 147へのさらなる水素結合に関与する。
【0122】
図9Aは、共結晶化リガンドβ-FNAと重ね合わされたナルブフィンの最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
図9Bは、共結晶化リガンドβ-FNAと重ね合わされたナロキソンの最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【0123】
ナルブフィン及びナロキソンは、アリール環(3位)に付着したヒドロキシ基が水分子と結合し、オピオイド受容体の不活性状態の安定化に寄与する。ナルブフィンとは異なり、第3級炭素原子(14位)に付着したナロキソンのヒドロキシル基は、Asp 147へのさらなる水素結合に関与する。
【0124】
図10Aは、4DKLの結合部位におけるNX―90の最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【0125】
図10Bは、4DKLの結合部位におけるNB―33の最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【0126】
図10Cは、最もエネルギー的に好ましい配座異性体に類似する結合モードを有するNB―33の配座異性体によって示されるMet 151との分子相互作用を示す。
【0127】
図10Dは、4DKLの結合部位におけるNB―39の最もエネルギー的に好ましい配座異性体の結合モード及び分子相互作用を示す。
【0128】
図11Aは、4DKLのオピオイド結合部位に重ね合わされたナルブフィン(黄)、ナロキソン(ピンク)、及び共結晶化β-FNA(白)の最もエネルギー的に好ましい配座異性体を示す。
図11Bは、4DKのオピオイド結合部位に重ね合わされたNX―90(青)、NB―33(赤)、NB―39(シアン)、及び共結晶化β-FNA(白)の最もエネルギー的に好ましい配座異性体を示す。
【0129】
NX―90、NB―33、NB―39の計算された解離定数(K
i)によって、ナルブフィンとナロキソンの親和性と比較して、m―受容体に対するより高い親和性(NB―33、NB―39)又はわずかに低い親和性(NX―90)が実証された。ナロキソンとナルブフィンの最もエネルギー的に好ましい配座異性体と同様に、NX―90、NB―33及びNB―39は、Asp147の残基に対する重要な水素結合を保持する。このドッキングモードにおいて、窒素原子に付着した「メッセージ」は、m―受容体の結合ポケットの正確な領域に位置する正確な「アドレス」に伝達される。しかし、既知のm―拮抗薬(例えば、ナルブフィン及びナロキソン;
図11A)の結合モードとは異なり、NX―90、NB―33及びNB―39のラーメンは、結合部位で180°回転する(
図11B)。逆に、ナルブフィンとナロキソンの結合を説明する結合モードは、NB―33、NB―39及びNX―90のすべての計算された配座異性体に対して可能ではない。
【0130】
さらに、NX―90及びNB―33のいずれも、第3級炭素原子(14位)に付着したヒドロキシル基を介してMet 151に独特の水素結合を有する。この相互作用によって、NX―90とNB―33のいずれも、シクロヘキサン断片(6位)のヒドロキシル基が代わりにLys A233と水素結合を形成するNB―39と異なることになる。NX―90とNB―33双方の2つ目の差別化要因は、ヘキサジエン酸残基の剛直な共役系が並外れた疎水性の円筒状分子表面を有することである。同時に、残基Cys217、Thr218、Asn127、Gln124、Trp133、Leu219は、結合ポケット内でこのヘキサジエニルの「テール」を囲む余分な相補的疎水性分子表面を構築するが(
図12A及び12B)、柔軟性が高く、共役のないドコサノイルの「テール」を囲む結合部位の領域には、識別可能な疎水性表面は存在しない(
図12C)。
【0131】
図12A~
図12Cは、
図12Aに示すNX―90、
図12Bに示すNB―33及び
図12Cに示すNB―39のドッキング配座異性体との4DKLの結合部位の分子表面上の疎水性(赤)及び親水性(黄)の接触優先領域を示す。
【0132】
特に
図9~12において、これらの実施例は、本発明の少なくとも1つの特徴、すなわち、少なくとも2つの共役二重結合を有する親油性部分でオピオイドを修飾することによって、オピオイド受容体との相互作用が改善されることが確認される。
【0133】
これらの実施例は、本発明の別の特徴、すなわち、少なくとも2つの共役二重結合を有する親油性部分でオピオイドを修飾することによって、活性部位でオピオイドを180°回転させて、独特の疎水性ポケットを含む受容体との相互作用のさらなるモードを生成することによって、オピオイド受容体との相互作用が改善されることが確認される。
【0134】
これらの実施例は、本発明の別の特徴、すなわち、少なくとも2つの共役二重結合を有する親油性部分でオピオイドを修飾することによって、少なくとも本発明の一部の実施形態においてオピオイドの特性が変化することがさらに確認される。
【0135】
これらの実施例は、本発明の別の特徴、すなわち、少なくとも2つの共役二重結合を有する親油性部分でオピオイドを修飾することによって、少なくとも本発明の一部の実施形態においてオピオイドの拮抗特性が改善されることが確認される。
【0136】
オピオイド受容体拮抗薬の改善された効能
上記のように、オピエートの改善された効能及び鎮痛効能に加えて、本発明はまた、ヘキサジエノエートが、例えば、ナロキソン等のオピオイド受容体拮抗薬の効能を改善する少なくとも1つの実施形態を含む。
【0137】
1つ以上の実施形態において、本発明、特にヘキサジエノエートは、ナロキソン基又は化合物からの1つ以上の種(又は複数の種)と組み合わせて試験した。
【0138】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、ヘキサジエノエートを有するナロキソンは分子に含まれ、被験体に投与される際に、実質的により効果的で長期的な中和/鎮静効果を提供する。
【0139】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、以下の表8に示すように、以下の式を有する化合物NX―90及びNX―97を合成及び分析した。
【0140】
【0141】
鎮静効果は、被験者に投与された際に、認められ得る。この化合物は、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って使用及び合成され得、参照されてナロキソン―ソルベート(NX―90)と名付けられる。少なくとも1つの実施形態による化合物の製造は、以下のように進み得る。
【0142】
EDCI・HCl(1.36g,7.12mmol)を0℃でTHF(50mL)中のヘキサジエン酸(0.74g,6.61mmol)に攪拌しながら加えた。トリエチルアミン(1.39g,13.8mmol)を加えた。0℃で2時間撹拌する。ナロキソン塩酸塩(2.00g,5.5mmol)及び4―ジメチルアミノピジン(0.10g,0.82mmol)を0℃で加えた。撹拌を0℃で1時間及び室温で一晩続けた。反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘプタン/トリエチルアミン、2:1:0.5%)で2回精製した。選択した画分の蒸発後に白色結晶が形成された。HPLCによる収率は0.75g(32%)、純度は98%であった。構造は、NMR1Hによって確認された。
【0143】
NX―90化合物の特性を研究したところ、安定性データを含む以下の結果及び特定の利点が得られ、確認された。
【0144】
【0145】
表9に示す結果及び観察に基づいて、NX―90は、周知の薬物であるナロキソンと比較して有意な改善を示した。
【0146】
本発明の少なくとも1つの実施形態に従って、NB―33又は類似の化合物と異なるオピエートの組み合わせ、及びNX―90とオピエート拮抗薬の組み合わせの例を以下の表11にさらに示す。
【0147】
オピオイドは、以下の医学的疾患、すなわち疼痛管理、緩和ケア、術後麻酔、皮膚疾患、中毒、運動障害、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)、及びトゥーレット症候群、遅発性ジスキネジア及びハンチントン病に関連するジスキネジア等の治療に使用できることが十分に文書化されており、一般に知られている。これらの医学的疾患の治療に使用されるオピオイドの効能と効果は、治療の成功に影響を与える。
【0148】
それぞれ、オピオイド受容体の結合が高いほど、本発明の少なくとも1つの実施形態によるそのような疾患の治療に対してより効果的な結果を生み出す。例えば、ヘキサジエノエートで修飾されたオピオイドは、オピオイド受容体の結合がより高いため、上述の疾患の治療により効果的であろう。
【0149】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態において、例えば、NB―33又はNX―90(又はその他)等の本発明に基づいて調製された組成物化合物のうちの1つは、疼痛管理、緩和ケア、術後麻酔、皮膚疾患(例えば、掻痒症)、中毒(解毒または管理)、及び/又は運動障害(例えば、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)、トゥーレット症候群、遅発性ジスキネジア、ハンチントン病に関連するジスキネジア等)等の医学的疾患のうちの1つの治療に使用できる。
【0150】
(実施例9)
【0151】
【0152】
CHO―K1細胞で発現されるヒト組換えオピエート受容体(μ、κ又はδ)を使用した。試験化合物(NX―90)/又はビヒクルを370℃で30分間修飾したHBSS pH7.4緩衝液で細胞(4×10E5/mL)と共にインキュベートした。反応は、TR-FRETによってcAMPレベル(cAMP及び/又はカルシウムフラックス)について評価した。化合物は、Eurofins Pharma Discovery Servicesにより0.1、0.3、及び1uMでスクリーニングした。
【0153】
化合物NX―90のデータを表10に要約する。NX―90は、薬理学的に不活性な化合物であり、ナロキソンの薬理学的プロファイルと同様に、固有のオピオイド特性を有することを示す。これとは別に、NB―33は、薬理学的に不活性な化合物ではなく、NBの薬理学的プロファイルと同様に、固有のオピオイド特性を有することを示す。
【0154】
このような脂肪酸(例えば、NB―39)への3―フェノキシ位の修飾がプロドラッグであり、且つ定義上、薬理学的に不活性な化合物であることを従来技術が示唆しているので、これらの結果は、非常に驚くべきものである。本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、NX―90及びNB―33は、薬理学的に不活性ではなく、プロドラッグでもないことが示されている。
【0155】
すべての場合において、上述した実施例及び化合物は、本発明の適用を示す多くの可能な特定の実施形態の例示に過ぎないことが理解される。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の原理に従って多数の多様な他の構成を容易に考案することができる。
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】