(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240808BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240808BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/00 D
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2023130164
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2019228545の分割
【原出願日】2019-12-18
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祥平
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-203184(JP,A)
【文献】特開2018-118589(JP,A)
【文献】特開2010-008284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行するための走行制御を行う走行部(140)と、
現在位置から目的地へ向かう経路である長期経路とは別の経路であって、前記走行部が搭載されている車両である自車両が走行を継続するために、前記走行部が実行する次の制御周期で走行する
短期経路の候補となる候補経路を逐次計画する経路計画部(120)と、を備えた車両で用いられる装置であって、
前記経路計画部が計画した前記候補経路を前記自車両が走行した場合の事故の危険性を示す値を、前記候補経路別に逐次決定する決定部(151、161、171、551、561)を複数備え、
複数の前記決定部のうちから予め定めた検証対象の決定部を含む複数の前記決定部が決定した前記事故の危険性を示す値を取得し、取得した前記値を相互に比較して、前記候補経路から前記走行部に出力する経路を決定する装置。
【請求項2】
複数の前記決定部は、前記経路計画部が逐次計画した同じ候補経路を前記自車両が走行した場合の前記事故の危険性を示す値を、逐次決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記経路計画部が計画した前記候補経路を前記自車両が走行した場合であって、前記自車両の周囲に存在する周辺車両と前記自車両との間に事故が生じた場合における、前記自車両の責任の程度を示す潜在事故責任値を、前記候補経路別に逐次決定し、
前記装置は、複数の前記決定部のうちから予め定めた検証対象の決定部を含む複数の前記決定部が決定した前記潜在事故責任値を取得し、取得した前記潜在事故責任値を相互に比較して、前記候補経路から前記走行部に指示する経路を決定する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記経路計画部を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
車両が走行するための走行制御を行う走行部(140)と、
現在位置から目的地へ向かう経路である長期経路とは別の経路であって、前記走行部が搭載されている車両である自車両が走行を継続するために、前記走行部が実行する次の制御周期で走行する
短期経路の候補となる候補経路を逐次計画する経路計画部(120)と、を備えた車両で用いられる装置であって、
前記経路計画部が計画した前記候補経路を前記自車両が走行した場合であって、前記自車両の周囲に存在する周辺車両と前記自車両との間に事故が生じた場合における、前記自車両の責任の程度を示す潜在事故責任値を、前記候補経路別に逐次決定する事故責任決定部(151、161、171、551、561)を複数備え、かつ、
複数の前記事故責任決定部のうちから予め定めた検証対象の事故責任決定部を含む複数の前記事故責任決定部が決定した前記潜在事故責任値を取得し、取得した前記潜在事故責任値を相互に比較することで、前記検証対象の事故責任決定部の信頼性を検証する検証部(153、163、173、390、590)を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両の周囲に存在する周辺車両と自車両との間に事故が生じた場合における、自車両の責任の程度を示す潜在事故責任値を決定する技術が開示されている。さらに、特許文献1には、複数の候補経路に対してこの潜在事故責任値を決定し、潜在事故責任値に基づいて、複数の候補経路から、走行する経路として採用する経路を決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
潜在事故責任値の信頼性が低いと、適切な経路を採用することができない。また、責任がないことを示す潜在事故責任値に対応する経路を走行していれば事故の責任を負わない根拠とできることが検討されている。潜在事故責任値の信頼性が低いと、事故の責任を負わない根拠とすることができなくなる恐れがある。つまり、信頼性が低い潜在事故責任値が決定されると、その潜在事故責任値を使う処理に不具合が生じる恐れがある。
【0005】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、信頼性が低い値が決定されても、当該値を使う次の処理には不具合が生じにくい装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するための装置に係る1つの開示は、
車両が走行するための走行制御を行う走行部(140)と、
現在位置から目的地へ向かう経路である長期経路とは別の経路であって、走行部が搭載されている車両である自車両が走行を継続するために、走行部が実行する次の制御周期で走行する短期経路の候補となる候補経路を逐次計画する経路計画部(120)と、を備えた車両で用いられる装置であって、
経路計画部が計画した候補経路を自車両が走行した場合の事故の危険性を示す値を、候補経路別に逐次決定する決定部(151、161、171、551、561)を複数備え、
複数の決定部のうちから予め定めた検証対象の決定部を含む複数の決定部が決定した事故の危険性を示す値を取得し、取得した潜在事故責任値を相互に比較して、候補経路から走行部に出力する経路を決定する装置である。
上記目的を達成するための装置に係る他の1つの開示は、
車両が走行するための走行制御を行う走行部(140)と、
現在位置から目的地へ向かう経路である長期経路とは別の経路であって、走行部が搭載されている車両である自車両が走行を継続するために、走行部が実行する次の制御周期で走行する短期経路の候補となる候補経路を逐次計画する経路計画部(120)を備えた車両で用いられる装置であって、
経路計画部が計画した候補経路を自車両が走行した場合であって、自車両の周囲に存在する周辺車両と自車両との間に事故が生じた場合における、自車両の責任の程度を示す潜在事故責任値を、候補経路別に逐次決定する事故責任決定部(151、161、171、551、561)を複数備え、かつ、
複数の事故責任決定部のうちから予め定めた検証対象の事故責任決定部を含む複数の事故責任決定部が決定した潜在事故責任値を取得し、取得した潜在事故責任値を相互に比較することで、検証対象の事故責任決定部の信頼性を検証する検証部(153、163、173、390、590)を備える装置である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の車両制御システム100の構成を示す図である。
【
図2】各候補経路T
iが慎重経路T
safeかどうかを判断する処理を示す図である。
【
図3】事故責任決定部151、161、171が決定した潜在事故責任値A
Lvalを示す図である。
【
図4】検証部153、163、173の検証結果を示す図である。
【
図5】第2実施形態の車両制御システム200の構成を示す図である。
【
図6】第3実施形態の車両制御システム300の構成を示す図である。
【
図7】第4実施形態の車両制御システム400の構成を示す図である。
【
図8】更新部440が実行する処理を示す図である。
【
図9】第5実施形態の車両制御システム500の構成を示す図である。
【
図10】行動指示部550が実行する処理を示している。
【
図11】第6実施形態の車両制御システム600の構成を示す図である。
【
図12】第6実施形態における検証方法を示す図である。
【
図13】第7実施形態の車両制御システム700の構成を示す図である。
【
図14】第7実施形態における検証方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態の車両制御システム100の構成を示す図である。車両制御システム100は、自車両1に搭載されている。自車両1は、ある車両制御システム100を基準としたとき、その車両制御システム100が搭載されている車両である。
【0018】
車両は、道路上を走行する車両であれば特に限定はない。普通乗用車、トラック、バスなどが車両に含まれる。車両制御システム100は、自車両1の挙動を制御する装置である。挙動には、速度と進行方向とが含まれる。車両制御システム100は、レベル1以上の自動運転レベルに対応する車両制御を実行する。
【0019】
車両制御システム100は、1つ以上のセンサ101を備えている。センサ101は、周辺車両の挙動を検出するセンサであり、周辺車両の挙動を示すセンサ値を出力する。センサ101には、カメラを含ませることができる。他にも、センサ101には、ミリ波レーダ、LIDARを含ませることもできる。
図1には、センサ101として、センサ101a、101b、101cを示している。これらセンサ101a、101b、101cを区別しないときはセンサ101と記載する。
【0020】
センサ101には、自車両1の位置および自車両1の挙動を検出するセンサも含まれる。現在の自車両1の位置(以下、自車位置)を逐次検出できれば、自車両1の挙動である自車両1の速度、進行方向を決定できる。よって、自車位置を検出するセンサを備え、自車両1の挙動を直接的に検出するセンサ101は備えなくてもよい。自車位置を検出するセンサ101には、GNSS受信機も含ませることができる。自車両1の挙動を検出するセンサ101には、車速センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサなどを含ませることができる。
【0021】
また、LIDAR等により検出した自車両1の周辺の形状と高精度地図とを照合することで現在の自車位置を検出することができる。この場合、自車両1の位置および自車両1の挙動を検出する専用のセンサ101を備えずに、周辺車両の挙動を検出するセンサ101により、自車両1の位置および自車両1の挙動を検出することができる。
【0022】
センサ統合部110、行動計画部118、経路計画部120は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、センサ統合部110、行動計画部118、経路計画部120は、少なくとも1つのプロセッサ、不揮発性メモリ、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。不揮発性メモリには、汎用的なコンピュータを、センサ統合部110、行動計画部118、経路計画部120として作動させるためのプログラムが格納されている。プロセッサが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することで、コンピュータは、センサ統合部110、行動計画部118、経路計画部120として作動する。コンピュータがこれらの作動をすることは、プログラムに対応する方法が実行されることを意味する。
【0023】
センサ統合部110、行動計画部118、経路計画部120は、それぞれ別のプロセッサにより実現することができる。また、センサ統合部110、行動計画部118、経路計画部120の一部または全部を、1つのプロセッサを備えた構成により実現してもよい。
【0024】
センサ統合部110には、センサ101からセンサ値が入力される。センサ統合部110は、車両識別部111と環境判断部112とを備える。車両識別部111は、センサ値をもとに、周辺車両の相対挙動を逐次決定する。また、車両識別部111は、自車両1の位置と挙動も決定する。
【0025】
相対挙動には、相対位置および相対速度が含まれる。相対位置は、相対距離と相対方位により表すことができる。相対挙動は、自車両1の位置と周辺車両の位置の変化から決定することもできる。
【0026】
環境判断部112は、センサ値をもとに、自車両1の周辺の環境を判断する。環境には、自車両1が走行している道路の道路形状が含まれる。道路形状には、道路幅、道路傾斜、道路曲率、道路区画線の形状などが含まれる。自車両1の周辺の環境には、道路状況の他に、周辺車両以外に自車両1の周辺に存在する障害物の情報を含ませることもできる。
【0027】
センサ統合部110は、センサベース情報Sを、行動計画部118、経路計画部120、責任値決定装置130にそれぞれ出力する。センサベース情報Sは、センサ統合部110に入力されるセンサ値、および、センサ値をもとにして導出できる情報である。センサ値をもとにして導出できる情報には、環境情報と、対象車情報が含まれる。環境情報は、環境判断部112が判断した自車両1の周辺の環境を表す情報である。対象車情報は、センサ値から車両識別部111が決定した周辺車両の相対挙動、自車両1の位置と挙動を表す情報である。
【0028】
行動計画部118は、センサベース情報Sをもとに、周辺車両の相対挙動と、自車両1の周辺の環境と、自車両1の挙動とを決定し、それら自車両1の周辺の環境と、自車両1の挙動とから、自車両1の今後の行動計画を決定する。自車両1の今後の行動計画は、たとえば、車線変更して、直近の前方車両を追い越す、道路形状に沿って走行するために、進行方向を変更するなどである。
【0029】
経路計画部120は、自車両1が次に走行すべき短期経路の候補となる候補経路Ti(i=1,2,3・・・)を逐次計画する。短期経路は、走行部140が実行する制御を決定するための経路である。走行部140は、自車両1の加減速と進行方向を制御するために、自車両1に備えられている操舵アクチュエータと自車両1に備えられている駆動力源および制動装置を制御するための指示あるいは制御目標値を、それらを制御する制御装置へ出力する。短期経路は、走行部140が実行する次の制御周期で自車両1がどの方向にどの速度で走行するかが定まる経路である。短期経路には、時刻の情報も含まれ、ある時刻にどの位置に自車両1が位置すべきかが定まる。
【0030】
経路計画部120は候補経路Tiを、車両識別部111が識別した周辺車両の相対挙動と、環境判断部112が判断した自車両1の周辺の環境、および、行動計画部118が計画した行動計画に基づいて決定する。短期経路は、長期経路を複数に分割した経路であって、周辺車両を避けつつ、長期経路を走行することができる経路である。よって、短期経路は走行を継続するための経路である。長期経路は、現在位置から目的地へ向かう経路である。目的地は、自車両1の乗員により目的地が設定されている場合にはその目的地とすることができる。また、自車両1が現在走行中の道路を一定距離走行した地点を目的地とすることもできる。
【0031】
経路計画部120は、複数の候補経路Tiを計画する。前方に存在する車両を避けるために車線変更する2つの経路であっても、車線変更する時刻が相互に異なれば、異なる候補経路Tiである。また、前述したように、短期経路には時刻の情報も含まれるので、たとえば、同じ直進経路であっても、Δt秒後に到達する位置が異なれば、異なる候補経路Tiとなる。経路計画部120が計画する候補経路Tiの数は特に制限はない。経路計画部120が計画する候補経路Tiの数が状況によって変動してもよい。経路計画部120は、計画した候補経路Tiを責任値決定装置130に送る。
【0032】
責任値決定装置130は、少なくとも1つのプロセッサ、不揮発性メモリ、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。不揮発性メモリには、汎用的なコンピュータを、行動指示部150、160、170などとして作動させるためのプログラムが格納されている。プロセッサが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することで、コンピュータは、行動指示部150、160、170として作動する。なお、不揮発性メモリは、フラッシュメモリなど、書き込み可能なものとすることができる。
【0033】
3つの行動指示部150、160、170は、いずれも、事故責任決定部151、161、171と、経路選択部152、162、172と、検証部153、163、173を備える。
【0034】
事故責任決定部151は、経路計画部120が計画した各候補経路Tiを自車両1が走行した場合について、その候補経路Tiを走行して自車両1に事故が生じた場合に、自車両1の責任の程度を示す潜在事故責任値ALvalを決定する。
【0035】
本実施形態では、潜在事故責任値ALvalは、責任が低いほど小さい値になる。したがって、潜在事故責任値ALvalは、自車両1が安全運転をしているほど小さい値になる。たとえば、車間距離が十分に確保されている場合には、潜在事故責任値ALvalは小さい値になる。また、潜在事故責任値ALvalは、自車両1が急加速や急減速をする場合に、大きい値になるようにすることができる。また、事故責任決定部151は、自車両1が交通ルールに従って走行している場合に潜在事故責任値ALvalを低い値にすることができる。自車両1が交通ルールに従って走行しているかどうかを判断するために、事故責任決定部151は、自車両1が走行している地点の交通ルールを取得する構成を備えることができる。
【0036】
自車両1が走行している地点の交通ルールを取得する構成としては、自車両1の位置を検出し、その位置の交通ルールを、ルールデータベースから取得する構成を採用することができる。他にも、自車両1の周辺を撮像するカメラが撮像した画像を解析して、標識、信号機、路面標示などを検出することで、現在位置の交通ルールを取得することもできる。
【0037】
経路選択部152は、経路計画部120が計画した候補経路Tiから、走行部140に指示する経路を選択する。選択した経路を、以下、選択経路Tpassedとする。選択経路Tpassedは、慎重経路Tsafeであることが条件となる。慎重経路Tsafeは、対象車両に対して事故責任の小さい経路である。慎重経路Tsafeがない場合には、緊急停止経路Teを選択経路とする。緊急停止経路Teは、自車両1を緊急停止させる経路であり、予め設定されている経路である。
【0038】
図2に、各候補経路T
iが慎重経路T
safeかどうかを判断する処理を示す。
図2に示す各処理は経路選択部152が実行する。
図2に示す処理は、経路計画部120から候補経路T
iを取得する毎に実行する。また、
図2に示す処理は、各候補経路T
iについて実行する。
【0039】
S11では、候補経路Tiを走行したときのΔt秒後の自車状態St1を推定する。自車状態St1には、自車両1の位置および速度が少なくとも含まれる。S12では、S11で推定した自車状態St1の後に、緊急停止経路Teを走行して停止した場合の自車状態St2を推定する。S12で使用する緊急停止経路Teは、予め設定されている経路である。また、自車状態St2は、自車両1が停止しているので、主として、自車両1の位置を示すものである。
【0040】
S13では、自車両1の周囲から対象車両を1台選択する。ここで選択する対象車両は、すでに対象車両として選択した周辺車両とは異なる車両である。また、対象車両は、自車両1の周辺に存在している周辺車両から選択した車両である。さらに、周辺車両だけでなく、自車両1の周辺に存在している車両以外の物体、たとえば、電柱、歩行者、自転車などを対象として選択して、対象車両と同様にして以降の処理を実行してもよい。
【0041】
ある車両が自車両1の周辺に存在しているかどうかは、たとえば、自車両1を基準として定まる周辺領域にその車両が位置しているかどうかにより決定することができる。周辺領域は、自車両1を中心とし、車両の前後方向および左右方向に平行な辺を持つ矩形領域とすることができる。矩形の大きさは、車両の前方向を、車両の停止距離程度とすることができる。車両の後方は、車両の前方向と同じとしてもよいし、それよりも短くしてもよい。車両の左右方向における矩形の大きさは、1車線分の長さとすることができる。なお、周辺領域の大きさは、種々に設定可能である。また、周辺領域の形状も種々に設定可能である。たとえば、周辺領域の形状は、真円形あるいは楕円形であってもよい。
【0042】
周辺領域に存在している、自車両1以外の車両(以下、他車両)であって、自車両1との間に別の他車両が存在していない他車両は対象車両とする。また、自車両1との間に別の他車両が存在している他車両も、周辺領域に存在していれば、対象車両としてもよい。
【0043】
S14では、S13で選択した対象車両が、Δt秒後に取りうる行動セットAを推定する。この行動セットAは、Δt秒間に、対象車両が移動する可能性がある1つあるいは複数の軌道である。軌道は、Δt秒間に含まれる複数の時刻における対象車両の位置で表すことができる。あるいは、軌道は、S14を実行する時点における対象車両の最新の位置と、その後の操舵角と速度で表すこともできる。
【0044】
軌道が向かう方向として可能性のある範囲は、対象車両の現在の進行方向を基準とし、現在の進行方向から左右両側に一定範囲とすることができる。この一定範囲は、車速が高いほど狭い範囲としてもよい。
【0045】
対象車両の行動セットAは、対象車両情報から決定することができる。対象車両情報は、センサ統合部110から取得するセンサベース情報Sに含まれている。S15では、S14で決定した行動セットAに対して、自車両1が自車状態St1から自車状態St2まで状態変化すると、自車両1は有責かどうかを判断する。行動セットAに対して自車両1が有責かどうかは、前述した潜在事故責任値ALvalをもとに判断する。行動セットAが示す、対象車両の各軌道に対する自車両1の潜在事故責任値ALvalが、自車両1に事故の責任の少なくとも一部があることを示す値であれば、自車両1は有責であるとする。
【0046】
潜在事故責任値ALvalが0である場合以外は、自車両1に事故の責任の少なくとも一部があるとする。すなわち、潜在事故責任値ALvalが0である場合に限り、自車両1には事故の責任がないとすることができる。この場合、制御可能閾値は0である。ただし、制御実行可能閾値を0よりも大きい値としてもよい。
【0047】
行動セットAに対する潜在事故責任値ALvalは、行動セットAに含まれる各軌道について決定される。1つの行動セットAに対して潜在事故責任値ALvalが複数決定される場合、最も値が大きい潜在事故責任値ALvalをもとに、自車両1が有責かどうかを判断する。
【0048】
S15の判断結果がNOであればS16に進む。S16では、対象車両とすべき全部の車両に対して、自車両1が有責になるかをチェックしたかどうかを判断する。S16の判断結果がNOであればS13に戻る。S16の判断結果がYESであればS17に進む。S17では、候補経路Tiは慎重経路Tsafeであると判定する。
【0049】
S15の判断結果がYESであればS18に進む。S18では、候補経路Tiは慎重経路Tsafeではないと判定する。
【0050】
説明を
図1に戻す。本実施形態では、他の行動指示部160、170も経路選択部162、172を備えている。経路選択部162、経路選択部172もそれぞれ選択経路T
passedを決定する。したがって、責任値決定装置130は、経路選択部152が選択した選択経路T
passedを即座には走行部140に出力しない。検証部153による検証により、走行部140に出力する1つの選択経路T
passedを決定する。
【0051】
検証部153は、この検証部153と同じ行動指示部150に備えられている事故責任決定部151とは別の事故責任決定部、すなわち事故責任決定部161、171を検証対象として、検証対象の事故責任決定部161、171の信頼性を検証する。検証のために、検証部153は、検証対象の事故責任決定部161、171から、候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalを取得する。そして、取得した候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalを、事故責任決定部151が決定した候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalと比較する。
【0052】
行動指示部160は、事故責任決定部161、経路選択部162、検証部163を備える。事故責任決定部161は、潜在事故責任値ALvalを候補経路別に決定する点では事故責任決定部151と同じである。ただし、潜在事故責任値ALvalを決定するための基準が事故責任決定部151とは異なる。事故責任決定部161と事故責任決定部151は、バージョンが異なる事故責任決定部と見ることもできる。
【0053】
経路選択部162は、候補経路Tiから、1つの選択経路Tpassedを選択する。経路選択部162が実行する処理は、潜在事故責任値ALvalとして事故責任決定部161が決定した値を用いる点が異なる以外は、経路選択部152と同じ処理である。
【0054】
検証部163は、検証部163と同じ行動指示部160に備えられている事故責任決定部161とは別の事故責任決定部、すなわち、事故責任決定部151、171の信頼性を検証する。検証のために、検証部163は、事故責任決定部151、171から、候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalを取得する。そして、取得した候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalを、事故責任決定部161が決定した候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalと比較する。
【0055】
行動指示部170は、事故責任決定部171、経路選択部172、検証部173を備える。事故責任決定部171は、潜在事故責任値ALvalを候補経路別に決定する点では事故責任決定部151、161と同じである。ただし、潜在事故責任値ALvalを決定するための基準が事故責任決定部151、161とは異なる。
【0056】
経路選択部172は、候補経路Tiから、1つの選択経路Tpassedを選択する。経路選択部172が実行する処理は、潜在事故責任値ALvalとして事故責任決定部171が決定した値を用いる点が異なる以外は、経路選択部152、162と同じ処理である。
【0057】
検証部173は、検証部173と同じ行動指示部170に備えられている事故責任決定部171とは別の事故責任決定部、すなわち、事故責任決定部151、161の信頼性を検証する。検証のために、検証部173は、事故責任決定部151、161から、候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalを取得する。そして、取得した候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalを、事故責任決定部171が決定した候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalと比較する。比較する潜在事故責任値ALvalの数は、種々に決定可能である。種々の状況における潜在事故責任値ALvalを比較するために、数日間あるいはそれ以上に渡り、比較を行ってもよい。
【0058】
図3には、候補経路T
i別に、事故責任決定部151、161、171が決定した潜在事故責任値AL
valを示している。検証部153は、1行目を基準に、2行目および3行目の潜在事故責任値AL
valを比較して、事故責任決定部161と事故責任決定部171の信頼性を検証する。検証部163は、2行目を基準に、1行目および3行目の潜在事故責任値AL
valを比較して、事故責任決定部151と事故責任決定部171の信頼性を検証する。検証部173は、3行目を基準に、1行目および2行目の潜在事故責任値AL
valを比較して、事故責任決定部151と事故責任決定部161の信頼性を検証する。
【0059】
図3において1行目を基準に2行目を比較すると、どの候補経路T
iに対する潜在事故責任値AL
valも、2行目は1行目と大きく異なる。したがって、検証部153は、事故責任決定部161が信頼できないと決定する。
【0060】
1行目を基準に3行目を比較すると、どの候補経路Tiに対する潜在事故責任値ALvalも、3行目は1行目と実質的に同じである。3行目は1行目と実質的に同じであることから、検証部153は事故責任決定部171を信頼できると決定する。なお、実質的に同じであるかどうかは、たとえば、次の通りである。基準とする潜在事故責任値ALvalとの差分の絶対値が予め設定した所定値以下である場合に、実質的に同じであるとすることができる。この所定値は、基準とする潜在事故責任値ALvalの大きさによらず一定であってもよいし、あるいは、潜在事故責任値ALvalの大きさに比例した値であってもよい。
【0061】
図4には、検証部153、163、173の検証結果を示している。
図4において、NOは信頼できないと決定したことを意味し、OKは信頼できると決定したことを意味する。検証部163は、事故責任決定部151および事故責任決定部171はともに信頼できないと決定したことになる。
図3に示すように、事故責任決定部161が各候補経路T
iに対して決定した潜在事故責任値AL
valは、事故責任決定部151および事故責任決定部171が各候補経路T
iに対して決定した潜在事故責任値AL
valと大きく相違するからである。
【0062】
また、
図4を見ると、検証部173は、事故責任決定部151は信頼できると決定していることが分かる。
図3に示すように、事故責任決定部151が決定した潜在事故責任値AL
valは、各候補経路T
iとも、事故責任決定部171が決定した潜在事故責任値AL
valと実質的に同じであるからである。また、
図4を見ると、検証部173は、事故責任決定部161は信頼できないと決定していることが分かる。
図3に示すように、事故責任決定部161が決定した潜在事故責任値AL
valは、各候補経路T
iとも、事故責任決定部171が決定した潜在事故責任値AL
valと大きく異るからである。
【0063】
信頼性なしとする条件としては、たとえば、各候補経路Tiについて、潜在事故責任値ALvalの差分の絶対値を算出し差分の絶対値の総和が、予め設定した閾値以上であることを条件とすることができる。他にも、基準とする潜在事故責任値ALvalよりも、比較する潜在事故責任値ALvalが、一定値以上、安全であることを示す側の値になっていることを信頼性なしの条件とすることができる。この条件を用いれば、安全ではない候補経路Tiを、安全な経路であるとしてしまう恐れがある事故責任決定部を、信頼性がないと決定することができる。
【0064】
図4に示した結果から、事故責任決定部161は、2つの検証部153、173から信頼性がないと決定されたことが分かる。一方、事故責任決定部151と事故責任決定部171は、1つの検証部163のみから信頼性がないと決定されている。これらの結果は、事故責任決定部161が信頼性がないのであって、他の2つの事故責任決定部151、171は信頼性があるとすれば、説明できる。
【0065】
信頼性がある事故責任決定部が2つ以上ある場合、それら信頼性がある事故責任決定部とともに備えられている検証部は、相互に、検証対象とする事故責任決定部は信頼性があると決定することになる。
【0066】
検証部153、163、173は、検証結果を共有し、相互に検証対象とする事故責任決定部が、信頼性があるという検証結果になっている場合、その事故責任決定部とともに備えられてる経路選択部が選択した選択経路Tpassedを、走行部140へ指示する。なお、信頼性があるという検証結果になっている事故責任決定部および対応する経路選択部は複数、存在することになる。それら複数の経路選択部が選択した選択経路Tpassedは通常、同一であることが多いはずである。仮に、それら複数の経路選択部が選択した選択経路Tpassedが相互に異なっているとしても、どの選択経路Tpassedを走行部140に出力しても問題はない。そこで、複数の選択経路Tpassedを走行部140に出力可能である場合、どの経路選択部が選択した経路を走行部140に出力するかは、複数の経路選択部の間で優先順位を予め決定しておけばよい。
【0067】
走行部140は、選択経路Tpassedを走行するように自車両1の進行方向と速度とを決定する。そして、決定した進行方向と速度とに基づいて、自車両1に備えられている操舵アクチュエータと、自車両1に備えられている駆動力源および制動装置を制御する制御装置へ指示あるいは制御目標値を出力する。走行部140も、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。
【0068】
[第1実施形態のまとめ]
以上、説明した第1実施形態の車両制御システム100が備える責任値決定装置130は3つの事故責任決定部151、161、171を備えている。さらに、検証部153、163、173が、それぞれ、対応する事故責任決定部151、161、171が決定した潜在事故責任値ALvalを基準として、検証対象の事故責任決定部151、161、171が決定した潜在事故責任値ALvalを比較する。この比較により、検証対象の事故責任決定部151、161、171の信頼性を検証することができる。
【0069】
よって、仮に、どれか1つの事故責任決定部151、161、171が、改ざん、故障等により信頼性が低い潜在事故責任値ALvalを決定しても、潜在事故責任値ALvalを使う次の処理には不具合が生じにくい。
【0070】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0071】
図5に第2実施形態の車両制御システム200の構成を示す。車両制御システム200は、責任値決定装置230の構成が第1実施形態の責任値決定装置130と相違し、また、通知装置281を備えている。これ以外は、第1実施形態の車両制御システム100と同じである。
【0072】
責任値決定装置230は、検証結果データ出力部280を備えている点で、責任値決定装置130と相違する。検証結果データ出力部280は、検証部153、163、173が事故責任決定部151、161、171の信頼性を検証した結果を示す検証結果データを生成して、その検証結果データを通知装置281に出力する。
【0073】
検証結果データ出力部280が検証結果データを生成するのは、事故責任決定部151、161、171のいずれかが信頼性がないと決定されたときのみとすることができる。ただし、信頼性がないという検証結果となったかどうかによらず、全部の検証結果を示す検証結果データを、定期的に生成してもよい。
【0074】
通知装置281は、たとえば、文字が表示可能な表示装置である。また、通知装置281として、スピーカーを用いることもできる。なお、本実施形態では、通知装置281は自車両1に備えられている。しかし、検証結果データ出力部280は、無線により、自車両1の外部にあるサーバなどに、検証結果データを出力してもよい。
【0075】
この第2実施形態のようにすれば、通知装置281を通じて、人が、事故責任決定部が信頼できないことを認識することができる。その後、事故責任決定部が信頼できないことを認識した人は、自ら、あるいは、所定の修理者に依頼して、信頼できない事故責任決定部を修理、削除、交換等をすることができる。
【0076】
<第3実施形態>
図6に第3実施形態の車両制御システム300の構成を示す。車両制御システム300は、責任値決定装置330の構成が第2実施形態の責任値決定装置230と相違する。これ以外は、第2実施形態の車両制御システム200と同じである。
【0077】
責任値決定装置330は、3つの行動指示部350a、350b、350cを備えている。これら行動指示部350a、350b、350cは同一のものである。行動指示部350a、350b、350cは、それぞれ、事故責任決定部151a、151b、151cと、経路選択部152a、152b、152cを備えている。
【0078】
事故責任決定部151a、151b、151cは、いずれも、第1実施形態の事故責任決定部151と同じものである。経路選択部152a、152b、152cは、いずれも、第1実施形態の経路選択部152と同じものである。
【0079】
ただし、行動指示部150a、150b、150cは、検証部は備えていない。責任値決定装置330は、行動指示部150a、150b、150cとは別の要素として1つの検証部390を備えている。
【0080】
検証部390は、全部の事故責任決定部151a、151b、151cを検証対象としており、検証結果を検証結果データ出力部280に出力する。検証部390は、事故責任決定部151a、151b、151cから、各候補経路Tiについての潜在事故責任値ALvalを取得する。そして、候補経路Ti別に、事故責任決定部151a、151b、151cがそれぞれ決定した潜在事故責任値ALvalを比較する。
【0081】
本実施形態では、3つの事故責任決定部151a、151b、151cが同じである。したがって、潜在事故責任値ALvalを相互に比較した結果、相互に同じ値となっている複数の潜在事故責任値ALvalがある場合に、その潜在事故責任値ALvalを決定した事故責任決定部を信頼性があるとする。残りの潜在事故責任値ALvalを決定した事故責任決定部は信頼性がないとする。
【0082】
また、各候補経路Tiの潜在事故責任値ALvalが、同じ値になっている事故責任決定部が複数存在しない場合には、1つ以下の事故責任決定部のみが信頼性があり、どの事故責任決定部が信頼性があるのかを決定できないと結論する。
【0083】
<第4実施形態>
図7に第4実施形態の車両制御システム400の構成を示す。車両制御システム400は、責任値決定装置430の構成が、これまでの実施形態の責任値決定装置130、230、330と相違する。
【0084】
責任値決定装置430は、第2実施形態の責任値決定装置230に類似する。第4実施形態の責任値決定装置430は、更新部440を備えている点において第2実施形態の責任値決定装置230と相違する。
【0085】
更新部440は、自車両1の外部から、責任値決定装置430を新たな事故責任決定部として作動させるプログラムを受信して、受信したプログラムを不揮発性メモリに書き込むことにより、事故責任決定部を更新する。
【0086】
更新部440は、上記作動を実行するために、プロセッサを備えていることに加えて、無線回路441、不揮発性のメモリ442を備えている。無線回路441は、自車両1の外部と無線通信する。無線回路441は、公衆電話回線網、公衆無線LAN回線網などに接続可能して、自車両1の外部と無線通信する。
【0087】
図8に、更新部440が実行する処理を示す。S21では、無線回路441が、自車両1の外部に備えられているサーバから、事故責任決定部を更新するためのプログラムを受信する。
【0088】
S22では、このプログラムに電子署名があるか否かを判断する。電子署名がない場合にはS22の判断結果がNOになりS23に進む。S23では、受信したプログラムを破棄する。
【0089】
S22の判断結果がYESであった場合にはS24に進む。S24では、責任値決定装置430が備える不揮発性メモリにすでに書き込まれている、責任値決定装置430を事故責任決定部として作動させるプログラムを、メモリ442に書き込む。
【0090】
S25では、無線回路441が受信したプログラムを、責任値決定装置430が備える書き込み可能な不揮発性メモリの所定領域に書き込む。所定領域は、行動指示部を事故責任決定部として作動させることができる領域である。
【0091】
S26では、検証部153、163、173から検証結果を取得する。S27では、検証結果が、更新した事故責任決定部が信頼性があるという結果であったかどうかを判断する。信頼性があるという結果であった場合にはS28に進む。
【0092】
S28では、メモリ442に書き込んだプログラムを消去する。一方、S27の判断結果がNO、すなわち、更新した事故責任決定部が信頼性がないという検証結果であった場合には、S29に進む。S29では、メモリ442に記憶してある前のプログラムを、上記所定領域に書き込む。S30では、更新した事故責任決定部が信頼性がないという検証結果であったことを、サーバに返信する。なお、更新した事故責任決定部は信頼性があると判断された場合にもサーバに返信してもよい。
【0093】
この第4実施形態では、無線回路441を備えているので、事故責任決定部を更新することができる。また、更新部440は、無線回路441が更新用のプログラムを受信しても、そのプログラムに電子署名がない場合には受信したプログラムを破棄する(S23)。このようにすることで、悪意のある者により、事故責任決定部が改ざんされてしまうことを抑制できる。
【0094】
また、受信したプログラムを所定領域に書き込んだときにも、前のプログラムを保持している(S24)。そして、検証結果を取得し、その検証結果が、更新した事故責任決定部は信頼性がないという結果であった場合には、前のプログラムを書き戻す(S29)。これにより、仮に、新しいプログラムに不具合があったとしても、責任値決定装置430が、間違った選択経路Tpassedを決定してしまうことを抑制できる。
【0095】
また、検証結果が、更新した事故責任決定部は信頼性がないという結果であった場合には、プログラムを送信したサーバに検証結果を送信する(S30)。これにより、サーバは、不具合のあるプログラムをさらに配信してしまうことを抑制できる。
【0096】
<第5実施形態>
図9に第5実施形態の車両制御システム500の構成を示す。車両制御システム500は、責任値決定装置530の構成が、これまでの実施形態の責任値決定装置130、230、330、430と相違する。
【0097】
責任値決定装置530は、行動指示部550、更新部580、検証部590、検証結果データ出力部280を備える。行動指示部550は、事故責任決定部551と経路選択部552とを備える。事故責任決定部551および経路選択部552は、第1実施形態の事故責任決定部151、経路選択部152と同じである。
【0098】
更新部580は、自車両1の外部から、責任値決定装置530が、新たな事故責任決定部561としても作動することを可能にする更新プログラムを受信して、受信した更新プログラムを不揮発性メモリの追加領域に書き込む。
図9には、破線で事故責任決定部561を記載している。更新部580が更新プログラムを追加領域に書き込み、かつ、その更新プログラムが実行されるまでは、行動指示部550には事故責任決定部561は備えられていない。
【0099】
事故責任決定部561は、少なくとも一部において事故責任決定部551とは異なるアルゴリズムにより潜在事故責任値ALvalを決定する。事故責任決定部561は、たとえば、第1実施形態の事故責任決定部161と同じである。
【0100】
検証部590は、候補経路Ti別に、事故責任決定部551が決定した潜在事故責任値ALvalと事故責任決定部561が決定した潜在事故責任値ALvalとを比較する。この比較により、事故責任決定部561が、信頼性があるかどうかを決定する。
【0101】
本実施形態では、同じ候補経路Tiに対して決定される潜在事故責任値ALvalは2つであって、更新予定の事故責任決定部561が検証対象の事故責任決定部である。事故責任決定部561は、少なくとも一部において事故責任決定部551とは異なるアルゴリズムにより潜在事故責任値ALvalを決定する。したがって、候補経路Tiに対して事故責任決定部551が決定した潜在事故責任値ALvalと事故責任決定部561が決定した潜在事故責任値ALvalが常には同じにならない。そのため、1つの事故責任決定部551を基準として、事故責任決定部561を検証する手法が問題になる。
【0102】
検証部590は、事故責任決定部551が決定した潜在事故責任値ALvalと、事故責任決定部561が決定した潜在事故責任値ALvalとを一定期間、比較する。比較した結果、事故責任決定部561が決定した潜在事故責任値ALvalが常に実質的に事故責任決定部551が決定した潜在事故責任値ALvalと同じか、それよりも事故の責任が大きいことを示す値であった場合に、事故責任決定部561は信頼性があるとする。
【0103】
バージョンアップ後の事故責任決定部561が信頼性がある場合であっても、事故責任決定部561が決定する潜在事故責任値ALvalのほうが事故の責任が小さい、換言すれば、安全であることを示す値になることも想定される。しかし、このようなバージョンアップの場合、オフラインでバージョンアップをすればよい。
【0104】
オンラインで緊急にバージョンアップする必要性があるのは、本来は、潜在事故責任値ALvalが、より事故の責任が大きい(換言すれば危険である)ことを示す値でなければならない不具合を改善する場合である。
【0105】
上記のような検証手法を用いると、基準とする事故責任決定部551が1つのみであっても、更新する事故責任決定部561の信頼性を検証した上で、緊急性を要する不具合を解消する更新が可能になる。
【0106】
図10には、行動指示部550が実行する処理を示している。S31~S33は、
図8のS21~S23と同じである。S32の判断結果がYESであった場合にはS34に進む。
【0107】
S34では無線回路441が受信したプログラムを、責任値決定装置530が備える書き込み可能な不揮発性メモリの追加領域に書き込む。追加領域は、責任値決定装置530を事故責任決定部561としても作動させるために用意された領域である。
【0108】
S35では、検証部590から検証結果を取得する。S36では、検証結果が、更新した事故責任決定部が信頼性があるという結果であったかどうかを判断する。信頼性があるという結果であった場合にはS37に進む。
【0109】
S37では、経路選択部552に潜在事故責任値ALvalを提供する事故責任決定部を、事故責任決定部561に切り替える。また、合わせて、不要となった事故責任決定部551に対応するプログラムを責任値決定装置530が備える不揮発性メモリから消去してもよい。
【0110】
一方、S36の判断結果がNO、すなわち、更新予定の事故責任決定部561が信頼性がないという検証結果であった場合には、S38に進む。S38では、更新プログラムを破棄する。S39では、更新プログラムは信頼性がないという検証結果であったことを、サーバに返信する。なお、更新プログラムは信頼性があると判断された場合にもサーバに返信してもよい。
【0111】
なお、本実施形態で説明した検証方法は、実際に、事故責任決定部561に切り替える場合に限られず、実装するに足る信頼性があるかどうかを検証するのみに用いることもできる。そして、本実施形態で説明した検証方法で、信頼性があると決定できた場合に、工場等にて、事故責任決定部561を実装するようにしてもよい。
【0112】
<第6実施形態>
次に第6実施形態を説明する。
図11に第6実施形態の車両制御システム600を示す。車両制御システム600は、責任値決定装置630が、これまでの責任値決定装置と相違する。責任値決定装置630は、1つの事故責任決定部151と、1つの経路選択部152のみを備えている。また、検証部を備えていない。
【0113】
代わりに、外部にある検証装置650により、事故責任決定部151の信頼性を検証する。検証装置650は、たとえば、車検工場などに設置される。検証装置650は、テストデータ提供部651、標準値記憶部652、検証部653、通知装置654を備えている。
【0114】
テストデータ提供部651には、テスト用のセンサベース情報S(以下、テストデータ)が候補経路Ti別に記憶されている。テストデータ提供部651は、テストデータを事故責任決定部151に提供する。
【0115】
標準値記憶部652には、信頼性のある事故責任決定部に、テストデータ提供部651に記憶されたテストデータが入力された場合に、その事故責任決定部が出力すべき潜在事故責任値ALvalが、標準値として記憶されている。
【0116】
検証部653は、事故責任決定部151から潜在事故責任値ALvalを取得し、また、標準値記憶部652から標準値を取得する。そして、潜在事故責任値ALvalと標準値とを比較して、事故責任決定部151の信頼性を検証し、検証結果を通知装置654に出力する。
【0117】
通知装置654は、たとえば、文字が表示可能な表示装置である。通知装置654は、検証部653の検証結果を人に対して通知する。
【0118】
図12に、第6実施形態における検証方法を示す。S41では、テストデータ提供部651が事故責任決定部151にテストデータを入力する。事故責任決定部151は、入力されたテストデータをもとに潜在事故責任値AL
valを決定する。S42では、検証部653が事故責任決定部151から潜在事故責任値AL
valを取得する。S43では、検証部653が標準値記憶部652から標準値を取得する。
【0119】
S44では、検証部653が、S42で取得した潜在事故責任値ALvalと、S43で取得した標準値とを比較して、事故責任決定部151の信頼性を検証する。具体的には、潜在事故責任値ALvalが標準値と実質的に同一であるかどうかを判断する。潜在事故責任値ALvalが標準値と実質的に同一であれば、事故責任決定部151は信頼性があるとする。一方、潜在事故責任値ALvalが標準値と実質的に同一でなければ、事故責任決定部151は信頼性がないとする。S45では、S44で検証した検証結果を、通知装置654に出力する。
【0120】
この第6実施形態の責任値決定装置630は、1つの事故責任決定部151と、1つの経路選択部152のみを備えた簡素な構成である。また、検証部を備えていない。よって、コストダウンが可能である。外部にある検証装置650を用いて事故責任決定部151の検証をするので、事故責任決定部151の信頼性も担保できる。
【0121】
<第7実施形態>
次に第7実施形態を説明する。
図13に第7実施形態の車両制御システム700を示す。車両制御システム700は、データ送信装置710を備えている一方、責任値決定装置630を備えていない点が、車両制御システム600と相違する。
【0122】
データ送信装置710は、責任値決定装置630に提供するものと同じセンサベース情報Sを、検証サーバ750へ送信する。検証サーバ750は、自車両1の外部に設けられている。検証サーバ750は、データ受信装置751、データ蓄積部752、事故責任決定部753、検証部754を備えている。
【0123】
データ受信装置751は、データ送信装置710が送信するセンサベース情報Sを受信し、受信したセンサベース情報Sをデータ蓄積部752に蓄積していく。データ蓄積部752は、書き込み可能な不揮発性メモリであって、データ受信装置751から提供されたセンサベース情報Sを記憶する。
【0124】
事故責任決定部753は、センサベース情報Sに基づいて潜在事故責任値ALvalを決定する。検証部754は、事故責任決定部753の信頼性を検証する。検証方法は、事故時およびその直前に事故責任決定部753が決定した潜在事故責任値ALvalが、事故の危険性が高いことを示す値になっているかどうかを確認するという方法である。潜在事故責任値ALvalが、自車両1に事故の責任が大きいことを示す値になっている場合、自車両1は危険な運転をしていることになる。したがって、事故時には、潜在事故責任値ALvalが、自車両1に事故の責任が大きいことを示す値になっていることが多いはずである。よって、上記の検証方法で、753の信頼性を検証できるのである。
【0125】
事故が生じたかどうかは、センサベース情報Sに含まれる速度、加速度、画像データなどから判断することができる。また、事故には至らなかったが、事故を回避するために急制動や急旋回を行ったとき、および、その直前の潜在事故責任値ALvalが、事故の危険性があることを示す値になっているかどうかを確認してもよい。
【0126】
また、事故時、事故を回避するために急制動や急旋回を行ったとき、および、それらの直前以外の事故が生じる可能性が低い状況において、潜在事故責任値ALvalが、事故の危険性が低いことを示す値になっていることを確認してもよい。
【0127】
図14に、第7実施形態における検証方法を示す。S51では、データ受信装置751がセンサベース情報Sを受信する。S52では、S51で受信したセンサベース情報Sをデータ蓄積部752に記憶する。S53では、事故責任決定部753が、データ蓄積部752に蓄積されたセンサベース情報Sから潜在事故責任値AL
valを決定する。S54では、検証部754が、事故責任決定部753から潜在事故責任値AL
valを取得し、上述した方法により、事故責任決定部753が信頼性があるかどうかを検証する。
【0128】
この第7実施形態で説明した検証方法を用いることで、信頼性があることを確認した上で、事故責任決定部753を車両に搭載することができる。
【0129】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0130】
<変形例1>
実施形態では、行動計画部118が自車両1の今後の行動計画を決定し、経路計画部120は、行動計画部118が決定した行動計画をもとに短期経路を決定していた。しかし、経路計画部120は、行動計画部118が決定した行動計画を用いずに、周辺車両の相対挙動と、自車両1の周辺の環境とから、短期経路を決定してもよい。
【0131】
<変形例2>
第1~第4実施形態では、行動指示部を3つ備えていた。しかし、行動指示部の数は2つ、あるいは、4つ以上であってもよい。
【0132】
<変形例3>
実施形態では、複数の責任値決定部が決定した潜在事故責任値ALvalを比較する経路は、全部の候補経路Tiであった。しかし、各行動責任部が決定した選択経路Tpassedについての潜在事故責任値ALvalのみを比較してもよい。
【0133】
<変形例4>
本開示に記載の責任値決定装置130、230、330、430、530、630およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の責任値決定装置130、230、330、430、530、630およびその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の責任値決定装置130、230、330、430、530、630およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。ハードウエア論理回路は、たとえば、ASIC、FPGAである。
【0134】
また、コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体はROMに限られず、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていればよい。たとえば、フラッシュメモリに上記プログラムが記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1:自車両 118:行動計画部 120:経路計画部 130:責任値決定装置
140:走行部 150:行動指示部 151:事故責任決定部 152:経路選択部 153:検証部 160:行動指示部 161:事故責任決定部 162:経路選択部 163:検証部 170:行動指示部 171:事故責任決定部 172:経路選択部 173:検証部 230:責任値決定装置 280:検証結果データ出力部 281:通知装置 330:責任値決定装置 390:検証部 430:責任値決定装置 440:更新部 441:無線回路 442:メモリ 530:責任値決定装置 550:行動指示部 551:事故責任決定部
552:経路選択部 561:事故責任決定部 580:更新部 590:検証部 630:責任値決定装置 650:検証装置 651:テストデータ提供部
652:標準値記憶部 653:検証部 654:通知装置 710:データ送信装置 750:検証サーバ 751:データ受信装置 752:データ蓄積部
753:事故責任決定部 754:検証部