(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】屋外用途のためのUV遮断剤を含むオプティカルボンディングシリコーン
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240808BHJP
C08K 5/3475 20060101ALI20240808BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240808BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20240808BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20240808BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240808BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20240808BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K5/3475
C08L83/05
C09J183/05
C09J183/07
C09J11/06
C08K3/011
(21)【出願番号】P 2022564385
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2020061377
(87)【国際公開番号】W WO2021213662
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100183678
【氏名又は名称】丸島 裕
(72)【発明者】
【氏名】イェン、シャオ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/066078(WO,A1)
【文献】特開2016-084419(JP,A)
【文献】国際公開第2019/133580(WO,A1)
【文献】特表2021-508755(JP,A)
【文献】特開2017-002240(JP,A)
【文献】特開2016-029121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08G
C09J
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンと;
(B)1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する、少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ここで、この成分中のケイ素結合水素原子の量は、成分(A)中のケイ素結合アルケニル基1molあたり0.1~20molとなる量であり;
(C)組成物の硬化を促進する量の、少なくとも1種のヒドロシリル化反応触媒と;
(D)組成物の総重量に対して0.5wt%~3.0wt%のUV遮断剤:2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノールと;
を含有する、オプティカルボンディング屋外用途
(但し、200μm以下の厚さのガラスへの用途を除く)のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の、屋外用途のディスプレイの上面へのガラスのオプティカルボンディングのための接着剤としての使用。
【請求項3】
請求項1に記載のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を、ディスプレイの上面へのガラスのオプティカルボンディング用接着剤として使用する、屋外用途のディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特有のUV遮蔽剤を含有する透明シリコーン組成物、およびオプティカルボンディング屋外用途(optical bonding outdoor applications)におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オプティカルボンディング(Optical bonding)は、タッチスクリーンパネルとディスプレイモジュール(タッチフィルムまたはガラスとオーバーレイ)の間の空隙を充填し、視認性、見やすさおよび耐久性を向上させるために、電気ディスプレイの分野でますます適用が進んでいる。アクリレートポリマーは、通常、スマートフォンおよびタブレット端末などの家電製品用ディスプレイの光学的接合剤(optical bonding agent)として使用されている。アクリレートには、2つの形態:光学的に透明な接着剤(OCA、テープ状)および光学的に透明な樹脂(OCR、液状)、がある。アクリレートOCRは、UV照射で硬化する。近年、基板の積層工程に、加熱およびUV照射のいずれでも硬化できる光学的に透明なシリコーン材料が導入された。
【0003】
最近では、パブリックビューイング用ディスプレイのような特に屋外用途における大型ディスプレイまたは自動車用タッチスクリーンディスプレイに対する要求が高まっている。しかしながら、このようなディスプレイは、太陽放射線にさらされるため、強力なUV放射にもさらされる。特にUVAおよびUVB(280nm~400nm)放射は、ディスプレイに悪影響を及ぼす。
【0004】
シリコーンにUV遮断性官能基を導入するために、従来技術において合成方法が提案されている(US9482788B2およびWO2009147020A1参照)。先行技術の基本的な考え方は、シリコーンとUV遮断性官能基との両方を共有結合で組み合わせた新規分子を生成することである。これらの方法は、複雑な合成および精製の工程を含み、材料コストが割高になる。また、これらの新規分子と従来のシリコーン配合物との相溶性が保証されていないという別の不利な点があり、これは、これらの新規分子を多くの既存の配合物に導入してUV遮蔽性能を向上させることが困難であることを意味する。また、UV遮蔽性官能基がこれらの新規分子中において希釈されているため、これらの新規分子の割合が比較的高くなる可能性があり、これは、これらの新規分子を導入すると元の配合物が全く変わってしまう可能性があることを意味する。元の特性を維持しつつ、同時にUV遮蔽性能を向上させることは困難である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、先行技術を改善すること、特に、向上したUV安定性を示し、したがって、オプティカルボンディング屋外用途に使用可能な透明シリコーン組成物を提供することである。
【0006】
本発明の主題は、
(A)1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンと;
(B)1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する、少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ここで、この成分中のケイ素結合水素原子の量は、成分(A)中のケイ素結合アルケニル基1molあたり0.1~20molとなる量であり;
(C)本発明の組成物の硬化を促進する量の、少なくとも1種のヒドロシリル化反応触媒と;
(D)組成物の総重量に対して0.1wt%~5.0wt%(=重量%)のUV遮断剤:2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノールと;
を含有する、オプティカルボンディング屋外用途のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
成分(A):
本発明に従って使用される化合物(A)は、好ましくは少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有し、ケイ素を有しない有機化合物、好ましくは少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物、またはこれらの混合物、を含有してもよい。
【0008】
ケイ素を有しない有機化合物(A)の例は、1,3,5-トリビニルシクロヘキサン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4,7-メチレン-4,7,8,9-テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリアリルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、3-メチルヘプタ-1,5-ジエン、3-フェニルヘキサ-1,5-ジエン、3-ビニルヘキサ-1,5-ジエン、および4,5-ジメチル-4,5-ジエチルオクタ-1,7-ジエン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリアクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N'-ジアリルウレア、トリアリルアミン、トリス(2-メチルアリル)アミン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリル-s-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ジアリルマロン酸、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0009】
使用される、脂肪族炭素-炭素多重結合を含むSiC結合基を有する有機ケイ素化合物(A)は、一般式(I)の単位を含む、直鎖状または分岐状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0010】
R4
aR5
bSiO(4-a-b)/2 (I)
式(I)中、
R4は、各出現時に独立して、同一または異なって、脂肪族炭素-炭素多重結合を有しない有機または無機基であり、
R5は、各出現時に独立して、同一または異なって、少なくとも1個の脂肪族炭素-炭素多重結合を有する、置換または非置換の一価のSiC結合炭化水素基であり、
aは、0、1、2または3であり、
bは、0、1または2であり、
ただし、合計a+bは3以下であり、1分子あたり少なくとも2個の基R5が存在する。
【0011】
基R4は、一価または多価の基から構成されていてもよく、この場合、二価、三価および四価の基などの多価の基は、例えば、2個、3個および4個などの2個以上の、式(I)の例えばシロキシ単位を互いに結合させる。
【0012】
R4のさらなる例は、一価の基である-F、-Cl、-Br、OR6、-CN、-SCN、-NCO、および酸素原子または基-C(O)-によって中断されていてもよい置換または非置換のSiC結合炭化水素基、さらに式(I)に基づいて両側でSi結合した二価の基である。基R4が置換されたSiC結合炭化水素基から構成される場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、-OR6、-NR6-、-NR6
2、-NR6-C(O)-NR6
2、-C(O)-NR6
2、-C(O)R6、-C(O)OR6、-SO2-Phおよび-C6F5である。その場合、R6は、各出現時に独立して、同一または異なって、水素原子または炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、Phは、フェニル基である。
【0013】
基の例R4は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基、および2,2,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基などのオクチル基、n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、ならびにn-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、およびフェナントリル基などのアリール基、o-、m-、p-トリル基、キシリル基、およびエチルフェニル基などのアルカリール基、ならびにベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基などのアラルキル基である。
【0014】
置換された基R4の例は、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2',2',2'-ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基などのハロアルキル基、o-、m-およびp-クロロフェニル基などのハロアリール基、-(CH2)-N(R6)C(O)NR6
2、-(CH2)o-C(O)NR6
2、-(CH2)o-C(O)R6、-(CH2)o-C(O)OR6、-(CH2)o-C(O)NR6
2、-(CH2)-C(O)-(CH2)pC(O)CH3、-(CH2)-O-CO-R6、-(CH2)-NR6-(CH2)p-NR6
2、-(CH2)o-O-(CH2)pCH(OH)CH2OH、-(CH2)o(OCH2CH2)pOR6、-(CH2)o-SO2-Ph、および-(CH2)o-O-C6F5であり、式中、R6およびPhはそれらについて上記に示した定義に対応し、oおよびpは0~10の同一のまたは異なる整数である。
【0015】
式(I)に従って両側でSi結合した二価の基としてのR4の例は、水素原子の置換によって起こる追加の結合に基づく基R4について上述した一価の例に由来する基である。そのような基の例は、-(CH2)-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-CH2-、-C6H4-、-CH(Ph)-CH2-、-C(CF3)2-、-(CH2)o-C6H4-(CH2)o-、-(CH2)o-C6H4-C6H4-(CH2)o-、-(CH2O)p、(CH2CH2O)o、-(CH2)o-Ox-C6H4-SO2-C6H4-Ox-(CH2)o-であり、式中、xは0または1であり、Ph、oおよびpは上述した定義を有する。
【0016】
基R4は、脂肪族炭素-炭素多重結合を有しない、置換されていてもよい、炭素数1~18の一価のSiC結合炭化水素基から構成されることが好ましく、脂肪族炭素-炭素多重結合を有しない、炭素数1~6の一価のSiC結合炭化水素基から構成されることがより好ましく、メチル基またはフェニル基から構成されることがより特に好ましい。
【0017】
基R5は、SiH官能性化合物との付加反応(ヒドロシリル化)に適した、任意の所望の基から構成されていてもよい。
【0018】
基R5が置換されたSiC結合炭化水素基から構成される場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、および-OR6であり、式中、R6は上述した定義を有する。
【0019】
基R5は、炭素数2~16の、アルケニル基およびアルキニル基から構成されることが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、メタアリル基、1-プロペニル基、5-ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基、およびスチリル基であり、ビニル基、アリル基、およびヘキセニル基が特に好ましく使用される。
【0020】
構成成分(A)の分子量は、例えば102~106g/molのように、広い範囲内で変動してもよい。したがって、例えば、構成成分(A)は、1,2-ジビニルテトラメチルジシロキサンなどの分子量が比較的低いアルケニル官能性オリゴシロキサンを含有してもよいが、例えば分子量が105g/mol(NMRを用いて決定した数平均)であり、鎖内または末端にSi結合ビニル基を有する高分子ポリジメチルシロキサンであってもよい。構成成分(A)を形成する分子の構造も固定されず;特に、分子量が比較的高いシロキサン、言い換えればオリゴマーシロキサンまたはポリマーシロキサンの構造は、直鎖状、環状、分岐状、あるいは、樹脂状のネットワーク状(resinous, network-like)であってもよい。直鎖状および環状ポリシロキサンは、式R4
3SiO1/2、R5R4
2SiO1/2、R5R4SiO1/2、およびR4
2SiO2/2の単位から構成されていることが好ましく、式中、R4およびR5は上記に示した定義を有する。分岐状およびネットワーク状ポリシロキサンは、3官能性および/または4官能性の単位をさらに含み、式R4SiO3/2、R5SiO3/2、およびSiO4/2のものが好ましい。当然のことながら、構成成分(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することもできる。
【0021】
成分(A)として特に好ましくは、いずれの場合も25℃で0.01~500,000Pa・sの粘度を有するビニル官能性で実質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンの使用であり、該粘度は、より好ましくは0.1~100,000Pa・sである。
【0022】
成分(B):
有機ケイ素化合物(B)としては、これまで付加架橋性組成物にも採用されているすべての水素官能性有機ケイ素化合物を使用することが可能である。
【0023】
使用される、Si結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B)は、一般式(III)の単位から構成される直鎖状、環状または分岐状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0024】
R4
cHdSiO(4-c-d)/2 (III)
式(III)中、
R4は、上述した定義を有し、
cは、0、1、2または3であり、
dは、0、1または2であり、
ただし、合計c+dは3以下であり、1分子あたり少なくとも2個のSi結合水素原子が存在する。
【0025】
本発明に従って使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、オルガノポリシロキサン(B)の総重量に対して、0.04~1.7重量%(wt%)の範囲のSi結合水素を含むことが好ましい。
【0026】
構成成分(B)の分子量は、同様に、例えば102~106g/molのように、広い範囲内で変動してもよい。したがって、構成成分(B)は、例えば、テトラメチルジシロキサンなどの分子量が比較的低いSiH官能性オリゴシロキサンを含有してもよく、あるいは代わりに、SiH基を有するシリコーン樹脂または鎖内もしくは末端にSiH基を有する高分子ポリジメチルシロキサンを含有してもよい。
【0027】
また、構成成分(B)を形成する分子の構造も固定されず;特に、分子量が比較的高いSiH含有シロキサン、言い換えればオリゴマーまたはポリマーの構造は、直鎖状、環状、分岐状、あるいは、樹脂状のネットワーク状であってもよい。直鎖状および環状ポリシロキサン(B)は、式R4
3SiO1/2、HR4
2SiO1/2、HR4SiO2/2、およびR4
2SiO2/2の単位から構成されていることが好ましく、式中、R4は上記に示した定義を有する。分岐状およびネットワーク状ポリシロキサンは、3官能性および/または4官能性の単位をさらに含み、式R4SiO3/2、HSiO3/2、およびSiO4/2のものが好ましく、式中、R4は上記に示した定義を有する。
【0028】
当然のことながら、構成成分(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することもできる。特に好ましくは、テトラキス(ジメチルシロキシ)シランおよびテトラメチルシクロテトラシロキサンのような低分子量のSiH官能性化合物の使用、ならびに、25℃における粘度が10~20,000mPa・sの、ポリ(ハイドロジェン-メチル)シロキサンおよびポリ(ジメチルハイドロジェンメチル)シロキサン、あるいはメチル基の一部が3,3,3-トリフルオロプロピル基またはフェニル基に置換されている類似のSiH含有化合物などの、高分子量のSiH含有シロキサンの使用である。
【0029】
本発明の架橋性シリコーン組成物(X)における構成成分(B)の量は、(A)由来の脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が0.1~20となるものであることが好ましく、0.3~2.0となるものであることがより好ましい。
【0030】
本発明に従って使用される成分(A)および(B)は、市販品であるか、および/または化学の範囲内で一般的な方法によって調製することができる。
【0031】
成分(C):
成分(C)は、ヒドロシリル化反応触媒である。
成分(C)のヒドロシリル化反応触媒は、成分(A)のアルケニル基と成分(B)のケイ素結合水素原子との反応を促進するために使用される。
【0032】
成分(C)としては、例えば、白金触媒、ロジウム触媒およびパラジウム触媒が挙げられる。白金触媒は、本発明の組成物の硬化を著しく促進させることができるため、好ましい。白金触媒としては、例えば、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金/アルケニルシロキサン錯体、白金/オレフィン錯体、および白金/カルボニル錯体が挙げられ、白金/アルケニルシロキサン錯体が好ましい。アルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、また、上記アルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル、フェニル等の基に置換して得られるアルケニルシロキサン、ならびに、上記アルケニルシロキサンのビニル基をアリル、ヘキセニル等の基に置換して得られるアルケニルシロキサンが挙げられる。1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンは、白金/アルケニルシロキサン複合体の安定性に優れるため、特に好ましい。また、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、ならびに、他のアルケニルシロキサンおよびジメチルシロキサンオリゴマーなどのオルガノシロキサンオリゴマーを白金/アルケニルシロキサン錯体に添加することが、それらの添加がもたらし得る錯体の安定性の向上のため望ましく、アルケニルシロキサンが特に好ましい。
【0033】
成分(C)の含有量は、本発明の組成物の硬化を促進する量であれば、特に制限はない。しかしながら、具体的には、本発明の組成物において、成分(C)は、成分(A)および(B)の合計100重量部に対して、白金含有量が0.05~100重量ppm(100万分の1)となる量で存在することが好ましく、より好ましくは0.1~10重量ppm、特に好ましくは0.1~5重量ppmである。これは、成分(C)の含有量が上記範囲の下限未満であると、本発明の組成物が完全には硬化しない傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物に種々の色を付与する点で問題が生じることがあるためである。
【0034】
成分(D):
驚くべきことに、特有のUV遮断剤2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノールを含有する本発明の透明シリコーン組成物は、本発明の組成物に溶解できることが見出された。このような化合物は、例えば、BASF AG(ドイツ)からTINUVIN(登録商標) 171およびTINUVIN(登録商標) 571という商品名で市販されており、以下の化学構造を示す。
【0035】
【0036】
(D)は、本発明の透明組成物に溶解することができ、良好な保存安定性を示した。驚くべきことに、(D)は屋外用ディスプレイをUVAおよびUVB(280nm~400nm)の入射から保護する効果だけでなく、デバイスの動作温度の低減という大きな技術的効果ももたらす。
【0037】
(D)は、組成物の総重量に対して、0.1wt%~5.0wt%、好ましくは0.5wt%~3.0wt%使用される。
【0038】
成分(E):
本発明の付加架橋性透明シリコーン組成物は、架橋されたシリコーン組成物の透明性に影響しない限り、そのような組成物に用いられることが既に知られている、さらなる成分(E)を含有してもよい。例えば、補強性および非補強性の充填剤、シロキサン(A)および(B)とは異なる樹脂性のポリオルガノシロキサン、ならびにレオロジー添加剤が挙げられる。
【0039】
本発明のさらなる主題は、例えば建物のファサード、パブリックビューイングイベント、スポーツスタジアムなどに使用される屋外用フラットスクリーン、自動車内のディスプレイのように、屋外用途のディスプレイの上面へのガラスのオプティカルボンディングのための接着剤としての上記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の使用である。
【0040】
本発明のさらなる主題は、上記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を、屋外用途のディスプレイの上面へのガラスのオプティカルボンディング用接着剤として使用する、ディスプレイの製造方法である。
【実施例】
【0041】
以下の例において、部およびパーセントのデータは、特に断らない限り、すべて重量に基づく。特に断らない限り、以下の例は、周囲雰囲気の圧力、すなわち約1000hPaで、室温、すなわち約20℃で、または追加の加熱もしくは冷却なしに室温で反応物を組み合わせたときに達せられる温度で実施される。以下では、粘度データはすべて25℃の温度を指す。以下の例は、限定的な効果を有することなく本発明を説明するものである。
【0042】
光学的および機械的特性
黄変指数の測定方法:
ASTM E313-73に準拠して、初期試料についてKONICA MINOLTA CM-5を用いてL*a*b*色空間で黄変指数(YI)を測定した。L*a*b*色空間において、L*は明度を示し、a*およびb*は色度座標である。a*およびb*は色の方向である:+a*は赤軸、-a*は緑軸、+b*は黄軸、および-b*は青軸である。
【0043】
光透過率の測定方法:
光透過率は、Analytikjena SPECORD 200を用いて測定した。
【0044】
ラップせん断強度試験:
試料サイズは、ソーダ石灰ガラス基板上で7.0cm2であり、接合ライン厚さは300ミクロンである。引張試験速度は、室温で300mm/minである。測定された最大力は、接着強度として記載する。
【0045】
使用した製品:
・化合物(D)としてBASF AG(ドイツ)のTINUVIN(登録商標) 171
・Wacker Chemie AG(ドイツ)のLUMISIL(登録商標) 100 A/B、少なくとも化合物(A)、(B)および(C)を含有する(1:1)2液付加型熱硬化性シリコーンゲル組成物
その特徴は、以下の通りである:
・太陽光のUVAおよびUVBから屋外用ディスプレイを保護する
・低粘度を有するセルフレベリング性
・低温での速硬化
・良好な光学性能
・低収縮率
【0046】
実施例1:LUMISIL(登録商標) 100 + 0.5重量%のTINUVIN(登録商標) 171
9995gのLUMISIL(登録商標) 100 Aと5gのTINUVIN(登録商標) 171とを攪拌機付きの反応容器に装入した。この混合物は、SpeedMix装置用容器に移すことも可能である。9995gのLUMISIL(登録商標) 100 Bと5gのTINUVIN(登録商標) 171とを攪拌機付きの反応容器に装入した。この混合物は、SpeedMix装置用容器に移すことも可能である。この混合物を20℃で温度制御しながら0.1~0.5時間攪拌して、A側およびB側のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を調製した。A側とB側とを1:1の割合で混合して、最終的にUV遮断性能を有するオプティカルボンディングシリコーンを作製した。この混合物は、室温で通常の反応速度で硬化させることも、速い反応速度のために高温で硬化させることも可能である。試験片を作製し、上記試験法に従って黄変指数および透過率を測定した。UVカットオフは365nmから始まり、初期黄色度指数は約0.18である。
【0047】
光透過率は、550nmで99.78%である。
ガラスへの接着強度は、2.15kgf/cm2で、凝集破壊モードである。
【0048】
実施例2:LUMISIL(登録商標) 100 + 1.0重量% TINUVIN(登録商標) 171
9990gのLUMISIL(登録商標) 100 Aと10gのTINUVIN(登録商標) 171とを攪拌機付きの反応容器に装入した。この混合物は、SpeedMix装置用容器に移すことも可能である。9990gのLUMISIL(登録商標) 100 Bと10gのTINUVIN(登録商標) 171とを攪拌機付きの反応容器に装入した。この混合物は、SpeedMix装置用容器に移すことも可能である。この混合物を20℃で温度制御しながら0.1~0.5時間攪拌して、A側およびB側のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を調製した。A側とB側とを1:1の割合で混合して、最終的にUV遮断性能を有するオプティカルボンディングシリコーンを作製した。この混合物は、室温で通常の反応速度で硬化させることも、速い反応速度のために高温で硬化させることも可能である。試験片を作製し、上記試験法に従って黄変指数および透過率を測定した。UVカットオフは370nmから始まり、初期黄色度指数は約0.24である。
【0049】
実施例3:LUMISIL(登録商標) 100 + 1.5重量%のTINUVIN(登録商標) 171
9985gのLUMISIL(登録商標) 100 Aと15gのTINUVIN(登録商標) 171とを攪拌機付きの反応容器に装入した。この混合物は、SpeedMix装置用容器に移すことも可能である。9985gのLUMISIL(登録商標) 100 Bと15gのTINUVIN(登録商標) 171とを攪拌機付きの反応容器に装入した。この混合物は、SpeedMix装置用容器に移すことも可能である。この混合物を20℃で温度制御しながら0.1~0.5時間攪拌して、A側およびB側のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を調製した。A側とB側とを1:1の割合で混合して、最終的にUV遮断性能を有するオプティカルボンディングシリコーンを作製した。この混合物は、室温で通常の反応速度で硬化させることも、速い反応速度のために高温で硬化させることも可能である。試験片を作製し、上記試験法に従って黄変指数および透過率を測定した。UVカットオフは378nmから始まり、初期黄色度指数は約0.3である。
【0050】
実施例4:LUMISIL(登録商標) 100 + 2.5重量%のTINUVIN(登録商標) 171
9975gのLUMISIL(登録商標) 100 Aと25gのTINUVIN(登録商標) 171とを攪拌機付きの反応容器に装入した。この混合物は、SpeedMix装置用容器に移すことも可能である。9975gのLUMISIL(登録商標) 100 Bと25gのTINUVIN(登録商標) 171とを攪拌機付きの反応容器に装入した。この混合物は、SpeedMix装置用容器に移すことも可能である。この混合物を20℃で温度制御しながら0.1~0.5時間攪拌して、A側およびB側のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を調製した。A側とB側とを1:1の割合で混合し、最終的にUV遮断性能を有するオプティカルボンディングシリコーンを作製した。この混合物は、室温で通常の反応速度で硬化させることも、速い反応速度のために高温で硬化させることも可能である。試験片を作製し、上記試験法に従って黄変指数および透過率を測定した。UVカットオフは385nmから始まり、初期黄色度指数は約0.45である。光透過率は、550nmで99.84%である。ガラスへの接着強度は、1.96kgf/cm2であり、凝集破壊モードである。
【0051】
比較例1:LUMISIL(登録商標) 100単独
LUMISIL 100 A側とB側とを1:1の割合で混合して、最終的にUV遮蔽性能を有するオプティカルボンディングシリコーンを作製した。この混合物は、室温で通常の反応速度で硬化させることも、速い反応速度のために高温で硬化させることも可能である。試験片を作製し、上記試験法に従って黄変指数および透過率を測定した。UVカットオフは~215nmから始まり、初期黄色度指数は通常は0.2未満である。光透過率は、550nmで99%超である。ガラスへの接着強度は、2.2kgf/cm2であり、凝集破壊モードである。
【0052】
結果の考察:
UV遮蔽材料は、UVカットオフ、黄色度指数および接着強度に影響を与えることが上記実施例から分かっている。
UVカットオフへの影響は、UV遮断材料をさまざまな用途に応じてUVカットオフを調整する方法として用いることができることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1の表では、黄色度指数(YI)とUV遮断材料の濃度との関係を見ることができる。
図1から分かるように、UV遮蔽剤の使用は、初期試料の測定されたYIおよびb*にわずかな影響しか及ぼさない。
【0054】
黄色度指数への影響は、UV遮蔽材料がオプティカルシリコーンの透明性にわずかに影響を与えることを意味する。特に、UV遮蔽材料が電子機器を効果的に保護し、デバイスの温度を大幅に低下させることを考慮する場合には、幸いなことに、ほとんどの屋外用途では黄色度指数の該変化は無視できる。
【0055】
接着強度への影響は、UV遮断材料がガラス上のオプティカルシリコーンの引張強度に影響を与え得ることを意味する。しかしながら、すべてのこれらの例のすべての接着強度は、依然として凝集破壊モードであり、これはほとんどの用途で重要な要件である。