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特許7535604電気負荷にエネルギを供給するための装置のための電力出力段
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】電気負荷にエネルギを供給するための装置のための電力出力段
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240808BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022580026
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021066429
(87)【国際公開番号】W WO2021259758
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】102020207886.6
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス シュテーヴィング
(72)【発明者】
【氏名】デニス ブラ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル イプトナー
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-184738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0366455(US,A1)
【文献】特表2020-509727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0013422(US,A1)
【文献】特開2005-261093(JP,A)
【文献】特開平09-321222(JP,A)
【文献】特開2002-246761(JP,A)
【文献】特開平02-121393(JP,A)
【文献】特開2001-160522(JP,A)
【文献】特開2011-120349(JP,A)
【文献】特開2003-289673(JP,A)
【文献】特開2010-081788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気負荷(3)にエネルギを供給するための装置(1)のための電力出力段(10)であって、
当該電力出力段(10)は、窒化ガリウム・オン・シリコン技術に基づいて構成された、少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)を含む電力スイッチング装置(12)と、前記電力スイッチング装置(12)のための駆動回路(15)とを有し、
前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の半導体電力スイッチ(T1,T2)は、支持体基板(SiS)の表面上に亜硝酸ガリウム半導体として構成されている、
電力出力段(10)において、
前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)のための前記駆動回路(15)は、それぞれ1つのARCPモジュール(16B)を含み、
前記ARCPモジュール(16B)は、2つの補助スイッチ(T3,T4)及びチョークコイル(16.2)を有し、無電圧のスイッチング時点に、対応する前記ハーフブリッジ(12.1)の前記半導体電力スイッチ(T1,T2)をスイッチングするように構成されており、
前記駆動回路(15)は、前記無電圧のスイッチング時点を電流測定によって、及び/又は、適応的な遅延チェーンによって特定するように構成されており、
前記駆動回路(15)は、
スイッチング命令を受信し、受信した前記スイッチング命令に応じて前記2つの補助スイッチ(T3,T4)のうちの第1の補助スイッチ(T3)又は第2の補助スイッチ(T4)をスイッチオンし、
遅延時間スパン(TV)を特定して、アクティブ化し、
前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの対応する半導体電力スイッチをスイッチオフし、前記遅延時間スパン(TV)が経過した後、最大デッド時間スパン(TS)に相当する所定の停止値を有するデッド時間測定をアクティブ化し、
前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の前記2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの第1の半導体電力スイッチ(T1)の両端におけるノード電圧(US)を測定し、前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の前記2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの第2の半導体電力スイッチ(T2)をスイッチオンし、
測定された前記ノード電圧(US)が所定の電圧閾値に相当すると、又は、前記デッド時間測定が前記停止値に到達すると、前記デッド時間測定を停止し、
スイッチオンされている前記補助スイッチ(T3,T4)が、前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の前記2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの前記第2の半導体電力スイッチ(T2)がスイッチオンされた後、前記遅延時間スパン(VT)の持続時間の間、スイッチオンされたままであり、前記遅延時間スパン(VT)の経過後、スイッチオフされる、
ように構成されている
ことを特徴とする、電力出力段(10)。
【請求項2】
前記電力スイッチング装置(12)及び前記駆動回路(15)は、前記窒化ガリウム・オン・シリコン技術に基づいてモノリシック回路モジュールとして構成されており、
少なくとも前記モノリシック回路モジュールの個々の能動素子は、共通の支持体基板(SiS)上に配置されている、
請求項1に記載の電力出力段(10)。
【請求項3】
中間回路キャパシタンス(14)のコンデンサ(C1,C2)が、シリコンコンデンサとして構成されており、前記支持体基板(SiS)の表面上及び/又は裏面上に配置されている、
請求項1又は2に記載の電力出力段(10)。
【請求項4】
前記モノリシック回路モジュールは、多層プリント基板に埋め込まれており、又は、前記多層プリント基板上に配置されている、
請求項に記載の電力出力段(10)。
【請求項5】
前記中間回路キャパシタンス(14)の前記コンデンサ(C1,C2)は、別個の支持体基板上のシリコンコンデンサとして又は積層セラミックチップコンデンサとして構成されており、多層プリント基板に埋め込まれている又は前記多層プリント基板上に配置されている、
請求項に記載の電力出力段(10)。
【請求項6】
亜硝酸ガリウム半導体として構成された前記2つの補助スイッチ(T3,T4)が、1つの双方向遮断式の補助スイッチ(16.1)になるように組み合わせられており、前記支持体基板(SiS)の前記表面上に形成されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力出力段(10)。
【請求項7】
前記チョークコイル(16.2)は、前記支持体基板(SiS)における導体路としてコアなしで形成されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電力出力段(10)。
【請求項8】
前記チョークコイル(16.2)は、前記多層プリント基板の導体路としてコアなしで形成されている、
請求項4又は5に記載の電力出力段(10)。
【請求項9】
前記駆動回路(15)は、電流コントロール(18)を含み、
前記電流コントロール(18)は、対応する現在の出力電流(Io(U,V,W))を表す少なくとも1つの測定電流(Im(U,V,W))と、少なくとも1つの基準電流(Ir(U,V,W))とをアナログ信号として受信して、相互に比較し、当該比較に応じて少なくとも1つの対応するスイッチング信号を生成及び出力するように構成されている、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電力出力段(10)。
【請求項10】
前記電力スイッチング装置(12)及び前記駆動回路(15)は、前記窒化ガリウム・オン・シリコン技術に基づいてモノリシック回路モジュールとして構成されており、
少なくとも前記モノリシック回路モジュールの個々の能動素子は、共通の支持体基板(SiS)上に配置されており、
前記少なくとも1つの測定電流(Im(U,V,W))は、前記モノリシック回路モジュールの内部で検出可能である、
請求項9に記載の電力出力段(10)。
【請求項11】
前記電流コントロール(18)は、前記電力スイッチング装置(12)の前記ハーフブリッジ(12.1)の各々に対して比較器(18.1)を含み、
前記比較器(18.1)は、前記測定電流(Im(U,V,W))が対応する前記基準電流(Ir(U,V,W))を上回ると、対応する前記ハーフブリッジ(12.1)をスイッチオフし、前記測定電流(Im(U,V,W))が対応する前記基準電流(Ir(U,V,W))を下回ると、対応する前記ハーフブリッジ(12.1)をスイッチオンするように構成されている、
請求項9又は10に記載の電力出力段(10)。
【請求項12】
前記駆動回路(15)は、ドライバ段(16)を含み、
前記ドライバ段(16)は、前記電流コントロール(18)からの前記少なくとも1つのスイッチング信号を受信し、処理して、前記電力スイッチング装置(12)に出力するように構成されている、
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の電力出力段(10)。
【請求項13】
前記モノリシック回路モジュールは、外部のコンポーネント及び/又はアセンブリからの信号を受信するように構成された電気インタフェース(13)を含む、
請求項2又は4又は10に記載の電力出力段(10)。
【請求項14】
前記電力スイッチング装置(12)は、3つのハーフブリッジ(12.1)を有するB6インバータ(12A)として構成されている、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の電力出力段(10)。
【請求項15】
エネルギ供給部(5)と、制御装置(7)と、電力出力段(10)とを有する、電気負荷(3)にエネルギを供給するための装置(1)であって、
前記電力出力段(10)は、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電力出力段(10)のように構成されている、
ことを特徴とする装置(1)。
【請求項16】
電気インタフェース(13)が、前記エネルギ供給部(5)の供給電圧電位(UBat)及びグランド電位(GND)と、前記制御装置(7)の少なくとも1つの基準電流(Ir(U,V,W))とを受信するように構成されている、
請求項15に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記電気負荷(3)は、3相ブラシレス直流モータ(3A)として構成されており、
B6インバータ(12A)のハーフブリッジ(12.1)が、それぞれ前記3相ブラシレス直流モータ(3A)の各相(U,V,W)に接続可能である、
請求項15又は16に記載の装置(1)。
【請求項18】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電力出力段(10)のように構成された電力出力段(10)のための無電圧のスイッチング時点を特定するための方法(100,200)であって、
当該方法(100,200)は、
スイッチング命令を受信し、受信した前記スイッチング命令に応じて第1の補助スイッチ(T3)又は第2の補助スイッチ(T4)をスイッチオンするステップと、
遅延時間スパン(TV)を特定して、アクティブ化するステップと、
少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの対応する半導体電力スイッチをスイッチオフし、前記遅延時間スパン(TV)が経過した後、最大デッド時間スパン(TS)に相当する所定の停止値を有するデッド時間測定をアクティブ化するステップと、
前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の前記2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの第1の半導体電力スイッチ(T1)の両端におけるノード電圧(US)を測定し、前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の前記2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの第2の半導体電力スイッチ(T2)をスイッチオンするステップと、
測定された前記ノード電圧(US)が所定の電圧閾値に相当すると、又は、前記デッド時間測定が前記停止値に到達すると、前記デッド時間測定を停止するステップと、
を有し、
スイッチオンされている前記補助スイッチ(T3,T4)は、前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の前記2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの前記第2の半導体電力スイッチ(T2)がスイッチオンされた後、前記遅延時間スパン(VT)の持続時間の間、スイッチオンされたままであり、前記遅延時間スパン(VT)の経過後、スイッチオフされる、
方法(100,200)。
【請求項19】
前記遅延時間スパン(TV)は、同一の時間スパンを有する遅延ステップの数(X)によって規定されている適応的な遅延チェーンによって特定され、
前記デッド時間測定が前記所定の停止値又は前記最大デッド時間スパン(TS)に到達している場合には、前記遅延時間スパン(VT)の前記遅延ステップの数(X)は、1だけ増加させられ、
前記デッド時間測定が所定の最小デッド時間スパン(TS)に到達していない場合には、前記遅延時間スパン(VT)の前記遅延ステップの数(X)は、1だけ低減され、
それ以外の場合には、前記遅延時間スパン(VT)の前記遅延ステップの数(X)は、同一のままである、
請求項18に記載の方法(100,200)。
【請求項20】
前記遅延時間スパン(TV)は電流測定によって特定され、
前記第1の補助スイッチ(T3)又は前記第2の補助スイッチ(T4)がスイッチオンされた後、前記遅延時間スパン(VT)を特定するための時間測定と、電流(IT1,IT2)の測定とが、前記少なくとも1つのハーフブリッジ(12.1)の前記2つの半導体電力スイッチ(T1,T2)のうちの対応する半導体電力スイッチによってアクティブ化され、
測定された前記電流(IT1,IT2)は、所定の閾値と比較され、
測定された前記電流(IT1,IT2)が前記所定の閾値を上回ると、前記時間測定が停止され、前記測定結果が、経過した遅延時間スパン(VT)として規定される、
請求項18又は19に記載の方法(100,200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気負荷にエネルギを供給するための装置のための、独立請求項1の上位概念に記載の形式の電力出力段を起点とする。そのような電力出力段を有する、電気負荷にエネルギを供給するための対応する装置と、電力出力段のための無電圧のスイッチング時点を特定するための方法も、本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
3相ブラシレス直流モータは、通常、好ましくはシリコン電力半導体に基づいてB6インバータとして構成されている電力出力段により、好ましくはフィールド指向制御によって駆動される。電気負荷、ここでは直流モータを駆動するために、本来の半導体電力スイッチに加えて、半導体電力スイッチをスイッチオン及びスイッチオフするブリッジドライバが使用される。このことは、典型的には、約20kHzの周波数で60V未満の電圧と、3kW未満の電力とを有する小型モータにおいて起こる。周波数は、スイッチング損失に基づいて可能な限り低く、ただし、人間の可聴閾値を上回るように選択されるべきである。
【0003】
従来技術から公知の窒化ガリウム・オン・シリコン技術は、電力半導体スイッチのために、純粋なシリコン半導体スイッチよりも極めて格段により高いスイッチング周波数と、面積当たりのより低い抵抗とを可能にする。さらに、対応するラテラル技術は、電力半導体も載置されている同一のシリコン基板上にさらなる能動素子及び受動素子を集積することを可能にする。
【0004】
独国特許出願公開第102016113121号明細書から、エネルギモジュールとコンデンサとを有するエネルギ供給装置が公知である。エネルギモジュールは、反転回路を有し、電気機械に電気エネルギを供給するように構成されている。コンデンサは、エネルギモジュールに隣接して配置されており、反転回路の入力部におけるリップル電流に起因する電圧変化を制限するように構成されている。反転回路及びコンデンサは、エネルギモジュールとコンデンサとの間に電圧絶縁が提供されるように、モノリシック絶縁エポキシを用いた射出成形によって包囲されており、モノリシック絶縁エポキシによって封止されている。
【0005】
独国特許出願公開第102015208150号明細書から、電気負荷にエネルギを供給するための装置のための、上位概念に記載の形式の電力出力段が公知である。この電力出力段は、窒化ガリウム・オン・シリコン技術に基づいて構成された、少なくとも1つのハーフブリッジを含む電力スイッチング装置と、電力スイッチング装置のための駆動回路とを含む。少なくとも1つのハーフブリッジの半導体電力スイッチは、シリコン基板の表面上に亜硝酸ガリウム半導体として構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102016113121号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015208150号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の開示
電気負荷にエネルギを供給するための装置のための、独立請求項1の特徴を有する電力出力段と、電気負荷にエネルギを供給するための、独立請求項15の特徴を有する装置と、電力出力段のための無電圧のスイッチング時点を特定するための、独立請求項18及び19の特徴を有する方法とは、それぞれ、分割された中間回路の平均電圧が多数のパラメータ(負荷点、中間回路電圧、ダイナミクス、温度等)によって変動し、これによってインダクタンス又はチョークコイルの「充電時間」が変化したとしても、ソフトスイッチングを可能にする動的な動作点が、ARCPモジュール(ARCP:Auxiliary Resonant Commutated Pole)によって特定されるという利点を有する。これにより、半導体電力スイッチをスイッチオン及びスイッチオフするための正しい無電圧の時点が満たされることを保証することができる。本発明の実施形態によれば、電圧の非常に大きい急変を伴うハードスイッチングを回避することができ、いわば無電圧のスイッチング時点においてソフトスイッチングを実施することができる。ARCPモジュールの主な利点は、少なくとも1つのハーフブリッジにおけるスイッチング損失をなくすことによって、少なくとも1つのハーフブリッジのスイッチング周波数を大幅に高めることができることにある。これにより、例えば中間回路キャパシタンスのコンデンサ、又は、場合によって存在し得る正弦波フィルタ若しくはエッジフィルタのような受動素子を、格段に小型かつ安価に構成することができる。さらに、電力損失が少なくなることによって半導体面積を縮小することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、電気負荷にエネルギを供給するための装置のための電力出力段であって、当該電力出力段は、窒化ガリウム・オン・シリコン技術に基づいて構成された、少なくとも1つのハーフブリッジを含む電力スイッチング装置と、電力スイッチング装置のための駆動回路とを有する、電力出力段を提供する。少なくとも1つのハーフブリッジの半導体電力スイッチは、支持体基板の表面上に亜硝酸ガリウム半導体として構成されている。この場合、少なくとも1つのハーフブリッジのための駆動回路は、それぞれ1つのARCPモジュールを含み、ARCPモジュールは、2つの補助スイッチ及びチョークコイルを有し、無電圧のスイッチング時点に、対応するハーフブリッジの半導体電力スイッチをスイッチングするように構成されており、駆動回路は、無電圧のスイッチング時点を、適応的な遅延チェーンによって、及び/又は、積分された電流測定によって特定するように構成されている。
【0009】
さらに、エネルギ供給部と、制御装置と、このような電力出力段とを有する、電気負荷にエネルギを供給するための装置が提案される。
【0010】
さらに、電力出力段のための無電圧のスイッチング時点を特定するための、以下のステップを有する方法が提案される:スイッチング命令を受信し、受信したスイッチング命令に応じて第1の補助スイッチ又は第2の補助スイッチをスイッチオンするステップ。遅延時間スパンを特定して、アクティブ化するステップ。少なくとも1つのハーフブリッジの2つの半導体電力スイッチのうちの対応する半導体電力スイッチをスイッチオフし、遅延時間スパンが経過した後、最大デッド時間スパンに相当する所定の停止値を有するデッド時間測定をアクティブ化するステップ。第1の半導体電力スイッチの両端におけるノード電圧を測定し、少なくとも1つのハーフブリッジの2つの半導体電力スイッチのうちの他方の半導体電力スイッチをスイッチオンするステップ、及び、測定されたノード電圧が所定の電圧閾値に相当すると、又は、デッド時間測定が停止値に到達すると、デッド時間測定を停止するステップ。この場合、スイッチオンされている補助スイッチは、少なくとも1つのハーフブリッジの2つの半導体電力スイッチのうちの他方の半導体電力スイッチがスイッチオンされた後、遅延時間スパンの持続時間の間、スイッチオンされたままであり、遅延時間スパンの経過後、スイッチオフされる。
【0011】
好ましくは、第1の半導体電力スイッチをスイッチオフするために、かつ、第2の半導体電力スイッチをスイッチオンするために、第1の補助スイッチをスイッチオンすることができ、第2の半導体電力スイッチをスイッチオフするために、かつ、第1の半導体電力スイッチをスイッチオンするために、第2の補助スイッチをスイッチオンすることができる。
【0012】
従属請求項に記載されている手段及び発展形態によって、電気負荷にエネルギを供給するための装置のための、独立請求項1に記載の電力出力段と、電気負荷にエネルギを供給するための、独立請求項15に記載の装置と、電力出力段のための無電圧のスイッチング時点を特定するための、独立請求項18に記載の方法とを有利に改善することが可能となる。
【0013】
電力スイッチング装置及び駆動回路を、窒化ガリウム・オン・シリコン技術に基づいてモノリシック回路モジュールとして構成することができ、少なくともモノリシック回路モジュールの個々の能動素子を、共通の支持体基板上に配置することができることが、特に有利である。この場合、少なくとも、2つの補助スイッチは、モノリシック回路モジュールに集積されており、それぞれのハーフブリッジの半導体電力スイッチとともに共通の支持体基板上に配置されている。このことは、装置を駆動するためのさらなる機能をモノリシック回路モジュールに集積することが可能となり、さらなる小型化が可能となるという利点を有する。したがって、任意の電気負荷を駆動するために、例えば、窒化ガリウム・オン・シリコン技術を用いて、電力スイッチング装置の複数のハーフブリッジと、これらのハーフブリッジのための対応するドライバとを共通の支持体基板上に、好ましくはシリコン基板上に載置することができる。したがって、例えば、3相モータにエネルギを供給するための対応する駆動回路を有するB6ブリッジの3つのハーフブリッジを、共通の支持体基板上に配置することができる。もちろん、電気負荷に供給するために必要とされるあらゆる他の任意の数のハーフブリッジを、共通の支持体基板上に配置するものとしてもよい。さらに、例えば、過電流保護機能、過熱保護機能等のような保護機能を、共通の支持体基板上に載置するものとしてもよい。
【0014】
さらに、電力スイッチング装置のための電流コントールを実施することもできる駆動回路を、モノリシック回路モジュール内にシフトすることにより、通常であればブリッジドライバ回路に配線しなければならない駆動線路を省略することができ、上位の制御装置の側での如何なる変調も必要なくなる。したがって、全ての高速信号とそのスイッチングエッジとが、モノリシック回路モジュールから「離れる」ことはない。これにより、EMC挙動がポジティブな影響を受けることを期待することができる。必要とされるコンタクトの数が少ないことにより、コンタクトパッドが最小サイズを大幅に下回ることが可能となるので、特にコンパクトな実装が可能である。さらに、本提案による構造によれば、システム内の冷却体との対応するカップリングキャパシタンスを介して個々のハーフリッジにおける急変する電位によって伝搬する可能性のあるEMC干渉を、低減することが可能となる。このために、例えば、電力スイッチング装置の冷却面を、可能であればグランド上に直接的に堅固に載置することができ、又は、モノリシック回路モジュール内において容量的に直接的にカップリングコンデンサを介して定義通りにグランドに接続することができる。したがって、追加的な干渉抑制コンデンサ又はYコンデンサと、コンタクト要素(例えば、SMDスプリング)とがこれによって不要となる。さらなる利点は、伝導性のサーマルコンパウンドを使用できることにあり、即ち、この伝導性のサーマルコンパウンドを、絶縁性のペーストよりも格段により高い熱伝導率とともに利用することができる。
【0015】
電力出力段の有利な実施形態においては、中間回路キャパシタンスのコンデンサを、シリコンコンデンサとして構成することができ、支持体基板の表面上及び/又は裏面上に配置することができる。特に有利な実施形態においては、これらのシリコンコンデンサは、供給電圧をバッファするために、共通の支持体基板の裏面上にディープ・トレンチ技術によって形成される。高スイッチング周波数が可能であることにより、ディープ・トレンチ技術によるシリコンコンデンサは、数キロワットという比較的小さい電力のための電圧60V未満の低電圧インバータにおいても、中間回路を提供するために使用可能となる。シリコンコンデンサとして構成された中間回路キャパシタンスを共通の支持体基板上に配置することにより、電力スイッチング装置への極めて低インダクタンスの接続が可能となる。したがって、共通の支持体基板の裏面上のシリコンコンデンサを、例えば支持体基板を貫通するスルーコンタクトによって、表面上の半導体電力スイッチに電気的にコンタクトさせることができる。シリコンコンデンサとして構成された中間回路キャパシタンスを共通の支持体基板の表面上にラテラルに配置する場合には、簡単な電気的コンタクトも可能となる。これにより、支持体基板にスルーコンタクトを有さない構造が可能となる。
【0016】
電力出力段のさらなる有利な実施形態においては、モノリシック回路モジュールを、多層プリント基板に埋め込むことができ、又は、多層プリント基板上に配置することができる。電力出力段のこの実施形態においては、中間回路キャパシタンスのコンデンサを、別個の支持体基板上のシリコンコンデンサとして配置することができ、モノリシック回路モジュールと同様に、多層プリント基板に埋め込むことができ、又は、多層プリント基板上に配置することができる。これに代えて、中間回路キャパシタンスのコンデンサを、積層セラミックチップコンデンサ(MLCC:Multi Layer Ceramic Capacitor)として構成することもでき、多層プリント基板に埋め込むことができ、又は、多層プリント基板上に配置することができる。
【0017】
電力出力段のさらなる有利な実施形態においては、亜硝酸ガリウム半導体として構成された2つの補助スイッチを、1つの双方向遮断式の補助スイッチになるように組み合わせることができ、支持体基板の表面上に形成することができる。双方向遮断式の補助スイッチとして構成されていることにより、補助スイッチとして2つの逆並列スイッチが使用される従来のARCPモジュールと比較して、必要とされる半導体面積を半分にすることができる。
【0018】
電力出力段のさらなる有利な実施形態においては、チョークコイルを、支持体基板における導体路としてコアなしで形成することができる。このことは、高スイッチング周波数によって可能となる。如何なるコア材料も必要なくなるので、チョークコイルの複雑な構造を回避することができる。これに代えて、チョークコイルを、電力出力段の多層プリント基板の導体路としてコアなしで形成することもできる。このことはつまり、中間回路キャパシタンスのコンデンサと同様にチョークコイルを、多層プリント基板に埋め込むことができ、又は、多層プリント基板上に配置することができ、この多層プリント基板に、モノリシック回路モジュールが埋め込まれており、又は、この多層プリント基板上に、回路モジュールが配置されている、ということを意味する。
【0019】
電力出力段のさらなる有利な実施形態においては、駆動回路は、電流コントロールを含み得るものであり、電流コントロールは、対応する現在の出力電流を表す少なくとも1つの測定電流と、少なくとも1つの基準電流とをアナログ信号として受信して、相互に比較し、当該比較に応じて少なくとも1つの対応するスイッチング信号を生成及び出力するように構成されている。この場合、少なくとも1つの測定電流は、好ましくはモノリシック回路モジュールの内部で検出可能である。さらに、駆動回路は、ドライバ段を含み得るものであり、ドライバ段は、電流コントロールからの少なくとも1つのスイッチング信号を受信し、処理して、電力スイッチング装置に出力するように構成されている。高スイッチング周波数により、例えばダイレクトスイッチング方法のような他のコントロール方法が可能となる。したがって、電流コントロールは、電力スイッチング装置のハーフブリッジの各々に対して比較器を含み得るものであり、比較器は、測定電流が対応する基準電流を上回ると、対応するハーフブリッジをスイッチオフし、測定電流が対応する基準電流を下回ると、対応するハーフブリッジをスイッチオンするように構成されている。
【0020】
これにより、対応する比較器における目標値設定を介して直接的に、半導体電力スイッチを直接的に駆動することが可能になる。したがって、電気負荷が3相モータである場合には、依然として相電流のための3つのアナログ基準信号だけがモノリシック回路モジュールに送信される。電流コントロールは、比較器を用いて直接的にモノリシック回路モジュールにおいて実施される。基準値は、相電流の測定値と比較される。基準値を上回るとスイッチオフされ、下回るとスイッチオンされる。したがって、平均して所要の基準電流が発生する。スイッチング周波数を制限するために、個々の比較器をサンプリングすることができ、及び/又は、ヒステリシスを有するように構成することができる。その場合、比較器のデジタル出力信号を、個々の半導体電力スイッチのためのスイッチング状態命令として直接的に使用することができる。それぞれの基準信号は、電気負荷における電流、又は、3相モータの個々のステータ巻線における電流を、直接的に規定するアナログ信号である。この信号は、中央の制御装置によって規定可能であり、最大で機械周波数(明示的に印加される高調波を含む)を含む。電気負荷を駆動するための自由度は、依然として制御装置に位置するが、高速の電流ダイナミクスは、モノリシック回路モジュールにシフトされ、これにより、制御装置のダイナミクス及び計算性能に対する要求を格段に低減することができ、コスト的な利点をもたらすことができる。それと同時に、高速のハードウェア比較器によって、広範な帯域幅を有する非常に動的な電流コントロールを得ることができ、このような電流コントロールは、スイッチング周波数の増加によって生じたアクチュエータ帯域幅の増大を、コスト的に有利に利用することもできる。電流コントロールを依然として制御装置において実施したとすると、電流コントロールの帯域幅を増大させるために、追加コストの原因となる、より高性能の制御装置が自動的に必要になるであろう。
【0021】
電力出力段のさらなる有利な実施形態においては、モノリシック回路モジュールは、外部のコンポーネント及び/又はアセンブリからの信号を受信するように構成された電気インタフェースを含み得る。この場合、電気インタフェースは、供給電圧電位と、グランド電位と、少なくとも1つの基準電流とを受信することができる。
【0022】
電力出力段のさらなる有利な実施形態においては、電力スイッチング装置を、例えば3つのハーフブリッジを有するB6インバータとして構成することができる。この場合、B6インバータの冷却面を、直接的に、又は、所定のキャパシタンスを有する少なくとも1つのカップリングコンデンサを介して、グランドに接続することができる。
【0023】
電気負荷にエネルギを供給するための装置の有利な実施形態においては、電気インタフェースを、エネルギ供給部の供給電圧電位及びグランド電位と、制御装置の少なくとも1つの基準電流とを受信するように構成することができる。
【0024】
電気負荷にエネルギを供給するための装置のさらなる有利な実施形態においては、電気負荷を、3相ブラシレス直流モータとして構成することができ、B6インバータのハーフブリッジを、それぞれ3相ブラシレス直流モータの各相に接続することができる。
【0025】
本方法の有利な実施形態においては、遅延時間スパンを、同一の時間スパンを有する遅延ステップの数によって規定することができる適応的な遅延チェーンによって特定することができる。この場合、デッド時間測定が所定の停止値又は最大デッド時間スパンに到達している場合には、遅延時間スパンの遅延ステップの数を1だけ増加させることができる。デッド時間測定が所定の最小デッド時間スパンに到達していない場合には、遅延時間スパンの遅延ステップの数を1だけ低減することができる。それ以外の場合には、遅延時間スパンの遅延ステップの数を同一のままにすることができる。
【0026】
これに加えて又はこれに代えて、遅延時間スパンを、積分された電流測定によって特定することもできる。この場合、第1の補助スイッチ又は第2の補助スイッチがスイッチオンされた後、遅延時間スパンを特定するための時間測定と、電流の測定とを、少なくとも1つのハーフブリッジの2つの半導体電力スイッチのうちの対応する半導体電力スイッチによってアクティブ化することができ、測定された電流を、所定の閾値と比較することができる。測定された電流が所定の閾値を上回ると、時間測定を停止し、測定結果を、経過した遅延時間スパンとして規定することができる。
【0027】
本発明の実施例を図面に示し、以下の記載においてより詳細に説明する。各図における同一の参照記号は、同一又は類似の機能を実施する構成要素又は要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る電力出力段の1つの実施例による、電気負荷にエネルギを供給するための本発明に係る装置の1つの実施例の概略ブロック図である。
図2図1からの本発明に係る電力出力段のハーフブリッジのための駆動回路の概略回路図である。
図3図1からの本発明に係る電力出力段のハーフブリッジのためのARCPモジュールの概略回路図である。
図4】モノリシック回路モジュールとして構成された、図1からの電力出力段の概略斜視図である。
図5図1からの本発明に係る電力出力段のための無電圧のスイッチング時点を特定するための本発明に係る方法の第1の実施例の概略フローチャートである。
図6図1からの本発明に係る電力出力段のための無電圧のスイッチング時点を特定するための本発明に係る方法の第2の実施例の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の実施形態
図1から見て取れるように、電気負荷3にエネルギを供給するための本発明に係る装置1の図示の実施例は、それぞれエネルギ供給部5と、制御装置7と、本発明に係る電力出力段10とを含む。
【0030】
図1乃至図3からさらに見て取れるように、電気負荷3にエネルギを供給するための装置1のための本発明に係る電力出力段10の図示の実施例は、窒化ガリウム・オン・シリコン技術に基づいて構成された、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1を含む電力スイッチング装置12と、電力スイッチング装置12のための駆動回路15とを含み、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の半導体電力スイッチT1,T2は、支持体基板SiSの表面上に亜硝酸ガリウム半導体として構成されている。この場合、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1のための駆動回路15は、それぞれ1つのARCPモジュール16Bを含み、このARCPモジュール16Bは、2つの補助スイッチT3,T4及びチョークコイル16.2を有し、無電圧のスイッチング時点に、対応するハーフブリッジ12.1の半導体電力スイッチT1,T2をスイッチングするように構成されており、駆動回路15は、無電圧のスイッチング時点を、積分された電流測定によって、及び/又は、適応的な遅延チェーンによって特定するように構成されている。
【0031】
特に図1及び図4からさらに見て取れるように、電力スイッチング装置12及び駆動回路15は、窒化ガリウム・オン・シリコン技術に基づいてモノリシック回路モジュールとして構成されている。この場合、少なくともモノリシック回路モジュールの個々の能動素子は、共通の支持体基板SiS上に配置されている。
【0032】
図1からさらに見て取れるように、装置1の図示の実施例における電気負荷3は、3相ブラシレス直流モータ3Aとして構成されている。電力スイッチング装置12は、3つのハーフブリッジ12.1を有するB6インバータ12Aとして構成されており、B6インバータ12Aのハーフブリッジ12.1は、それぞれ3相ブラシレス直流モータ3Aの各相U,V,Wに接続されている。カップリングコンデンサさらに、B6インバータ12Aの冷却面は、直接的に、又は、所定のキャパシタンスを有する少なくとも1つのカップリングコンデンサを介して、グランドGNDに接続されている。図示されていない代替的な実施例においては、電力スイッチング装置12は、3つより少ない又は3つより多いハーフブリッジ12.1を有することも可能である。さらに、電気負荷3にエネルギを供給するための装置1は、3相直流モータ3Aではない電気負荷3にエネルギを供給することもできる。
【0033】
図1及び図4からさらに見て取れるように、図示の実施例における供給電圧UBatをバッファするための中間回路キャパシタンス14のコンデンサC1,C2は、それぞれ支持体基板SiS上に配置されている。したがって、図示の実施例における中間回路キャパシタンス14も、モノリシック回路モジュールに集積されている。
【0034】
電力出力段10の図示されていない実施例においては、モノリシック回路モジュールは、多層プリント基板に埋め込まれており、又は、多層プリント基板上に配置されている。この実施例においては、中間回路キャパシタンス14のコンデンサC1,C2は、別個の支持体基板上に配置されていて、多層プリント基板に埋め込まれており、又は、多層プリント基板上に配置されている。代替的に、この実施例における中間回路キャパシタンス14のコンデンサC1,C2は、直接的に多層プリント基板に埋め込まれているものとしてもよく、又は、多層プリント基板上に配置されているものとしてもよい。
【0035】
図1及び図2からさらに見て取れるように、駆動回路15は、電流コントロール18を含み、この電流コントロール18は、対応する現在の出力電流Io(U,V,W)を表す少なくとも1つの測定電流Im(U,V,W)と、少なくとも1つの基準電流Ir(U,V,W)とをアナログ信号として受信して、相互に比較し、この比較に応じて少なくとも1つの対応するスイッチング信号を生成及び出力するように構成されている。このために、図示の実施例における電流コントロール18は、電力スイッチング装置12のハーフブリッジ12.1の各々に対して比較器18.1を含み、この比較器18.1は、測定電流Im(U,V,W)が対応する基準電流Ir(U,V,W)を上回ると、対応するハーフブリッジ12.1をスイッチオフし、測定電流Im(U,V,W)が対応する基準電流Ir(U,V,W)を下回ると、対応するハーフブリッジ12.1をスイッチオンするように構成されている。電流コントロール18の図示の実施形態においては、比較器18.1は、クロック信号TSによってクロックされている。図1からさらに見て取れるように、図示の実施例における少なくとも1つの測定電流Im(U,V,W)は、モノリシック回路モジュールの内部で検出される。
【0036】
図1及び図2からさらに見て取れるように、図示の実施例における駆動回路15は、ドライバ段16を含み、このドライバ段16は、ゲート駆動部16Aを含み、電流コントロール18又は対応する比較器18.1からの少なくとも1つのスイッチング信号を受信し、処理して、電力スイッチング装置12の対応するハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2に出力するように構成されている。
【0037】
図1からさらに見て取れるように、モノリシック回路モジュールは、外部のコンポーネント及び/又はアセンブリからの信号を受信するように構成された電気インタフェース13を含む。図示の実施例においては、電気インタフェース13は、エネルギ供給部5の供給電圧電位UBat及びグランド電位GNDと、制御装置7の少なくとも1つの基準電流Ir(U,V,W)とを受信する。少なくとも1つの基準電流Ir(U,V,W)を生成するために、制御装置7は、センサDWMの出力信号を評価し、センサDWMは、図示の実施例においては3相直流モータ3Aの回転角度を検出して、対応する出力信号を生成する。
【0038】
図1及び図3からさらに見て取れるように、電力出力段10の図示の実施例における中間回路キャパシタンス14は、分割されて構成されていて、2つのコンデンサC1,C2を含み、これら2つのコンデンサC1,C2は、供給電圧UBatをバッファするために、それぞれシリコンコンデンサとして共通の支持体基板SiSの裏面上にディープ・トレンチ技術によって形成されている。この場合、シリコンコンデンサC1,C2は、支持体基板SiSを貫通する図示されていないスルーコンタクトによって電力スイッチング装置12Bに電気的にコンタクトされている。
【0039】
電力出力段10の図示されていない代替的な実施例においては、モノリシック回路モジュールは、多層プリント基板に埋め込まれており、又は、多層プリント基板上に配置されている。この実施例においては、中間回路キャパシタンス14のコンデンサC1,C2を、別個の支持体基板上のシリコンコンデンサとして構成することができ、多層プリント基板に埋め込むことができ、又は、多層プリント基板上に配置することができる。この実施例においては代替的に、中間回路キャパシタンス14のコンデンサC1,C2を、積層セラミックチップコンデンサ(MLCC:Multi Layer Ceramic Capacitor)として構成することができ、直接的に多層プリント基板に埋め込むことができ、又は、多層プリント基板上に配置することができる。
【0040】
図1及び図3からさらに分かるように、ARCPモジュール16は、ドライバ段16の一部として構成されており、モノリシック回路モジュールに集積されている。このために、亜硝酸ガリウム半導体としての2つの補助スイッチT3,T4が、1つの双方向遮断式の補助スイッチ16.1になるように組み合わせられており、個々のハーフブリッジ12.1の半導体電力スイッチT1,T2とともに支持体基板SiSの表面上に形成されている。チョークコイル16.2は、支持体基板SiSにおける導体路としてコアなしで形成されている。
【0041】
モノリシック回路モジュールが多層プリント基板に埋め込まれており、又は、多層プリント基板上に配置されている、電力出力段10の図示されていない代替的な実施例においては、チョークコイル16.2は、多層プリント基板の導体路としてコアなしで形成されている。
【0042】
上記の電力出力段10のための無電圧のスイッチング時点を特定するための方法100の、図5に示されている第1の実施例は、適応的な遅延チェーンに基づいている。この場合、方法100は、ステップS100において、例えば車両を始動することによって開始される。次いで、ステップS110において、2つの補助スイッチT3,T4のうちの1つに対するスイッチング命令が受信されるまで待機される。その後、ステップS120において、例えば第1の論理状態から第2の論理状態への遷移を表す第1のスイッチング命令が受信されたのか、又は、例えば第2の論理状態から第1の論理状態への遷移を表す第2のスイッチング命令が受信されたのかがチェックされる。ステップS120で第1のスイッチング命令であることが認識された場合には、方法は、ステップS130に続く。ステップS120で第2のスイッチング命令であることが認識された場合には、方法は、ステップS230に続く。
【0043】
ステップS130においては、第1の補助スイッチT3が、受信した第1のスイッチング命令に応じてスイッチオン又は導通状態にスイッチングされる。これにより、チョークコイル16.2を流れるコイル電流ILが増加する。ステップS140においては、同一の時間スパンを有する遅延ステップの数Xによって規定されている遅延時間スパンTVがアクティブ化され、チョークコイル16.2を流れるコイル電流ILがさらに増加する。遅延時間スパンTVの経過後、チョークコイル16.2を流れる電流ILは、対応する出力電流Io(U,V,W)よりも大きくなり、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2のうちの対応する半導体電力スイッチ、ここでは第1の半導体電力スイッチT1を流れる対応する電流IT1は、ゼロよりも大きくなり、第1の半導体スイッチT1の両端におけるノード電圧USは、グランド電位GNDに相当する。したがって、ステップS150においては、第1の半導体電力スイッチT1がスイッチオフ又は遮断状態にスイッチングされ、デッド時間スパンTSの最大値に相当する所定の停止値を有するデッド時間測定がアクティブ化される。これにより、第1の半導体電力スイッチT1の両端におけるノード電圧USが増加し、このノード電圧USは、ステップS160において測定されて、第1の電圧閾値と比較される。この第1の電圧閾値は、例えば、供給電圧電位UBatにほぼ相当するように、又は、供給電圧電位UBatより幾分低くなるように選択されている。ステップS170においては、測定されたノード電圧USが所定の第1の電圧閾値に相当すると、又は、デッド時間測定が所定の停止値若しくは最大デッド時間スパンTSに到達すると、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2のうちの他方の半導体電力スイッチ、ここでは第2の半導体電力スイッチT2がスイッチオン又は導通状態にスイッチングされて、デッド時間測定が停止される。スイッチオン時点には、第2の半導体電力スイッチT2の両端における電圧降下は、理想的にはゼロに等しい。これにより、第2の半導体電力スイッチT2は、無電圧となり、無損失で導通状態にスイッチング又はスイッチオンされることができる。さらに、ステップS170において、デッド時間測定が所定の停止値又は最大デッド時間スパンTSに到達している場合には、遅延時間スパンVTの遅延ステップの数Xが1だけ増加させられる。経過した時間スパンがデッド時間スパンTSの最小値よりも小さい場合には、第1の遅延時間スパンVT1の遅延ステップの数Xが1だけ低減され、それ以外の場合には、遅延時間スパンTVの遅延ステップの数Xが一定に保たれる。このことはつまり、デッド時間測定の停止されている持続時間がデッド時間スパンTSの最小値と最大値との間にある場合には、遅延時間スパンTVが変更されないということを意味する。第2の半導体電力スイッチT2がスイッチオンされた後、ステップS180において、遅延時間スパンTVがアクティブ化される。遅延時間スパンTVの経過後、ステップS190において、スイッチオンされている第1の補助スイッチT3がスイッチオフ又は遮断状態にスイッチングされる。このことはつまり、チョークコイル16.2を流れるコイル電流ILを低減することができるようにするために、第1の補助スイッチT3は、第2の半導体電力スイッチT2がスイッチオンされた後もなお、遅延時間スパンTVの持続時間の間、スイッチオンされたままであるということを意味する。次いで、方法100は、ステップS110に続き、次のスイッチング命令の受信を待機する。
【0044】
ステップS230においては、第2の補助スイッチT4が、受信した第2のスイッチング命令に応じてスイッチオン又は導通状態にスイッチングされる。これにより、チョークコイル16.2を流れるコイル電流ILが減少する。ステップS240においては、遅延時間スパンTVがアクティブ化され、チョークコイル16.2を流れるコイル電流ILがさらに減少する。遅延時間スパンTVの経過後、チョークコイル16.2を流れる電流ILは、対応する出力電流Io(U,V,W)よりも大きくなり、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2のうちの対応する半導体電力スイッチ、ここでは第2の半導体電力スイッチT2を流れる対応する電流IT2は、ゼロよりも小さくなる。したがって、ステップS250においては、第2の半導体電力スイッチT2がスイッチオフ又は遮断状態にスイッチングされ、デッド時間スパンTSの最大値に相当する所定の停止値を有するデッド時間測定がアクティブ化される。これにより、第1の半導体電力スイッチT1の両端におけるノード電圧USが減少し、このノード電圧USは、ステップS260において測定されて、第2の電圧閾値と比較される。この第2の電圧閾値は、例えば、グランド電位GNDにほぼ相当するように、又は、グランド電位GNDより幾分高くなるように選択されている。ステップS270においては、測定されたノード電圧USが所定の第2の電圧閾値に相当すると、又は、デッド時間測定が所定の停止値に到達すると、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2のうちの他方の半導体電力スイッチ、ここでは第1の半導体電力スイッチT1がスイッチオン又は導通状態にスイッチングされて、デッド時間測定が停止される。スイッチオン時点には、第1の半導体電力スイッチT1の両端における電圧降下は、理想的にはゼロに等しい。これにより、第1の半導体電力スイッチT1は、無電圧となり、無損失で導通状態にスイッチング又はスイッチオンされることができる。さらに、ステップS270において、デッド時間測定が所定の停止値に到達している場合には、遅延時間スパンVTの遅延ステップの数Xが1だけ増加させられる。経過した時間スパンがデッド時間スパンTSの最小値よりも小さい場合には、第1の遅延時間スパンVT1の遅延ステップの数Xが1だけ低減され、それ以外の場合には、遅延時間スパンTVの遅延ステップの数Xが一定に保たれる。このことはつまり、デッド時間測定の停止されている持続時間がデッド時間スパンTSの最小値と最大値との間にある場合には、遅延時間スパンTVが変更されないということを意味する。第1の半導体電力スイッチT1がスイッチオンされた後、ステップS280において、遅延時間スパンTVがアクティブ化される。遅延時間スパンTVの経過後、ステップS290において、スイッチオンされている第2の補助スイッチT4がスイッチオフされる。このことはつまり、第2の補助スイッチT4は、第1の半導体電力スイッチT1がスイッチオンされた後もなお、遅延時間スパンTVの持続時間の間、スイッチオンされたままであるということを意味する。次いで、方法100は、ステップS110に続き、次のスイッチング命令の受信を待機する。
【0045】
上記の電力出力段10の無電圧のスイッチング時点を特定するための方法200の、図6に示されている第2の実施例は、積分された電流測定に基づいている。この場合、方法200は、ステップS300において、例えば車両を始動することによって開始される。次いで、ステップS310において、2つの補助スイッチのうちの1つに対するスイッチング命令が受信されるまで待機される。その後、ステップS320において、例えば第1の論理状態から第2の論理状態への遷移を表す第1のスイッチング命令が受信されたのか、又は、例えば第2の論理状態から第1の論理状態への遷移を表す第2のスイッチング命令が受信されたのかがチェックされる。ステップS320で第1のスイッチング命令であることが認識された場合には、方法は、ステップS330に続く。ステップS320で第2のスイッチング命令であることが認識された場合には、方法は、ステップS430に続く。
【0046】
ステップS330においては、第1の補助スイッチT3が、受信した第1のスイッチング命令に応じてスイッチオン又は導通状態にスイッチングされ、遅延時間スパンTVを特定するための時間測定がアクティブ化又は開始される。これにより、チョークコイル16.2を流れるコイル電流ILが増加し、ステップS340において、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2のうちの対応する半導体電力スイッチ、ここでは第1の半導体電力スイッチT1を流れる電流IT1が測定される。ステップS350において、第1の半導体電力スイッチT1を流れる電流IT1が所定の電流閾値を上回ると、第1の半導体電力スイッチT1がスイッチオフ又は遮断状態にスイッチングされ、デッド時間スパンTSの最大値に相当する所定の停止値を有するデッド時間測定がアクティブ化されて、時間測定が停止され、測定結果が、経過した遅延時間スパンVTとして規定される。このことはつまり、チョークコイル16.2を流れる電流ILが、対応する出力電流Io(U,V,W)よりも大きくなり、第1の半導体スイッチT1の両端におけるノード電圧USが、グランド電位GNDにほぼ相当するということを意味する。ステップS360において、第1の半導体電力スイッチT1の両端におけるノード電圧USが測定され、第1の電圧閾値と比較され、この第1の電圧閾値は、例えば、供給電圧電位UBatにほぼ相当するように、又は、供給電圧電位UBatより幾分低くなるように選択されている。ステップS370においては、測定されたノード電圧USが所定の第1の電圧閾値に相当すると、又は、デッド時間測定が所定の停止値に到達すると、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2のうちの他方の半導体電力スイッチ、ここでは第2の半導体電力スイッチT2がスイッチオン又は導通状態にスイッチングされて、デッド時間測定が停止される。スイッチオン時点には、第2の半導体電力スイッチT2の両端における電圧降下は、理想的にはゼロに等しい。これにより、第2の半導体電力スイッチT2は、無電圧となり、無損失で導通状態にスイッチング又はスイッチオンされることができる。第2の半導体電力スイッチT2がスイッチオンされた後、ステップS380において、時間測定によって特定された遅延時間スパンTVがアクティブ化される。遅延時間スパンTVの経過後、ステップS390において、スイッチオンされている第1の補助スイッチT3がスイッチオフ又は遮断状態にスイッチングされる。このことはつまり、チョークコイル16.2を流れるコイル電流ILを低減することができるようにするために、第1の補助スイッチT3は、第2の半導体電力スイッチT2がスイッチオンされた後もなお、遅延時間スパンTVの持続時間の間、スイッチオンされたままであるということを意味する。次いで、方法200は、ステップS310に続き、次のスイッチング命令の受信を待機する。
【0047】
ステップS430においては、第2の補助スイッチT4が、受信した第2のスイッチング命令に応じてスイッチオン又は導通状態にスイッチングされ、遅延時間スパンTVを特定するための時間測定がアクティブ化又は開始される。これにより、チョークコイル16.2を流れるコイル電流ILが減少し、ステップS440において、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2のうちの対応する半導体電力スイッチ、ここでは第2の半導体電力スイッチT2を流れる電流が測定される。ステップS450において、第2の半導体電力スイッチT2を流れる電流が所定の電流閾値を上回ると、第2の半導体電力スイッチT2がスイッチオフ又は遮断状態にスイッチングされ、デッド時間スパンTSの最大値に相当する所定の停止値を有するデッド時間測定がアクティブ化されて、時間測定が停止され、測定結果が、経過した遅延時間スパンVTとして規定される。このことはつまり、チョークコイル16.2を流れる電流ILが、対応する出力電流Io(U,V,W)よりも大きいということを意味する。ステップS460において、第1の半導体電力スイッチT1の両端におけるノード電圧USが測定され、第2の電圧閾値と比較され、この第2の電圧閾値は、例えば、グランド電位GNDにほぼ相当するように、又は、グランド電位GNDより幾分高くなるように選択されている。ステップS470においては、測定されたノード電圧USが所定の第2の電圧閾値に相当すると、又は、デッド時間測定が所定の停止値に到達すると、少なくとも1つのハーフブリッジ12.1の2つの半導体電力スイッチT1,T2のうちの他方の半導体電力スイッチ、ここでは第1の半導体電力スイッチT1がスイッチオン又は導通状態にスイッチングされる。スイッチオン時点には、第1の半導体電力スイッチT1の両端における電圧降下は、理想的にはゼロに等しい。これにより、第1の半導体電力スイッチT1は、無電圧となり、無損失で導通状態にスイッチング又はスイッチオンされることができる。第1の半導体電力スイッチT1がスイッチオンされた後、ステップS480において、時間測定によって特定された遅延時間スパンTVがアクティブ化される。遅延時間スパンTVの経過後、ステップS490において、スイッチオンされている第2の補助スイッチT4がスイッチオフ又は遮断状態にスイッチングされる。このことはつまり、第2の補助スイッチT4は、第1の半導体電力スイッチT1がスイッチオンされた後もなお、遅延時間スパンTVの持続時間の間、スイッチオンされたままであるということを意味する。次いで、方法200は、ステップS310に続き、次のスイッチング命令の受信を待機する。
【0048】
遅延時間スパンVTは、例えば、接続されたシフトレジスタによって実施可能である。デッド時間スパンTSは、例えば、単安定マルチバイブレータによって実施可能である。
【0049】
本方法の2つの説明された実施例は、原則としてNMOS論理において実現可能である。方法100の第1の実施例は、その適応的な性質に起因してパラメータばらつきの影響を受けにくいが、方法200の第2の実施例よりも全体としてより多数の論理要素を必要とする。しかしながら、方法200の第2の実施例は、電流測定が十分に正確である場合にのみ使用可能である。例えば、電流測定が、単独では十分に正確ではないが、それでもなお適応的な遅延チェーンの設定を支援又は検証するために使用可能である場合には、両方の方法100,200を組み合わせることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6