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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0668 20160101AFI20240809BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20240809BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240809BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20240809BHJP
【FI】
H01M8/0668
H01M8/249
H01M8/04 J
H01M8/0662
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021545675
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2021001568
(87)【国際公開番号】W WO2021186879
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2020044871
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳央
(72)【発明者】
【氏名】苅野 健
(72)【発明者】
【氏名】尾関 正高
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲有
(72)【発明者】
【氏名】田口 清
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/081016(WO,A1)
【文献】特開2015-099803(JP,A)
【文献】特開2012-046395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と窒素と一酸化炭素とを含んだ原料水素が、外部から供給される燃料電池システムであって、
前記原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を空気を供給して酸化反応させることにより除去して水素含有ガスを排出する一酸化炭素除去部と、
前記水素含有ガスを用いて発電する第一の燃料電池と、を備え、
前記原料水素に含まれる窒素の濃度が25%を上回る、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記一酸化炭素除去部が、前記原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を変成反応により除去する変成器と、
前記原料水素に含まれる一酸化炭素を酸化反応により除去する一酸化炭素除去器との少なくとも一方を有する、
請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記水素含有ガスのうち発電に使用されずに前記第一の燃料電池を通過したガスである1次オフガスを用いて発電する第二の燃料電池をさらに備え、
前記第二の燃料電池の発電出力が、前記第一の燃料電池の発電出力よりも小さい、
請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記水素含有ガスのうち発電に使用されずに前記第一の燃料電池を通過したガスである1次オフガスを用いて前記一酸化炭素除去部を加熱する燃焼器をさらに備えた、
請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記1次オフガスのうち発電に使用されずに前記第二の燃料電池を通過したガスである
2次オフガスを用いて前記一酸化炭素除去部を加熱する燃焼器を備えた、
請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第一の燃料電池は、複数の第一の燃料電池のうちの1つであり、
前記第二の燃料電池は、複数の第二の燃料電池のうちの1つであり、
前記複数の第一の燃料電池は、並列に配置され、
前記複数の第二の燃料電池は、並列に配置され、
前記複数の第一の燃料電池の発電出力の総和よりも前記複数の第二の燃料電池の発電出力の総和の方が小さい、
請求項3または5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記一酸化炭素除去部は、複数の一酸化炭素除去部のうちの1つであり、
前記複数の一酸化炭素除去部は、並列に配置される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記1次オフガスのうち発電に使用されずに前記第二の燃料電池を通過したガスである2次オフガスを用いて発電する第三の燃料電池をさらに備え、
前記第三の燃料電池の発電出力が、前記第二の燃料電池の発電出力よりも小さい、
請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記第一の燃料電池の上流にアンモニアを除去するアンモニア除去器をさらに備えた、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記一酸化炭素除去部に供給する前記原料水素から硫黄を除去する硫黄除去部をさらに備えた、
請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記硫黄除去部が水添脱硫により硫黄を除去する水添脱硫部である、
請求項10に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素含有ガスを用いて発電する燃料電池を備える、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、窒素が含まれる原料から、改質器にて水素と窒素と一酸化炭素とアンモニアとを含んだ水素含有ガスを生成し、その水素含有ガス(以下、原料水素ともいう)に含まれる一酸化炭素の濃度を、変成器にてシフト反応により低減し、アンモニア除去器にて水素含有ガスに含まれるアンモニアを除去し、一酸化炭素除去器にて一酸化炭素を酸化反応により除去した水素含有ガスを生成し、その水素含有ガスを用いて燃料電池で発電する燃料電池システムを開示する。
【0003】
この燃料電池システムは、変成器と、アンモニア除去器と、一酸化炭素除去器と、燃料電池と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-46395号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示は、水素と窒素と一酸化炭素とを含んだ原料水素を用いて発電できるコンパクトな燃料電池システムを提供する。
【0006】
本開示における燃料電池システムは、水素と窒素と一酸化炭素とを含み窒素の濃度が25%を上回る原料水素が供給され、原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を除去して水素含有ガスを排出する一酸化炭素除去部と、水素含有ガスを用いて発電する第一の燃料電池と、を備える。
【0007】
本開示における燃料電池システムは、発電する際に、アンモニアを生成しない。そのため、アンモニア除去器を小さくすることができる。このため、燃料電池システムをコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1における燃料電池システムのブロック図である。
図2図2は、実施の形態2における燃料電池システムのブロック図である。
図3図3は、実施の形態3における燃料電池システムのブロック図である。
図4図4は、他の実施の形態における燃料電池システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、燃料電池システムという技術は、都市ガスが主成分となる窒素が含まれる原料から、改質器にて改質反応により水素と窒素と一酸化炭素とアンモニアとを含んだ水素含有ガスを生成し、その水素含有ガス(以下、原料水素ともいう)に含まれる一酸化炭素の濃度を、変成器にてシフト反応により低減した上で、アンモニア除去器にて水素含有ガスに含まれるアンモニアを除去し、一酸化炭素除去器にて一酸化炭素を酸化反応により除去した水素含有ガスを用いて、燃料電池で発電するという状況であった。
【0010】
なお、天然ガスが直接原料として供給されることが想定されており、原料に含まれる窒素の濃度は、例えば、欧州では最大でも25%であった。
【0011】
そうした状況において、天然ガス由来ではなく、水素を主成分とし、窒素を25%より多く含んだガス(以下、原料水素ともいう)を原料として用いた場合、改質部にて、窒素と水素とが反応してアンモニアに変わることにより、アンモニアが燃料電池を被毒し、劣化させてしまう虞があった。
【0012】
燃料電池の劣化を防止するためには、アンモニアを除去する必要がある。このとき、原料水素に含まれる窒素の濃度が高いほど、アンモニア除去器が大きくなるという課題を有していた。
【0013】
そこで、本開示は、原料水素に窒素が25%よりも多く含まれていても、アンモニアの生成を防止し、アンモニア除去器を小さくできるコンパクトな燃料電池システムを提供する。
【0014】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0016】
(実施の形態1)
以下、図1を用いて、実施の形態1を説明する。図1は、実施の形態1における燃料電池システム100のブロック図である。
【0017】
[1-1.構成]
図1に示すように、本実施の形態の燃料電池システム100は、変成器1と、一酸化炭素除去器2と、第一の燃料電池3と、燃焼器4と、を備える。
【0018】
変成器1は、原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を変成反応により除去する。本実施の形態において、原料水素は、水素と窒素と一酸化炭素を含んでおり、窒素の濃度は25%を上回る。
【0019】
一酸化炭素除去器2は、一酸化炭素を酸化反応により除去する。一酸化炭素除去器2には、酸化反応のために、酸素を含んだガスとして空気が供給される。
【0020】
第一の燃料電池3は、水素含有ガスを用いて発電する。また、第一の燃料電池3は、電解質膜の両主面をアノードとカソードとで挟んだ電解質膜‐電極接合体を有する。アノードに水素含有ガスが供給され、カソードに酸素を含んだ空気が供給されることにより、第一の燃料電池3は発電する。
【0021】
燃焼器4は、1次オフガスを燃焼させることによって、一酸化炭素除去部を構成する変成器1と一酸化炭素除去器2とを加熱する。1次オフガスは、第一の燃料電池3に供給された水素含有ガスのうち第一の燃料電池3での発電に使用されずに第一の燃料電池3を通過したガス(水素含有ガス)である。
【0022】
[1-2.動作]
以上のように構成された本実施の形態の燃料電池システム100について、以下その動作と作用を説明する。
【0023】
まず、図1に基づいて、燃料電池システム100における原料水素を用いて発電する動作を説明する。
【0024】
水素と窒素と一酸化炭素とを含んだ原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を除去するために、原料水素が変成器1に供給される。これにより、変成器1にて原料水素に含まれる一酸化炭素の濃度を低減することができる。しかし、変成器1を通過した水素含有ガスを第一の燃料電池3に供給する場合、変成器1を通過した水素含有ガスに含まれる一酸化炭素濃度は高い、すなわち一酸化炭素濃度が十分に低減されておらず、第一の燃料電池3を被毒する可能性がある。
【0025】
そこで、変成器1から排出された水素含有ガスを一酸化炭素除去器2に供給して、第一の燃料電池3に供給される水素含有ガスの一酸化炭素濃度をさらに低減する。このように、一酸化炭素濃度を低減した水素含有ガスを第一の燃料電池3に供給することにより、第一の燃料電池3にて水素含有ガスに含まれる水素を用いて発電することができる。
【0026】
ここで、第一の燃料電池3は、水素含有ガスに含まれる全ての水素を発電に使うことはできない。第一の燃料電池3で使い切れなかった水素を含んだ水素含有ガスは、1次オフガスとして第一の燃料電池3から排出される。この1次オフガスを捨ててしまうと、すなわち燃料電池システム100の外部に排出してしまうと、水素が無駄になってしまう。そこで、1次オフガスを燃焼器4に供給して、燃焼させる。これにより、燃焼器4において、熱としてエネルギーを取り出すことができる。
【0027】
一酸化炭素除去部を構成する変成器1と一酸化炭素除去器2とは、それぞれの温度を100℃以上の高温に維持することにより、一酸化炭素を除去する能力を維持することができる。変成器1と一酸化炭素除去器2とは、どちらも発熱反応ではあるが、発熱反応による温度上昇よりも、放熱による温度低下の方が相対的に大きく、温度を維持することが難しい。そこで、燃焼器4で発生する熱を用いて、変成器1と一酸化炭素除去器2とを加熱する。これにより、変成器1と一酸化炭素除去器2とのそれぞれの温度を反応に適切な温度に維持することができる。したがって、変成器1と一酸化炭素除去器2とは、一酸化炭素を除去する能力を維持することが可能となる。これにより、燃料電池システム100にて安定して発電することができる。
【0028】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態の燃料電池システム100は、窒素の濃度が25%を上回る原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を除去して水素含有ガスを排出する一酸化炭素除去部と、その水素含有ガスを用いて発電する第一の燃料電池3と、を備える。
【0029】
これにより、燃料電池システム100は、発電する際にアンモニアを生成しない。そのため、原料水素にアンモニアが含まれない場合には、アンモニア除去器を不要とすることができ、燃料電池システムをコンパクトにすることができる。
【0030】
一酸化炭素除去部は、原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を変成反応により除去する変成器1と、変成器1から排出される水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を酸化反応により除去する一酸化炭素除去器2と、を有する。
【0031】
本実施の形態では、一酸化炭素除去部として、変成器1と一酸化炭素除去器2とを備えるが、第一の燃料電池3に供給される水素含有ガスの一酸化炭素濃度を、第一の燃料電池3において被毒の問題が起こらない程度に低減できるのであれば、変成器1と一酸化炭素除去器2とのどちらか一方だけを備えるようにしてもよい。
【0032】
これにより、原料水素に含まれる一酸化炭素の濃度に応じて、適切に一酸化炭素除去部を設けることができる。そのため、燃料電池システムから不要な機器を無くすことができ、コンパクトにすることができる。
【0033】
また、本実施の形態の燃料電池システム100は、水素含有ガスのうち発電に使用されずに第一の燃料電池3を通過したガスである1次オフガスを用いて、一酸化炭素除去部を加熱する燃焼器4を備える。
【0034】
本実施の形態では、燃焼器4が、変成器1と一酸化炭素除去器2の両方を加熱しているが、第一の燃料電池3に供給される水素含有ガスの一酸化炭素濃度を、第一の燃料電池3において被毒の問題が起こらない程度に低減できるのであれば、変成器1と一酸化炭素除去器2のうちのどちらか一方だけを、燃焼器4で加熱するように構成しても構わない。
【0035】
これにより、原料水素に含まれる一酸化炭素の濃度に応じて、燃焼器4が一酸化炭素除去部を適切に加熱することができ、不要な加熱構成を無くすことで、燃料電池システムをコンパクトにすることができる。
【0036】
(実施の形態2)
以下、図2を用いて、実施の形態2を説明する。図2は、実施の形態2における燃料電池システム200のブロック図である。
【0037】
[2-1.構成]
図2に示すように、本実施の形態の燃料電池システム200は、変成器1と、一酸化炭素除去器2と、第一の燃料電池3と、燃焼器4と、第二の燃料電池5と、硫黄除去部6と、を備える。
【0038】
本実施の形態の燃料電池システム200において、実施の形態1と同一の構成要素には同一符号を付与して、その説明は省略する。
【0039】
第二の燃料電池5は、1次オフガスを用いて発電する。1次オフガスは、第一の燃料電池3に供給された水素含有ガスのうち第一の燃料電池3での発電に使用されずに第一の燃料電池3を通過したガスである。
【0040】
第一の燃料電池3に供給される水素含有ガスに含まれる水素量よりも、第一の燃料電池3から排出され第二の燃料電池5に供給される1次オフガスに含まれる水素量は少ない。したがって、第一の燃料電池3の発電出力よりも、第二の燃料電池5の発電出力が小さくなるように構成される。
【0041】
硫黄除去部6は、原料水素に含まれる硫黄成分を吸着材により除去する。硫黄成分が変成器1、一酸化炭素除去器2、第一の燃料電池3、および第二の燃料電池5に供給されると、それぞれの機器が被毒される。したがって、変成器1の上流側に硫黄除去部6を設けることにより、それぞれの機器の硫黄成分による被毒を抑制することができる。硫黄除去部6としては、例えば、硫黄を吸着除去する吸着材が用いられる。
【0042】
[2-2.動作]
以上のように構成された本実施の形態の燃料電池システム200について、以下その動作と作用を説明する。
【0043】
まず、図2に基づいて、燃料電池システム200における原料水素を用いて発電する動作を説明する。
【0044】
原料水素は水素と窒素と一酸化炭素とに加え、硫黄成分を含むことがある。この硫黄成分を除去するために、原料水素が硫黄除去部6に供給される。硫黄除去部6により硫黄濃度が低減された原料水素は、一酸化炭素除去部を構成する変成器1と一酸化炭素除去器2とに供給されて、一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスになる。
【0045】
この水素含有ガスを用いて、第一の燃料電池3は発電する。第一の燃料電池3は、第一の燃料電池3に供給された全ての水素含有ガスを発電に使用することができず、第一の燃料電池3に供給された水素含有ガスのうち第一の燃料電池3での発電に使用されなかったガスが、1次オフガスとして第一の燃料電池3から排出される。
【0046】
第一の燃料電池3から排出された1次オフガスは、第二の燃料電池5に供給される。第二の燃料電池5は、1次オフガスを用いて発電する。これにより、燃料電池システム200は、第一の燃料電池3のみでは得られない電力を生み出すことができる。
【0047】
第一の燃料電池3に供給される水素含有ガスに含まれる水素量は、第一の燃料電池3から排出され第二の燃料電池5に供給される1次オフガスに含まれる水素量よりも多い。したがって、第一の燃料電池3の発電出力が第二の燃料電池5の発電出力よりも大きくなるように構成してもよい。
【0048】
第二の燃料電池5は、第二の燃料電池5に供給された全ての1次オフガスを発電に使用することができない。第二の燃料電池5に供給された1次オフガスのうち第二の燃料電池5での発電に使用されなかったガスは、2次オフガスとして第二の燃料電池5から排出される。
【0049】
この2次オフガスを燃料電池システム200で利用せずに排気した場合、2次オフガスに含まれるエネルギーを無駄にしてしまう。そこで、2次オフガスを燃焼器4に供給して燃焼させ、2次オフガスが保有するエネルギーを熱エネルギーとして取り出し、一酸化炭素除去部を構成する変成器1と一酸化炭素除去器2との加熱に用いる。
【0050】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態の燃料電池システム200は、窒素の濃度が25%を上回る原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を除去して水素含有ガスを排出する一酸化炭素除去部と、その水素含有ガスを用いて発電する第一の燃料電池3と、を備える。
【0051】
一酸化炭素除去部は、原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を変成反応により除去する変成器1と、変成器1から排出される水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を酸化反応により除去する一酸化炭素除去器2と、を有する。
【0052】
また、本実施の形態の燃料電池システム200は、水素含有ガスのうち発電に使用されずに第一の燃料電池3を通過したガスである1次オフガスを用いて発電する第二の燃料電池5を備える。第二の燃料電池5の発電出力は、第一の燃料電池3の発電出力よりも小さい。
【0053】
これにより、本実施の形態の燃料電池システム200は、第二の燃料電池5が、第一の燃料電池3から排出される1次オフガスを用いて発電することができる。そのため、燃料電池システム200は原料水素に含まれる水素を無駄なく使用することができる。
【0054】
また、本実施の形態の燃料電池システム200は、1次オフガスのうち発電に使用されずに第二の燃料電池5を通過したガスである2次オフガスを用いて一酸化炭素除去部を加熱する燃焼器4を備える。
【0055】
これにより、本実施の形態の燃料電池システム200は、第二の燃料電池5から排出される2次オフガスを用いて一酸化炭素除去部を加熱することができる。そのため、燃料電池システム200は原料水素を無駄なく使用することができる。
【0056】
また、本実施の形態の燃料電池システム200は、一酸化炭素除去部に供給する原料水素から硫黄を除去する硫黄除去部6を備える。
【0057】
これにより、本実施の形態の燃料電池システム200は、変成器1に供給される原料水素に含まれる硫黄成分を、硫黄除去部6で除去することができる。そのため、燃料電池システム200は、原料水素中に硫黄成分が含まれていても、安定して発電することができる。
【0058】
なお、本実施の形態における硫黄除去部6は、吸着材による硫黄の除去に限らず、硫黄除去部6として、水添脱硫により硫黄を除去する水添脱硫部を用いてもよい。水添脱硫部を用いた場合は、原料水素に含まれる水素を用いることで硫黄成分をより低濃度にまで低減することができる。
【0059】
また、水添脱硫部に適した温度帯と変成器1と一酸化炭素除去器2との温度帯が近いため、水添脱硫部を、変成器1や一酸化炭素除去器2や燃焼器4で加熱してもよい。
【0060】
これにより、原料水素に含まれる硫黄成分をより低濃度に低減することができる。そのため、変成器1や一酸化炭素除去器2や第一の燃料電池3や第二の燃料電池5の被毒をより防止することができる。
【0061】
(実施の形態3)
以下、図3を用いて、実施の形態3を説明する。図3は、実施の形態3における燃料電池システム300のブロック図である。
【0062】
[3-1.構成]
図3に示すように、本実施の形態の燃料電池システム300は、変成器1と、一酸化炭素除去器2と、第一の燃料電池3と、燃焼器4と、第二の燃料電池5と、第三の燃料電池7と、アンモニア除去器8と、を備える。
【0063】
本実施の形態の燃料電池システム300において、実施の形態1または実施の形態2と同一の構成要素には同一符号を付与し、その説明は省略する。
【0064】
第三の燃料電池7は、2次オフガスを用いて発電する。2次オフガスは、第二の燃料電池5に供給された1次オフガスのうち第二の燃料電池5での発電に使用されずに第二の燃料電池5を通過したガスである。
【0065】
第二の燃料電池5に供給される1次オフガスに含まれる水素量よりも、第二の燃料電池5から排出され第三の燃料電池7に供給される2次オフガスに含まれる水素量は少ない。したがって、第二の燃料電池5の発電出力よりも、第三の燃料電池7の発電出力が小さくなるように構成してもよい。この場合、第一の燃料電池3の発電出力よりも第二の燃料電池5の発電出力が小さく、第二の燃料電池5の発電出力よりも第三の燃料電池7の発電出力が小さくなる。
【0066】
アンモニア除去器8は、第一の燃料電池3に供給される水素含有ガスに含まれるアンモニアを除去する。アンモニア除去器8にて、水素含有ガスに含まれるアンモニアの濃度を第一の燃料電池3を被毒しない濃度にまで低減する。
【0067】
[3-2.動作]
以上のように構成された燃料電池システム300について、以下その動作、作用を説明する。
【0068】
まず、図3に基づいて、燃料電池システム300における原料水素を用いて発電する動作を説明する。
【0069】
原料水素は水素と窒素と一酸化炭素とに加え、アンモニアを含むことがある。このアンモニアを除去するために、一酸化炭素除去部を構成する変成器1と一酸化炭素除去器2とを通過して一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスが、アンモニア除去器8に供給される。
【0070】
アンモニア除去器8は、水素含有ガスに含まれるアンモニアの濃度を第一の燃料電池3を被毒しない濃度にまで低減する。アンモニア濃度が低減された水素含有ガスは、第一の燃料電池3に供給される。
【0071】
第一の燃料電池3は、アンモニア除去器8によってアンモニア濃度が低減された水素含有ガスを用いて発電する。第一の燃料電池3は、第一の燃料電池3に供給された全ての水素含有ガスを発電に使用することができない。第一の燃料電池3に供給された水素含有ガスのうち第一の燃料電池3での発電に使用されなかったガスは、1次オフガスとして、第一の燃料電池3から排出される。この1次オフガスは、第二の燃料電池5に供給される。
【0072】
第二の燃料電池5は、第二の燃料電池5に供給された全ての1次オフガスを発電に使用することができず、第二の燃料電池5に供給された1次オフガスのうち第二の燃料電池5での発電に使用されなかったガスは、2次オフガスとして、第二の燃料電池5から排出される。この2次オフガスは、第三の燃料電池7に供給される。
【0073】
第三の燃料電池7は、第三の燃料電池7に供給された全ての2次オフガスを発電に使用することができず、第三の燃料電池7に供給された2次オフガスのうち第三の燃料電池7での発電に使用されなかったガスは、3次オフガスとして、第三の燃料電池7から排出される。この3次オフガスは、燃焼器4に供給される。
【0074】
燃焼器4は、3次オフガスを燃焼して、一酸化炭素除去部を構成する変成器1と一酸化炭素除去器2とを加熱する。
【0075】
[3-3.効果等]
以上のように、本実施の形態の燃料電池システム300は、窒素の濃度が25%を上回る原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を除去して水素含有ガスを排出する一酸化炭素除去部と、その水素含有ガスを用いて発電する第一の燃料電池3と、を備える。
【0076】
一酸化炭素除去部は、原料水素に含まれる一酸化炭素の一部を変成反応により除去する変成器1と、変成器1から排出される水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を酸化反応により除去する一酸化炭素除去器2と、を有する。
【0077】
また、本実施の形態の燃料電池システム300は、水素含有ガスのうち発電に使用されずに第一の燃料電池3を通過したガスである1次オフガスを用いて発電する第二の燃料電池5と、1次オフガスのうち発電に使用されずに第二の燃料電池5を通過したガスである2次オフガスを用いて発電する第三の燃料電池7と、を備える。
【0078】
第二の燃料電池5の発電出力は、第一の燃料電池3の発電出力よりも小さく、第三の燃料電池7の発電出力は、第二の燃料電池5の発電出力よりも小さい。
【0079】
これにより、本実施の形態の燃料電池システム300は、第二の燃料電池5が、第一の燃料電池3から排出される1次オフガスを用いて発電することができ、第三の燃料電池7が、第二の燃料電池5から排出される2次オフガスを用いて発電することができる。そのため、燃料電池システム300は、原料水素に含まれる水素を無駄なく使用することができる。
【0080】
また、本実施の形態の燃料電池システム300は、2次オフガスのうち発電に使用されずに第三の燃料電池7を通過したガスである3次オフガスを用いて一酸化炭素除去部を加熱する燃焼器4を備える。
【0081】
これにより、本実施の形態の燃料電池システム300は、第三の燃料電池7から排出される3次オフガスを用いて一酸化炭素除去部を加熱することができる。そのため、燃料電池システム300は原料水素を無駄なく使用することができる。
【0082】
また、本実施の形態の燃料電池システム300は、第一の燃料電池3の上流にアンモニアを除去するアンモニア除去器8を備える。
【0083】
これにより、燃料電池システム300は、第一の燃料電池3に供給される水素含有ガスに含まれるアンモニアをアンモニア除去器8で除去することができる。そのため、燃料電池システム300は、原料水素にアンモニアが含まれていても、安定して発電することができる。
【0084】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1から実施の形態3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1から実施の形態3で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0085】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0086】
実施の形態2では、変成器1と一酸化炭素除去器2と第一の燃料電池3と第二の燃料電池5と燃焼器4とが直列に一台ずつ接続された構成について説明した。しかし、この構成に限ることなく、図4に示す燃料電池システム400のように、変成器1a,1b,1cと一酸化炭素除去器2a,2b,2cと第一の燃料電池3a,3b,3cと第二の燃料電池5a,5bと燃焼器4a,4b,4cとを、それぞれ複数台有するように構成してもよい。
【0087】
図4に示す燃料電池システム400のように、機器を並列に複数台配置する場合においては、第一の燃料電池3a,3b,3cの複数台の総和の発電出力よりも第二の燃料電池5a,5bの複数台の総和の発電出力を小さくすることにより、原料水素に含まれる水素を無駄なく使用することができる。
【0088】
また、図4に示すように、第一の燃料電池3a,3b,3cの台数よりも第二の燃料電池5a,5bの台数を少なくすることにより、第一の燃料電池3a,3b,3cの各々が第二の燃料電池5a,5bの各々と同じ発電出力の装置であったとしても、第一の燃料電池3a,3b,3cの総和の発電出力よりも第二の燃料電池5a,5bの総和の発電出力を小さくすることができる。
【0089】
また、実施の形態1から実施の形態3では、一酸化炭素除去部として、変成器1と一酸化炭素除去器2との両方を用いたが、これに限らず、変成器1と一酸化炭素除去器2とのどちらか一方のみであってもよい。原料水素に含まれる一酸化炭素の濃度および第一の燃料電池3を被毒する一酸化炭素の濃度などにより、変成器1と一酸化炭素除去器2との組み合わせを変更してもよい。
【0090】
原料水素に含まれる一酸化炭素の濃度が高い場合には、変成器1を用いて一酸化炭素を低減してもよい。原料水素に含まれる一酸化炭素の濃度が低い場合には、一酸化炭素除去器2のみで一酸化炭素を低減してもよい。また、第一の燃料電池3に供給される水素含有ガスの一酸化炭素濃度を低濃度に抑えない場合に第一の燃料電池3が一酸化炭素で被毒する可能性がある場合には、一酸化炭素除去器2を用いてもよい。
【0091】
実施の形態1から実施の形態3では、原料水素として、水素と窒素と一酸化炭素とに加え、アンモニアが含まれる場合がある。
【0092】
原料水素のアンモニア濃度が高く、アンモニアが第一の燃料電池3を被毒する可能性がある場合には、実施の形態3のように、アンモニア除去器8を設けてもよい。また、原料水素に含まれるアンモニアの濃度が低く、水素含有ガスに含まれるアンモニアが第一の燃料電池3を被毒しない場合には、アンモニア除去器8を設置しなくてもよい。
【0093】
実施の形態3では、アンモニア除去器8を、一酸化炭素除去器2と第一の燃料電池3との間に配置したが、アンモニア除去器8の設置個所は、第一の燃料電池3の上流側であれば、一酸化炭素除去器2と第一の燃料電池3との間でなくてもよい。例えば、アンモニア除去器8を変成器1の上流側に設置して、アンモニア除去器8で原料水素からアンモニアを除去して、変成器1にアンモニアを除去した原料水素を供給してもよい。また、変成器1と一酸化炭素除去器2との間にアンモニア除去器8を設けてもよい。
【0094】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、水素と窒素と一酸化炭素を含んだ原料水素を用いて発電する燃料電池システムに適用可能である。具体的には、産業分野で排出される余剰な水素を含んだガスを用いた発電などに本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1,1a,1b,1c 変成器
2,2a,2b,2c 一酸化炭素除去器
3,3a,3b,3c 第一の燃料電池
4,4a,4b,4c 燃焼器
5,5a,5b 第二の燃料電池
6 硫黄除去部
7 第三の燃料電池
8 アンモニア除去器
100 燃料電池システム
200 燃料電池システム
300 燃料電池システム
400 燃料電池システム
図1
図2
図3
図4