(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】供試魚保持装置
(51)【国際特許分類】
A01K 61/10 20170101AFI20240808BHJP
A01K 61/95 20170101ALI20240808BHJP
【FI】
A01K61/10
A01K61/95
(21)【出願番号】P 2024049366
(22)【出願日】2024-03-26
【審査請求日】2024-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】藤原 尚美
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 友希子
(72)【発明者】
【氏名】豊久 志朗
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/210397(WO,A1)
【文献】国際公開第2024/080129(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/10
A01K 61/95
A01K 61/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する材料からなり、上面側で開放されて前後方向に沿って延在する保持用溝が形成された保持具と、
前記保持具が設置される保持具設置部と、を備え、
前記保持具設置部に前記保持具が設置された保持具設置状態において、前記保持用溝が上面側の開放部である溝上開放部から水と共に投入された供試魚を内部に保持するものである供試魚保持装置であって、
前記保持具の前方側及び後方側の夫々の側面に、前記保持用溝の前方側及び後方側の夫々の端部が溝端開放部として開放されており、
前記保持具設置部が、前記保持具設置状態での前記保持具の前方側及び後方側の夫々の側面に沿って設けられて、前記溝端開放部を通じた前記保持用溝からの前記供試魚の脱落を防止する一対の側壁部を有し、
前記保持具設置状態での前記保持具の前方側及び後方側の少なくとも一方側において、前記側壁部である隙間用側壁部と前記溝端開放部との間に、前記保持用溝に保持されている前記供試魚の前記溝端開放部からの当該供試魚の口先の突出を許容する口先突出用隙間が設けられている供試魚保持装置。
【請求項2】
前記保持用溝の前方側又は後方側の部位が、前記供試魚が水と共に前記溝上開放部から投入される供試魚投入部位に設定されており、
前記保持具設置状態での前記保持具の前方側及び後方側のうちの前記供試魚投入部位に近い側に前記口先突出用隙間が設けられている請求項1に記載の供試魚保持装置。
【請求項3】
前記一対の側壁部が、前記保持具設置状態での前記保持具において前記保持用溝の内部に水を滞留させる水滞留手段として機能する請求項1又は2に記載の供試魚保持装置。
【請求項4】
前記隙間用側壁部において、前記保持用溝の底面の高さ位置よりも上方側に位置する上側部分が前記溝端開放部に対して前記口先突出用隙間を介在させて離間しており、前記保持用溝の底面の高さ位置よりも下方側に位置する下側部分が前記保持具の側面に密着している請求項1又は2に記載の供試魚保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有する材料からなり、上面側で開放されて前後方向に沿って延在する保持用溝が形成された保持具と、前記保持具が設置される保持具設置部と、を備え、前記保持具設置部に前記保持具が設置された保持具設置状態において、前記保持用溝が上面側の開放部である溝上開放部から水と共に投入された供試魚を内部に保持するものである供試魚保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゼブラフィッシュが実験対象動物として非常に注目されている。ゼブラフィッシュのような供試魚を用いた動物実験では、例えば、経口投与などの所定の処置を供試魚に施す際に供試魚を保持するにあたり、供試魚に与えるストレスやダメージを最小限に抑えて、つまり、体表面などに損傷を与えず、火傷の症状を引き起こすこともなく、できるだけ優しく供試魚を保持することが重要な課題となる。
そこで、供試魚に与えるストレスやダメージを極力抑制して、供試魚を所定の姿勢で確実に保持することができる供試魚保持装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1記載の供試魚保持装置では、柔軟性を有する材料からなる保持具に形成された保持用溝の内部に、上面側の開放部である溝上開放部から水と共に投入された供試魚が保持されるので、柔軟性を有する素材によって供試魚を優しく保持することができ、供試魚に与えるストレスやダメージを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来の供試魚保持装置では、保持具における保持用溝の前方側及び後方側の夫々の端部は溝端開放部として開放されている。よって、保持具設置部には、当該保持具設置部に設置された保持具において、溝端開放部を通じた前記保持用溝からの供試魚の脱落を防止する一対の側壁部を保持具の前方側及び後方側の夫々の側面に沿って設けることが検討されている。このような側壁部を保持用溝の溝端開放部に密着させて当該溝端開放部を封鎖するように設置すると、保持用溝に投入された供試魚は当該保持用溝の内部に全身が収まるように保持具に保持される。よって、保持具に保持された供試魚に対して所定の処置として経口投与を行う場合には、供試魚の口先が保持用溝から露出されるように供試魚の位置調整が必要となる。このような供試魚の位置調整に要する手間は、少数の供試魚に対して経口投与する場合には問題にはならない程度に僅かなものであるが、多数の供試魚に対して経口投与を行う場合などでは、より作業効率を向上するために軽減することが望まれる。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、保持具設置部に柔軟性を有する保持具が設置された保持具設置状態において、保持具に形成された保持用溝が上面側の開放部である溝上開放部から水と共に投入された供試魚を内部に保持するものである供試魚保持装置において、供試魚に与える負担を軽減しながら供試魚に対して効率良く経口投与などの所定の処置を行うための技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、柔軟性を有する材料からなり、上面側で開放されて前後方向に沿って延在する保持用溝が形成された保持具と、
前記保持具が設置される保持具設置部と、を備え、
前記保持具設置部に前記保持具が設置された保持具設置状態において、前記保持用溝が上面側の開放部である溝上開放部から水と共に投入された供試魚を内部に保持するものである供試魚保持装置であって、
前記保持具の前方側及び後方側の夫々の側面に、前記保持用溝の前方側及び後方側の夫々の端部が溝端開放部として開放されており、
前記保持具設置部が、前記保持具設置状態での前記保持具の前方側及び後方側の夫々の側面に沿って設けられて、前記溝端開放部を通じた前記保持用溝からの前記供試魚の脱落を防止する一対の側壁部を有し、
前記保持具設置状態での前記保持具の前方側及び後方側の少なくとも一方側において、前記側壁部である隙間用側壁部と前記溝端開放部との間に、前記保持用溝に保持されている前記供試魚の前記溝端開放部からの当該供試魚の口先の突出を許容する口先突出用隙間が設けられている点にある。
【0006】
本構成によれば、保持用溝の内部に水と共に供試魚が投入されると、保持用溝の内部に投入された供試魚は適度に水に浸された状態になる。更に、魚は口先を壁面につける位置に自ら移動して落ち着く習性がある。これらのことから、保持用溝の内部に投入された供試魚は、口先側の側壁部に向かう方向に自ら移動しやすくなり、この移動により溝端開放部から口先突出用隙間に数mm(2mm程度)の口先を突出させた口先突出状態になる。すると、供試魚を保持した保持具を保持具設置部から取り出して、上記口先突出状態とした供試魚に対して被験物質の経口投与を行うにあたり、保持用溝の内部に保持された供試魚の口先を溝端開放部から突出させるための位置調整が略不要となる。よって、保持用溝の内部における供試魚の位置調整に起因する作業性の悪化を抑制することができる。更に、位置調整を実施することによる供試魚に与えるストレスやダメージを軽減することができる。
従って、本発明により、保持具設置部に柔軟性を有する保持具が設置された保持具設置状態において、保持具に形成された保持用溝が上面側の開放部である溝上開放部から水と共に投入された供試魚を内部に保持するものである供試魚保持装置において、供試魚に与える負担を軽減しながら供試魚に対して効率良く経口投与などの所定の処理を行うための技術を提供できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記保持用溝の前方側又は後方側の部位が、前記供試魚が水と共に前記溝上開放部から投入される供試魚投入部位に設定されており、
前記保持具設置状態での前記保持具の前方側及び後方側のうちの前記供試魚投入部位に近い側に前記口先突出用隙間が設けられている点にある。
【0008】
本構成によれば、保持具の前方側又は後方側の供試魚投入部位から水と共に供試魚が投入された保持用溝の内部では、供試魚が水に浸された状態となる上に、供試魚投入部位から前方側部位及び後方側部位のうちの他方の部位に向かう水流が形成されることになる。また、魚は一般的に水流に逆らう姿勢となる習性がある。これらのことから、保持用溝の内部に投入された供試魚の姿勢は、供試魚投入部位側に口先を向けた姿勢になりやすくなる。そして、保持用溝の内部に投入された供試魚が口先側である供試魚投入部位側の方向に自ら移動することで、供試魚投入部位に近い側に設けられた口先突出用隙間に溝端開放部から口先が突出されるので、容易に上述の口先突出状態とすることができる。更に、保持用溝において供試魚の姿勢が供試魚投入部位側に口先を向けた姿勢になりやすいので、供試魚を保持した保持具を保持具設置部から取り出して当該供試魚に対して所定の処理を行うにあたり、供試魚の向き調整が略不要となるので、作業性を一層向上することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記一対の側壁部が、前記保持具設置状態での前記保持具において前記保持用溝の内部に水を滞留させる水滞留手段として機能する点にある。
【0010】
本構成によれば、一対の側壁部で保持具における保持用溝の前方側及び後方側夫々の溝端開放部を適度に覆うことで、当該一対の側壁部を上記水滞留手段として機能させて、保持用溝の内部に適度に水を滞留させることができる。そして、このような水滞留手段により水が適度に滞留する保持用溝の内部に対して水と共に供試魚が投入されて、供試魚は常に水に浸かった状態となるので、供試魚を暴れさせることなく姿勢を安定させた状態で保持用溝の内部に留まらせることができ、更に、滞留する水に浸された状態の供試魚の口先を容易に口先突出用隙間に突出させた口先突出状態になるように自ら移動させることができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記隙間用側壁部において、前記保持用溝の底面の高さ位置よりも上方側に位置する上側部分が前記溝端開放部に対して前記口先突出用隙間を介在させて離間しており、前記保持用溝の底面の高さ位置よりも下方側に位置する下側部分が前記保持具の側面に密着している点にある。
【0012】
本構成によれば、隙間用側壁部における保持用溝の底面の高さ位置よりも上方側に位置する上側部分を溝端開放部に対して離間して配置する形態で、当該隙間用側壁部の上側部分と当該溝端開放部との間に口先突出用隙間を設けることができる。更に、隙間用側壁部における保持用溝の底面の高さ位置よりも下方側に位置する下側部分を保持具の側面に密着させることで、当該隙間用側壁部の下側部分によって保持具を安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図6】保持具設置状態の供試魚保持装置において保持用溝の内部への供試魚の投入直後の状態を示す正面視の断面図
【
図8】
図7に示す状態から供試魚の口先側への移動後の状態を示す左側面視の断面図
【
図9】保持具設置状態の供試魚保持装置において投入具を排出シュート抜去姿勢とした状態を示す正面視の断面図
【
図10】保持用溝の内部に供試魚を保持した保持具を保持具設置ケースから取り出す状態を示す正面視の断面図
【
図11】保持具に保持された供試魚に対する経口投与の実施状態を示す図
【
図12】別形態の保持具設置ケースの左側面視の断面図
【
図13】別形態の保持具設置ケースの左側面視の断面図
【
図14】別形態の保持具設置ケースの左側面視の断面図
【
図15】別形態の保持具設置ケースの左側面視の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る供試魚保持装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態の供試魚保持装置(以下「本保持装置」と呼ぶ)は、例えば
図11に示すように、供試魚Fを保持して各種の生体観察又は生体実験などに供するための設備において、観察又は実験対象の比較的小さな供試魚Fに与える負担を軽減しながら供試魚Fに対して効率良く直接経口投与などの所定の処置を行うことができるものとして構成されている。
【0015】
本保持装置は、
図6、
図7、
図8、
図9、及び
図10に示すように、保持具10、保持具設置ケース30、及び投入具40等とからなる。
詳細については後述するが、保持具10は、柔軟性を有する材料からなり、上面10a側で開放されて前後方向Xに沿って延在する保持用溝12が形成されている。一方、保持具設置ケース30は、保持具10を内部に収容する容器状の保持具設置部として構成されている。
そして、保持具10を保持具設置ケース30に設置した保持具設置状態(例えば
図6、
図7、及び
図8に示す状態)において、保持用溝12が、上面10a側の開放部である溝上開放部12aから水Wと共に投入された供試魚Fを内部に保持するものとして構成されている。
尚、本実施形態において、供試魚Fとしては、ゼブラフィッシュ(Zebrafish)を想定しているが、生体実験に用いる小型の魚であればよく、例えば、ファットヘッドミノー(Fathead minnow)、メダカ(Ricefish)、グッピー(Guppy)などを供試魚Fとすることができる。
【0016】
保持具10は、柔軟性に加えて、透水性および保水性を有する材料、例えばスポンジで構成されている。尚、本実施形態では保持具10全体をスポンジで構成するが、柔軟性、透水性、および、保水性を備えた他の材料、例えば、不織布などで構成することもできる。
保持具10は、
図1、
図2、
図3、
図6、
図7、及び
図8に示すように、上面10a側で開放されて前後方向Xに沿って延在する保持用溝12が形成されている。即ち、保持具10の形状は平面視で矩形に形成されており、主に
図2及び
図6に示すように、正面視にて、上側部分の幅が下側部分の幅よりも小さくなる略凸状に形成されている。そして、保持具10の上面10a側には、前後方向Xに延びる溝であって、上方が略直線状の溝上開放部12aにより開放され、その下方の空間が供試魚Fを収容する収容部となる保持用溝12が形成されている。また、保持具10の前方側及び後方側の夫々の側面10bには、保持用溝12の前方側及び後方側の夫々の端部が溝端開放部12bとして開放されている。
【0017】
保持具10において、保持用溝12は、前後方向Xに沿った長さが供試魚Fの全長(口の先端から尾びれの後端までの長さ)よりも長くなるように、保持具10の後端から前端に至るまでの全長に亘って設けられる。例えば、供試魚Fが全長40mm程度のゼブラフィッシュである場合、保持用溝12の長さは約50mmに設定することが望ましい。
保持用溝12の深さは、供試魚Fの鉛直方向の高さよりも若干大きくなっており、例えば、供試魚Fが全長40mm程度のゼブラフィッシュである場合、保持用溝12の深さは、5~25mmの範囲内に設定することが望ましい。
尚、上述の保持用溝12に関する寸法値については適宜変更してもよく、例えば3割程度の範囲で増減させても構わない。
【0018】
保持具10の保持用溝12への供試魚Fの投入は、例えばビーカー等から直接行うことができるが、供試魚Fに与えるダメージをできるだけ軽減するために、所定の投入具40が用いられる。
投入具40は、
図1、
図2、及び
図3にも示すように、下向きに延出する筒状の排出シュート42を有して、上方に開口された投入口41に投入された供試魚Fを水Wと共に排出シュート42の下端の排出口42aから排出するように構成されている。即ち、投入具40は、投入口41から排出シュート42に向けて供試魚Fを傾斜姿勢のパイプ内にスライドさせる構成を採用せずに、排出シュート42の上方に投入口41を設けて投入口41から直接排出シュート42内へ供試魚Fを誘導するように構成されている。よって、
図6、
図7、及び
図8に示すように、投入口41に対してビーカーなどの容器55等により水Wと共に投入された供試魚Fは、傾斜姿勢のパイプ内をスライドすることなく、水Wと共に直接排出シュート42内に誘導された後に、その排出シュート42の下端の排出口42aから保持具10の保持用溝12に向けて排出される。このことで、供試魚Fの負担や損傷が軽減されると共に、供試魚Fが安定して保持用溝12に投入されることになる。
【0019】
また、投入口41において、容器55による供試魚Fの投入位置は、保持用溝12の延在方向である前後方向Xにおける一方側の位置とすることが望ましい。即ち、供試魚Fは、一般的に水流に沿う姿勢になりやすく、更にはその水流に逆らう姿勢になる習性がある。このことから、容器55から放出された供試魚Fは、同時に放出される水Wの水流に沿った前後方向Xに沿う姿勢となり、更にはその水流に逆らって尾びれ側から放出されて、保持用溝12における容器55による投入位置に近い側の供試魚投入部位12Aから保持用溝12の内部に投入されることになる。よって、保持用溝12の内部に対し、容器55から水Wと共に放出された供試魚Fは、保持用溝12の延在方向(前後方向X)に沿った適切な姿勢で、供試魚投入部位12Aから投入されることになる。
更には、保持用溝12の内部に対して供試魚投入部位12Aから供試魚Fが尾びれ側から投入されることで、保持用溝12の内部に投入された供試魚Fの姿勢をできるだけ供試魚投入部位12A側に口先Faを向けた姿勢とすることができる。また、保持具10の供試魚投入部位12Aから水Wと共に供試魚Fが投入された保持用溝12の内部では、供試魚Fが水Wに浸された状態となる上に、供試魚投入部位12Aから他方の部位に向かう水流が形成されることになる。そして、供試魚Fは一般的に水流に逆らう姿勢となる習性があることから、保持用溝12の内部に投入された供試魚Fの姿勢は、供試魚投入部位12A側に口先Faを向けた姿勢になりやすくなる。
【0020】
保持具10の上面10a側には、上方から投入具40の排出シュート42が挿入されるシュート挿入凹部15が形成されており、シュート挿入凹部15の底部15aに保持用溝12が形成されている。即ち、
図6、
図7、及び
図8に示すように、投入具40において下方に延出する筒状の排出シュート42が、保持具10に形成されたシュート挿入凹部15に挿入されて、シュート挿入凹部15の底部15aに排出シュート42の下端開口部が当接する。このようにシュート挿入凹部15に排出シュート42が挿入されることにより、排出シュート42の下端の排出口42aから排出された供試魚Fの保持具10外方への脱落が防止される。更に、排出シュート42をシュート挿入凹部15に挿入するだけで簡単に保持具10が投入具40に対して適切な位置に配置される。これらの構成により、排出シュート42内から排出された供試魚Fが、シュート挿入凹部15の底部15aに形成された保持用溝12に対して確実に進入することになる。
【0021】
平面視で前後方向Xに対して直交する左右方向Yに沿ったシュート挿入凹部15の幅は、
図2に示すように、同左右方向Yに沿った排出シュート42の幅よりも若干小さめに設定されている。よって、
図6に示すように、シュート挿入凹部15に対して若干幅が大きい排出シュート42が挿入されると、保持具10における保持用溝12の左右両側の側壁12dが左右に押し広げられて、それら側壁12dの間に形成されている保持用溝12の幅が左右に若干押し広げられることになる。すると、この状態では、排出シュート42内を通じて排出された供試魚Fをスムーズに保持具10の保持用溝12に進入させることができる。
【0022】
本実施形態における保持具10の全体の大きさは、
図2に示す正面図及び
図3に示す左側面図を参照して、上下方向の高さが約50mmとされており、左右方向Yの幅が約100mmとされており、前後方向Xの厚さが約50mmとされている。また、保持具10の上面10a側に形成されたシュート挿入凹部15の大きさは、上下方向の深さが約15mmとされており、左右方向Yの幅が約15mmとされている。
【0023】
保持具10において、保持用溝12は、
図2等に示すように、上方のシュート挿入凹部15の底部15aに開放された溝上開放部12aを頂点とした略二等辺三角形の断面形状を有するものとして形成されている。この保持用溝12の大きさは、上下方向の高さが約15mmで、底辺の左右方向Yの幅が約10mmで、上記溝上開放部12aの幅は約2mmとされている。
溝上開放部12aを頂点とした略二等辺三角形の断面形状を有する保持用溝12の内部に供試魚Fを保持した状態では、比較的広い幅の空間にて供試魚Fを優しく保持しながら、上面10a側の溝上開放部12aの幅が当該空間の幅よりも狭くなることで、当該溝上開放部12aからの供試魚Fの脱落が好適に防止される。更に、
図10に示すように、保持用溝12の左右両側にある側壁12dを利用者が外側から指Dで摘まむようにすれば、当該保持用溝12からの供試魚Fの脱落を一層好適に防止できる。
【0024】
図1及び
図2に示すように、保持具10には、保持用溝12が形成された溝形成部分18と、その当該溝形成部分18の左右両側部の下部から両側方に延出する一対の側翼部分19とを有して形成されている。詳しくは、幅が約50mmの溝形成部分18の左右両側部夫々の下部側から、幅が約25mmの側翼部分19が左右両側方に延出しており、これら溝形成部分18の下面と一対の側翼部分19の下面とが同一平面状に形成されている。更に、溝形成部分18の下端面から高さ約20mmまでの領域に側翼部分19が位置する。
尚、上述の保持具10に関する寸法値については適宜変更してもよく、例えば3割程度の範囲で増減させても構わない。
【0025】
保持具設置ケース30は、
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5に示すように、保持具10が内部に収容される状態で着脱自在に設置される容器状の保持具設置部として構成されている。即ち、保持具設置ケース30は、
図6、
図7、及び
図8にも示すように、角筒状の外周壁部31の底部が底板部34で塞がれて、外周壁部31の内部に水Wを貯留すると共に、保持具10を保持具設置ケース30に設置した保持具設置状態において、上方側から挿入された保持具10を内部の貯留水Wに浸漬させた状態で外周壁部31の内部に収容する保持具収容貯水部として構成されている。
保持具10を保持具設置ケース30内に収容するにあたり、外周壁部31の内寸の大きさは、保持具10の外寸の大きさに対して、略同じに設定したり、若干小さくしたり、若干大きくしたりなどのように、外周壁部31に対する保持具10の支持安定性や着脱のし易さなどを考慮して適宜設定することができる。
【0026】
保持具設置ケース30は、保持具設置状態の保持具10からみて前方側及び後方側に配置された一対の側壁部32と、保持具設置状態での保持具10からみて左方側及び右方側に配置された一対の側壁部33とを有しており、これら左右一対の側壁部33と前後一対の側壁部32とで保持具設置状態での保持具10の周囲を囲う筒状の外周壁部31が構成されている。
前後一対の側壁部32の夫々は、保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側の夫々の側面10bに沿って延在しており、保持用溝12の前方側及び後方側の溝端開放部12bを通じた保持用溝12からの供試魚Fの脱落が防止される。
一方、左右一対の側壁部33は、保持具設置状態において、保持具10の左方側及び右方側の両側面10cに平行な鉛直面に沿って延在する平板状とされており、当該一対の側壁部33は保持具10の左方側及び右方側の両側面10cに密着する。
【0027】
更に、
図8に示すように、保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側の両側において、側壁部32である隙間用側壁部35と溝端開放部12bとの間に、保持用溝12に保持されている供試魚Fの溝端開放部12bからの当該供試魚Fの口先Faの突出を許容する口先突出用隙間Sが設けられている。即ち、本実施形態では、保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側のうち、供試魚投入部位12Aに近い側に口先突出用隙間Sが設けられていると共に、供試魚投入部位12Aに遠い側にも口先突出用隙間Sが設けられている。
【0028】
更に、保持具設置ケース30において、保持具10の前方側及び後方側の夫々に設けられた隙間用側壁部35は、保持用溝12の底面12cの高さ位置を境界にして、その底面12cの高さ位置よりも上方側に位置する上側部分35aと、その底面12cの高さ位置よりも下方側に位置する下側部分35bとからなる。そして、隙間用側壁部35の上側部分35aは、保持具設置状態での溝端開放部12bよりも数mm程度離間した位置において保持具10の側面10bと平行な垂直面に沿って延在している。このことで、保持具設置状態において、隙間用側壁部35と溝端開放部12bとの間に、前後方向Xに沿った幅が数mm程度の口先突出用隙間Sが介在されることになる。
一方、隙間用側壁部35の下側部分35bは、保持具設置状態での保持具10の側面10bに密着して延在している。このことで、保持具設置状態において、保持具10が前方側及び後方側の隙間用側壁部35の下側部分35bによって安定して保持されることになる。
尚、溝端開放部12bの前後方向Xに沿った幅は、供試魚Fの口先Faのみが突出可能で幅に設定されており、例えば供試魚Fがゼブラフィッシュである場合には2mm程度に設定することが望ましい。
【0029】
そして、
図7に示すように、保持用溝12の内部に水Wと共に供試魚Fが投入されたときには、保持用溝12の内部に投入された供試魚Fは適度に水Wに浸された状態になる。更に、魚は口先Faを壁面につける位置に自ら移動して落ち着く習性がある。これらのことから、
図8に示すように、保持用溝12の内部に投入された直後の供試魚Fは、口先Fa側の隙間用側壁部35に向かう方向に自ら移動しやすくなり、この移動により溝端開放部12bから口先突出用隙間Sに数mm程度(2mm程度)の口先Faを突出させた口先突出状態になる。
更に、保持用溝12の前方側及び後方側の両側に口先突出用隙間Sが設けられているので、保持用溝12の内部において供試魚Fの向きが定まらない場合であっても、略確実に何れかの口先突出用隙間Sに供試魚Fの口先Faを突出させて口先突出状態とすることができる。
【0030】
また、保持用溝12の前方側又は後方側の部位が、供試魚Fが水Wと共に溝上開放部12aから投入される供試魚投入部位12Aに設定されており、保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側のうちの少なくとも供試魚投入部位12Aに近い側に口先突出用隙間Sが設けられている場合には、上述のように、保持用溝12の内部に投入された供試魚Fの姿勢は供試魚投入部位12A側に口先Faを向けた姿勢になりやすくなるので、保持用溝12の内部に投入された供試魚Fが口先Fa側である供試魚投入部位12A側の方向に自ら移動することで、供試魚投入部位12Aに近い側に設けられた口先突出用隙間Sに溝端開放部12bから口先Faが突出される。
【0031】
すると、
図10に示すように供試魚Fを保持した保持具10を保持具設置ケース30から取り出して、
図11に示すように上記口先突出状態とした供試魚Fに対して被験物質の経口投与を行うにあたり、保持用溝12の内部に保持された供試魚Fの口先Faを溝端開放部12bから突出させるための位置調整が略不要となる。よって、保持用溝12の内部における供試魚Fの位置調整に起因する作業性の悪化が抑制されると共に、その位置調整を実施することによる供試魚Fに与えるストレスやダメージが軽減される。
更に、保持用溝12において供試魚Fの姿勢が供試魚投入部位12A側に口先Faを向けた姿勢になりやすいので、供試魚Fを保持した保持具10を保持具設置ケース30から取り出して当該供試魚Fに対して所定の処理を行うにあたり、供試魚Fの向き調整が略不要となるので、作業性を一層向上することができる。
【0032】
図6、
図7、及び
図8に示すように、前後一対の側壁部32で保持具10における保持用溝12の前方側及び後方側夫々の溝端開放部12bを適度に覆うことで、保持用溝12の内部には適度に水Wが滞留している状態となる。即ち、前後一対の側壁部32は、保持具設置状態での保持具10において保持用溝12の内部に水Wを滞留させる水滞留手段Aとして機能する。そして、水Wが適度に滞留する保持用溝12の内部に対して水Wと共に供試魚Fが投入されて、供試魚Fは常に水Wに浸かった状態となるので、供試魚Fは暴れることなく姿勢を安定させた状態で保持用溝12の内部に留まることになる。よって、保持用溝12の内部に投入された供試魚Fは暴れることなく姿勢を安定させた状態で保持用溝12の内部に留まる。そして、
図8に示すように、滞留する水Wに浸された状態の供試魚Fは、滞留する水Wにより口先Faが向かう方向に自ら移動しやすくなり、容易に口先Faを口先突出用隙間Sに突出させた口先突出状態になり、
図11に示す経口投与において保持用溝12に保持された供試魚Fの位置調整が不要又は簡素化される。
【0033】
本実施形態において、保持具設置ケース30の外周壁部31全体が透明材料で構成されている。即ち、側壁部32が透明材料で構成されているので、側壁部32及びそれで塞がれた溝端開放部12bを通じて、外部から保持用溝12の内部に留まる供試魚Fの状態が観察可能となる。尚、本実施形態では、外周壁部31全体を透明材料としているが、当該外周壁部31を非透明材料で構成した場合であっても、上方側から溝上開放部12aを通じて保持用溝12の内部に留まる供試魚Fの状態が観察することができる。また、供試魚Fに対する処置等の種類毎に、外周壁部31等の色が異なる複数種の保持具設置ケース30を用意して、各処理間のコンタミネーションを抑制することもできる。
【0034】
外周壁部31において、左右一対の側壁部33の少なくとも一部の最低上端高さ(上端部分33aの高さ)が、前後一対の側壁部32の少なくとも一部の最低上端高さ(上端部分32aの高さ)よりも低く設定されている。具体的には、前後一対の側壁部32及び左右一対の側壁部33の夫々の上端部分32a,33aは全体が同じ高さの水平な直線状とされている。更に、一対の側壁部33の上端部分33aが、前後一対の側壁部32の上端部分32aよりも低く設定されている。
よって、保持具設置ケース30は、
図6に示すように、貯留水Wを左右一対の側壁部33の上端部分33a全体から外部にオーバーフローさせる形態で、内部に水Wを貯留するものとされている。即ち、保持具設置ケース30内の貯留水Wが、左右一対の側壁部33の上端部分33a全体からオーバーフローすることから、当該上端部分33aの高さを所定の設定水位WLに位置させることで、保持具設置ケース30内の貯留水Wの水位を当該設定水位WLに維持することができる。
そして、上記外周壁部31の少なくとも一部の最低上端部分となる左右一対の側壁部33の上端部分33aは、上記設定水位WLの高さに位置されることで、保持具設置ケース30内の貯留水Wの水位を所定の設定水位WLに保つ水位維持手段Bとして機能する。
【0035】
更に、内部に保持具10を収容した保持具設置ケース30において、前後一対の側壁部32の上端部分32aの高さが左右一対の側壁部33の上端部分33aの高さよりも高いことから、当該左右一対の側壁部33の上端部分33aでは貯留水Wのオーバーフローが発生し、当該前後一対の側壁部32の上端部分32aでは貯留水Wのオーバーフローが発生しない。このことから、保持用溝12の内部に保持された供試魚Fが貯留水Wのオーバーフローに誘導されて側壁部32の上端部分32aから逃げ出すことが防止されている。
【0036】
上記設定水位WLは、保持具設置ケース30内に収容された保持具10における保持用溝12の底面12c超の水位であり、且つ、保持具設置ケース30内に収容された保持具10における溝上開放部12a付近以下の水位に設定されている。
図6、
図7、及び
図8に示す保持具設置状態において、保持具10が保持具設置ケース30内の貯留水Wに浸漬した状態で設置され、その保持具設置ケース30内の貯留水Wの水位が保持用溝12の底面12c超の設定水位WLに保たれて、保持用溝12の内部には適度に水Wが滞留している状態となる。即ち、周一対の側壁部33の上端部分33aが機能する水位維持手段Bは、保持具設置状態での保持具10において保持用溝12の内部に水Wを滞留させる水滞留手段Aとして機能する。そして、水Wが適度に滞留する保持用溝12の内部に対して水Wと共に供試魚Fが投入されて、供試魚Fは常に水Wに浸かった状態となる。すると、保持用溝12の内部に投入された供試魚Fは、暴れることなく姿勢を安定させた状態となって、保持用溝12の内部に留まることになる。
【0037】
更に、
図6、
図7、及び
図8に示す保持具設置状態において、保持具設置ケース30内の貯留水Wの水位が溝上開放部12a付近以下の設定水位WLに保たれる。よって、溝上開放部12a付近の上方には水Wが存在しないことから、保持具設置ケース30内に収容された保持具10の保持用溝12の内部に保持された供試魚Fが、溝上開放部12aから上方に逃げ出すことが抑制される。
尚、上記設定水位WLは、溝上開放部12aの若干上の高さから若干下の高さまでの範囲を含む溝上開放部12a付近に設定することが好ましく、溝上開放部12aと同じ高さに設定することが更に好ましい。
【0038】
保持具設置ケース30は、
図6、
図7、及び
図8に示す保持具設置状態において、シュート挿入凹部15に対する排出シュート42の挿入深さが所定の設定挿入深さ超となることを阻止する挿入深さ規制部Cを有する。即ち、投入具40は、排出シュート42の上端側部分から外方に向けて水平に延出する鍔部43を有する。そして、投入具40の排出シュート42を保持具10のシュート挿入凹部15に挿入するにあたり、外周壁部31において左右一対の側壁部33よりも上方に突出する前後一対の側壁部32の上端部分32aが、投入具40の鍔部43の下面に当接することにより、上記挿入深さ規制部Cとして機能して、シュート挿入凹部15に対する排出シュート42の挿入深さが、所望の挿入深さを超えることが阻止される。よって、投入具40の排出シュート42を保持具10のシュート挿入凹部15にしっかりと挿入した場合であっても、排出シュート42の下端により保持具10のシュート挿入凹部15の底部15aが押し付けられることが抑制されるので、当該底部15aに溝上開放部12aが開放された保持用溝12の状態を適切なものに保つことができる。
【0039】
保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側の少なくとも一方側に口先突出用隙間Sを設けるための別の形態を、
図12、
図13、
図14及び
図15に示す。
詳細については後述するが、これまで説明した本実施形態では、保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側の両側に口先突出用隙間Sを設けたが、
図12及び
図15に示すように、保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側の片側、好ましくは保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側のうちの供試魚投入部位12Aに近い側のみに口先突出用隙間Sを設けても構わない。また、これまで説明した本実施形態では、隙間用側壁部35において、上側部分35aを溝端開放部12bに対して離間させることで口先突出用隙間Sを形成し、下側部分35bを保持具10の側面10bに密着させて当該保持具を安定して保持するようにしたが、
図13、
図14及び
図15に示すように、別の形態で口先突出用隙間Sを形成するようにしても構わない。
以下、
図12、
図13、
図14及び
図15に示す別の形態の詳細について説明を加える。尚、以下の説明において、口先突出用隙間Sを設けるための構成以外については、これまで説明した本実施形態と同じであるため説明は割愛する。
【0040】
(別形態1)
図12に示す形態では、保持具設置ケース30は、保持具設置状態での保持具10からみて前後一対の側壁部32のうちの供試魚投入部位12Aに近い側の側壁部32のみが上側部分35aと上側部分35aとからなる隙間用側壁部35として構成されている。そして、隙間用側壁部35の上側部分35aが保持具設置状態での溝端開放部12bに対して離間されて当該溝端開放部12bとの間に口先突出用隙間Sが形成され、隙間用側壁部35の下側部分35bが保持具設置状態での保持具10の側面10bに密着されている。一方、前後一対の側壁部32のうちの供試魚投入部位12Aに遠い側の側壁部32は保持具設置状態での保持具10の側面10bと平行な垂直面に沿って延在する平板状の垂直側壁部36として構成されている。そして、保持具設置状態において、この垂直側壁部36の全体が保持具10の側面10bに密着しており、保持具10が隙間用側壁部35の下側部分35bと垂直側壁部36とによって安定して保持されることになる。
【0041】
(別形態2)
図13に示す形態では、保持具設置ケース30は、保持具設置状態での保持具10からみて前後一対の側壁部32の両方が、保持具10の側面10bに平行な垂直面に沿って延在する平板状の隙間用側壁部38として構成されている。一方、保持具10の前方側及び後方側の側面10bは、保持用溝12の底面12cの高さ位置を境界にして、その底面12cの高さ位置よりも上方側に位置して溝端開放部12bが開口している上部側面10baと、その底面12cの高さ位置よりも下方側に位置する下部側面10bbとからなる階段状に形成されている。そして、保持具10の上部側面10baは、保持具設置状態での隙間用側壁部38よりも数mm程度離間した位置において隙間用側壁部38と平行な垂直面として延在している。このことで、保持具設置状態において、上部側面10baに開口している溝端開放部12bと隙間用側壁部38との間に口先突出用隙間Sが形成されている。一方、保持具10の下部側面10bbは、保持具設置状態での隙間用側壁部38に密着して延在している。このことで、保持具設置状態において、保持具10が前方側及び後方側の隙間用側壁部38の下側部分によって安定して保持されることになる。
尚、本形態においても、保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側の片側、好ましくは保持具設置状態での保持具10の前方側及び後方側のうちの供試魚投入部位12Aに近い側のみにおいて、保持具10の側面10bを上部側面10baと下部側面10bbとを有する階段状に形成して、口先突出用隙間Sを設けるようにしても構わない。
【0042】
(別形態3)
図14に示す形態では、保持具設置ケース30は、保持具設置状態での保持具10からみて前後一対の側壁部32の両方が略平板状の隙間用側壁部37として構成されている。具体的に、この隙間用側壁部37は、保持具10の溝端開放部12bが形成された側面10bに対し、上方ほど離間する状態で傾斜されている。このことで、保持具10の側面10bにおいて上方側に位置する溝端開放部12bに対し、隙間用側壁部38は若干離間して配置されることになって、これらの間に口先突出用隙間Sが形成されることになる。
更に、この形態では、保持具10と隙間用側壁部37とが最下端部で接触するので、保持具10が適度に安定して保持されると共に、それ以外の部分では適度に接触が抑制された状態となっているので、隙間用側壁部37を備えた保持具設置ケース30に対する保持具10の着脱が軽い力で容易に行うことができるようになり、作業性が一層向上されることになる。
また、本形態では、隙間用側壁部37を傾斜させることで口先突出用隙間Sを形成したが、隙間用側壁部37については垂直面に沿ったものとし、溝端開放部12bが開口された保持具10の側面10bを傾斜させることで口先突出用隙間Sを形成しても構わない。
【0043】
(別形態4)
図15に示す形態では、保持具設置ケース30は、保持具設置状態での保持具10からみて前後一対の側壁部32のうちの供試魚投入部位12Aに近い側の側壁部32のみが溝端開放部12bが形成された側面10bに対し上方ほど離間するように傾斜する隙間用側壁部37として構成されている。そして、隙間用側壁部37の上側部分が保持具設置状態での溝端開放部12bに対して離間されて当該溝端開放部12bとの間に口先突出用隙間Sが形成される。一方、前後一対の側壁部32のうちの供試魚投入部位12Aに遠い側の側壁部32は保持具設置状態での保持具10の側面10bと平行な垂直面に沿って延在する平板状の垂直側壁部36として構成されている。そして、保持具設置状態において、この垂直側壁部36の全体が保持具10の側面10bに密着しており、保持具10が隙間用側壁部37の最下端部と垂直側壁部36とによって安定して保持されることになる。
【0044】
〔他の実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0045】
(1)上記実施形態の保持具10では、保持用溝12が形成された溝形成部分18の左右両側部の下部側から両側方に延出する一対の側翼部分19を設けたが、保持具10の形状については適宜変更することができ、例えば側翼部分19を省略しても構わない。
【0046】
(2)上記実施形態の保持具10では、溝上開放部12aを頂点とした略二等辺三角形の断面形状を有する保持用溝12を設けたが、保持用溝12の形状については適宜変更することができ、例えば楕円や矩形などの別の形状の断面形状を有するものとしても構わない。
【0047】
(3)上記実施形態では、保持具10を設置するための保持具設置部として保持具設置ケース30を設けたが、この保持具設置ケース30の構成については適宜変更することができる。例えば、保持具設置ケース30の外周壁部31の上端部分32a,33aを全て同じ高さに設定して、その上端部分全体から内部の貯留水Wを外部にオーバーフローさせるように構成することもできる。また、上記実施形態では、保持具設置ケース30が有する前後一対の側壁部32により、保持具設置ケース30内に収容された保持具10における保持用溝12の前方側及び後方側夫々の溝端開放部12bを覆うように構成したが、前後一対の側壁部32を保持具設置ケース30とは別に設けたり、保持具設置ケース30を省略して前後一対の側壁部32を単独で設置するなどのように、前後一対の側壁部32の構成については適宜変更することができる。
【0048】
(4)上記実施形態では、投入具40を用いて、供試魚Fを水Wと共に保持具10の保持用溝12に投入したが、投入具40の構成については適宜変更することができ、またこのような投入具40を用いることなく別の手段で供試魚Fを水Wと共に保持具10の保持用溝12に投入しても構わない。
【0049】
(5)上記実施形態では、前後一対の側壁部32や水位維持手段Bを、保持具設置状態の保持具10において保持用溝12の内部に水Wを滞留させる水滞留手段Aとして機能させるように構成したが、これらとは別の構成により保持用溝12の内部に水Wを滞留させるように構成しても構わない。また、このような水滞留手段Aを省略した場合であっても、水Wと共に供試魚Fを投入することにより保持用溝12の内部に適度に水Wが存在することから、保持用溝12の内部に投入された供試魚Fを自ら口先Fa側に自ら移動させて口先突出状態とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 保持具
10a 上面
10b 側面
12 保持用溝
12A 供試魚投入部位
12a 溝上開放部
12b 溝端開放部
12c 底面
30 保持具設置ケース(保持具設置部)
32 側壁部
35 隙間用側壁部
35a 上側部分
35b 下側部分
37 隙間用側壁部
38 隙間用側壁部
A 水滞留手段
F 供試魚
Fa 口先
S 口先突出用隙間
W 水
X 前後方向
【要約】 (修正有)
【課題】保持具に形成された保持用溝が上面側の開放部である溝上開放部から水と共に投入された供試魚を内部に保持するものである供試魚保持装置において、供試魚に与える負担を軽減しながら供試魚に対して効率良く経口投与などの所定の処置を行うための技術を提供する。
【解決手段】保持具10の前方側及び後方側の夫々の側面10bに、保持用溝12の溝端開放部12bが開放されており、保持具設置部30が、保持具設置状態での保持具10の側面10bに沿って設けられて溝端開放部12bを通じた保持用溝12からの供試魚Fの脱落を防止する側壁部32を有し、側壁部32である隙間用側壁部35と溝端開放部12bとの間に、保持用溝12に保持されている供試魚Fの溝端開放部12bからの当該供試魚Fの口先Faの突出を許容する口先突出用隙間Sが設けられている。
【選択図】
図8