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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20240808BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20240808BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H05K1/11 H
H05K3/40 E
H05K1/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023095479
(22)【出願日】2023-06-09
(62)【分割の表示】P 2019538039の分割
【原出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2023105242
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2017158864
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】貝吹 忠拓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】大矢 遥那
(72)【発明者】
【氏名】柳本 佳亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 淳
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂樹
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-054884(JP,A)
【文献】特開2005-322706(JP,A)
【文献】特開2010-251402(JP,A)
【文献】特開2013-175504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 3/40
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する基材層と、
上記基材層の一方側の面に積層される第1導電層と、
上記基材層の他方側の面に積層される第2導電層と、
上記基材層及び第1導電層を厚さ方向に貫通する接続穴の内周面に積層され、上記第1導電層及び第2導電層間を電気的に接続するビアホールと
を備え、
少なくとも上記基材層の一方側の面における上記接続穴の断面形状が異形形状であり、
上記ビアホールが上記第2導電層を貫通しないブラインドビアホールであり、
上記接続穴が、少なくとも上記基材層の一方側の面における上記接続穴の断面形状の縁部を部分的に拡張する拡張部を有し、
上記拡張部の第1導電層の外側面における平均径が上記接続穴の拡張部を除く部分の平均径の0.1倍以上0.5倍以下であるプリント配線板。
【請求項2】
絶縁性を有する基材層と、
上記基材層の一方側の面に積層される第1導電層と、
上記基材層の他方側の面に積層される第2導電層と、
上記基材層及び第1導電層を厚さ方向に貫通する接続穴の内周面に積層され、上記第1導電層及び第2導電層間を電気的に接続するビアホールと
を備え、
少なくとも上記基材層の一方側の面における上記接続穴の断面形状が異形形状であり、
上記ビアホールが上記第2導電層を貫通しないブラインドビアホールであり、
上記接続穴が、少なくとも上記基材層の一方側の面における上記接続穴の断面形状の縁部を部分的に拡張する拡張部を有し、
上記接続穴の拡張部を除く部分の平均径が30μm以上150μm以下であるプリント配線板。
【請求項3】
上記拡張部の上記厚さ方向に垂直な断面積が上記第2導電層側から上記第1導電層側に向かって増大する請求項1又は請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
上記拡張部が上記基材層の他方側の面には存在しない請求項3に記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板に関する。本出願は、2017年8月21日出願の日本出願第2017-158864号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が進み、電子機器に用いられるプリント配線板の高密度配線化が求められている。このような求めに応じて、複数のパターニングされた導電層を有する多層プリント配線板が利用されることが少なくない。多層プリント配線板は、基材層を貫通する穴を形成してこの穴の内周面にめっきにより金属層を形成することで異なる導電層のパターン間を接続するビアホールを有することが多い。
【0003】
このような多層プリント配線板の配線密度をより増大するためには、ビアホールの径を小さくすることも必要となる。しかしながら、ビアホールの径を小さくすると、基材層に形成した穴の中に気泡が取り残されてめっき液を導入することができず、導電層間の接続不良が発生することがある。
【0004】
特に、片側の導電層にランドを形成する必要がないことから設置面積を小さくすることができるブラインドビアホールを採用する場合、基材層の穴の中に気泡が取り残されやすく、導電層間の接続不良が発生しやすい。
【0005】
これに対して、ブラインドビアホールの形成に際し、先端部から漸拡大する径を有するドリルによって先細テーパー状の穴を形成することによって、脱泡を促進してめっきを確実にする技術が提案されている(特開平5-82969号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-82969号公報参照
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様に係るプリント配線板は、絶縁性を有する基材層と、上記基材層の一方側の面に積層される第1導電層と、上記基材層の他方側の面に積層される第2導電層と、上記基材層及び第1導電層を厚さ方向に貫通する接続穴の内周面に積層され、上記第1導電層及び第2導電層間を電気的に接続するビアホールとを備え、少なくとも上記基材層の一方側の面における上記接続穴の断面形状が異形形状である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態のプリント配線板を示す模式的断面図である。
図2図2は、図1のプリント配線板の接続穴を示す模式的斜視図である。
図3図3は、図2とは異なる接続穴を示す模式的斜視図である。
図4図4は、図2及び図3とは異なる接続穴を示す模式的斜視図である。
図5図5は、図2乃至図4とは異なる接続穴を示す模式的斜視図である。
図6図6は、図2乃至図5とは異なる接続穴を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
上記公報に開示されるように、ドリルを用いる方法では、ビアホールの径を十分に小さくすることができないため、高密度配線化には限界がある。
【0010】
また、本願発明者らが検証した結果、穴の径が例えば100μm以下と小さい場合には、穴をテーパー状にするだけではめっき液の導入を確実にすることができず、導電層間の接続不良が発生し得ることが確認された。
【0011】
本開示は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、ビアホールによる導電層間の接続が確実なプリント配線板を提供することを課題とする。
【0012】
[本開示の効果]
本開示の一態様に係るプリント配線板は、ビアホールによる導電層間の接続が確実である。
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一態様に係るプリント配線板は、絶縁性を有する基材層と、上記基材層の一方側の面に積層される第1導電層と、上記基材層の他方側の面に積層される第2導電層と、上記基材層及び第1導電層を厚さ方向に貫通する接続穴の内周面に積層され、上記第1導電層及び第2導電層間を電気的に接続するビアホールとを備え、少なくとも上記基材層の一方側の面における上記接続穴の断面形状が異形形状である。
【0014】
当該プリント配線板は、少なくとも上記基材層の一方側の面における上記接続穴の断面形状が異形形状であることによって、めっきにより上記ビアホールを形成する際、接続穴に流入するめっき液の流速のばらつきが大きくなる。これにより、接続穴の中の空気がドーム状の気泡として取り残されることを防止して、接続穴の中にめっき液を充填することができる。このため、当該プリント配線板は、ビアホールが接続穴の内周面に均等な厚さに形成されるので、ビアホールによる導電層間の接続が確実である。
【0015】
当該プリント配線板において、上記接続穴が、少なくとも上記基材層の一方側の面における上記接続穴の断面形状の縁部を部分的に拡張する拡張部を有してもよい。このように、上記接続穴が上記拡張部を有することによって、この拡張部によってめっき液の接続穴への流入速度のばらつきが大きくなるので、接続穴の中の空気をより効率よく追い出すことができる。
【0016】
当該プリント配線板において、上記拡張部の厚さ方向に垂直な断面積が上記第2導電層側から上記第1導電層側に向かって増大してもよい。このように、上記拡張部が上記第2導電層側から上記第1導電層側に向かって断面積が増大することによって、拡張部から流入するめっき液の流路面積が漸減して流速が増大し、接続穴の中の空気をさらに確実に追い出すことができる。
【0017】
当該プリント配線板において、上記拡張部が上記基材層の他方側の面には存在しなくてもよい。このように、上記拡張部が上記基材層の他方側の面には存在しないことによって、上記基材層の他方側の面における接続穴の最大寸法を小さくすることができるので、第2導電層の配線密度をより大きくすることができる。
【0018】
当該プリント配線板において、上記拡張部の第1導電層の外側面における平均径が上記接続穴の拡張部を除く部分の平均径の0.1倍以上0.5倍以下が好ましい。このように、上記拡張部の第1導電層の外側面における平均径が上記接続穴の拡張部を除く部分の平均径が上記範囲内であることによって、めっき液によって接続穴の中の空気を確実に追い出せると共に、第1導電層のビアホール接続用ランドが過度に大きくならない。
【0019】
当該プリント配線板において、上記接続穴の拡張部を除く部分の平均径としては、30μm以上150μm以下が好ましい。このように、上記接続穴の拡張部を除く部分の平均径が上記範囲内であることによって、当該プリント配線板の従来のプリント配線板に対する有利性、つまりビアホールの欠陥発生率の差が顕著となる。
【0020】
ここで、「平均径」とは、円相当径を意味するものとする。具体的には、「拡張部の第1導電層の外側面における平均径」は、第1導電層の外側面上において、拡張部の外縁とこの外縁両端を結ぶ弦とで囲まれる領域と同じ面積を有するように前記外縁を円弧とした場合のこの円弧の直径の平均値である。また、接続穴の拡張部を除く部分の平均径は、接続穴の拡張部を除く部分の外縁と各拡張部の外縁両端を結ぶ弦とで囲まれる領域の面積と等しくなる円弧の直径の平均値として求められる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るプリント配線板の各実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0022】
[第一実施形態]
図1に、本開示の一実施形態に係るプリント配線板を示す。当該プリント配線板は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板である。
【0023】
当該プリント配線板は、絶縁性を有する基材層1と、基材層1の一方側の面に積層される第1導電層2と、基材層1の他方側の面に積層される第2導電層3と、基材層1を貫通し、第1導電層2及び第2導電層3間を電気的に接続するビアホール4とを備える。
【0024】
当該プリント配線板はビアホール4を配設するために、基材層1及び第1導電層2を厚さ方向に貫通するよう形成される接続穴5を有する。ビアホール4は、この接続穴5の内周面、第1導電層2の基材層1と反対側の面の接続穴5の周縁部、及び第2導電層3の接続穴5の内側に露出する部分に連続してめっきにより金属を積層することで形成される。つまり、このビアホール4は、第2導電層3を貫通しないブラインドビアホールである。
【0025】
図2に、接続穴5の形状を示すために、ビアホール4の形成並びに第1導電2及び第2導電層3のパターニングを行う前の状態を示す。図示するように、接続穴5は、少なくとも基材層1の一方側の面(第1導電層2が積層される側の面)における断面形状が異形形状である。より詳しくは、接続穴5は、少なくとも基材層1の一方側の面における上記接続穴の断面形状の縁部を部分的に拡張する拡張部6を有する。
【0026】
拡張部6は、第2導電層3側から第1導電層2側に向かって、厚さ方向に垂直な断面積が増大するよう形成される。また、拡張部6は、基材層1の内部でその断面積がゼロになり、基材層1の他方側の面(第2導電層が積層される側の面)には存在しない。
【0027】
当該プリント配線板は、接続穴5の少なくとも基材層1の一方側の面における断面形状が異形形状であることによって、めっきによりビアホール4を形成する際、接続穴5に流入するめっき液の流速のばらつきが大きくなる。これにより、接続穴5の中の空気がドーム状の気泡として取り残されることを防止して、接続穴5の中にめっき液を充填することができる。このため、当該プリント配線板は、ビアホール4が接続穴5の内周面に均等な厚さに形成されるので、ビアホール4による第1導電層2と第2導電層3との接続が確実である。
【0028】
特に、当該プリント配線板は、接続穴5が拡張部6を有することによって、この拡張部6によってめっき液の接続穴5への流入速度のばらつきをより大きくすることができるので、接続穴5の中の空気をより効率よく追い出すことができる。
【0029】
加えて、拡張部6が第2導電層3側から第1導電層2側に向かって上記断面積が増大するよう形成されることによって、拡張部6から流入するめっき液の流路面積が流れ方向下流側に向かって漸減することにより、拡張部6から流入するめっき液の流速が増大するので、接続穴5の中の空気をさらに確実に追い出すことができる。
【0030】
また、拡張部6が基材層1の他方側の面には存在しないことによって、基材層1の他方側の面における接続穴5の最大寸法を小さくすることができる。これにより、この接続穴5の他方側の端部を封止する第2導電層3の幅を小さくすることができるので、第2導電層3の配線密度をより大きくすることができる。
【0031】
以下、当該プリント配線板の各構成要素について詳述する。
【0032】
<基材層>
基材層1の材質としては、例えばポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル等を挙げることができる。中でも、例えば耐熱性等の機械的強度の点で、ポリアミド、ポリイミド及びポリアミドイミドが好適に用いられる。
【0033】
基材層1の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、基材層1の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、150μmがより好ましい。基材層1の平均厚さが上記下限に満たない場合、基材層1の強度が不十分となるおそれがある。逆に、基材層1の平均厚さが上記上限を超える場合、可撓性が不十分となるおそれがある。
【0034】
<導電層>
第1導電層2及び第2導電層3は、基材層1に積層される層状の導体をパターニングして形成される。
【0035】
第1導電層2及び第2導電層3を構成する導体を基材層1に積層する方法としては、特に限定されず、例えばシート状の導体を接着剤で貼り合わせる接着法、シート状の導体上に基材層1の材料である樹脂組成物を塗布するキャスト法、スパッタリングや蒸着法で基材層1上に形成した厚さ数nmの薄い導電層(シード層)の上にめっきにより金属導体層を形成するスパッタ/めっき法、シート状の導体を熱プレスで基材層1に貼り付けるラミネート法等を用いることができる。
【0036】
層状の導体をパターニングして第1導電層2及び第2導電層3を形成する方法としては、層状の導体上に、例えばフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、エッチングにより導体を選択的に除去する公知のサブトラクティブ法を用いることができる。
【0037】
通常、第1導電層2及び第2導電層3を形成する導体のパターニングは、ビアホール4の形成後に行われる。
【0038】
第1導電層2及び第2導電層3は、配線密度を向上するために、ビアホール4が接続されるランドと、このランドよりも幅が小さく、線状に延びる配線パターンとを有する構成としてもよい。
【0039】
第1導電層2及び第2導電層3を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば銅、アルミニウム、ニッケル等の金属が挙げられ、一般的には比較的安価で導電率が大きい銅が用いられる。第1導電層2を形成する材料と第2導電層3を形成する材料とは異なっていてもよい。また、第1導電層2及び第2導電層3は、表面にめっき処理が施されてもよい。
【0040】
第1導電層2及び第2導電層3の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、第1導電層2及び第2導電層3の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、100nmがより好ましい。第1導電層2及び第2導電層3の平均厚さが上記下限に満たない場合、導電性が不十分となるおそれがある。一方、第1 導電層2及び第2導電層3の平均厚さが上記上限を超える場合、可撓性が不十分となるおそれがある。
【0041】
第1導電層2及び第2導電層3の配線パターンの平均幅の下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、第1導電層2及び第2導電層3の配線パターンの平均幅の上限としては、500μmが好ましく、300μmがより好ましい。第1導電層2及び第2導電層3の配線パターンの平均幅が上記下限に満たない場合、配線パターンが断線するおそれがある。逆に、第1導電層2及び第2導電層3の配線パターンの平均幅が上記上限を超える場合、本開示の実施形態を適用しなくても接続穴5を大きくして第1導電層2と第2導電層3との接続を確実にすることができるので、本開示の実施形態の有利性が損なわれるおそれがある。
【0042】
<ビアホール>
ビアホール4は、接続穴5の内周面、第1導電層2の基材層1と反対側の面、及び第2導電層3の接続穴5の内側に露出する面に積層される下地導体層と、この下地導体層にさらに積層される主導体層とを有する構成とすることができる。
【0043】
(下地導体層)
上記下地導体層は、導電性を有する薄層であり、主導体層を電気めっきによって形成する際の被着体として利用される。この下地導体層は、無電解めっきにより積層された金属によって形成することができる。下地導体層を形成する金属としては、銅、銀、ニッケル、パラジウム等の金属が挙げられ、中でも柔軟性、厚付け可能性、電気銅めっきとの密着性が良好で、低電気抵抗である銅が好適である。
【0044】
上記下地導体層を銅の無電解めっきにより形成する場合、下地導体層の平均厚さの下限としては、0.01μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。一方、下地導体層の平均厚さの上限としては、1μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。下地導体層の平均厚さが上記下限に満たない場合、下地導体層の連続性が確保できず、主導体層を均一に形成できなくなるおそれがある。また、下地導体層の平均厚さが上記上限を超える場合、不必要にコストが高くなるおそれがある。
【0045】
下地導体層を形成する無電解めっきは、触媒の還元作用により触媒活性を有する金属を析出させる処理であり、市販の各種無電解めっき液を塗布することによって行うことができる。このように無電解めっきを用いて下地導体層を形成することで、下地導体層の積層が簡単であり、さらなる主導体層の積層を確実なものとすることができる。
【0046】
(主導体層)
上記主導体層は、上記下地導体層に電気めっきによって積層された金属で形成される。このように下地導体層を形成してからその内周面に主導体層を設けることにより、導電性に優れるビアホール4を容易かつ確実に形成できる。
【0047】
主導体層を形成する金属としては、銅、ニッケル等が挙げられ、中でも安価で低電気抵抗である銅が好適に用いられる。
【0048】
主導体層の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、主導体層の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。主導体層の平均厚さが上記下限に満たない場合、当該プリント配線板1の曲げ等によりビアホール4が破断し、第1導電層2と第2導電層3との間の電気的接続が絶たれるおそれがある。また、主導体層の平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板1が過度に厚くなるおそれや、製造コストが不必要に上昇するおそれがある。
【0049】
主導体層を形成する電気めっき形成工程では、下地導体層を被着体として電気めっきにより金属を積層することで下地導体層の内周面に接する主導体層を形成し、十分な厚さを有するビアホール4を形成することができる。このとき、第1導電層2の外面のビアホール4を積層するランド部以外の部分及び第2導電層3の外面には、めっき液が接触しないようレジストパターンが積層される。
【0050】
<接続穴>
接続穴5は、基材層1及び第1導電層2を厚さ方向に貫通し、接続穴5の拡張部を除く部分を形成する円筒面と、この円筒面の第1導電層側の端部の周方向の一部分を局所的に拡張して拡張部6を形成する例えば円錐面等とによって画定される。
【0051】
接続穴5の拡張部6を除く部分の形成方法としては、例えばパンチ加工、ドリル加工、レーザー加工等が適用できるが、中でも微細な接続穴5を正確に形成できるレーザー加工が特に好適である。
【0052】
接続穴5の拡張部6を除く部分、つまり円筒面の平均径の下限としては、30μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、接続穴5の拡張部6を除く部分の平均径の上限としては、150μmが好ましく、100μmがより好ましい。接続穴5の拡張部6を除く部分の平均径が上記下限に満たない場合、ビアホール4(特に主導体層)を形成する際にめっき液によって接続穴5の中の空気を追い出すことができず、接続穴5の内面にめっきできなくなり、第1導電層2と第2導電層3とを確実に接続することができないおそれがある。逆に、接続穴5の拡張部6を除く部分の平均径が上記上限を超える場合、拡張部6を形成しなくても接続穴5の中にめっき液を導入することができるので、本開示の実施形態を適用することに有利性が得られないおそれがある。
【0053】
(拡張部)
拡張部6は、少なくとも基材層1の第1 導電層側の面における接続穴5の断面を異形形状とするよう、第1導電層の厚さよりも大きい深さに形成される。
【0054】
厚さ方向に垂直な断面積が変化する拡張部6は、例えば円錐形状の切削工具を用いたミリング加工、多軸の加工機を用いた3 次元加工等によって形成してもよいが、レーザー光を第1導電層2に垂直に短時間照射することによって比較的容易に形成することができる。
【0055】
拡張部6の厚さ方向の最も長いところの長さ(以下、最大長さ)の下限としては、第1導電層2の厚さの1.2倍が好ましく、1.5倍がより好ましい。一方、拡張部6の厚さ方向の最大長さの上限としては、基材層1及び第1導電層2の合計厚さの0.9倍が好ましく、0.7倍がより好ましい。拡張部6の厚さ方向の最大長さが上記下限に満たない場合、めっき液で接続穴5の中の空気を確実に追い出すことができないおそれがある。逆に、拡張部6の厚さ方向の最大長さが上記上限を超える場合、製造誤差によって拡張部6が基材層1の第2導電層3側の面に達し得ることを考慮して第2導電層3のランドを大きくする必要が生じたり、拡張部6の第1導電層2の外面における径が大きくなることで第1導電層2のランドを大きくする必要が生じたりすることから、第1導電層2又は第2導電層3の配線パターンの高密度化を阻害するおそれがある。
【0056】
第1導電層2の外側面( 基材層1と反対側の面) における拡張部6の平均径の下限としては、接続穴5の拡張部6を除く部分の平均径の0.1倍が好ましく、0.2倍がより好ましい。一方、第1導電層2の外側面における拡張部6の平均径の上限としては、接続穴5の拡張部6を除く部分の平均径の0.5倍が好ましく、0.4倍がより好ましい。第1導電層2の外側面における拡張部6の平均径が上記下限に満たない場合、拡張部6の断面積が小さくなり、めっき液で接続穴5の中の空気を確実に追い出すことができないおそれがある。逆に、第1導電層2の外側面における拡張部6の平均径が上記上限を超える場合、第2導電層2のランドを大きくする必要があるため、第1導電層2の配線パターンの高密度化を阻害するおそれがある。
【0057】
第1導電層の外側面における拡張部6の外縁両端間の平均距離の下限としては、接続穴5の拡張部6を除く部分の平均径の0.1倍が好ましく、0.2倍がより好ましい。一方、第1導電層の外側面における拡張部6の外縁両端間の平均距離の上限としては、接続穴5の拡張部6を除く部分の平均径の0.5倍が好ましく、0.4倍がより好ましい。第1導電層の外側面における拡張部6の外縁両端間の平均距離が上記下限に満たない場合、拡張部6の断面積が小さくなり、めっき液で接続穴5の中の空気を確実に追い出すことができないおそれがある。逆に、第1導電層の外側面における拡張部6の外縁両端間の平均距離が上記上限を超える場合、拡張部6の幅が大きくなってめっき液の流速の差が小さくなることで、接続穴5の中の空気を確実に追い出すことができないおそれがある。
【0058】
拡張部6の数としては、1つでもよいが、めっき液の流れ方向によって接続穴5から空気を追い出す効果に違いが生じ難いよう、複数、例えば4つ以上設けることが好ましい。また、このめっき液の流れ方向の観点から、拡張部6は、周方向に均等な間隔で設けることが好ましい。
【0059】
<利点>
当該プリント配線板は、少なくとも基材層1 の一方側の面における接続穴5 の断面形状が異形形状であることによって、めっきによりビアホール4を形成する際、接続穴5に流入するめっき液の流速のばらつきが大きくなる。これにより、接続穴5の中の空気がドーム状の気泡として取り残されることを防止して、接続穴5の中にめっき液を充填することができる。このため、当該プリント配線板は、ビアホール4が接続穴5の内周面に均等な厚さに形成されるので、ビアホール4による第1導電層2と第2導電層3との間の接続が確実である。
【0060】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0061】
当該プリント配線板において、第1導電層及び第2導電層は相対的なものであって、1つのビアホールにおける第1導電層となる導電層が、他のビアホールにおける第2導電層とされてもよい。
【0062】
当該プリント配線板は、さらなる基材層及び導電層が積層された多層配線板であってもよい。また、当該プリント配線板は、例えばカバーレイ、ソルダレジスト、シールドフィルム等の他の層を備えていてもよい。
【0063】
当該プリント配線板におけるビアホールは、全ての導電層を貫通するスルーホールであってもよく、多層配線板の内部の導電層間を接続するインタースティシャルビアホールであってもよい。
【0064】
当該プリント配線板における基材層の一方側の面での接続穴の断面形状は、異形形状であればよく、拡張部を有していなくてもよい。例として、当該プリント配線板における接続穴は、図3に示すように多角形状の断面形状を有してもよい。
【0065】
当該プリント配線板における接続穴の拡張部は、例えば図4に示すように基材層及び第1導電層の厚さ全体に亘って延びる等断面の溝状に形成されてもよい。
【0066】
当該プリント配線板における接続穴の拡張部の断面形状は円形に限定されない。例として、当該プリント配線板における拡張部は、図5に示すように三角形状の断面を有するものであってもよい。また、当該プリント配線板における接続穴の拡張部は、図6に示すように接続穴の拡張部以外の部分との間が滑らかに接続されていてもよい。
【実施例
【0067】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0068】
本開示の効果を確認するために、円形断面の接続穴によりビアホールを形成したフレキシブルプリント配線板の試作例1 と、さらに円錐形状の拡張部を設けた接続穴によりビアホールを形成したフレキシブルプリント配線板の試作例2とを多数作成し、ビアホールの導通を検査した。
【0069】
試作例1は、ポリイミドフィルムから形成される厚さ32μmの基材層に、第1導電層及び第2導電層として厚さ12μmの銅箔を積層したものを用い、穴径85μmの接続穴を形成し、銅の無電解めっき及び電気めっきにより合計めっき厚さ8μmのビアホールを形成した。
【0070】
試作例2は、穴径85μmの円筒状の穴の外周面を円錐面状に拡張する拡張部を、90°毎に4箇所形成した。拡張部は、第1導電層の外面における幅及び径が30μm(円筒部の径の0.35倍)、第1導電層の外面から基材層の厚さ方向の長さが10μmとなるよう形成した。
【0071】
試作例1については、1,360,000個のサンプルの導通を確認し、試作例2については、1,180,000個のサンプルの導通を確認した。この結果、試作例1では、14個の導通不良が発見されたが、試作例2では、導通不良が発見されなかった。
【0072】
以上のように、接続穴に拡張部を設けてビアホールを形成することによって、第1導電層と第2導電層との間の接続不良を防止することができることが確認できた。
【符号の説明】
【0073】
1 基材層
2 第1導電層
3 第2導電層
4 ビアホール
5 接続穴
6 拡張部
図1
図2
図3
図4
図5
図6