(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】携帯用放熱付与具
(51)【国際特許分類】
A61F 7/08 20060101AFI20240808BHJP
A61F 7/03 20060101ALI20240808BHJP
A61F 7/10 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61F7/08 361H
A61F7/08 314
A61F7/08 320Z
A61F7/10 310Z
(21)【出願番号】P 2023221291
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】中村 洸平
(72)【発明者】
【氏名】小嶌 美佐子
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-263131(JP,A)
【文献】実開平05-051150(JP,U)
【文献】実開平02-042552(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生した熱を放熱可能な発熱体と、携帯可能な態様で形成された本体とを有し、該本体の収容部に配設した該発熱体から、熱を提供先に放つ携帯用放熱付与具において、
前記発熱体は、
相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材を、収容部材の内部空間に漏れなく充填した板状
の蓄熱材パックであること、
前記本体は、
断熱材として機能する第1平板状部材、第2平板状部材、及び第3平板状部材を有し、前記第3平板状部材を、可逆的に展開または折り畳み可能な態様で構成され、前記第1平板状部材、前記第2平板状部材、及び前記第3平板状部材は何れも、それぞれ第1方向に延びる第1辺を一対で含む第1辺組と、それぞれ第2方向に延びる第2辺を一対で含む第2辺組をなす矩形状に形成され
ていること、
展開した状態の前記本体では、重ねて配置された前記第1平板状部材と前記第2平板状部材に対し、前記第1辺組の一方の前記第1辺同士と、前記第2辺組の一方の前記第2辺同士とが接続されている一方、前記第1辺組の他方の前記第1辺同士と、前記第2辺組の他方の前記第2辺同士との間は、前記発熱
体を自在に収納またはその取出し
可能な前記収容部の開口となっていること、
前記第3平板状部材は、その前記第1辺組を、前記第1平板状部材の前記第1辺に沿う配置で、前記第1平板状部材の他方の前記第2辺側で、隣接する前記第1平板状部材に繋がって延設されていること、
折畳んだ状態の前記本体では、前記提供先に向けて配置する第2平板状部材と、前記収容部に配置した前記発熱体を挟んで、前記提供先とは反対側に配置する前記第1平板状部材と、前記第3平板状部材とが、積層状に重ね合わさることにより、前記本体が扁平状に形成されること、
を特徴とする携帯用放熱付与具。
【請求項2】
請求項1に記載する携帯用放熱付与具において、
前記開口のうち、前記第2辺組の他方の前記第2辺同士の間は、前記第3平板状部材を前記第1平板状部材に向けて折り返すことにより、閉塞されること、
を特徴とする携帯用放熱付与具。
【請求項3】
請求項1に記載する携帯用放熱付与具において、
前記発熱体は、折畳み可能であること、
を特徴とする携帯用放熱付与具。
【請求項4】
請求項
1に記載する携帯式放熱付与具において、
前記収容部材の前記内部空間には、前記潜熱蓄熱材の融液の流れを規制する流動規制部が設けられていること、
を特徴とする携帯式放熱付与具。
【請求項5】
請求項
1に記載する携帯式放熱付与具において、
前記潜熱蓄熱材から放つ潜熱は、20℃以上~90℃以下の温度帯域内とする温熱、または0℃以上~20℃未満の温度帯域内とする冷熱であること、
を特徴とする携帯式放熱付与具。
【請求項6】
請求項
1に記載する携帯用放熱付与具において、
前記本体が折り畳まれた状態にある場合に、前記第1
平板状部材、前記第2
平板状部材、及び前記第3
平板状部材のうち、互いに対向した配置で重
なり合う部分を、着脱自在に連結可能な固着手段が、前記本体に設けられていること、
を特徴とする携帯用放熱付与具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載する携帯式放熱付与具において、
前記本体には、携行時に人の持ち運びを補助する携行補助手段が設けられていること、
を特徴とする携帯式放熱付与具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用先に持ち運び、例えば、屋外のベンチ上に敷いて座る等、このような使用の際に、発熱体から放つ熱を身体の一部分等、提供先に付与する携帯用放熱付与具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、屋外施設でのスポーツ観戦や、野外イベント開催等に代表されるように、屋外の施設内にあるベンチに長時間、来場者が座って観戦を楽しむ場合等に、来場者は、心地好く座るため、携帯したクッションをベンチに敷いて座ることもある。このようなクッションの中でも、温熱を発する機能を有した採暖クッションは、ベンチに座った状態で暖を採ることができるため、冷えた身体を温めて来場者の快適性を高めることができる。その採暖クッションの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、袋状の外皮内に緩衝材を充填した座部と、この座部の表面に形成されたポケットと、過冷却状態から結晶化させると発熱する溶液を含む温熱体と、持ち運ぶために設けたストラップとを有し、出し入れ自在に温熱体をポケットに収容できる携帯用クッションである。特許文献1では、温熱体は、酢酸ナトリウム水溶液等の溶液と、この溶液に刺激を与えるトリガーとを、袋体内に収容してなり、ポケット内のスペースを自在に移動できる程に小さく構成されている。使用者が、携帯用クッションの使用時に、トリガーにより温熱体内で溶液に刺激を与えて、溶液を結晶化させると、携帯用クッションでは、溶液に蓄えていた潜熱が放たれて、座部が温められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、座部は、その外皮内に充填したスポンジ等の緩衝材により、座り心地好く工夫されている。しかしながら、この座部の外皮は、特に断熱対策を施して構成されておらず、その外皮の表面に形成されたポケットに、温熱体は収容される。そのため、人が、屋外のベンチ上に特許文献1の携帯用クッションを敷いて座ると、温熱体から放つ温熱が、冷たくなっているベンチ座面等に伝熱して座部から逃げ易く、座っている人を温める以外に熱を失う放熱ロスは、無視できない程に大きい。それ故に、特許文献1の携帯用クッションは、より大きな放熱ロスを伴いながら、温熱体から温熱を放つため、座部に座った人を、より長い時間、快適な温度で持続的に温め続けることができない。
【0006】
また、特許文献1の場合、人が、携帯用クッションを携行して移動している最中に、温熱体が、収容されたポケット内で自由に動いてしまい、人の移動に伴って生じる振動に起因した衝撃により、温熱体内の溶液(酢酸ナトリウム水溶液等)が、移動の途中で、意図としない結晶化を招来してしまうことがある。温熱体が、このような状況になってしまうと、人が、目的の場所にある屋外のベンチ上に、携帯用クッションを敷いていざ座ろうとした時点で、温熱体は、既に放熱を終えた状態、または放熱している状態となってしまう。
【0007】
そのため、携帯用クッションが、一定の時間、温熱体からの温熱を付与し続ける性能を、本来具備していたとしても、温熱体の放熱が携帯用クッションの使用開始前に生じてしまうことによって、この携帯用クッションは、ベンチに座って必要な時間、暖を採り続けたい人に、温熱を付与し続けることができなくなってしまう虞がある。それ故に、特許文献1の携帯用クッションの使い勝手は良いとは言えない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、持ち込んだ使用先で、熱の損失を抑えると共に、必要とされる熱を、より長い時間、持続して使用者等の供給先に付与することができる携帯用放熱付与具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る携帯用放熱付与具は、以下の構成を有する。
【0010】
(1)発生した熱を放熱可能な発熱体と、携帯可能な態様で形成された本体とを有し、該本体の収容部に配設した該発熱体から、熱を提供先に放つ携帯用放熱付与具において、前記発熱体は、板状に形成されていること、前記本体は、互いに対向して配置可能な第1側部と第2側部とを含む扁平な袋状に形成され、前記第2側部と前記第1側部とが積層状に配置された状態の下、前記発熱体が、前記第2側部と隣接して設けた前記収容部に、自在に収納またはその取出しできる態様で、配設されること、前記収容部に前記発熱体を収納して放熱される状態では、前記発熱体を挟んだ前記第2側部側に比べ、前記発熱体の熱が、前記発熱体と離間した側にある前記第1側部の端面から外部に伝熱し難いよう、前記第1側部は、少なくとも一以上の第1の断熱材を含んで構成した放熱断熱部または、断熱性を有したシート状の第2の断熱材が積層された状態の前記第1の断熱材を、少なくとも含んで構成した放熱断熱部となっていること、を特徴とする。
【0011】
なお、本発明に係る携帯用放熱付与具における第1の断熱材の概念は、例えば、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリスチレン(PS:polystyrene)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリウレタン(PU:polyurethane)等の樹脂に対し、ガスを微細に分散して軽量化を図り、弾性変形可能に形成された板状の発泡材、板状のゴム製部材のほか、例えば、ポリエチレン(PE:polyethylene)等、樹脂製シート材による3層構造となっており、その両端の層を平坦状とし、その中間層に、円柱状または六角形状に成型された中空状の空気充填部を、幾何学的で規則的な配置の下、隣り同士を断続的に離間させた形態で形成された気泡緩衝材等である。すなわち、この第1の断熱材は、断熱性を有すると共に、一例である比重0.1(g/cm3)以下で、持ち運び時に特に困難を伴わない程度に軽量化されたもので、たとえ一般的な体格の成人男性の体重に相当する荷重負荷が作用しても、完全に潰されずに弾性変形域に留まる耐荷重性を兼ね備えた特性をなす部材の総称として、定義されたものである。
【0012】
また、第1の断熱材をなす物質の一例として、前述した気泡緩衝材のほか、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、インシュレーションボード、羊毛、単価コルク、ポリエチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、段ボール紙等、断熱材適用物質が挙げられる。また、第1の断熱材は、前述した耐荷重性を十分に有する部材の一部に、貼付や接合等による態様で一体化された構成であっても良い。加えて、第2の断熱材の一例についても、蒸着、貼付等の表面処理により、数~数百μmの厚みで形成されるアルミニウム等の金属箔や、金属よりも熱伝導性の低い樹脂等の材料で、フィルム状に形成される非熱伝導性物質のほか、これらの断熱材適用物質が挙げられる。
【0013】
さらに、第1の断熱材と第2の断熱材とを積層して構成する場合、第1の断熱材をなす物質と、第2の断熱材をなす物質は、双方で同じであっても、互いに異なっていても、どちらでも良い。特に、第1の断熱材のうち、前述した放熱断熱部側に配置する部分と、後述する放熱伝熱部側に配置する部分で、双方の仕様・特性を変えたい場合に、第1の断熱材が単体であると、そのような第1の断熱材を製造することは、技術的に困難を伴って、コスト高になってしまうこともある。そのような事態を避けるための対策の一つとして、それぞれ単体で第1の断熱材同士を積層すると、放熱断熱部側に配置する第1の断熱材と、放熱伝熱部側に配置する第1の断熱材で、双方の仕様・特性を変えることが、比較的容易に実現できるようになるからである。
【0014】
(2)(1)に記載する携帯用放熱付与具において、前記収容部に前記発熱体を収納して放熱される状態では、前記発熱体を挟んだ前記第1側部側に比べ、前記発熱体の熱が、前記発熱体と離間した側にある前記第2側部側で保温され易いよう、前記第2側部は、前記第1側部側との対比で、少なくとも同等以上の耐荷重特性を有し、荷重負荷に伴う弾性変形量を抑えた前記第1の断熱材で構成された放熱伝熱部となっていること、を特徴とする。
【0015】
なお、本発明に係る携帯用放熱付与具では、第2の断熱材の有無に拘わらず、少なくとも一以上の第1の断熱材により、放熱断熱部を構成するにあたり、用いる第1の断熱材の数量に関係なく、放熱断熱部が、少なくとも放熱伝熱部と同等、または放熱伝熱部よりも厚みを大きくして構成されていることが好ましい。その理由として、放熱断熱部が、その厚みを放熱伝熱部より大きくなっていると、発熱体の熱が、第1側部側から外部に伝熱してしまう放熱ロスを、抑制し易くできる傾向となる一方、放熱伝熱部が、その厚みを放熱断熱部よりも小さくなっていると、発熱体の熱は、保温される側の第2側部から身体等、熱の提供先に伝熱し易くできる傾向になるからである。
【0016】
(3)(1)または(2)に記載する携帯用放熱付与具において、前記第1の断熱材は、気泡緩衝材であること、を特徴とする。
(4)(3)に記載する携帯用放熱付与具において、前記第2の断熱材は、前記気泡緩衝材の表面に密着して形成されていること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する携帯用放熱付与具において、前記本体は、可逆的に展開または組み立て可能な態様であり、前記発熱体を挟む前記第2側部の反対側で、前記第1側部と隣接して配置可能な第3側部を有し、前記第3側部は、気泡緩衝材からなること、前記第1側部と前記第2側部は何れも、それぞれ第1辺を含む一の組の辺同士と、第2辺を含む他の組の辺同士でなす矩形状に形成され、前記本体が展開された状態では、前記第1側部と前記第2側部の前記第1辺同士、または前記第1側部と前記第2側部の前記第2辺同士が少なくとも繋がっていると共に、前記第2側部をなす四辺のうち、少なくとも一辺が、前記第3側部と繋がっていること、前記本体が組み立てられた状態では、前記収容部は、前記第1側部または前記第3側部のいずれか一方と、前記第2側部との間に形成されること、を特徴とする。
(6)(5)に記載する携帯用放熱付与具において、前記第1側部、前記第2側部、及び前記第3側部のうち、前記本体を組み立てた状態の下で、互いに対向した配置で重ね合う部分を、着脱自在に連結可能な固着手段が、前記本体に設けられていること、を特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する携帯用放熱付与具において、前記発熱体は、折畳み可能であること、を特徴とする。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載する携帯式放熱付与具において、前記発熱体は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材を、収容部材の内部空間に漏れなく充填した蓄熱材パックであること、を特徴とする。
(9)(8)に記載する携帯式放熱付与具において、前記収容部材の前記内部空間には、前記潜熱蓄熱材の融液の流れを規制する流動規制部が設けられていること、を特徴とする。
(10)(8)に記載する携帯式放熱付与具において、前記発熱体を加熱する加熱手段を備え、前記加熱手段は、前記蓄熱材パックと面接触させて前記潜熱蓄熱材を加熱するシート状のヒータであること、を特徴とする。
(11)(10)に記載する携帯式放熱付与具において、前記加熱手段は、カーボンヒータであること、を特徴とする。
(12)(8)に記載する携帯式放熱付与具において、前記潜熱蓄熱材から放つ潜熱は、20℃以上~90℃以下の温度帯域内とする温熱、または0℃以上~20℃未満の温度帯域内とする冷熱であること、を特徴とする。
(13)(1)乃至(12)のいずれか1つに記載する携帯式放熱付与具において、前記本体には、携行時に人の持ち運びを補助する携行補助手段が設けられていること、
を特徴とする。
【0017】
上記構成を有する本発明に係る携帯用放熱付与具の作用・効果について説明する。
【0018】
(1)発生した熱を放熱可能な発熱体と、携帯可能な態様で形成された本体とを有し、該本体の収容部に配設した該発熱体から、熱を提供先に放つ携帯用放熱付与具において、発熱体は、板状に形成されていること、本体は、互いに対向して配置可能な第1側部と第2側部とを含む扁平な袋状に形成され、第2側部と第1側部とが積層状に配置された状態の下、発熱体が、第2側部と隣接して設けた収容部に、自在に収納またはその取出しできる態様で、配設されること、収容部に発熱体を収納して放熱される状態では、発熱体を挟んだ第2側部側に比べ、発熱体の熱が、発熱体と離間した側にある第1側部の端面から外部に伝熱し難いよう、第1側部は、少なくとも一以上の第1の断熱材を含んで構成した放熱断熱部または、断熱性を有したシート状の第2の断熱材が積層された状態の第1の断熱材を、少なくとも含んで構成した放熱断熱部となっていること、を特徴とする。特に第1の断熱材については、(3)に記載する携帯用放熱付与具において、第1の断熱材は、気泡緩衝材であること、を特徴とする。
【0019】
この特徴により、例えば、スポーツ試合や野外イベント等、屋外施設内にあるベンチに座って観戦を長時間、楽しむ場合や、公園の椅子に座って寛ぐ場合等に、人が、椅子等の座面や背もたれに放熱断熱部を当接させた状態で、本発明に係る携帯用放熱付与具を介して椅子等に座ると、発熱体で発した熱のうち、椅子等の座面や背もたれ向けて伝熱する放熱ロスが、放熱断熱部で抑制できている。それ故に、本発明に係る携帯用放熱付与具は、発熱体からの放熱に対し、椅子等側への無駄な放熱ロスを抑えて保温性を高めた態様で構成されているため、発熱体から放つ熱が、その発熱体から放熱可能な全熱容量のうち、無駄な放熱ロスを抑えている分、より長い時間、快適さを感じる最適な温度に維持された状態で、身体側に配する第2側部に伝熱するようになる。
【0020】
従って、本発明に係る携帯用放熱付与具によれば、持ち込んだ使用先で、熱の損失を抑えると共に、必要とされる熱を使用者等の供給先に持続的に付与することができる、という優れた効果を奏する。
【0021】
(2)に記載する携帯用放熱付与具において、収容部に発熱体を収納して放熱される状態では、発熱体を挟んだ第1側部側に比べ、発熱体の熱が、発熱体と離間した側にある第2側部側で保温され易いよう、第2側部は、第1側部側との対比で、少なくとも同等以上の耐荷重特性を有し、荷重負荷に伴う弾性変形量を抑えた第1の断熱材で構成された放熱伝熱部となっていること、を特徴とする。
【0022】
この特徴により、発熱体は、その熱を第1側部側へ放熱するのを抑えた状態で、第2側部には、人からの荷重負荷で押し潰されることなく、しっかりと保温できているため、発熱体から第2側部を介して人等、熱の提供先へ、より長い時間、伝熱することができる。その一例として、本発明に係る携帯用放熱付与具で放熱できる状態に準備をして、発熱体から放熱を開始すると、発熱体の熱が、例えば、1℃程度の低下に留めて、4時間以上もの長い時間、持続的に放熱伝熱部に放熱できて、第2側部から人等、熱の提供先に伝熱することができている。
【0023】
(4)に記載する携帯用放熱付与具において、第2の断熱材は、気泡緩衝材の表面に密着して形成されていること、を特徴とする。
【0024】
この特徴により、第2の断熱材が、例えば、僅か数~数百μmの厚みで、第1側部に含む気泡緩衝材の表面にラミネートされているだけで、放熱断熱部は、発熱体からの放熱に対し、椅子等側への無駄な放熱ロスを効果的に抑え、放熱伝熱部には、発熱体からの放熱が、より高い温度で、座位姿勢の人の身体等、熱の提供先に伝熱される。
【0025】
(5)に記載する携帯用放熱付与具において、本体は、可逆的に展開または組み立て可能な態様であり、発熱体を挟む第2側部の反対側で、第1側部と隣接して配置可能な第3側部を有し、第3側部は、気泡緩衝材からなること、第1側部と第2側部は何れも、それぞれ第1辺を含む一の組の辺同士と、第2辺を含む他の組の辺同士でなす矩形状に形成され、本体が展開された状態では、第1側部と第2側部の第1辺同士、または第1側部と第2側部の第2辺同士が少なくとも繋がっていると共に、第2側部をなす四辺のうち、少なくとも一辺が、第3側部と繋がっていること、本体が組み立てられた状態では、収容部は、第1側部または第3側部のいずれか一方と、第2側部との間に形成されること、を特徴とする。
【0026】
この特徴により、本発明に係る携帯用放熱付与具を使用先に持ち運んで使用するにあたり、本体が可逆的に展開または組み立て可能であるため、本体の収容部に対し、発熱体の収納とその取出しが簡単にできるようになる。
【0027】
(6)に記載する携帯用放熱付与具において、第1側部、第2側部、及び第3側部のうち、本体を組み立てた状態の下で、互いに対向した配置で重ね合う部分を、着脱自在に連結可能な固着手段が、本体に設けられていること、を特徴とする。
【0028】
この特徴により、本体の組み立て後、第1側部、第2側部、及び第3側部は、固着部により、重ね合った部分を連結できるため、本発明に係る携帯用放熱付与具の使用時でも、収容部に収容した発熱体が、本体から外れてしまうことなく、第1側部と第2側部との間に収容された配置状態を、保持することができる。
【0029】
(7)に記載する携帯用放熱付与具において、発熱体は、折畳み可能であること、を特徴とする。
【0030】
この特徴により、本発明に係る携帯用放熱付与具を使用先に持ち運ぶ際に、発熱体をコンパクト化して持ち運ぶことができるため、発熱体が、本体と別々に構成されていても、手提げ袋やトートバッグ等、収容物に収容し易くなり、移動時に特段の困難を伴うことなく、使用先に持ち運ぶことができる。
【0031】
(8)に記載する携帯用放熱付与具において、発熱体は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材を、収容部材の内部空間に漏れなく充填した蓄熱材パックであること、を特徴とする。
【0032】
この特徴により、潜熱蓄熱材は、提供された熱を一時的に蓄えた後、本発明に係る携帯用放熱付与具の使用先で、潜熱蓄熱材に蓄えた潜熱を放熱することができ、蓄熱とその放熱のサイクルを、複数回に亘り、繰り返し使用できる。また、本発明に係る携帯用放熱付与具では、発熱体による放熱の温度は、潜熱蓄熱材の構成成分によって異なるため、所望とする放熱の温度に合わせて、選択された構成成分の潜熱蓄熱材を用いることにより、発熱体は、放熱する温度を、採暖したい(あるいは冷やしたい)温度帯に合わせて、構成することができる。
【0033】
(9)に記載する携帯式放熱付与具において、収容部材の内部空間には、潜熱蓄熱材の融液の流れを規制する流動規制部が設けられていること、を特徴とする。
【0034】
この特徴により、特に、本発明に係る携帯用放熱付与具を使用先に持ち運ぶときや、本発明に係る携帯用放熱付与具を使用せずに保管しているとき等において、蓄熱材パックが、上方から下向きに垂れた配置姿勢で、潜熱蓄熱材が融液の状態になっている場合に、融液状態の潜熱蓄熱材が、流動規制部により、蓄熱材パック内の下方に偏ってしまうのを抑制することができる。これにより、蓄熱材パックでは、潜熱蓄熱材が、融解(液相状態)から相変化しても、蓄熱材パック内の潜熱蓄熱材は、その厚みに対し、全域での不揃い化を避けた態様で、凝固(固相状態)し易くなる。それ故に、本発明に係る携帯用放熱付与具の使用時に、潜熱蓄熱材が固相に相変化する際に生じる潜熱の放熱に基づいて、蓄熱材パックから放つ熱が、より均一な分布と温度の状態で、第2側部に伝熱できるようになる。
【0035】
(10)に記載する携帯式放熱付与具において、発熱体を加熱する加熱手段を備え、加熱手段は、蓄熱材パックと面接触させて潜熱蓄熱材を加熱するシート状のヒータであること、を特徴とする。
【0036】
この特徴により、本発明に係る携帯用放熱付与具で用いる蓄熱材パックと、その予備用の蓄熱材パックの2つを加熱したい場合に、2つの蓄熱材パックの間にヒータを挟み込み、2つの蓄熱材パックが同時にヒータで加熱できる。そのため、1つの蓄熱材パックの加熱時間で、2つの蓄熱材パックが加熱できて、それぞれの潜熱蓄熱材に、潜熱を効率良く蓄えることができる。
【0037】
(11)に記載する携帯式放熱付与具において、加熱手段は、カーボンヒータであること、を特徴とする。
【0038】
この特徴により、発熱体は、日常的に使用する携帯電話に充電を行う要領と似たような使い勝手で、カーボンヒータにより簡単に加熱され、発熱体内の潜熱蓄熱材全域を、均一な温度分布で昇温でき、潜熱蓄熱材を、ヒータへの通電後、例えば、3時間程で、潜熱の蓄熱を終えた状態にすることができる。
【0039】
(12)に記載する携帯用放熱付与具において、潜熱蓄熱材から放つ潜熱は、20℃以上~90℃以下の温度帯域内とする温熱、または0℃以上~20℃未満の温度帯域内とする冷熱であること、を特徴とする。
【0040】
この特徴により、例えば、人が、冷えた状態にある屋外施設内のベンチや椅子に、本発明に係る携帯用放熱付与具を介して、座って観戦を楽しむような場合に、本発明に係る携帯用放熱付与具は、発熱体からの放熱により、例えば、二十数~四十数℃程度の温度で、座位姿勢等の人の身体を、心地好く効果的に温めることができる。また、人が、炎天下の状態にある屋外施設内のベンチや椅子に、本発明に係る携帯用放熱付与具を介して、座って観戦を楽しむような場合に、本発明に係る携帯用放熱付与具は、発熱体からの放熱により、例えば、数~十数℃程度の温度で、座位姿勢等の人の身体を、心地好く効果的に冷やすことができる。
【0041】
(13)に記載する携帯用放熱付与具において、本体には、携行時に人の持ち運びを補助する携行補助手段が設けられていること、を特徴とする。
【0042】
この特徴により、人が、本発明に係る携帯用放熱付与具を使用するにあたり、携行補助手段を使って、本発明に係る携帯用放熱付与具を持ち運ぶことで、人への負担が軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施形態に係る3側部構造の携帯用放熱マットの要部を概略的に示す説明図であり、(a)はその正面図、(b)は第1の組み立て構造の場合での
図1(a)中、A-A矢視断面図、(c)は第2の組み立て構造の場合での
図1(a)中、A-A矢視断面図である。
【
図2】実施形態に係る蓄熱材パックを概略的に示す説明図であり、(a)はその平面図、(b)は
図2(a)中、B-B矢視断面図である。
【
図3】実施形態に係る蓄熱材パックに装填した潜熱蓄熱材組成物を模式的に示す説明図である。
【
図4】
参考形態に係る携帯用放熱マットの要部に対し、第1の組み立て構造で構成した場合のうち、第1の例による組み立て手順を示す説明図である。
【
図5】
参考形態に係る携帯用放熱マットの要部に対し、第2の組み立て構造で構成した場合のうち、第1の例による組み立て手順を示す説明図である。
【
図6】
図1に示す携帯用放熱マットの要部に対し、第2の組み立て構造で構成した場合のうち、第2の例による組み立て手順を(a)に示し、(b)は(a)中の要部だけを示す説明図である。
【
図7】
図1に示す携帯用放熱マットの要部に対し、第1の組み立て構造で構成した場合のうち、第2の例による組み立て手順を示す説明図である。
【
図8】
図1に示す携帯用放熱マットの要部に対し、第1の組み立て構造で構成した場合のうち、第3の例による組み立て手順を示す説明図である。
【
図9】
参考形態に係る2側部構造の携帯用放熱マットに対し、第1の例による要部を概略的に示す説明図であり、(a)は収容部に蓄熱材パックを収納する前の様子、(b)は収容部に蓄熱材パックを収納する様子を、それぞれ示す図である。
【
図10】
参考形態に係る2側部構造の携帯用放熱マットに対し、第2の例による要部を概略的に示す説明図であり、(a)はその正面図、(b)は
図10(a)中、C-C矢視断面図である。
【
図11】実施形態の変形例に係る携帯用放熱マットの要部を概略的に示す説明図である。
【
図12】実施例1~3、及び比較例に係る携帯用放熱マットの評価試験で、そのマットサンプルの要部を厚み方向から見た模式図であり、(a)は比較例に係るマットサンプル、(b)は実施例1に係るマットサンプル、(c)は実施例2に係るマットサンプル、(d)は実施例3に係るマットサンプルを、それぞれ示す図である。
【
図13】実施形態に係る携帯用放熱マットに関し、(a)は蓄熱材パックの潜熱蓄熱材に蓄熱する要領を模式的に示す説明図、(b)は評価試験でマットサンプルの温度測定ポイントを模式的に示す説明図である。
【
図14】実施例1及び比較例に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、身体側マット表面の放熱温度との関係を示すグラフである。
【
図15】
図14に続き、実施例1及び比較例に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、椅子側マット表面の放熱温度との関係を示すグラフである。
【
図16】実施例1~3に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、身体側マット表面の放熱温度との関係を示すグラフである。
【
図17】
図16に続き、実施例1~3に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、椅子側マット表面の放熱温度との関係を示すグラフである。
【
図18】実施例1~3に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、蓄熱材パック上側表面と身体側マット表面間の温度差との関係を示すグラフである。
【
図19】
図18に続き、実施例1~3に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、蓄熱材パック下側表面と椅子側マット表面の温度差との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係る携帯用放熱付与具について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る携帯用放熱付与具は、発生した熱を放熱可能な発熱体を、携帯可能な態様で形成された本体の収容部に配設しておき、発熱体から放つ熱を、熱の提供先として、身体の特定部位等に付与する目的で使用される。その具体例として、屋外施設でのスポーツ観戦や、野外イベントの参加で、冷たくなっている施設内のベンチに長時間、来場者が座って観戦を楽しむ場合や、人が公園のベンチに座って寛ぐ場合等に、本発明の携帯用放熱付与具は、心地好く座るため、ベンチ・椅子の座や背もたれ等に配置して使用される。以下、本発明に係る携帯用放熱付与具に、本実施形態では、採暖具として、このような座位姿勢で使用する携帯用放熱マットを挙げて、説明する。
【0045】
はじめに、携帯用放熱マット1の概要について、簡単に説明する。
図1は、実施形態に係る3側部構造の携帯用放熱マットの要部を概略的に示す説明図であり、(a)はその正面図、(b)は第1の組み立て構造の場合での
図1(a)中、A-A矢視断面図、(c)は第2の組み立て構造の場合での
図1(a)中、A-A矢視断面図である。
図1に示すように、携帯用放熱マット1(携帯用放熱付与具)は、蓄熱材パック4と本体5に大別してなり、蓄熱材パック4(発熱体)を本体5内の収容部35に収納して使用される。
【0046】
<蓄熱材パック4の構成>
次に、蓄熱材パック4について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、実施形態に係る蓄熱材パックを概略的に示す説明図であり、(a)はその平面図、(b)は
図2(a)中、B-B矢視断面図である。
図3は、実施形態に係る蓄熱材パックに装填した潜熱蓄熱材組成物を模式的に示す説明図である。
図2及び
図3に示すように、蓄熱材パック4は、板状に形成された発熱体で、潜熱蓄熱材11を含む潜熱蓄熱材組成物10、トリガー片13、及び収容部材20等を有する。
【0047】
収容部材20は、内部空間20Sに漏れなく充填された潜熱蓄熱材組成物10を、一例として500g、トリガー片13と共に、収容するための部材である。収容部材20は、例えば、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリエチレン(PE:polyethylene)等、可撓性を有した樹脂製シート材で、本実施形態では、より高い質感を呈し、高温、紫外線等に対する耐候性や、熱融着による加工性にも優れているポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)からなる。収容部材20のシート厚/枚は、目安として1mm未満であり、本実施形態では、0.3~0.5mm程である。収容部材20は、矩形状の樹脂製シート材を2枚重ね合わせ、内部空間20Sを確保した上で、その外周縁同士を、例えば、熱融着(溶着)、接着等により、双方で接続した接合部21を有する。
【0048】
また、収容部材20の内部空間20Sには、
図2に示すように、流動規制部22が、本実施形態では、蓄熱材パック4の長辺(
図2中、左右方向の辺)方向に沿って平行な接合部21に対し、互いに対向し、かつ長辺方向に離間した配置下で、2箇所設けられている。流動規制部22は、蓄熱材パック4の短辺(
図2中、上下方向の辺)の長さより短く、接合部21と同様、2層状に重ね合わせた樹脂製シート材同士を、熱融着(溶着)等で接合して形成されている。流動規制部22は、内部空間20Sに充填された潜熱蓄熱材組成物10の融液の流れを規制する機能を有し、潜熱蓄熱材組成物10の融液は、流動規制部22により、内部空間20Sを自在に流動し難くなっている。また、蓄熱材パック4は、折畳み可能に形成され、本実施形態では、2箇所の流動規制部22で、三つ折りにして畳むことができている。
【0049】
潜熱蓄熱材組成物10は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材11と、この潜熱蓄熱材11の物性を調整する添加剤12を含む。潜熱蓄熱材11は、融解(液相状態)と凝固(固相状態)との相変化を、複数回に亘って繰り返し可能である。潜熱蓄熱材組成物10から放つ熱は、人にとって、特に不快感なく、ちょうど良い目安の温度とされる20℃を境に、20℃以上~90℃以下の温度帯域内とする温熱、または0℃以上~20℃未満の温度帯域内とする冷熱である。前述したように、本実施形態では、携帯用放熱マット1は、温熱を放つ採暖具であるため、潜熱蓄熱材組成物10の融解温度(融点)は、30℃近傍に調整して設定されている。
【0050】
潜熱蓄熱材11は、一例として、酢酸ナトリウム三水和物(CH3COONa・3H2O)を主成分に、その添加剤12である融点調整剤・柔軟剤として、グリセリン(C3H5(OH)3)を添加してなる。酢酸ナトリウム三水和物単体は、水和数3、分子量[g/mol]136.08、融点58℃、蓄熱量約276kJ/kg(400kJ/L)、融点より低い温度では、水に易溶な固体の状態で、過冷却現象を著しく生じ易い物性である。
【0051】
なお、潜熱蓄熱材11は、酢酸ナトリウム三水和物以外にも、例えば、硫酸塩の一種である硫酸ナトリウム十水和物(Na2SO4・10H2O)とする第1の場合や、酢酸ナトリウム三水和物と硫酸ナトリウム十水和物との混合物とする第2の場合等、二種以上含む混合物、または混晶を主成分とした蓄熱材であっても良い。硫酸ナトリウム十水和物単体の物性は、水和数10、分子量[g/mol]322.21、融点32.38℃、融点より低い温度では、水に可溶な固体の物質である。
【0052】
グリセリンは、分子量[g/mol]92.09382、融点17.8℃、密度1.261g/cm3、無臭、水に易溶、融点より高い温度では、無色透明の液体、人体にとって安全な物質で、過冷却現象を著しく生じ易い物性である。潜熱蓄熱材組成物10は、グリセリンを含有しているため、固相になっても、ある程度の柔軟性を呈して容易に変形可能な状態となっている。潜熱蓄熱材組成物10に占める酢酸ナトリウム三水和物とグリセリンとの混合割合は、一例として、酢酸ナトリウム三水和物を75~25wt%、グリセリンを85~15wt%の範囲内である。
【0053】
なお、潜熱蓄熱材組成物10の融解温度(融点)は、30℃近傍に限定されるものではなく、酢酸ナトリウム三水和物とグリセリンとの混合割合は、所望とする潜熱蓄熱材11の放熱温度に応じて適宜調整される。また、潜熱蓄熱材組成物10に含有する融点調整剤・柔軟剤をグリセリンとしたが、例えば、酢酸ナトリウム三水和物等の主材に対する融点調整剤は、グリセリン以外にも、種々変更可能である。
【0054】
また、本実施形態では、潜熱蓄熱材組成物10は、主成分である酢酸ナトリウム三水和物に、グリセリンを添加した混合物としたが、グリセリンと共に、着色剤が、潜熱蓄熱材11に配合されていても良い。着色剤は、潜熱蓄熱材組成物10の融液を、視認し易い色で着色する天然色素等で、非危険物かつ無毒、安全性が高く、耐熱性にも優れ、直射日光に晒される使用環境下でも、劣化せず安定した状態で着色できる液体状、または粉末状の色素である。その一例として、比較的伝熱性の高い炭素を主成分とした炭素色素である。炭素色素が、潜熱蓄熱材11の粒子間に分散して、潜熱蓄熱材組成物10全体を黒色に呈色すると、炭素色素は、潜熱蓄熱材組成物10での蓄熱速度や放熱速度の向上に寄与する。
【0055】
トリガー片13は、過冷却状態にある潜熱蓄熱材組成物10の融液に対し、過冷却現象を解除可能で、繰り返し使用可能な部材である。具体的には、トリガー片13は、5円硬貨程の大きさをなした略円形皿形状の径内に、その中心位置で最も高く中心軸方向に盛上がった湾曲部を、弾性変形可能な状態で形成された薄板状の金属片である。トリガー片13は、中心軸方向に対し、盛上がった側からその反対側に湾曲部を押圧して反り返し、湾曲部の山向きを反転させることにより、潜熱蓄熱材組成物10に衝撃を及ぼして過冷却現象の解除を行う。
【0056】
このように、トリガー片13は、過冷却現象の発現により、液相状態のままにある潜熱蓄熱材組成物10に対し、過冷却現象の解除を行う役割を果たす。また、トリガー片13は、過冷却現象の解除操作により、潜熱蓄熱材組成物10を固相状態に相変化させることで、潜熱蓄熱材11に蓄熱していた潜熱を、携帯用放熱マット1で採暖したいタイミングに合わせて、本体5に向けて放熱を行うことができるため、いわゆる放熱操作機能の役割も果たす。
【0057】
図13は、実施形態に係る携帯用放熱マットに関し、(a)は蓄熱材パックの潜熱蓄熱材に蓄熱する要領を模式的に示す説明図である。本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、その使用前に、蓄熱材パック4内の潜熱蓄熱材組成物10(潜熱蓄熱材11)に予め潜熱を蓄熱しておくのにあたり、蓄熱材パック4は、ヒータ50(
図13参照)で加熱される。ヒータ50は、蓄熱材パック4と面接触させて潜熱蓄熱材組成物10を加熱するシート状のカーボンヒータである。
【0058】
具体的には、
図13に例示するように、ヒータ50が、2つの蓄熱材パック4の間に挟み込まれて、2つの蓄熱材パック4を同時に加熱することにより、蓄熱材パック4への加熱処理が行われる。カーボンヒータは、発熱体として、カーボンを含浸したガラスクロスを、エポキシガラス・PET等による絶縁体で積層させて挟み込み、平坦なシート状の形態で一体化された加熱手段である。ヒータ50は、一例として、厚み0.3~2mm程度、A4サイズ程の大きさ、通電により数十~百数十℃(本実施形態では、発熱温度は70℃)に発熱可能であり、
図2(a)に示す蓄熱材パック4の潜熱蓄熱材組成物10に対し、その全域を万遍なく、均一な温度で発熱可能である。
【0059】
<本体5の構成>
次に、本体5について、
図1及び、
図4~
図11を用いて説明する。
図4は、
参考形態に係る携帯用放熱マットの要部に対し、第1の組み立て構造で構成した場合のうち、第1の例による組み立て手順を示す説明図であり、第2の組み立て構造で構成した場合のうち、第1の例による組み立て手順を示す説明図を、
図5に示す。
図6は、
図1に示す携帯用放熱マットの要部に対し、第2の組み立て構造で構成した場合のうち、第2の例による組み立て手順を(a)に示し、(b)は(a)中の要部を示す説明図である。
図7は、
図1に示す携帯用放熱マットの要部に対し、第1の組み立て構造で構成した場合のうち、第2の例による組み立て手順を示す説明図であり、
図8は、第1の組み立て構造で構成した場合のうち、第3の例による組み立て手順を示す説明図である。
【0060】
図9は、
参考形態に係る2側部構造の携帯用放熱マットに対し、第1の例による要部を概略的に示す説明図であり、(a)は収容部に蓄熱材パックを収納する前の様子、(b)は収容部に蓄熱材パックを収納する様子を、それぞれ示す図である。
図10は、
参考形態に係る2側部構造の携帯用放熱マットに対し、第2の例による要部を概略的に示す説明図であり、(a)はその正面図、(b)は
図10(a)中、C-C矢視断面図である。
【0061】
図1及び、
図4~
図10に示すように、携帯用放熱マット1,1Xにおいて、本体5は、互いに対向して配置可能な第1側部31と第2側部32とを含む扁平な袋状に形成されている。第2側部32と第1側部31とが積層状に配置された状態の下、蓄熱材パック4が、第2側部32と隣接して設けた収容部35に、自在に収納またはその取出しできる態様で、配設される。収容部35は、収納された蓄熱材パック4に対し、出し入れに困難を伴わず、かつ携帯用放熱マット1,1Xを持ち運んでいる最中に、移動や振動等に伴って広範囲に動いてしまわないよう、蓄熱材パック4との間で、適度なクリアランスを保持できる大きさとなっている。
【0062】
本実施形態に係る携帯用放熱マット(3側部構造の携帯用放熱マット1、2側部構造の携帯用放熱マット1X)において、
図1及び
図10等に示すように、収容部35に蓄熱材パック4を収納して放熱される状態では、蓄熱材パック4を挟んだ第2側部32側に比べ、蓄熱材パック4の熱(潜熱蓄熱材組成物10から放熱する潜熱)が、蓄熱材パック4と離間した側にある第1側部31の他端面31bから外部に伝熱し難いよう、第1側部31は、少なくとも一以上の気泡緩衝材(第1の断熱材)を含み、断熱性を有する断熱材34を選択的に含む態様で形成した放熱断熱部3となっている。
【0063】
その反対に、蓄熱材パック4を挟んだ第1側部31側に比べ、蓄熱材パック4の熱が、蓄熱材パック4と離間した側にある第2側部32側で保温され易いよう、第2側部32は、第1側部31との対比で、少なくとも同等以上の耐荷重特性を有し、荷重負荷に伴う弾性変形量を抑えた気泡緩衝材で構成された放熱伝熱部2となっている。
【0064】
携帯用放熱マット1,1Xでは、その厚み方向(参照する
図1(b)中、左右方向)に対し、放熱伝熱部2は、放熱断熱部3より薄くなってことが好ましい。その理由として、放熱断熱部3が、その厚みを放熱伝熱部2より大きくなっていると、蓄熱材パック4の熱(潜熱蓄熱材組成物10から放熱する潜熱)が第1側部31の他端面31b側から外部に伝熱してしまう放熱ロスを、抑制し易くできる傾向になる。その反対に、放熱伝熱部2が、その厚みを放熱断熱部3よりも小さくなっていると、蓄熱材パック4の熱(潜熱蓄熱材組成物10から放熱する潜熱)は、保温される側の第2側部32から身体側に伝熱し易くできる傾向になるからである。
【0065】
具体的に説明する。3側部構造の携帯用放熱マット1の場合、本体5は、蓄熱材パック4を挟む第2側部32の反対側で、第1側部31と隣接して配置可能な第3側部33を有する。3側部構造の携帯用放熱マット1は、
図1(a),(b)に示すように、第1の組み立て構造で構成される場合と、
図1(a),(c)に示すように、第2の組み立て構造で構成される場合に大別される。第1の組み立て構造では、
図4、
図7、及び
図8に示すように、蓄熱材パック4を挟んだ第2側部32の反対側に、蓄熱材パック4が、第3側部33を隣接して配置され、第1側部31が、この第3側部33に積層した状態で配置される。
【0066】
第2の組み立て構造では、
図5及び
図6に示すように、蓄熱材パック4を挟んだ第2側部32の反対側に、蓄熱材パック4が、第1側部31と隣接して配置され、第3側部33が、この第1側部31と積層した状態で配置される。また、2側部構造の携帯用放熱マット1Xの場合には、
図9及び
図10に示すように、蓄熱材パック4が、第1側部31と第2側部32の間に配置される。
【0067】
携帯用放熱マット1,1Xとも、第1側部31と第2側部32はいずれも、本実施形態では、気泡緩衝材により形成され、携帯用放熱マット1に有する第3側部33も、気泡緩衝材により形成されている。気泡緩衝材は、例えば、ポリエチレン(PE:polyethylene)等、樹脂製シート材による3層構造となっており、その両端の層を平坦状とし、その中間層に、円柱状または六角形状に成型された中空状の空気充填部を、幾何学的で規則的な配置の下、隣り同士を断続的に離間させた形態で形成されている。気泡緩衝材は、この空気充填部内に充填された空気により、外部から受ける外力を緩衝させる機能を有する。携帯用放熱マット1,1Xは、第1側部31、第2側部32、及び第3側部33とも、気泡緩衝材により形成されているため、蓄熱材パック4を除いた重さも、100gにも満たず、持ち運びに困難を伴うこともない程、軽量である。
【0068】
携帯用放熱マット1,1Xでは、第1側部31、第2側部32、及び第3側部33はいずれも、例えば、面積当たり数百kg~1t程の耐荷重を有した耐強度用の気泡緩衝材により、構成されている。また、
図10に例示するように、断熱材34(第2の断熱材)は、気泡緩衝材の表面である第1側部31の他端面31bに、蒸着処理により、数~数百μmの厚みで密着して形成されたアルミニウム製のシートである。なお、本実施形態では、
図10に例示する2側部構造の携帯用放熱マット1Xに、断熱材34付きの第1側部31を構成したが、断熱材34付きの第1側部31は、2側部構造の携帯用放熱マット1Xに限定されるものではなく、
図4~
図8に例示する3側部構造の携帯用放熱マット1に適用しても良い。
【0069】
また、断熱材34は、本実施形態では、数~数百μmの厚みで形成されたアルミニウム製のシートを対象としているが、断熱材34の厚みは、数~数百μmの範囲外であっても良い。また、JIS(日本工業規格)の包装用語による規格は、厚さ250μm以上の薄板状のプラスチック材をシートとし、厚さ250μm未満の膜状のプラスチック材をフィルムとして、規定している。しかしながら、本願では、断熱材34(第2の断熱材)をその厚みで区別せず、フィルムの範疇にある厚さのプラスチック材であっても、総称でシートとしている。
【0070】
3側部構造の携帯用放熱マット1では、
図4~
図8に示すように、本体5は、可逆的に展開または組み立て可能な態様である。第1側部31と第2側部32は何れも、長辺(
図4及び
図5中、左右方向に沿う辺)に対し、それぞれ第1辺30Aを含む一の組の辺同士と、短辺(
図4及び
図5中、上下方向に沿う辺)に対し、第2辺30Bを含む他の組の辺同士でなす矩形状に形成されている。
図1及び、
図4~
図8に示すように、本体5が展開された状態では、第1側部31と第2側部32の第1辺30A同士、または第1側部31と第2側部32の第2辺30B同士が少なくとも繋がっていると共に、第2側部32をなす四辺のうち、少なくとも一辺が、第3側部33と繋がっている。
【0071】
本体5が組み立てられた状態では、収容部35は、第1側部31または第3側部33のいずれか一方と、第2側部32との間に形成される。携帯用放熱マット1には、第1側部31、第2側部32、及び第3側部33のうち、本体5を組み立てた状態の下で、互いに対向した配置で重ね合う部分を、着脱自在に連結可能な固着部40(固着手段)が、本体5に設けられている。固着部40は、本実施形態では、面ファスナであるが、本体5で重なり合う部分を繰り返し接続、またはその解除できるものであれば、面ファスナに限定されず、種々変更可能である。
【0072】
また、本体5には、携行時に人の持ち運びを補助する把持部45(携行補助手段)が設けられている。
図1及び、
図4~
図9に示すように、把持部45は、本体5のうち、第1側部31と第2側部32に、一対で設けられ、携帯用放熱マット1,1Xを手で下げる態様に形成されている。
【0073】
なお、携行補助手段は、把持部45に代えて、
図11に示すように、本体5の内部を部分的に開口させた開口部46としても良い。
図11は、実施形態の変形例に係る携帯用放熱マットの要部を概略的に示す説明図である。開口部46を手で把持することにより、本発明に係る携帯用放熱付与具は、持ち運び易くなっている。
【0074】
また、携行補助手段は、例えば、本体と自在に着脱可能なショルダーベルト、ショルダーストラップ等であっても良い。
【0075】
次に、3側部構造の携帯用放熱マット1の具体的な構成について、
図1、及び
図4~
図8を用いて説明する。3側部構造の携帯用放熱マット1を、第1の組み立て構造で構成した場合には、
図4に示すように、第1の例による組み立て手順では、展開した状態にある本体5に対し、はじめに蓄熱材パック4を、第2側部32の一端面32a上に載置する。この後、蓄熱材パック4に向けて折り返した第3側部33の一端面33aを、蓄熱材パック4に当接させて、第2側部32の一端面32a上にある固着部40の第1固定側固着部位41Aと、第3側部33の一端面33a上にある固着部40の第1着脱側固着部位41Bとを固着する。次に、第1側部31の一端面31aを第3側部33の他端面33bに向けて第1側部31を折り返し、第3側部33の他端面33b上にある固着部40の第2固定側固着部位42Aと、第1側部31の一端面31a上にある固着部40の第2着脱側固着部位42Bとを固着する。かくして、
図1(a)に示す携帯用放熱マット1の組み立てが完了する。
【0076】
また、
図7に示すように、第2の例による組み立て手順では、展開した状態にある本体5において、第1側部31と第2側部32は、
図7中、左辺部と下辺部で接続されている一方、右辺部と上辺部では、互いに接続されておらず、開放した状態になっている。第3側部33は、第2側部32のうち、
図7中、左辺部で接続されている一方、右辺部と上・下辺部では、接続されていない。第2側部32の一端面32aと第1側部31の一端面31aとの間の収容部35に、まず蓄熱材パック4を収納する。この後、
図7(b)に示すように、収容部35内の蓄熱材パック4と第1側部31の一端面31aとの間に、第2側部32との繋ぎ目で折り返した第3側部33を収容する。かくして、
図1(a)に示す携帯用放熱マット1の組み立てが完了する。
【0077】
また、
図8に示すように、第3の例による組み立て手順では、展開した状態にある本体5において、第3側部33は、第2側部32のうち、
図8(a)中、左辺部と下辺部で接続されている一方、右辺部と上辺部では、互いに接続されておらず、開放した状態になっている。第2側部32の一端面32aと、第3側部33の他端面33bの裏面である一端面(一端面33a)との間にある収容部35に蓄熱材パック4を収納して、第2側部32の一端面32a上にある固着部40の第1固定側固着部位41Aと、第3側部33の一端面上にある固着部40の第1着脱側固着部位41Bとを固着する。次に、第1側部31の一端面31aを第3側部33の他端面33bに向けて第1側部31を折り返し、第1側部31の一端面31a上にある固着部40の第2固定側固着部位42Aと、第3側部33の他端面33b上にある固着部40の第2着脱側固着部位42Bとを固着する。かくして、
図1(a)に示す携帯用放熱マット1の組み立てが完了する。
【0078】
次に、3側部構造の携帯用放熱マット1を、第2の組み立て構造で構成した場合について、説明する。
図5に示すように、第1の例による組み立て手順では、展開した状態にある本体5に対し、第2側部32の一端面32a上に載置した蓄熱材パック4に向けて第1側部31を折り返し、その一端面31aを蓄熱材パック4に当接させて、第2側部32の一端面32a上にある固着部40の第1固定側固着部位41Aと、第1側部31の一端面31a上にある固着部40の第1着脱側固着部位41Bとを固着する。次に、第3側部33の一端面31aを第1側部31の他端面33bに向けて第3側部33を折り返し、第1側部31の他端面31b上にある固着部40の第2固定側固着部位42Aと、第3側部33の一端面33a上にある固着部40の第2着脱側固着部位42Bとを固着する。かくして、
図1(a)に示す携帯用放熱マット1の組み立てが完了する。
【0079】
また、
図6に示すように、第2の例による組み立て手順では、展開した状態にある本体5に対し、第1側部31と第2側部32は、
図6中、右辺部と下辺部で接続されている一方、左辺部と上辺部では、互いに接続されておらず、開放した状態となっている。第3側部33は、第2側部32のうち、
図6中、右辺部で接続されている一方、左辺部と上・下辺部では、接続されていない。
図6(b)に示すように、第2側部32の一端面32aと第1側部31の一端面31aとの間の収容部35に、まず蓄熱材パック4を収納する。この後、
図6(a)に示すように、第3側部33の一端面33aを第1側部31の他端面31bに向けて第3側部33を折り返し、第1側部31の他端面31b上にある固着部40の第1固定側固着部位41Aと、第3側部33の一端面33a上にある固着部40の第1着脱側固着部位41Bとを固着する。かくして、
図1(a)に示す携帯用放熱マット1の組み立てが完了する。
【0080】
次に、2側部構造の携帯用放熱マット1Xの構成について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9に示すように、第1の例に係る本体5では、第1側部31と第2側部32は、
図9中、上辺部を開放しているものの、上辺部以外の三辺部を接続した有底袋状に形成されている。収容部35は、第1側部31と第2側部32との間であり、
図9(b)に示すように、蓄熱材パック4を収容部35に収納する。本体5に装着された一対の把持部45には、固着部40(第1固定側固着部位41A、第1着脱側固着部位41B)が設けられているため、蓄熱材パック4を収容部35に収納後、第1固定側固着部位41Aと第1着脱側固着部位41Bとを固着して、第1側部31と第2側部32との上辺部を閉じる。かくして、蓄熱材パック4が本体5にセットされて、携帯用放熱マット1Xは使用できる。
【0081】
次に、
図10に示すように、第2の例に係る本体5では、第1側部31と第2側部32は、
図10(a)中、上辺部を開放しているものの、上辺部以外の三辺部を接続した有底袋状に形成されている。第1側部31の他端面31bには、フィルム状の断熱材34がラミネートされている。第2側部32は、深さ方向(
図10(b)中、左右方向)に対し、第1側部31より長くした閉塞部37を有している。
【0082】
収容部35は、断熱材34付きの第1側部31と第2側部32との間であり、
図10に示すように、収容部35に蓄熱材パック4を収納してから、第1側部31の他端面31b側に閉塞部37を折り返す。次に、第1側部31の他端面31b上にある固着部40の第1固定側固着部位41Aと、第2側部32の閉塞部37の一端面32a上にある固着部40の第1着脱側固着部位41Bとを固着して、第1側部31と第2側部32との上辺部を閉じる。かくして、蓄熱材パック4が本体5にセットされて、携帯用放熱マット1Xは使用できる。
【0083】
次に、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xの評価試験について、説明する。本出願人は、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xに対し、その有意性を検証する目的で評価試験を行った。具体的には、評価試験は、椅子に敷設した携帯用放熱マット1,1X内の蓄熱材パック4で、潜熱蓄熱材組成物10による潜熱の放熱で、座位姿勢の人の身体を温めるのに伴って、椅子側の外部へ逃げる放熱ロスを確認するため、携帯用放熱マット1等に相当する実験用放熱マット(その主な構成要素について、以下、携帯用放熱マット1等に準じた名称・その符号をそのまま使用)を用いた机上の実験である。
【0084】
<実験方法>
図12は、実施例1~3、及び比較例に係る携帯用放熱マットの評価試験で、そのサンプルの要部を厚み方向から見た模式図であり、(a)は比較例に係るサンプル、(b)は実施例1に係るサンプル、(c)は実施例2に係るサンプル、(d)は実施例3に係るマットサンプルを、それぞれ示す図である。評価試験では、実施例1~3、及び比較例に係る実験用放熱マットとして、
図12に示すように、本体5の構造をそれぞれ異にした4種サンプルを作製し、それぞれのサンプルを、椅子と見立てた机上に載置し、座位姿勢の人と見立てた水500g入りの袋による負荷を、サンプル上にかけ、人が椅子に座る状況を疑似的にモデル化した試験を行った。そして、机上に載置したサンプルの机(椅子)側で生じる潜熱の放熱ロスについて、4種のサンプル毎に観察して比較した。
【0085】
比較例に係るサンプルは、
図12(a)に示すように、蓄熱材パック4単体による実験用放熱マットである。実施例1に係るサンプルは、
図12(b)に示すように、身体側に配置する第2側部32と、椅子側に配置する第1側部31との間に、蓄熱材パック4を挟んで構成した実験用放熱マット1A(1)である。実施例2に係るサンプルは、
図12(c)に示すように、第3側部33と積層させて椅子側に配置する第1側部31と、身体側に配置する第2側部32との間に、蓄熱材パック4を挟んで構成した実験用放熱マット1B(1)である。実施例3に係るサンプルは、
図12(d)に示すように、第3側部33と積層させて椅子側に配置する断熱材34付きの第1側部31と、身体側に配置する第2側部32との間に、蓄熱材パック4を挟んで構成した実験用放熱マット1C(1)である。
【0086】
評価試験の開始前、実施例1~3、及び比較例に係るサンプルに対し、それぞれの蓄熱材パック4に予め加熱処理を施して、蓄熱材パック4内の潜熱蓄熱材組成物10(潜熱蓄熱材11)に潜熱を蓄熱した。蓄熱材パック4への加熱処理は、湯煎で行われ、70℃に設定された湯で約1時間、蓄熱材パック4を加熱した。加熱後の蓄熱材パック4を机上に静置して冷まし、潜熱蓄熱材組成物10が、室温まで冷えた蓄熱材パック4内で液体状態を維持していたことから、蓄熱材パック4内の潜熱蓄熱材組成物10が、潜熱の蓄熱を完了した状態の融液であるとみなす。
【0087】
<実施例1~3、及び比較例の共通条件>
・蓄熱材パック4:収容部材20内に潜熱蓄熱材組成物10とトリガー片13を収容
・潜熱蓄熱材組成物10:酢酸ナトリウム三水和物(潜熱蓄熱材11)とグリセリンとの混合物
<実施例1~3の共通条件>
・第1側部31と第2側部32;3層構造の樹脂製シート材からなるポリエチレン(PE)製の気泡緩衝材で形成
・第1側部31;椅子側配置(
図14~
図19では、「椅子側一層(PE)」と表記)
<実施例2の条件>
・第1側部31と第3側部33との積層;第3側部33を椅子側にして配置(
図16~
図19では、「椅子側二層(PE,PE)」と表記)
<実施例3の条件>
・断熱材34;アルミニウム製のフィルム
・断熱材34付きの第1側部31と第3側部33との積層;第3側部33との間に断熱材34を介在した状態で第1側部31を椅子側にして配置(
図16~
図19では、「椅子側二層(PE,アルミ+PE)」と表記)
【0088】
次に、実施例1~3、及び比較例とも、評価試験の開始に合わせて、それぞれのトリガー片13で、湾曲部の向きを収容部材20の外面側から反転させ、潜熱蓄熱材組成物10の融液に生じている過冷却現象を解除する操作を行い、その操作後、全てのサンプルを机上に静置した。そして、各サンプル上に水入り袋の負荷をかけた状態にした上で、潜熱蓄熱材組成物10からの放熱が完了するまでの所要時間を測定すると共に、潜熱蓄熱材組成物10から放たれる潜熱の温度を、熱電対で検知し測定した。
【0089】
図13(b)は、評価試験でサンプルの温度測定ポイントを模式的に示す説明図である。熱電対による放熱温度の測定ポイントは、
図13(b)に示すように、蓄熱材パック4に対し、上側表面上の第1測定部位M1と、下側表面上の第2測定部位M2と、実験用放熱マット1等に対し、身体側マット表面上の第3測定部位M3と、椅子側マット表面上の第4測定部位M4である。なお、比較例の測定ポイントは、第1測定部位M1と第2測定部位M2だけである。
【0090】
<実験結果>
評価試験の結果を、
図14~
図19に示す。
図14は、実施例1及び比較例に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、身体側マット表面の放熱温度との関係を示すグラフであり、試験開始時以降の経過時間と、椅子側マット表面の放熱温度との関係を示すグラフを、
図15に示す。
図12(a)に示す比較例の実験用放熱マットと、
図12(b)に示す実施例1の実験用放熱マット1Aとを対比した第1の比較では、
図14及び
図15に示すように、潜熱蓄熱材組成物10の過冷却現象の解除操作を行った0.5(h)後の状態下では、比較例の場合、潜熱蓄熱材組成物10から放熱し始めたときの潜熱の温度は、第1測定部位M1で31.8℃、第2測定部位M2で31.7℃であり、第1測定部位M1及び第2測定部位M2とも、ほぼ同温であった。これに対し、実施例1の場合、潜熱蓄熱材組成物10から放熱し始めたときの潜熱の温度は、第1測定部位M1で35.8℃、第2測定部位M2で37.4℃であり、比較例より4~6℃程高かった。
【0091】
図16は、実施例1~3に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、身体側マット表面の放熱温度との関係を示すグラフであり、試験開始時以降の経過時間と、椅子側マット表面の放熱温度との関係を示すグラフを、
図17に示す。
図12(b)~(d)に示す実施例1~3の実験用放熱マット1A~1Cに対し、
図16に示すように、潜熱蓄熱材組成物10の過冷却現象の解除操作を行った0.5(h)後の状態下では、第2の比較として、第3測定部位M3での潜熱の放熱温度は、実施例1の場合で26.6℃、実施例2の場合で26.8℃、実施例3の場合で26.1℃と、いずれもほぼ同じであった。また、この状態下では、
図17に示すように、第4測定部位M4での潜熱の放熱温度は、実施例1の場合で34.7℃、実施例2の場合で32.8℃、実施例3の場合で28.2℃であった。
【0092】
図18は、実施例1~3に係る携帯用放熱マットの評価試験の結果で、試験開始時以降の経過時間と、蓄熱材パック上側表面と身体側マット表面間の温度差との関係を示すグラフであり、試験開始時以降の経過時間と、蓄熱材パック下側表面と椅子側マット表面の温度差との関係を示すグラフを、
図19に示す。
図12(b)~(d)に示す実施例1~3の実験用放熱マット1A~1Cに対し、第3の比較として、
図18に示すように、潜熱蓄熱材組成物10の過冷却現象の解除操作を行ってから0.5(h)経過した時刻に測定された第1測定部位M1の放熱温度を基準に、第3測定部位M3で測定された放熱温度との差は、実施例1の場合で-9.2℃、実施例2の場合で-10.8℃、実施例3の場合で-13.7℃であった。また、
図19に示すように、過冷却現象の解除操作を行ってから0.5(h)経過した時刻に測定された第2測定部位M2の放熱温度を基準に、第4測定部位M4で測定された放熱温度との差は、実施例1の場合で2.7℃、実施例2の場合で5.6℃、実施例3の場合で12.9℃であった。
【0093】
<考察>
実験結果より、第1の比較の場合、実施例1の実験用放熱マット1Aでは、比較例の実験用放熱マットに比べ、蓄熱材パック4からの潜熱の放熱温度は、上面(第1測定部位M1)で4℃程高く、下面(第2測定部位M2)では、5℃程高くなっている。また、実験用放熱マットで過冷却現象解除操作を実施後、3時間経過するまで、実験用放熱マット1Aでは、潜熱の放熱温度は、高くなっている。その理由として、比較例の実験用放熱マットでは、蓄熱材パック4が、保温機能を有した部材で保護されておらず、放熱した潜熱を、外気で冷やされ易い状態下にあるからである。これに対し、実験用放熱マット1Aでは、ポリエチレン製の気泡緩衝材で形成した第1側部31、第2側部32で、蓄熱材パック4が覆われているため、蓄熱材パック4からの潜熱による放熱が抑制され、実験用放熱マット1Aが、蓄熱材パック4の保温性を高めた態様の採暖具になっているためであると考えられる。それ故に、実験用放熱マット1Aにおいて、実験用放熱マットへの過冷却現象解除操作を実施後、潜熱を放熱し続けても、その放熱温度は、比較例より高く維持できていると考えられる。
【0094】
また、第1の比較の場合で前述したように、実験用放熱マット1Aでは、ポリエチレン製の気泡緩衝材で形成した第1側部31、第2側部32で、蓄熱材パック4が覆われており、蓄熱材パック4からの潜熱による放熱が抑制されている。第2の比較の場合、実験用放熱マット1A~1Cではいずれも、第2側部32は一層である。そのため、過冷却現象解除操作の実施後、第3測定部位M3での潜熱の放熱温度は、
図16に示すように、いずれも約26℃であり、過冷却現象の解除操作を行った0.5(h)後以降も、身体側に伝わる潜熱の放熱温度は、実験用放熱マット1A~1Cの間でほとんど差異なく、概ね同じような温度傾向となっている。その一方、第4測定部位M4での潜熱の放熱温度は、
図17に示すように、実施例1の場合で34.7℃、実施例2の場合で32.8℃、実施例3の場合で28.2℃と、蓄熱材パック4に対し、椅子側に配置する第1側部31等、保温部材の構成による相違で、異なっている。
【0095】
すなわち、蓄熱材パック4に対し、机(椅子)側の外部へ逃げる潜熱の放熱ロスを抑える保温部材に、実施例2では、実施例1で設けた第1側部31に加え、第1側部31と同様、ポリエチレン製の気泡緩衝材で形成した第3側部33が設けられている。そのため、実験用放熱マット1Bは、ポリエチレン製の気泡緩衝材で形成された第1側部31、第3側部33による二層構造の保温部材で、蓄熱材パック4の椅子側を覆った態様の採暖具となっているため、蓄熱材パック4から放つ潜熱が、椅子側の外部へ逃げるのを抑制できているためと考えられる。実施例3では、実施例1で設けた第1側部31には、アルミニウム製のフィルムである断熱材34がラミネートされている。そのため、実験用放熱マット1Cは、ポリエチレン製の気泡緩衝材で形成された第1側部31とこれにラミネートした断熱材34、第3側部33による三層構造の保温部材で、蓄熱材パック4の椅子側を覆った態様の採暖具となっているため、蓄熱材パック4から放つ潜熱が、実施例2の実験用放熱マット1Bよりもさらに、椅子側の外部へ逃げるのを抑制できているためと考えられる。
【0096】
また、第2の比較での考察を踏まえ、第3の比較では、
図19に示すように、実施例3の実験用放熱マット1C、実施例2の実験用放熱マット1B、実施例1の実験用放熱マット1Aは、この順で、蓄熱材パック4の保温性に優れて、蓄熱材パック4の潜熱に対し、椅子側への放熱は、この順で効果的に抑制できていることが判る。そして、
図18に示すように、蓄熱材パック4は、椅子側への潜熱の放熱を抑えた状態の下、身体側に有効に放熱されていることが判る。
【0097】
次に、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xの作用・効果について説明する。
【0098】
本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xは、発生した熱を放熱可能な蓄熱材パック4と、携帯可能な態様で形成された本体5とを有し、本体5の収容部35に配設した蓄熱材パック4から、熱を提供先に放つ携帯用放熱付与具において、蓄熱材パック4は、板状に形成されていること、本体5は、互いに対向して配置可能な第1側部31と第2側部32とを含む扁平な袋状に形成され、第2側部32と第1側部31とが積層状に配置された状態の下、蓄熱材パック4が、第2側部32と隣接して設けた収容部35に、自在に収納またはその取出しできる態様で、配設されること、収容部35に蓄熱材パック4を収納して放熱される状態では、蓄熱材パック4を挟んだ第2側部32側に比べ、蓄熱材パック4の熱が、蓄熱材パック4と離間した側にある第1側部31の他端面31bから外部に伝熱し難いよう、第1側部31は、少なくとも一以上の気泡緩衝材を含んで構成した放熱断熱部3、または、断熱性を有したシート状の断熱材34が積層された状態の気泡緩衝材を、少なくとも含んで構成した放熱断熱部3となっていること、を特徴とする。
【0099】
この特徴により、例えば、スポーツ試合や野外イベント等、屋外施設内にあるベンチに座って観戦を長時間、楽しむ場合や、公園の椅子に座って寛ぐ場合等に、人が、椅子等の座面や背もたれに放熱断熱部3を当接させた状態で、携帯用放熱マット1,1Xを介して椅子等に座ると、蓄熱材パック4で発した熱のうち、椅子等の座面や背もたれ向けて伝熱する放熱ロスが、放熱断熱部3で抑制できている。それ故に、携帯用放熱マット1,1Xは、蓄熱材パック4からの放熱に対し、椅子等側への無駄な放熱ロスを抑えた保温性を高めた態様で構成しているため、蓄熱材パック4から放つ熱が、蓄熱材パック4で放熱可能な全熱容量のうち、無駄な放熱ロスを抑えている分、
図19に示すように、より長い時間、かつより高い温度を維持したまま、身体側に配する第2側部32に伝熱するようになる。
【0100】
従って、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xによれば、持ち込んだ使用先で、熱の損失を抑えると共に、必要とされる熱を使用者に持続的に付与することができる、という優れた効果を奏する。
【0101】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、収容部35に蓄熱材パック4を収納して放熱される状態では、蓄熱材パック4を挟んだ第1側部31側に比べ、蓄熱材パック4の熱が、蓄熱材パック4と離間した側にある第2側部32側で保温され易いよう、第2側部32は、第1側部31との対比で、少なくとも同等以上の耐荷重特性を有し、荷重負荷に伴う弾性変形量を抑えた気泡緩衝材で構成された放熱伝熱部2となっていること、を特徴とする。
【0102】
この特徴により、蓄熱材パック4から放熱を開始して、携帯用放熱マット1,1Xでの過冷却現象解除操作を終えると、
図16に例示するように、蓄熱材パック4からの放熱が、例えば、1℃程度の低下に留め、4時間以上もの長い時間、持続的に放熱伝熱部2に伝熱できる。ひいては、先に例示したように、人が、冷えた状態にある屋外施設内のベンチや椅子に座って観戦を楽しむ場合等に、携帯用放熱マット1,1Xを椅子等に配して座ると、観戦している間、携帯用放熱マット1,1Xは、蓄熱材パック4からの放熱により、例えば、二十数~四十数℃程度の温度で、座位姿勢の人の身体を、心地好く効果的に温めることができる。
【0103】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、断熱材34は、気泡緩衝材の表面に密着して形成されていること、を特徴とする。
【0104】
この特徴により、断熱材34が、僅か数~数百μmの厚みで、第1側部31の表面(一端面31aまたは他端面31bの片面、あるいは一端面31aと他端面31bの両面)にラミネートされているだけで、放熱断熱部3は、蓄熱材パック4からの放熱に対し、椅子等側への無駄な放熱ロスを効果的に抑え、放熱伝熱部2には、蓄熱材パック4からの放熱が、より高い温度を維持したままで、座位姿勢の人の身体に伝熱される。具体的には、第1側部31単体の場合に比べ、
図19に例示するように、第2測定部位M2-第4測定部位M4との最大温度差は約10℃と、放熱断熱部3により、椅子等側への無駄な放熱ロスが抑制できている。従って、
図16に例示するように、蓄熱材パック4は、放熱伝熱部2では、4時間以上もの長い時間、時間の経過に伴う温度低下を1℃以内に抑えて、座位姿勢の人の身体にとって心地の好い温度を維持した状態で、持続的に放熱できている。
【0105】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、本体5は、可逆的に展開または組み立て可能な態様であり、蓄熱材パック4を挟む第2側部32の反対側で、第1側部31と隣接して配置可能な第3側部33を有し、第3側部33は、気泡緩衝材からなること、第1側部31と第2側部32は何れも、それぞれ第1辺30Aを含む一の組の辺同士と、第2辺30Bを含む他の組の辺同士でなす矩形状に形成され、本体5が展開された状態では、第1側部31と第2側部32の第1辺30A同士、または第1側部31と第2側部32の第2辺30B同士が少なくとも繋がっていると共に、第2側部32をなす四辺のうち、少なくとも一辺が、第3側部33と繋がっていること、本体5が組み立てられた状態では、収容部35は、第1側部31または第3側部33のいずれか一方と、第2側部32との間に形成されること、を特徴とする。
【0106】
この特徴により、携帯用放熱マット1,1Xを使用先に持ち運んで使用するにあたり、本体5で可逆的に展開または組み立てが可能であるため、本体5の収容部35に対し、蓄熱材パック4の収納とその取出しが簡単にできるようになる。特に、蓄熱材パック4内の熱源が潜熱蓄熱材組成物10である場合、潜熱蓄熱材組成物10で潜熱を蓄熱させるときに、蓄熱材パック4を本体5の収容部35から取出して行うこともある。それ故に、蓄熱とその放熱のサイクルを、複数回に亘り、頻繁に繰り返す潜熱蓄熱材組成物10では、蓄熱材パック4が、本体5の収容部35に収納し易く、そこから取り出し易くなっていると、携帯用放熱マット1,1Xの使い勝手は向上する。
【0107】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、第1側部31、第2側部32、及び第3側部33のうち、本体5を組み立てた状態の下で、互いに対向した配置で重ね合う部分を、着脱自在に連結可能な固着部40が、本体5に設けられていること、を特徴とする。
【0108】
この特徴により、本体5の組み立て後、第1側部31、第2側部32、及び第3側部33は、固着部40により、重ね合った部分を連結できるため、携帯用放熱マット1,1Xの使用時でも、収容部35に収容した蓄熱材パック4が、本体5から外れてしまうことなく、第1側部31と第2側部32との間に収容された配置状態を、保持することができる。
【0109】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、蓄熱材パック4は、折畳み可能であること、を特徴とする。
【0110】
この特徴により、携帯用放熱マット1,1Xを使用先に持ち運ぶ際に、蓄熱材パック4をコンパクト化して持ち運ぶことができるため、蓄熱材パック4が、本体5と別々に構成されていても、手提げ袋やトートバッグ等、収容物に収容し易くなり、移動時に特段の困難を伴うことなく、使用先に持ち運ぶことができる。
【0111】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、発熱体(蓄熱材パック4)を加熱するヒータ50を備え、ヒータ50は、蓄熱材パック4と面接触させて潜熱蓄熱材組成物10(潜熱蓄熱材11)を加熱するシート状のカーボンヒータであること、を特徴とする。
【0112】
この特徴により、蓄熱材パック4は、日常的に使用する携帯電話に充電を行う要領と似たような使い勝手で、ヒータ50により加熱され、
図13に例示するように、蓄熱材パック4内の潜熱蓄熱材組成物10全域を、均一な温度分布で昇温でき、潜熱蓄熱材組成物10を、ヒータ50への通電後、例えば、3時間程で、潜熱の蓄熱を終えた状態にすることができる。また、特に、携帯用放熱マット1,1Xで用いる蓄熱材パック4と、その予備用の蓄熱材パック4の2つを加熱したい場合に、
図13に例示するように、2つの蓄熱材パック4の間にヒータ50を挟み込み、2つの蓄熱材パック4が同時にヒータ50で加熱できる。そのため、1つの蓄熱材パック4の加熱時間で、2つの蓄熱材パック4が加熱できて、それぞれの潜熱蓄熱材組成物10に、潜熱を効率良く蓄えることができる。
【0113】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、発熱体は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材11(潜熱蓄熱材組成物10)を、収容部材20の内部空間20Sに漏れなく充填した蓄熱材パック4であること、を特徴とする。
【0114】
この特徴により、潜熱蓄熱材組成物10は、ヒータ50から提供された熱を潜熱蓄熱材11に一時的に蓄えた後、携帯用放熱マット1,1Xの使用先で、潜熱蓄熱材11に蓄えた潜熱を放熱することができ、蓄熱とその放熱のサイクルを、複数回に亘り、繰り返し使用できる。また、携帯用放熱マット1,1Xでは、蓄熱材パック4による放熱の温度は、潜熱蓄熱材組成物10の構成成分によって異なるため、所望とする放熱の温度に合わせて、選択された構成成分の潜熱蓄熱材組成物10を収容部材20内に充填することにより、蓄熱材パック4は、放熱する温度を、採暖したい(あるいは冷やしたい)温度帯に合わせて、構成することができる。
【0115】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、収容部材20の内部空間20Sには、潜熱蓄熱材11の融液の流れを規制する流動規制部22が設けられていること、を特徴とする。
【0116】
この特徴により、特に、携帯用放熱マット1,1Xを使用先に持ち運ぶときや、携帯用放熱マット1,1Xを使用せずに保管しているとき等において、蓄熱材パック4が、上方から下向きに垂れた配置姿勢で、潜熱蓄熱材組成物10が融液の状態になっている場合に、融液状態の潜熱蓄熱材組成物10が、流動規制部22により、収容部材20の内部空間20Sの下方に偏ってしまうのを抑制することができる。これにより、蓄熱材パック4では、潜熱蓄熱材組成物10が、融解(液相状態)から相変化しても、蓄熱材パック4内の潜熱蓄熱材組成物10は、その厚み(
図2(b)の上下方向に沿った距離)に対し、全域での不揃い化を避けた態様で、凝固(固相状態)し易くなる。それ故に、携帯用放熱マット1,1Xの使用時に、潜熱蓄熱材組成物10が固相に相変化する際に生じる潜熱の放熱に基づいて、蓄熱材パック4から放つ熱が、より均一な分布と温度の状態で、第2側部32に伝熱できるようになる。
【0117】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、潜熱蓄熱材11から放つ潜熱は、20℃以上~90℃以下の温度帯域内とする温熱HTであること、を特徴とする。
【0118】
この特徴により、人が、冷えた状態にある屋外施設内のベンチや椅子に、携帯用放熱マット1,1Xを介して、座って観戦を楽しむような場合に、携帯用放熱マット1,1Xは、蓄熱材パック4からの放熱により、例えば、25~30℃程度の温度で、座位姿勢の人の身体を、心地好く効果的に温めることができる。
【0119】
また、本実施形態に係る携帯用放熱マット1,1Xでは、本体5には、携行時に人の持ち運びを補助する把持部45が設けられていること、を特徴とする。
【0120】
この特徴により、人が、携帯用放熱マット1,1Xを使用先で使用するにあたって、把持部45を使って携帯用放熱マット1,1Xを持ち運ぶことで、人への負担が軽減できる。
【0121】
以上において、本発明を実施形態の実施例1~3、及び比較例に即して説明したが、本発明は上記実施形態の実施例1~3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0122】
例えば、実施形態では、第1側部31~第3側部33を、3層構造の樹脂製シート材をなす気泡緩衝材で構成したが、気泡緩衝材は、樹脂製シート材による2層構造で、片側の層を平坦状とし、もう一つの層に、円柱状または六角形状に成型された中空状の空気充填部を、幾何学的で規則的な配置の下、隣り同士を断続的に離間させた形態であっても良い。
【0123】
また、実施形態では、潜熱蓄熱材11の主成分を、酢酸ナトリウム三水和物としたが、潜熱蓄熱材の主成分は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、無機塩水和物をなす物質等であっても良く、種々変更可能である。
【0124】
また、実施形態では、蓄熱材パック4からの放熱温度を、30℃近傍に調整して設定された採暖用の携帯用放熱マット1,1Xとした。しかしながら、携帯用放熱付与具は、蓄熱材パック(発熱体)から放つ熱を、0℃以上~20℃未満の温度帯域内とする冷熱とした保冷用の携帯用放熱マットであっても良い。具体的には、蓄熱材パックに含む主成分の潜熱蓄熱材が、例えば、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB:Tetrabutylammonium Bromide)の包接水和物のほか、リン酸塩系の水和物、酢酸塩水和物や硫酸塩水和物等の無機塩水和物であっても良い。
【0125】
また、実施形態では、断熱材34付きの第1側部31が放熱断熱部3に配設された携帯用放熱マット1,1Xを挙げたが、携帯用放熱付与具では、第2の断熱材を積層した状態の第1の断熱材が、第2側部にも配設されていても良い。
【0126】
また、実施形態では、第1側部31や第2側部32等で用いる第1の断熱材を、気泡緩衝材とした携帯用放熱マット1,1Xを挙げた。しかしながら、携帯用放熱付与具を構成する第1の断熱材は、実施形態に限定されず、前出したように、例えば、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリスチレン(PS:polystyrene)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリウレタン(PU:polyurethane)等の樹脂からなる板状の発泡材や、板状のゴム製部材等、断熱性を有し、持ち運び時に特に困難を伴わない程度に軽量で、耐荷重性を兼ね備えた部材であれば、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0127】
1,1X 携帯用放熱マット(携帯用放熱付与具)
2 放熱伝熱部
3 放熱断熱部
4 蓄熱材パック(発熱体、蓄熱材パック)
5 本体
11 潜熱蓄熱材
20 収容部材
20S 内部空間
22 流動規制部
30A 第1辺(一の組)
30B 第2辺(他の組)
31 第1側部
31b 第1側部の他端面(第1側部の端面)
32 第2側部
33 第3側部
34 断熱材(第2の断熱材)
35 収容部
40 固着部(固着手段)
41A 第1固定側固着部位(固着手段)
41B 第1着脱側固着部位(固着手段)
42A 第2固定側固着部位(固着手段)
42B 第2着脱側固着部位(固着手段)
45 把持部(携行補助手段)
50 ヒータ(加熱手段)
【要約】
【課題】持ち込んだ使用先で、熱の損失を抑えると共に、必要とされる熱を、より長い時間、持続して使用者等の提供先に付与することができる携帯用放熱付与具を提供する。
【解決手段】携帯用放熱マット1は、携帯可能に形成した本体5の収容部35に、放熱可能な蓄熱材パック4を配設し、蓄熱材パック4から提供先に放熱する。本体5は、第1側部31と第2側部32とを含む扁平な袋状に形成され、第2側部32と第1側部31とを積層状に配置した状態の下、板状の蓄熱材パック4が、第2側部32と隣接した収容部35に、出し入れ自在に配設される。収容部35に蓄熱材パック4を収納して放熱される状態では、蓄熱材パック4を挟む第2側部32側に比べ、蓄熱材パック4の熱が、蓄熱材パック4と離間した側にある第1側部31の他端面31bから外部に伝熱し難いよう、第1側部31は、一以上の気泡緩衝材を含み、断熱材34を選択的に含んだ放熱断熱部3となっている。
【選択図】
図1