(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】紫外線照射装置及び紫外線照射方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20240808BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20240808BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240808BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/24
H01L33/00 L
(21)【出願番号】P 2022535357
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2021025506
(87)【国際公開番号】W WO2022009897
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2020118799
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 篤史
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 直人
(72)【発明者】
【氏名】大槻 隼也
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0296686(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110585457(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
A61L 2/24
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射対象に紫外線を照射する紫外線照射装置であって、
前記紫外線を放出する光源と、
当該光源の照射範囲と自己の検出範囲とが重なるように前記光源の周辺に配置され人の存在を検出する生体センサと、
前記生体センサの出力信号に基づき前記光源を制御する電子回路と、
前記光源から放出される紫外線の一部を遮光する遮光カバーと、
を備え、
前記光源は、前記遮光カバーを挟んで前記紫外線の
前記照射対象が存在する一の側とは逆側の領域に配置され、
前記生体センサの感知面と前記光源の発光面とは同一方向に向けて設置され、
当該紫外線照射装置に組み込まれた状態での前記生体センサの最大検知角の1/2の角度θ2は、前記発光面の法線ベクトルと、前記光源から放出され前記遮光カバーにより遮光されずに通過した紫外線とがなす最大角度θ1よりも大きく、
前記電子回路は、前記生体センサが人の存在を検出したとき前記紫外線の放出を停止させ、前記生体センサが人の存在を検出している状態から人の存在を検出しない状態に切り替わったとき、再度前記紫外線を放出させるように前記光源を制御する
紫外線照射装置。
【請求項2】
前記角度θ2は、前記最大角度θ1の2倍の角度よりも小さい請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
一又は複数の前記光源を有し、
前記一又は複数の光源から放出され前記遮光カバーを通過した紫外線を囲むように、前記遮光カバーから前記一の側に突出して設けられた突出部を備え、
前記光源のうち前記生体センサから最も離れた位置に配置された最遠光源と前記生体センサとの間の距離をL1とし、
前記最遠光源の発光面の法線ベクトルと、前記最遠光源から放出され前記遮光カバーを通過した紫外線のうち平面視で前記生体センサから最も離れた地点を通る紫外線とがなす角度をθ3としたとき、
前記光源の発光面と前記突出部の先端との間の、前記発光面の法線ベクトルに沿った距離は、
L1×cos(θ2)×cos(θ3)/sin(θ2-θ3)以上である請求項1又は請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
一又は複数の前記光源を有し、
前記生体センサは前記光源側に傾斜して設けられ、
さらに、前記一又は複数の光源から放出され前記遮光カバーを通過した紫外線を囲むように前記遮光カバーから前記一の側に突出して設けられた突出部を有し、
前記光源のうち前記生体センサから最も離れた位置に配置された最遠光源と前記生体センサとの間の距離をL2とし、
前記最遠光源の発光面の法線ベクトルと、前記最遠光源から放出され前記遮光カバーを通過した紫外線のうち平面視で前記生体センサから最も離れた地点を通る一の紫外線とがなす角度をθ3とし、
前記生体センサの感知面の法線ベクトルの、前記一の紫外線側への傾斜角度をθ4としたとき、
前記光源の発光面と前記突出部の先端との間の、前記発光面の法線ベクトルに沿った距離は、
L2×cos(θ2+θ4)×cos(θ3)/sin(θ4+θ2-θ3)以上である請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記光源が、前記生体センサの周囲に複数配置されている請求項1又は請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
複数の前記光源のうち少なくとも一つは、その発光面の法線ベクトルがそれぞれ前記生体センサ側に傾斜する光源傾き調整機構を有する請求項5に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記光源のうち前記生体センサから最も離れた位置に配置された最遠光源と前記生体センサとの間の距離をL3とし、
前記生体センサの感知面の中心を通る法線ベクトルを延長した直線の、前記遮光カバーの前記一の側の面との交点から前記照射対象との交点までの距離をDとしたとき、
前記発光面の法線ベクトルの、前記生体センサ側への傾斜角度はa
rcsin(L3/D)である請求項6に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記光源の周辺に複数の生体センサが配置されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記光源と熱的に接続されたヒートシンクを備える請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記ヒートシンクは、前記生体センサと熱的に接続されていない請求項9に記載の紫外線照射装置。
【請求項11】
さらに冷却ファンを備える請求項9又は請求項10に記載の紫外線照射装置。
【請求項12】
前記光源の発光面の向きと同一方向に存在する物体までの距離を検出する距離センサを備え、
前記電子回路は、前記距離センサで検出した検出距離に応じて、前記光源による紫外線の放出時間を制御する請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項13】
前記光源の照射範囲を、自己の可視光照射範囲に含む可視光光源を備える請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項14】
紫外線を放出する光源と、
当該光源の照射範囲と自己の検出範囲とが重なるように前記光源の周辺に配置され人の存在を検出する生体センサと、を備え、
前記光源から放出される紫外線の一部を遮光する遮光カバーを挟んで、前記紫外線の照射対象が存在する一の側とは逆側の領域に前記光源を配置すると共に、前記生体センサの感知面と前記光源の発光面とを同一方向に向けて設置し、
当該設置状態での前記生体センサの最大検知角の1/2の角度が、前記光源の発光面の法線ベクトルと、前記光源から放出され前記遮光カバーにより遮光されずに通過した紫外線とがなす最大角度よりも大きくなるように前記紫外線を遮光する
紫外線照射装置を用いて、前記光源の照射範囲が前記生体センサの検出範囲内に収まるように前記紫外線を前記照射対象に照射する紫外線照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置及び紫外線照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線には、殺菌能力があることから、殺菌装置としての各種紫外線照射装置が提案されている。
また、近年、殺菌を行うことが可能な波長を照射できるLED(light emitting diode)が実用化されたことによって、紫外線光源として管球を用いた装置では実現できなかった装置構成が実現可能になり、持ち運び可能な小型の紫外線照射器が提案されている。
また、紫外線照射装置による紫外線照射領域に人体が侵入すると、有害な紫外線により被爆するリスクがあることから、人感センサと紫外線の照射タイミングを制御する制御回路とを組み合わせることで、被爆を回避するようにした紫外線照射装置等も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の被爆を回避するようにした紫外線照射装置のように、開放系において照射される紫外線照射装置においては、人感センサの検知範囲外であっても、紫外線照射されるエリアが発生し、紫外線による被爆を確実に回避することは困難である。
そのため、被爆をより確実に回避することの可能な紫外線照射装置が望まれていた。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、紫外線による被爆をより確実に回避することの可能な紫外線照射装置及び紫外線照射方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置は、照射対象に紫外線を照射する紫外線照射装置であって、前記紫外線を放出する光源と、当該光源の照射範囲と自己の検出範囲とが重なるように前記光源の周辺に配置され人の存在を検出する生体センサと、前記生体センサの出力信号に基づき前記光源を制御する電子回路と、前記光源から放出される紫外線の一部を遮光する遮光カバーと、を備え、前記光源は、前記遮光カバーを挟んで前記紫外線の前記照射対象が存在する一の側とは逆側の領域に配置され、前記生体センサの感知面と前記光源の発光面とは同一方向に向けて設置され、当該紫外線照射装置に組み込まれた状態での前記生体センサの最大検知角の1/2の角度θ2は、前記発光面の法線ベクトルと、前記光源から放出され前記遮光カバーにより遮光されずに通過した紫外線とがなす最大角度θ1よりも大きく、前記電子回路は、前記生体センサが人の存在を検出したとき前記紫外線の放出を停止させ、前記生体センサが人の存在を検出している状態から人の存在を検出しない状態に切り替わったとき、再度前記紫外線を放出させるように前記光源を制御することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の他の実施形態に係る紫外線照射方法は、紫外線を放出する光源と、当該光源の照射範囲と自己の検出範囲とが重なるように前記光源の周辺に配置され人の存在を検出する生体センサと、を備え、前記光源から放出される紫外線の一部を遮光する遮光カバーを挟んで、前記紫外線の照射対象が存在する一の側とは逆側の領域に前記光源を配置すると共に、前記生体センサの感知面と前記光源の発光面とを同一方向に向けて設置し、当該設置状態での前記生体センサの最大検知角の1/2の角度が、前記光源の発光面の法線ベクトルと、前記光源から放出され前記遮光カバーにより遮光されずに通過した紫外線とがなす最大角度よりも大きくなるように前記紫外線を遮光する紫外線照射装置を用いて、前記光源の照射範囲が前記生体センサの検出範囲内に収まるように前記紫外線を前記照射対象に照射することを特徴としている。
ここでいう、設置状態での生体センサの最大検知角とは、生体センサや光源、また遮光カバーが設置され紫外線照射を行うことが可能な状態にある状態において、生体センサが検知可能な最大検知角のことをいう。例えば生体センサが遮光カバーに対して光源と同じ側に配置され、遮光カバーによって、生体センサの検知範囲が狭められている場合には、狭められた状態における検知角の最大値が最大検知角となり、光源と同じ側に配置されているが遮光カバーによって検知範囲が狭められていない場合には、狭められていない状態における検知角の最大値、つまり、生体センサの仕様で決定される視野角が、最大検知角となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、紫外線照射を行いつつ、紫外線による被爆をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の第一実施形態に係る紫外線照射装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】(a)は紫外線照射装置の正面図、(b)は背面図、(c)は側面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る紫外線照射装置の一例を示すブロック図である。
【
図5】紫外線照射装置の動作説明に供するタイミングチャートの一例である。
【
図6】
図1Aの変形例におけるA-A′断面を示す断面図である。
【
図7】紫外線照射装置の他の例を示す斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る紫外線照射装置の動作説明に供する図である。
【
図10】第3実施形態に係る紫外線照射装置の動作説明に供する図である。
【
図11】第3実施形態に係る紫外線照射装置の他の例である。
【
図12】第4実施形態に係る紫外線照射装置の動作説明に供する説明図である。
【
図13】第5実施形態に係る紫外線照射装置の動作説明に供する説明図である。
【
図14】第6実施形態に係る紫外線照射装置の動作説明に供する説明図である。
【
図15】第7実施形態に係る紫外線照射装置の動作説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
<第1実施形態>
図1から
図4は、本発明の第1実施形態に係る紫外線照射装置の一例を示す図である。
紫外線照射装置1は、例えば銀行のATM等、多数の人間が触る場所に対して殺菌を行う。
図1Aは紫外線照射装置1の外観の一例を示す斜視図、
図1Bはアウターケース3内を透視した一例を示す斜視図である。
図2は、
図1AのA-A′断面図、
図3(a)は紫外線照射装置1の正面図、
図3(b)は背面図、
図3(c)は上面図であり、底面図は上面図と同一である。
図4は、紫外線照射装置1の機能構成を示すブロック図である。なお、
図1Aでは、後述の生体センサ11を省略している。
紫外線照射装置1は、装置本体2と、装置本体2を収納する略直方体形状のアウターケース3と、を備える。
【0012】
装置本体2は、一つの生体センサ11と、二組の発光部12とを備える。発光部12は、3灯のUVC-LED(光源)12aと、1灯の青色LED(可視光光源)12bと、ヒートシンク12cと、ドライバ基板12dと、を備える。UVC-LED(光源)12aは、ピーク波長が200nm以上300nm以下の紫外線を発する発光ダイオードであり、バクテリア等の殺菌効率の観点から、ピーク波長が255nm以上280nm以下であるとなお良く、260nm以上270nm以下であるとさらに良い。ドライバ基板12dには、UVC-LED12aを駆動制御する駆動回路12aa及び青色LED12bを駆動制御する駆動回路12baが実装されている。また、二組の発光部12のうちいずれか一方の発光部12のドライバ基板12dには、UVC-LED12a用の駆動回路12aa及び青色LED12b用の駆動回路12baが実装されると共に、制御回路(電子回路)1aが実装されている。制御回路1aは、生体センサ11の検出信号(出力信号)を入力し、この検出信号に基づきUVC-LED12a及び青色LED12bを、それぞれの駆動回路12aa、12baを介して制御すると共に、紫外線照射装置1全体を制御する。
【0013】
生体センサ11は、例えば量子型赤外線センサ(IRセンサ)で構成され、生体センサ11用のセンサ基板11aに実装される。UVC-LED12a及び青色LED12bは発光基板12eに実装されている。発光基板12eは、センサ基板11aとは別に設けられ、センサ基板11aとは接していないことで、センサ基板11aと熱的に接続されないようになっている。
【0014】
発光基板12eは略長方形状を有し、UVC-LED12aは発光基板12eの一方の長辺寄りの位置に長辺に沿って等間隔に3灯配置され、青色LED12bは発光基板12eのほぼ中央部の若干他方の長辺寄りの位置に配置されている。
生体センサ11の感知面と全てのUVC-LED12aの発光面とは同一方向に向けて配置されている。また、全てのUVC-LED12aは、平面視で生体センサ11との間の距離が20mm以下の範囲に配置される。UVC-LED12aと生体センサ11との距離を近づけることで、光源であるUVC-LED12aの近辺においても、紫外線照射エリアを生体センサ検知エリア内に収めることが可能となる。
【0015】
なお、生体センサ11は、量子型赤外線センサ(IRセンサ)に限るものではなく、焦電型赤外線センサ、マイクロ波レーダ、反射型赤外線センサ、ミリ波レーダ、超音波センサ、温度検出センサ、ToFセンサ等であっても適用することができる。
また、生体センサ11、UVC-LED12a、青色LED12b、及びドライバ基板12dは図示しない配線で接続されている。
【0016】
アウターケース3は、紫外線照射装置1の正面及び背面に当たる表裏面が開口した直方体状のケース本体3aと、ケース本体3aの表面側の開口部分に設けられた遮光カバー3bと、ケース本体3aの裏面側の開口部分に設けられた背面カバー3cと、を備える。ケース本体3aの開口端のそれぞれには、
図2に示すように、遮光カバー3bを支持するための段差部3aa及び背面カバー3cを支持するための段差部3abが形成されている。
【0017】
図3(c)に示すように、紫外線照射装置1の上面及び底面となる、ケース本体3aの長辺に接する二つの側面3dのそれぞれには、スリット孔3daが形成されている。スリット孔3daは、アウターケース3の長手方向に沿って形成され、ケース本体3aの高さ方向に3列ずつ、長手方向に沿って2列に並んで形成されている。
遮光カバー3bには、
図3(a)に示すように、生体センサ11用の一つの円形の孔31と、UVC-LED12a用の六個の円形の孔32と、青色LED12b用の二つの円形の孔33とが形成されている。
【0018】
孔31は、遮光カバー3bの中心に形成され、その直径は他の孔32、33よりも大きい。孔32は、直径で孔31の1/3~1/4程度の大きさであり、孔33は、孔32よりも若干大きい。
そして、孔32及び孔33は、遮光カバー3bの長手方向に沿って孔31を両側から挟み込み、孔31を中心として対称となるように、半分ずつ配置されている。この例では、三つの孔32が幅方向(遮光カバー3bの短手方向)に沿って等間隔に並んでおり、その中心に位置する孔32と、孔33とが、長手方向(遮光カバー3bの長手方向)中心線上に位置している。
【0019】
また、
図1Bに示すように、遮光カバー3bの背面カバー3cと対向する側の面である裏面には、センサ基板11aを固定するための二本のボス状の突起3baが形成されている。突起3baは、孔31から長手方向に沿って両側に互いに離れた位置であって、長手方向中心線から一方の側に若干ずれた位置に設けられている。突起3baにセンサ基板11aを当接させた状態でセンサ基板11aの裏面側からビスを突起3baにねじ込むことで、センサ基板11aは遮光カバー3bから突起3baの長さ分だけ離隔した位置に配置される。
さらに、遮光カバー3bの裏面の、四隅から中心側に若干入り込んだ位置には、ヒートシンク12cの上面を抑えるためのボス状の突起12caが設けられている。
【0020】
背面カバー3cには、
図3(b)に示すように、ヒートシンク12cの放熱用の略長方形の開口部3caが形成され、開口部3caは、背面カバー3cの幅方向略中央部に長手方向に沿って間隔をあけて二つ形成されている。また、背面カバー3cの遮光カバー3bと対向する側の面の開口部3caそれぞれの近傍には、開口部3caの2つの長辺それぞれの、中央部よりもやや背面カバー3cの短辺寄りの位置に、ヒートシンク12cを固定するための、ボス状の固定部材3cbが設けられている。
【0021】
ヒートシンク12cは、例えば略正方形の平板部c1の一方の面に多数の棒状部材c2が形成された剣山形状を有し、棒状部材c2がなす四つの側面のうちの一つの面に沿うようにドライバ基板12dが、ヒートシンク12cのフランジ部c3に固定され、平板部c1の棒状部材c2とは逆側の面の、ドライバ基板12dとは逆側寄りに、発光基板12eに実装されたUVC-LED12aが平板部c1の辺に沿うように、発光基板12eがフランジ部c3に固定される。
【0022】
そして、ドライバ基板12d及び発光基板12eが固定されたヒートシンク12cを発光基板12e側が中央部寄りとなるように配置し、棒状部材c2側が背面カバー3cと対向するようにしてヒートシンク12cの棒状部材c2とは逆側からビスをねじ込むことで、フランジ部c3と固定部材3cbとを一体に固定する。これによって、ヒートシンク12cと背面カバー3cとが一体に固定される。さらに、センサ基板11aが固定された遮光カバー3bを、センサ基板11a側が内側となるようにして遮光カバー3bの、センサ基板11aとは逆側から、突起12caにビスをねじ込むことで、遮光カバー3bとケース本体3aとが一体となり、装置本体2がアウターケース3内に固定されるようになっている。また、このような構造とすることによって、ヒートシンク12cと生体センサ11とを熱的に接続されていない状態とすることができる。つまり、ヒートシンク12cから生体センサ11までの熱抵抗が2.5K/W以上あれば、UVC-LED12aから生体センサ11への伝熱は無視することができ、熱的に接続されていないとみなすことができる。
なお、ヒートシンク12cは剣山形状のヒートシンクに限るものではなく、複数のフィンを備えたヒートシンクであっても適用することができる。
【0023】
また、生体センサ11は、装置本体2がアウターケース3内に固定された状態で、紫外線照射装置1の照射対象物付近に存在する人を検知できるように、遮光カバー3bの表面から多少突出して配置されている。また、UVC-LED12a及び青色LED12bは、それぞれの照射光が、対応する孔32、33を通ってアウターケース3外に放出され、且つ、照射対象物における、UVC-LED12aによる照射領域と、青色LED12bによる照射領域とが略一致するように位置決めされる。
【0024】
紫外線照射装置1は、例えば、図示しない入力端子に入力される24Vの直流電圧を電源電圧として動作し、
図4に示すように、紫外線照射装置1全体を制御する制御回路1aが、生体センサ11の検出信号をもとに、2つの発光部12それぞれの駆動回路12aaを介してUVC-LED12aを駆動制御し、駆動回路12baを介して青色LED12bを駆動制御することにより、人体に紫外線照射が行われることを回避しつつ、照射対象物に対して紫外線照射を行う。
【0025】
具体的には、制御回路1aは、生体センサ11の検出信号をもとに人を検知している状態から人を検知しない状態に切り替わったことを検出する。そして、
図5(a)のタイミングチャートに示すように、人を検知している状態から人を検知しない状態に切り替わったことを検出したとき、予め設定した待機時間T1が経過した時点で、UVC-LED12aを照射時間T2の間、駆動して紫外線照射を行う。そして、照射時間T2が経過したとき、紫外線照射を停止する。さらに、生体センサ11で人を検知しない状態が非照射時間T3の間継続したことを検出したとき、生体センサ11で人を検知した状態から人を検知しない状態に切り替わったことを検知しなくとも、照射時間T2の間、UVC-LED12aを駆動して紫外線照射を行う。また、
図5(b)に示すように、人を検知しない状態が非照射時間T3の間継続する毎に定期的に紫外線照射を行っているとき、或いは人がいなくなったことを検知して紫外線照射を行っているときに、生体センサ11で人が存在することを検知したときには、速やかに紫外線照射を停止する。また、紫外線照射を行う場合には、UVC-LED12aを駆動すると共に、青色LED12bを駆動し、UVC-LED12aによる紫外線照射領域と同じ領域を、青色LED12bの青色光で照射する。これにより、紫外線照射領域を可視化することができる。
【0026】
待機時間T1は、生体センサ11の検出信号に基づき、人を検知しない状態に切り替わったとみなすことの可能な時間に設定され、例えば5秒程度に設定される。照射時間T2は、UVC-LED12aの紫外線照射によって照射対象物を十分に殺菌するために必要な照射時間に応じて設定され、例えば10分程度に設定される。非照射時間T3は、例えば50分程度に設定される。つまり、生体センサ11で人を検知しない状態、例えば銀行のATM等において、前回紫外線照射を行った後、誰もATMを操作していない状態であっても、定期的に紫外線照射を行うことによって、定期的に殺菌を行う。
【0027】
このように、生体センサ11の検出信号に基づき、紫外線照射を行うことによって、生体センサ11に基づき人を検知しない状態に切り替わったことを検出したときには、誰かがATM等を操作した可能性があることから、紫外線照射を行って殺菌を行うことで、照射対象物を効率よく殺菌することができる。
また、生体センサ11が人を検知しない状態に切り替わった時点では紫外線照射を行わず、待機時間T1が経過した時点で紫外線照射を行うため、人が紫外線の照射範囲外に移動したとみなすことができる状態となった時点以後に紫外線照射を行うことになり、より確実に被爆することを回避することができ、安全性を向上させることができる。
【0028】
また、照射対象物に対する紫外線照射を行った後、人を検知しない状態が非照射時間T3の間継続したときには、紫外線照射を行うため、ATM等の操作が継続して行われない場合でも、定期的に紫外線照射を行うことによって、定期的に殺菌が行われるため、ATM等を、ある程度の殺菌効果が得られる状態に維持することができる。
なお、必ずしも非照射時間T3が経過する毎に、つまり定期的に紫外線照射を行う必要はなく、断続的に紫外線照射を行うようにしてもよい。また、非照射時間T3が経過する毎に定期的に紫外線照射を行う場合には、人がATM等を操作していないため、紫外線の照射時間を、照射時間T2よりも短い時間にしてもよい。
また、青色LED12bによって、紫外線照射領域を可視化することができるため、ATM等を操作する人間は、紫外線照射領域を容易に認識することができ、より確実に被爆を回避することができる。
【0029】
また、生体センサ11は、熱を感知しているため、生体センサ11周辺の温度が上昇すると検知精度が低下する。第1実施形態に係る紫外線照射装置1では、生体センサ11が実装されたセンサ基板11aと、UVC-LED12a及び青色LED12bが実装された発光基板12eと、を離して配置し、さらに、発光基板12eには、ヒートシンク12cを固定している。ヒートシンク12cによりUVC-LED12aの放熱効果が高まる。また、ヒートシンク12cを背面カバー3cに固定し、生体センサ11を遮光カバー3bに固定することで、UVC-LED12aの熱が伝わるヒートシンク12cから生体センサ11をできるだけ離して配置することにより、熱の影響をより低減することができる。
【0030】
また、紫外線照射領域を可視化しているため、人は目視により紫外線照射領域を容易に認識することができる。そのため、紫外線照射装置1の設置作業等を容易に行うことができる。また、紫外線照射領域が可視化されることにより、例えば照射対象物としてATM等を操作する人間は、殺菌が適切に行われているか否かを認識でき、また、操作する際に紫外線照射が行われていないことを認識することができる。そのため、安心感を得ることができる。
なお、ここでは、ヒートシンク12cを設けることで放熱効果を得る場合について説明したが、これに限るものではない。ヒートシンク12cと合わせて冷却ファンを設けてもよく、
図6に示すようにヒートシンク12cと背面カバー3cとの間に冷却ファン12fを設けてもよい。
【0031】
また、上記第1実施形態においては、
図3(a)に示すように、生体センサ11、UVC-LED12a及び青色LED12bを配置した場合について説明したが、これに限るものではなく、任意の位置に配置することができる。
図7に示すように青色LED12b(孔33に対応)をアウターケース3の長手方向一端寄りに配置し、生体センサ11(孔31に対応)及びUVC-LED12a(孔32に対応)をアウターケース3の長手方向中央よりもやや他端寄りに配置することもできる。なお
図7において(a)は正面図、(b)は背面図である。
【0032】
また、上記第1実施形態において、紫外線照射装置1は、照射対象物に対して紫外線照射を行うことの可能な位置に単体で固定するようにしてもよい。また、例えば、
図8に示すように、可動アームの先端に紫外線照射装置1を取り付けデスクライト型の紫外線照射装置として設置してもよい。
また、紫外線照射装置1は、装置本体2を壁等に埋め込み、壁板の、生体センサ11、UVC-LED12a、青色LED12bと対向する位置に、孔31~33を設け、壁板に遮光カバー3bに相当する構成をもたせることで、紫外線照射装置1と同等の機能構成を実現するようにしてもよい。
【0033】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態に係る紫外線照射装置1は、第1実施形態に係る紫外線照射装置1において、UVC-LED12aと生体センサ11との位置関係を規定したものである。
図9(a)は、生体センサ11の感知エリア(検出範囲)と、UVC-LED12aの照射エリア(照射範囲)とを示したものである。
図9(a)において、UVC-LED12amは、
図1Bに示すように、各発光基板12eに実装された3灯のUVC-LED12aのうち、生体センサ11から最も離れた位置にあるUVC-LED12aである。
【0034】
第2実施形態に係る紫外線照射装置1は、
図9(a)に示すように、生体センサ11の感知エリアが、2灯のUVC-LED12amの照射エリアの和よりも広くなるようになっている。つまり、例えば
図9(b)に示すように、生体センサ11の感知エリアが2灯のUVC-LED12amの照射エリアの和よりも狭い場合、紫外線の照射対象物(例えばATM)を操作しようとして人が照射対象物に接近した場合、生体センサ11の感知エリアに人が進入する前に照射エリアに進入する。そのため、UVC-LED12amによる紫外線照射が行われている最中に、生体センサ11により人が感知エリアに進入したことが検知された場合には、被爆した後に紫外線照射が停止されることになる。また、紫外線照射中でない場合でも、定期的に紫外線照射を行うタイミングがきたらこの時点で紫外線照射が行われ、これにより被爆し、その後生体センサ11によって人が管理エリアに侵入したことが検知された時点で、紫外線照射が停止されることになる。なお、UVC-LEDは一般的に点光源とみなせるため、
図9(b)のUVC-LED12amの紫外線放射角は模式的に示したもので、実際には図示したものより広角に紫外線放射されている。
【0035】
これに対し、第2実施形態に係る紫外線照射装置1では、照射エリア内に人が進入する前の段階で、人が存在することが検知され、紫外線照射が停止され紫外線照射が行われないため、被爆することをより確実に回避することができ、安全性を向上させることができる。
【0036】
ここで、第2実施形態に係る紫外線照射装置1では、生体センサ11の感知エリアを、UVC-LED12amの照射エリアよりも広くするため、感知エリアと照射エリアとを調整する。具体的には、UVC-LED12amから放出された紫外線のうち、遮光カバー3bにより遮光されずに孔32を通過し照射対象物に向けて放出された紫外線である放出線とUVC-LED12amの発光面の法線ベクトルとがなす最大角度を最大放射角度相当値θ1とする。また、アウターケース3内に配置された状態における生体センサ11で検知可能な最大検知角、つまり、生体センサ11が紫外線照射装置1に組み込まれた状態において、生体センサ11で検知可能な検知角度の最大値である最大検知角の1/2の角度を視野角相当値θ2とする。そして、感知エリアと照射エリアとを、最大放射角度相当値θ1が視野角相当値θ2よりも小さく(θ1<θ2)なるように設定する。
【0037】
このように設定すると、紫外線照射装置1と紫外線照射対象物との間の距離が増加したときの、生体センサ11の感知エリアの拡大割合はUVC-LED12amによる照射エリアの拡大割合よりも大きいため、紫外線照射装置1と紫外線照射対象物との間の距離が大きくなるにつれて、感知エリアに含まれる2灯のUVC-LED12amの照射エリアの割合が大きくなり、やがて、感知エリア内に、2灯のUVC-LED12amの照射エリアが共に含まれるようになる。
【0038】
したがって、UVC-LED12amの最大放射角度相当値θ1が視野角相当値θ2よりも小さく(θ1<θ2)なるようにこれらを調整することで、感知エリア内に2灯のUVC-LED12aの照射エリアを含めることができる。つまり、人が照射対象物に近づくとまず、感知エリアに進入した人の存在が検出され、これによりUVC-LED12aの駆動が停止されて紫外線の照射が停止され、その後紫外線の照射エリアに進入することになる。つまり、紫外線の照射エリアに進入した人の被爆する可能性が低下する。
【0039】
また、例えば、タッチパネル等の表面を殺菌するような用途においては、付近を通過する人まで検知してしまうと誤動作につながるため、照射エリア内に限定した人の侵入の検知が望まれる。本構成において、θ2<θ1x2となるように、遮光カバー3bにおける孔31及び孔32の開口径を調節する事で、照射エリアに対して必要以上に検知エリアを広げることによる生体センサの誤検知を防止する事が可能となる。
これらの調整は、例えば、孔31及び32の開口径及び配置位置、生体センサ11の受光面から孔31までの距離、UVC-LED12amの発光面から孔32までの距離、生体センサ11の視野角性能、UVC-LED12amの照射光の最大角度等のうちのいずれか一つ又は複数を組み合わせることにより行う。
【0040】
そして、さらに、照射対象物において、感知エリア内に2灯のUVC-LED12amの照射エリアが含まれるように、紫外線照射装置1と照射対象物との間の距離、生体センサ11及びUVC-LED12amとの間の距離等のうちのいずれか一つ又は複数を組み合わせて調整する。
ここで、第2実施形態に係る紫外線照射装置1においては、生体センサ11との間の距離が最も大きい2灯のUVC-LED12amの照射エリアが生体センサ11の感知エリア内に含まれるように設定している。そのため、UVC-LED12aのうち、生体センサ11との間の距離がUVC-LED12amと生体センサ11との間の距離よりも短いUVC-LED12aの照射エリアは、必ず生体センサ11の感知エリア内に含まれることになる。
【0041】
なお、上述のように、生体センサ11とUVC-LED12aとの間の距離によって、感知エリアと照射エリアとの関係が変化するため、UVC-LED12aの配置位置を、
図1Bに示すように、生体センサ11を挟んで3つずつ等間隔に2列に配置するのではなく、生体センサ11との間の距離が等間隔となるように、生体センサ11を中心とする円上にUVC-LED12aを配置するようにしてもよい。
【0042】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態に係る紫外線照射装置1は、第2実施形態に係る紫外線照射装置1において、サイドカバーを設けたものである。
図10は第3実施形態に係る紫外線照射装置1を示したものであり、(a)はサイドカバーを備えた紫外線照射装置の一例を示す斜視図、(b)は、要部を表す断面図である。
【0043】
第3実施形態に係る紫外線照射装置1は、
図10(a)に示すように、遮光カバー3bの、背面カバー3cとは逆側の面に、生体センサ11、UVC-LED12a及び青色LED12bに対応する孔31~33を囲むサイドカバー(突出部)3eが設けられている。サイドカバー3eは、例えば、端面が直方体の角筒状に形成される。なお、サイドカバー3eは、直方体の角筒状の形状に限るものではなく、
図10(b)に示す断面図において、サイドカバー3eが外側に傾斜した、遮光カバー3bから離れるほど端面が大きくなる電球傘形状であってもよい。
【0044】
サイドカバー3eは、UVC-LED12aの発光面からサイドカバー3eの、遮光カバー3bとは逆側の端部までの、発光面の法線ベクトルに沿った高さH1が次式(1)を満足するように設定される。
H1≧L1×cos(θ2)×cos(θ3)/sin(θ2-θ3) ……(1)
【0045】
式(1)中の、L1は、UVC-LED12aのうち生体センサ11から最も遠い位置に配置されている最遠光源であるUVC-LED12amと生体センサ11との間の距離である。θ2は、アウターケース3内に配置された状態における生体センサ11で検知可能な最大検知角の1/2の角度である視野角相当値である。θ3は、最遠光源であるUVC-LED12amから放出され、遮光カバー3bにより遮光されずに孔32を通過して照射対象物に向けて放出された紫外線である放出線のうち、平面視で生体センサ11から最も離れた地点を通る放出線と、最遠光源であるUVC-LED12amの発光面の法線ベクトルとがなす角度を表す最遠放射角度相当値である。
【0046】
図10(b)に示すように、照射対象物における照射エリアが感知エリアに含まれたとしても、紫外線照射装置1と照射対象物との間の、遮光カバー3bに近い空間領域では、空間領域における照射エリアが感知エリア内に含まれず、このような空間領域に人の手等が進入した場合には、まず照射エリアに進入し、その後感知エリアに進入することになる。つまり、被爆する可能性がある。そのため、照射エリアが感知エリア内に含まれない空間領域には人の手等が進入しないように、サイドカバー3eを設ける。そして、照射エリアが感知エリア内に含まれない空間領域への進入を阻止するためには、遮光カバー3bから、生体センサ11の感知エリアとUVC-LED12amの照射エリアとが一致する地点までの領域に人の手等が進入しなければよい。生体センサ11の感知エリアとUVC-LED12amの照射エリアとが一致する地点は、前記(1)式から、UVC-LED12amの発光面からの法線ベクトルに沿った高さH1の地点として表すことができる。そのため、UVC-LED12amの発光面からサイドカバー3eの先端までの発光面の法線ベクトルに沿った高さH1が、前記(1)式を満足するように設定することにより、少なくとも、生体センサ11の感知エリアとUVC-LED12asの照射エリアとが一致する地点よりも高さのあるサイドカバー3eが形成されることになる。その結果、空間領域における照射エリアが感知エリア内に含まれない場合であっても、サイドカバー3eにより、被爆する可能性がある領域への人の手等の進入が阻止されることになり、安全性をより向上させることができる。
【0047】
図7に示すように青色LED12b(孔33に対応)とUVC-LED12a(孔32に対応)を離して配置した場合には、
図11に示すように、青色LED12bに対応する孔33を除いて、生体センサ11及びUVC-LED12aに対応する孔31、32を囲むようにサイドカバー3eを設ければよい。
なお、本紫外線照射装置1において、必ずしも
図10や
図11に示すように4面をサイドカバーで囲う必要はなく、人がアクセスする可能性のある方向のみにカバーを設ければよい。例えばATMのタッチパネル上に配置する事を想定した場合、装置手前方向からの人のアクセスのみを想定すればよいので、装置奥側および側面のカバーは不要となる。
【0048】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
第4実施形態は、第1実施形態に係る紫外線照射装置1において、サイドカバー3eを設けると共に、生体センサ11及びUVC-LED12aの配置位置を変えたものである。
【0049】
第4実施形態に係る紫外線照射装置1は、
図12に示すように、一つの発光部12と、一つの生体センサ11と、を備える。また、生体センサ11は、遮光カバー3b側からみて長手方向一方の端部側に配置され、UVC-LED12aは生体センサ11の、長手方向他方の端部側に配置される。さらに生体センサ11は、傾き調整機構13に設けられ、傾き調整機構13によって傾きを調整することによって、感知面の傾きがUVC-LED12a側に向くようになっている。傾き調整機構13は、例えばセンサ基板11aを取り付け可能な支持部材13aと固定部材13bとが可動可能に固定され、固定部材13bの一端を、遮光カバー3bの背面カバー3cとは逆側の面に固定し、支持部材13aにセンサ基板11aを取り付け、支持部材13aの傾きを手動で調整することによって、センサ基板11aの傾きを調整し感知面の向きを調整するようになっている。なお、ここでは、傾き調整機構13を備えることで、生体センサ11を紫外線照射装置1に組み込んだ後でも、生体センサ11の傾きを調整可能に構成しているが、例えば、紫外線照射装置1に組み込んだ後に、生体センサの傾きを調整する必要がない場合には、傾き調整機構13は必ずしも備えていなくともよい。
【0050】
傾き調整機構13により調整を行うことによって、センサ基板11aは感知面がUVC-LED12a側に向くように傾斜して配置され、生体センサ11の感知エリアに、全てのUVC-LED12aの照射エリアが含まれるように配置される。また、
図12には、青色LED12bを記載していないが、青色LED12bは、その青色照射エリアが全てのUVC-LED12aの照射エリアと重なるように配置される。
【0051】
生体センサ11及びUVC-LED12aをこのように配置することによって、生体センサ11の配置位置の自由度を向上させることができる。つまり、
図1Bに示すように、生体センサ11を正面からみて中央に配置した場合、生体センサ11の感知エリア内に、UVC-LED12aの照射エリアが含まれるように配置するには、生体センサ11の周囲にUVC-LED12aを配置する必要がある。これに対し、
図12に示すように、生体センサ11の一方の側に全てのUVC-LED12aを配置した場合、これらUVC-LED12aの照射エリアが感知エリアに含まれるように生体センサ11をUVC-LED12a側に傾けて配置すればよい。つまり、複数のUVC-LED12aの周囲のいずれかの位置に生体センサ11を配置すればよいため、生体センサ11の配置の自由度を向上させることができる。
【0052】
サイドカバー3eは、第3実施形態における紫外線照射装置1と同様に、遮光カバー3bに設けられる。サイドカバー3eの高さは、UVC-LED12aの発光面からサイドカバー3eの遮光カバー3bとは逆側の端部までのUVC-LED12aの発光面の法線ベクトルに沿った距離H2として次式(2)で表すことができる。
H2≧L2×cos(θ2+θ4)×cos(θ3)/sin(θ4+θ2-θ3) ……(2)
【0053】
なお、式(2)において、L2は、UVC-LED12aのうち生体センサ11から最も遠い位置に配置されている最遠光源であるUVC-LED12amと生体センサ11との間の距離である。θ2は、アウターケース3内に配置された状態における生体センサ11で検知可能な最大検知角の1/2の角度である視野角相当値、θ3は、最遠光源であるUVC-LED12amから放出され、遮光カバー3bにより遮光されずに孔32を通過して照射対象物に向けて放出された紫外線である放出線のうち、平面視で生体センサ11から最も離れた地点を通る放出線と、最遠光源であるUVC-LED12amの発光面の法線ベクトルとがなす角度を表す最遠放射角度相当値である。θ4は、生体センサ11の感知面の傾きである。
【0054】
生体センサ11の感知面を傾けることにより、生体センサ11から一番遠い位置にあるUVC-LED12amの照射エリアと生体センサ11の感知エリアとが一致する地点が、生体センサ11を傾けない場合に比較して、より遮光カバー3b寄りの位置となる。そのため、生体センサ11を傾けた分相当だけ、最遠光源であるUVC-LED12amの発光面の法線ベクトルに沿ったサイドカバー3eの高さに相当するH2を短くすることができ、すなわちサイドカバー3eの高さを低くすることができる。つまり紫外線照射装置1をより小型化することができる。なお、この場合には、生体センサ11、UVC-LED12a及び青色LED12bの配置に合わせて、遮光カバー3bのそれぞれに対応する孔31~33の配置を変更すればよい。
【0055】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
第5実施形態は、第1実施形態に係る紫外線照射装置1において、発光部12の配置位置を変えたものである。第5実施形態に係る紫外線照射装置1では、
図13に示すように、二つの発光部12それぞれを、UVC-LED12aの発光面が生体センサ11側に傾くように配置している。発光部12は、UVC-LED12aの発光面の傾き(傾斜角)θaが、次式(3)を満足するように設定する。
θa=a
rcsin(L3/D) ……(3)
【0056】
なお、各発光部12に搭載されている複数のUVC-LED12aのうち、最も遮光カバー3bに近い位置に配置されたUVC-LED12aをUVC-LED12anとしたとき、(3)式におけるL3は、生体センサ11とUVC-LED12anとの間の距離、Dは、UVC-LED12anの発光面と照射対象物との間の距離を表す。
このように配置することによって、
図13(a)に示すように、二つの発光部12それぞれに搭載されたUVC-LED12aの照射エリアが互い重なり合い、照射密度を高めることができる。つまり、第1実施形態に係る紫外線照射装置1のように、生体センサ11を挟んで配置された二つの発光部12に搭載されたUVC-LED12aの発光面が共に同じ方向を向いている場合、
図13(b)に示すように、照射エリアA1は広がるが、二つの発光部12に搭載されたUVC-LED12aによる照射エリアが重なる領域A2は狭い。そのため、照射密度が高い領域は、
図13(a)に示す、照射エリアの重なる領域A3が広い場合における照射密度が高い領域に比較して、狭い。
【0057】
そのため、例えば、二つの発光部12を、それぞれを互いに向き合う方向に傾けて配置することによって、容易に殺菌性能を向上させることができる。
なお、発光部12に、
図12に示す傾き調整機構(光源傾き調整機構)13を適用し、発光部12の傾きを手動で調整するようにしてもよい。傾き調整機構13は、二つの発光部12のそれぞれに設けてもよく、いずれか一方にのみ設けてもよい。一つの発光部12に1又は複数のUVC-LED12aを実装することにより、UVC-LED12aの傾きを一つずつ或いは複数毎に調整することができる。
【0058】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
第6実施形態は、第1実施形態に係る紫外線照射装置1において、複数、例えば二つの生体センサ11-a、11-bを設けたものである。
すなわち、
図14に示すように、UVC-LED12aを一纏めにして配置し、これらUVC-LED12aの周辺に二つの生体センサ11-a、11-bを設ける。このとき、生体センサ11-a、11-bは、その感知面が、UVC-LED12a側に傾くように配置してもよく、UVC-LED12aの発光面と平行となるように配置してもよい。また、生体センサ11を、3つ以上設けてもよい。
【0059】
このように、生体センサ11を複数設けることによって、人を感知するエリアが広がる。そのため、より確実に人の存在を感知することができる。
なお、生体センサ11を複数設ける場合には、同一種のセンサを設けてもよく、例えば、種類の異なるセンサを複数設けてもよく、紫外線照射装置1の用途や設置環境に応じて生体センサ11を選定すればよい。
【0060】
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態を説明する。
第7実施形態は、
図15に示すように、第1実施形態に係る紫外線照射装置1において、さらに距離センサ14を設けたものである。
距離センサ14は、UVC-LED12aが実装された発光基板12eに実装され、UVC-LED12aの発光面と同一方向に存在する物体との間の距離を測定する。
【0061】
そして、制御回路1aでは、距離センサ14の検出信号に基づき、UVC-LED12aの駆動時間を制御し、照射対象物までの距離が長いほど、紫外線の照射時間を長くする。
つまり、
図15に示すように、照射対象物までの距離が長いほど、照射密度は低下する。そのため、照射対象物までの距離が長いほど照射時間を長くすることによって、照射対象物に対して一定の照射強度(照射密度×時間)を与えることができる。そのため、照射対象物に対して安定した殺菌性能を得ることができる。
【0062】
さらに、測定距離の微分値が閾値を超えた場合に照射エリアに対して人が侵入したと認識することで、生体センサとしても使用できる。生体センサ11と併用して距離センサを生体センサとして使用する事で冗長性が増し、より確実に人の侵入を検知する事ができる。
なお、第1実施形態に係る紫外線照射装置1において距離センサ14を設ける場合に限るものではなく、第2から第5実施形態においても、距離センサ14を設けるようにすることも可能であり、同等の作用効果を得ることができる。
【0063】
また、上記各実施形態においては、青色LED12bを2灯設ける場合について説明したが、2灯に限らず、一灯または3灯以上設けてもよい。同様にUVC-LED12aは6灯に限るものではなく、所望数のUVC-LED12aを設けてもよく、例えば、高い殺菌性能が必要な場合、或いは、より短時間で殺菌したい場合には、より多数のUVC-LED12aを設ければよい。
また、上記各実施形態において、生体センサ11は、遮光カバー3bに形成された孔31により、検知角度が狭められなくともよい。また、生体センサ11は、アウターケース3の外側、つまり、遮光カバー3bの、表面に設けられていてもよい。
【0064】
同様に、装置本体2を壁等に埋め込む場合には、生体センサ11については、壁の表面に固定するようにしてもよい。
また、遮光カバー3bに形成された孔31により、生体センサ11の検知角度が狭められていない場合、また、生体センサ11を遮光カバー3bの表面に取り付けたり、壁の表面に取り付けたりすることにより、生体センサ11の検知角度が狭められていない場合には、生体センサ11の仕様で決められている視野角が最大検知角となり、視野角の1/2の角度が視野角相当値θ2となる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0066】
第1実施形態に係る紫外線照射装置1を用いて、遮光カバー3bから300mm離れた位置にある500mm×500mmの照射対象物に対して紫外線照射を行う場合のシミュレーションを行った。UVC-LED12aの出力は70mWとし、6灯のUVC-LED12aを465mAで駆動する場合を想定した。その結果、
図16に示すように、照射エリア略中央部で高い紫外線照射照度が得られた。
図16において、紫外線照射照度が最も高い部分は、10分間でドーズ量(積算光量(UV露光量))が40mj/cm
2以上であった。
【符号の説明】
【0067】
1 紫外線照射装置
1a 制御回路
2 装置本体
3 アウターケース
3b 遮光カバー
3c 背面カバー
3e サイドカバー
11 生体センサ
11a センサ基板
12 発光部
12a UVC-LED
12b 青色LED
12c ヒートシンク
12d ドライバ基板
12e 発光基板