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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】マッサージ器具
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/14 20060101AFI20240808BHJP
   A61H 7/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61N 2/08 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61N1/14
A61H7/00 322J
A61N2/08 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023523295
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022005119
(87)【国際公開番号】W WO2023152827
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】523135931
【氏名又は名称】松橋 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】松橋 直子
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168060(JP,A)
【文献】特開2015-033513(JP,A)
【文献】実開平07-003643(JP,U)
【文献】特開昭51-110665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/14
A61H 7/00
A61N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間されて配置され互いに通電可能な2つの導電部と、前記導電部間の通電を可能とする導電回路と、を備えたマッサージ器具であって、前記導電回路近傍には磁気手段が配置され、前記導電回路は、前記導電部間を通電する電荷を前記磁気手段により方向転換させ、該電荷を外部に放電可能な放電手段に誘導する回路を有することを特徴とするマッサージ器具。
【請求項2】
前記導電部同士は、空中放電を伴う通電により通電可能になっていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ器具。
【請求項3】
マッサージ器具の移動により、前記導電部にそれぞれに設けられた導電端子同士が一時的に近接もしくは接触するように、少なくとも一方の前記導電端子が揺動可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマッサージ器具。
【請求項4】
前記導電回路は、先端に導電端子を有する導線が両導電部からそれぞれ延びるとともに、空中放電可能に各導電端子が離間して配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマッサージ器具。
【請求項5】
先端に導電端子を有する導線が、少なくとも一方側から複数本延設されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のマッサージ器具。
【請求項6】
先端に導電端子を有する導線の少なくとも1本は、らせん状の導線からなっていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のマッサージ器具。
【請求項7】
少なくとも被施術者の身体に当てられる側の導電部の近傍に、永久磁石が配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のマッサージ器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に身体局部及び全身の細胞レベルの活性化を可能とするマッサージ器具に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のマッサージ器具は大きく3つのタイプに分かれ、押圧式のマッサージ器具、永久磁石式マッサージ器具、そして電力付加方式のマッサージ器具に分類される。代表的な押圧式のマッサージ器具としては、球体などの角が取られ丸みを帯びた先端部を有する指圧方式の器具であり、これは施術者もしくは被施術者自身でその先端部を局部に当てて押圧、移動する求心的な施術を行うことにより、体内の老廃物を流すとともに、血行を改善し、リンパの流れも促進することによって、身体の体調を整えるマッサージ器具である。
【0003】
永久磁石の磁気を利用した永久磁石式マッサージ器具は、永久磁石を局部に当てたまま、または離して移動することにより、磁気が身体構成組織に作用することで体内の老廃物を流すとともに、血行を改善し、リンパの流れも促進されることによって、身体の体調を整えるマッサージ器具である。
【0004】
さらに電力付加方式のマッサージ器具の誕生は新しく、例えば特許文献1に示されるものは、永久磁石による磁気に電磁石による磁気を加えることによりパルス状に変化する磁力線を発生させ、この磁力線を患部に当てることによって体内の老廃物を流すとともに、血行を改善し、リンパの流れも促進するマッサージ器具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭51-110665号公報(第1頁、第1図)
【文献】特開2020-168060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した押圧式のマッサージ器具、永久磁石式マッサージ器具、そして電力付加方式のマッサージ器具は、いずれも体の局部を効果的に刺激し、局部近傍の老廃物を流すとともに、血行を改善し、リンパの流れも促進することによって、身体の体調を整えることができることは実証されている。しかしながら、局部およびその近傍においてはマッサージ効果があるものの、これらマッサージ作用において体の内部から根本的に身体の改善が図られるものではないことから、出願人は長年研究を重ね、その結果、体内や体外表面の静電気を取り除くことによって、局部に加え身体全体の体調を整えることができることを突き止め、この体内や体外表面の静電気を取り除く技術を完成させた(特許文献2)。
【0007】
そして発明者は、特許文献2に示される技術を更に進化させ、体内の深部に残留する静電気を強力に取り除くことに成功した。
【0008】
本発明は、被施術者の体内の深部に残留する静電気を取り除くことにより、被施術者の局部に加え身体全体の体調を整えることができる極めて新しいマッサージ器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明のマッサージ器具は、
離間されて配置され互いに通電可能な2つの導電部と、一方の前記導電部に配設され外部に放電可能な放電手段と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、被施術者側に位置する導電部から流れる電流は、他方の導電部を介して放電手段によって外部に流れるため、被施術者の身体に帯電する静電気を確実にかつ多量に取り除くことができる。
【0010】
前記導電部同士は、空中放電を伴う通電により通電可能になっていることを特徴としている。
この特徴によれば、導電部同士のいわゆる空中放電は一度に大きな電圧勾配を一瞬に消失させる作用があり、これら非接触による放電は、一方の導電部から他方の導電部への電荷の流れを一時的に増加させ、この電荷が放電手段によって効率的に外部に流れる。
【0011】
マッサージ器具の移動により、前記導電部にそれぞれに設けられた導電端子同士が一時的に近接もしくは接触するように、少なくとも一方の前記導電端子が揺動可能に構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、施術者によるマッサージ器具の移動速度などの調節によって、被施術者の状態に応じて通電量のコントロールが可能となる。また被施術者側と施術者側との電位差が大きくなった時点で、一時的に導電端子間において空中放電により通電が発生するようになるため、被施術者の帯電する静電気は施術者に常時影響することがなく、施術者への健康面での悪影響を最小限にできる。
【0012】
前記導電部間を通電可能とする導電回路は、先端に導電端子を有する導線が両導電部からそれぞれ延びるとともに、空中放電可能に各導電端子が離間して配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、各導電端子間の離間距離の変化が大きく、マッサージ器具の移動速度などの調節によって、被施術者の状態に応じて通電量のコントロールが可能となる。
【0013】
先端に導電端子を有する導線が、少なくとも一方側から複数本延設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、比較的細く可撓性のある導線を用いて送電電流量を確保できる。
【0014】
先端に導電端子を有する導線の少なくとも1本は、らせん状の導線からなっていることを特徴としている。
この特徴によれば、導線はらせん状をしているため、導線自体の長さを実質的に長くでき、電気の抵抗(過電流防止)としても機能させることが出来る。
【0015】
少なくとも被施術者の身体に当てられる側の導電部の近傍に、永久磁石が配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、マッサージ器具を被施術者の体外表面上で移動させることに起因して被施術者側で永久磁石によるローレンツの力が発生する。すなわち永久磁石が被施術者の身体内外の電荷の移動を促進させ、導電部によって電荷を取り込みやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1におけるマッサージ器具を示す断面図である。
図2】マッサージ器具を用いた施術態様を示す図である。
図3】被施術者の体内や体外表面の静電気が取り除かれる様子を示すイメージ図である。
図4】アース線方向にプラス電荷が誘導される態様を説明するイメージ図である。
図5図4における要部の斜視イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るマッサージ器具を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0018】
実施例に係るマッサージ器具につき、図1から図6を参照して説明する。
【0019】
マッサージ器具1は、後に詳述する外装部2と、外装部2内側に形成される導電回路と、永久磁石7、そして両端部に配設された導電部として機能する導電端部10,11とから主に構成されている。
【0020】
外装部2は、上面視で略円形に形成されており、側面視では上部と下部には外方に膨出する膨出部2a,2bを有し、上下方向の中央部にくびれを有して、全体に丸みを帯びた形状となっており、施術者が握りやすくなっている。尚、下方の膨出部2bの最大外径は、上方の膨出部2aの最大外径より小さく形成されており、施術者の指の滑り止めになるとともに、被施術者に膨出部2bが干渉しにくくなっている。
【0021】
外装部2は、中央に上下に貫通する空間8を有し、かつ被施術者の身体に当てられる導電端部11を有する基部材3と、基部材3の上部に施術者が持ち施術者の手の平に当たる導電端部10を有する上部材4と、から成る。なお実施例では、空間8内は空気が存在しているが、非接触放電に適した気体、液体等、各種選択可能となっている。
【0022】
基部材3は、重量感と操作安定性を向上させるため、アルミニウムまたはアルムニウム合金などの材料からなり、円柱状のアルミニウムインゴット材料が切削加工や金型成型等により一体成型されている。この基部材3の表面はアルマイト加工などにより導電性を有していない。なお、基部材3は、重量感を省略する場合、木材や合成樹脂でも構わない。本実施例の場合、基部材3は、導電性を有するため、導電端部11と基部材3との間には、絶縁体6が、それぞれ介在するように設けられ絶縁状態になっている。
【0023】
より詳しくは、上部材4は把持部として機能し、中央に形成された凹部には、絶縁体5を介して、クロム鋼、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、ガドリウム、テルビウム、ステンレスなどの金属またはこれらの合金などの材料から形成された導電端部10とを備えている。特にクロム鋼は皮脂や汗等に対して高い耐食性を有することにより、極めて好適である。図に示されるように上部材4と基部材3とは凹凸嵌合で固定されているが、固定は螺合、接着、嵌合等のいずれでもよい。
【0024】
導電端部11は、その内部に空間を備えており、ポリアセタール等の合成樹脂からなる環状のスリーブである絶縁体6を介して、基部材3の下部の開口に固定されている。
【0025】
導電端部11の内部の空間には、ネオジウム磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等である永久磁石7が移動不能に配置されている。また、導電端部11は、クロム鋼、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、ガドリウム、テルビウム、ステンレスなどの金属またはこれらの合金などの材料からなっており、導電性を持つとともに、永久磁石7の磁力を外部に透過させやすくなっている。
【0026】
導電端部11と永久磁石7の上面には、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂で形成された円盤状のプレート16、18でサンドイッチ状に挟まれた、銅等の導電性の高い金属で形成された金属板15が配置されている。
【0027】
金属板15とプレート16、18には、下方に貫通孔が形成され、この貫通孔を介してネジ9が下方の導電端部11の雌ネジ部に螺入されている。さらにネジ9とプレート18間には、切り曲げ加工により上方に突出する端子部12が挟持されている。この端子部12には、表面が絶縁され先端に導電端子14aを持つ導線14が取り付けられ、導電端部11から空間8内にかけての通電を可能にしている。同様に表面が絶縁され先端に導電端子13aを持つ導線13が、空間8内にらせん状に延出して導電端部11から空間8内にかけての通電を可能にしている。
【0028】
空間8内にらせん状に延出して導電端部11から空間8内にかけての通電を可能としている導線13は、本実施例では導線14の周囲に巻回されており、導線13、導線14共に端子部12に通電可能に接続され、それぞれ別の導電端子13a、14aまでの独立した導電回路を構成しているため、複数の導線で多量の電流を流せることになる。更に導電端部11から空間8内にかけての通電を可能としている導線13は、らせん状をしているため、導線13自体の長さを導線14に比較して長くすることができ、電気の抵抗(過電流防止)としても機能させることが出来る。
【0029】
上方に延びる導線14の導電端子14a手前には、電流の一部を熱に変換し過電流を防ぐため、その上部に抵抗器であるヒータ17が設けられ、導線14を流れる電流の一部を熱エネルギーとして発散できるようになっている。また上方に延びる導線14は、線状であるため可撓性を有しており、マッサージ器具1の移動、振動で左右前後に導電端子14aが揺動可能になっている。
【0030】
基部材3は、重量感と安定性を向上させるため、アルミニウムまたはアルムニウム合金などの材料からなり、円柱状のアルミニウムインゴット材料が切削加工や金型成型等により一体成型されている。この基部材3は、その表面はアルマイト加工などにより導電性を有していない。なお、基部材3は、重量感を省略する場合、木材や合成樹脂でも構わない。本実施例の場合、上部材4は、導電性を有するため、導電端部10と上部材4との間には、絶縁体5がそれぞれ介在するように設けられ絶縁状態になっている。
【0031】
前記したように、上部材4は把持部として機能し、中央に形成された凹部には、ポリアセタール等の合成樹脂からなる環状のスリーブである絶縁体5を介して、クロム鋼、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、ガドリウム、テルビウム、ステンレスなどの金属またはこれらの合金などの材料から形成された導電端部10とを備えている。
【0032】
環状のスリーブである絶縁体5の下方に位置する上部材4には、後述する図4のように、等配に周方向に、6個の球状の永久磁石26、26,・・・が配置されている。この永久磁石26は、ネオジウム磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等で構成されており、移動不能に配置されている。これら永久磁石26、26,・・・は、ポリアセタール等の合成樹脂からなる環状のスリーブである絶縁体5を介して導電端部10の外側に等配に配置されている。更に上部材4の側部には、開口孔30が、絶縁体5を貫通して導電端部10に形成された雌ネジ穴まで伸びており、導電端部10内部に形成された空間27まで延びている。
【0033】
さらに、上部材4の側部から、絶縁体5を貫通する開口孔30に放電手段22の導線24が挿入され、導電端部10に形成された雌ネジ穴に導線24の先端に形成された雄ネジが螺入されて固定されている。この放電手段22は、導電端部10内部に形成された空間27まで延びているとともに、その後端に放電線部31を有し、開口孔30に絶縁キャップ23を介して固定されている。そのため、放電線部31と導線24は、上部材4に接触することなく導電端部10との通電が可能となっている。
【0034】
導電端部10の下面には、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂で形成された円盤状のプレート16、18でサンドイッチ状に挟まれた、銅等の導電性の高い金属で形成された金属板15が配置されている。
【0035】
金属板15とプレート16、18には、下方に貫通孔が形成され、この貫通孔を介してネジ19が上方の導電端部10の雌ネジ部に螺入されている。さらにネジ19とプレート18間には、切り曲げ加工により上方に突出する端子部28が挟持されている。この端子部28には、表面が絶縁され先端に導電端子20aを持つ導線20が取り付けられ、空間8内から導電端部10にかけての通電を可能にしている。導線20は可撓性を有するため、自由端部である導電端子20aが揺動可能となっており、さらにダイオード21が設けられており、このダイオード21により電流方向が指向され且つ整流されるようになっている。
【0036】
導電端子20aと導電端子13a、14aは、空間8内で近接して配置されていることにより、これら導線13、14、ヒータ17、ダイオード21、導線20、を介して導電端部11と導電端部10とが、空中放電も含めた導電回路で導電可能になっている。
【0037】
より詳しくは、導電端子20aと導電端子13a、14aと常時は接触していないため、マッサージ器具1の非使用時では、導電端部11と導電端部10とは非通電状態となっている。そしてマッサージ器具1の使用時には、マッサージ器具1の移動(施術)により、導電端部11と導電端部10間に次第に電圧差が発生し始め、更に導電端子20aと導電端子13a、14a同士が一時的に揺動などを伴って近接する構造になっているため、導電端子20aと導電端子13a、14aとの間に、電圧差による放電を伴う通電が起きる。
【0038】
次いで、マッサージ器具1の使用方法と、その作用について説明する。図2に示されるように、施術者Sはマッサージ器具1の上部材4側を把持し、基部材3下方の導電端部11を被施術者Pの体外表面上で滑らせる、いわゆる求心的もしくは往復動を伴う施術を行う。
【0039】
人体は、活動における脳や神経の伝達に電気の流れを利用しているため、この活動に用いる電気の流れに体内や体外表面に帯電している静電気が悪影響を与えることが知られている。また、ミトコンドリアの活動などによって細胞間でも帯電しているといわれている。そこで、本発明のマッサージ器具1は、求心的な施術による血行改善機能に加え、静電気を多く帯電している被施術者Pの人体から静電気を取り除く、すなわち身体に溜まったプラスとマイナスの電荷を安定した状態に変化させていくことにより、人体の機能改善を実現したのである。そのメカニズムについて以下に詳述する。
【0040】
尚、マッサージ器具1の効果が顕著になる条件としては、施術時には被施術者Pはプラスの極性に偏って帯電している状態であり、かつ施術者Sはプラスとマイナスの電荷が安定している状態であることが必要である。このため、施術時に被施術者Pと施術者Sの両者間には相対的に電位差が生じていることになる。
【0041】
前述したように、導電端子20aと導電端子13a、14aと常時は接触していないため、マッサージ器具1の非使用時では、導電端部11と導電端部10とは非通電状態となっている。施術時、図2のように施術者Sはマッサージ器具1の上部材4側を把持し、基部材3下方の導電端部11を被施術者Pの体外表面上で滑らせる。導電端部11から延びる導電回路の一部である導線13,14は上方で揺動可能になっており、またこの実施例では導線20も揺動可能になっている。
【0042】
マッサージ器具1の使用時には、マッサージ器具1の移動(施術)により、図3に示されるように、導電端部11と導電端部10間に次第に電圧差が発生し始め、更に導電端子20aと導電端子13a、14a同士が一時的に揺動などを伴って近接する構造になっているため、導電端子20aと導電端子13a、14aとの間に発生する電圧差による放電を伴う通電が起きる。このとき被施術者Pと施術者Sの両者間には一時的に極めて高い電位差が存在していると考えられる。なお、導線の揺動は必ずしも必要ではなく、始めから導電端子20aと導電端子13a、14aとが近接して設置していてもよい。
【0043】
また、被施術者Pと施術者Sの両者間には一時的に高い電位差が存在していることに関して、被施術者Pの身体と接触する側のプラス電荷が対極の施術者Sの手に当たる導電端部10側のマイナス荷電と互いに引合う状態で集まる、いわゆる誘起電荷が生じると考えられる。
【0044】
導電端子20a、13a、14aの先端部は細く、かつ尖った形状を有しており、この細く尖った導電端子13a、14aの先端にプラス電荷が集中する。プラス電荷が密集することで導電端子13a、14aの先端と導電端子20aの先端との電位勾配(電界)が強くなると、やがて空気の電離エネルギーを超え、導電端子13a、14aから近接する導電端子20aに向けて空中放電(電流の流れ)が生じる。この放電現象は、ドアノブを触る手前の位置で瞬間的に指から放電を伴う現象で説明できる。これらの放電は一度に大きな電圧勾配を一瞬に消失させる作用があり、これら非接触による空中放電は、電荷の流れを誘引する効果を高めている。
【0045】
この空中放電により、被施術者Pと施術者Sとの間に瞬間的に通電状態が発生する。このときプラスの極性に偏って帯電している被施術者Pの身体と施術者Sとの間の上述した電位差により、プラスの極性に偏って帯電している被施術者Pの身体から施術者Sの方向に電流が発生する。このように、本実施例の場合、導電端子20a、13a、14a同士が一時的に近接するように構成されており、施術者によるマッサージ器具の移動速度などの調節によって、被施術者の状態に応じて通電量のコントロールすることも可能である。
【0046】
この電流移動により、施術者Sの身体からマッサージ器具1を通して、被施術者Pの身体へマイナスの電荷が移動することで、被施術者Pの体外表面や体内の静電気が取り除かれ、静電気に起因する不調を改善できる。このような静電気の除去作用は、マッサージ器具1を被施術者Pの体外表面で移動させ、その位置を変えることで、所定の患部に対して効果的に静電気に起因する不調を改善できる効果をもたらすことができる。
【0047】
電流移動により、施術者Sの身体からマッサージ器具1を通して、被施術者Pの身体へマイナスの電荷が移動することで、被施術者Pの体外表面や体内の静電気が取り除かれ、静電気に起因する不調を改善できることになるが、施術者Sには、被施術者Pからプラスの電荷が多量に入る危険がある。そのため、本実施例では、前述したように上部材4の側部から、絶縁体5を貫通する開口孔30に放電手段22の導線24が挿入され、導電端部10に形成された雌ネジ穴に導線24の先端に形成された雄ネジ25が螺入されて固定されている。この放電手段22は、導電端部10内部に形成された空間27まで延びているとともに、その後端に放電線部31を有し、開口孔30に絶縁キャップ23を介して固定されている。そのため、放電線部31と導線24は、上部材4に接触することなく導電端部10との通電が可能となっている。なお、導電端部10、11同士のいわゆる空中放電は一度に大きな電圧勾配を一瞬に消失させる作用があり、これら非接触による放電は、一方の、導電端部から他方の、導電端部への電荷の流れを一時的に増加させ、逃げ場のない電荷が放電手段22によって効率的に外部に流れる。
【0048】
図4のように、等配に周方向に、6個の球状の永久磁石26、26,・・・が配置されている。この永久磁石26は、半球状の凹部に回転可能に、かつ移動不能に配置されている。この構成によれば、図4図5に示されるように周方向に磁極N―Sによる磁界Bが発生している。この構造によれば、図5に説明するように各電荷粒子(プラス電荷)に、移動力が発生する。すなわち一時的に施術者S側には、導電端部10を伝い被施術者Pから各電荷粒子(プラス電荷)が上方に速度ベクトルVで移動しようとするが、ローレンツ力、すなわち磁界Bの存在により、速度ベクトルVで移動する各電荷粒子は力Fを受け水平方向に誘導され、施術者S側への移動が阻止されることになる。そのため導電端部10に溜まる各電荷粒子は、雄ネジ25、導線24に誘導され、放電線部31から空中に放電され易くなり、被施術者Pから施術者Sにプラスの電荷が多量に入る危険を防止できることになる。放電線部31からの空中への放電については、現象的には空中との電位差で発生するが、周辺の衣服や布、その他の物との電位差でも可能となっている。これらの放電は一度に大きな電圧勾配を一瞬に消失させる作用があり、これら非接触による空中放電は、電荷の流れを誘引する効果を高めている。
【0049】
また、人体にプラスの電荷が偏っているような状態は、同様にプラスの活性酸素が多い状態ともいえ、活性酸素は身体構成組織を酸化させるなどの悪影響を与えるおそれがある。本発明のマッサージ器具1は、効果的に静電気を取り除く、すなわちマイナスの電荷とのバランスを整えることで、活性酸素を中和し、被施術者Pの健康に極めて有用な効果を奏するのである。
【0050】
また、活性酸素にあっては、マッサージ器具1による求心的な施術効果により老廃物として血中を通して体外に揉み出すことができ、血行を改善し、リンパの流れも促進することによって、身体の体調を整えることができる。
【0051】
また、被施術者Pと施術者Sとの通電により、被施術者Pの患部に限らず身体全体の静電気を取り除くことができ、細胞レベルの活性化を促し、被施術者Pの身体全体の体調を整えることができる。
【0052】
また、被施術者Pと施術者Sとの通電時には、導線14のヒータ17により電流の一部が熱に変換されてエネルギーとして発散されることから、施術者S側へ流れる電流量を低減させ、施術者Sが受ける総電流値を僅かなものに変化させ、施術者Sへの健康面での悪影響を最小限にできる。尚、空中放電による抵抗、巻線状の導線13でも電流の一部がエネルギーとして発散されるといった効果がある。そのため導線14のヒータ17を省略することも可能である。
【0053】
また、導線20を流れる電流はダイオード21により整流され、ダイオード21よりに戻ることがなく、被施術者Pの体内および/または体外表面の静電気を効果的に取り除くことができる。加えて、万一、施術者Sが被施術者Pよりも多くの静電気を帯電している場合においても、施術者Sが帯電している静電気が被施術者Pの身体に悪影響を及ぼすことがない。
【0054】
また、図3に示されるように、導電端部11の内部に上下にN極とS極が位置するような永久磁石7が配置される場合、電荷の移動がより活発化する。永久磁石7の磁束は、導電性を有する導電端部11を通して被施術者Pの体内や体外表面に影響し、導電端部11を被施術者Pの体外表面上で移動させることで、永久磁石7に誘発されるローレンツの力が発生する。詳しくは、この永久磁石7の移動による磁界の変化は、被施術者Pのプラス電荷に作用し、磁界の変化、言い換えると電荷粒子に対する相対的速度ベクトルを与えることになる。施術者Sにより導電端部11は被施術者Pに対して前後左右また上下と動かされるため、電荷粒子が縦横無尽に移動し、導電端部11内に電荷粒子が取り込まれやすい状態になる。ここでマッサージ器具1の使用時には、マッサージ器具1の移動(施術)により、図3に示されるように、導電端部11と施術者Sに触れる導電端部10間に次第に電圧差が発生し始め、更に導電端子20aと導電端子13a、14a同士が一時的に揺動などを伴って近接する構造になっていることにより、導電端子20aと導電端子13a、14aとの間に発生する電圧差による放電を伴う通電が起きる。施術者Sや、放電手段22の放電線部31から被施術者Pに流れたマイナスの電荷は体内や体外表面に導かれ、被施術者Pの身体の広い範囲で、マイナスの電荷とのバランスが整えられ、身体全体の体調を迅速に整えることができる。
【0055】
永久磁石7移動は、上述したようにマイナス電荷を体内や体外表面において活発に移動させることに加え、身体内外のプラス電荷の移動も促進させ、施術により移動する導電端部11に活発に移動するプラス電荷が取り込まれ易くなり、同時にマイナス電荷が施術者S側から被施術者Pに送り効率よく送り込まれることにもなる。
【0056】
また、永久磁石7から発せられる磁気が身体構成組織に作用することで体内の老廃物を流すとともに、血行を改善し、リンパの流れも促進されるため、マッサージ効果が向上する。
【0057】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0058】
例えば、前記実施例では、施術者Sは、プラスとマイナスの電荷が安定している状態として説明したが、これに限らず、施術者Sに被施術者Pと同極性の電荷が多く溜まっているものの被施術者により多くの電荷が溜まっている状態、施術者Sの人体に被施術者Pと反極性の電荷が多く溜まっている状態、のいずれかの状態であってもよい。
【0059】
前述の実施例では、上部材4の側部から、絶縁体5を貫通する開口孔30に放電手段22の導線24が挿入され、導電端部10に形成された雌ネジ穴に導線24の先端に形成された雄ネジ25が螺入されて固定されているが、この構造に限らず、基部材3から放電手段22の導線24を取り出してもよい。
【0060】
前述の実施例では、導線24から延びる放電線部31から空中に放電を可能としているが、導線24を延長して接地電極に導いてもよいことは明らかである(図示しない)。
【0061】
前述の実施例では、導線20を流れる電流はダイオード21により整流されているが、施術者Sに被施術者Pの健康度に応じてダイオード21を省略することも可能である。電流量に応じ、また線の太さを考慮して、導線20を複数本用いることも可能である。
【0062】
また、本実施例では導線13が導線14の周囲に巻回されており、導線13、導線14共に端子部12に通電可能に接続され、それぞれ別の導電端子13a、14aまでの独立した電動回路を構成しているが、種々の形態をした導線を端子部12から独立して立設させ、端子部を増やすことは設計事項である。施術者の身体は、人間以外の動物の身体であってもよいし、施術者本人であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 マッサージ器具
2 外装部
2a,2b 膨出部
3 基部材
4 上部材
7 永久磁石
8 空間
10 導電端部(導電部)
11 導電端部(導電部)
13 導線
13a 導電端子
14 導線
14a 導電端子
15a 端子部
16 プレート
17 ヒータ(抵抗体)
20 導線
20a 導電端子
21 ダイオード
22 放電手段
26 永久磁石
P 被施術者
S 施術者
図1
図2
図3
図4
図5