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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】光学材料、レンズ及びアイウェア
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240808BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240808BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G02B5/22
G02C7/10
G02B1/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022565409
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043217
(87)【国際公開番号】W WO2022114064
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020199122
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021040099
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 愛美
(72)【発明者】
【氏名】河戸 伸雄
(72)【発明者】
【氏名】西本 泰三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大貴
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-134618(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129930(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/138953(WO,A1)
【文献】特開2013-109257(JP,A)
【文献】特開2017-149820(JP,A)
【文献】特開2019-066501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02C 7/10
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の色素を含み、透過率曲線において、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、D65光源を使用することで下記式(1)及び下記式(2A)から求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-G3.1以上8.0以下であり、
前記透過率曲線において、さらに、(B)440nm~480nmの範囲内に極大吸収波長bが存在する光学材料。
ΔC*R-G=ΔE*R-G-ΔE*R-G(w0)・・・(1)
ΔE*R-G=[(L*赤-L*緑)+(a*赤-a*緑)+(b*赤-b*緑)1/2・・・(2A)
(式(1)中、ΔE*R-Gは、式(2A)を用いて求められる前記光学材料の赤色と緑色との色差を表し、ΔE*R-G(w0)は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むイソシアネート組成物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むチオール組成物1、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含むチオール組成物2からなり、前記2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量が1.5質量%であり、チオール組成物1に対するチオール組成物2の質量比が1.07であり、イソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基に対するチオール組成物1及びチオール組成物2に含まれるチオール基の合計のモル比が0.86である硬化性組成物を加熱硬化してなる比較光学材料について、D65光源を使用することで前記式(2A)を用いて求められる赤色と緑色との色差を表す。
式(2A)中、L*赤、L*緑、a*赤、a*緑、b*赤、およびb*緑は、厚さ2mmである光学材料、および厚さ2mmである比較光学材料について、マンセル表色系の赤(4.5R4/13)、マンセル表色系の緑(4.5G5/8)、マンセル表色系の青(3PB3/11)の各色標についてCIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*(L*赤、L*緑、L*青),a*(a*赤、a*緑、a*青)及びb*(b*赤、b*緑、b*青)をそれぞれ測定し、求めたパラメータである。)
【請求項2】
前記極大吸収波長aのピークの積分値に対する前記極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である請求項1に記載の光学材料。
【請求項3】
前記極大吸収波長aと前記極大吸収波長bとの差が、130nm~200nmである請求項1又は請求項2に記載の光学材料。
【請求項4】
前記極大吸収波長aの吸収ピークの半値幅が10nm~70nmである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項5】
極大吸収波長が560nm~610nmの範囲内に位置する第1の色素を含み、
前記第1の色素は、テトラアザポルフィリン系金属錯体化合物を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項6】
光学材料の厚さが2mmの場合、EN ISO12312-1:2013に準じて測定されるスペクトルにおける380nm~500nmの青色光吸収率が15%~50%である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項7】
CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、(a*+b*1/2が10以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項8】
D65光源を使用することで下記式(2B)及び下記式(3)から求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Bが0以上7以下である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の光学材料。
ΔC*R-B=ΔE*R-B-ΔE*R-B(w0)・・・(3)
ΔE*R-B=[(L*赤-L*青)+(a*赤-a*青)+(b*赤-b*青)1/2・・・(2B)
(式(3)中、ΔE*R-Bは、式(2B)を用いて求められる前記光学材料の赤色と青色との色差を表し、ΔE*R-B(w0)は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むイソシアネート組成物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むチオール組成物1、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含むチオール組成物2からなり、前記2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量が1.5質量%であり、チオール組成物1に対するチオール組成物2の質量比が1.07であり、イソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基に対するチオール組成物1及びチオール組成物2に含まれるチオール基の合計のモル比が0.86である硬化性組成物を加熱硬化してなる比較光学材料について、D65光源を使用することで前記式(2B)を用いて求められる赤色と青色との色差を表す。
式(2B)中、L*赤、L*青、a*赤、a*青、b*赤、およびb*青は、厚さ2mmである光学材料、および厚さ2mmである比較光学材料について、マンセル表色系の赤(4.5R4/13)、マンセル表色系の緑(4.5G5/8)、マンセル表色系の青(3PB3/11)の各色標についてCIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*(L*赤、L*緑、L*青),a*(a*赤、a*緑、a*青)及びb*(b*赤、b*緑、b*青)をそれぞれ測定し、求めたパラメータである。)
【請求項9】
ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の高分子を含む請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の光学材料を含むレンズ。
【請求項11】
眼鏡レンズに用いるための請求項10に記載のレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学材料、レンズ及びアイウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難いため、近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料として急速に普及してきている。光学材料としては例えば、高分子と、有機色素とを含む光学材料が広く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸収ピーク波長が595nmや760nmであるテトラアザポルフィリン系金属錯体化合物等の特定波長吸収色素と、紫外線吸収剤と、を含む有機ガラス材料が開示されている。
【0004】
特許文献1:特開2013-238634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、光学材料の赤色と緑色との色差について規定されておらず、光学材料を介して対象物を視認する際に対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識しにくい場合がある。
【0006】
本開示の一実施形態は、上記に鑑みてなされたものであり、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することが可能な光学材料、当該光学材料を含むレンズ及びアイウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 1種以上の色素を含み、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、D65光源を使用することで下記式(1)及び(2)から求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Gが0以上10以下である光学材料。
ΔC*R-G=ΔE*R-G-ΔE*R-G(w0)・・・(1)
ΔE*=(ΔL*+Δa*+Δb*1/2・・・(2)
(式(1)中、ΔE*R-Gは、式(2)を用いて求められる前記光学材料の赤色と緑色との色差を表し、ΔE*R-G(w0)は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むイソシアネート組成物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むチオール組成物1、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含むチオール組成物2からなり、前記2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量が1.5質量%であり、チオール組成物1に対するチオール組成物2の質量比が1.07であり、イソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基に対するチオール組成物1及びチオール組成物2に含まれるチオール基の合計のモル比が0.86である硬化性組成物を加熱硬化してなる比較光学材料について、D65光源を使用することで前記式(2)を用いて求められる赤色と緑色との色差を表す。)
<2> CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、さらに、(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在する<1>に記載の光学材料。
<3> 前記極大吸収波長aのピークの積分値に対する前記極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である<2>に記載の光学材料。
<4> 前記極大吸収波長aと前記極大吸収波長bとの差が、130nm~200nmである<2>又は<3>に記載の光学材料。
<5> 前記極大吸収波長aの吸収ピークの半値幅が10nm~70nmである<1>~<4>のいずれか1つに記載の光学材料。
<6> 極大吸収波長が560nm~610nmの範囲内に位置する第1の色素を含み、
前記第1の色素は、テトラアザポルフィリン系金属錯体化合物を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の光学材料。
<7> 光学材料の厚さが2mmの場合、EN ISO12312-1:2013に準じて測定されるスペクトルにおける380nm~500nmの青色光吸収率が15%~50%である<1>~<6>のいずれか1つに記載の光学材料。
<8> CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、(a*+b*1/2が10以下である<1>~<7>のいずれか1つに記載の光学材料。
<9> D65光源を使用することで前記式(2)及び下記式(3)から求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Bが0以上7以下である<1>~<8>のいずれか1つに記載の光学材料。
ΔC*R-B=ΔE*R-B-ΔE*R-B(w0)・・・(3)
(式(3)中、ΔE*R-Bは、前記式(2)を用いて求められる前記光学材料の赤色と青色との色差を表し、ΔE*R-B(w0)は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むイソシアネート組成物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むチオール組成物1、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含むチオール組成物2からなり、前記2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量が1.5質量%であり、チオール組成物1に対するチオール組成物2の質量比が1.07であり、イソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基に対するチオール組成物1及びチオール組成物2に含まれるチオール基の合計のモル比が0.86である硬化性組成物を加熱硬化してなる比較光学材料について、D65光源を使用することで前記式(2)を用いて求められる赤色と青色との色差を表す。)
<10> ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の高分子を含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の光学材料。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の光学材料を含むレンズ。
<12> 眼鏡レンズに用いるための<11>に記載のレンズ。
<13> 対物側の光学部材、及び、対物側の光学部材と対向する対眼側の光学部材の少なくとも2つの光学部材を含んでもよいアイウェアであって、
前記対物側の光学部材における対物側の最表面と前記対眼側の光学部材における対眼側の最表面との間で、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、
(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、
(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在し、
前記極大吸収波長aのピークの積分値に対する前記極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50であるアイウェア。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することが可能な光学材料、当該光学材料を含むレンズ及びアイウェアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1~8のレンズにおける透過率曲線を示すグラフである。
図2】実施例9~15のレンズにおける透過率曲線を示すグラフである。
図3】実施例16~23のレンズにおける透過率曲線を示すグラフである。
図4】比較例1~6のレンズにおける透過率曲線を示すグラフである。
図5】実施例201~実施例206のメガネレンズにおける透過率曲線を示すグラフである。
図6】比較例201~比較例202のメガネレンズにおける透過率曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0011】
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において、置換又は無置換を明記していない化合物については、本開示における効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい。
本開示において、組成物の各成分の量は、各成分に該当する物質が層中に複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、ppm(parts per million)は質量基準のppmを意味する。
【0013】
本開示は、第1実施形態及び第2実施形態を含む。
以下、第1実施形態及び第2実施形態について詳細に説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
≪光学材料≫
第1実施形態の光学材料は、1種以上の色素を含み、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、D65光源を使用することで下記式(1)及び(2)から求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Gが0以上10以下である。
ΔC*R-G=ΔE*R-G-ΔE*R-G(w0)・・・(1)
ΔE*=(ΔL*+Δa*+Δb*1/2・・・(2)
(式(1)中、ΔE*R-Gは、式(2)を用いて求められる前記光学材料の赤色と緑色との色差を表し、ΔE*R-G(w0)は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むイソシアネート組成物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むチオール組成物1、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含むチオール組成物2からなり、前記2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量が1.5質量%であり、チオール組成物1に対するチオール組成物2の質量比が1.07であり、イソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基に対するチオール組成物1及びチオール組成物2に含まれるチオール基の合計のモル比が0.86である硬化性組成物を加熱硬化してなる比較光学材料について、D65光源を使用することで前記式(2)を用いて求められる赤色と緑色との色差を表す。)
【0015】
第1実施形態の光学材料を介して対象物を視認する際に対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することができる。この理由としては、以下のように推測される。まず、560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在することにより、波長域が赤色光と緑色光との間に位置する光が光学材料に吸収されやすくなる。これにより、光学材料にて波長域が赤色光と緑色光との間に位置する光の透過率が低下し、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識しやすくなる。第1実施形態の光学材料にて、ΔC*R-Gが0以上であることにより、比較光学材料に対して赤色と緑色との色差が一定以上大きくなるため、対象物の赤色及び緑色をより鮮明に認識でき、ΔC*R-Gが10以下であることにより、赤色と緑色との色差が大きくなりすぎず、その結果、光学材料を介して対象物を視認する際に明るさが損なわれることなく、赤色及び緑色を鮮明に認識することができる。
【0016】
CIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Gは、対象物の赤色及び緑色をより鮮明に認識しやすくなる観点から、2以上10以下であることが好ましく、3以上9以下であることがより好ましく、3.5以上9以下であることがさらに好ましく、3.7以上8.5以下であることが特に好ましく、4以上8以下であることがより一層好ましい。
【0017】
第1実施形態の光学材料は、D65光源を使用することで前記式(2)及び下記式(3)から求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Bが0以上7以下であることが好ましい。
ΔC*R-B=ΔE*R-B-ΔE*R-B(w0)・・・(3)
(式(3)中、ΔE*R-Bは、前記式(2)を用いて求められる前記光学材料の赤色と青色との色差を表し、ΔE*R-B(w0)は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むイソシアネート組成物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むチオール組成物1、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含むチオール組成物2からなり、前記2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量が1.5質量%であり、チオール組成物1に対するチオール組成物2の質量比が1.07であり、イソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基に対するチオール組成物1及びチオール組成物2に含まれるチオール基の合計のモル比が0.86である硬化性組成物を加熱硬化してなる比較光学材料について、D65光源を使用することで前記式(2)を用いて求められる赤色と青色との色差を表す。)
【0018】
第1実施形態の光学材料にて、CIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Bが0以上7以下であることにより、光学材料を介して対象物を視認する際に対象物の赤色及び青色を鮮明に認識することができる。
【0019】
CIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Bは、対象物の赤色及び青色をより鮮明に認識しやすくなる観点から、0.5以上7以下であることが好ましく、1以上6以下であることがより好ましい。
【0020】
ΔC*R-G及びΔC*R-Bは、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0021】
第1実施形態の光学材料では、例えば、光学材料に含まれる色素の種類、量、組み合わせ等、光学材料に必要に応じて含まれる紫外線吸収剤等の添加剤の種類、量、組み合わせ等、光学材料に必要に応じて含まれる高分子の種類、量、組み合わせ等を適宜調整することで前述のΔC*R-G及びΔC*R-Bを調整し得る。
【0022】
第1実施形態の光学材料の厚さは、特に限定されず、例えば0.5mm~10mmであってもよく、1mm~5mmであってもよく、1.5mm~3mmであってもよい。一例として、第1実施形態の光学材料の厚さは、2mmであってもよい。
第1実施形態において、光学材料の厚さは、最大厚さを意味する。
【0023】
第1実施形態の光学材料では、560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、好ましくは570nm~600nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、より好ましくは570nm~590nmの範囲内に極大吸収波長aが存在する。特に、570nm~600nmの範囲内に極大吸収波長aが存在する場合、対象物の視認に必要な赤色光又は緑色光の間の光が吸収されることが抑制される傾向にある。
第1実施形態の光学材料では、560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが1つのみ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。
【0024】
第1実施形態の光学材料では、極大吸収波長aの吸収ピークの半値幅が10nm~70nmであることが好ましく、15nm~50nmであることがより好ましく、20nm~40nmであることがさらに好ましい。
前述の半値幅が10nm以上であることにより、赤色光と緑色光との間に位置する光が広波長域にて吸収される傾向にあり、前述の半値幅が100nm以下であることにより、対象物の視認に必要な赤色光又は緑色光の間の光が吸収されることが抑制される傾向にある。
【0025】
本開示において半値幅とは半値全幅のことであり、吸収スペクトルにおいて極大吸収波長における吸光係数値(εg)の1/2の値にて引いた横軸に並行な直線と吸収ピークとにより形成される2つの交点の間の距離(nm)で表される。
【0026】
第1実施形態の光学材料は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、さらに、(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在することが好ましい。
これによって、第1実施形態の光学材料は、青色が抑制された自然な色調を有する。
本開示のメガネレンズでは、400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが1つのみ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。
上記の観点から、極大吸収波長bが、430nm~490nmの範囲内に存在することが好ましく、440nm~480nmの範囲内に存在することがより好ましい。
【0027】
前記極大吸収波長bにおける透過率は、3%~60%であることが好ましく、10%~55%であることがより好ましく、15%~50%であることがさらに好ましい。
【0028】
極大吸収波長bのピークの半値幅は、20nm~100nmであることが好ましく、30nm~90nmであることがより好ましく、40nm~80nmであることがさらに好ましい。
極大吸収波長bのピークの半値幅が20nm以上であることにより、560nm~610nmの補色領域の光を効果的に吸収できる。
極大吸収波長bのピークの半値幅が100nm以下であることにより、補色領域の光以外の光が吸収され、対象物の視認性が低下することを抑制できる。
【0029】
前記極大吸収波長bにおける透過率が3%~60%であり、前記極大吸収波長bのピークの半値幅が20nm~100nmであることも好ましい。
【0030】
第1実施形態の光学材料は、極大吸収波長bを極大吸収波長aの補色領域の波長とする観点から、極大吸収波長aと極大吸収波長bとの差が、100nm以上であることが好ましく、130nm以上であることがより好ましい。
第1実施形態の光学材料は、極大吸収波長bを極大吸収波長aの補色領域の波長とする観点から、極大吸収波長aと極大吸収波長bとの差が、200nm以下であることが好ましく、180nm以下であることがより好ましく、160nm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
第1実施形態の光学材料は、例えば、前記極大吸収波長aと前記極大吸収波長bとの差が、130nm~200nmであってもよい。
【0032】
第1実施形態の光学材料は、CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、(a*+b*1/2が10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
第1実施形態の光学材料は、CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、b*が-10~+10であることが好ましく、-9~+9であることがより好ましく、-8~+8であることがさらに好ましい。
【0033】
第1実施形態の光学材料は、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50であることが好ましい。
これによって、得られる光学材料において、青色が抑制された自然な色調を有することと、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することができることと、をバランスよく両立することができる。
上記の観点から、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.10~2.20であることがより好ましく、1.20~2.00であることがさらに好ましく、1.30~1.80であることが特に好ましい。
【0034】
560nm~610nmにおける吸収率の積分値は、1800%~2800%であってもよく、好ましくは2000%~2500%である。
400nm~520nmにおける吸収率の積分値は、2800%~4800%であってもよく、好ましくは3000%~4500%である。
【0035】
(第1の色素)
第1実施形態の光学材料は、極大吸収波長が560nm~610nmの範囲内に位置する第1の色素を含むことが好ましい。第1の色素は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0036】
第1の色素は、テトラアザポルフィリン系金属錯体化合物を含むことが好ましい。テトラアザポルフィリン系金属錯体化合物としては、テトラアザポルフィリン骨格及び金属原子を有する金属錯体化合物であれば特に限定されず、例えば、以下の一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0037】
【化1】

【0038】
一般式(1)中、A~Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のモノアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数6~20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6~20のアルキルチオ基又は炭素数6~20のアリールチオ基を表す。A及びA、A及びA、A及びA、並びにA及びAはそれぞれ独立に、芳香族環を除く環を形成してもよい。Mは、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、又は酸化金属原子を表す。
【0039】
~Aにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましく、フッ素原子又は臭素原子がより好ましい。
【0040】
~Aにおける炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基としては、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基などが挙げられる。
【0041】
~Aにおける直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基としては、ビニル基、1-メチルビニル基、プロペニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基等が挙げられる。
【0042】
~Aにおける直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、1、3-ブタジイニル基、2-ペンチニル基、2,4-ペンタジイニル基、2-ヘキシニル基、3,3-ジメチル-1-ブチニル基、3-ヘプチニル基、4-オクチニル基等が挙げられる。
【0043】
一般式(1)中、Mは2価の金属原子であることが好ましく、2価の銅であることがより好ましい。テトラアザポルフィリン系金属錯体化合物の具体例としては、以下の式(1a)で表されるテトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体が挙げられる。テトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体の市販品としては、PD-311S(山本化成株式会社製)が挙げられる。
【0044】
【化2】

【0045】
式(1a)中、Cuは2価の銅を表し、t-Cはターシャリーブチル基を表し、A及びAの一方、A及びAの一方、A及びAの一方、並びにA及びAの一方がt-Cである。
【0046】
第1実施形態の光学材料が第1の色素を含む場合、第1の色素の含有量は、5ppm~18ppmであることが好ましく、8ppm~15ppmであることがより好ましい。ここで、第1の色素は、テトラアザポルフィリン系金属錯体化合物と読み替えてもよい。
【0047】
第1実施形態の光学材料は、以下の(a)及び(b)の少なくとも一方を満たすことが好ましく、以下の(a)及び(b)の両方を満たすことがより好ましい。
(a)400nm以上500nm未満の範囲内に極大吸収波長を1つ以上有する。
(b)光学材料の厚さが2mmの場合、380nm以下の波長における光透過率が20%以下である。
【0048】
光学材料が上記(a)を満たすことにより、緑色光に光応答性を持つ視細胞の刺激量を減らすことができ、赤色をより鮮明に認識することが可能となる。さらに青色光吸収率に優れ、第1実施形態の光学材料を介してパーソナルコンピューター等の画面を長時間見た場合であっても眼精疲労等の悪影響を抑制できる。光学材料が上記(b)を満たすことにより、紫外光の透過を抑制できる。
【0049】
上記(a)について、420nm~495nmの範囲内に極大吸収波長を1つ以上有することが好ましく、440nm~490nmの範囲内に極大吸収波長を1つ以上有することがより好ましい。
【0050】
上記(b)について、光学材料の厚さが2mmの場合、380nm以下の波長における光透過率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、前述の「380nm以下」は、「400nm以下」と読み替えることが好ましく、「420nm以下」と読み替えることがより好ましい。
第1実施形態において、厚さが2mm以外の光学材料を用いて光透過率を測定し、測定した値を厚さ2mmの場合の光学材料の光透過率に換算してもよい。
【0051】
上記(b)について、光学材料の厚さが2mmの場合、280nm以上の波長における光透過率が20%以下であってもよく、10%以下であってもよく、5%以下であってもよい。
【0052】
第1実施形態の光学材料は、厚さが2mmの場合、EN ISO12312-1:2013に準じて測定されるスペクトルにおける380nm~500nmの青色光吸収率が15%~50%であることが好ましく、20%~50%であることがより好ましく、30%~50%であることがさらに好ましい。青色光吸収率が15%以上であることにより、ブルーライトが好適にカットされて眼精疲労等の悪影響を抑制できる傾向にある。青色光吸収率が50%以下であることにより、青色の視認性を保持し、視感透過率が下がりすぎず、視界が暗くなることを抑制できる。
【0053】
第1実施形態の光学材料は、ポルフィリン系化合物及びメロシアニン系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましく、ポルフィリン系化合物を含むことがより好ましい。光学材料がポルフィリン系化合物、メロシアニン系化合物等を含むことで、400nm以上500nm未満の範囲内の波長の光を好適に吸収する。ポルフィリン系化合物、メロシアニン系化合物等を、それぞれ独立に1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
ポルフィリン系化合物は、第1実施形態の光学材料に含まれる第2の色素となり得る。
【0054】
(第2の色素)
本開示のメガネレンズは、極大吸収波長が400nm~520nmの範囲内に位置する第2の色素を含むことが好ましい。第2の色素は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0055】
第2の色素は、ポルフィリン系化合物及びメロシアニン系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましく、ポルフィリン系化合物を含むことがより好ましい。
第2の色素が、ポルフィリン系化合物、メロシアニン系化合物等を含むことで、400nm以上500nm未満の範囲内の波長の光を好適に吸収する。
【0056】
ポルフィリン系化合物は、下記一般式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0057】
【化3】

【0058】
一般式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のモノアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数6~20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6~20のアルキルチオ基又は炭素数6~20のアリールチオ基を表す。R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、又は酸化金属原子を表す。
~Xの少なくとも1つは、水素原子以外であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基、又は、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基であることが好ましい。
【0059】
~Xにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましく、フッ素原子又は臭素原子がより好ましい。
【0060】
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐のアルキル基であることが好ましい。
【0061】
Mは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Mn、Mg、Mn(OH)、Mn(OH)、VO、又はTiOが好ましく、Ni,Pd又はVOがより好ましい。
【0062】
~Xにおける炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基、及び炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基の好ましい構成は、前述の一般式(1)におけるA~Aと同様である。
【0063】
~Rにおける炭素数1~8の直鎖若しくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基などが挙げられる。
【0064】
これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、又は2-エチルヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、又はn-オクチル基がより好ましい。
【0065】
第1実施形態の光学材料に用いられ得るポルフィリン系化合物は、それ自体公知の方法を参考にして製造することができる。例えば、OctabromotetraphenylporphyrinandItsMetalDerivatives(Inorg.Chem.1991,30,239-245)記載の方法で製造することができる。
また、一般式(2)で表される化合物は、例えば、ピロール化合物及びアルデヒド化合物を用い、酸触媒による脱水縮合反応及び酸化剤による酸化反応を経るローゼムント(Rothemund)反応により合成した化合物を得た後、当該化合物を金属又は金属塩(例えば、アセチルアセトン錯体、金属の酢酸塩)と溶媒中で反応させることにより製造することができる。ピロール化合物としては、一般式(B-1)~一般式(B-4)で表される化合物が挙げられ、アルデヒド化合物としては、一般式(C-1)~一般式(C-4)で表される化合物が挙げられる。酸触媒としては、プロピオン酸、ボロントリフルオリド・エチルエーテル錯体、トリフルオロ酢酸等が挙げられ、酸化剤としては、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン等が挙げられる。
【0066】
【化4】

【0067】
一般式(B-1)~一般式(B-4)及び一般式(C-1)~一般式(C-4)におけるX~X及びR~Rは、一般式(2)におけるX~X及びR~Rと同様である。
【0068】
一般式(2)で表される化合物は、1種であってもよく、2種以上の異性体からなる混合物であってもよい。
【0069】
第1実施形態の光学材料がポルフィリン系化合物を含む場合、ポルフィリン系化合物の含有量は、1.5ppm~16ppmであることが好ましく、2ppm~12ppmであることがより好ましい。
第1実施形態の光学材料がメロシアニン系化合物を含む場合、メロシアニン系化合物の含有量は、1.5ppm~14ppmであることが好ましく、2ppm~12ppmであることがより好ましい。
【0070】
第2の色素として、市販品としては、例えばUVY-0026(山本化成株式会社製)、UVY-1023(山本化成株式会社製)、FDB-001(山田化学工業株式会社製)、ABS 430(Luxottica社製)等を用いることができる。
【0071】
(高分子)
第1実施形態の光学材料は、高分子を含んでいることが好ましい。
第1実施形態において、高分子は、市販品等の高分子を用いてもよく、モノマー、当該モノマー等から得られる高分子を用いてもよい。
第1実施形態において、高分子は、特に限定されず使用することができ、透明性高分子であることが好ましい。
以下に、高分子、及び高分子を得るためのモノマーについて説明する。
【0072】
高分子としては、特に限定されず、例えば、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリアリル、ポリウレタンウレア、ポリエン-ポリチオール重合体、開環メタセシス重合体、ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられる。
高分子を1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0073】
光学材料は、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の高分子を含むことが好ましく、ポリチオウレタンを含むことがより好ましい。これらの高分子は、透明性が高い材料であり、光学材料用途に好適に用いることができる。
【0074】
ポリウレタンは、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位及びポリオール化合物由来の構成単位を含む。ポリチオウレタンは、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位及びポリチオール化合物由来の構成単位を含む。
【0075】
ポリイソシアネート化合物としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;2,5-ジイソシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物等を挙げることができ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0076】
ポリオール化合物は、1種以上の脂肪族又は脂環族アルコールであり、具体的には、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコール、脂環族アルコール、これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトンを付加させたアルコール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0077】
直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオ-ル、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)等が挙げられる。
【0078】
脂環族アルコールとしては、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、4,4’-ビシクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0079】
これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトンを付加させた化合物でもよい。例えば、グリセロールのエチレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加体、グリセロールのプロピレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加体、カプロラクトン変性グリセロール、カプロラクトン変性トリメチロールプロパン、カプロラクトン変性ペンタエリスリトール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0080】
ポリチオール化合物としては、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等を挙げることができ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0081】
ポリスルフィドは、モノマーである、ポリエピチオ化合物、ポリチエタン化合物等の開環重合による方法により得ることができる。光学材料用組成物には、これらの高分子を構成するモノマーを含むことができる。
【0082】
ポリエピチオ化合物としては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
ポリチエタン化合物としては、金属含有チエタン化合物又は非金属チエタン化合物を用いることができる。具体的には、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0083】
ポリカーボネートは、アルコールとホスゲンの反応、又はアルコールとクロロホーメートを反応させる方法、又は炭酸ジエステル化合物のエステル交換反応をすることにより得ることができるが、一般的に入手可能な市販品ポリカーボネート樹脂を用いることも可能である。市販品としては帝人化成株式会社製のパンライトシリーズなどを用いることができる。第1実施形態の光学材料用組成物には、ポリカーボネートを樹脂材料として含むことができる。
【0084】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0085】
ポリオレフィンとしては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載の具体例、環状ポリオレフィン、オレフィンの重合反応及びポリオレフィンの製造方法を用いることができる。
【0086】
ポリアリルは、公知のラジカル発生性の重合触媒の存在下に、アリル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種のアリル基含有モノマーを重合させることにより製造される。
アリル基含有モノマーとしては、アリルジグリコールカーボネートやジアリルフタレートが一般的に市販されており、これらは好適に使用することができる。
【0087】
ポリウレタンウレアは、ポリウレタンプレポリマー及びジアミン硬化剤による反応生成物であり、商標TRIVEXとしてPPGIndustries,Inc.から販売されているものが代表例である。ポリウレタンウレアは透明性の高い材料であり、好適に使用することができる。
【0088】
ポリエン-ポリチオール重合体は、1分子中に2個以上のエチレン性官能基を有するポリエン化合物と、1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物からなる付加重合並びにエチレン鎖状重合による高分子生成物である。
【0089】
ポリエン-ポリチオール重合体における、ポリエン化合物としては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0090】
開環メタセシス重合体は、触媒を用いて環状オレフィン類を開環重合させてなる高分子である。開環重合させることのできる環状オレフィン類としては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0091】
ポリエステルは、アンチモンやゲルマニウム化合物に代表されるルイス酸触媒、有機酸、無機酸などの公知のポリエステル製造触媒の存在下に縮合重合される。具体的には、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる1種又は2種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上とからなるもの、又はヒドロキシカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、又は環状エステルからなるものをいう。
【0092】
ジカルボン酸及びグリコールとしては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0093】
ポリエステルとしては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0094】
エポキシ樹脂はエポキシ化合物を開環重合してなる高分子であり、エポキシ化合物としては、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0095】
(添加剤)
第1実施形態の光学材料は、上記以外の他の成分として添加剤を含有してもよい。
上記添加剤として、重合触媒、内部離型剤、染料、紫外線吸収剤などを挙げることができる。第1実施形態において、ポリウレタン及びポリチオウレタンを得る際には、重合触媒を用いてもよく、用いなくてもよい。
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルが挙げられる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独又は2種類以上混合して使用することできる。
【0096】
紫外線吸収剤としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-5-tert-ブチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-2’,4’-ジクロロベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2,4-tert-ブチルフェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられるが、好ましくは2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノールや2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノールのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独でも2種以上を併用することもできる。
【0097】
紫外線吸収剤は、市販品を用いてもよい。上記市販品としては、例えば、Tinuvin326(BASFジャパン株式会社製)、Viosorb583(共同薬品株式会社製)等が挙げられる。
【0098】
第1実施形態の光学材料は、色調調整剤を含んでいてもよい。光学材料が色調調整剤を含む場合、色調調整剤の含有量は、3ppm~50ppmであってもよく、5ppm~40ppmであってもよい。
【0099】
色調調整剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、高分子を含む光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。色調調整剤としては、ブルーイング剤が挙げられる。ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂材料からなる光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。ブルーイング剤は、青色から紫色を示す物質を含んでいてもよい。
【0100】
(視感透過率)
第1実施形態の光学材料は、視認性の観点から、視感透過率が65%以上であることが好ましく、68%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
視感透過率は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ製CM-5)を用いて、厚さ2mmの光学材料を用いて測定することができる。
【0101】
<光学材料用組成物>
光学材料は、例えば、以下に説明する光学材料用組成物を用いて製造することができる。
光学材料用組成物は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在する第1の色素を含み、前記光学材料用組成物を硬化して得られる光学材料が、D65光源を使用することで前述の式(1)及び(2)から求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Gが0以上10以下を満たす。
光学材料用組成物は、前述の高分子又は前述のモノマーを含んでいてもよく、前述の第2の色素となり得るポルフィリン化合物を含んでいてもよく、紫外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0102】
色素の含有量は、前述の高分子及び前述のモノマーの合計100質量部に対して0.0001質量部~0.008質量部が好ましく、0.0001質量部~0.006質量部がより好ましく、0.0002質量部~0.004質量部がさらに好ましい。
色素の含有量は、光学材料用組成物に含まれるすべての色素の合計含有量を意味する。
【0103】
第1実施形態において、光学材料用組成物は、上記の成分を所定の方法で混合することにより得ることができる。
組成物中の各成分の混合順序、混合方法等は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。公知の方法としては、例えば、添加物を所定量含むマスターバッチを作製して、このマスターバッチを溶媒に分散し、溶解させる方法などがある。例えばポリウレタン樹脂の場合、ポリイソシアネート化合物に添加物を分散し、溶解させてマスターバッチを作製する方法などがある。
【0104】
<光学材料の態様>
第1実施形態の光学材料の態様としては、基材からなる光学材料、基材とコーティング層とからなる光学材料等が挙げられる。
上記基材としては、例えばレンズ基材が挙げられる。
【0105】
コーティング層としては、例えば、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0106】
例えば、色素を含まない光学材料用組成物を用いて成形体(例えば、レンズ基材)を調製し、次いで、色素を水又は溶媒中に分散させて得られた分散液に成形体を浸漬して色素を成形体中に含浸させ、色素を含浸させた成形体を乾燥してもよい。このようにして得られた、成形体を用いて光学材料を調製することができる。
【0107】
また、光学材料を調製した後に、ポルフィリン系化合物を光学材料に含浸させることもできる。その他、レンズ基材と、必要に応じて積層されるコーティング層とを備える眼鏡レンズを、色素を含む分散液に浸漬し、当該レンズに色素を含浸させることもできる。
【0108】
色素の含浸量は、分散液中の色素の濃度と、分散液の温度、成形体、光学材料等を浸漬させる時間により所望の含浸量に調整してもよい。濃度を高く、温度を高く、浸漬時間を長くするほどに含浸量が増す。含浸量をより精密に調整する場合は、含浸量が少ない条件で、複数回浸漬を繰り返すことにより実施してもよい。
また、色素を含む光学材料用組成物をコーティング材料として用い、プラスチックレンズなどの光学材料上に色素含有コーティング層を形成してもよい。
【0109】
このような構成を有する光学材料は、レンズ、好ましくは眼鏡レンズとして好適に用いることができる。
なお、第1実施形態は前述の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を損なわない範囲で様々な態様を取り得ることができる。
【0110】
<光学材料の用途>
第1実施形態の光学材料の用途としては、
眼鏡レンズ、ゴーグル、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズ、ウェアラブルデバイス用レンズなどのレンズ;
発光ダイオード(LED)用封止材;光導波路;光学レンズ;光導波路等の接合に用いる光学用接着剤;光学レンズなどに用いる反射防止膜;液晶表示装置部材(基板、導光板、フィルム、シートなど)に用いる透明性コーティング;車のフロントガラス、バイクのヘルメット等に用いる風防;透明性基板;照明器具のカバー、照明器具の照射面等に貼り付けるフィルム;
等を挙げることができる。
第1実施形態の光学材料は、紫外線吸収剤を含むことができるため、上記の中でもレンズが好ましい。
【0111】
(レンズ)
第1実施形態のレンズは、前述の第1実施形態の光学材料を含む。第1実施形態のレンズは、光学材料からなるレンズ基材を備えるレンズであってもよく、当該レンズ基材の片面又は両面にコーティング層を備えていてもよい。第1実施形態のレンズは、前述の光学材料の用途にて例示した各種レンズのいずれかであってもよい。
【0112】
コーティング層としては、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0113】
これらのコーティング層は、第1実施形態において用いられる色素、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等、染料、顔料等、フォトクロミック染料、フォトクロミック顔料等、帯電防止剤、その他のレンズの性能を高めるための公知の添加剤等を含んでいてもよい。
塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0114】
プライマー層は通常、後述するハードコート層とレンズ基材との間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズ基材との密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層は、得られたレンズ基材に対する密着性の高いものであればよく、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物がプライマー層の形成に用いられる。プライマー組成物の調製では、組成物の粘度を調整する目的でレンズ基材に影響を及ぼさない溶媒を用いてもよく、溶媒を用いなくてもよい。
【0115】
塗布法、乾式法のいずれの方法によってもプライマー層を形成することができる。塗布法を用いる場合、プライマー組成物を、スピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法でレンズ基材に塗布した後、固化することによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法、真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズ基材の表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理が行われていてもよい。
【0116】
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能等を付与することを目的としたコーティング層である。
ハードコート層の形成には、硬化性を有する有機ケイ素化合物と、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる元素を含む酸化物微粒子の1種以上と、を含むハードコート組成物が使用されてもよく、
硬化性を有する有機ケイ素化合物と、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる2種以上の元素を含む複合酸化物の微粒子の1種以上と、を含むハードコート組成物が使用されてもよい。
【0117】
ハードコート組成物は、上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物及び多官能性エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
ハードコート組成物は、レンズ基材に影響を及ぼさない溶媒を含んでいてもよく、溶媒を含んでいなくてもよい。
【0118】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、紫外線、可視光線等のエネルギー線照射、熱硬化などが挙げられる。干渉縞の発生を抑制する観点から、ハードコート層の屈折率は、レンズ基材との屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0119】
反射防止層には無機系及び有機系がある。
無機系の反射防止層は、SiO、TiO等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ-ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。
有機系の反射防止層は、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
反射防止層は、必要に応じてハードコート層の上に形成されてもよい。
【0120】
反射防止層は多層であっても単層であってもよい。
効果的に反射防止機能を発現する観点から、反射防止層は多層であることが好ましく、その場合、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層することが好ましい。また、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。
高屈折率層としては、ZnO、TiO、CeO、Sb2O、SnO、ZrO、Ta等の層があり、低屈折率層としては、SiO等の層が挙げられる。
単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。
【0121】
反射防止層の上には、必要に応じて防曇コート層、防汚染層、撥水層等が形成されていてもよい。防曇層、防汚染層、撥水層等を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適用することができる。
【0122】
(ウェアラブルデバイス)
第1実施形態のウェアラブルデバイスは、ウェアラブルデバイスに用いるためのレンズを備える。第1実施形態のウェアラブルデバイスは、例えば、コンピュータゲーム等に用いられるウェアラブルデバイス、仮想現実(VR:Virtual Reality)、拡張現実(AR:Augmented Reality)等を実現したウェアラブルデバイスなどであってもよい。第1実施形態のレンズを備えるウェアラブルデバイスは、画像が高速で処理されるコンピュータゲーム等に用いられた場合であっても、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することが可能となり、例えば、e-スポーツのようなコンピュータゲームによる電子競技にも適している。
【0123】
≪アイウェア≫
第1実施形態のアイウェアは、対物側の光学部材、及び、対物側の光学部材と対向する対眼側の光学部材の少なくとも2つの光学部材を含んでもよいアイウェアであって、
前記対物側の光学部材における対物側の最表面と前記対眼側の光学部材における対眼側の最表面との間で、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、
(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、
(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在し、
前記極大吸収波長aのピークの積分値に対する前記極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である。
【0124】
第1実施形態のアイウェアは、上記の構成を含むことで、青色が抑制された自然な色調を有し、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することができる。
【0125】
第1実施形態の光学材料は、第1実施形態のアイウェアにおける光学部材として用いることができる。また、第1実施形態の光学材料の好ましい態様は、第1実施形態のアイウェアにおける光学部材の好ましい態様として用いることができる。
例えば、上述の式(1)、式(2)、式(3)等から求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータの範囲についても、第1実施形態のアイウェアにおける光学部材に適用することができる。
【0126】
第1実施形態のアイウェアは、対物側の光学部材、及び、対物側の光学部材と対向する対眼側の光学部材の少なくとも2つの光学部材を含んでもよい。
第1実施形態のアイウェアは、対物側の光学部材における対物側の最表面と対眼側の光学部材における対眼側の最表面との間で、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、上記(A)及び上記(B)を満たし、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が1.00~2.50であるものであれば、特に制限はない。
【0127】
対物側の光学部材、及び、対物側の光学部材と対向する対眼側の光学部材の少なくとも2つの光学部材を含むアイウェアとしては、例えば、クリップオンタイプのメガネ、オーバーグラスを備えるメガネ等が挙げられる。
【0128】
第1実施形態のアイウェアは、1つの光学部材を含んでもよい。
1つの光学部材を含むアイウェアとしては、例えば、レンズが染色されたメガネ等があげられる。
【0129】
光学部材としては、例えば、レンズ、フィルタ、ゴーグル、鏡、ヘルメット用バイザー、LED(light emitting diode)スクリーン、コンピュータスクリーン、フロントガラス等が挙げられる。
【0130】
〔第2実施形態〕
≪メガネレンズ≫
第2実施形態のメガネレンズは、機能層を含み、前記機能層は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在し、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である。
【0131】
第2実施形態のメガネレンズを介して対象物を視認する際に対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することができる。この理由としては、以下のように推測される。まず、560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長が存在することにより、波長域が赤色光と緑色光との間に位置する光がメガネレンズに吸収されやすくなる。これにより、メガネレンズにて波長域が赤色光と緑色光との間に位置する光の透過率が低下し、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識しやすくなる。
ここで、波長域が赤色光と緑色光との間に位置する光がメガネレンズに吸収されやすくなる場合、つまり、560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長が存在する場合には、レンズの色が青色となることで外観が不自然になる場合がある。
そこで、本発明者らは、赤色光と緑色光との間の色(例えば黄色領域)に対する補色である青色領域(つまり波長400nm~520nm)の光について、透過率を低下させることを検討した。
第2実施形態のメガネレンズは、400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在することで青色領域の光の透過率を低下させることができる。
また、第2実施形態のメガネレンズは、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である。
以上により、上記各構成を含む第2実施形態のメガネレンズは、青色が抑制された自然な色調を有し、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することができる。
【0132】
<機能層>
第2実施形態のメガネレンズは、機能層を含み、機能層は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在し、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である。
第2実施形態のメガネレンズでは、560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが1つのみ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。
第2実施形態のメガネレンズでは、400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが1つのみ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。
【0133】
機能層は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在する。
これによって、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することができる。
上記の観点から、極大吸収波長aが、570nm~600nmの範囲内に存在することが好ましく、580nm~595nmの範囲内に存在することがより好ましい。
【0134】
前記極大吸収波長aにおける透過率は、5%~50%であることが好ましく、10%~40%であることがより好ましく、20%~40%であることがさらに好ましい。
【0135】
極大吸収波長aのピークの半値幅は、10nm~70nmであることが好ましく、10nm~50nmであることがより好ましく、20nm~40nmであることがさらに好ましい。
極大吸収波長aのピークの半値幅が10nm以上であることにより、赤色光と緑色光との間に位置する光が広波長域にて吸収される傾向にある。
極大吸収波長aのピークの半値幅が70nm以下であることにより、対象物の視認に必要な赤色光又は緑色光の間の光が吸収されることが抑制される傾向にある。
【0136】
第2実施形態において、半値幅とは半値全幅のことであり、吸収スペクトルにおいて極大吸収波長における吸光係数値(εg)の1/2の値にて引いた横軸に並行な直線と吸収ピークとにより形成される2つの交点の間の距離(nm)で表される。
【0137】
機能層は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在する。
これによって、第2実施形態のメガネレンズは、青色が抑制された自然な色調を有する。
上記の観点から、極大吸収波長bが、430nm~490nmの範囲内に存在することが好ましく、440nm~480nmの範囲内に存在することがより好ましい。
【0138】
前記極大吸収波長bにおける透過率は、3%~60%であることが好ましく、10%~55%であることがより好ましく、15%~50%であることがさらに好ましい。
【0139】
極大吸収波長bのピークの半値幅は、20nm~100nmであることが好ましく、30nm~90nmであることがより好ましく、40nm~80nmであることがさらに好ましい。
極大吸収波長bのピークの半値幅が20nm以上であることにより、560nm~610nmの補色領域の光を効果的に吸収できる。
極大吸収波長bのピークの半値幅が100nm以下であることにより、補色領域の光以外の光が吸収され、対象物の視認性が低下することを抑制できる。
【0140】
前記極大吸収波長bにおける透過率が3%~60%であり、前記極大吸収波長bのピークの半値幅が20nm~100nmであることも好ましい。
【0141】
機能層は、極大吸収波長bを極大吸収波長aの補色領域の波長とする観点から、極大吸収波長aと極大吸収波長bとの差が、100nm~200nmであることが好ましく、100nm~180nmであることがより好ましく、100nm~160nmであることがさらに好ましい。
【0142】
第2実施形態のメガネレンズは、CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、(a*+b*1/2が10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
第2実施形態のメガネレンズは、CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、b*が-10~+10であることが好ましく、-9~+9であることがより好ましく、-8~+8であることがさらに好ましい。
【0143】
第2実施形態のメガネレンズは、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である。
これによって、得られるメガネレンズにおいて、青色が抑制された自然な色調を有することと、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することができることと、をバランスよく両立することができる。
上記の観点から、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.10~2.20であることが好ましく、1.20~2.00であることがより好ましく、1.30~1.80であることがさらに好ましい。
【0144】
560nm~610nmにおける吸収率の積分値は、1800%~2800%であってもよく、好ましくは2000%~2500%である。
400nm~520nmにおける吸収率の積分値は、2800%~4800%であってもよく、好ましくは3000%~4500%である。
【0145】
下記式(1)によって求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Gが0以上10以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のメガネレンズ。
ΔC*R-G=ΔE*R-G-ΔE*R-G(w0)・・・(1)
ΔE*=(ΔL*+Δa*+Δb*1/2・・・(2)
(式(1)中、ΔE*R-Gは、メガネレンズについて、D65光源を使用して式(2)によって求められる赤色と緑色との色差を表し、
ΔE*R-G(w0)は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むイソシアネート組成物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むチオール組成物1、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含むチオール組成物2からなり、前記2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量が1.5質量%であり、チオール組成物1に対するチオール組成物2の質量比が1.07であり、イソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基に対するチオール組成物1及びチオール組成物2に含まれるチオール基の合計のモル比が0.86である硬化性組成物を加熱硬化してなる比較光学材料について、D65光源を使用して式(2)によって求められる赤色と緑色との色差を表す。
式(2)中、ΔL*は明度差を表し、Δaは赤緑方向の色度差を表し、Δbは青黄方向の色度差を表す。)
【0146】
第2実施形態のメガネレンズにて、ΔC*R-Gが0以上であることにより、比較光学材料に対して赤色と緑色との色差が一定以上大きくなるため、対象物の赤色及び緑色をより鮮明に認識できる。
ΔC*R-Gが10以下であることにより、赤色と緑色との色差が大きくなりすぎず、その結果、メガネレンズを介して対象物を視認する際に明るさが損なわれることなく、赤色及び緑色を鮮明に認識することができる。
【0147】
CIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Gは、対象物の赤色及び緑色をより鮮明に認識しやすくなる観点から、3以上9以下であることが好ましく、3.5以上9以下であることがより好ましく、3.7以上8.5以下であることがさらに好ましく、4以上8以下であることが特に好ましい。
【0148】
ΔC*R-Gは、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0149】
第2実施形態のメガネレンズでは、例えば、メガネレンズに含まれる色素の種類、量、組み合わせ等、メガネレンズに必要に応じて含まれる紫外線吸収剤等の添加剤の種類、量、組み合わせ等、メガネレンズに必要に応じて含まれる高分子の種類、量、組み合わせ等を適宜調整することで上述のΔC*R-Gを調整し得る。
【0150】
第2実施形態のメガネレンズの厚さは、特に限定されず、例えば0.5mm~10mmであってもよく、1mm~5mmであってもよく、1.5mm~3mmであってもよい。一例として、第2実施形態のメガネレンズの厚さは、2mmであってもよい。
第2実施形態において、メガネレンズの厚さは、最大厚さを意味する。
【0151】
(第1の色素)
第2実施形態のメガネレンズは、極大吸収波長が560nm~610nmの範囲内に位置する第1の色素を含むことが好ましい。第1の色素は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
第2実施形態における第1の色素の具体的態様、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細は、第1実施形態における第1の色素の具体的態様、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細と同様である。
【0152】
(第2の色素)
第2実施形態のメガネレンズは、極大吸収波長が400nm~520nmの範囲内に位置する第2の色素を含むことが好ましい。第2の色素は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
第2実施形態における第2の色素の具体的態様、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細は、第1実施形態における第2の色素の具体的態様、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細と同様である。
【0153】
(高分子)
第2実施形態における機能層は、高分子を含んでいることが好ましい。
第2実施形態における高分子の具体的態様、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細は、第1実施形態における高分子の具体的態様、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細と同様である。
【0154】
(添加剤)
第2実施形態のメガネレンズは、上記以外の他の成分として添加剤を含有してもよい。
上記添加剤として、重合触媒、内部離型剤、染料、紫外線吸収剤などを挙げることができる。第2実施形態において、ポリウレタン及びポリチオウレタンを得る際には、重合触媒を用いてもよく、用いなくてもよい。
第2実施形態における重合触媒、内部離型剤、染料、紫外線吸収剤などの各添加剤の具体的態様、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細は、第1実施形態における重合触媒、内部離型剤、染料、紫外線吸収剤などの各添加剤の具体的態様、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細と同様である。
【0155】
第2実施形態のメガネレンズは、色調調整剤を含んでいてもよいが、必ずしも含むことを要しない。
上述の通り、第2実施形態のメガネレンズは、色調調整剤を含まなくても青色が抑制された自然な色調を有する。そのため、色調調整剤を含むことを要しない。
【0156】
色調調整剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、高分子を含むメガネレンズの色相を調整する機能を有するものを用いてもよい。
色調調整剤としては、ブルーイング剤を用いてもよい。ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂材料からなるメガネレンズの色相を調整する機能を有するものを用いてもよい。ブルーイング剤は、青色から紫色を示す物質を含んでいてもよい。
【0157】
第2実施形態のメガネレンズは、色調調整剤を含まなくても青色が抑制された自然な色調を有するが、色調調整剤を含んでいてもよい。メガネレンズが色調調整剤を含む場合、色調調整剤の含有量が比較的少量であってもよい。
第2実施形態のメガネレンズが色調調整剤を含む場合に、例えば、色調調整剤の含有量は、5ppm以下であってもよく、3ppm以下であってもよい。
また、第2実施形態のメガネレンズが色調調整剤の含有量の下限としては特に制限はない。例えば、色調調整剤の含有量は、0ppm以上であってもよく、0ppm超であってもよい。
【0158】
(視感透過率)
第2実施形態のメガネレンズは、視認性の観点から、視感透過率が65%以上であることが好ましく、68%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
視感透過率は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ製CM-5)を用いて、厚さ2mmのメガネレンズを用いて測定することができる。
【0159】
<メガネレンズ用組成物>
メガネレンズは、例えば、以下に説明するメガネレンズ用組成物を用いて製造することができる。
メガネレンズ用組成物は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在する第1の色素と、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在する第2の色素と、を含み、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である。
【0160】
メガネレンズ用組成物は、上述の高分子又は上述のモノマーを含んでいてもよく、紫外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0161】
第2実施形態における色素の好ましい含有量は、第1実施形態における色素の好ましい含有量と同様である。
【0162】
第2実施形態における混合方法等のメガネレンズ用組成物の製造方法の詳細は、第1実施形態における混合方法等のメガネレンズ用組成物の製造方法の詳細と同様である。
【0163】
<メガネレンズの態様>
第2実施形態のメガネレンズの態様としては、機能層からなるメガネレンズ、機能層とコーティング層とからなるメガネレンズ等が挙げられる。
【0164】
第2実施形態におけるコーティング層の具体的態様、製造方法、コーティング層に含まれてもよい添加剤の種類、色素の好ましい含有量等の詳細は、第1実施形態におけるコーティング層の具体的態様、製造方法、コーティング層に含まれてもよい添加剤の種類、色素の好ましい含有量等の詳細と同様である。
【0165】
第2実施形態のメガネレンズは、さらに、表面に反射防止層を含むことが好ましい。
第2実施形態における反射防止層の具体的態様、好ましい態様、製造方法等の詳細は、第1実施形態における反射防止層の具体的態様、好ましい態様、製造方法等の詳細と同様である。
【0166】
プライマー層は通常、ハードコート層とレンズ基材との間に形成される。
第2実施形態におけるプライマー層の具体的態様、好ましい態様、製造方法等の詳細は、第1実施形態におけるプライマー層の具体的態様、好ましい態様、製造方法等の詳細と同様である。
【0167】
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能等を付与することを目的としたコーティング層である。
第2実施形態におけるハードコート層の具体的態様、好ましい態様、製造方法等の詳細は、第1実施形態におけるハードコート層の具体的態様、好ましい態様、製造方法等の詳細と同様である。
【0168】
≪アイウェア≫
第2実施形態のアイウェアは、対物側の光学部材、及び、対物側の光学部材と対向する対眼側の光学部材の少なくとも2つの光学部材を含んでもよいアイウェアであって、
前記対物側の光学部材における対物側の最表面と前記対眼側の光学部材における対眼側の最表面との間で、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、
(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、
(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在し、
前記極大吸収波長aのピークの積分値に対する前記極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50である。
第2実施形態におけるアイウェアの具体的態様、好ましい態様等の詳細は、第1実施形態におけるアイウェアの具体的態様、好ましい態様等の詳細と同様である。
【0169】
第2実施形態には、以下の態様が含まれる。
<2-1> 機能層を含み、前記機能層は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在し、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50であるメガネレンズ。
<2-2> 極大吸収波長aと極大吸収波長bとの差が、100nm~200nmである<2-1>に記載のメガネレンズ。
<2-3> CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、(a*+b*1/2が10以下である<2-1>又は<2-2>に記載のメガネレンズ。
<2-4> 下記式(1)によって求められるCIE1976(L*,a*,b*)表色系の色差パラメータΔC*R-Gが0以上10以下である<2-1>~<2-3>のいずれか1つに記載のメガネレンズ。
ΔC*R-G=ΔE*R-G-ΔE*R-G(w0)・・・(1)
ΔE*=(ΔL*+Δa*+Δb*1/2・・・(2)
(式(1)中、ΔE*R-Gは、メガネレンズについて、D65光源を使用して式(2)によって求められる赤色と緑色との色差を表し、
ΔE*R-G(w0)は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むイソシアネート組成物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むチオール組成物1、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含むチオール組成物2からなり、前記2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量が1.5質量%であり、チオール組成物1に対するチオール組成物2の質量比が1.07であり、イソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基に対するチオール組成物1及びチオール組成物2に含まれるチオール基の合計のモル比が0.86である硬化性組成物を加熱硬化してなる比較光学材料について、D65光源を使用して式(2)によって求められる赤色と緑色との色差を表す。
式(2)中、ΔL*は明度差を表し、Δa*は赤緑方向の色度差を表し、Δb*は青黄方向の色度差を表す。)
<2-5> 前記極大吸収波長bが430nm~490nmである<2-1>~<2-4>のいずれか1つに記載のメガネレンズ。
<2-6> 前記極大吸収波長bにおける透過率が3%~60%であり、前記極大吸収波長bのピークの半値幅が20nm~100nmである<2-1>~<2-5>のいずれか1つに記載のメガネレンズ。
<2-7> 前記極大吸収波長aにおける透過率が5%~50%であり、前記極大吸収波長aのピークの半値幅が10nm~70nmである<2-1>~<2-6>のいずれか1つに記載のメガネレンズ。
<2-8> 前記機能層が、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、及びポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の高分子を含む<2-1>~<2-7>のいずれか1つに記載のメガネレンズ。
<2-9> さらに、表面に反射防止層を含む<2-1>~<2-8>のいずれか1つに記載のメガネレンズ。
<2-10> 対物側の光学部材、及び、対物側の光学部材と対向する対眼側の光学部材の少なくとも2つの光学部材を含んでもよいアイウェアであって、
前記対物側の光学部材における対物側の最表面と前記対眼側の光学部材における対眼側の最表面との間で、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、
(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、
(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在し、
前記極大吸収波長aのピークの積分値に対する前記極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50であるアイウェア。
【実施例
【0170】
以下、第1実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、第1実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0171】
[実施例1]
(レンズの作製)
十分に乾燥させたフラスコにジメチル錫(II)ジクロリド0.020g、MR用内部離型剤(三井化学株式会社製)0.10g、Viosorb 583(共同薬品株式会社製、紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)1.50g、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物46.8gを仕込んで混合液(1)を作製した。
【0172】
次いで、UVY-0026(山本化成株式会社製、一般式(2)においてX~Xは臭素原子、R~Rは水素原子、MはPdであるポルフィリン化合物)0.050gと、PD-311S(山本化成株式会社製、テトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体、上記式(1a)で表される化合物)0.050gとを、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gにそれぞれ溶解させ、UVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)、及びPD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)を作製した。
【0173】
マスターバッチ(1)1.54g及びマスターバッチ(2)2.26gを上記混合液(1)に添加して混合液(2)とした。混合液(2)を25℃で1時間攪拌して各成分を完全に溶解させ調合液とした。その後、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含む組成物23.9g、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含む組成物25.5gをこの調合液に仕込み、得られた液体を25℃で30分攪拌し、均一溶液を作製した。
【0174】
この溶液に対し400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタにて濾過を行った後、中心厚さ2mm、直径77mmである4Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。
【0175】
このガラスモールドを25℃から120℃まで、21時間かけて昇温した。その後、室温まで冷却させて、プラノーレンズをガラスモールドから外した。得られたプラノーレンズに対し、さらに120℃で2時間アニールを行った。これにより、実施例1のレンズを作製した。
【0176】
(標準レンズの作製)
十分に乾燥させたフラスコにジメチル錫(II)ジクロリド0.020g、MR用内部離型剤(三井化学株式会社製)0.10g、Viosorb 583(共同薬品株式会社製、紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)1.50g、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物50.6gを仕込んで混合液を作製した。ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含む組成物23.9g、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含む組成物25.5gをこの混合液に仕込み、得られた液体を25℃で30分攪拌し、均一溶液とした。
【0177】
この溶液に対し400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルタにて濾過を行った後、中心厚さ2mm、直径77mmである4Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。
【0178】
このガラスモールドを25℃から120℃まで、21時間かけて昇温した。その後、室温まで冷却させて、プラノーレンズをガラスモールドから外した。得られたプラノーレンズをさらに120℃で2時間アニールを行った。これにより、標準レンズを作製した。
【0179】
[実施例2、3、比較例6]
実施例1に対してUVY-0026の含有量を表1の通り変更した以外、あるいは、実施例1に対して各色素の含有量を表4の通り変更した以外は、実施例1と同様にしてレンズを作製した。
【0180】
[実施例4]
実施例1にてViosorb 583 1.50gの替わりにTinuvin326(BASFジャパン株式会社製、紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)1.0g使用し、UVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)を使用せず、PD-311Sの含有量を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして実施例4のレンズを作製した。
【0181】
[実施例5、6]
実施例4に対してPD-311Sの含有量を表1の通り変更した以外は実施例4と同様にしてレンズを作製した。
【0182】
[実施例7]
実施例1にてUVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)の替わりにUVY-1023(山本化成株式会社製、一般式(2)においてX~Xは3,3-ジメチル-1-ブチニル基、R~Rは水素原子、MはPdであるポルフィリン化合物)を、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(3)を使用し、PD-311Sの含有量を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして実施例7のレンズを作製した。
【0183】
[実施例8]
実施例7に対して各色素の含有量を表1の通りに変更した以外は実施例7と同様にして実施例8のレンズを作製した。
【0184】
[実施例9]
実施例1に対してUVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)を使用せず、PD-311Sの含有量を表2の通りに変更した以外は実施例1と同様にして実施例9のレンズを作製した。
【0185】
[実施例10]
実施例1に対してUVY-1023を溶解させたマスターバッチ(3)を追加で添加し、各色素の含有量を表2の通りに変更した以外は実施例1と同様にして実施例10のレンズを作製した。
【0186】
[実施例11]
実施例1に対してUVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)の替わりにFDB-001(山田化学工業株式会社製、銅ポルフィリン錯体)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(4)を使用し、各色素の含有量を表2の通りに変更した以外は実施例1と同様にして実施例11のレンズを作製した。
【0187】
[実施例12]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにFDB-002(山田化学工業株式会社製、バナジウムポルフィリン錯体)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(5)を使用した以外は実施例11と同様にして実施例12のレンズを作製した。
【0188】
[実施例13]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにFDB-003(山田化学工業株式会社製、メロシアニン色素)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(6)を使用し、各色素の含有量を表2の通りに変更した以外は実施例11と同様にして実施例13のレンズを作製した。
【0189】
[実施例14]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにFDB-004(山田化学工業株式会社製、油溶性染料)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(7)を使用した以外は実施例11と同様にして実施例14のレンズを作製した。
【0190】
[実施例15]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにFDB-006(山田化学工業株式会社製、メロシアニン色素)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(8)を使用した以外は実施例11と同様にして実施例15のレンズを作製した。
【0191】
[実施例16]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにABS 425(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(9)を使用した以外は実施例11と同様にして実施例16のレンズを作製した。
【0192】
[実施例17]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにABS 430(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(10)を使用した以外は実施例11と同様にして実施例17のレンズを作製した。
【0193】
[実施例18]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにABS 439(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(11)を使用した以外は実施例11と同様にして実施例18のレンズを作製した。
【0194】
[実施例19]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにABS 462(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(12)を使用した以外は実施例11と同様にして実施例19のレンズを作製した。
【0195】
[実施例20]
実施例11に対してFDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりにABS 473(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(13)を使用し、各色素の含有量を表3の通りに変更した以外は実施例11と同様にして実施例20のレンズを作製した。
【0196】
[実施例21]
実施例1に対してPD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)の替わりにABS 574(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(14)を使用し、各色素の含有量を表3の通りに変更した以外は実施例1と同様にして実施例21のレンズを作製した。
【0197】
[実施例22]
実施例21に対してABS 574を溶解させたマスターバッチ(14)の替わりにABS 584(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(15)を使用した以外は実施例21と同様にして実施例22のレンズを作製した。
【0198】
[実施例23]
実施例21に対してABS 574を溶解させたマスターバッチ(14)の替わりにABS 594(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(16)を使用した以外は実施例21と同様にして実施例23のレンズを作製した。
【0199】
[比較例1]
実施例1にて作製した標準レンズを比較例1のレンズとした。
【0200】
[比較例2]
比較例1にてViosorb 583 1.50gの替わりにTinuvin326 1.0g使用した以外は比較例1と同様にして比較例2のレンズを作製した。
【0201】
[比較例3]
実施例1に対してPD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)の替わりにFDG-003(山田化学工業株式会社、メロシアニン色素)を、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(17)を使用し、各色素の含有量を表4の通りに変更した以外は実施例1と同様にして比較例3のレンズを作製した。
【0202】
[比較例4]
実施例1にて、UVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)の替わりにUVY-1023を溶解させたマスターバッチ(3)を使用し、PD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)を使用せず、色素の含有量を表4の通りに変更した以外は実施例1と同様にして比較例4のレンズを作製した。
【0203】
[比較例5]
実施例1にてPD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)を使用せず、色素の含有量を表4の通りに変更した以外は実施例1と同様にして比較例5のレンズを作製した。
【0204】
(色差評価;CIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*,a*及びb*の測定)
測定機器として分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社製)を使用した。下記マンセル色標1~3のいずれか1つをD65光源下で、厚さ2mmである各実施例及び各比較例のレンズ、並びに厚さ2mmである標準レンズを上記いずれかのマンセル色標と測定部との間に配置した。そして、各色標についてCIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*(L*赤、L*緑、L*青),a*(a*赤、a*緑、a*青)及びb*(b*赤、b*緑、b*青)をそれぞれ測定した。前述のようにして求めたL*、a*及びb*を用い、以下の式(2A)及び式(2B)に基づいてΔE*R-G、ΔE*R-G(w0)、ΔE*R-B及びΔE*R-B(w0)をそれぞれ求め、式(1)及び式(3)に基づいてΔC*R-G及びΔC*R-Bを求めた。
マンセル色標1;マンセル表色系の赤(4.5R4/13)
マンセル色標2;マンセル表色系の緑(4.5G5/8)
マンセル色標3;マンセル表色系の青(3PB3/11)
ΔC*R-G=ΔE*R-G-ΔE*R-G(w0)・・・(1)
ΔE*R-G=[(L*赤-L*緑)+(a*赤-a*緑)+(b*赤-b*緑)1/2・・・(2A)
ΔE*R-B=[(L*赤-L*青)+(a*赤-a*青)+(b*赤-b*青)1/2・・・(2B)
ΔC*R-B=ΔE*R-B-ΔE*R-B(w0)・・・(3)
【0205】
(ブルーライトカット率)
紫外可視分光光度計 UV―1800(株式会社島津製作所製)及び厚さ2mmである各実施例及び各比較例のレンズを用いて、EN ISO12312-1:2013に準拠して測定されるスペクトルにおける380nm~500nmの青色光吸収率(以下の式で示されるブルーライトカット率)を求めた。
以下の評価基準に基づいてブルーライトカット率の評価を行った。
-評価基準-
A:ブルーライトカット率が30%以上であった。
B:ブルーライトカット率が20%以上30%未満であった。
C:ブルーライトカット率が15%以上20%未満であった。
D:ブルーライトカット率が15%未満であった。
【0206】
【数1】

【0207】
(半値幅)
紫外可視分光光度計 UV―1800(株式会社島津製作所製)及び厚さ2mmである各実施例及び各比較例のレンズを用いて、透過率曲線を測定し、極大吸収波長、極大吸収波長での透過率、ISO 8980-3:2013に準拠した視感透過率、及び極大吸収波長aの吸収ピークの半値幅をそれぞれ求めた。
実施例1~8のレンズにおける透過率曲線を図1に示し、実施例9~15のレンズにおける透過率曲線を図2に示し、実施例16~23のレンズにおける透過率曲線を図3に示し、比較例1~6のレンズにおける透過率曲線を図4に示す。
【0208】
(くっきり度の評価)
各実施例及び各比較例のレンズをパーソナルコンピューター(PC)画面の前に配置し、PC画面に表示された画像を各実施例及び各比較例のレンズを通してそれぞれ視認した際の見え方の変化について、以下の評価基準に基づいてくっきり度の評価を行った。
-評価基準-
A PC画面に表示された画像をレンズを通さずに視認した場合と比較して、より鮮やか又はよりくっきり見えた。
B PC画面に表示された画像をレンズを通さずに視認した場合と見え方が変わらなかった。
C PC画面に表示された画像をレンズを通さずに視認した場合と比較して、色調が不自然であった、見え方が暗くなった、あるいは、見えにくくなった。
【0209】
各実施例及び各比較例のレンズを用いたときの評価結果について以下の表1~表4に示す。なお、表1及び表2中にて、「-」は該当成分が含まれていないこと、又は評価対象が存在しないことを意味し、空欄は未評価を意味する。
また、表1~表4中、実施例1のように極大吸収波長での透過率が2つ記載されている場合、上段の数値は短波長側の極大吸収波長(実施例1では455nm)における透過率の数値であり、下段の数値は高波長側の極大吸収波長(実施例1では588nm)における透過率の数値である。
【0210】
【表1】

【0211】
【表2】

【0212】
【表3】

【0213】
【表4】


【0214】
表1~表4に示すように、実施例1~23のレンズは、比較例1~6のレンズよりもくっきり度の評価が良好であった。
【0215】
以下、第2実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、第2実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0216】
[実施例201]
(レンズの作製)
十分に乾燥させたフラスコにジメチル錫(II)ジクロリド0.020g、MR用内部離型剤(三井化学株式会社製)0.10g、Viosorb 583(共同薬品株式会社製、紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)1.50g、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物46.8gを仕込んで混合液(1)を作製した。
【0217】
次いで、UVY-0026(山本化成株式会社製)0.050gと、PD-311S(山本化成株式会社製)0.050gとを、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gにそれぞれ溶解させ、UVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)、及びPD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)を作製した。
【0218】
マスターバッチ(1)1.54g及びマスターバッチ(2)2.26gを上記混合液(1)に添加して混合液(2)とした。混合液(2)を25℃で1時間攪拌して各成分を完全に溶解させ調合液とした。その後、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含む組成物23.9g、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含む組成物25.5gをこの調合液に仕込み、得られた液体を25℃で30分攪拌し、均一溶液を作製した。
表5に、均一溶液における各色素の含有量を示す。
【0219】
この溶液に対し400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタにて濾過を行った後、中心厚さ2mm、直径77mmである4Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。
【0220】
このガラスモールドを25℃から120℃まで、21時間かけて昇温した。その後、室温まで冷却させて、プラノーレンズをガラスモールドから外した。得られたプラノーレンズに対し、さらに120℃で2時間アニールを行った。これにより、実施例201のレンズを作製した。
【0221】
(標準レンズの作製)
十分に乾燥させたフラスコにジメチル錫(II)ジクロリド0.020g、MR用内部離型剤(三井化学株式会社製)0.10g、Viosorb 583(共同薬品株式会社製、紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)1.50g、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物50.6gを仕込んで混合液を作製した。ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含む組成物23.9g、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含む組成物25.5gをこの混合液に仕込み、得られた液体を25℃で30分攪拌し、均一溶液とした。
【0222】
この溶液に対し400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルタにて濾過を行った後、中心厚さ2mm、直径77mmである4Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。
【0223】
このガラスモールドを25℃から120℃まで、21時間かけて昇温した。その後、室温まで冷却させて、プラノーレンズをガラスモールドから外した。得られたプラノーレンズをさらに120℃で2時間アニールを行った。これにより、標準レンズを作製した。
【0224】
[実施例202]
UVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)の替わりに、UVY-1023(山本化成株式会社製)を、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(3)を使用し、均一溶液における各色素の含有量を表5に示す通りに変更した以外は、実施例201と同様にして実施例202のレンズを作製した。
【0225】
[実施例203]
UVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)の替わりに、FDB-001(山田化学工業株式会社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(4)を使用し、均一溶液における各色素の含有量を表5に示す通りに変更した以外は、実施例201と同様にして実施例203のレンズを作製した。
【0226】
[実施例204]
FDB-001を溶解させたマスターバッチ(4)の替わりに、ABS 430(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(5)を使用し、均一溶液における各色素の含有量を表5に示す通りに変更した以外は、実施例203と同様にして実施例204のレンズを作製した。
【0227】
[実施例205]
PD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)の替わりに、ABS 574(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(6)を使用し、均一溶液における各色素の含有量を表5に示す通りに変更した以外は、実施例201と同様にして実施例205のレンズを作製した。
【0228】
[実施例206]
ABS 574を溶解させたマスターバッチ(6)の替わりに、ABS 594(Luxottica社製)を2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(7)を使用し、均一溶液における各色素の含有量を表5に示す通りに変更した以外は、実施例205と同様にして実施例206のレンズを作製した。
【0229】
[比較例201]
PD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)の替わりに、FDG-003(山田化学工業株式会社)を、2,5(6)-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む組成物100.0gに溶解させたマスターバッチ(8)を使用し、均一溶液における各色素の含有量を表5に示す通りに変更した以外は、実施例201と同様にして比較例201のレンズを作製した。
【0230】
[比較例202]
PD-311Sを溶解させたマスターバッチ(2)を使用せず、UVY-0026を溶解させたマスターバッチ(1)の替わりに、UVY-1023を溶解させた上述のマスターバッチ(3)を使用し、均一溶液における各色素の含有量を表5に示す通りに変更した以外は、実施例201と同様にして比較例202のレンズを作製した。
【0231】
~評価~
(黄色度(YI値))
パルスキセノンランプを有するコニカミノルタ社製の分光測色計CM-5を用いて、ASTM E313-73に準拠し透過法にて、室温、視野角2°、C光源として3回測定を行って得られた値の平均値として算出した。測定波長範囲は360nm~740nmである。
【0232】
(色差評価;CIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*,a*及びb*の測定)
測定機器として分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社製)を使用した。下記マンセル色標1~3のいずれか1つをD65光源下で、厚さ2mmである各実施例及び各比較例のレンズ、並びに厚さ2mmである標準レンズを上記いずれかのマンセル色標と測定部との間に配置した。そして、各色標についてCIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*(L*赤、L*緑),a*(a*赤、a*緑)及びb*(b*赤、b*緑)をそれぞれ測定した。上述のようにして求めたL*、a*及びb*を用い、以下の式(2A)に基づいてΔE*R-G、及びΔE*R-G(w0)をそれぞれ求め、式(1)に基づいてΔC*R-Gを求めた。
マンセル色標1;マンセル表色系の赤(4.5R4/13)
マンセル色標2;マンセル表色系の緑(4.5G5/8)
ΔC*R-G=ΔE*R-G-ΔE*R-G(w0)・・・(1)
ΔE*R-G=[(L*赤-L*緑)+(a*赤-a*緑)+(b*赤-b*緑)1/2・・・(2A)
【0233】
(半値幅)
紫外可視分光光度計 UV―1800(株式会社島津製作所製)及び厚さ2mmである各実施例及び各比較例のレンズを用いて、透過率曲線を測定し、極大吸収波長、極大吸収波長での透過率、ISO 8980-3:2013に準拠した視感透過率、及び極大吸収波長が400nm~520nmの範囲内に位置する吸収ピークの半値幅をそれぞれ求めた。
実施例201~実施例206のレンズにおける透過率曲線を図5に示し、比較例201~比較例202のレンズにおける透過率曲線を図6に示す。
【0234】
(くっきり度の評価)
各実施例及び各比較例のレンズをパーソナルコンピューター(PC)画面の前に配置し、PC画面に表示された画像を各実施例及び各比較例のレンズを通してそれぞれ視認した際の見え方の変化について、以下の評価基準に基づいてくっきり度の評価を行った。
なお、くっきり度がAであることは、対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識することができる効果に優れることを意味する。
-評価基準-
A PC画面に表示された画像をレンズを通さずに視認した場合と比較して、より鮮やか又はよりくっきり見えた。
B PC画面に表示された画像をレンズを通さずに視認した場合と見え方が変わらなかった。
C PC画面に表示された画像をレンズを通さずに視認した場合と比較して、色調が不自然であった、又は、赤色及び緑色を鮮明に認識しにくかった。
【0235】
(外観)
各実施例及び各比較例のレンズを、下記評価基準に従って評価した。
なお、外観がAであることは、青色が抑制された自然な色調を有することを意味する。
-評価基準-
A:レンズの色調として、青色が視認できなかった。
B:レンズの色調として少し青色が視認できたが、自然な色調の範囲内であった。
C:レンズの色調として青色が明確に視認でき、不自然な色調であった。
【0236】
各実施例及び各比較例のレンズを用いたときの評価結果について以下の表5に示す。なお、表5中、「-」は該当成分が含まれていないこと、又は評価対象が存在しないことを意味する。
また、表5中、実施例201のように極大吸収波長での透過率が2つ記載されている場合、上段の数値は短波長側の極大吸収波長(実施例201では455nm)における透過率の数値であり、下段の数値は高波長側の極大吸収波長(実施例201では588nm)における透過率の数値である。
【0237】
【表5】


【0238】
表5に示すように、機能層を含み、機能層は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在し、(B)400nm~520nmの範囲内に極大吸収波長bが存在し、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.00~2.50であるメガネレンズを用いた実施例は、外観の評価に優れるため青色が抑制された自然な色調を有する効果に優れていた。また、くっきり度の評価に優れるため対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識する効果に優れていた。
一方、(A)560nm~610nmの範囲内に極大吸収波長aが存在せず、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、2.5超である比較例201及び比較例202は、外観の評価に劣るため青色が抑制された自然な色調を有する効果に劣っていた。また、くっきり度の評価に劣るため対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識する効果に劣っていた。
実施例の中でも、極大吸収波長aのピークの積分値に対する極大吸収波長bのピークの積分値の比率が、1.4~2.5であるメガネレンズを用いた実施例201、及び実施例203~実施例206は、くっきり度の評価により優れるため対象物の赤色及び緑色を鮮明に認識する効果により優れていた。また、外観の評価に優れるため青色が抑制された自然な色調を有する効果に優れていた。
【0239】
2020年11月30日に出願された日本国特許出願2020-199122号、及び、2021年3月12日に出願された日本国特許出願2021-040099号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6