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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】吊下げ折板屋根及びその施工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/36 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
E04D3/36 S
E04D3/36 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023054414
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2024-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】風間 啓一
(72)【発明者】
【氏名】北村 雄
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-4141(JP,A)
【文献】特開平3-235861(JP,A)
【文献】特開平9-21204(JP,A)
【文献】実開昭51-29619(JP,U)
【文献】特開2011-63998(JP,A)
【文献】特開2020-76252(JP,A)
【文献】特許第7303956(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔に山形状部を有すると共に該山形状部の高さ方向中間箇所に被嵌合部を有する折板屋根を構成する折板屋根板材と、幅方向両側に立上り側板が形成されたベース部とコ字形状で且つ下係止板片側に前記ベース部を貫通する吊りネジ部が設けられたコ字状係止部とを有し該コ字状係止部は両前記立上り側板内に収まり且つ上下方向に移動する構成とした上吊り部材と、挟持頂部の幅方向の両端から下方に向かって吊脚部が形成され、該吊脚部の下部に嵌合部を有し且つ前記上吊り部材に連結される下吊り部材と、前記山形状部内に挿入されると共に該山形状部内にて幅方向に拡張して該山形状部の両前記被嵌合部箇所間に亘って設けられ両前記被嵌合部同士の間隔を所定間隔に維持する拡張固定具と、前記上吊り部材の前記コ字状係止部が装着されるフランジ部を有する吊下げ構造材とを備え、該吊下げ構造材の前記フランジ部に前記上吊り部材と前記下吊り部材が固着され、該下吊り部材の両前記嵌合部が前記山形状部の両前記被嵌合部に嵌合され、前記拡張固定具は前記山形状部の両前記被嵌合部間付近に亘って設置されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根。
【請求項2】
請求項1に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具は、同一形状の右拡張板と左拡張板と締付部材とを有し、前記右拡張板と前記左拡張板は、それぞれの幅方向外端から拡張主板部,傾斜段部及び支持板部が連続形成され、前記傾斜段部には前後方向に沿ってこの前後方向の中間位置まで食込み溝部が形成されると共に、前後方向中間位置から前記傾斜段部を中心にして幅方向に沿って延在する連結長孔が形成され、前記右拡張板と前記左拡張板同士を幅方向において左右対称に配置されると共に前記右拡張板の前記食込み溝部と、前記左拡張板の前記食込み溝部同士が相互に食い込むように接合されると共に両前記連結長孔同士に前記締付部材のボルトを挿通させ、ナットによる締め付けによって両前記拡張主板部同士によって幅方向に拡張しつつ水平状となり、両前記支持板部はそれぞれ他方側の前記拡張主板部に当接されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根。
【請求項3】
請求項2に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具の前記右拡張板と前記左拡張板の両前記支持板部は、両前記拡張主板部よりも下方に位置され、両該拡張主板部の幅方向外端には下方に向かって押圧端縁が形成されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根。
【請求項4】
請求項2に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具の前記右拡張板と前記左拡張板の両前記支持板部は、両前記拡張主板部よりも上方に位置され、両該拡張主板部の幅方向外端には上方に向かって押圧端縁が形成されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根。
【請求項5】
請求項1に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具は、右拡張板と左拡張板と締付部材とを有し、前記右拡張板は拡張主板部の幅方向外端に上方に折り返し状に折曲された押圧端縁が形成され、且つ内端から上方に向かって傾斜する傾斜案内面が形成され該傾斜案内面の内端から接続板部が形成され該接続板部には内ネジ部が形成され、前記左拡張板は被接続板部の内端に下方に向かって傾斜する被傾斜案内面が形成され、前記被接続板部の幅方向外端に上方に折り返し状に折曲された押圧端縁が形成され、前記被接続板部には長孔が形成され、該長孔に前記締付部材のボルトが挿通されると共に前記内ネジ部に螺合されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根。
【請求項6】
請求項1に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具は、右拡張板と左拡張板と締付部材とを有し、前記右拡張板は長方形状で且つ任意の対角上にて円弧状角部とし、前記左拡張板は、前記右拡張板と外形を同一形状とし、前記右拡張板には正方形状の貫通孔が形成され、前記左拡張板には円形状の貫通孔が形成され、前記締付部材のボルトは頭部付根部は断面方形状の角状付根部が形成され、前記右拡張板の貫通孔には前記ボルトの前記角状付根部が挿入してなる構成としたことを特徴とする吊下げ折板屋根。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記吊りネジ部は前記コ字状係止部に固着され、前記上吊り部材と前記下吊り部材とは、前記上吊り部材の吊りネジ部とナットによって連結される構成としてなることを特徴とする吊下げ折板屋根。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記上吊り部材と前記下吊り部材とは、溶接にて連結固着される構成としてなることを特徴とする吊下げ折板屋根。
【請求項9】
幅方向両側に立上り側板が形成されたベース部とコ字形状で且つ下係止板片側に前記ベース部を貫通する吊りネジ部が設けられたコ字状係止部とを有し該コ字状係止部は両前記立上り側板内に収まり且つ上下方向に移動する構成とした上吊り部材の前記コ字状係止部と前記ベース部とで吊下げ構造材のフランジ部を挟持し、挟持頂部の幅方向の両端から下方に向かって吊脚部が形成され、該吊脚部の下部に嵌合部を有し且つ前記上吊り部材に連結される下吊り部材を、前記上吊り部材に前記吊りネジ部とナットを介して連結すると共に、該ナットの締付により前記コ字状係止部と前記ベース部とで挟持固定し、前記下吊り部材の両前記吊脚部の両前記嵌合部を所定間隔に山形状部を有すると共に該山形状部の高さ方向中間箇所に被嵌合部を有する折板屋根板材の両前記被嵌合部に嵌合し、前記山形状部内に拡張固定具を挿入し、該山形状部内にて幅方向に拡張して該山形状部の両前記被嵌合部箇所間に亘って設置し、前記拡張固定具によって前記山形状部の両前記被嵌合部同士の間隔を所定間隔に維持してなることを特徴とする吊下げ折板屋根の施工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の折板屋根で吊り下げタイプとした折板屋根であって、折板屋根板材に吊り下げのための加工をすることなく施工することができる吊下げ折板屋根及びその施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場,倉庫等で大型の出入り口を有する建築物では、大型の庇が設けられている。このような大型の庇では、金属製の折板屋根板材によって構成されているものが存在する。一般に折板屋根はH形鋼等の吊下げ構造材上に受具を設置して、この受具を介して折板屋根板材を設置して屋根を構成するものであり、これを庇として使用することが簡単である。
【0003】
しかし、このタイプの庇は、折板屋根板材の下に吊下げ構造材が設置されることで、H形鋼等の吊下げ構造材が庇の下を通過する人から見ると庇の外観性が劣るものである。また、吊下げ構造材に塵ほこりが溜まり、これが風等により飛び散ることで、庇を通過する人に塵ほこりが降りかかるおそれがある。
【0004】
このようなことから折板屋根板材の上方に吊下げ構造材が設置され、該吊下げ構造材によって折板屋根板材が吊り下げられて庇が構成されるものが存在する。また、この吊り下げタイプの折板屋根は、庇に適用されるのみならず、通常の建築物の屋根に適用されることもある。この種の吊下げタイプの屋根又は庇が開示されているものとして、特許文献1が存在する。特許文献1によれば、H形鋼とした吊下げ構造材の下に金属折板材が吊下げ状態で屋根施工されたものである。また、特許文献1に記載された吊下げタイプの庇が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-201763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明及びこの特許文献1に開示された従来技術では、吊下げタイプの折板屋根とした庇を実現しているが、これらは、金属折板材を吊下げ構造材に吊るすために、建築用吊下げ金具と剣先ボルト等を使用し、該剣先ボルトとナットを利用して金属折板材を吊下げ構造材に吊るす構成としている。このような構成のため、金属折板材には、剣先ボルトのための貫通孔が形成されることになる。
【0007】
このように、金属折板材に貫通孔が形成されることによって、塗装された金属折板材では、塗装が剥がれ、さびが発生する原因となったり、或いはその貫通孔によって雨漏りの原因となるおそれも十分にある。そして、何よりも金属折板材に貫通孔を穿孔する等の加工が必要となり、工数が増えて、施工価格にも影響を及ぼすことになる。そこで、本発明の目的(解決しようとする技術的課題)は、折板屋根板材に対して貫通孔を含め何ら加工することなく、そのまま、折板屋根板材を構造に吊下げて、吊下げタイプの折板屋根とした庇を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、所定間隔に山形状部を有すると共に該山形状部の高さ方向中間箇所に被嵌合部を有する折板屋根を構成する折板屋根板材と、幅方向両側に立上り側板が形成されたベース部とコ字形状で且つ下係止板片側に前記ベース部を貫通する吊りネジ部が設けられたコ字状係止部とを有し該コ字状係止部は両前記立上り側板内に収まり且つ上下方向に移動する構成とした上吊り部材と、挟持頂部の幅方向の両端から下方に向かって吊脚部が形成され、該吊脚部の下部に嵌合部を有し且つ前記上吊り部材に連結される下吊り部材と、前記山形状部内に挿入されると共に該山形状部内にて幅方向に拡張して該山形状部の両前記被嵌合部箇所間に亘って設けられ両前記被嵌合部同士の間隔を所定間隔に維持する拡張固定具と、前記上吊り部材の前記コ字状係止部が装着されるフランジ部を有する吊下げ構造材とを備え、該吊下げ構造材の前記フランジ部に前記上吊り部材と前記下吊り部材が固着され、該下吊り部材の両前記嵌合部が前記山形状部の両前記被嵌合部に嵌合され、前記拡張固定具は前記山形状部の両前記被嵌合部間付近に亘って設置されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項2の発明を、請求項1に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具は、同一形状の右拡張板と左拡張板と締付部材とを有し、前記右拡張板と前記左拡張板は、それぞれの幅方向外端から拡張主板部,傾斜段部及び支持板部が連続形成され、前記傾斜段部には前後方向に沿ってこの前後方向の中間位置まで食込み溝部が形成されると共に、前後方向中間位置から前記傾斜段部を中心にして幅方向に沿って延在する連結長孔が形成され、前記右拡張板と前記左拡張板同士を幅方向において左右対称に配置されると共に前記右拡張板の前記食込み溝部と、前記左拡張板の前記食込み溝部同士が相互に食い込むように接合されると共に両前記連結長孔同士に前記締付部材のボルトを挿通させ、ナットによる締め付けによって両前記拡張主板部同士によって幅方向に拡張しつつ水平状となり、両前記支持板部はそれぞれ他方側の前記拡張主板部に当接されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項3の発明を、請求項2に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具の前記右拡張板と前記左拡張板の両前記支持板部は、両前記拡張主板部よりも下方に位置され、両該拡張主板部の幅方向外端には下方に向かって押圧端縁が形成されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項2に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具の前記右拡張板と前記左拡張板の両前記支持板部は、両前記拡張主板部よりも上方に位置され、両該拡張主板部の幅方向外端には上方に向かって押圧端縁が形成されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項5の発明を、請求項1に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具は、右拡張板と左拡張板と締付部材とを有し、前記右拡張板は拡張主板部の幅方向外端に上方に折り返し状に折曲された押圧端縁が形成され、且つ内端から上方に向かって傾斜する傾斜案内面が形成され該傾斜案内面の内端から接続板部が形成され該接続板部には内ネジ部が形成され、前記左拡張板は被接続板部の内端に下方に向かって傾斜する被傾斜案内面が形成され、前記被接続板部の幅方向外端に上方に折り返し状に折曲された押圧端縁が形成され、前記被接続板部には長孔が形成され、該長孔に前記締付部材のボルトが挿通されると共に前記内ネジ部に螺合されてなることを特徴とする吊下げ折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項6の発明を、請求項1に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記拡張固定具は、右拡張板と左拡張板と締付部材とを有し、前記右拡張板は長方形状で且つ任意の対角上にて円弧状角部とし、前記左拡張板は、前記右拡張板と外形を同一形状とし、前記右拡張板には正方形状の貫通孔が形成され、前記左拡張板には円形状の貫通孔が形成され、前記締付部材のボルトは頭部付根部は断面方形状の角状付根部が形成され、前記右拡張板の貫通孔には前記ボルトの前記角状付根部が挿入してなる構成としたことを特徴とする吊下げ折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項7の発明を、請求項1又は2に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記吊りネジ部は前記コ字状係止部に固着され、前記上吊り部材と前記下吊り部材とは、前記上吊り部材の吊りネジ部とナットによって連結される構成としてなることを特徴とする吊下げ折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。請求項8の発明を、請求項1又は2に記載の吊下げ折板屋根おいて、前記上吊り部材と前記下吊り部材とは、溶接にて連結固着される構成としてなることを特徴とする吊下げ折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項9の発明を、幅方向両側に立上り側板が形成されたベース部とコ字形状で且つ下係止板片側に前記ベース部を貫通する吊りネジ部が設けられたコ字状係止部とを有し該コ字状係止部は両前記立上り側板内に収まり且つ上下方向に移動する構成とした上吊り部材の前記コ字状係止部と前記ベース部とで吊下げ構造材のフランジ部を挟持し、挟持頂部の幅方向の両端から下方に向かって吊脚部が形成され、該吊脚部の下部に嵌合部を有し且つ前記上吊り部材に連結される下吊り部材を、前記上吊り部材に前記吊りネジ部とナットを介して連結すると共に、該ナットの締付により前記コ字状係止部と前記ベース部とで挟持固定し、前記下吊り部材の両前記吊脚部の両前記嵌合部を所定間隔に山形状部を有すると共に該山形状部の高さ方向中間箇所に被嵌合部を有する折板屋根板材の両前記被嵌合部に嵌合し、前記山形状部内に拡張固定具を挿入し、該山形状部内にて幅方向に拡張して該山形状部の両前記被嵌合部箇所間に亘って設置し、前記拡張固定具によって前記山形状部の両前記被嵌合部同士の間隔を所定間隔に維持してなることを特徴とする吊下げ折板屋根の施工法としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、吊りネジ部が設けられた上吊り部材と下吊り部材を、前記吊りネジ部による締め付けによって、フランジ部を有する吊下げ構造材のフランジ部に無溶接で簡易且つ迅速に装着することができる。そして、下吊り部材は、内方に向かう嵌合部を有している。
【0016】
そして、所定間隔に山形状部を有すると共に該山形状部の高さ方向中間箇所に被嵌合部を有する折板屋根を構成する折板屋根板材の山形状部の被嵌合部と下吊り部材の嵌合部とを嵌合させることで、上吊り部材と下吊り部材とを介して吊下げ構造材に折板屋根板材を極めて簡単に吊下げ施工することができる。
【0017】
さらに、拡張固定具が折板屋根における山形状部の両被嵌合部箇所間に設けられることで、両被嵌合部同士の間隔を所定間隔に維持することができる。これによって、拡張固定具は、山形状部の幅方向(Y方向)両側の被嵌合部の間隔が狭まらないようにして、下吊り部材からの脱落を防止するために、下吊り部材の両嵌合部と、折板屋根の山形状部の幅方向(Y方向)両被嵌合部との嵌合状態を強固な状態に維持することができる。
【0018】
本発明における吊下げ折板屋根は、基本的に最初に吊下げ構造材が設置された状態から該吊下げ構造材への上吊り部材と下吊り部材とによって構成された折板屋根吊り具が設置され、そして折板屋根吊り具の下吊り部材への折板屋根板材の設置が行われ、そして折板屋根板材により構成される折板屋根の山形状部への拡張固定具の設置による上方から下方への施工順序によって、吊下げ構造材の位置から下方側に向かって施工することができ、極めて施工作業を行い易いものにできる。
【0019】
そして、従来又は一般の吊下げ折板屋根に見られる折板屋根板材への孔開け加工等は、本発明における折板屋根板材においては全く不用であり、折板屋根板材を何ら加工することなくそのまま使用することができる。さらに、拡張固定具を前記山形状部の両被嵌合部箇所間に設けられることによって両被嵌合部同士の間隔を所定間隔に維持することができる。
【0020】
したがって、何らかの原因によって、折板屋根の山形状部の両被嵌合部同士の間隔が狭まることなく、折板屋根吊り具の下吊り部材の両嵌合部と、折板屋根の山形状部の両被嵌合部との嵌合状態を強固に維持することができ、これによって、極めて強固且つ耐久性のある吊下げ折板屋根を構成することができる。
【0021】
請求項2の発明では、前記拡張固定具は、二つの同一形状の右拡張板と左拡張板とボルト・ナットとを有する極めて簡単な構成によって、ボルト・ナットによる締め付けによって両拡張主板部同士が水平状とすることができ、両支持板部はそれぞれ他方側の拡張主板部に当接されることにより、両拡張主板部同士の水平状とした状態を安定させることができる。これによって、折板屋根の山形状部の幅方向(Y方向)両被kとの嵌合状態を強固な状態に維持することができ、ひいては強固な吊下げ折板屋根を施工することができる。
【0022】
請求項3の発明では、前記拡張固定具の前記右拡張板と前記左拡張板の両前記支持板部は、両前記拡張主板部よりも下方に位置され、両該拡張主板部の幅方向外端には下方に向かって押圧端縁が形成される構成により、ボルト・ナットによる締め付けによって両拡張主板部同士が略「V」字状の状態から水平状となり、これによって、折板屋根の山形状部の内方の狭い空間における右拡張板と左拡張板とが水平状になる動作が行われやすいものにできる。
【0023】
請求項4の発明では、前記拡張固定具の前記右拡張板と前記左拡張板の両前記支持板部は、両前記拡張主板部よりも上方に位置され、両該拡張主板部の幅方向外端には上方に向かって押圧端縁が形成されてなる構成により、ボルト・ナットによる締め付けによって両拡張主板部同士が略「へ」字状の状態から水平状となるものであり、拡張固定具を折板屋根における山形状部の内方に配置し易いものにできる。
【0024】
請求項5及び請求項6の発明では、前記拡張固定具は、構造が簡単で、比較的小形な形状にすることができ、折板屋根における山形状部の内方に配置し易いものにできる。請求項7の発明では、前記吊りネジ部は前記コ字状係止部に固着され、前記上吊り部材と前記下吊り部材とは、前記上吊り部材の吊りネジ部とナットによって連結される構成としてなる構成により、吊りネジ部とナットとの締付けにて吊下げ構造材への装着と上吊り部材と下吊り部材との連結を吊りネジ部のみで行うことができる。請求項8の発明では、前記上吊り部材と前記下吊り部材とは、溶接にて連結固着される構成としたことにより上吊り部材と下吊り部材とを略一体化することができ、ひいては部品点数を減らすことができる。
【0025】
請求項9の発明では、基本的に最初に吊下げ構造材が設置された状態から該吊下げ構造材への上吊り部材と下吊り部材とによって構成された折板屋根吊り具を吊下げ構造材のフランジ部に設置し、下吊り部材に折板屋根板材を設置し、そして、山形状部への拡張固定具の設置とする方法により、吊下げ折板屋根の施工の順序は上方から下方へ向かって行われる。つまり、吊下げ構造材の位置から下方側に向かって施工することができ、極めて施工作業を行い易いものにでき、施工効率を格段と向上させ、極めて良好な作業を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(A)は本発明における吊下げ折板屋根を庇に使用した建築物の斜視図、(B)は(A)に建築物の正面図である。
図2】(A)は本発明の吊下げ折板屋根の正面略示図、(B)は(A)の要部拡大図、(C)は(B)の(α)部拡大図である。
図3】(A)は折板屋根吊り具において上吊り部材と下吊り部材とを分離した斜視図、(B)は上吊り部材と下吊り部材とを分離した縦断正面図、(C)は上吊り部材にて吊下げ構造材のフランジ部に装着した状態の縦断側面図である。
図4】(A)は吊下げ構造材に折板屋根吊り具にて折板屋根を吊下げ構造材に装着した要部側面図、(B)は(A)の要部断面図、(C)は吊下げ構造材に折板屋根吊り具を装着した要部斜視図、(D)は別のタイプの下吊り部材を使用した折板屋根吊り具にて折板屋根を支持している状態の要部正面図である。
図5】(A)は拡張固定具における第1実施形態の下降タイプの分解した斜視図、(B)は拡張固定具の斜視図、(C)は拡張固定具の縦断正面図、(D)は拡張固定具の分解した正面図、(E)の(I),(II),(III)は拡張固定具の右拡張板と左拡張板とを組付ける過程を示す平面斜視図である。
図6】(A)は拡張固定具の第1実施形態の下降タイプにおいて締付部材を緩めて右拡張板と左拡張板とが「V」字形状を構成している状態の正面図、(B)は拡張固定具において締付部材を締め付けて右拡張板と左拡張板とが水平状となった状態図、(C)の(I),(II),(III)は拡張固定具の右拡張板と左拡張板との傾斜段部と食込み溝部との動作を示す要部正面図、(D)の(I),(II),(III)は折板屋根の山形状部に拡張固定具の第1実施形態の下降タイプを装着する過程を示す要部正面図である。
図7】(A)は拡張固定具の第1実施形態の上昇タイプの分解した正面図、(B)は拡張固定具において締付部材を緩めて右拡張板と左拡張板とが「へ」字形状を構成している状態の正面図、(C)は拡張固定具において締付部材を締め付けて右拡張板と左拡張板とが水平状となった状態図、(D)の(I),(II),(III)は折板屋根の山形状部に拡張固定具の第1実施形態の上昇タイプを装着する過程を示す要部正面図である。
図8】(A)は拡張固定具の第2実施形態において締付部材を緩めて右拡張板と左拡張板とをセット前幅状態とした正面図、(B)は拡張固定具において締付部材を締め付けて右拡張板と左拡張板とをセット完了幅状態とした正面図、(C)は拡張固定具の第2実施形態の分解した一部断面とした正面図、(D)は(C)のY1-Y1矢視断面図、(E)の(I),(II),(III)は右拡張板と左拡張板とが幅方向(Y方向)に拡張するときの傾斜案内面と被傾斜案内面との動作を示す過程図、(F)の(I),(II),(III)は折板屋根の山形状部に拡張固定具の第2実施形態を装着する過程を示す要部正面図である。
図9】(A)は拡張固定具における第3実施形態の分解した斜視図、(B)は拡張固定具における第3実施形態の斜視図、(C)は拡張固定具における第3実施形態の縦断正面図、(D)は拡張固定具における第3実施形態の平面図、(E)は折板屋根の山形状部に拡張固定具の第3実施形態を装着した要部正面図、(F)は折板屋根の山形状部に拡張固定具の第3実施形態を装着した要部平面図である。
図10】(A)の(I),(II),(III)は吊下げ構造材のフランジ部に折板屋根吊り具の上吊り部材及び下吊り部材を装着する過程を示す要部側面図、(B)は吊下げ構造材に折板屋根吊り具の上吊り部材を装着しつつ下吊り部材を上吊り部材に連結しようとする工程の正面図である。
図11】(A)は吊下げ構造材に装着された折板屋根吊り具に折板屋根板材を装着しよとする工程の正面図、(B)は吊下げ構造材に折板屋根吊り具を介して装着された折板屋根板材に拡張固定具を装着しようとする工程の正面図、(C)は吊下げ構造材に折板屋根吊り具を介して装着された折板屋根板材に拡張固定具が装着されて施工完了した吊下げ折板屋根の正面図である。
図12】(A)は本発明の吊下げ折板屋根に使用される折板屋根板材の形状の実施形態を示す正面図、(B)は(A)の(β)部拡大図、(C)は(A)の(γ)部拡大図、(D)は折板屋根板材の下嵌合山形状部と上嵌合山形状部とが重合した山形状部を構成した要部正面図、(E)は折板屋根板材の別の実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明では、方向を示す文言としてX方向及びY方向を使用する。本発明においては、折板屋根吊り具Aの幅方向及び該折板屋根吊り具Aが装着される吊下げ構造材8の長手方向をY方向とし、このY方向に対して水平面上で直交する方向をX方向とする。
【0028】
以下、文中においてX方向は前後方向とも言う。また、Y方向は幅方向とも言う。したがって、折板屋根Cを構成する折板屋根板材9の長手方向はX方向となる。X方向及びY方向については、図中の主要箇所に記載した。以下に説明する本発明の構成要素では、その方向を示す基準は、全て上記X方向及びY方向に従うものとする。
【0029】
本発明の吊下げ折板屋根は、主に、折板屋根板材9と、折板屋根吊り具Aと、拡張固定具Bと、H形鋼等の形鋼による吊り構造材8とを備えている(図2参照)。前記折板屋根吊り具Aは、上吊り部材A1と下吊り部材4とによって構成されている。そして、吊下げ構造材8の下方側のフランジ部81に、上吊り部材A1と下吊り部材4によって構成される折板屋根吊り具Aが装着される〔図2(B),(C),図3図4等参照〕。
【0030】
該折板屋根吊り具Aを介して複数の折板屋根板材9が吊下げ構造材8に吊り下げられ、複数の折板屋根板材9が並列されることによって折板屋根Cが構成され、さらに吊下げ構造材8及び折板屋根吊り具Aによって吊下げ折板屋根が構成されたり、或いは吊下げ構造材8,折板屋根吊り具A等と共に折板屋根Cによる庇等が構成される(図1図2参照)。
【0031】
折板屋根吊り具Aにおける上吊り部材A1は、ベース部1と、コ字状係止部2と、吊りネジ部3とから構成される〔図3(A),(B)参照〕。ベース部1は、略長方形状のベース底板11と、立上り側板12,12とからなり、前記ベース底板11の両長辺からX方向(前後方向)に沿って立上り側板12,12が形成されている〔図3(A),(B)参照〕。
【0032】
ベース部1のベース底板11には、貫通孔13が形成されており、該貫通孔13は、吊りネジ部3のネジ軸31が貫通する部位となる〔図3(B)参照〕。コ字状係止部2は、断面略コ字形状の上係止板片21と下係止板片22と接続片23とからなり、上係止板片21と下係止板片22と接続片23とによって断面略コ字形状を構成するように形成されている〔図3(A),(C),図4等参照〕。
【0033】
具体的には、コ字状係止部2は、帯状金属板によって断面が略「コ」字形状となるようにして一体形成されたものであり、略方形状の上係止板片21の一端から略垂下状に接続片23が形成され、該接続片23の下端から前記上係止板片21と同一方向に延出するように形成されたものである(図3図4参照)。上係止板片21と下係止板片22とは前後方向の長さが同一又は略同一である。また、上係止板片21と接続片23に亘って断面略半円状で線状の補強リブ24が形成されている。
【0034】
接続片23は、上係止板片21と下係止板片22とを接続する部位であって、上係止板片21及び下係止板片22に対して垂直状に形成された部位である。コ字状係止部2において、前記接続片23と反対側に位置する部分は単なる開口であり、この開口を被挿入部25と称する。そして、H形鋼とした吊下げ構造材8のフランジ部81が、コ字状係止部2に対して、被挿入部25から挿入される〔図3(C),図4(B)参照〕。
【0035】
上係止板片21と下係止板片22とは、適宜の間隔をおいて略平行となるように形成されている。上係止板片21と下係止板片22との間隔の寸法は、後述する吊下げ構造材8のフランジ部81の端部箇が挿入される程度であり、比較的大型の型鋼のフランジ部81が挿入できる程度となっている〔図10(A)参照〕。
【0036】
コ字状係止部2の下係止板片22には、吊りネジ部3が下方に向かって装着されている(図3参照)。また、吊りネジ部3のネジ軸部31にはこれに螺合するナット32及びスプリングワッシャが備わっている。吊りネジ部3は、平頭ボルトの使用が好適であり、ボルト頭部は扁平円板形状としたものが好適である。ネジ軸部31は、下係止板片22の略中間位置に貫通孔22bが形成され、該貫通孔22bに吊りネジ部3のネジ軸部31が圧入されることにより固着される。また、特に図示しないがネジ軸部31が下係止板片22に溶接により固着されることもある。
【0037】
コ字状係止部2の上係止板片21と下係止板片22の長手方向の長さは、同一としているが、上係止板片21が下係止板片22の長手方向よりも短く形成されても構わない。コ字状係止部2の金属の強度が極めて強固なものであれば、下係止板片22の長さは、極めて僅かでもかまわない。
【0038】
コ字状係止部2の幅方向(Y方向)における長さ寸法Wbは、前記ベース部1の幅方向(Y方向)両側の両立上り側板12,12の内面側同士の間隔寸法Waよりも小さく形成される。つまり、Wb<Waである〔図3(B)参照〕。ここで、コ字状係止部2の幅方向(Y方向)における長さ寸法Wbは、コ字状係止部2が両立上り側板12,12の間で回動不能となるように、間隔寸法Waよりも小さく設定される。したがって、長さ寸法Wbは、間隔寸法Waよりも僅かに小さいことが好ましい。
【0039】
そして、コ字状係止部2の吊りネジ部3のネジ軸部31がベース部1のベース底板11に形成された貫通孔13に挿通されて、コ字状係止部2がベース部1の両立上り側板12,12間で且つベース底板11上に配置される〔図2(C),図4(C),(D)参照〕。コ字状係止部2がベース部1内に収められた状態で、ベース部1の立上り側板12の上端縁12aと、コ字状係止部2の上係止板片21の下面側21aと、立上り側板12の上端縁12aとの間隔寸法Kとする〔図3(C),図10(A)参照〕。吊りネジ部3のナット32をネジ軸部31に対して締め付けて行くと重合部分が増加して大きくなり、その分だけ間隔寸法Kは値が小さくなる〔図3(C)参照〕。
【0040】
コ字状係止部2の上部がベース部1の両立上り側板12,12内に収納されるに従い、コ字状係止部2の上係止板片21の下面側21aと、立上り側板12の上端縁12aとの上下間隔が次第に狭くなり、間隔寸法Kが小さくなる。これは、吊下げ構造材8のフランジ部81の種々の厚さに対応できる構成となる。つまり、間隔寸法Kはフランジ部81の厚さと同一かそれよりも僅かに小さい値となる。コ字状係止部2の下部側はベース部1内に収納され、この状態で、コ字状係止部2のY方向両端は、両立上り側板12,12に囲まれ、回動不能となり、コ字状係止部2は、ベース部1に対して水平回転方向に固定される。
【0041】
次に、下吊り部材4について説明する。該下吊り部材4は、上吊り部材A1の下部に接合されることにより、折板屋根吊り具Aとして使用されるものである。下吊り部材4は、挟持頂部41と吊脚部42,42と嵌合部43,43から構成されている〔図2図3(A),(B),図4(C)参照〕。
【0042】
前記挟持頂部41は、略方形門形状をなし、平坦(フラット)状の頂面41aと、該頂面41aの幅方向(Y方向)の両端から垂下片41b,41bが形成されている。前記両垂下片41b,41bの下端から両吊脚部42,42が形成され、両該吊脚部42,42の下部で且つ具体的には下端から、下吊り部材4の幅方向(Y方向)の内方側に向かって突出する嵌合部43,43が形成されている〔図3(A),(B)参照〕。
【0043】
該嵌合部43は、前記吊脚部42の下端より下吊り部材4の内方側に向かって略直角状に屈曲され、さらにその屈曲した部分の内端より上方に向かって直線状に屈曲されたものであり、全体として略「J」字形状及び逆略「J」字形状に形成されたものである〔図3(A),(B)参照〕。嵌合部43を略「J」字形状としたものでは、その先端部分が後述する折板屋根Cの山形状部9Tの被嵌合部94に食い込むように嵌合するものである〔図2(C)参照〕。
【0044】
また、嵌合部43の別の形状としては、吊脚部42の下端から内方に向かって略直角状に屈曲し、その内端からさらに下方に向かって吊脚部42と傾斜方向に沿って直線状に屈曲したものであり、全体として略「く」字形状及び逆略「く」字形状に形成されたものである〔図4(D)参照〕。嵌合部43を略「く」字形状としたものでは、その略「く」字形状とした屈曲部部分が後述する折板屋根Cの山形状部9Tの被嵌合部94に食い込むように嵌合するものである〔図4(D)参照〕。
【0045】
前記頂面41aに形成された頂面41aには、連結用貫通孔44が形成されており、該連結用貫通孔44には、上吊り部材A1の吊りネジ部3が挿通するようになっている。挟持頂部41と両吊脚部42,42と両嵌合部43,43は、1つの金属帯板材からプレス加工等により一体形成されたものである。挟持頂部41上は、前記上吊り部材A1と接続される部位となる。上吊り部材A1は、その幅方向(Y方向)の中心と、下吊り部材4の挟持頂部41の幅方向(Y方向)中心とが一致又は略一致するように連結されることが好ましい。
【0046】
また、下吊り部材4における両吊脚部42,42及び嵌合部43,43は、奥行方向つまりX方向において、所定の長さを有している。具体的には、前記挟持頂部41を長方形状としたときに、そのX方向を長辺とすると、吊脚部42及び嵌合部43のX方向における長さ寸法は、挟持頂部41の長辺に等しい〔図3(A)参照〕。
【0047】
下吊り部材4は、上吊り部材A1の下部に接合されるものであり、具体的には上吊り部材A1のベース部1のベース底板11の下面側に、下吊り部材4の挟持頂部41の直面41aが接合される。そして、上吊り部材A1のコ字状係止部2に装着された吊りネジ部3がベース底板11及び挟持頂部41を貫通し、吊りネジ部3にスプリングワッシャ33,ナット32によって締め付けられ、上吊り部材A1と下吊り部材4とが接合される〔図2(C),図3図4(B)参照〕。
【0048】
そして、このとき、吊りネジ部3とナット32による締め付けと共に、前記コ字状係止部2がベース部1のベース底板11に近づく構造となっている。これによって、コ字状係止部2の上係止板片21の下面側21aと、ベース部1の立上り側板12,12の上端縁12a,12aとによって吊下げ構造材8のフランジ部81が挟持固定されることになる〔図4(A),(B),(C),図10(A)参照〕。
【0049】
また、上吊り部材A1と下吊り部材4とは、溶接にて連結固着される構成とする実施形態も存在する。この実施形態では、上吊り部材A1のベース部1のベース底板11の下面側と、下吊り部材4の挟持頂部41とが溶接にて連結固着されるものである。この実施形態では、上吊り部材A1の吊りネジ部3とナット32は、上吊り部材A1と下吊り部材4とを連結する役目は無くなるが、コ字状係止部2とベース部1による吊下げ構造材8のフランジ部81への挟持固定の役目は存在するものである。この実施形態において上吊り部材A1と下吊り部材4との溶接は予め工場で行われ、溶接により連結された上吊り部材A1と下吊り部材4とからなる折板屋根吊り具Aが、吊下げ折板屋根を施工する現場に持ち込まれ、折板屋根の施工が行われる。
【0050】
次に、拡張固定具Bについて説明する。拡張固定具Bは、折板屋根Cの山形状部9T内に挿入されると共に該山形状部9T内にて幅方向(Y方向)に拡張して該山形状部9Tの両被嵌合部94,94箇所間に亘って設置され、これによって、両被嵌合部94,94同士の間隔が狭まらないように所定間隔に維持し、折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の嵌合部43,43と山形状部9Tの被嵌合部94,94との嵌合状態を強固に維持させる役目をなすものである。
【0051】
該拡張固定具Bは、折板屋根Cの山形状部9Tの幅方向(Y方向)における両被嵌合部94,94が形成されている箇所付近の間に亘って設けられるものであり、折板屋根Cの山形状部9Tの対向する両被嵌合部94,94が板折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の両嵌合部43,43に嵌合固定された状態で、山形状部9Tの幅方向(Y方向)両側の対向する両被嵌合部94,94の間隔が狭まらないように、その間隔を所定間隔に維持させる役目をなすものである〔図2(B),(C)参照〕。なお、山形状部9Tについては、後述する。
【0052】
折板屋根Cは、山形状部9Tの幅方向(Y方向)両側の被嵌合部94,94が、折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の両嵌合部43,43に挟持状態に嵌合されることによって、折板屋根Cが吊下げ構造材8に吊り下げられた状態となる〔図2(B),(C)参照〕。そして、拡張固定具Bの両嵌合部43,43と、折板屋根Cの山形状部9Tの両被嵌合部94,94との嵌合状態をさらに強化するために、拡張固定具Bが山形状部9T内に設置される。
【0053】
つまり、山形状部9Tの幅方向(Y方向)の両被嵌合部94,94の間隔が何らかの原因で狭くなると、折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の嵌合部43,43との嵌合力が弱くなり、折板屋根板材9が折板屋根吊り具Aから落下するおそれがある。このような事態を防止するため、拡張固定具Bは、折板屋根Cの山形状部9Tの両被嵌合部94,94箇所付近に当接して両被嵌合部94,94同士の間隔が狭まらないように所定間隔に維持するための「つっかえ棒」又は「突張り部材」としての役目をなす〔図2(B),(C),図6(D),図7(D)等参照〕。
【0054】
さらに、具体的には、拡張固定具Bは、山形状部9Tの幅方向(Y方向)両被嵌合部94,94の上方側の直近箇所に亘って設けられるものである。ここで、前記所定間隔とは、山形状部9Tにおける幅方向(Y方向)の両被嵌合部94,94と折板屋根吊り具Aの両嵌合部43,43とが強固且つ安定した嵌合となる場合における山形状部9Tの対向する被嵌合部94,94同士又は被嵌合部94,94付近同士の間隔のことをいう。
【0055】
拡張固定具Bには、複数の実施形態が存在する。まず、拡張固定具Bの第1実施形態を図5図6及び図7に基づいて説明する。第1実施形態には、下降タイプと上昇タイプとが存在し、まず、下降タイプを図5図6に基づいて説明する。ここで、下降タイプとは、締付部材7を緩めた状態において右拡張板5と左拡張板6とが略「V」字状をなし、締付部材7の締付により、右拡張板5と左拡張板6の両外端が上方から下方に下降して右拡張板5と左拡張板6とが水平状となるタイプのものをいう。これに対して、上昇タイプとは、締付部材7を緩めた状態において右拡張板5と左拡張板6とが略「へ」(又は「ハ」)字状をなし、締付部材7の締付により、右拡張板5と左拡張板6の両外端が下方から上方に上昇して右拡張板5と左拡張板6とが水平状となるタイプのものをいう(図7参照)。
【0056】
拡張固定具Bにおける第1実施形態の下降タイプでは、二つの同一形状の右拡張板5と左拡張板6とボルト71・ナット72による締付部材7とを有している〔図5(A),(D)参照〕。ここで、右拡張板5と左拡張板6は、説明の便宜上、見分けやすい名称としたものであり、図5乃至図7に示すように、右側に位置するものを右拡張板5とし、左側に位置するものを左拡張板6とした。したがって、見る方向によって、右拡張板5が左側に位置したり、左拡張板6が右側に位置することもあり、右拡張板5及び左拡張板6は、左右の位置が限定されるものではない。
【0057】
そして、右拡張板5と左拡張板6とは、同一且つ同大形状である〔図5(A),(D)参照〕。右拡張板5は、幅方向(Y方向)の外端を押圧端縁51aとした拡張主板部51と、傾斜段部52と、支持板部53により形成されている。同様に、左拡張板6は、幅方向(Y方向)の外端を押圧端縁61aとした拡張主板部61と、傾斜段部62と、支持板部63により形成されている〔図5(A),(D)参照〕。
【0058】
拡張固定具Bは、右拡張板5と、左拡張板6とが締付部材7によって連結された状態で使用されるものであり、この右拡張板5と左拡張板6とが適正に連結された状態を基準として、幅方向(Y方向)における外方側端部を、右拡張板5及び左拡張板6の外端とし、幅方向の中央側を右拡張板5及び左拡張板6の内端とする。図5(D)及び図5(E)の(I)において、右拡張板5の幅方向右端が外端であり、幅方向左端が内端である。また、左拡張板6の幅方向左端が外端であり、幅方向右端が内端である。
【0059】
右拡張板5の幅方向(Y方向)の外端側から内端側に向かって拡張主板部51,傾斜段部52,支持板部53の順で連続形成されている〔図5(A),(D)参照〕。つまり、右拡張板5において、幅方向の内端側に拡張主板部51が位置し、幅方向の外端側に支持板部53が形成され、拡張主板部51と支持板部53との間に傾斜段部52が位置するように形成されている〔図5(D),図5(E)の(I)参照〕。
【0060】
同様に、左拡張板6の幅方向内端側から拡張主板部61,傾斜段部62,支持板部63の順で連続形成されている。つまり、左拡張板6において、幅方向の内端側に拡張主板部61が位置し、幅方向の外端側に支持板部63が形成され、拡張主板部61と支持板部63との間に傾斜段部62が位置するように形成されている〔図5(D),図5(E)の(I)参照〕。
【0061】
右拡張板5を水平状に配置した状態において、拡張主板部51は、支持板部53よりも上方に位置し、具体的には拡張主板部51の外端側から支持板部53の内端側に向かって下方に傾斜するように傾斜段部52が形成される〔図5(A),(D)参照〕。拡張主板部51と支持板部53との高低差は、右拡張板5を形成する板材の板厚1枚分の厚さ寸法と同等又は略同等である〔図5(A),(D)参照〕。
【0062】
したがって、傾斜段部52は、板厚1枚分の差が出るように傾斜形される〔図5(D)参照〕。右拡張板5の拡張板部51は、幅方向(Y方向)において、最も大きく設定され、傾斜段部52が最も小さく設定され、支持板部53は拡張板部51と傾斜段部52の中間の大きさである。
【0063】
同様に、左拡張板6を水平状に配置した状態において、拡張主板部61は、支持板部63よりも上方に位置し、具体的には拡張主板部61の外端側から支持板部63の内端側に向かって下方に傾斜するように傾斜段部62が形成される〔図5(A),(D)参照〕。拡張主板部61と支持板部63との高低差は、左拡張板6を形成する板材の板厚1枚分の厚さ寸法と同等又は略同等である。したがって、傾斜段部62は、板厚1枚分の差が出るように傾斜形される〔図5(D)参照〕。左拡張板6の拡張板部61は、幅方向(Y方向)において、最も大きく設定され、傾斜段部62が最も小さく設定され、支持板部63は拡張板部61と傾斜段部62の中間の大きさである。
【0064】
右拡張板5の傾斜段部52には前後方向(X方向)に沿ってこの前後方向の中間位置まで食込み溝部54aが形成されている〔図5(A),(E)参照〕。該食込み溝部54aの溝幅は、傾斜段部52の幅方向(Y方向)と同等寸法であり、実際には傾斜段部52の前後方向(X方向)の略半分の部分が食込み溝部54aとして形成されている。
【0065】
換言するならば、傾斜段部52は前後方向(X方向)の略半分のみが形成されたものであり、残りの略半分は空隙となっている。また、食込み溝部54の幅方向(Y方向)は、傾斜段部52の幅方向(Y方向)よりも僅かに小さいこともあり、傾斜段部52としての部分が僅かに残る構成となる。
【0066】
また、食込み溝部54の幅方向(Y方向)は、傾斜段部52の幅方向(Y方向)よりも僅かに大きいこともあり、傾斜段部52としての部分は残らず傾斜段部52の部分は完全に空隙となる。そして、右拡張板5の前後方向(X方向)の中間位置から傾斜段部52を中心にして幅方向(Y方向)に沿って延在する連結長孔54bが形成されている〔図5(A),(E)参照〕。該連結長孔54bは、傾斜段部52の幅方向(Y方向)全体と拡張主板部51及び支持板部53の幅方向(Y方向)の一部に亘って形成されている〔図5(E)の(I)参照〕。
【0067】
同様に、左拡張板6の傾斜段部62には前後方向(X方向)に沿ってこの前後方向の中間位置まで食込み溝部64aが形成されている〔図5(A),(D)参照〕。該食込み溝部64aの溝幅は、傾斜段部62の幅方向(Y方向)と同等寸法であり、実際には傾斜段部62の前後方向(X方向)の略半分の部分が食込み溝部64aとして形成されている。
【0068】
換言するならば、傾斜段部62は前後方向(X方向)の略半分のみが形成されたものであり、残りの略半分は空隙となっている。そして、左拡張板6の前後方向(X方向)の中間位置から傾斜段部62を中心にして幅方向(Y方向)に沿って延在する連結長孔64bが形成されている。該連結長孔64bは、傾斜段部62の幅方向(Y方向)全体と拡張主板部61及び支持板部63の幅方向(Y方向)の一部に亘って形成されている〔図5(E)の(I)参照〕。
【0069】
そして、右拡張板5と左拡張板6同士が幅方向(Y方向)において左右対称に配置される〔図5(A),(D),(E)の(I)参照〕。右拡張板5の食込み溝部54aと、左拡張板6の食込み溝部64a同士がかみ合わせられ、食込み溝部54及び食込み溝部64のそれぞれに相手の傾斜段部62及び傾斜段部52を食い込ませるようにして接合させる〔図5(E)の(II)参照〕。
【0070】
そして、そのまま、右拡張板5と左拡張板6の前後方向(X方向)が揃うようにセットされる〔図5(E)の(III)参照〕。このとき、右拡張板5の食込み溝部54には左拡張板6の傾斜段部62が挿入し、左拡張板6の食込み溝部64には右拡張板5の傾斜段部52が挿入した状態であり、右拡張板5の連結長孔54bと、左拡張板6の連結長孔64bとは、前後方向(X方向)において位置が一致する〔図5(E)の(III)参照〕。
【0071】
右拡張板5と左拡張板6における両連結長孔54b,連結長孔64b同士に締付部材7のボルト71を挿通させ、必要に応じてスプリングワッシャ73を介してナット72により右拡張板5と左拡張板6とを連結する〔図5(A)~(C)参照〕。ここで、締付部材7においてナット72が拡張固定具Bの下面側に位置するようにセットされる〔図6(A),(B)参照〕。
【0072】
そして、締付部材7のボルト71・ナット72を緩めた状態で、右拡張板5と左拡張板6とは、それぞれの食込み溝部54と食込み溝部64との相互の食い込み箇所を中心にして、それぞれの外端側が上方となるように、略「V」字形状に折り畳むことができる〔図6(A)参照〕。
【0073】
ここで、右拡張板5と左拡張板6とが略「V」字形状に折り畳まれたときの右拡張板5と左拡張板6の外端同士の幅方向(Y方向)寸法をセット前幅と称する。そして、締付部材7が締め付けられて右拡張板5と左拡張板6とのが平坦状となったときの右拡張板5と左拡張板6の外端同士の幅方向(Y方向)寸法をセット完了幅と称する〔図6(A),(B)参照〕。
【0074】
締付部材7のボルト71・ナット72による締め付けによって拡張主板部51と拡張主板部61同士は、幅方向(Y方向)におけるそれぞれの外端側が次第に下方に下がり、略「V」字状の折り畳み状態〔図6(A)参照〕から水平状となりながら、幅方向(Y方向)に拡がることができる〔図6(B)参照〕。
【0075】
そして、右拡張板5と左拡張板6とが水平状のときには、右拡張板5の支持板部53が、左拡張板6の拡張主板部61の下面側に当接し、左拡張板6の支持板部63が右拡張板5の拡張主板部51の下面側に当接し、拡張主板部51と拡張主板部61の水平状態を確実に維持することができる〔図6(B)参照〕。
【0076】
拡張固定具Bは、締付部材7の締付状態で右拡張板5と左拡張板6と水平状の状態のときに、拡張固定具Bの幅方向(Y方向)における幅方向最大寸法又はセット完了幅寸法は、折板屋根Cの山形状部9Tの対向する被嵌合部94,94の直上又はその付近の傾斜状側片(92b,93b)箇所における間隔と同寸法であるか、或いはそれ以上とする。この場合でも僅かに大きく、両被嵌合部94,94箇所に対して常時、適正な圧力を有して押え付ける程度が好ましい〔図2(C),図6(D)の(III)参照〕。
【0077】
拡張固定具Bの第1実施形態の下降タイプを折板屋根Cの山形状部9Tの内方に設置する工程を説明する。折板屋根Cの山形状部9Tの下方から拡張固定具Bの右拡張板5と左拡張板6は、略「V」字状の屈曲状態〔図6(A),(D)の(I)参照〕から水平状に拡がる過程〔図6(A),(D)の (II)参照〕で、拡張固定具Bの幅方向(Y方向)の寸法が次第に大きくなり、右拡張板5と左拡張板6とが水平状〔図6(B), (D) の (III) 参照〕に到達したときには、折板屋根Cの山形状部9Tの対抗する両被嵌合部94,94に対して山形状部9Tの内部で嵌合部43,43が嵌合する〔図6(D) の (III)参照〕。
【0078】
そして、第1実施形態の下降タイプとしては、右拡張板5の支持板部53は、拡張主板部51よりも下方に位置され、拡張主板部51の幅方向外端には下方に向かって押圧端縁51aが形成されている〔図5(D)参照〕。同様に、左拡張板6の支持板部63は、拡張主板部61よりも下方に位置され、拡張主板部61の幅方向外端には下方に向かって押圧端縁61aが形成されている〔図5(D)参照〕。
【0079】
また、右拡張板5における拡張主板部51の押圧端縁51a及び左拡張板6における拡張板部61の押圧端縁61aは、上述したように下方又は上方に向かって折り返し状の折り曲げ形成がなされず、単に拡張板部51及び拡張板部61のそれぞれの外端縁の部分を押圧端縁51a及び押圧端縁61aとすることもある。
【0080】
これによって、右拡張板5と左拡張板6とはセット前では、略「V」字形状をなしており、締付部材7のボルト71・ナット72の締付によって、略「V」字形状にセットされた右拡張板5と左拡張板6とは水平状となる〔図6(A),(B)参照〕。この締付部材7の締付による右拡張板5と左拡張板6との折り畳み状態から水平状態に移行する過程の動作は、主に両食込み溝部54a,64a同士のかみ合い箇所を中心にして行われる〔図6(C)参照〕。
【0081】
そして、右拡張板5と左拡張板6がV字形状とした折り畳み状態から締付部材7(ボルト71・ナット72)による締め付けにて、それぞれの傾斜段部52,62が挿入する相手側の食込み溝部64,54との周縁に当接し、両該食込み溝部64,54は、相手側の傾斜段部52,62の傾斜面に沿って滑りながら、右拡張板5と左拡張板6とが水平状となるように拡がり、水平状に近づくにつれて、拡張固定具Bの幅方向(Y方向)の寸法が拡大してゆく〔図6(C)の(I)~(III)参照〕。右拡張板5と左拡張板6とは、食込み溝部64,54と、相手側の傾斜段部52,62とのかみ合いによって、極めて円滑にV字状の折り畳み状態から、水平状への移行が行われる。
【0082】
次に、第1実施形態の上昇タイプとしては、右拡張板5の支持板部53は、拡張主板部51よりも上方に位置され、拡張主板部51の幅方向外端には上方に向かって押圧端縁51aが形成されている〔図7(A),(C)参照〕。同様に、左拡張板6の支持板部63は、拡張主板部61よりも上方に位置され、拡張主板部61の幅方向外端には上方に向かって押圧端縁61aが形成されている〔図7(A),(C)参照〕。
【0083】
これによって、右拡張板5と左拡張板6とはセット前では、略「へ」(又は「ハ」)字形状をなしており、締付部材7のボルト71・ナット72の締め付けによって、略「へ」字形状にセットされた右拡張板5と左拡張板6とは、「へ」字形状から水平状となる〔図7(D)の(I),(II),(III)参照〕。
【0084】
次に、拡張固定具Bの第2実施形態について図8に基づいて説明する。この第2実施形態では、右拡張板5と左拡張板6とボルト71による締付部材7とを有している〔図8(A)~(D)参照〕。そして、右拡張板5は、拡張主板部55と接続板部56からなる。拡張主板部55の幅方向(Y方向)の外端に上方に折り返し傾斜状に折曲された押圧端縁55aが形成され、且つ幅方向(Y方向)の内端側から上方に向かって傾斜する傾斜案内面55bが形成されている。
【0085】
さらに、該傾斜案内面55aの幅方向(Y方向)内端側から水平且つ平坦状の接続板部56が連続状に形成され、該接続板部56には内ネジ部56aが形成されている。前記左拡張板6は、水平且つ平坦状の被接続板部65を有し、被接続板部65の幅方向(Y方向)の外端側に上方に折り返し傾斜状に折曲された押圧端縁65aが形成されており、また、被接続板部65の幅方向(Y方向)の内端側に下方に向かって傾斜する被傾斜案内面65bが形成されている。
【0086】
右拡張板5の傾斜案内面55aと、左拡張板6の被傾斜案内面65bとは、同一方向に傾斜し、傾斜角度は同一である。よって、右拡張板5と左拡張板6とが重合され、締付部材7による締付の過程において、傾斜案内面55aと被傾斜案内面65bとは面接触状態となり、相互に円滑にスライドできる構成となる。
【0087】
さらに、被接続板部65には幅方向(Y方向)に沿って長手方向となる長孔65cが形成されている。右拡張板5が上方で左拡張板6を下方として右拡張板5と左拡張板6が上下方向に配置される。右拡張板5の内ネジ部56aと、左拡張板6の長孔65cに、該長孔65c側から締付部材7のボルト71のネジ軸部が挿入され、右拡張板5の内ネジ部56aにボルト71が螺合される〔図8(C),(D)参照〕。
【0088】
右拡張板5における内ネジ部56aは、右拡張板5に貫通孔が形成され該貫通孔箇所で且つ接続板部56の上面側にナットがそのまま、接続板部56に溶接手段にて固着されたり〔図8(A)~(D)参照〕、或いは特に図示しないが、接続板部56に貫通孔が穿孔され、該貫通孔に内ネジが形成されて内ネジ部56aとする場合が存在する。右拡張板5と左拡張板6は、ボルト71による連結状態で、ボルト71が緩く設定されているときには、左拡張板6の長孔65cにより、右拡張板5と左拡張板6とは相互に幅方向(Y方向)において移動できる状態となる。
【0089】
また、右拡張板5の接続板部56の前後方向(X方向)両側には、案内側片56b,56bが形成されている〔図8(A)~(D)参照〕。両該案内側片56b,56bは、右拡張板5と左拡張板6とを上下方向に重合させたときに、両案内側片56b,56bが左拡張板6の被接続板部65の前後方向(X方向)両端を包持する。これによって、右拡張板5と左拡張板6とが重合され、拡張固定具Bとして、幅方向(Y方向)に拡張動作を行うときに長手方向に略一直線状にスライドすることができ、山形状部9Tの内方に設置して、拡張作業を行うときに安定した状態で作業を行うことができる。
【0090】
そして、ボルト71を締め付けることにより、右拡張板5の傾斜案内面55aと、左拡張板6の被傾斜案内面65b同士が重合しつつ相互にずれ合う〔図8(E) の(I),(II),(III)参照〕。これによって、右拡張板5と左拡張板6とは、相互に幅方向(Y方向)の外方側に移動し、右拡張板5と左拡張板6とによって構成される拡張固定具Bが幅方向(Y方向)に拡張される。これによって、該拡張固定具Bが折板屋根Cの山形状部9Tに設置されることで、山形状部9Tの幅方向(Y方向)両側の被嵌合部94,94の間隔を所定間隔に維持することができる。
【0091】
なお、拡張固定具Bの第2実施形態を山形状部9Tの内方に設置する場合は、拡張固定具Bの長手方向(Y方向)を折板屋根Cの山形状部9Tの前後方向(X方向)に揃えることで、山形状部9Tの両被嵌合部94,94間に挿入し易くなり、拡張固定具Bを両該被嵌合部94,94の上方に配置することができ、そのまま、拡張固定具Bの幅方向(Y方向)が山形状部9Tの前後方向(X方向)に直交するように回転させればよい。
【0092】
次に、拡張固定具Bの第3実施形態を図9に基づいて説明する。この拡張固定具Bの第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と略同様に、右拡張板5と左拡張板6とボルト71・ナット72とを有する。なお、第3実施形態において右拡張板5と左拡張板6については、左右の位置関係は存在せず、両者を区別する名称としての役目をなすものである。そして、右拡張板5は、略長方形状の板で、且つ任意の一つの対角線上の角部は円弧状角部57a,57aとし、他の対角線上の角部は略直角に近い約80度乃至約90度の鋭角とした直角状角57b,57bである〔図9(A),(D),(F)参照〕。右拡張板5には、略正方形状の貫通孔57cが形成されている。
【0093】
左拡張板6は、右拡張板5と外形を同一形状又は略同一形状としている。具体的には、左拡張板6は、略長方形状の板で、且つ任意の一つの対角線上の角部は円弧状角部67a,67aとし、他の対角線上の角部は略直角に近い約80度乃至約90度の鋭角とした直角状角67b,67bである。また、左拡張板6には円形状の貫通孔67cが形成されている。前記右拡張板5の前後方向両端には上方に向かって、略垂直状の立上り側片57d,57cが形成されている。
【0094】
両該立上り側片57d,57cは、右拡張板5の幅方向(Y方向)において、重なり合う領域を有しており、後述する角座金58を挟持状態で包持する構成となっている。該角座金58は、略正方形の方形状の板片であり、前記両立上り側片57d,57c内に収まる程度のサイズである。角座金58の中心位置には略正方形上の貫通孔58aが形成されている。ボルト71は、頭部付根部には断面方形状の角状付根部71bが形成され、右拡張板5の貫通孔57cにはボルト71の角状付根部71bが挿入する構成としたものである〔図9(C)参照〕。
【0095】
角座金58は、必要に応じて複数備えられることがあり、本発明の実施形態においては、2枚の角座金58が具備される。そして、右拡張板5と左拡張板6のそれぞれの円弧状角部57aと円弧状角部67a同士、及び直角状角57bと直角状角67b同士を合わせて、右拡張板5を上方とし、左拡張板6の下方として重合させる。そして、右拡張板5の上面側に角座金58を配置し、締付部材7のボルト71の角状付根部71bを角座金58の貫通孔58a、右拡張板5の貫通孔57c、左拡張板6の貫通孔67cに挿入させ、ナット72を螺合して、右拡張板5,左拡張板6及び角座金58を連結する。
【0096】
そして、ボルト71のネジ軸部71aを回転させることで、角状付根部71b及び右拡張板5は共に回転する。拡張固定具Bの第3実施形態による折板屋根Cの山形状部9Tの内方への装着については、拡張固定具Bの長手方向(Y方向)を折板屋根Cの山形状部9Tの前後方向(X方向)に揃えることで、山形状部9Tの両被嵌合部94,94間に挿入し易くなり、拡張固定具Bを両該被嵌合部94,94の上方に配置することができる。
【0097】
そして、そのまま、ボルト71を回転させて拡張固定具Bの幅方向(Y方向)が山形状部9Tの前後方向(X方向)に直交するように水平面上を回転させ、ナット72を締め付ければよい。また、拡張固定具Bを山形状部9T内にて水平面上を回転させるとき、まず、円弧状角部67a,67aから被嵌合部94,94付近に当接するように回転させることで、両円弧状角部57a, 57a及び両円弧状角部67a,67aが被嵌合部94,94付近に滑らかに当接し始める。
【0098】
そして、最終的に両直角状角57b,57b及び両直角状角67b,67bが山形状部9Tの両被嵌合部94,94付近に当接する。これによって、山形状部9Tと拡張固定具Bの相互の干渉を少なくして拡張固定具Bを山形状部9Tの被嵌合部94,94の直上且つ直近付近に設置することができる。
【0099】
折板屋根吊り具Aが装着される吊下げ構造材8は、折板屋根板材9が並列して構成される折板屋根板Cを吊り下げて支持する役目をなすものである〔図1(A)参照〕。本発明において、吊下げ構造材8は、主にH形鋼が使用され、H形鋼のフランジを吊下げ構造材8のフランジ部81として使用している。また、吊下げ構造材8は、H形鋼に限定されるものではなく、H形鋼以外に、断面L字状の山形鋼,断面コ字状の溝形鋼等のフランジを有するものであれば、どのような型鋼が使用されることもある。
【0100】
次に、折板屋根C及び該折板屋根Cを構成する折板屋根板材9について説明する。折板屋根板材9は、平坦状の主板91の幅方向(Y方向)の一端側に台形状且つ半山形状の下嵌合山形状部92が形成され、前記主板91の幅方向(Y方向)の他端側に台形状且つ半山形状の上嵌合山形状部93が形成されている〔図12(A)~(C)等参照〕。下嵌合山形状部92は、頂片92a,と傾斜状側片92bとから構成され、同様に上嵌合山形状部93は、頂片93a,と傾斜状側片93bとから構成されている〔図12(A)~(C)等参照〕。
【0101】
下嵌合山形状部92の幅方向(Y方向)両側の傾斜状側片92b,92bの一方は主板91と連続しており、他方は高さ方向において略中間位置よりも僅かに上方付近まで形成されたものである。同様に、上嵌合山形状部93の幅方向(Y方向)両側の傾斜状側片93b,93bの一方は主板91と連続しており、他方は高さ方向において略中間位置よりも僅かに上方付近まで形成されたものである。
【0102】
被嵌合部94は、下嵌合山形状部92の傾斜状側片92b及び上嵌合山形状部93の傾斜状側片93bの高さ方向の中間箇所に折り曲げ状に形成された直線状の屈曲部である。被嵌合部94よりも上方側が下方側よりも外方に突出するように形成されている〔図12(B),(C)参照〕。被嵌合部94は、下嵌合山形状部92では、幅方向(Y方向)一方側で且つ主板91と連続する傾斜状側片92b側にのみ形成されている。また、被嵌合部94は、上嵌合山形状部93では、幅方向(Y方向)両方側に形成されている。
【0103】
次に、折板屋根板材9にて吊下げ折板屋根の屋根部分を施工する工程について説明する。隣接する並設された折板屋根板材9,9,…の隣接する折板屋根板材9,9同士の一方の折板屋根板材9の上嵌合山形状部93上に、隣接する他方(別)の折板屋根板材9の下嵌合山形状部92が配置され、下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93とが重合され且つ上嵌合山形状部93の被嵌合部94と、下嵌合山形状部92の被嵌合部94とが嵌合される。
【0104】
このようにして、隣接する折板屋根板材9,9同士の下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93とが重合されることによって吊下げ折板屋根における屋根部分である折板屋根Cと、その山形状部9Tが形成される〔図12(D)参照〕。つまり、折板屋根Cにおける山形状部9Tは、下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93とが重合且つその被嵌合部94同士が嵌合されることによって構成されるものである。山形状部9Tは、略台形状に形成されたものであり、その幅方向(Y方向)両側の被嵌合部94,94から上方部分は次第に幅方向(Y方向)が狭まるような構成である。
【0105】
また、折板屋根板材9の幅方向(Y方向)両側の下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93との間おける主板91には、中間山形状部95が形成される実施形態も存在する。該中間山形状部95についても、幅方向(Y方向)両側で且つ高さ方向中間箇所に被嵌合部94,94が形成される。中間山形状部95についても、頂片95aと傾斜状側片95b,95bを有しており、被嵌合部94,94は傾斜状側片95b,95bに形成される〔図12(A)参照〕。
【0106】
また、下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93とが重合されることによって山形状部9Tが構成されるものとは異なり、中間山形状部95は、それ自体、単独で山形状部9Tを構成するものである。中間山形状部95は、1つの折板屋根板材9に1乃至複数個形成されるものであって、中間山形状部95が複数個形成される場合では、下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93とが重合されて構成される山形状部9Tと共に、中間山形状部95が等間隔となるように形成される。
【0107】
また、折板屋根板材9には、中間山形状部95が形成されず、下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93のみから構成される実施形態も存在する〔図12(E)参照〕。折板屋根板材9に中間山形状部95が形成されても、形成されなくても、折板屋根Cには複数の山形状部9Tが等間隔に配置されることになる。
【0108】
本発明における吊下げ折板屋根の全体の構成を、庇として使用される場合について説明する。H形鋼等の鋼材からなる吊下げ構造材8をその長手方向がY方向に沿うようにして配置される。吊下げ構造材8は、X方向において複数本が所定間隔をおいて並設される〔図1(A)参照〕。図1では吊下げ構造材8は2個としているが、折板屋根Cの前後方向(X方向)の長さによって、3個以上とすることもある。
【0109】
H型鋼とした吊下げ構造材8のフランジ部81に、折板屋根吊り具Aの上吊り部材A1が装着される〔図10(A)参照〕。上吊り部材A1は、前述したように、ベース部1とコ字状係止部2と吊りネジ部3とによって、吊下げ構造材8の下方側のフランジ部81に挟持状態で配置される〔図10(A)の(II)参照〕。そして、上吊り部材A1のベース部1に、前記吊りネジ部3とナット32によって下吊り部材4を接合し、さらにナット32の締付により、コ字状係止部2とベース部1とによって、フランジ部81への装着固定がなされる〔図10(A)の(III)参照〕。
【0110】
吊下げ構造材8の長手方向(Y方向)において、複数の折板屋根吊り具A,A,…が所定間隔をおいて装着される〔図10(B)参照〕。そして、吊下げ構造材8に装着された折板屋根吊り具Aのそれぞれの下吊り部材4に、折板屋根板材9の下嵌合山形状部92及び上嵌合山形状部93が装着される〔図11(B)参照〕。
【0111】
この下吊り部材4への折板屋根板材9の装着では、折板屋根板材9を、下吊り部材4よりも下方の位置から上方に位置する下吊り部材4に向かって押し上げて、折板屋根板材9の下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93のそれぞれの被嵌合部94が下吊り部材4の嵌合部43,43に嵌合するようにセットする〔図11(B)参照〕。
【0112】
なお、下嵌合山形状部92が折板屋根吊り具Aの下吊り部材4に装着されるのは、折板屋根Cを構成する幅方向(Y方向)の最端部に位置する折板屋根板材9の場合であり、その他の折板屋根板材9の下嵌合山形状部92は、既設の折板屋根板材9の上嵌合山形状部93の下に重合させることになる。
【0113】
そして、折板屋根吊り具Aによって吊下げ構造材8に装着された折板屋根板材9に、別の折板屋根板材9を折板屋根吊り具Aに装着した既設の折板屋根板材9の下方より、押し上げて、既設の折板屋根板材9の上嵌合山形状部93に別の折板屋根板材9の下嵌合山形状部92を重合且つ被嵌合部94同士を嵌合させ、この別の折板屋根板材9の上嵌合山形状部93は、そのまま、別の折板屋根吊り具Aの下吊り部材4に装着する。また、折板屋根板材9に中間山形状部95が存在する場合においては、該中間山形状部95を折板屋根吊り具Aに上嵌合山形状部93と同様に押し上げて重合且つ嵌合部43,43と被嵌合部94,94とを嵌合させる。
【0114】
このようにして、折板屋根板材9が折板屋根吊り具Aを介して吊下げ構造材8の下方に固定支持され、吊下げ構造材8の下方に複数の折板屋根板材9,9,…が並設されてゆく。そして、折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の幅方向(Y方向)両側の嵌合部43,43が折板屋根板材9の下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93とによって構成された山形状部9T及び中間山形状部95によって構成されたそれぞれの山形状部9Tの内方には拡張固定具Bが設置される〔図10(B),(C)参照〕。
【0115】
拡張固定具Bは、下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93とが重合されて構成される山形状部9T及び中間山形状部95により構成される山形状部9T,9T,…のそれぞれの幅方向(Y方向)両側に形成された被嵌合部94,94と、折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の嵌合部43,43との嵌合状態を維持する役目をなすものである。
【0116】
そして、拡張固定具Bが山形状部9Tの幅方向(Y方向)の両被嵌合部94,94の上方側直近箇所に当接するようにして両被嵌合部94,94間に橋渡し状に設置される。拡張固定具Bは、折板屋根Cの山形状部9Tにおいて、両被嵌合部94,94箇所と折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の両嵌合部43,43によって嵌合する位置に設置されるのが最適である。また、拡張固定具Bは、両被嵌合部94,94箇所で、折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の両嵌合部43,43によって嵌合されていない箇所に設置しても構わない。
【0117】
このように吊下げ構造材8に折板屋根吊り具Aを装着され、該折板屋根吊り具Aの下吊り部材4に折板屋根板材9の下嵌合山形状部92,上嵌合山形状部93及び中間山形状部95を嵌合され、最後に下嵌合山形状部92,上嵌合山形状部93及び中間山形状部95に拡張固定具Bが設けられることで庇とした吊下げ折板屋根が構成される〔図2図10(C)参照〕。
【0118】
本発明における吊下げ折板屋根の施工において、基本的に最初に吊下げ構造材8が設置された状態から該吊下げ構造材8への折板屋根吊り具Aの設置、そして折板屋根吊り具Aの下吊り部材4への折板屋根板材9の設置、そして折板屋根板材9により構成される折板屋根Cの山形状部9Tへの拡張固定具Bの設置による上方から下方への施工順序によって、作業員は常時、吊下げ構造材8の下方側から作業ができるものであり、極めて施工作業を行い易いものにでき、作業効率を格段に向上させている。なお、上記吊下げ折板屋根は、庇として説明したが、本発明における吊下げ折板屋根は通常の建築物の屋根に対しても適用できる。
【0119】
また、図1において、符号8Tは支持構造材であって、該支持構造材8Tは、前後方向(X方向)に並設された吊下げ構造材8,8を建築物の外方に設置するための梁材である。支持構造材8Tは型鋼であり、吊下げ構造材8と同様にH型鋼であり、且つ吊下げ構造材8のH型鋼よりもさらにサイズの大きいH型鋼であることが好適である。支持構造材8Tは、前後方向に並設された吊下げ構造材8,8の長手方向(Y方向)の両端に配置され、溶接等にて相互に固着される。
【0120】
さらに、図1において、符号8Wは、ワイヤ或いはケーブル等による吊り具であり、該吊り具8Wは、建築物の外壁と、前記支持構造材8T,吊下げ構造材8との間に傾斜状に張り渡され、吊下げ構造材8及び支持構造材8Tを外壁に強固に支持する役目をなすものである。
【0121】
次に、本発明における吊下げ折板屋根の施工法について図10図11に基づいて説明する。まず、最初に吊下げ構造材8を設置する〔図10(A)参照〕。ここで、吊下げ構造材8はH型鋼とする。次に、吊下げ構造材8に折板屋根吊り具Aを設置する。折板屋根吊り具Aは、上吊り部材A1と下吊り部材4とを有する。
【0122】
上吊り部材A1は、ベース底板11の幅方向両側に立上り側板12,12が形成されたベース部1とコ字形状で且つ下片側にベース底板11を貫通する吊りネジ部3が設けられたコ字状係止部2とを有しコ字状係止部2は両立上り側板12,12内に収まり且つ上下方向に移動する構成としたものである〔図10(A)の(I)参照〕。
【0123】
上吊り部材A1のコ字状係止部2とベース部1とでH型鋼とした吊下げ構造材8の下方側のフランジ部81を挟持する〔図10(A)の(II)参照〕。下吊り部材4は、挟持頂部41の幅方向の両端から下方に向かって吊脚部42,42が形成され、該吊脚部42,42の下端から内方に向かう嵌合部43,43を有するものである。下吊り部材4は、上吊り部材A1に吊りネジ部3とナット32を介して連結すると共に、該ナット32の締付によりコ字状係止部2とベース部1とで吊下げ構造材8のフランジ部81を挟持固定する〔図10(A)の(III),(B)参照〕。
【0124】
次に、折板屋根板材9の折板屋根吊り具Aの下吊り部材4よりも下方の位置に配置し、下嵌合山形状部92と上嵌合山形状部93のそれぞれの被嵌合部94,94を下吊り部材4の嵌合部43,43と嵌合させる〔図11(A)参照〕。次いで、別の折板屋根板材9の下嵌合山形状部92を、既設の折板屋根板材9の上嵌合山形状部93の下方より押し上げるようにして上嵌合山形状部93と下嵌合山形状部92とを重合且つ被嵌合部94同士を嵌合させる。これを繰り返して、折板屋根板材9を並設させて折板屋根Cを構成する。
【0125】
次に、折板屋根Cの山形状部9Tの内方に拡張固定具Bを配置する〔図11(B)参照〕。次に、山形状部9Tの幅方向両側の両被嵌合部94,94箇所を内部より押圧状に支持し、山形状部9Tの幅方向両側の両被嵌合部94,94同士の間隔を所定間隔に維持し、折板屋根吊り具Aの下吊り部材4の両嵌合部43,43と、山形状部9Tの両被嵌合部94,94との強固な嵌合状態を維持するものである〔図11(C)参照〕。
【符号の説明】
【0126】
A…折板屋根吊り具、B…拡張固定具、C…折板屋根、A1…上吊り部材、
1…ベース部、12…立上り側板、2…コ字状係止部、22…下係止板片、
3…吊りネジ部、4…下吊り部材、41…挟持頂部、42…吊脚部、43…嵌合部、
5…右拡張板、51…拡張主板部、51a…押圧端縁、52…傾斜段部、
53…支持板部、55…拡張主板部、55a…押圧端縁、55b…傾斜案内面、
56…接続板部、56a…内ネジ部、6…左拡張板、61…拡張主板部、
61a…押圧端縁、62…傾斜段部、63…支持板部、65…被接続板部、
65a…押圧端縁、65b…被傾斜案内面、65c…長孔、67c…円弧状角部、
7…締付部材、8…吊下げ構造材、81…フランジ部、9…折板屋根板材、
9T…山形状部、94…被嵌合部。

【要約】
【目的】吊り下げタイプとした折板屋根であって、折板屋根板材に吊り下げのための加工をすることなく施工することができる吊下げ折板屋根及びその施工法である。
【構成】所定間隔に山形状部9Tを有すると共に山形状部9Tの高さ方向中間箇所に被嵌合部94を有する折板屋根Cを構成する折板屋根板材9と、幅方向両側に立上り側板12が形成されたベース部1とベース部1を貫通する吊りネジ部3が設けられたコ字状係止部2とを有する上吊り部材A1と、吊脚部42の下部に嵌合部43を有し且つ上吊り部材A1連結される下吊り部材4と、拡張固定具Bとを備えること。吊下げ構造材8のフランジ部81に上吊り部材A1と下吊り部材4が固着され、下吊り部材4の嵌合部43が山形状部9Tに嵌合され、拡張固定具Bは山形状部9T内方側から両被嵌合部94間に設けられる。
【選択図】 図2
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図12