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特許7535657新規チオヒダントイン誘導体及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】新規チオヒダントイン誘導体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/96 20060101AFI20240808BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C07D233/96 CSP
A61K31/4166
A61P1/16
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/12
A61P13/12
A61P17/06
A61P25/04
A61P25/16
A61P25/28
A61P27/02
A61P27/06
A61P29/00
A61P37/08
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023514074
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2021011535
(87)【国際公開番号】W WO2022045836
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0109702
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0109703
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523069658
【氏名又は名称】セルロス バイオテック
【氏名又は名称原語表記】CELROS BIOTECH
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ぺ,ユン ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ダ ウン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/012670(WO,A2)
【文献】特表2002-514598(JP,A)
【文献】米国特許第5143929(US,A)
【文献】国際公開第2019/023448(WO,A1)
【文献】特表2012-502981(JP,A)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry ,2016年,Vol. 24, No. 18,p. 4144-4151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩:
【化1】
前記式1において、
aは、水素、ヒドロキシ基またはC1~C4のアルコキシ基であり、
bは、C1~C6の直鎖または分枝鎖アルキル基、C3~C10のシクロアルキル基または-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、水素またはC1~C4のアルキル基であり、
nは、1~4の任意の整数であり、
mは、1~3の任意の整数である。
【請求項2】
前記式1で表される化合物は、下記式3で表される化合物である、請求項1に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩:
【化2】
前記式3において、
aは、水素、ヒドロキシ基またはC1~C4のアルコキシ基であり、
bは、C1~C6の直鎖または分枝鎖アルキル基、C3~C10のシクロアルキル基または-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、水素またはC1~C4のアルキル基であり、
nは、1~4の任意の整数である。
【請求項3】
前記式1で表される化合物は、下記式4で表される化合物である、請求項2に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩:
【化3】
前記式4において、
aは、水素、ヒドロキシ基またはC1~C4のアルコキシ基であり、
bは、C1~C6の直鎖または分枝鎖アルキル基、C3~C10のシクロアルキル基または-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、水素またはC1~C4のアルキル基であり、
nは、1~4の任意の整数である。
【請求項4】
前記Raは、水素、ヒドロキシ、メトキシ、またはエトキシである、請求項1に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩。
【請求項5】
前記Rbは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ベンジル及びフェネチルからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩。
【請求項6】
前記Rbは、イソブチル、シクロヘキシル、ベンジル及びフェネチルからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項5に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩。
【請求項7】
前記Rcは、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩。
【請求項8】
aは、水素、ヒドロキシ、メトキシ、またはエトキシであり、
bは、イソブチル、シクロヘキシル、ベンジル(benzyl)及びフェネチル(phenethyl)からなる群から選択されるいずれか一つであり、
cは、水素、メチル、またはエチルであり、
nは、1、2または3であり、
mは、1である、請求項1に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩。
【請求項9】
前記式1の化合物は、下記からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩。
(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(Z)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-シクロヘキシル-5-(2-ヒドロキシ-4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-ベンジル-5-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-3-フェネチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-ベンジル-5-(2-ヒドロキシ-4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;及び
(E)-3-ベンジル-5-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン。
【請求項10】
前記式1の化合物は、下記からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項9に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩。
(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(Z)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;及び
(E)-3-シクロヘキシル-5-(2-ヒドロキシ-4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含むNADPH酸化酵素(NOX)関連疾患の予防または治療用薬学的組成物であって、
前記NADPH酸化酵素(NOX)関連疾患は、乾癬、リウマチ関節炎、骨関節炎、再狭窄、アテローム性硬化症、潰瘍、肝硬変症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症、器官移植拒否、糖尿病、高血圧、心臓肥大症、心不全症、再狭窄、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、退行性脳疾患、網膜疾患からなる群から選択されるいずれか一つである、薬学的組成物。
【請求項12】
前記退行性脳疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、軽度認知障害、老人性認知症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳性運動失調症、トゥレット症候群、フリードライヒ歩行失調、マチャド・ジョセフ病、レビー小体型認知症、筋緊張異常、進行性核上性麻痺及び前頭側頭型認知症で構成された群から選択されるいずれか一つである、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記網膜疾患は、緑内障、未熟児網膜症、増殖性網膜症、角膜移植拒否、増殖性硝子体網膜症、糖尿病網膜症、黄斑変性、脈絡膜新生血管症及び網膜浮腫からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
NADPH酸化酵素(NOX)関連疾患の治療用薬剤の製造のための、請求項1乃至1
0のいずれか一項に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩の使用であ
って、
前記NADPH酸化酵素(NOX)関連疾患は、乾癬、リウマチ関節炎、骨関節炎、再
狭窄、アテローム性硬化症、潰瘍、肝硬変症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症
、血栓性微小血管症、器官移植拒否、糖尿病、高血圧、心臓肥大症、心不全症、再狭窄、
癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、退行性脳疾患、網膜疾患からなる群から選択されるいず
れか一つである、使用。
【請求項15】
前記退行性脳疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、軽度認知障害、老人性認知症、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、脊髄小脳性運動失調症(Spinocer ebellar Atrophy)、トゥレット症候群(Tourette’s Syndrome)、フリードライヒ歩行失調(Friedrich’s Ataxia)、マチャド・ジョセフ病(Machado-Joseph’s disease)、レビー小体型認知症(Lewy Body Dementia)、筋緊張異常(Dystonia)、進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy)及び前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia)で構成された群から選択されるいずれか一つである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記網膜疾患は、緑内障、増殖性硝子体網膜症、糖尿病網膜症、黄斑変性、脈絡膜新生血管症及び網膜浮腫からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の化合物、その幾何異性体または薬剤学的に許容可能な塩、及び薬剤学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規チオヒダントイン誘導体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、黒質緻密部(substantia nigra pars compacta、SNc)でドーパミン作動性ニューロンの神経退化が特徴であって、これは、線条体(striatum)で次第にドーパミンの枯渇を引き起こす。パーキンソン病の特徴は、基底核循環の均衡を崩し、運動ニューロンの本来の機能を果たせなくして、硬直(rigidity)、震え(tremor)、運動不能(akinesia)を引き起こす。50代以上の人口の1~5%が二番目に最もよく経験する神経退化疾病である。
パーキンソン病の究極的な原因は、まだ明らかになっていない状況であるが、健常人の中脳の黒質(substantia nigra)部位の神経細胞で作られる脳の神経伝達物質であるドーパミン(dopamine)の欠乏によって様々な症状が現れるものと知られている。
脳の黒質に分布する神経細胞で生成されたドーパミンは、線条体(corpus striatum)を含む脳の基底核(basal ganglia)と連結される。基底核は、脳の運動皮質及びその他の様々な部位と複雑に連結されており、人体の運動を円滑で調和するように、そして正確に遂行できるようにする非常に重要な部位である。このようなドーパミン性神経の損傷によって結果的に基底核ドーパミン性神経末端で遊離するドーパミンの欠乏がパーキンソン病で現れる運動性障害の主な原因である。
パーキンソン病の原因、即ち、何のため黒質の神経細胞が破壊されるかに対してまだ正確な解答がないが、これを糾明するために盛んな研究が進行している。ウイルス性脳炎等による感染、免疫機序が関係するという意見、先天的にその気質を持って生まれるという遺伝的理由、遊離基が生成されて神経細胞を破壊するという意見、ドーパミンの生成及び代謝過程に問題があるという意見等があるが、まだパーキンソン病全体を説明するには不足した点が多い。
【0003】
一方、前記パーキンソン病の誘発物質のうち一つとして6-ヒドロキシドーパミン(6-hydroxydopamine、6-OHDA)とL-グルタミン酸(L-glutamic acid)が知られている。
前記6-OHDAは、神経毒素であって、ドーパミンと化学的構造が類似してドーパミン輸送体(DAT)により吸収され、フリーラジカル(free radical)を作り出すのでドーパミン神経細胞を損傷させて神経細胞死を引き起こすものと知られている。
前記L-グルタミン酸は、正常な濃度で生理学的に重要な役割を果たすが、過量分泌されると興奮毒性を誘発するアミノ酸として作用して、興奮性神経伝達物質による興奮毒性を引き起こして神経細胞の損傷または死滅を誘発する。その結果、記憶力減退、認知機能低下だけではなく、アルツハイマー病、パーキンソン病等、多様な神経退行性疾患を引き起こす。
前記興奮性神経伝達物質または神経毒素等による神経細胞損傷は、中枢神経系内の神経細胞の過度な細胞死により現れ、従って、神経細胞の細胞死を阻害させることは、記憶力減退、認知機能低下、ひいては神経退行性疾患から神経細胞を保護するのに多く役立つだろう。
特に、近年、神経細胞死及び退行性神経疾患から保護するために神経伝達物質受容体に対する拮抗剤、GABA効能剤、細胞内カルシウム減少剤、遊離ラジカル除去剤、グルタメート遊離抑制剤等、多様な薬物の開発が試みられているが、ほとんどが危険要素と副作用を有している状態である。
【0004】
また、網膜は、眼球壁の最も奥側に位置して眼球の中の硝子体(vitreous body)と接している透明で薄い膜である。網膜は、事物の光学的情報を電気的信号に変換して視神経(optic nerve)を通して脳の中枢視覚領域に映像を伝達する一次視覚情報器官の役割を果たす。網膜は、1億個を超える光受容体細胞、100万個を超える視神経細胞である神経節細胞、そしてこれらを連結する電線の役割を果たす数多くの神経細胞からなっている精巧な組織である。色と事物を区別し、視力を示す網膜の中心部分である黄斑部(macular lutea)は、円錐細胞で構成された光受容体細胞層と神経節細胞層からなっている。黄斑部では、映像の電気的信号が化学的信号に転換されて神経節細胞の軸索である視神経を経て脳に伝達される。黄斑部以外の網膜は、周辺部を認知し、暗い時に主な役割を担当する。
老化または外部的な要因により網膜に異常が発生するようになると、視力と視野に問題が生じ、厳しい場合には失明に至るようになる。網膜疾患は、神経網膜が網膜色素上皮(retinal pigment epithelium、RPE)細胞層から離れながら網膜が眼球後面に分離されて視力障害を誘発する網膜剥離(retinal detachment)、網膜周辺組織に異常を引き起こす周辺部網膜変性、及び黄斑部に異常が生じる黄斑変性(macular degeneration)がある。網膜が色素上皮層と分離されると映像に対する光学的情報の伝達を受けることができない。また、脈絡膜からの栄養供給がなされないので神経細胞が機能を果たすことができなくなる。このような状態が持続されると永久的な網膜萎縮が発生して失明に至るようになる。
網膜色素上皮は、神経網膜と脈絡膜との間に位置しており、立方形の分極化された単一膜であって網膜の機能を維持するのに重要な役割を果たす。正常な網膜色素上皮は、形態学的そして機能的に非対称な構造を有する。網膜色素上皮細胞の変形は、増殖性硝子体網膜症(proliferative vitreoretinopathy、PVR)、糖尿病網膜症(diabetic retinopathy、DR)、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration、AMD)等の線維症的眼疾患につながり得る。病理学的条件で網膜色素上皮細胞は変形されて固有の形態を有することができないだけではなく、細胞外排出及び食菌作用の機能を喪失するようになる。
一方、網膜色素上皮細胞の線維症的変形により視力障害が始まると以前の視力に回復することができないため早期に発見して治療することが重要である。網膜色素上皮細胞の線維症的変形は、早期に発見して治療すると視力喪失を最小化することができるが、未だ確実な治療法がない実情である。
【0005】
上で言及された疾患を含めて多様な疾患の発明は、NADPH-oxidaseと関連している。
NADPHオキシダーゼ(NOX)は6膜貫通領域(trans-membrane domain)を有して生物学的膜を横切って電子を移送する酵素ファミリーである。これらの酵素は、酸化還元-敏感性信号伝達経路を幅広く及び特異的に調節して多様な発病機序と関連している。一般に、電子受容体は酸素であり、電子転移反応の産物はスーパー酸化物(superoxide)である。従って、Nox酵素の主な生物学的機能は、酸素から反応性酸素種(reactive oxygen species:ROS)の生成である。反応性酸素種(ROS)は、酸素から誘導された小さな分子であり、酸素ラジカル(スーパー-酸化物アニオン[*O2]、ヒドロキシル[HO*]、ペルオキシル[ROO*]、アルコキシル[RO*]及びヒドロペルオキシル[HOO*])を含み、他の酸化剤および/または容易に過酸化水素(H22)のようなラジカルに転換される非ラジカル化合物も含まれる。
パーキンソン病、アルツハイマー病等を含む中枢神経系の様々な疾病は、病症の発病と進行に酸化ストレス、炎症、ミクログリア活性化、進行性神経細胞死が共通して現れる。パーキンソン病患者、アルツハイマー病患者、筋萎縮性側索硬化症患者等の脳でNox1、Nox2、Nox4の発現が増加し、疾病誘発実験動物(除草剤やLPS、MPP+等によるパーキンソン動物モデル、APPを過発現させたアルツハイマー動物モデル、SOD1突然変異筋萎縮性側索硬化症動物モデル)でNoxをノックアウトまたは遺伝的不活性化させたとき、神経保護効果が報告されたことがある。
また、酸化ストレスによる網膜色素上皮細胞の機能障害が黄斑変性の発病機序に決定的に関与し、Noxの活性が血管内皮細胞の機能障害及びVEGFを上向き調節を通した血管新生と強い関連性がある。
【0006】
上述のような問題点下で、本発明者らは、新規チオヒダントイン誘導体がNox抑制剤として優れた作用効果があることを確認した。特に、このようなNox抑制作用を通してパーキンソン病等のような退行性脳疾患、黄斑変性等のような網膜疾患の予防または治療効果があることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、新規ヒダントイン化合物、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩を提供することである。
また、本発明は、前記新規ヒダントイン化合物、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
式1の化合物
本発明は、前述した技術的課題を解決するために、下記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を提供する:
【0009】
【化1】
【0010】
前記式1において、
aは、水素、ヒドロキシ基またはC1~C4のアルコキシ基であり、
bは、C1~C6の直鎖または分枝鎖アルキル基、C3~C10のシクロアルキル基または-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、水素またはC1~C4のアルキル基であり、
nは、1~4の任意の整数であり、
mは、1~3の任意の整数である。
【0011】
より具体的に、前記式1で表される化合物は、下記式2で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩であってよい。
【0012】
【化2】
【0013】
前記式2において、
aは、水素、ヒドロキシ基またはC1~C4のアルコキシ基であり、
bは、C1~C6の直鎖または分枝鎖アルキル基、C3~C10のシクロアルキル基または-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、水素またはC1~C4のアルキル基であり、
nは、1~4の任意の整数である。
【0014】
より具体的に、前記式1で表される化合物は、下記式3で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩であってよい。
【0015】
【化3】
【0016】
前記式3において、Ra、Rb、Rc、及びnは、先に式2において定義したとおりである。
【0017】
より具体的に、前記式1で表される化合物は、下記式4で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩であってよい。
【0018】
【化4】
【0019】
前記式4において、Ra、Rb、Rc、及びnは、先に化2において定義したとおりである。
【0020】
本明細書において使用される用語及び記号の意味は、下記のとおりである。
本発明において、「アルキル」は、構造式-Cn(2n+1)の直鎖または分枝鎖1価炭化水素基を意味する。その非制限的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル等を含む。例えば、「C1-C6アルキル」とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ヘキシルのような直鎖または分枝鎖のアルキルを言及するものであってよい。
本発明において、「アルコキシ」は、酸素原子に結合されたアルキル基を含有する官能基を意味する。C1~C4のアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシのようなアルコキシを言及するものであってよい。
本発明において、「C3~C10のシクロアルキル基」は、3個~8個の炭素原子を含有する構造式-Cn(2n-1)の環状、1価炭化水素基を意味する。その非制限的な例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等を含む。
本発明において、「C6-C12アリール」は、6または12個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素を指す。例えば、モノシクリック(例えば、フェニル);ビシクリック(例えば、インデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル)のような環系を指し得る。
前記nは、1、2、3、または4の任意の整数である。
前記mは、1、2、または3の任意の整数である。
本発明において、Raは、水素、ヒドロキシ基またはC1~C4のアルコキシ基である。Raは、好ましく水素、ヒドロキシ、メトキシ、またはエトキシであってよい。
本発明において、RbがC1~C6の直鎖または分枝鎖アルキル基である場合、Rbは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル等であってよく、これに限定されるものではない。本発明の一実施様態によれば、イソブチルであってよい。
本発明において、RbがC3~C10のシクロアルキル基である場合、好ましくC5~C8のシクロアルキル基であってよい。より具体的に、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルであってよい。本発明の一実施様態によれば、シクロヘキシルであってよい。
本発明において、Rbが-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基である場合、好ましく前記Rbがベンジル(benzyl)、フェネチル(phenethyl)、フェニルプロピル等であってよい。
本発明において、Rcは、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルであってよい。
【0021】
他の具現例において、前記式1で表される化合物は、
前記式1において、
aは、水素であり、
bは、C3~C10のシクロアルキル基であり、
cは、C1~C4のアルキル基であり、
nは、1-4であり、及び
mは、1である、化合物であってよい。
他の具現例において、前記式1で表される化合物は、
前記式1において、
aは、水素であり、
bは、C1~C6の直鎖または分枝鎖アルキル基であり、
cは、C1~C4のアルキル基であり、
nは、1-4であり、及び
mは、1である化合物であってよい。
他の具現例において、前記式1で表される化合物は、
前記式1において、
aは、ヒドロキシ基であり、
bは、C3~C10のシクロアルキル基であり、
cは、C1~C4のアルキル基であり、及び
nは、1-4であり、及び
mは、1である化合物であってよい。
他の具現例において、前記式1で表される化合物は、
前記式1において、
aは、C1~C4のアルコキシ基であり、
bは、C3~C10のシクロアルキル基であり、
cは、C1~C4のアルキル基であり、
nは、1-4であり、及び
mは、1である化合物であってよい。
他の具現例において、前記式1で表される化合物は、
前記式1において、
aは、水素であり、
bは、-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、C1~C4のアルキル基であり、
nは、1-4、及び
mは、1である化合物であってよい。
他の具現例において、前記式1で表される化合物は、
前記式1において、
aは、ヒドロキシ基であり、
bは、-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、C1~C4のアルキル基であり、
nは、1-4であり、
mは、1である化合物であってよい。
他の具現例において、前記式1で表される化合物は、
前記式1において、
aは、C1~C4のアルコキシ基であり、
bは、-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、C1~C4のアルキル基であり、
nは、1-4であり、
mは、1である化合物であってよい。
【0022】
本発明の具体例によれば、前記式1の化合物は、下記化合物からなる群から選択されたいずれか一つであってよい。
(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(Z)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-シクロヘキシル-5-(2-ヒドロキシ-4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-ベンジル-5-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-フェネチル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;
(E)-3-ベンジル-5-(2-ヒドロキシ-4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン;及び
(E)-3-ベンジル-5-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン。
【0023】
本発明の式1で表される化合物は、1個以上の二重結合を含有することができ、これによってシス/トランス、(E)/(Z)形態のようなそれぞれの幾何異性体として存在し得る。
このような異性体は、従来の技術、例えば、式1で表された化合物は、カラムクロマトグラフィーまたはHPLC等の分割により分離が可能である。
本発明の具体例によれば、前記式1の化合物は、下記化合物からなる群から選択されたいずれか一つであってよい。
【0024】
【表1】
【0025】
前記実施例2の化合物は、(E)/(Z)形態によって下記のような構造を有してもよい。
【0026】
【化5】
【0027】
本発明において、薬学的に許容可能な塩は、医薬業界で通常使用される塩を意味し、例えば、カルシウム、ポタシウム、ソジウム及びマグネシウム等で製造された無機イオン塩、塩酸、硝酸、リン酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸及び硫酸等で製造された無機酸塩;酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カーボン酸、バニリン酸、ヒドロヨウ素酸等で製造された有機酸塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸等で製造されたスルホン酸塩;グリシン、アルギニン、リジン等で製造されたアミノ酸塩;及びトリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、ピコリン等で製造されたアミン塩等があるが、列挙されたこれらの塩によって本発明において意味する塩の種類が限定されるものではない。
【0028】
式1の化合物の用途
本発明は、下記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0029】
【化6】
【0030】
前記式1において、
aは、水素、ヒドロキシ基またはC1~C4のアルコキシ基であり、
bは、C1~C6の直鎖または分枝鎖アルキル基、C3~C10のシクロアルキル基または-(C1~C3アルキル)C6-C12アリール基であり、
cは、水素またはC1~C4のアルキル基であり、
nは、1~4の任意の整数であり、
mは、1~3の任意の整数である。
【0031】
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を提供する。
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩;及び薬剤学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を提供する。
前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含むNox抑制剤を提供する。
【0032】
本発明に係る化合物は、Nox(NADPH oxidase)抑制に優れた効果を示して、多様な治療用途に利用され得る。
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含むNADPH酸化酵素(NOX)関連疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
NADPHオキシダーゼ(Nox)ファミリーのメンバーは、主要生成物としてROSを生成する酵素である。これらは、一般に過酸化物アニオンを生産するためにNADPH-依存的方法で酸素分子を減少させる。このようなNoxの活性制御を通した活性酸素生成の調節機序は、究極的に細胞全般の信号伝達体系と密接な関係を有しているため、細胞全般の信号伝達体系だけではなく、多様な疾患の発病に対する治療とも関連が高い。
例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病等を含む退行性脳疾患と関連する中枢神経系の様々な疾病は、病症の発病と進行に酸化ストレスと神経炎症が共通して現れる。特に、Noxは、酸化ストレスと神経炎症を全て調節する上位因子と確認された。従って、Noxの不活性化または薬理学的抑制は、広範囲な神経疾患の強力な神経保護効果(例えば、ドーパミン性ニューロン保護、ミクログリアの病理改善等)及び行動学的改善効果を期待することができる。
例えば、酸化ストレスによる網膜色素上皮細胞の機能障害が発生し得るが、このような機能障害は、網膜疾患の発病機序に決定的に関与し、Noxの活性が血管内皮細胞の機能障害及びVEGFを上向き調節を通した血管新生と強い関連性があり、その抑制は、疾患治療に優れた効果を示すことができる。
例えば、Nox阻害剤が抗-腫瘍効果を有するか、免疫治療に対する敏感性を回復させるか、および/または免疫治療に対する反応性を改善することもできる。また、血管形成抑制効果を示すこともできる。また、炎症因子等の発現を阻害することができる。
【0033】
これによって、NADPH酸化酵素(NOX)関連疾患としては、例えば、乾癬、リウマチ関節炎、骨関節炎、再狭窄、アテローム性硬化症、潰瘍、肝硬変症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症、器官移植拒否、糖尿病、高血圧、心臓肥大症、心不全症、再狭窄、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、退行性脳疾患、網膜疾患等が挙げられる。
自己免疫疾患は、円形脱毛症(alopecia areata)、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、副腎の自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎、自己免疫精巣炎、自己免疫血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋病症、慢性疲労免疫異常症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板性狼瘡、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA神経炎、若年性関節炎、扁平苔癬、紅斑性狼瘡、メニエール病、混合性連結組織疾患、多発性硬化症、タイプIまたは免疫-媒介糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発軟骨炎、多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎と皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎、巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、白斑症及びウェゲナー肉芽腫症を含むが、これに限定されるものではない。
本発明の組成物により予防または治療され得る炎症性疾患の例は、喘息、脳炎(encephalitis)、炎症性腸炎、慢性閉鎖性肺疾患、アレルギー、敗血症性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節病症、関節炎、炎症性骨溶解、及び慢性ウイルスまたはバクテリア感染による慢性炎症を含むが、これに限定されるものではない。
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物により予防または治療され得る癌は、脳癌、神経内分泌癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵癌、膀胱癌、副腎癌、大腸癌、結腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌及び尿管癌を含むが、これに限定されるものではない。
【0034】
より具体的に、本発明の前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩は、退行性脳疾患予防または治療に有用である。
これによって、本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含む退行性脳疾患予防または治療用薬学的組成物を提供する。
本発明において、退行性脳疾患の非制限的な例は、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、軽度認知障害、老人性認知症、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、脊髄小脳性運動失調症(Spinocer ebellar Atrophy)、トゥレット症候群(Tourette’s Syndrome)、フリードライヒ歩行失調(Friedrich’s Ataxia)、マチャド・ジョセフ病(Machado-Joseph’s disease)、レビー小体型認知症(Lewy Body Dementia)、筋緊張異常(Dystonia)、進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy)、前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia)等が挙げられる。
【0035】
より具体的に、本発明の前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩は、網膜疾患予防または治療に有用である。
これによって、本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含む網膜疾患予防または治療用薬学的組成物を提供する。
本発明において、網膜疾患の非制限的な例は、緑内障、未熟児網膜症、増殖性網膜症、角膜移植拒否、増殖性硝子体網膜症、糖尿病網膜症、黄斑変性、脈絡膜新生血管症または網膜浮腫等が挙げられる。具体的に、前記黄斑変性は、湿式黄斑変性または乾式黄斑変性であってよい。
また、薬物伝達の側面で血液脳関門(BBB)通過にも優れた効能を示すことができる。
【0036】
本発明の薬学組成物は、投与のために、式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の他に追加して薬学的に許容可能な担体を1種以上さらに含むことができる。薬学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤等、他の通常の添加剤を添加できる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液等のような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。従って、本発明の薬学組成物は、パッチ剤、液剤、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、坐剤等であってよい。これらの製剤は、当分野で製剤化に使用される常法またはRemington’s Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法で製造され得、各疾患によってまたは成分によって多様な製剤に製剤化され得る。
【0037】
本発明の薬学組成物は、目的とする方法によって経口投与するか非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)でき、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の種類及び重症度等によってその範囲が多様である。本発明の化1の化合物の1日投与量は、約0.01~1000mg/kgであり、好ましくは0.1~100mg/kgであり、1日1回~数回に分けて投与できる。
即ち、組成物の投与経路は、目的組織に達することができる限り、どのような一般的な経路を通して投与されてよいが、浸透圧ポンプ(osmotic pump)を用いた皮下注射(subcutaneous injection)、皮内注射(intradermal injection)、静脈注射(intravein injection)、腹腔注射(intraperitoneal injection)または眼球注射(intravitreal injection)等を通して投与され得る。
本発明の薬学組成物は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の他に同一または類似した薬効を示す有効成分を1種以上さらに含むことができる。
【0038】
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の治療学的に有効な量を、これを必要とする対象に投与するステップを含む、NADPH酸化酵素(NOX)関連疾患を治療または予防する方法を提供する。
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の治療学的に有効な量を、これを必要とする対象に投与するステップを含む、退行性脳疾患を治療または予防する方法を提供する。
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の治療学的に有効な量を、これを必要とする対象に投与するステップを含む、網膜疾患を治療または予防する方法を提供する。
本発明において使用される「治療学的に有効な量」という用語は、前記疾患の予防または治療に有効な前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の量を示す。
本発明の治療方法は、前記式1の化合物を投与することで、徴候の発現前に疾病そのものを扱うだけではなく、その徴候を阻害するか避けることをまた含む。疾患の管理において、特定活性成分の予防的または治療学的容量は、疾病または状態の本性(nature)と深刻度、そして活性成分が投与される経路によって多様であるだろう。容量及び容量の頻度は、個別患者の年齢、体重及び反応によって多様であるだろう。適した容量用法は、このような因子を当然考慮するこの分野における通常の知識を有する者により容易に選択され得る。また、本発明の治療方法は、前記式1の化合物と共に疾患治療に役立つさらなる活性製剤の治療学的に有効な量の投与をさらに含むことができ、さらなる活性製剤は、前記式1の化合物と共にシナジー効果または補助的効果を示すことができる。
【0039】
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含むNADPH酸化酵素(NOX)関連疾患予防または改善用食品組成物を提供する。
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含む退行性脳疾患予防または改善用食品組成物を提供する。
本発明は、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含む網膜疾患予防または改善用食品組成物を提供する。
本発明の食品組成物は、健康機能食品として使用され得る。前記「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律第6727号による人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して製造及び加工した食品を意味し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか生理学的作用等のような保健用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。
本発明の食品組成物は、通常の食品添加物を含むことができ、前記「食品添加物」として適しているか否かは、他の規定がない限り、食品医薬品安全処に承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法等によって該当品目に関する規格及び基準により判定する。
本発明の食品組成物は、前記疾患の予防および/または改善を目的として、組成物の全重量に対して前記式1の化合物を0.01~95%、好ましくは1~80%の重量百分率で含むことができる。また、前記疾患の予防および/または改善を目的として、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸、飲料等の形態に製造及び加工できる。
【0040】
また、本発明は、NADPH酸化酵素(NOX)関連疾患の治療用薬剤の製造のための前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の用途を提供する。
また、本発明は、退行性脳疾患の治療用薬剤の製造のための前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の用途を提供する。
また、本発明は、網膜疾患の治療用薬剤の製造のための前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩の用途を提供する。
薬剤の製造のための前記式1の化合物は、許容される補助剤、希釈剤、担体等を混合することができ、その他の活性製剤と共に複合製剤に製造されて活性成分の相乗作用を有し得る。
また、本発明においては、前記式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含む認知機能増進用食品組成物を提供する。
【0041】
本発明はまた、下記実施様態を含む。
薬剤として使用するための、本明細書に記述された任意の実施様態に定義された式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩;
本明細書で論議された前記疾患の予防または治療に使用するための、本明細書に記述された任意の実施様態に定義された式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩;
本明細書に記述された任意の実施様態に定義された治療学的に有効な量の式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を、これを必要とする対象体に投与するステップを含む前記言及された疾患の治療方法;
前記言及された疾患の治療のための薬剤の製造のための、本明細書に記述された任意の実施様態に定義された式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩;
本明細書に記述された任意の実施様態に定義された式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含むNox抑制剤;
本明細書に記述された任意の実施様態に定義された式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩を含む抗酸化剤。
全ての例、その異性体またはその薬学的に許容可能な塩は、個別的に、または本明細書に記述されたそれぞれの全ての実施様態の任意の個数との任意の組み合わせで共にグループで請求され得る。
本発明の組成物、用途、治療方法で言及された事項は、互いに矛盾しない限り同一に適用される。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る式1で表される化合物、その異性体または薬剤学的に許容可能な塩は、優れたNox抑制効果を示す。特に、退行性脳疾患、網膜疾患等を含めてNADPH酸化酵素(NOX)関連疾患治療に優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明に係る化合物のNox抑制効果を確認するためのIC50値測定結果を示したものである。
図2】本発明に係る化合物のNox抑制効果を確認するためのIC50値測定結果を示したものである。
図3】BV2細胞内の実施例1の化合物(E7240-17)及び実施例2の化合物(E7240-40)のNox抑制効果分析結果を示したものである。
図4】MPTP誘発パーキンソン病モデルで実施例1の化合物処理による治療効果を確認した結果を示したものである。
図5】MPTP誘発パーキンソン病モデルで実施例1の化合物処理による免疫組織化学染色結果を示したものである。
図6】MPTP誘発パーキンソン病モデルで実施例1の化合物処理による行動テスト結果を示したものである。
図7】実施例1の化合物投与によるHuα-Syn形質変換マウスに対比した海馬(HP CA1、HP CA2)で燐光体α-シヌクレインの量を比較したものである。
図8】実施例1の化合物投与によるHuα-Syn形質変換マウスの前頭前皮質(Pfcx)で星状細胞病理結果を示したものである。
図9】実施例1の化合物投与によるHuα-Syn形質変換マウスの海馬(HP CA1)のミクログリア病理結果を示したものである。
図10】実施例1の化合物投与によるHuα-Syn形質変換マウスの神経筋機能の向上程度を示したものである。
図11】実施例2の化合物投与によるPFF-注入マウスに対するα-シヌクレインの量を比較して示したものである。
図12】実施例2の化合物投与によるPFF-注入マウスの前頭前皮質(Pfcx)で星状細胞病理結果を示したものである。
図13】実施例2の化合物投与によるPFF-注入マウスのミクログリア病理結果を示したものである。
図14】実施例2の化合物投与によるPFF-注入マウスの神経筋機能の向上程度を示したものである。
図15】実施例1の化合物投与によるレーザ誘導脈絡膜新生血管形成(CNV)抑制結果を示したものである。
図16】実施例1の化合物投与によるシナプス後機能向上結果を示したものである。
図17】実施例1の化合物投与によるレーザ光凝固誘導CNV病変弱化結果を示したものである。
図18】実施例1の化合物投与によるレーザ光凝固誘導細胞自殺抑制結果を示したものである。
図19】実施例1の化合物投与による血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)発現抑制結果を示したものである。
図20】実施例1の化合物投与によるミュラー細胞及び星状細胞活性化改善結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違した形態に具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。
以下において言及された試薬及び溶媒は、特に断りのない限りSigma-Aldrich、TCIから購入したものである。
全ての化合物の1H-、13C-NMRは、Bruker AV-500で測定し、CDCl3(dH=7.26ppm and dC=77.0ppm)を内部標準として使用した。NMRデータは、MNova 10.0 processing software(Mestrelab Research)を使用してなされた。
高分解能質量分析は、電気的イオン化を基盤としたJoel JMS-700 mass spectrometerを使用してなされた。
【0045】
実施例1.(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(E7240-17)
【0046】
【化7】
【0047】
(1)3-シクロヘキシル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(8.51g、80%収率、白色固体):
無水エタノール(50mL)内サルコシン(4.45g、50.0mmol)を撹拌した溶液にシクロヘキシルイソチオシアネート(7.77g、55.0mmol)を添加した。反応混合物を6時間の間還流させた後、室温に冷却させた。沈殿した固体をろ過し、エタノール(10mL)で洗浄し、乾燥して相応するチオヒダントインを収得した。
【0048】
【数1】
【0049】
(2)(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(3.14g、84%収率、オレンジ色固体):
3-シクロヘキシル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン(2.12g、10.0mmol)、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-アミノベンズアルデヒド(1.97g、11.0mmol)、ピペリジン(1.70g、20.0mmol)及びエタノール(10mL)をテフロン封印されたガラス容器(20mL容量)に入れ、135℃及び3.50-5.00Barで12分間60ワットでマイクロ波キャビティに導入した。反応混合物を室温に到達させた。生成された固体をろ過し、エタノール(10mL)で洗浄し、乾燥させて生成物を収得した。
【0050】
【数2】
【0051】
実施例2.5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(E7240-40)
【0052】
【化8】
【0053】
(1)3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(4.07g、87%収率、褐色固体):
無水エタノール(25mL)内サルコシン(2.23g、25.0mmol)を撹拌した溶液にイソブチルイソチオシアネート(3.17g、27.5mmol)を添加した。反応混合物を6時間の間還流させた後、室温に冷却させた。沈殿した固体をろ過し、エタノール(10mL)で洗浄し、乾燥して相応するチオヒダントインを収得した。
【0054】
【数3】
【0055】
(2)5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(2.81g、81%収率、オレンジ色固体):
3-イソブチル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン(1.86g、10.0mmol)、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-アミノベンズアルデヒド(1.97g、11.0mmol)、ピペリジン(1.70g、20.0mmol)及びエタノール(10mL)をテフロン密封ガラス容器(20mL容量)に入れ、135℃及び3.50-5.00Barで12分間60ワットでマイクロ波キャビティに導入した。反応混合物を室温に到達させた。生成された固体をろ過し、エタノール(10mL)で洗浄し、乾燥させて生成物をE/Zの混合物として1:1.25の比で得た。
【0056】
【数4】
【0057】
実施例3.(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(LMT-1890)
【0058】
【化9】
【0059】
(1)4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンズアルデヒドの合成(318mg、47%収率、白色固体):
DMSO(20mL)内2-(メチルアミノ)エタノール(0.4mL、4.9mmol)及びNa2CO3(515mg、4.9mmol)の溶液に、4-フルオロ-2-置換されたベンズアルデヒド(500mg、3.2mmol)及び18-クラウン-6(86mg、0.3mmol)を添加した。反応混合物を100℃で24時間の間撹拌した。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0060】
【数5】
【0061】
(2)(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(153mg、64%収率、オレンジ色固体):
1,4-ジオキサン(5mL)内3-シクロヘキシル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン(127mg、0.6mmol)、4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンズアルデヒド(150mg、0.7)、ピペリジン(0.08mL、0.9mmol)を撹拌した溶液にAlCl3(8mg、0.1mmol)を添加した。反応が完了するまで撹拌された反応混合物を68-80℃に加熱した。次いで、混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0062】
【数6】
【0063】
実施例4.(E)-3-シクロヘキシル-5-(2-ヒドロキシ-4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(15mg、52%収率、オレンジ色固体)(LMT-1891)
【0064】
【化10】
【0065】
前記実施例3の化合物を引き続き使用した。無水ジクロロメタン内(E)-3-シクロヘキシル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン溶液を窒素雰囲気下に乾燥アイス/アセトン浴槽で冷却させた。BBr3(0.05mL、0.6mmol)を滴下した。冷却浴槽を除去し、反応混合物を室温で3時間の間撹拌した。混合物をアイス浴槽で冷却させ、過量のBBr3を、メタノールを滴下して除去(quneched)した。生成された溶液を室温で2時間の間撹拌した。溶媒を除去した後、残渣をH2O(10mL)及びエチルアセテート(10mL)で処理した。合わせた有機層をH2Oで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮させた。残渣をシリカクロマトグラフィーで精製して実施例3の生成物を収得した。
【0066】
【数7】
【0067】
実施例5.(E)-3-ベンジル-5-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(LMT-1889)
【0068】
【化11】
【0069】
(1)4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ベンズアルデヒドの合成(870mg、75%収率、オレンジ色液体):
DMSO(20mL)内3-(メチルアミノ)プロパノール(0.9mL、9.0mmol)及びNa2CO3(954mg、9.0mmol)の溶液に、4-フルオロベンズアルデヒド(500mg、6.0mmol)及び18-クラウン-6(158mg、0.6mmol)を添加した。反応混合物を100℃で24時間の間撹拌した。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0070】
【数8】
【0071】
(2)3-ベンジル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(1.062g、86%収率、オレンジ色液体):
無水エタノール(20mL)内サルコシン(499mg、5.60mmol)を撹拌した溶液にベンジルイソチオシアネート(836mg、5.60mmol)を添加した。反応混合物を3時間の間還流させた後、室温に冷却させた。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0072】
【数9】
【0073】
(3)(E)-3-ベンジル-5-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(83mg、46%収率、赤色固体):
1,4-ジオキサン(5mL)内3-ベンジル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン(100mg、0.46mmol)、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ベンズアルデヒド(107mg、0.55mmol)、ピペリジン(0.06mL、0.69mmol)を撹拌した溶液にAlCl3(4mg、0.05mmol)を添加した。反応が完了するまで撹拌された反応混合物を68-80℃に加熱した。次いで、混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0074】
【数10】
【0075】
実施例6.(E)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-3-フェネチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(LMT-1845)
【0076】
【化12】
【0077】
(1)4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンズアルデヒドの合成(910mg、63%収率、黄色液体):
DMSO(20mL)内2-(メチルアミノ)エタノール(1.0mL、12.1mmol)及びNa2CO3(1282mg、12.1mmol)の溶液に、4-フルオロベンズアルデヒド(1000mg、8.1mmol)及び18-クラウン-6(211mg、0.8mmol)を添加した。反応混合物を100℃で24時間の間撹拌した。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0078】
【数11】
【0079】
(2)1-メチル-3-フェネチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(940mg、71%収率、オレンジ色固体):
無水エタノール(20mL)内サルコシン(500mg、5.65mmol)を撹拌した溶液にフェネチルイソチオシアネート(922mg、5.65mmol)を添加した。反応混合物を4時間の間還流させた後、室温に冷却させた。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0080】
【数12】
【0081】
(3)(E)-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-3-フェネチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(103mg、61%収率、オレンジ色固体):
1,4-ジオキサン(5mL)内1-メチル-3-フェネチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン(100mg、0.43mmol)、4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンズアルデヒド(91mg、0.51mmol)、ピペリジン(0.06mL、0.65mmol)を撹拌した溶液にAlCl3(4mg、0.04mmol)を添加した。反応が完了するまで撹拌された反応混合物を68-80℃に加熱した。次いで、混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0082】
【数13】
【0083】
実施例7.(E)-3-ベンジル-5-(2-ヒドロキシ-4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(LMT-2006)
【0084】
【化13】
【0085】
(1)4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンズアルデヒドの合成(318mg、47%収率、白色固体):
DMSO(20mL)内2-(メチルアミノ)エタノール(0.4mL、4.9mmol)及びNa2CO3(515mg、4.9mmol)の溶液に、4-フルオロ-2-置換されたベンズアルデヒド(500mg、3.2mmol)及び18-クラウン-6(86mg、0.3mmol)を添加した。反応混合物を100℃で24時間の間撹拌した。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0086】
【数14】
【0087】
(2)3-ベンジル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(1.062g、86%収率、オレンジ色液体):
無水エタノール(20mL)内サルコシン(499mg、5.60mmol)を撹拌した溶液にベンジルイソチオシアネート(836mg、5.60mmol)を添加した。反応混合物を3時間の間還流させた後、室温に冷却させた。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0088】
【数15】
【0089】
(3)(E)-3-ベンジル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(114mg、61%収率、オレンジ色固体):
1,4-ジオキサン(5mL)内3-ベンジル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン(100mg、0.45mmol)、4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンズアルデヒド(113mg、0.54mmol)、ピペリジン(0.07mL、0.68mmol)を撹拌溶液にAlCl3(5mg、0.05mmol)を添加した。反応が完了するまで撹拌された反応混合物を68-80℃に加熱した。次いで、混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0090】
【数16】
【0091】
(4)(E)-3-ベンジル-5-(2-ヒドロキシ-4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)ベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(17mg、56%収率、オレンジ色固体):
無水ジクロロメタン内(E)-3-ベンジル-5-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン溶液を窒素雰囲気下に乾燥アイス/アセトン浴槽で冷却させた。BBr3(0.05mL、0.6mmol)を滴下した。冷却浴槽を除去し、反応混合物を室温で3時間の間撹拌した。混合物をアイス浴槽で冷却させ、過量のBBr3をメタノールを滴下して除去(quneched)した。生成された溶液を室温で2時間の間撹拌した。溶媒を除去した後、残渣をH2O(10mL)及びエチルアセテート(10mL)で処理した。合わせた有機層をH2Oで洗滌し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮させた。残渣をシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0092】
【数17】
【0093】
実施例8.(E)-3-ベンジル-5-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(LMT-2007)
【0094】
【化14】
【0095】
(1)4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンズアルデヒドの合成(177mg、49%収率、白色固体):
DMSO(10mL)内3-(メチルアミノ)プロパノール(0.2mL、2.4mmol)及びNa2CO3(256mg、2.4mmol)の溶液に、4-フルオロ-2-置換されたベンズアルデヒド(250mg、1.6mmol)及び18-クラウン-6(45mg、0.2mmol)を添加した。反応混合物を100℃で24時間の間撹拌した。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮した後、次の反応に使用した。
【0096】
(2)3-ベンジル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(1.062g、86%収率、オレンジ色液体):
無水エタノール(20mL)内サルコシン(499mg、5.60mmol)を撹拌した溶液にベンジルイソチオシアネート(836mg、5.60mmol)を添加した。反応混合物を3時間の間還流させた後、室温に冷却させた。混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0097】
【数18】
【0098】
(3)(E)-3-ベンジル-5-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンジリデン)-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オンの合成(99mg、53%収率、オレンジ色固体):
1,4-ジオキサン(5mL)内3-ベンジル-1-メチル-2-チオオキソイミダゾリジン-4-オン(100mg、0.45mmol)、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンズアルデヒド(121mg、0.54mmol)、ピペリジン(0.07mL、0.68mmol)を撹拌した溶液にAlCl3(5mg、0.05mmol)を添加した。反応が完了するまで撹拌された反応混合物を68-80℃に加熱した。次いで、混合物をエチルアセテート(10mL)(x3)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮させた。残渣をろ過及びシリカクロマトグラフィーで精製して生成物を収得した。
【0099】
【数19】
【0100】
実験例1.ルシゲニン化学発光分析実験
実験方法
ヒトNoxアイソザイムをdaughterless(Da)-GAL4プロモーターでヒトNoxアイソザイムを発現する形質転換ハエから提供した。各ハエラインの遺伝子型は、下記に示した。
1)ヒトNox1:UAS-hNox1/UAS-dDuox-RNAi;Da-GAL4/+
2)ヒトNox2:UAS-hNox2/UAS-dDuox-RNAi;Da-GAL4/+
3)ヒトNox4:UAS-hNox4/UAS-dDuox-RNAi;Da-GAL4/+
形質転換ハエをプロテアーゼ抑制剤(アプロチニン、ロイペプチン)を含有するPBSで均質化してそれぞれのNoxアイソザイムのショウジョウバエ膜を収得した。膜を振とう器で10分間化合物(100μM、10μM、1μM、0.1μM、0.01μM、0.001μM、0μM)と共に培養した。その後、1X HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)バッファ内500μM NADPH(b-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド2’-ホスフェート還元テトラナトリウム塩水和物;Sigma-Aldrich)及び400μMルシゲニン(N,N’-ジメチル-9,9'-ビアクリジニウムジニトレート;Sigma-Aldrich)の混合物を膜に添加した。ルシゲニン化学発光は、多重モードマイクロプレートリーダー(SpectraMax iD3、Molecular Devices)を使用して10分間1分間隔で検出した。IC50値は、Graph-Pad Prism 5(GraphPad Software)で計算した。
(1)Nox抑制化合物のIC50値測定結果
ルシゲニン化学発光分析をhNox1、hNox2及びhNox4を発現するショウジョウバエ膜で遂行した。分析を3回繰り返し、IC50値の平均を確認した。
下記表2及び図1は、本発明に係る実施例1、2、4化合物の結果を示す。
【0101】
【表2】
【0102】
また、下記表3及び図2は、本発明に係る実施例3、5、6、7、8化合物の結果を示す。前記実施例3、5、6、7、8に対しては、Nox2及びNox4に対する作用を確認した。
【0103】
【表3】
【0104】
(2)BV2細胞内の実施例1の化合物及び実施例2の化合物のNox抑制効果分析結果
BV2細胞をHBSS(Hank's balanced salt solution)で洗滌し、HBSS内37℃で30分間培養した。その後、化合物(実施例1の化合物または実施例2の化合物)を多様な濃度(0nM、1nM、10nM、100nM、1000nM、10000nM)で処理した。30分後、200ng/mlのリポポリサッカライド(LPS、lipopolysaccharide)及び200μMのルシゲニンを細胞内に添加した。ルシゲニン化学発光は、ルミノメーター(GLOMA、Promega)を使用して15分間10秒間隔で検出した。
具体的に、BV2細胞を30分間実施例1の化合物(A)または実施例2の化合物(B)で前処理し、ROS生成をLPS(200ng/ml)処理後に検出した。データは、平均±SD(N=3)で表示した。前記実験結果を図3に示した。
図3から確認できるように、本発明に係る実施例1の化合物(E7240-17)及び実施例2の化合物(E7240-40)の処理は、優れたNox阻害効果を示し、ROS生成を大きく抑制した。
【0105】
実験例2.MPTP誘発パーキンソン病に対する化合物処理実験
(1)実験方法
1)MPTP誘発パーキンソン病に対する化合物の効能分析実験
MPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩;Sigma-Aldrich)誘発パーキンソン病に対する実施例1の化合物の効果を評価するために、C57BL/6雄マウス26匹(9週)を無作為に3つのグループに分けた。
(1)食塩水+ビヒクル
(2)MPTP+ビヒクル
(3)MPTP+実施例1の化合物(10mg/kg)
マウスに2時間の間隔でMPTP(15mg/kg)を4回腹腔内注射したのに対して、対照群マウスは、同じ体積の食塩水で処理した。実施例1の化合物を4%DMSO(ジメチルスルホキシド、Sigma-Aldrich)及び96%コーン油(Sigma-Aldrich)で構成されたビヒクルに溶解させた。マウスに8日間MPTP注射の1日前から10mg/kgの実施例1の化合物の腹腔内注射を毎日受けるようにした。
【0106】
2)免疫組織化学染色実験
抗-チロシンヒドロキシラーゼ抗体(1:2000~4000、abcaom)を使用してドーパミン性ニューロンを検出し、抗-Iba1抗体(1:1000、Wako)を使用してミクログリア(microglia)を測定した。ビオチニル化されたヤギ抗-ウサギ抗体(VECTOR、BA-1000)を2次抗体として使用し、ABC溶液(VECTOR、BA-1000)を使用した。その後、免疫反応性のある領域は、3-3’ジアミノベンジジン(DAB、Dako)で培養して褐色に変形させた。
MPTP注射7日後(実施例1の化合物最終注射1日後)、マウスを犠牲にさせて脳を回収した。脳は、クリオスタット(CM1850、Leica)を使用して冠状的に切片を形成し(厚さ30μm)、-20℃で凍結防止溶液(1X PBS内30%スクロース、1%ポリビニルピロリドン及び30%エチレングリコール)に保管した。
黒質(substaintia nigra)ブレグマ-2.80mm~-3.80mmの6個の冠状切片とブレグマ+0.98mm~+0.50mmの3個の冠状切片を150μm毎に収集してImagePro pluse 7.0ソフトウェアを使用して染色及び分析した。
【0107】
3)行動テスト(ロータロッドテスト)
マウスは、ロータロッドを3回(MPTP注射前1日、MPTP注射後3日及び6日)及び3回試験/日で遂行した。ロータロッド速度は、4RPMから40RPMに次第に増加し、ロッド上滞留時間を分析した。
【0108】
(2)実施例1の化合物に対する実験結果
1)MPTP誘発パーキンソン病に対する実施例1の化合物処理実験結果
実施例1の化合物は、MPTP誘発パーキンソン病でドーパミン性ニューロンを保護した。図4において、(A)黒質及び線条体の代表的なチロシンヒドロキシラーゼ(Th)免疫染色イメージを示し、(B)黒質内6個の切片のTh+細胞を計数し、(C)線条体で3個の切片のTh+線維密度を測定した。星印は、有意な差を示したものである(スチューデントt-テストによって決定される *p<0.05、***p<0.0005)。
本発明に係る化合物の処理は、前記それぞれの実験結果を通して確認できるように、ドーパミン性ニューロン保護に優れた効果を示した。
【0109】
2)免疫組織化学染色結果
実施例1の化合物は、MPTP誘発パーキンソン病でミクログリアの病理を改善させた。図5において、(A)黒質及び線条体の代表的なIba1免疫染色されたイメージを示し、黒質(B)及び線条体(C)内のIba1+を数えて示した。星印は、相当な差を示したものである(スチューデントt-テストによって決定される *p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005)。
本発明に係る化合物の処理は、ミクログリアの病理改善に優れた効果を示した。
【0110】
3)行動テスト結果
実施例1の化合物は、MPTP誘発パーキンソン病で動き機能を改善させた。ロッド上の滞留時間は、MPTP注入1日前、MPTP注入3日及び6日後、ロータロッド試験で評価して図6に示した。データは、平均±SDで表現された。星印は、有意な差を示した(スチューデントt-テストによって決定される、*p<0.05、**p<0.005)。
本発明に係る化合物の処理は、ロータロッドテスト上でもロッドの上に滞在する時間を大きく増加させて優れた改善効果を示した。
【0111】
実験例3.Huα-Syn形質変換マウスに対する化合物処理実験
(1)実験方法
Huα-Syn形質変換マウスに対する実施例1の化合物の効果を評価するために、6ヶ月齢の形質変換マウスまたは野生型マウスを4個のグループに分けた。
(1)野生型(WT)+ビヒクル
(2)形質変換(TG)+ビヒクル
(3)野生型+実施例1の化合物(10mg/kg)
(4)形質変換+実施例1の化合物(10mg/kg)
実施例1の化合物を4%のDMSO(ジメチルスルホキシド、Sigma-Aldrich)及び96%のコーン油(Sigma-Aldrich)で構成されたビヒクルに溶解させた。マウスに3ヶ月間毎日10mg/kgの実施例1の化合物の腹腔内注射を受けるようにした。
【0112】
(2)実施例1の化合物投与によるHuα-Syn形質変換マウスに対する実験結果
前記関連実験結果を図7に示した。実施例1の化合物は、Huα-Syn形質変換マウスで蛍光体α-シヌクレイン(syn)の量を減少させた。具体的に、燐光体α-シヌクレイン免疫反応性は、形質変換マウスの前頭前皮質(prefrontal cortex、Pfcx)及び海馬(hippocampi、HP)のいずれでも有意に増加した。しかし、実施例1の化合物の3ヶ月処理は、ビヒクル処理されたHuα-Syn形質変換マウスと比較して海馬(HP CA1、HP CA2)で燐光体α-シヌクレインの量を減少させた。
また、図8に示したように、実施例1の化合物は、Huα-Syn形質変換マウスの前頭前皮質(Pfcx)で星状細胞病理を改善させた。Huα-Syn形質変換マウスは、顕著に増加した量のGFAP免疫陽性星状細胞を発現させた。実施例1の化合物処理形質変換マウスは、ビヒクル処理されたHuα-Syn形質変換マウスと比較してPfcxで減少した星状細胞を示した。
また、図9に示したように、実施例1の化合物は、Huα-Syn形質変換マウスの海馬(HP CA1)でミクログリア病理を改善させた。Iba1免疫-陽性ミクログリアがPfcx及び海馬で増加する形質転換マウスで実施例1の化合物処理はビヒクル処理と比較してHP CA1で減少したミクログリア数を示した。
それだけではなく、図10に示したように、実施例1の化合物は、Huα-Syn形質変換マウスの神経筋機能を向上させた。前脚の最大の力は、グリップ強度測定器で記録した。ビヒクル処理形質変換マウスのグリップ強度は、同じ年齢の野生型マウスと比較して減少した。実施例1の化合物の3ヶ月処理は、Huα-Syn形質変換マウスのグリップ強度を改善させた。
【0113】
実験例4.PFF誘発パーキンソン病に対する実施例2の化合物処理
PFF(preformed fibrils)誘発パーキンソン病を形成させるために、5μgのPFFを8-12週齢C57BL/6の右背側線条体(AP+0.2mm、ML+0.2mm、DV2.6mm)内に立体的に接種した。PFFの単一接種5ヶ月後、動物に3ヶ月間毎日10mg/kgの実施例2の化合物を腹腔内注射した。
具体的に、図11に示したように、実施例2の化合物は、PFF-注入マウスの海馬(HP CA1、HP CA3)でα-シヌクレイン量を減少させた。海馬内α-シヌクレインの蓄積は、ビヒクル処理でPFF-注入マウスで増加した。これに対して、α-シヌクレインの量は、3ヶ月実施例2の化合物投与により海馬(HP CA1、HP CA3)で顕著に減少した。
また、図12に示したように、実施例2の化合物は、PFF-注入マウスの前頭前皮質(Pfcx)で星状細胞病理を改善させた。PFF(5μg)単一注射は、Pfcx及び海馬(HP CA1)のいずれでもGFAP免疫-陽性星状細胞を増加させた。3ヶ月実施例2の化合物処理は、PFF-注入されたマウスのPfcxでGFAP免疫-陽性星状細胞を減少させた。
また、図13に示したように、実施例2の化合物は、PFF-注入マウスでミクログリア病理を改善させた。背側線条体内のPFFの単一接種は、Pfcx及び海馬(HP CA1)のいずれでもIba1免疫反応性を増加させた。3ヶ月実施例2の化合物投与は、Pfcx及びHP CA3でIba1免疫陽性活性化されたミクログリアを減少させた。
最後に、図14に示したように、実施例2の化合物は、PFF-注入マウスの神経筋機能を向上させた。前脚の最大の力は、グリップ強度測定器で記録した。PFFの単一接種は、前脚のグリップ強度を損傷させた。実施例2の化合物の3ヶ月処理は、PFF-注入マウスのグリップ強度を改善させた。
前記結果を通って本発明に係る化合物が優れたNox抑制効果及び優れた抗酸化効果があることを確認した。また、本発明に係る化合物は、特に退行性脳疾患の予防及び治療に優れた効果を示したことを確認した。
【0114】
実験例5.糖尿病性網膜症(Diabetic Retinopathy、DR)及び老化関連黄斑変性(aged-related macular degeneration、AMD)に対する実施例1の化合物処理
(1)実験方法
脈絡膜新生血管形成(Choroidal neovascularization、CNV)は、レーザ光凝固(200mW、80ms持続時間、4個点)により7週齢雌C57BL/6マウスで誘導させた。マウスを5個のグループに分けた。
(1)ナイーブグループ
(2)ビヒクルグループ(レーザ及びビヒクル注入)
(3)アフリベルセプト1μgグループ(レーザ及び1μgのアフリベルセプト硝子体内注射)
(4)アフリベルセプト20μgグループ(レーザ及び20μgのアフリベルセプト硝子体内注射)
(5)実施例1の化合物群(レーザ及び5μlの実施例1の化合物(1mg/ml)、点眼液)。
レーザ損傷後1日に1μlのアフリベルセプト(1mg/mlまたは20mg/ml)を硝子体内に注射した。5μlの実施例1の化合物(1mg/ml)をレーザ損傷後その日から始めて12日間1日に4回ずつ点眼した。レーザ光凝固後12日に眼底蛍光血管造影術(fundus fluorescein angiography)及び組織病理学的分析(histopathological assay)を使用して脈絡膜血管新生領域を測定した。視覚機能は、電気泳動法で評価した。細胞自殺細胞は、TUNEL染色で検出した。VEGF及びGFAPは、免疫蛍光染色で検出した。
【0115】
(2)実施例1の化合物投与による実験結果
図15に示したように、実施例1の化合物(E7240-17)は、レーザで誘導された脈絡膜新生血管形成(CNV)を抑制した。点眼液による実施例1の化合物(1mg/ml、5μl、4回/日、12日間)投与は、20μgの硝子体内アフリベルセプト注入と類似した効能で脈絡膜新生血管形成血管漏れを非常に減少させた。
また、図16に示したように、実施例1の化合物は、シナプス後機能を向上させた。損傷後13日に、ビヒクル群でb-波の振幅はナイーブ群より低かったが、実施例1の化合物の点眼液は、硝子体内アフリベルセプト注入20μgと類似するようにb-波の振幅を改善させた。
一方、図17に示したように、実施例1の化合物は、レーザ光凝固により誘導されたCNV病変を弱化させた。CNV病変の組織学を研究するためにヘマトキシリン及びエオシン染色を遂行した。実施例1の化合物群の病変大きさは、ビヒクル群より有意にさらに小さかった。
図18に示したように、実施例1の化合物は、レーザ光凝固により誘発された細胞自殺を抑制した。マウス眼球切片をTdT-UDP mick end標識で染色した。ビヒクル処理群でTUNEL-陽性細胞が顕著に増加したが、実施例1の化合物の点眼液は、硝子体内アフリベルセプト注入20μgと類似するようにTUNEL-陽性細胞を劇的に減少させた。黄色矢印は、TUNEL陽性細胞を示したものである。
図19に示したように、実施例1の化合物は、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)発現を抑制した。眼球切片を抗-VEGF抗体で免疫蛍光で染色した。ビヒクル処理群のCNVでVEGFの免疫標識が増加した。しかし、実施例1の化合物の点眼液は、硝子体内アフリベルセプト注射20μgと類似するようにVEGF発現を劇的に減少させた。黄色矢印は、VEGF-陽性細胞を示したものである。
最後に、図20に示したように、実施例1の化合物は、ミュラー細胞及び星状細胞の活性化を改善させた。ミュラー細胞及び星状細胞の活性化は、抗-GFAP抗体を使用した免疫染色を通して観察した。CNV13日後、ビヒクル群でミュラー細胞及び星状細胞の活性化を観察した。しかし、実施例1の化合物の点眼液は、硝子体内アフリベルセプト注射20μgと類似したミュラー細胞及び星状細胞の活性化を非常に改善させた。黄色矢印は、GFAP-陽性細胞を示したものである。
【0116】
前記結果を通って本発明に係る化合物が優れたNox抑制効果及び優れた抗酸化効果があることを確認した。また、本発明に係る化合物は、特に網膜疾患の予防及び治療に優れた効果を示したことを確認した。
【0117】
以上のように実施例を通して本発明を説明した。本発明の属する技術の分野における通常の技術者は、本発明がその技術的思想や必須特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施され得るということを理解できるだろう。それゆえ、上述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないものとして理解されるべきである。本発明の範囲は、詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲そして等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
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