(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ドレイン線矯正装置およびドレイン線矯正方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/14 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
H02G1/14
(21)【出願番号】P 2022572241
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046376
(87)【国際公開番号】W WO2022138399
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020215191
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 直樹
(72)【発明者】
【氏名】新村 絢子
(72)【発明者】
【氏名】松本 美幸
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-81608(JP,A)
【文献】特開2016-123214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆に覆われた被覆部分と、前記被覆部分から露出したドレイン線と、を有する多芯ケーブルの前記被覆部分を保持する保持装置と、
予め定められた軸線上で前記ドレイン線を把持することが可能に構成された把持部材と、
前記ドレイン線を把持させまたは開放させるように前記把持部材を駆動する駆動装置と、
前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記把持部材とのうちの少なくとも一方を前記軸線に沿って移動させる移動装置と、
前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記把持部材とのうちの少なくとも一方を前記軸線周りに回転させる回転装置と、
前記駆動装置、前記移動装置、および前記回転装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記把持部材を前記ドレイン線に接触させた状態で、前記多芯ケーブルに対して前記把持部材を前記軸線に沿って移動させることにより、前記ドレイン線を先端側に向かってしごく、しごき制御と、
前記しごき制御の後に、前記しごき制御のときよりも把持力を強めて前記把持部材に前記ドレイン線を把持させるとともに、前記把持部材を前記被覆部分に対して前記軸線周りに回転させる回転制御と、を実行するように設定されている、
ドレイン線矯正装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記しごき制御において、前記回転制御のときよりも弱い把持力で前記把持部材に前記ドレイン線を把持させる、
請求項1に記載のドレイン線矯正装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記回転制御において、前記把持部材が前記ドレイン線を前記ドレイン線の先端側に向かって引っ張るように前記移動装置を駆動する、
請求項1または2に記載のドレイン線矯正装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回転制御の後に、前記回転制御のときよりも弱い把持力で前記把持部材に前記ドレイン線を把持させるとともに、前記被覆部分に対して前記把持部材を前記軸線周りに回転させ、さらに、前記把持部材を前記軸線に沿って前記ドレイン線の先端側に移動させることにより前記ドレイン線から前記把持部材を離脱させる離脱制御を実行するように設定されている、
請求項1~3のいずれか一つに記載のドレイン線矯正装置。
【請求項5】
前記しごき制御における前記ドレイン線に対する前記把持部材の移動速度は、前記離脱制御における前記ドレイン線に対する前記把持部材の移動速度よりも速い、
請求項4に記載のドレイン線矯正装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ドレイン線の先端部に前記把持部材が位置した状態で前記回転制御を実行する、
請求項1~5のいずれか一つに記載のドレイン線矯正装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ドレイン線の根元部に前記把持部材が位置した状態で前記しごき制御を開始する、
請求項1~6のいずれか一つに記載のドレイン線矯正装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記しごき制御において、前記把持部材を前記ドレイン線に接触させた状態で前記ドレイン線の先端側に向かって移動させながら、前記被覆部分に対して前記把持部材を前記軸線周りに回転させる、
請求項1~7のいずれか一つに記載のドレイン線矯正装置。
【請求項9】
前記把持部材は、
前記ドレイン線の断面形状に対応する形状に切り欠かれた第1把持部を有する第1クランプと、
前記ドレイン線の断面形状に対応する形状に切り欠かれるとともに前記第1把持部と向かい合うように配置された第2把持部を有する第2クランプと、を備え、
前記駆動装置は、前記第1クランプと前記第2クランプとを接近または離反させる、
請求項1~8のいずれか一つに記載のドレイン線矯正装置。
【請求項10】
被覆に覆われた被覆部分と、前記被覆部分から露出したドレイン線と、を有する多芯ケーブルの前記被覆部分を保持する保持装置と、
前記ドレイン線の周囲を囲うように前記ドレイン線に接触するしごき部材と、
前記ドレイン線を把持可能に構成された把持部材と、
前記ドレイン線を把持させまたは開放させるように前記把持部材を駆動する駆動装置と、
前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記しごき部材とのうちの少なくとも一方を、前記しごき部材と前記被覆部分とが離反するように移動させる移動装置と、
前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記把持部材とのうちの少なくとも一方を所定の軸線周りに回転させる回転装置と、
前記駆動装置、前記移動装置、および前記回転装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記しごき部材を前記ドレイン線に接触させた状態で、前記多芯ケーブルに対して前記しごき部材を移動させることにより、前記ドレイン線を先端側に向かってしごく、しごき制御と、
前記しごき制御の後に、前記把持部材に前記ドレイン線を把持させるとともに、前記把持部材を前記被覆部分に対して前記軸線周りに回転させる回転制御と、を実行するように設定されている、
ドレイン線矯正装置。
【請求項11】
前記しごき部材は、前記ドレイン線を把持可能に構成され、
前記制御装置の制御に基づいて、前記ドレイン線を把持させまたは開放させるように前記しごき部材を駆動する他の駆動装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記しごき制御において、前記他の駆動装置を制御して、前記回転制御のときに前記把持部材が前記ドレイン線を把持する把持力よりも弱い把持力で前記しごき部材に前記ドレイン線を把持させる、
請求項10に記載のドレイン線矯正装置。
【請求項12】
前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記把持部材とのうちの少なくとも一方を前記軸線に沿って移動させる他の移動装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記回転制御の後に、前記回転制御のときよりも弱い把持力で前記把持部材に前記ドレイン線を把持させるとともに、前記被覆部分に対して前記把持部材を前記軸線周りに回転させ、さらに、前記他の移動装置を駆動して前記把持部材を前記軸線に沿って前記ドレイン線の先端側に移動させることにより、前記ドレイン線から前記把持部材を離脱させる離脱制御を実行するように設定されている、
請求項10または11に記載のドレイン線矯正装置。
【請求項13】
被覆に覆われた被覆部分と、前記被覆部分から露出したドレイン線と、を有する多芯ケーブルの前記被覆部分を保持する第1ステップと、
前記ドレイン線を把持可能な把持具を前記ドレイン線の外周部に接触させる第2ステップと、
前記第2ステップの後に、前記把持具を前記ドレイン線の外周部に接触させた状態で、前記保持された多芯ケーブルと前記把持具とのうちの少なくとも一方を移動させることによって、前記把持具を前記ドレイン線の先端側に向かって移動させる第3ステップと、
前記第3ステップの後に、前記第3ステップのときよりも前記把持具の把持力を強めて前記把持具に前記ドレイン線を把持させる第4ステップと、
前記第4ステップの後に、前記把持具によって前記ドレイン線を把持した状態で、前記保持された多芯ケーブルと前記把持具とのうちの少なくとも一方を前記ドレイン線の軸線周りに回転させることにより、前記被覆部分に対して前記把持具を前記ドレイン線の軸線周りに回転させる第5ステップと、を含む、
ドレイン線の矯正方法。
【請求項14】
前記第2ステップでは、前記第4ステップおよび前記第5ステップのときよりも弱い把持力で、前記把持具によって前記ドレイン線を把持する、
請求項13に記載のドレイン線の矯正方法。
【請求項15】
前記第5ステップの後に、前記第4ステップおよび前記第5ステップにおける把持力よりも弱い把持力で、前記把持具によって前記ドレイン線を把持する第6ステップと、
前記第6ステップの後に、前記把持具によって前記ドレイン線を把持した状態で、前記保持された多芯ケーブルと前記把持具とのうちの少なくとも一方を前記ドレイン線の軸線周りに回転させることにより、前記被覆部分に対して前記把持具を前記ドレイン線の軸線周りに回転させ、さらに、前記保持された多芯ケーブルと前記把持具とのうちの少なくとも一方を前記ドレイン線の軸線方向に移動させることにより前記把持具を前記ドレイン線の先端側に向かって移動させ、前記ドレイン線から前記把持具を離脱させる第7ステップと、をさらに含む、
請求項13または14に記載のドレイン線の矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレイン線矯正装置およびドレイン線矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドレイン線と複数のコア線とが被覆によって覆われた多芯ケーブルが知られている。かかる多芯ケーブルの処理では、通常、ドレイン線と複数のコア線とは分離され、別々に処理される。例えば、特許文献1には、ドレイン線を熱収縮チューブに挿入する搬送部と、熱収縮チューブを加熱する加熱ユニットとを備えた熱収縮チューブ取付装置が開示されている。
【0003】
複数の素線からなるドレイン線に対して例えば熱収縮チューブへの挿入のような処理を行う前には、ドレイン線の形状を直線状に整えた上で、素線がばらけないようにまとめる(以下、ドレイン線を矯正する、と言う)ことが好ましい。ドレイン線が良好に矯正されていないと、熱収縮チューブへの挿入などのドレイン線の後処理が難しくなる。そのため、ドレイン線を矯正する装置が従来から考案されている。例えば特許文献2には、一対の把持部材(ブラッシ)によってドレイン線を挟んで引き延ばしながら、中途より把持部材をドレイン線の軸線周りに回転させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-123215号公報
【文献】特開昭64-81608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者が確認したところによれば、把持部材によってドレイン線を把持して、把持部材をドレイン線の先端側に移動させることにより、ドレイン線の素線をまとめ、かつドレイン線を直線状に成形することができる。また、その後に把持部材をドレイン線の軸線周りに回転させることにより、ドレイン線を撚ることができる。ただし、このとき、把持部材の把持力が強いと、把持部材の移動においてドレイン線が強く引っ張られ過ぎ、ドレイン線の素線が切れる等の問題が発生しやすい。一方で、把持部材の把持力を弱くすると、把持部材を回転させてドレイン線を撚るときに、ドレイン線と把持部材との間が滑ってドレイン線が十分に撚れない問題が発生しやすい。このように、把持部材によってドレイン線を挟んで引き延ばし、途中から保持部材をドレイン線の軸線周りに回転させても、ドレイン線を必ずしも良好に矯正することができるとは限らない。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より良好にドレイン線を矯正できるドレイン線矯正装置を提供することである。また、より良好にドレイン線を矯正できるドレイン線矯正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1のドレイン線矯正装置は、被覆に覆われた被覆部分と前記被覆部分から露出したドレイン線とを有する多芯ケーブルの前記被覆部分を保持する保持装置と、予め定められた軸線上で前記ドレイン線を把持することが可能に構成された把持部材と、前記ドレイン線を把持させまたは開放させるように前記把持部材を駆動する駆動装置と、前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記把持部材とのうちの少なくとも一方を前記軸線に沿って移動させる移動装置と、前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記把持部材とのうちの少なくとも一方を前記軸線周りに回転させる回転装置と、前記駆動装置、前記移動装置、および前記回転装置を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、しごき制御と、前記しごき制御の後の回転制御と、を実行するように設定されている。前記しごき制御では、前記制御装置は、前記把持部材を前記ドレイン線に接触させた状態で、前記多芯ケーブルに対して前記把持部材を前記軸線に沿って移動させることにより、前記ドレイン線を先端側に向かってしごく。前記回転制御では、前記制御装置は、前記しごき制御のときよりも把持力を強めて前記把持部材に前記ドレイン線を把持させるとともに、前記把持部材を前記被覆部分に対して前記軸線周りに回転させる。
【0008】
上記ドレイン線矯正装置によれば、しごき制御において、把持部材をドレイン線に接触させた状態で、把持部材をドレイン線の先端側に向かって移動させる。これにより、ドレイン線の素線をまとめ、かつ、ドレイン線を所定の軸線に沿って直線状に成形することができる。さらに、しごき制御の後に行われる回転制御では、しごき制御のときよりも把持力を強めて把持部材にドレイン線を把持させ、多芯ケーブルの被覆部分に対して把持部材を回転させる。回転制御では、しごき制御のときよりもドレイン線が強く把持されているため、回転制御により、ドレイン線をしっかりと撚ることができる。
【0009】
また、しごき制御では、把持部材は、回転制御のときよりもドレイン線を弱く把持しているか、または、ドレイン線を把持せず、ドレイン線に接触しているだけである。そのため、しごき制御において把持部材がドレイン線の先端側に向かって移動されても、ドレイン線はあまり強く引っ張られない。そのため、ドレイン線の素線が切れにくい。その結果、上記ドレイン線矯正装置によれば、より良好にドレイン線を矯正することができる。
【0010】
第1のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記しごき制御において、前記回転制御のときよりも弱い把持力で前記把持部材に前記ドレイン線を把持させる。
【0011】
上記ドレイン線矯正装置によれば、しごき制御において、ドレイン線は把持部材により把持されるため、先端側に向かって引っ張られる。そのため、ドレイン線を直線状に成形することがより良好にできる。
【0012】
第1のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記回転制御において、前記把持部材が前記ドレイン線を前記ドレイン線の先端側に向かって引っ張るように前記移動装置を駆動する。
【0013】
上記ドレイン線矯正装置によれば、回転制御時において、ドレイン線を先端側に向かって引っ張りながら撚るため、ドレイン線を直線状に成形することがより良好にできる。なお、このとき、把持部材はドレイン線の先端側に向かって移動してもよく、移動しなくてもよい。
【0014】
第1のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記回転制御の後に離脱制御を実行するように設定されている。前記離脱制御では、前記回転制御のときよりも弱い把持力で前記把持部材に前記ドレイン線を把持させるとともに、前記被覆部分に対して前記把持部材を前記軸線周りに回転させ、さらに、前記把持部材を前記軸線に沿って前記ドレイン線の先端側に移動させることにより前記ドレイン線から前記把持部材を離脱させる。
【0015】
上記ドレイン線矯正装置によれば、把持部材を回転させながら移動させる離脱制御により、ドレイン線の回転制御において撚られなかった部分(把持部材による把持部分および把持部分よりも先端側の部分)も撚ることができる。さらに、離脱制御は把持部材がドレイン線から抜けるまで行われるため、離脱制御によりドレイン線は先端まで撚られる。また、離脱制御時の把持部材の把持力は回転制御時よりも弱い。そのため、ドレイン線の素線が切れる問題も抑制することができる。
【0016】
上記ドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記しごき制御における前記ドレイン線に対する前記把持部材の移動速度は、前記離脱制御における前記ドレイン線に対する前記把持部材の移動速度よりも速い。
【0017】
回転制御では、所望の回数だけドレイン線を撚るために、把持部材の回転速度とドレイン線に対する移動速度とを対応付けることが好ましい。しかし、しごき制御では、そのような対応付けは必要ではない。上記ドレイン線矯正装置によれば、把持部材の回転速度と移動速度とを対応付ける必要がないしごき制御において、把持部材の移動速度を速くすることにより、ドレイン線の矯正に要する時間を節減することができる。
【0018】
第1のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記ドレイン線の先端部に前記把持部材が位置した状態で前記回転制御を実行する。
【0019】
上記ドレイン線矯正装置によれば、多くの部分がしごかれた状態でドレイン線が撚られる。これにより、ドレイン線をより良好に矯正することができる。
【0020】
第1のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記ドレイン線の根元部に前記把持部材が位置した状態で前記しごき制御を開始する。
【0021】
上記ドレイン線矯正装置によれば、矯正前から素線が比較的まとまっているドレイン線の根元部からしごき制御が開始されるため、ドレイン線を良好にまとめることができる。
【0022】
第1のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記把持部材は、前記ドレイン線の断面形状に対応する形状に切り欠かれた第1把持部を有する第1クランプと、前記ドレイン線の断面形状に対応する形状に切り欠かれるとともに前記第1把持部と向かい合うように配置された第2把持部を有する第2クランプと、を備えている。前記駆動装置は、前記第1クランプと前記第2クランプとを接近または離反させる。
【0023】
上記ドレイン線矯正装置によれば、ドレイン線の断面形状に対応する形状に切り欠かれた第1把持部および第2把持部によりドレイン線が把持される。そのため、しごき制御においてドレイン線がまとまりやすく、回転制御において把持部材によりドレイン線を把持しやすい。
【0024】
第1のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記しごき制御において、前記把持部材を前記ドレイン線に接触させた状態で前記ドレイン線の先端側に向かって移動させながら、前記被覆部分に対して前記把持部材を前記軸線周りに回転させてもよい。
【0025】
本発明に係る第2のドレイン線矯正装置は、被覆に覆われた被覆部分と前記被覆部分から露出したドレイン線とを有する多芯ケーブルの前記被覆部分を保持する保持装置と、前記ドレイン線の周囲を囲うように前記ドレイン線に接触するしごき部材と、前記ドレイン線を把持可能に構成された把持部材と、前記ドレイン線を把持させまたは開放させるように前記把持部材を駆動する駆動装置と、前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記しごき部材とのうちの少なくとも一方を、前記しごき部材と前記被覆部分とが離反するように移動させる移動装置と、前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記把持部材とのうちの少なくとも一方を所定の軸線周りに回転させる回転装置と、前記駆動装置、前記移動装置、および前記回転装置を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、しごき制御と、前記しごき制御の後の回転制御と、を実行するように設定されている。前記しごき制御では、前記制御装置は、前記しごき部材を前記ドレイン線に接触させた状態で、前記多芯ケーブルに対して前記しごき部材を移動させることにより、前記ドレイン線を先端側に向かってしごく。前記回転制御では、前記制御装置は、前記把持部材に前記ドレイン線を把持させるとともに、前記把持部材を前記被覆部分に対して前記軸線周りに回転させる。
【0026】
上記ドレイン線矯正装置によれば、しごき制御において、しごき部材をドレイン線に接触させた状態で、しごき部材をドレイン線の先端側に向かって移動させる。これにより、ドレイン線の素線をまとめ、かつ、ドレイン線を直線状に成形することができる。さらに、しごき制御の後に行われる回転制御では、把持部材にドレイン線を把持させ、多芯ケーブルの被覆部分に対して把持部材を回転させる。回転制御では、把持部材によりドレイン線が把持されているため、回転制御により、ドレイン線をしっかりと撚ることができる。
【0027】
第2のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記しごき部材は、前記ドレイン線を把持可能に構成されている。ドレイン線矯正装置は、前記制御装置の制御に基づいて、前記ドレイン線を把持させまたは開放させるように前記しごき部材を駆動する他の駆動装置をさらに備えている。前記制御装置は、前記しごき制御において、前記他の駆動装置を制御して、前記回転制御のときに前記把持部材が前記ドレイン線を把持する把持力よりも弱い把持力で前記しごき部材に前記ドレイン線を把持させる。
【0028】
上記ドレイン線矯正装置によれば、第1のドレイン線矯正装置の好ましい一態様のうち、しごき制御のときに把持部材によってドレイン線を把持する態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
第2のドレイン線矯正装置の好ましい一態様によれば、前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルと前記把持部材とのうちの少なくとも一方を前記軸線に沿って移動させる他の移動装置をさらに備えている。前記制御装置は、前記回転制御の後に、前記回転制御のときよりも弱い把持力で前記把持部材に前記ドレイン線を把持させるとともに、前記被覆部分に対して前記把持部材を前記軸線周りに回転させ、さらに、前記他の移動装置を駆動して前記把持部材を前記軸線に沿って前記ドレイン線の先端側に移動させることにより、前記ドレイン線から前記把持部材を離脱させる離脱制御を実行するように設定されている。
【0030】
上記ドレイン線矯正装置によれば、第1のドレイン線矯正装置における離脱制御と同様の作用効果を奏することができる。
【0031】
本発明に係るドレイン線矯正方法は、被覆に覆われた被覆部分と前記被覆部分から露出したドレイン線とを有する多芯ケーブルの前記被覆部分を保持する第1ステップと、前記ドレイン線を把持可能な把持具を前記ドレイン線の外周部に接触させる第2ステップと、前記第2ステップの後に、前記把持具を前記ドレイン線の外周部に接触させた状態で、前記保持された多芯ケーブルと前記把持具とのうちの少なくとも一方を移動させることによって、前記把持具を前記ドレイン線の先端側に向かって移動させる第3ステップと、前記第3ステップの後に、前記第3ステップのときよりも前記把持具の把持力を強めて前記把持具に前記ドレイン線を把持させる第4ステップと、前記第4ステップの後に、前記把持具によって前記ドレイン線を把持した状態で、前記保持された多芯ケーブルと前記把持具とのうちの少なくとも一方を前記ドレイン線の軸線周りに回転させることにより、前記被覆部分に対して前記把持具を前記ドレイン線の軸線周りに回転させる第5ステップと、を含む。
【0032】
上記ドレイン線矯正方法によれば、第1のドレイン線矯正装置および第2のドレイン線矯正装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
本発明に係るドレイン線矯正方法の好ましい一態様によれば、前記第2ステップでは、前記第4ステップおよび前記第5ステップのときよりも弱い把持力で、前記把持具によって前記ドレイン線を把持する。
【0034】
上記ドレイン線矯正方法によれば、第1のドレイン線矯正装置および第2のドレイン線矯正装置の好ましい態様のうち、しごき制御のときに把持部材によってドレイン線を把持する態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
本発明に係るドレイン線矯正方法の好ましい一態様によれば、前記第5ステップの後に、前記第4ステップおよび前記第5ステップにおける把持力よりも弱い把持力で、前記把持具によって前記ドレイン線を把持する第6ステップと、前記第6ステップの後に、前記把持具によって前記ドレイン線を把持した状態で、前記保持された多芯ケーブルと前記把持具とのうちの少なくとも一方を前記ドレイン線の軸線周りに回転させることにより、前記被覆部に対して前記把持具を前記ドレイン線の軸線周りに回転させ、さらに、前記保持された多芯ケーブルと前記把持具とのうちの少なくとも一方を前記ドレイン線の軸線方向に移動させることにより前記把持具を前記ドレイン線の先端側に向かって移動させ、前記ドレイン線から前記把持具を離脱させる第7ステップと、をさらに含んでいる。
【0036】
上記ドレイン線矯正方法によれば、第1のドレイン線矯正装置および第2のドレイン線矯正装置の好ましい態様のうち、離脱制御を実行する態様と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るドレイン線矯正装置またはドレイン線矯正方法によれば、より良好にドレイン線を矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】一実施形態に係るドレイン線矯正装置の斜視図である。
【
図3】第1クランプ爪および第2クランプ爪の斜視図である。
【
図4】ドレイン線の矯正を開始する直前のドレイン線矯正装置の要部の断面図である。
【
図5】しごき制御開始時のドレイン線矯正装置の要部の断面図である。
【
図6】しごき制御終了時のドレイン線矯正装置の要部の断面図である。
【
図7】回転制御時のドレイン線矯正装置の要部の断面図である。
【
図8】離脱制御開始時のドレイン線矯正装置の要部の断面図である。
【
図9】離脱制御終了時のドレイン線矯正装置の要部の断面図である。
【
図10】しごき装置と撚り装置とに分離したドレイン線矯正装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[ドレイン線矯正装置の構成]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、一実施形態に係るドレイン線矯正装置10の斜視図である。
図2は、ドレイン線矯正装置10の左側面図である。本実施形態に係るドレイン線矯正装置10は、多芯ケーブル1のドレイン線2を矯正する装置である。ここで、「ドレイン線2を矯正する」とは、複数の金属素線からなるドレイン線2を直線状に整えた上で、金属素線がばらけないようにまとめることを言う。ここでは、ドレイン線矯正装置10は、ドレイン線2を直線状に整えた上で、金属素線がばらけないようにドレイン線2を撚るように構成されている。多芯ケーブル1は、ドレイン線2と複数のコア線3とシールド(図示省略)とが被覆4によって覆われた電線である。複数のコア線3は、例えば、電気信号を伝達する信号線として使用される。図示しないシールドは、コア線3を外部のノイズから遮蔽する導体である。シールドは、複数のコア線3の外側を覆っている。ドレイン線2は、シールドに電気的に接続されている。使用時にはドレイン線2は接地され、これによりシールドが接地される。前述したように、ドレイン線2は、複数の素線からなり、絶縁体による被覆はされていない。複数のコア線3とドレイン線2とはシールドの内部において撚り合わされている。シールドは、さらに絶縁体の被覆4によって覆われている。
【0040】
ドレイン線矯正装置10に装着される前に、多芯ケーブル1に対しては、端部の被覆4を剥く処理、撚り合わされた複数のコア線3およびドレイン線2の撚りをほどく処理、および、ドレイン線2とコア線3とを分離する処理が行われる。以下では、特に断らない限り、被覆4からのドレイン線2の露出部分を単にドレイン線2と呼び、被覆4からの複数のコア線3の各露出部分を単にコア線3と呼ぶこととする。
図1および
図2に示すように、ここでは、複数のコア線3が多芯ケーブル1の軸線方向から曲げられることにより、ドレイン線2とコア線3とが分離されている。ドレイン線2の軸線方向は、ここでは、多芯ケーブル1の被覆4に覆われた部分(以下、被覆部分1aとも呼ぶ)の軸線方向と一致している。ただし、ドレイン線2の軸線方向は、被覆部分1aの軸線方向と一致していなくてもよい。
【0041】
図1および
図2に示すように、ドレイン線矯正装置10は、保持装置20と、把持装置30と、移動装置60と、回転装置70と、制御装置80と、を備えている。保持装置20は、多芯ケーブル1の被覆部分1aを保持するように構成されている。
図1に示すように、保持装置20は、保持クランプ21と、アクチュエータ22とを備えている。保持クランプ21は、一対の保持爪21Lおよび21Rを備えている。アクチュエータ22は、保持爪21Lおよび21Rを互いに接近または離反させるように駆動する。多芯ケーブル1は、保持爪21Lおよび21Rに挟まれることにより保持される。多芯ケーブル1は、保持爪21Lおよび21Rが離反することにより開放される。
【0042】
なお、以下では、多芯ケーブル1の軸線方向のうち、ドレイン線2が露出した側を多芯ケーブル1の先端側と呼ぶ。また、多芯ケーブル1の先端側のドレイン線2の端部をドレイン線2の先端と呼ぶ。以下では、保持装置20によって保持された状態の多芯ケーブル1の先端側をドレイン線矯正装置10の前方とし、前方から見た左方および右方をそれぞれドレイン線矯正装置10の左方および右方とする。図面において、F、Rr、L、R、U、Dはそれぞれ、ドレイン線矯正装置10の前後左右上下を表す。ただし、これらの方向は説明の都合上のものであり、ドレイン線矯正装置10の設置態様等を何ら限定するものではない。
【0043】
把持装置30は、ドレイン線2を矯正する際にドレイン線2を把持する機構である。把持装置30は、保持装置20の前方に配置されている。
図1に示すように、把持装置30は、把持クランプ40と、駆動装置50とを備えている。把持クランプ40は、ドレイン線2を把持可能に構成された第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を有している。駆動装置50は、ドレイン線2を把持させまたは開放させるように第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を駆動する。
【0044】
詳しくは後述するが、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を含む把持クランプ40の主要部は、回転装置70により、所定の軸線Ax周りに回転するように構成されている。以下、この軸線Axを把持クランプ40の軸線Ax、または単に軸線Axとも呼ぶ。これも詳しくは後述するが、把持クランプ40の軸線Axの伸長方向は、移動装置60による把持クランプ40の移動方向でもある。
図2に示すように、本実施形態では、把持クランプ40の軸線Axは、保持装置20に保持された多芯ケーブル1の被覆部分1aの軸線と一致している。また、軸線Axは、矯正前のドレイン線2の軸線とも略一致している。ただし、把持クランプ40の軸線Axは、多芯ケーブル1の被覆部分1aおよび矯正前のドレイン線2の軸線と一致していなくてもよい。
【0045】
図2に示すように、把持クランプ40は、第1クランプ爪41と、第2クランプ爪42と、カムプレート43と、第1リンク部材44と、第2リンク部材45と、第1回転軸46と、第2回転軸47と、ピストンロッド48と、を備えている。把持クランプ40は、駆動装置50によりピストンロッド48が前後方向に移動されると、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とが接近または離反するように構成されている。
【0046】
図2に示すように、ピストンロッド48は、前端が駆動装置50に接続され、後端がカムプレート43に接続されている。ピストンロッド48は、駆動装置50により前後方向に移動される。これにより、カムプレート43が前後方向に移動する。
【0047】
図1に示すように、カムプレート43は、板状に構成されている。カムプレート43は、把持クランプ40の径方向および前後方向に延びている。カムプレート43は、一対の長孔43a、43bを備えている。第1長孔43aおよび第2長孔43bは、カムプレート43を左右方向に貫通する貫通孔である。
図2に示すように、第1長孔43aと第2長孔43bとは、軸線Axに関して対称に設けられている。第1長孔43aおよび第2長孔43bは、それぞれ、軸線Axの伸長方向に関して、保持装置20から離れる(ここでは、ドレイン線矯正装置10の前方に向かう)につれて把持クランプ40の径方向の外方に向かうように延びている。
【0048】
第1リンク部材44および第2リンク部材45は、カムプレート43よりも後方(カムプレート43と保持装置20との間)に設けられている。第1リンク部材44および第2リンク部材45は、それぞれ、第1長孔43aおよび第2長孔43bに係合している。第1リンク部材44の前端部は、第1長孔43aに揺動可能に係合している。第1リンク部材44の前後方向の中央部は、左右方向に延びる第1回転軸46により回転可能に支持されている。同様に、第2リンク部材45の前端部は、第2長孔43bに揺動可能に係合している。第2リンク部材45の前後方向の中央部は、左右方向に延びる第2回転軸47により回転可能に支持されている。
【0049】
第1リンク部材44および第2リンク部材45の後端部には、それぞれ、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42が設けられている。第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とは、把持クランプ40の軸線Axを挟んで向かい合っている。第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とは、駆動装置50の駆動により接近すると、互いに噛み合うように構成されている。
図3は、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42の斜視図である。
図3では、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42以外の部材の図示を省略している。
図3に示すように、第1クランプ爪41は、第2クランプ爪42と噛み合う第1噛合部41aを備えている。第1噛合部41aは、前後方向に並んだ複数の略三角形の櫛歯41a1と、複数の櫛歯41a1と左右方向に隣り合って設けられ、前後方向に並んだ複数の略三角形の櫛歯41a2と、を含んでいる。前後方向視において、櫛歯41a1と櫛歯41a2とは、斜辺が向かい合うように配置されている。櫛歯41a1と櫛歯41a2とは、前後方向の位置が互い違いとなっている。
【0050】
第2クランプ爪42は、第1クランプ爪41の第1噛合部41aと噛み合う第2噛合部42aを備えている。第2噛合部42aも、前後方向に並んだ複数の略三角形の櫛歯42a1と、複数の櫛歯42a1と左右方向に隣り合って設けられ、前後方向に並んだ複数の略三角形の櫛歯42a2と、を含んでいる。前後方向視において、櫛歯42a1と櫛歯42a2とは、斜辺が向かい合うように配置されている。櫛歯42a1と櫛歯42a2とは、前後方向の位置が互い違いとなっている。また、第2クランプ爪42の櫛歯42a1は、第1クランプ爪41の向かい合う櫛歯41a1とは互い違いに配置されている。第2クランプ爪42の櫛歯42a2は、第1クランプ爪41の向かい合う櫛歯41a2とは互い違いに配置されている。そのため、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とは、駆動装置50の駆動により接近すると、互いに噛み合う。
【0051】
第1クランプ爪41は、ドレイン線2の断面形状に対応する形状に切り欠かれた第1把持部41bを有している。ここでは、第1把持部41bは、前後方向視においてドレイン線2の半径に対応する略半円形の切欠きである。第1把持部41bは、前後方向視において、櫛歯41a1の斜辺と櫛歯41a2の斜辺とが交差する場所に形成されている。第1把持部41bは、第1噛合部41aを前後方向に貫通するように設けられている。
【0052】
第2クランプ爪42は、ドレイン線2の断面形状に対応する形状に切り欠かれるとともに第1把持部41bと向かい合うように配置された第2把持部42bを有している。第2把持部42bも、前後方向視において、ドレイン線2の半径に対応する略半円形状に切り欠かれている。第2把持部42bは、前後方向視において、櫛歯42a1の斜辺と櫛歯42a2の斜辺とが交差する場所に形成されている。第2把持部42bは、第2噛合部42aを前後方向に貫通するように設けられている。そのため、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とが噛み合った状態では、第1把持部41bと第2把持部42bとによって、ドレイン線2の直径に対応する略円筒状の把持部が形成される。第1把持部41bと第2把持部42bとを噛み合わせたときに形成される把持部の軸線は、把持クランプ40の回転中心、すなわち把持クランプ40の軸線Axと一致している。そのため、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42が噛み合うと、ドレイン線2は、把持クランプ40の軸線Ax上で把持される。
【0053】
図2に示すように、駆動装置50は、把持クランプ40よりも前方に設けられている。駆動装置50は、把持クランプ40のピストンロッド48の前端部に接続され、ピストンロッド48を前後方向に移動させるように構成されている。
図2に示すように、駆動装置50は、第1シリンダ51と、第2シリンダ52と、第1シリンダ51の支持台53と、リニアガイド54と、図示しないエア供給路に設けられた電磁バルブ55a、55bと、同じくエア供給路に設けられた減圧弁56a、56bとを備えている。
【0054】
第1シリンダ51は、駆動装置50の第1のアクチュエータである。第1シリンダ51は、ここでは、前後方向に伸縮するシリンダロッド51aを備えたエアシリンダである。第1シリンダ51には、第1シリンダ51用のエア供給路(図示せず)から圧縮空気が供給される。供給または排出される圧縮空気により、第1シリンダ51のシリンダロッド51aは伸縮する。圧縮空気の第1シリンダ51への供給または排出は、エア供給路に設けられた電磁バルブ55aによって制御される。シリンダロッド51aの後端部(先端部)は、ピストンロッド48の前端部に接続されている。第1シリンダ51がシリンダロッド51aを伸ばすことにより、ピストンロッド48は後方に向かって押される。
【0055】
第1シリンダ51は、支持台53によって支持されている。支持台53は、リニアガイド54に摺動可能に係合している。リニアガイド54は、前後方向に延びている。第1シリンダ51は、リニアガイド54に沿って前後方向に移動可能なように構成されている。
【0056】
第2シリンダ52は、支持台53よりも前方に配置されている。第2シリンダ52は、駆動装置50の第2のアクチュエータである。第2シリンダ52も、ここでは、エアシリンダである。ここでは、第2シリンダ52は、第1シリンダ51よりも大径のエアシリンダである。第2シリンダ52は、前後方向に伸縮するシリンダロッド52aを備えている。第2シリンダ52には、第2シリンダ52用のエア供給路(図示せず)から圧縮空気が供給される。供給または排出される圧縮空気により、第2シリンダ52のシリンダロッド52aは伸縮する。圧縮空気の第2シリンダ52への供給または排出は、エア供給路に設けられた電磁バルブ55bによって制御される。シリンダロッド52aの後端部(先端部)は、支持台53に接続されている。
【0057】
第1シリンダ51がシリンダロッド51aを伸ばす際の軸力は、エア供給路に設けられた減圧弁56aによって所定の力に調整されている。減圧弁56aは、第1シリンダ51に供給する圧縮空気の圧力を調整可能に構成されている。第2シリンダ52がシリンダロッド52aを伸ばす際の軸力は、エア供給路に設けられた減圧弁56bによって所定の力に調整されている。ここでは、第2シリンダ52がシリンダロッド52aを伸ばす際の軸力は、第1シリンダ51がシリンダロッド51aを伸ばす際の軸力よりも大きく設定されている。
【0058】
移動装置60は、把持装置30を支持し、把持装置30を把持クランプ40の軸線Axに沿って前後方向に移動させることができるように構成されている。ドレイン線2を把持する把持部材としての第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、移動装置60により、前後方向に移動する。
図1に示すように、移動装置60は、移動台61と、リニアガイド62と、ボールねじ63と、ナット64と、第1モータ65と、を備えている。
【0059】
移動台61には、把持装置30が搭載されている。移動台61は、把持装置30を支持している。移動台61は、リニアガイド62に摺動可能に係合している。リニアガイド62は、前後方向に延びている。移動台61は、リニアガイド62に沿って前後方向に移動可能なように構成されている。移動台61が前後方向に移動することにより、把持装置30が前後方向に移動する。移動台61には、ナット64が接続されている。
【0060】
ナット64には、ボールねじ63が噛み合っている。ボールねじ63は、軸線が前後方向を向くように配置されている。ボールねじ63の前端は、第1モータ65に接続されている。第1モータ65が駆動すると、ボールねじ63は、軸線周りに回転する。ボールねじ63が軸線周りに回転することにより、ボールねじ63に噛み合ったナット64を介して、移動台61がリニアガイド62に沿って移動する。移動装置60は、第1モータ65の回転速度を変更することにより、把持装置30を前後方向に移動させる速度を変更することができる。
【0061】
回転装置70は、把持クランプ40を軸線Ax周りに回転させる機構である。ドレイン線2を把持する把持部材としての第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、回転装置70によって軸線Ax周りに回転する。回転装置70は、把持装置30とともに移動装置60の移動台61に搭載されている。回転装置70は、把持装置30とともに前後方向に移動する。
図1に示すように、回転装置70は、第2モータ71と、モータ側プーリ72と、クランプ側プーリ73と、タイミングベルト74と、を備えている。
【0062】
第2モータ71は、把持クランプ40よりも上方に設けられている。第2モータ71の主軸は、前後方向に延びている。第2モータ71の主軸は、把持クランプ40の軸線Axと平行な軸線周りに回転する。第2モータ71の主軸には、モータ側プーリ72が接続されている。クランプ側プーリ73は、把持クランプ40に接続されている。タイミングベルト74は、無端状のベルトであり、モータ側プーリ72とクランプ側プーリ73とに巻き掛けられている。第2モータ71の回転力は、モータ側プーリ72、タイミングベルト74、およびクランプ側プーリ73を介して把持クランプ40に伝達される。第2モータ71が駆動すると、把持クランプ40は、軸線Ax周りに回転する。回転装置70は、第2モータ71の回転速度を変更することにより、把持装置30を回転させる速度を変更することが可能なように構成されていてもよい。
【0063】
図1に示すように、ドレイン線矯正装置10は、制御装置80を備えている。制御装置80は、保持装置20、把持装置30の駆動装置50、移動装置60、および回転装置70を制御する。制御装置80は、アクチュエータ22、第1シリンダ51用の電磁バルブ55a、第2シリンダ52用の電磁バルブ55b、第1モータ65、および第2モータ71に接続され、それらの動作を制御している。
【0064】
制御装置80の構成は特に限定されない。制御装置80は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置80の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置80は、例えば、プログラマブルコントローラやコンピュータなどであってもよい。制御装置80による各部の動作制御については、以下のドレイン線2の矯正プロセスの説明の中で説明する。
【0065】
[ドレイン線の矯正プロセス]
以下では、ドレイン線2を矯正するプロセスについて説明する。
図4は、ドレイン線2の矯正を開始する直前のドレイン線矯正装置10の要部の断面図である。
図4では、一部の部材の図示を省略している。
図5~
図9についても同様である。
図4に示すように、ドレイン線2の矯正を開始する前には、ドレイン線矯正装置10は、移動装置60(
図1参照)を駆動して把持装置30を後方に移動させる。これにより、ドレイン線2のほぼ全体が、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42よりも前方まで移動する。ドレイン線2の矯正を開始する直前において、ドレイン線2のほぼ全体は、第1リンク部材44と第2リンク部材45との間の空間に収まっている。なお、上記では実際に移動するのは把持装置30であるが、部材間の位置関係の変更は、以下では適宜、実際には移動しない方の部材の移動としても表現する。
図4に示すように、このとき、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とは離れている。第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とが離れた状態を、以下では、把持クランプ40が開いているとも言う。
【0066】
ドレイン線2の矯正が開始されると、ドレイン線矯正装置10は、まず、把持装置30の駆動装置50を制御して、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とを?み合わせる。これにより、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とは、ドレイン線2を把持クランプ40の軸線Ax上で把持する。
図5は、ドレイン線2の矯正開始時におけるドレイン線矯正装置10の要部の断面図である。
図5に示すように、このとき、第1シリンダ51のシリンダロッド51aは伸びている。シリンダロッド51aは、ピストンロッド48を後方に向かって押している。ピストンロッド48は、
図4に示す状態よりも後方に移動している。
【0067】
ピストンロッド48が後方に移動することにより、ピストンロッド48に接続されたカムプレート43も後方に移動する。
図4および
図5に示すように、カムプレート43が後方に移動することにより、第1リンク部材44および第2リンク部材45の後端部は、それぞれ、第1長孔43aおよび第2長孔43bに沿って、把持クランプ40の径方向外方に移動する。これにより、第1リンク部材44および第2リンク部材45は、それぞれ第1回転軸46および第2回転軸47周りに回転する。これにより、それぞれ第1リンク部材44および第2リンク部材45の後端部に設けられた第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、把持クランプ40の径方向内方に移動する。その結果、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、ドレイン線2を把持する。
【0068】
図5に示す状態では、ドレイン線2は、第1クランプ爪41の第1把持部41b(
図3参照)および第2クランプ爪42の第2把持部42b(
図3参照)によって把持されている。第1クランプ爪41と第2クランプ爪42とが接近中に第1把持部41bと第2把持部42bとの間にドレイン線2が位置していない場合でも、ドレイン線2は、櫛歯41a1、41a2、42a1、または42a2の斜辺によって第1把持部41bと第2把持部42bとの間に誘導される。
図5に示すように、このとき、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、ドレイン線2の根元部2aを把持する。ここで、ドレイン線2の根元部2aとは、例えば、ドレイン線2の軸線方向に関する露出長さの3分の1よりも被覆部1a寄りの部分、さらに好適には、ドレイン線2の軸線方向に関する露出長さの5分の1よりも被覆部分1a寄りの部分を意味する。
【0069】
図5に示すように、上記状態においては、把持クランプ40の把持力は、第1シリンダ51の駆動力から発生している。以下では、第1シリンダ51の駆動力によるドレイン線2の把持のことを「弱把持」とも呼び、かかるドレイン線2の把持動作を「弱く把持する」とも呼ぶ。弱把持の場合の把持力の程度については後述する。
【0070】
図5に示す状態において、第1把持部41bおよび第2把持部42bは、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42との接近離反方向に関して、ドレイン線2に接触している。第1噛合部41aと第2噛合部42aとが噛み合うため、第1クランプ爪41と第2クランプ爪42との接近離反方向に関し、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、ドレイン線2に当接して停止する。また、第1把持部41bおよび第2把持部42bは、ドレイン線2の断面形状に対応した形状に切り欠かれている。そのため、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、接近離反方向以外の方向に関しても、ドレイン線2に接触するか、少なくとも近接している。
【0071】
次のステップでは、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42をドレイン線2に接触させた状態で、移動装置60を駆動して、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42をドレイン線2の先端側(ここでは前方)に向かって移動させる。以下、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42をドレイン線2に接触させる前ステップの制御と、本ステップの制御とを総称して、「しごき制御」とも呼ぶこととする。本実施形態に係る制御装置80は、駆動装置50および移動装置60を制御して、しごき制御を実行する。
【0072】
しごき制御において、第1クランプ爪41の第1把持部41bおよび第2クランプ爪42の第2把持部42bは、ドレイン線2の外周部に接したまま(詳しくは、ドレイン線2を弱く把持したまま)、把持クランプ40の軸線Axに沿って移動する。これにより、ドレイン線2が先端側に向かってしごかれ、ドレイン線2を構成する複数の素線がまとめられる。また、しごかれることにより、ドレイン線2が直線状に成形される。このとき、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、ドレイン線2を弱く把持している。そのため、把持クランプ40をドレイン線2に沿って移動させると、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42とドレイン線2との間は容易に滑る。弱把持のときの把持クランプ40の把持力は、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42とドレイン線2との間が容易に滑り、ドレイン線2を引っ張り過ぎないような把持力に設定されている。
【0073】
図6は、しごき制御終了時のドレイン線矯正装置10の要部の断面図である。
図6に示すように、しごき制御では、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42がドレイン線2の先端部2bに達するまで、把持装置30を移動させる。ここで、ドレイン線2の先端部2bとは、例えば、ドレイン線2の軸線方向に関する露出長さの3分の1よりも先端寄りの部分、さらに好適には、ドレイン線2の軸線方向に関する露出長さの5分の1よりも先端寄りの部分を意味する。しごき制御によるドレイン線2のしごきがドレイン線2の根元部2aから先端部2bまで行われることにより、ドレイン線2の大部分の素線がまとめられ、直線状に成形される。
【0074】
次のステップでは、しごき制御のときよりも把持力を強めて、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42にドレイン線2を把持させる。そのさらに次のステップでは、回転装置70を駆動して、ドレイン線2を把持した第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を把持クランプ40の軸線Ax周りに回転させる。以下、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42にドレイン線2を強く把持させる制御と、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を回転させる制御とを総称して「回転制御」とも呼ぶ。制御装置80は、しごき制御の後に回転制御を実行するように構成されている。制御装置80は、ドレイン線2の先端部2bに、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42が位置した状態で回転制御を実行する。
【0075】
図7は、回転制御時のドレイン線矯正装置10の要部の断面図である。
図7に示すように、このとき、第2シリンダ52のシリンダロッド52aは伸びている。支持台53は、第2シリンダ52に押されることにより、
図4~
図6に示す状態、言い換えると弱把持の状態よりも後方に移動している。第2シリンダ52は、支持台53を介して、第1シリンダ51を後方に向かって押圧している。この結果、第2シリンダ52は、第1シリンダ51を介してピストンロッド48を後方に押圧する。このときの把持クランプ40の把持力は、第2シリンダ52の駆動力から生み出されたものである。
【0076】
第2シリンダ52の軸力は、第1シリンダ51の軸力よりも大きく設定されている。そのため、
図7の状態では、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42がドレイン線2を把持する把持力は、
図4~
図6に示す状態(弱把持の状態)よりも大きい。以下では、第2シリンダ52の駆動力によるドレイン線2の把持のことを「強把持」とも呼び、かかるドレイン線2の把持動作を「強く把持する」とも呼ぶ。なお、このとき第1シリンダ51は駆動されていてもよく、駆動されていなくてもよい。
【0077】
回転制御では、さらに、ドレイン線2を把持した第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を把持クランプ40の軸線Ax周りに回転させる。第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を回転させる際には、回転装置70の第2モータ71(
図2参照)が駆動される。ドレイン線2を強く把持した第1クランプ爪41および第2クランプ爪42が軸線Ax周りに回転することにより、ドレイン線2が撚られる。強把持における把持装置30の把持力は、把持クランプ40を回転させたときに、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42とドレイン線2との間が滑らないような把持力に設定されている。これにより、制御装置80に設定された回数と同じ回数だけドレイン線2を撚ることができる。また、回転制御によってドレイン線2を締め上げることにより、しごき制御において直線状に形成されたドレイン線2の形状を安定して保持することができる。回転制御により、ドレイン線2のうち、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42に把持された部分よりも被覆部分1a側の部分を矯正することができる。
【0078】
なお、回転制御においては、制御装置80は、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42がドレイン線2を先端側に向かって引っ張るように移動装置60を駆動してもよい。このときの移動装置60の駆動力は、把持クランプ40が前方に動かないような駆動力であることが好ましい。ただし、把持クランプ40は、回転制御において、移動装置60の駆動力によってドレイン線2に対して動いてもよい。本実施形態では、回転制御において移動装置60は駆動されず、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42はドレイン線2を先端側に向かって積極的に引っ張らないが、撚られることによってドレイン線2が縮もうとするため、結果的には、ドレイン線2には、先端側に向かって引っ張る張力が掛かっている。
【0079】
次のステップでは、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42の把持力を回転制御における把持力よりも弱い把持力に切り替える。ここでは、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42の把持を、しごき制御のときと同じ弱把持に切り替える。ただし、このときの把持クランプ40の把持力は、回転制御時よりも弱く設定された第3の把持力であってもよい。ドレイン線矯正装置10は、把持クランプ40の把持力を第3の把持力に設定できるように構成されていてもよい。さらに次のステップでは、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を把持クランプ40の軸線Ax周りに回転させながら、軸線Axに沿ってドレイン線2の先端側に向かって移動させる。これにより、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42をドレイン線2から離脱させる。以下では、上記2つのステップの制御を総称して「離脱制御」とも呼ぶ。制御装置80は、回転制御の後に離脱制御を実行するように構成されている。
【0080】
図8は、離脱制御開始時のドレイン線矯正装置10の要部の断面図である。
図9は、離脱制御終了時のドレイン線矯正装置10の要部の断面図である。
図8に示すように、離脱制御では、しごき制御と同様に、第1シリンダ51によって把持クランプ40を駆動し、第2シリンダ52は使用しない。これにより、把持クランプ40は、ドレイン線2を弱く把持する。また、離脱制御では、把持クランプ40を軸線Ax周りに回転させる。さらに、離脱制御では、把持クランプ40をドレイン線2の先端側に向かって移動させる。
【0081】
離脱制御において、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、ドレイン線2に対して少し滑りながらドレイン線2を撚り、かつ、ドレイン線2を把持する位置をドレイン線2の先端側に移動させる。第1クランプ爪41および第2クランプ爪42によるドレイン線2の把持位置は、ドレイン線2の矯正の起点であるが、把持位置および把持位置よりも先端側のドレイン線2は矯正されない。そのため、離脱制御では、ドレイン線2を撚りながら、ドレイン線2の把持位置を先端側に移動させる。これにより、ドレイン線2の矯正されていない部分が順次減少する。
図9に示すように、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42がドレイン線2から離脱するときには、ドレイン線2の全部が矯正されている。
【0082】
なお、離脱制御では、把持クランプ40が移動することによりドレイン線2が引っ張られ過ぎないように、ドレイン線2の把持を弱把持としている。また、離脱制御では、ドレイン線2を撚る回数を制御するために、把持クランプ40の回転速度と移動速度とを対応付けることが好ましい。そのため、離脱制御では、しごき制御のときよりも把持クランプ40を低速で移動させる。しごき制御では、把持クランプ40の回転速度と移動速度との対応付けは不要であるため、把持クランプ40は離脱制御のときよりも高速で移動される。
【0083】
[実施形態の作用効果]
以下では、上記したドレイン線2の矯正プロセスに至るまでの過程で本願発明者が得た知見も交えながら、本実施形態に係るドレイン線矯正装置10の作用効果について説明する。
【0084】
本実施形態に係るドレイン線矯正装置10によれば、把持部材としての第1クランプ爪41および第2クランプ爪42をドレイン線2に接触させた状態で第1クランプ爪41および第2クランプ爪42をドレイン線2の先端側に向かって移動させるしごき制御が実行される。しごき制御の後には、しごき制御のときよりも把持力を強めて第1クランプ爪41および第2クランプ爪42にドレイン線2を把持させるとともに、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を把持クランプ40の軸線Ax周りに(言い換えると、しごき制御後のドレイン線2の軸線周りに)回転させる回転制御が実行される。かかるドレイン線矯正装置10によれば、しごき制御において、ドレイン線2の素線をまとめ、かつ、ドレイン線2を直線状に成形することができる。さらに、しごき制御の後に行われる回転制御では、しごき制御のときよりもドレイン線2を強く把持した状態で把持クランプ40を回転させる。そのため、回転制御により、ドレイン線2をしっかりと撚ることができる。
【0085】
また、しごき制御では、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42は、回転制御のときよりもドレイン線2を弱く把持している。そのため、しごき制御において第1クランプ爪41および第2クランプ爪42がドレイン線2の先端側に向かって移動されても、ドレイン線2はあまり強く引っ張られない。そのため、ドレイン線2の素線が切れにくい。
【0086】
ドレイン線を矯正しない場合、例えばドレイン線を熱収縮チューブに挿入しようとすると、いくつかの問題が生じる。矯正していないドレイン線には、被覆内で撚られていたときの撚り癖が残っており、これを直線状に矯正しないと、熱収縮チューブへの挿入が難しい。また、矯正していないドレイン線の素線はばらけており、これをまとめないと、やはり熱収縮チューブへの挿入が難しい。さらに、熱収縮チューブへの挿入時に軸線方向の力が加わると、矯正していないドレイン線は容易に座屈する。そのため、ドレイン線は直線状に成形されるとともに、しっかりと撚られる(矯正される)ことが好ましい。
【0087】
本願発明者の知見によれば、ドレイン線を矯正しようとする場合に、ドレイン線の根元部を最初に把持部材で把持して、その後、把持部材をドレイン線の先端側に向かって移動させながら回転させると、他の素線と離れてまとまっていなかった素線が、他の素線が撚られた撚り線の外周部に巻き付く状態になりやすい。この撚り線の外周部に巻き付いた素線は、後工程の不具合の原因になりやすい。具体的には、例えば、外周部に巻き付いた素線はドレイン線の外周部に凹凸を生じさせるため、ドレイン線に熱収縮チューブを挿入する際の挿入抵抗が大きくなりやすい。さらには、例えば、外周部に巻き付いた素線は他の素線よりも短くなるため、ドレイン線に圧着端子を圧着する際に不良となりやすい。また、把持部分を移動させながらドレイン線を撚ると、ドレイン線と把持部材との間が滑るためにドレイン線がしっかりと撚られない。そのため、ドレイン線が座屈しやすい状態となりやすい。よって、本願発明者の知見によれば、ドレイン線をしごいて素線をまとめた後にドレイン線を撚ることが好ましい。
【0088】
さらに、本願発明者の知見によれば、ドレイン線をしごくだけで撚らなければ、特にドレイン線の先端部の素線がまとまらず、ばらけたままとなりやすい。また、ドレイン線を撚るだけでしごかない場合には、ドレイン線の撚り癖が矯正されないままとなりやすい。
【0089】
本実施形態に係るドレイン線矯正装置10は、しごき制御を実行した後に回転制御を実行するように設定されている。そのため、上記したような不具合を抑制することができる。さらには、本実施形態に係るドレイン線矯正装置10は、ドレイン線2の先端部2bに第1クランプ爪41および第2クランプ爪42が位置した状態で回転制御を実行する。そのため、ドレイン線2の大部分がしごかれた状態のドレイン線2を撚ることができる。そのため、ドレイン線2をより良好に矯正することができる。
【0090】
本願発明者の知見によれば、ドレイン線をしごくときに把持部材の把持力を強くすると、引っ張り過ぎにより、ドレイン線の素線が切れやすくなる。または、ドレイン線に傷が付きやすい。本実施形態に係るドレイン線矯正装置10によれば、しごき制御のときに把持クランプ40がドレイン線2を把持する把持力は、回転制御のときに把持クランプ40がドレイン線2を把持する把持力よりも弱く設定されている。そのため、ドレイン線2の素線が切れたり、ドレイン線2に傷が付いたりする不具合を抑制することができる。また、回転制御では、しごき制御のときよりもドレイン線2が強く把持されているため、回転制御により、ドレイン線2をしっかりと撚ることができる。
【0091】
なお、本実施形態では、制御装置80は、しごき制御において、回転制御のときよりも弱い把持力で第1クランプ爪41および第2クランプ爪42にドレイン線2を把持させる。言い換えると、制御装置80は、しごき制御において、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42がドレイン線2に接触しているだけで把持しない状態にはしない。これにより、ドレイン線2は第1クランプ爪41および第2クランプ爪42によって先端側に向かって引っ張られる。そのため、ドレイン線2を直線状に成形することがより良好にできる。
【0092】
さらに本実施形態では、制御装置80は、ドレイン線2の根元部2aに第1クランプ爪41および第2クランプ爪42が位置した状態でしごき制御を開始する。かかる構成によれば、矯正前から素線が比較的まとまっているドレイン線2の根元部2aからしごき制御が開始されるため、ドレイン線2を良好にまとめることができる。また、かかる制御によれば、根元部2aから先端部2bまでのドレイン線2の大部分をしごくことができる。
【0093】
本実施形態に係るドレイン線矯正装置10によれば、制御装置80は、回転制御の後の離脱制御において、回転制御のときよりも弱い把持力で第1クランプ爪41および第2クランプ爪42にドレイン線2を把持させるとともに、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を把持クランプ40の軸線Ax周りに回転させる。さらに、制御装置80は、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42をドレイン線2の先端側に向かって移動させ、ドレイン線2から第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を離脱させる。かかる離脱制御によれば、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42を回転させながら移動させることにより、ドレイン線2のうち回転制御において撚られなかった部分、すなわち、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42による把持部分および把持部分よりも先端側の部分も撚ることができる。さらに、離脱制御は第1クランプ爪41および第2クランプ爪42がドレイン線2から抜けるまで行われるため、離脱制御によりドレイン線2を先端まで撚ることができる。また、離脱制御時の把持クランプ40の把持力は回転制御時よりも弱い。そのため、ドレイン線2の素線が切れる問題も抑制することができる。
【0094】
本実施形態に係るドレイン線矯正装置10によれば、しごき制御におけるドレイン線2に対する第1クランプ爪41および第2クランプ爪42の移動速度は、離脱制御におけるドレイン線2に対する第1クランプ爪41および第2クランプ爪42の移動速度よりも速い。かかる制御によれば、ドレイン線2の矯正に要する時間を節減することができる。
【0095】
本実施形態に係るドレイン線矯正装置10によれば、第1クランプ爪41は、ドレイン線2の断面形状に対応する形状に切り欠かれた第1把持部41bを有し、第2クランプ爪42は、ドレイン線2の断面形状に対応する形状に切り欠かれるとともに第1把持部41bと向かい合うように配置された第2把持部42bを有する。かかる構成によれば、ドレイン線2は、ドレイン線2の断面形状に対応する形状に切り欠かれた第1把持部41bおよび第2把持部42bにより把持される。そのため、しごき制御においてドレイン線2がまとまりやすく、回転制御においてドレイン線2を把持しやすい。
【0096】
なお、制御装置80は、回転制御において、第1クランプ爪41および第2クランプ爪42がドレイン線2を先端側に向かって引っ張るように移動装置60を駆動してもよい。その場合、回転制御時において、ドレイン線2を先端側に向かって引っ張りながら撚るため、ドレイン線2を直線状に成形することがより良好にできる。さらに、かかる制御により、撚ったドレイン線2の結束をより強固にすることができることが、本願発明者により確認されている。
【0097】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明した。ただし、上記実施形態は例示に過ぎず、他にも種々の実施形態が可能である。例えば、上記した実施形態では、把持クランプ40を回転させながらドレイン線2から離脱させる離脱制御が行われたが、離脱制御は行われなくてもよい。本願発明者は、回転制御後にすぐ把持クランプ40を開いても、ドレイン線2の把持クランプ40によって把持された部分の収束がやや弱い程度の問題しか発生しないことを確認している。また、離脱制御の代わりに、ドレイン線2を弱把持した状態で、把持クランプ40を移動させずに回転させてもよい。この場合でも、ドレイン線2と第1クランプ爪41および第2クランプ爪42との間が滑るため、回転制御において第1クランプ爪41および第2クランプ爪42に把持されていたために撚れなかった部分を撚ることができる。
【0098】
上記した実施形態では、把持クランプ40はしごき制御において回転しなかったが、回転してもよい。また、上記した実施形態では、把持クランプ40はしごき制御においてドレイン線2を弱く把持したが、ドレイン線2を把持せず、ドレイン線2に接触しているだけでもよい。
【0099】
ドレイン線矯正装置の構成は、上記したものに限定されない。例えば、ドレイン線矯正装置は、把持装置ではなく、保持装置に保持された多芯ケーブルを所定の軸線周りに回転させてもよい。または、ドレイン線矯正装置は、把持装置と多芯ケーブルの両方を所定の軸線周りに回転させ、それにより多芯ケーブルの被覆部分に対してドレイン線を回転させてもよい。同様に、ドレイン線矯正装置は、把持装置ではなく、保持装置に保持された多芯ケーブルを把持装置の軸線方向に移動させてもよい。または、ドレイン線矯正装置は、把持装置と多芯ケーブルの両方を把持装置の軸線方向に移動させ、それによりドレイン線を先端側に向かってしごくように構成されていてもよい。
【0100】
その他、特に言及されない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。例えば、把持装置の把持力は、1つのエアシリンダに供給する空気の圧力を切り替えることにより切り替えられてもよい。把持装置のアクチュエータは、エア駆動するアクチュエータでなくてもよい。把持装置の構成は、把持力を強と弱とに切り替えられる限りにおいて特に限定されない。保持装置、移動装置、および回転装置の構成も限定されない。
【0101】
また、他の好適な実施形態によれば、ドレイン線矯正装置は、しごき制御を行う装置と、回転制御および離脱制御を行う装置とに分かれていてもよい。
図10は、しごき装置10Xと撚り装置10Yとに分離したドレイン線矯正装置10の斜視図である。
図10に示すように、この実施形態では、しごき装置10Xと撚り装置10Yとは並んで設けられている。図示は省略するが、多芯ケーブル1を保持する保持装置20は、移動または旋回して、しごき装置10Xによる処理が終わった多芯ケーブル1を撚り装置10Yに引き渡すように構成されている(移動後の多芯ケーブル1を二点鎖線で示す)。保持装置20、しごき装置10X、および撚り装置10Yの動作は、制御装置80(
図1参照)によって制御される。制御装置80は、保持装置20、しごき装置10X、および撚り装置10Yに分散配置されていてもよく、1か所に集約されていてもよい。
【0102】
図10に示すように、しごき装置10Xは、第1把持クランプ40Xと、第1駆動装置50Xと、第1移動装置60Xと、を備えている。第1把持クランプ40X、第1駆動装置50X、および第1移動装置60Xの構成は、それぞれ、最初に説明した実施形態の把持クランプ40、駆動装置50、および移動装置60の構成と同様でもよい。第1駆動装置50Xは、ドレイン線2を把持させまたは開放させるように、第1把持クランプ40Xのクランプ爪41Xおよび42Xを駆動する。第1駆動装置50Xは、少なくとも、第1把持クランプ40Xにドレイン線2を弱把持させることができるように構成されている。第1駆動装置50Xが発生させる第1把持クランプ40Xの把持力は、弱把持の把持力から変更できなくてもよい。第1移動装置60Xは、第1把持クランプ40Xを軸線Axに沿って移動させるように構成されている。第1移動装置60Xは、これにより、多芯ケーブル1の被覆部分1aと離反するように第1把持クランプ40Xを移動させる。しごき装置10Xによるしごき制御の動作は、最初の実施形態と同様でもよい。または、しごき装置10Xによるしごき制御では、ドレイン線2の先端までしごきを行ってもよい。なお、この実施形態では、しごき装置10Xは、回転装置を備えていないが、回転装置を備え、第1把持クランプ40Xを回転させながらしごき制御を行うことができてもよい。
【0103】
この実施形態では、しごき装置10Xは、ドレイン線2を強把持する必要がない。そのため、しごき装置10Xは、ドレイン線2を把持する第1把持クランプ40Xではなく、ドレイン線2の周囲を囲うようにドレイン線2に接触するしごき部材(例えば、しごき用の爪)を備えていてもよい。かかるしごき部材は、ドレイン線2に接近または離反する方向に不動に構成されていてもよい。勿論、しごき装置10Xは、この実施形態のように、ドレイン線2の周囲を囲うように設けられ、駆動装置の駆動によってドレイン線2に接触または離間する把持部材を有していてもよい。
【0104】
しごき装置10Xによるしごき制御の終了後、多芯ケーブル1は、撚り装置10Yに搬送される。
図10に示すように、撚り装置10Yは、第2把持クランプ40Yと、第2駆動装置50Yと、第2移動装置60Yと、回転装置70と、を備えている。撚り装置10Yの構成は、最初に説明したドレイン線矯正装置10の構成と同様でもよい。第2駆動装置50Yは、ドレイン線2を把持させまたは開放させるように、第2把持クランプ40Yのクランプ爪41Yおよび42Yを駆動する。第2駆動装置50Yは、少なくとも、第2把持クランプ40Yにドレイン線2を強把持させることができるように構成されている。第2駆動装置50Yが発生させる第2把持クランプ40Yの把持力は、強把持の把持力から変更できなくてもよい。第2移動装置60Yは、第2把持クランプ40Yを軸線Ax2に沿って移動させるように構成されている。軸線Ax2は、第2把持クランプ40Yの回転軸であり、その伸長方向は、撚り装置10Yに装着されたしごき後のドレイン線2の軸線方向と一致している。回転装置70は、第2把持クランプ40Yを軸線Ax2周りに回転させる。撚り装置10Yによる回転制御の動作は、最初の実施形態と同様でもよい。撚り装置10Yは、離脱制御を行うように設定されていてもよく、行わないように設定されていてもよい。離脱制御を行わない場合には、撚り装置10Yは、第2移動装置60Yを備えなくてもよい。
【0105】
上記ドレイン線矯正装置10は、ドレイン線2を把持する把持力を切り替えることができるクランプの代わりに、異なる把持力でドレイン線2を把持する複数のクランプを使用するものである。かかるドレイン線矯正装置10によっても、最初の実施形態と同様の理由により、ドレイン線2の素線を切ったり、撚りが不十分になったりすることを抑制して、良好にドレイン線2を矯正することができる。
【0106】
ドレイン線を保持する保持装置は、例えば、多関節のロボットアームを備えていてもよい。上記したしごき装置と撚り装置とに分離されたドレイン線矯正装置の保持装置として多関節のロボットアームを使用する場合には、ロボットアームは、例えば、他の装置からしごき装置への多芯ケーブルの搬送、しごき装置から撚り装置への多芯ケーブルの搬送、撚り装置から他の装置への多芯ケーブルの搬送などを行ってもよい。最初に説明した実施形態のようなドレイン線矯正装置の保持装置として多関節のロボットアームを使用する場合には、ロボットアームは、例えば、他の装置からドレイン線矯正装置への多芯ケーブルの搬送、ドレイン線矯正装置から他の装置への多芯ケーブルの搬送などを行ってもよい。上記したいずれのドレイン線矯正装置への適用の場合であっても、しごき制御における把持クランプと多芯ケーブルとの相対移動、回転制御における多芯ケーブルの回転、離脱制御における把持クランプと多芯ケーブルとの相対移動および多芯ケーブルの回転などは、ロボットアームの動きにより行われてもよい。
【0107】
ドレイン線の矯正は、ドレイン線矯正装置を使用せずに行われてもよい。例えば、ドレイン線の矯正は、ドレイン線を把持し、かつ、把持力を変更することが可能な把持具を使用して行われてもよい。この場合、作業者は、把持具を手に持ってドレイン線の矯正作業を行ってもよい。把持具のドレイン線を把持する部分は、回転するようになっていてもよい。ここに開示するドレイン線の矯正方法を実現するための装置、道具、器具等は特に限定されない。
【符号の説明】
【0108】
1 多芯ケーブル
2 ドレイン線
2a 根元部
2b 先端部
3 コア線
4 被覆
10 ドレイン線矯正装置
20 保持装置
30 把持装置
40 把持クランプ
41 第1クランプ爪(第1クランプ)
41b 第1把持部
42 第2クランプ爪(第2クランプ)
42b 第2把持部
50 駆動装置
60 移動装置
70 回転装置
80 制御装置