IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-空気調和装置 図1
  • 特許-空気調和装置 図2
  • 特許-空気調和装置 図3
  • 特許-空気調和装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/84 20180101AFI20240809BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240809BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20240809BHJP
   F25B 41/40 20210101ALI20240809BHJP
【FI】
F24F11/84
F25B1/00 351D
F25B1/00 341C
F25B13/00 104
F25B41/40 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021020399
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123228
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】馬場 準市
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄次
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113246(JP,A)
【文献】特開2013-170804(JP,A)
【文献】国際公開第2021/019686(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F25B 1/00
F25B 13/00
F25B 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と四方切替弁と室外熱交換器とを有する1台の室外機に室内熱交換器を備えた室内機を複数接続し、前記室外機の前記圧縮機、前記四方切替弁、前記室外熱交換器、複数の前記室内機の前記室内熱交換器によって構成される冷媒回路の途中にそれぞれ膨張弁を接続して構成した空気調和装置であって、
前記室外機の圧力を間接または直接検出する室外機圧力検出手段と、
複数の前記室内機の圧力を間接または直接検出する室内機圧力検出手段と、
前記膨張弁を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記圧縮機の停止後、前記室外機圧力検出手段が検出した室外機圧力と前記室内機圧力検出手段が検出した各室内機圧力とのそれぞれの圧力差を計算し、前記圧力差が大きい室内機から前記圧力差が小さい室内機の順に前記膨張弁を所定開度まで開する構成とした空気調和装置。
【請求項2】
前記室外機圧力検出手段は、前記室外熱交換器の温度を検出する室外熱交換器温度センサで構成して前記室外機の圧力を間接的に検知し、前記室内機圧力検出手段は前記室内熱交換器の温度を検出する室内熱交換器温度センサで構成して前記室内機の圧力を間接的に検知する構成とし、
前記制御部は、前記圧縮機停止後、前記室外熱交換器温度センサで検出した室外熱交換器温度と前記室内熱交換器温度センサで検出した複数の各室内熱交換器温度とのそれぞれの温度差を計算し、前記温度差が大きい室内機から前記温度差が小さい室内機の順に前記膨張弁を所定開度まで開する構成とした請求項1記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記室内機に運転中の室内機と停止中の室内機がある場合、前記運転中の室内機の膨張弁を所定開度まで開した後、前記停止中の室内機の膨張弁を所定開度まで開する構成とした請求項1又は2記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記制御部は、先の膨張弁が所定開度まで開した開動作終了後に次の膨張弁の開動作を開始する構成とした請求項1~3のいずれか1項記載の空気調和装置。
【請求項5】
圧縮機と四方切替弁と室外熱交換器とを有する1台の室外機に室内熱交換器を備えた室内機を複数接続し、前記室外機の前記圧縮機、前記四方切替弁、前記室外熱交換器、複数の前記室内機の前記室内熱交換器によって構成される冷媒回路の途中にそれぞれ膨張弁を接続して構成した空気調和装置であって、
前記室外熱交換器の温度を検出する室外熱交換器温度センサと、
複数の前記室内熱交換器の温度を検出するそれぞれの室内熱交換器温度センサと、
前記膨張弁を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記圧縮機の停止後、前記室外熱交換器温度センサが検出した室外熱交換器温度と前記室内熱交換器温度センサが検出した各室内熱交換器温度とのそれぞれの温度差を計算し、前記温度差が大きい室内機から前記温度差が小さい室内機の順に前記膨張弁を所定開度まで開する構成とした空気調和装置。
【請求項6】
前記制御部は、複数の前記室内機に運転中の室内機と停止中の室内機がある場合、前記運転中の室内機の膨張弁を所定開度まで開した後、前記停止中の室内機の膨張弁を所定開度まで開する構成とした請求項5記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記制御部は、先の膨張弁が所定開度まで開した開動作終了後に次の膨張弁の開動作を開始する構成とした請求項5又は6項記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1台の室外機と複数の室内機とを接続して構成した空機調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、1台の室外機と複数の室内機とを接続して構成した空機調和装置を開示する。この空気調和装置は、1台の室外機に四方切替弁を介して複数の室内機を接続し、前記室外機と複数の各室内機とで構成する冷媒回路中、例えばこの例では各室内機内部の冷媒回路中に膨張弁をそれぞれ設けて構成している。そして、上記四方切替弁により冷媒の流れ方向を切り替えて冷房運転或いは暖房運転を行い、膨張弁の開度を可変することで各室内機の冷房能力或いは暖房能力を制御するとともに、サーモオフする場合、室内機は膨張弁を閉じて当該室内機の運転を停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-132357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、1台の室外機と複数の室内機とからなる空気調和装置の圧縮機停止時において、複数の室内機と室外機との間の圧力差を解消して均圧化させる際に運転停止中の室内機から発生する冷媒流通音を抑制して快適な空気調和装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における空気調和装置は、圧縮機と四方切替弁と室外熱交換器とを有する1台の室外機に室内熱交換器を備えた室内機を複数接続し、室外機の圧縮機、四方切替弁、室外熱交換器、複数の室内機の室内熱交換器によって構成される冷媒回路の途中にそれぞれ膨張弁を接続して構成した空気調和装置であって、室外機の圧力を間接または直接検出する室外機圧力検出手段と、複数の室内機の圧力を間接または直接検出する室内機圧力検出手段と、膨張弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、圧縮機の停止後、室外機圧力検出手段が検出した室外機圧力と室内機圧力検出手段が検出した各室内機圧力とのそれぞれの圧力差を計算し、圧力差が大きい室内機から圧力差が小さい室内機の順に膨張弁を所定開度まで開する構成としてある。
【0006】
また、本開示における空気調和装置は、圧縮機と四方切替弁と室外熱交換器とを有する1台の室外機に室内熱交換器を備えた室内機を複数接続し、室外機の圧縮機、四方切替弁、室外熱交換器、複数の室内機の室内熱交換器によって構成される冷媒回路の途中にそれぞれ膨張弁を接続して構成した空気調和装置であって、室外熱交換器の温度を検出する室外熱交換器温度センサと、複数の室内熱交換器の温度を検出するそれぞれの室内熱交換器温度センサと、膨張弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、圧縮機の停止後、室外熱交換器温度センサが検出した室外熱交換器温度と室内熱交換器温度センサが検出した各室内熱交換器温度とのそれぞれの温度差を計算し、温度差が大きい室内機から温度差が小さい室内機の順に膨張弁を所定開度まで開する構成としてある。
【発明の効果】
【0007】
本開示における空気調和装置は、室外機に接続されている複数の室内機のうち、室外機との圧力差が大きい室内機から圧力差が小さい室内機の順に室外機との間の圧力差を解消して均圧化していく。これにより、運転停止していた室内機に冷媒流通音が発生するのを抑制でき、快適な空気調和装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における空気調和装置の冷凍サイクル構成図
図2】同空気調和装置の制御ブロック図
図3】同空気調和装置の制御フロー図
図4】同空気調和装置の各室内機の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、1台の室外機と複数の室内機とを接続して構成した空機調和装置は、特許文献1に開示されているように、各室内機に対応して膨張弁を設け、この膨張弁の開度を可変することで冷房或いは暖房能力を制御するようになっている。この各室内機に膨張弁を設けた空気調和装置は、空調運転を停止、つまり圧縮機を停止した直後に室外機側と複数の室内機側との間にそれぞれ異なる高低圧圧力差が生じるので、この状態を解消して高低圧圧力バランスを均一にするため各室内機の膨張弁をあらかじめ定めてある大きな開度まで一斉に開く。この時、上記室内機の高低圧圧力差により、サーモオフ等によって運転停止中の室内機に急激かつ大きな冷媒流れが生じ冷媒流通音が発生する、という課題があり、その音でユーザの信頼性と快適性を損なう一因となっていることを見出した。
【0010】
本発明者らはこのような課題を見出し当該課題解決のため本開示の主題を構成するに至った。
【0011】
そこで本開示は、圧縮機停止時における冷媒流通音を抑制して信頼性が高く快適な空気調和装置を提供する。
【0012】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0014】
(実施の形態1)
以下、図1図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0015】
[1-1.構成]
図1は、実施の形態1に係る空気調和装置の構成を示す図である。
【0016】
本実施形態の空気調和装置は、1台の室外機1に複数の室内機11a~11dを並列に接続して構成してあり、室外機1で圧縮した冷媒を室外機1と室内機11a~11dとの間で流通させ、室内機11a~11dが設置された被調和空間を空調する。
【0017】
室外機1は、冷媒を圧縮する圧縮機2、圧縮機温度センサ3、冷媒の流れ方向を切り替えて被調和空間を冷房する冷房運転或いは暖房する暖房運転に切り替える四方切替弁4、四方切替弁4からの冷媒と室外ファン5からの送風空気とを熱交換する室外熱交換器6、室外機1の冷媒圧力を間接的に検出する室外機圧力検出手段、電磁弁等からなる液側閉鎖弁8とガス側閉鎖弁16を有している。そして、上記室外熱交換器6は、室外機1において冷媒を熱交換させ、冷房運転モードで凝縮器として機能し、暖房運転モードでは蒸発器として機能する。
【0018】
室外機圧力検出手段は、室外熱交換器温度センサ7が室外熱交換器6の温度を検出して室外機1の冷媒圧力を間接的に検出している。
【0019】
また、この実施の形態では上記室外機1に液側閉鎖弁8を介して膨張弁9a~9dを設け、後述する複数の室内機11a~11dを接続している。
【0020】
上記膨張弁9a~9dは、高圧の冷媒を減圧して膨張させ、後述する制御部17の制御によって開度を調整されるとともに、冷媒を遮断できる機能も有している。
【0021】
尚、上記各膨張弁9a~9dはこの例では室外機1側に纏めて設けているが、後述する各室内機11a~11d側にそれぞれ設けてもよいし、室外機1と各室内機11a~11dとの間の接続配管中に設けてもよい。
【0022】
一方、複数の各室内機11a~11dは、液側接続部10a~10d及びガス側接続部15a~15dを介して前記室外機1に接続され、室外機1から供給される冷媒の熱交換を行う室内熱交換器12a~12d、室内機11a~11dの冷媒圧力を間接的に検出する室内機圧力検出手段、および、室内熱交換器12a~12dに送風する室内ファン14a~14dを備えている。
【0023】
室内機圧力検出手段は、室内熱交換器温度センサ13a~13dが室内熱交換器12a~12dの温度を検出して室内機11a~11dの冷媒圧力を間接的に検出している。
【0024】
上記室内熱交換器12a~12dは、冷房運転モードで蒸発器として機能し、膨張弁9a~9dで減圧された冷媒を蒸発させる。
【0025】
なお、上記空気調和装置は、図示しないが、液体の冷媒と気体の冷媒とを分離し、冷媒を貯留するアキュムレータ等々の冷凍サイクルを効率的に運転するための各種部品を備えている。
【0026】
また、上記空気調和装置は、運転を制御する制御部17を備える。この制御部17は、圧縮機2の運転制御、四方切替弁4の流路の切り替え制御、室外ファン5の運転または停止等の制御を実行する。
【0027】
さらに、上記制御部17は前述した如く各膨張弁9a~9dの開度および/または開閉等の制御を行う。この各膨張弁9a~9dの制御は、室温と設定温度との温度差に基づく開度調整に加え、運転停止や冷房運転から暖房運転への切り替えやその逆の時の圧縮機停止時に、前記室外機1の室外熱交換器温度センサ7が検出した圧力代替値としての温度と各室内機11a~11dの室内熱交換器温度センサ13a~13dが検出した圧力代替値としての温度との差に基づいて複数の各室内機11a~11dに対応した各膨張弁9a~9dの開度を所定開度まで順次開制御する。
【0028】
図2は上記各膨張弁9a~9dを制御する制御ブロック部を示し、制御部17は時間制御部17a、圧力差計算手段17b、優先順序判断手段17c、膨張弁制御手段17d、全開動作判断手段17eを有する。
【0029】
時間制御部17aは圧縮機2停止からの時間を計測する。
【0030】
圧力差計算手段17bは、室外機1と複数の各室内機11a~11dとの間の各圧力差を検出するためのもので、この例では室外熱交換器温度センサ7が検出した圧力代替値としての温度と各室内熱交換器温度センサ13a~13dが検出した圧力代替値としての温度との差から圧力差を計算する。
【0031】
優先順序判断手段17cは上記圧力差計算手段17bが計算した圧力代替値としての温度差に基づいて各膨張弁9a~9dの開度を所定開度まで開く順序を決定する。
【0032】
膨張弁制御手段17dは、上記優先順序判断手段17cで決定した順序で各膨張弁9a~9dを所定開度、この例では全開状態まで開く。この膨張弁制御手段17dは、圧力代替値としての温度差が大きい順に膨張弁9a~9dを所定開度まで開動作する。そして、先の膨張弁が所定開度に開動作した終了後に次の膨張弁の開動作を開始する。
【0033】
全開動作判断手段17eは前記膨張弁制御手段17dに各膨張弁9a~9dが所定開度まで開動作したことを検出してその信号を膨張弁制御手段17dに出力する。
【0034】
なお、室内制御装置18a~18dは各室内機11a~11dに設けてある室内制御装置で、各室内熱交換器温度センサ13a~13dからの圧力代替値である温度出力を圧力差計算手段17bに出力する。
【0035】
そして、本実施の形態では、上記室内制御装置18a~18dと前記室外機1の制御部17とが協働して、冷房運転や暖房運転等の運転制御を行い、目標温度に合わせて被調和空間を空調する。
【0036】
[1-2.動作]
次に上記のように構成した空気調和装置について、その作用効果を図3図4を用い説明する。
【0037】
本実施の形態の空気調和装置は、ユーザが運転を指示すると、冷房運転や暖房運転等を行うが、冷房運転や暖房運転等の運転中、ユーザが設定した目標温度に合わせて、圧縮機2の運転周波数や運転または停止の制御、各膨張弁9a~9dの開度調整、室外ファン5および室内ファン14a~14dの制御を実行し、目標温度に合わせて被調和空間を空調する。
【0038】
そして、例えばユーザにより空調運転が停止される、或いは、冷房運転から暖房運転またはその逆の操作がされると、制御部17は室外機1の圧縮機2を停止し、図3のステップ1で示す所定時間経過後、例えば1~2分後、圧力差計算手段17bがステップ2で室外機1と各室内機11a~11dとの間の圧力代替値となる温度差を計算し、ステップ3に移行する。
【0039】
ステップ3では運転中の室内機(以降、運転号機と記す)が複数あるかを判定し、複数ある場合はステップ4以降に移行する。
【0040】
ステップ4では複数の運転号機の中で室外機1との間の圧力代替値となる温度差が一番大きい運転号機(図4に運転号機動作優先度1として示す)の膨張弁9aを通常運転時よりも大きな開度、この例では全開するように指示(図4のa)する。そして、ステップ5で上記室外機1との間の温度差が一番大きい運転号機の膨張弁9aの全開動作を完了(図4のb)させ、その後、ステップ6に移行し、室外機1との間の温度差が次に大きい運転号機(図4に運転号機動作優先度2として示す)の膨張弁9bを全開指示(図4のc)し、ステップ7で当該膨張弁9bの全開動作を完了(図4のd)させ、ステップ8に移行する。
【0041】
そして、ステップ8では全運転号機の膨張弁、この場合は膨張弁9a、9bの全開動作が完了したかを判定し、完了するまでステップ4からステップ7を繰り返す。この動作を運転号機が存在する数だけ行う。
【0042】
これにより、室外機1との間の圧力代替値となる温度差が大きい運転号機から少ない運転号機の順に室内機との間の圧力差を解消し、均圧化していく。
【0043】
つまり、室外機1と複数の各室内機11a~11dの圧力を当該圧力に応じて変動する温度によって検出し、その温度差が大きい順で各室内機11a~11dの膨脹弁9a~9dを所定開度まで開き、室外機1との間の温度差が大きい運転号機から少ない運転号機の順に室内機11a~11dの間の圧力差を解消し、均圧化していく。
【0044】
したがって、圧縮機停止時に運転を停止している室内機(以降、停止号機と記す)が存在していて、当該停止号機と室外機1との間に大きな圧力差があっても、その圧力差は従来の運転号機の膨張弁を一斉に全開させるものに比べ極めて小さくなる。よって、停止号機の膨張弁を全開しても停止号機内の冷媒の流れは穏やかで冷媒流通音はほとんど発生しない形となる。
【0045】
また本実施形態の場合、圧力代替値となる温度差が大きい順に膨張弁を全開するので、室外機1と各運転号機とを段階を追ってスムーズに均圧化していくことができる。よって、均圧化の途中で冷媒流れの勢いに差が出て生じる違和感を抑制することができる。
【0046】
更に各膨張弁の開動作は最初に均圧化する運転号機の膨張弁が全開状態まで開いた動作終了後に次の膨張弁の開動作を開始するので、個々の運転号機毎に確実に圧力差を解消することになる。よって、膨張弁が全開状態になる前に次の膨張弁を開動作させることにより生じる運転号機の圧力差解消動作のオーバーラップで冷媒流れに勢いの差が生じ、冷媒流通音に大少差が発生して感じる違和感を確実に抑制することができる。
【0047】
更にまた、室外機と各室内機の圧力は温度センサによる温度検知で間接的に検知するようにしているので、圧力を直接検出する圧力センサを用いる場合に比べセンサ自体の取り付けを容易化でき、構成の簡素化とセンサ自体のコストダウンを実現することができる。
【0048】
なお、ステップ3で運転号機が複数ないと判定、つまり運転号機が1台しかないと判定した場合、ステップ9に移行して該当する運転号機の例えば膨張弁9aを全開指示し、ステップ10で全開動作を完了させてステップ11の停止号機の有無確認に移る。この場合も、前記と同様、圧縮機停止時に運転停止していた停止号機と室外機1との間の圧力差は極小化し、停止号機内の冷媒の流れは穏やかで冷媒流通音はほとんど発生しない形となる。
【0049】
次に、上記ステップ8及びステップ10で全運転号機の膨張弁、この例では9a、9bの全開動作の完了を確認すると、更にステップ11に移行して圧縮機停止時、停止号機が複数あるかを判定する。そして、停止号機が複数ある場合はステップ12以降の動作を行う。
【0050】
まず、ステップ12で複数の停止号機の中で室外機1との間の圧力代替値となる温度差が一番大きい停止号機(図4に停止号機動作優先度1として示す)に繋がる例えば膨張弁9cを大きな開度、この例では全開するように指示(図4のe)する。そして、ステップ13で上記室外機1との間の圧力代替値となる温度差が一番大きい停止号機の膨張弁9cの全開動作を完了(図4のf)させ、その後、ステップ14に移行し、室外機1との間の圧力代替値となる温度差が次に大きい停止機の例えば膨張弁9dを全開指示(図4のg)し、ステップ15で当該膨張弁9dの全開動作を完了(図4のh)させ、ステップ16に移行する。
【0051】
そして、ステップ16では全停止号機の膨張弁9c、9dの全開動作が完了したかを判定し、完了するまでステップ12からステップ15を繰り返す。この動作を停止号機が存在する数だけ行う。
【0052】
これにより、室外機1との間の圧力差を解消する停止号機に生じる冷媒の急激な流れも効果的に抑制し、冷媒流通音の発生をより効果的に抑えることができる。
【0053】
つまり、圧縮機停止時に運転停止している停止号機も前記運転号機の均圧化動作と同様、室外機1との間の圧力代替値となる温度差が大きい停止号機から少ない停止号機の順に室内機との間の圧力差を解消し、均圧化して冷媒流通音の発生を抑制する。
【0054】
また、前記膨張弁9c、9dを全開する順序、及びその開度を全開として次の膨張弁を開とする動作も、運転号機の場合と同様であり、同様の作用効果が得られる。
【0055】
なお、ステップ11で停止号機が複数ないと判定、つまり停止号機が1台しかない場合、ステップ17に移行し、該当する停止号機の膨張弁を全開し、圧縮機停止時における膨張弁制御を終了する。この場合も、前記と同様、運転号機の均圧化が終了しているので、圧縮機停止時に運転停止していた停止号機と室外機1との間の圧力差は極小化しており、停止号機内の冷媒の流れは穏やかで冷媒流通音はほとんど発生しない形となる。
【0056】
以上、本実施の形態では室外機1と各室内機11a~11dの冷媒圧力を検出する室外機圧力検出手段及び室内機圧力検出手段はいずれも圧力代替値となる温度を検出する温度センサで構成した場合を例示したが、これは室外機1、各室内機11a~11dの冷媒圧力、例えばそれぞれの熱交換器部分の冷媒圧力を直接検出する圧力センサ等の圧力検知器で構成してもよい。また、本実施の形態では、室外機と各室内機の圧力を温度センサによる温度検知で間接的に検知するようにしているが、室外熱交換器温度センサ7、室内熱交換器温度センサ13a~13dで検出した温度を直接用いて各膨張弁9a~9dを制御する構成としてもよい。その場合は、制御部17は圧力差計算手段17bの代わりに、室外熱交換器温度センサ7が検出した温度と各室内熱交換器温度センサ13a~13dが検出した温度との差を計算する温度差計算手段を有する。
【0057】
また、室外機1と各室内機11a~11dとの間の圧力差を解消する均圧化時の膨張弁9a~9dの開度は全開としているが、これは所定の開度に任意に設定すればよい。
【0058】
さらに室内機11a~11dは4台の場合を例示したが、これは複数であれば何台であってもよい。
【0059】
[1-3.効果等]
以上のように、本開示の空気調和装置は、圧縮機2と四方切替弁4と室外熱交換器6とを有する1台の室外機1に室内熱交換器12a~12dを備えた室内機11a~11dを複数接続し、室外機1の圧縮機2、四方切替弁4、室外熱交換器6、複数の室内機11a~11dの室内熱交換器12a~12dによって構成される冷媒回路の途中にそれぞれ膨張弁9a~9dを接続して構成した空気調和装置であって、室外機1の圧力を間接または直接検出する室外機圧力検出手段と、複数の室内機11a~11dの圧力を間接または直接検出する室内機圧力検出手段と、膨張弁9a~9dを制御する制御部17と、を備え、制御部17は、圧縮機2の停止後、室外機圧力検出手段が検出した室外機圧力と室内機圧力検出手段が検出した各室内機圧力とのそれぞれの圧力差を計算し、圧力差が大きい運転中の室内機から圧力差が小さい室内機の順に膨張弁9a~9dを所定開度まで開する構成としている。
【0060】
これにより、室外機1に接続されている複数の室内機11a~11dのうち、室外機1との圧力差が大きい室内機から圧力差が小さい室内機の順に前記室外機1との間の圧力差を解消して均圧化していく。これにより、運転停止していた室内機に冷媒流通音が発生するのを抑制でき、快適な空気調和装置とすることができる。
【0061】
また、本開示の空気調和装置は、室外機圧力検出手段は、室外熱交換器6の温度を検出する室外熱交換器温度センサ7で構成して室外機の圧力を間接的に検知し、室内機圧力検出手段は、室内熱交換器12a~12dの温度を検出する室内熱交換器温度センサ13a~13dで構成して室内機11a~11dの圧力を間接的に検知する構成とし、制御部17は、圧縮機停止後、室外熱交換器温度センサ7で検出した室外熱交換器温度と室内熱交換器温度センサ13a~13dで検出した複数の各室内熱交換器温度とのそれぞれの温度差を計算し、温度差が大きい室内機から温度差が小さい室内機の順に膨張弁を所定開度まで開する構成としている。
【0062】
これにより、冷媒流通音の発生を抑制できるのはもちろん、室外機1と室内機11a~11dとの圧力差を温度差によって検出するので、圧力を直接検知する圧力センサを用いる場合に比べ簡単かつ安価に空気調和装置を提供することができる。
【0063】
また、本開示の空気調和装置における制御部17は、複数の室内機に運転中の室内機と停止中の室内機がある場合、運転中の室内機の膨張弁を所定開度まで開した後、停止中の室内機の膨張弁を開する構成としている。
【0064】
これにより、運転号機及び停止号機のいずれも室内機の均圧化をスムーズに行って違和感なく冷媒流通音を抑制することができ、運転号機と停止号機が複数混在していても快適性の高い空気調和装置とすることができる。
【0065】
また、本開示の空気調和装置における制御部17は、先の膨張弁が所定開度まで開した開動作終了後に次の膨張弁の開動作を開始する構成としている。
【0066】
これにより、室内機11a~11dの圧力差解消動作が一部オーバーラップすることにより冷媒流れに勢いの差が生じるのを防止して冷媒流通音の大少差発生による違和感を抑制することができ、更に高いレベルまで快適性を高めることができる。
【0067】
また、本開示の空気調和装置は、圧縮機2と四方切替弁4と室外熱交換器6とを有する1台の室外機1に室内熱交換器12a~12dを備えた室内機11a~11dを複数接続し、室外機1の圧縮機2、四方切替弁4、室外熱交換器6、複数の室内機11a~11dの室内熱交換器12a~12dによって構成される冷媒回路の途中にそれぞれ膨張弁9a~9dを接続して構成した空気調和装置であって、室外熱交換器6の温度を検出する室外熱交換器温度センサ7と、複数の室内熱交換器12a~12dの温度を検出するそれぞれの室内熱交換器温度センサ13a~13dと、膨張弁9a~9dを制御する制御部17と、を備え、制御部17は、圧縮機2の停止後、室外熱交換器温度センサ7が検出した室外熱交換器温度と室内熱交換器温度センサ13a~13dが検出した各室内熱交換器温度とのそれぞれの温度差を計算し、温度差が大きい室内機から前記温度差が小さい室内機の順に膨張弁9a~9dを所定開度まで開する構成としている。
【0068】
これにより、冷媒流通音の発生を抑制できるのはもちろん、室外機1と室内機11a~11dとの圧力差を温度差によって検出するので、圧力を直接検知する圧力センサを用いる場合に比べ簡単かつ安価に空気調和装置を提供することができる。
【0069】
以上、本発明に係る空気調和装置について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。つまり、今回開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る空気調和装置は、上記したように、運転停止していた室内機(停止号機)と室外機との間の圧力差を均圧化するときには当該室内機(停止号機)に冷媒が勢いよく流れて冷媒流通音が発生するのを抑制でき、快適な空気調和装置とすることができる。よって、家庭用及び業務用エアコン等に幅広く利用でき、その産業的価値は大なるものがある。
【符号の説明】
【0071】
1 室外機
2 圧縮機
3 圧縮機温度センサ
4 四方切替弁
5 室外ファン
6 室外熱交換器
7 室外熱交換器温度センサ
8 液側閉鎖弁
9a~9d 膨張弁
10a~10d 液側接続部
11a~11d 室内機
12a~12d 室内熱交換器
13a~13d 室内熱交換器温度センサ
14a~14d 室内ファン
15a~15d ガス側接続部
17 制御部
17a 時間制御部
17b 圧力差計算手段
17c 優先順序判断手段
17d 膨張弁制御手段
17e 全開動作判断手段
図1
図2
図3
図4