IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山▲崎▼ 千明の特許一覧

<>
  • 特許-コーヒー抽出器 図1
  • 特許-コーヒー抽出器 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】コーヒー抽出器
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20240809BHJP
   A47J 31/10 20060101ALI20240809BHJP
   A47J 31/44 20060101ALI20240809BHJP
   A47J 31/46 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A47J31/06 120
A47J31/10
A47J31/44 180
A47J31/46 117
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024001435
(22)【出願日】2024-01-09
【審査請求日】2024-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500429022
【氏名又は名称】山▲崎▼ 千明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 千明
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-109829(JP,A)
【文献】特開昭63-229011(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114617436(CN,A)
【文献】中国実用新案第208510757(CN,U)
【文献】特開2005-199007(JP,A)
【文献】中国実用新案第208692997(CN,U)
【文献】特開昭55-002426(JP,A)
【文献】実開昭60-024231(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0359829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/06
A47J 31/10
A47J 31/44
A47J 31/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体と、当該筒体の下部側であって先端部よりもやや基端部側の装着位置において当該筒体を閉塞するフィルターとを備えてコーヒーを抽出可能に構成され、
前記筒体は、上部筒および下部筒を備え、前記上部筒に設けられた上接続部と前記下部筒に設けられた下接続部とを介して当該上部筒と当該下部筒との連結および分割が可能に構成されて当該上接続部と当該下接続部とによって前記フィルターを挟み込むことによって当該フィルターを装着可能に構成されると共に、抽出されたコーヒーを受ける容器の下部の内面に前記先端部を当接させた状態において当該筒体に注いだ水が当該筒体内に滞留するように構成されているコーヒー抽出器。
【請求項2】
前記筒体は、前記フィルターをたるみが生じる状態で装着可能に構成されている請求項1記載のコーヒー抽出器。
【請求項3】
前記フィルターは、布で形成されている請求項1記載のコーヒー抽出器。
【請求項4】
前記筒体は、前記先端部を上向きにして前記基端部を平面に載置したとき当該基端部と当該平面とが密着せずに通気可能となる複数の突起部が間隔を空けて当該基端部に設けられている請求項1記載のコーヒー抽出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーヒーを抽出するコーヒー抽出器に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーを抽出するコーヒー抽出器として、紙や布の袋状のフィルターに粉末状のコーヒー豆(以後粉末と表現)を入れて湯を注いで抽出するドリップ式と呼ばれるコーヒー抽出器(下記特許文献1に開示されたコーヒー抽出器)や、サイフォン式と呼ばれるコーヒー抽出器(下記特許文献2に開示されたサイフォン式コーヒーメーカー)が知られている。また、コーヒー抽出用ではないが、コーヒー抽出にも流用出来る茶こし(下記特許文献3に開示された一人用茶こし)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実登第3203459号公報
【文献】実登第3192712号公報
【文献】実登第3056016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の器具には以下の問題点が存在する。具体的には、ドリップ式のコーヒー抽出器に於いては、目の細かなフィルターを使うため、蒸らす時間と濾過する時間を含め、時間のコントロールが出来難かった。またサイフォン式のコーヒー抽出器に於いては、気圧を利用し、強制的に濾過するので、時間のコントロールは可能であるが、網目を通過する微粉末の混入は避けられなかった。
【0005】
前記ドリップ式は、粉末を紙や布などの袋に入れ、上から熱湯をかけて抽出するが、蒸らしと言い、粉末に少量の湯を掛け、水分を浸透させるためしばらく時間を置き、その後に予定された量の湯を注ぎ抽出するのが一般的である。この時、沸騰した湯で抽出すると、味や香りに影響を与えるので、若干、冷めた湯で抽出する方法がとられている。従って、沸騰した湯を適温に冷まし、蒸らす時間を計るなどの煩わしさを要した。
【0006】
さらに、布や紙で濾すのであるから、布や紙の目を通り抜けた微粉末の混入は避けられず、また時間のコントロールも難しかった。また、抽出に時間がかかりすぎると味が変化し、蒸らすための湯は粉末に吸収されてしまうので、カップ一杯の湯では足りなくなるなどの欠点もあった。
【0007】
一方、上記した茶こしは、フィルターが固定された網であり、通常の粉末にされたコーヒーには目が粗すぎるし交換が出来ない。フィルターの目を細かくすることで、コーヒー抽出にも利用出来るが、コーヒー粉末が固定されたフィルターに密着しやすく、水の通り抜けが悪く作業に時間がかかる欠点があった。また、蓋が無く、筒及び器の平均水位以外に熱湯を留まらせることは出来なかった。
【0008】
本発明は、かかる各種の課題を鑑みてなされたものであり、沸騰した湯の冷ましや蒸らし等の煩わしい作業を省きかつ微粉末の混入を防止して高品質のコーヒーを容易に抽出可能なコーヒー抽出器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明に係るコーヒー抽出器は、筒体と、当該筒体の下部側であって先端部よりもやや基端部側の装着位置において当該筒体を閉塞するフィルターとを備えてコーヒーを抽出可能に構成され、前記筒体は、前記装着位置における前記フィルターの着脱が可能に構成されると共に、抽出されたコーヒーを受ける容器の下部の内面に前記先端部を当接させた状態において当該筒体に注いだ水が当該筒体内に滞留するように構成されている。
【0010】
また、本発明に係るコーヒー抽出器は、前記フィルターをたるみが生じる状態で装着可能に前記筒体が構成されている。
【0011】
また、本発明に係るコーヒー抽出器は、前記フィルターが布で形成されている。
【0012】
また、本発明に係るコーヒー抽出器は、前記先端部を上向きにして前記基端部を平面に載置したとき当該基端部と当該平面とが密着せずに通気可能となる複数の突起部が間隔を空けて当該基端部に設けられている
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコーヒー抽出器によれば、フィルターの着脱が可能に構成されると共に、容器の下部の内面に先端部が当接した状態において筒体内に注いだ水が筒体内に滞留可能に構成された筒体を備えたことにより、筒体に装着したフィルター上に挽いたコーヒー豆を投入し、筒体に水を流入させてコーヒー豆に付着した微粉末を洗い流し、次いで容器内にコーヒー抽出器を配置して筒体に湯を注いでコーヒー豆と湯を混合して一定時間経過した後にコーヒー抽出器を持ち上げる簡易な工程で、微粉末の混入を防止して高品質のコーヒーを容易に抽出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)はコーヒー抽出器100および容器6の正面図であり、(b)はコーヒー抽出器100の分解図であり、(c)はコーヒー抽出器100の平面図である。
図2】(a)はコーヒー粉末12を入れた筒体20に冷水9を注いで微粉末を除去している状態を説明する説明図であり、(b)はコーヒー抽出器100を容器6に入れ、熱湯10を注いでいる状態を説明する説明図であり、(c)は注がれた熱湯10とコーヒー粉末12との混合物13が筒体20に溜まっている状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1に示すコーヒー抽出器100は、本発明のコーヒー抽出器の一実施例であって、同図に示す通り、筒体20およびフィルター3を備えて構成されている。
【0016】
筒体20は、上部筒1、上接続部2、下接続部4および下部筒5を備えて構成され、上部筒1と下部筒5とが上接続部2と下接続部4とを介して、筒体20全体における下部側(先端部よりもやや基端部側の位置)において連結(分割)可能となっている。
【0017】
このコーヒー抽出器100では、図2に示すように、上部筒1に粉末を入れ、冷水9を注ぐ。この際に、フィルター3を通り抜ける水量が少なく、水と粉末の混合液の大部分が上部筒1に蓄えられることもあり、溢れる危険を避けるため、上部筒1を十分な高さとするのが好ましい。また、時には二人分以上の粉末を入れる場合もあり、目的に応じた高さとするのが好ましい。
【0018】
フィルター3は、図1(a),(b)に示すように筒体20の接合、連結位置(装着位置)において、上接続部2と下接続部4とによって挟み込まれることによって筒体20を閉塞するように装着される。筒体20を、上接続部2を備えた上部筒1と下接続部4を備えた下部筒5としたことで、破損の際のフィルター3の交換や、好みに応じてフィルター3の種類の変更を容易に行うことが可能となっている。
【0019】
図1,2に示すように、フィルター3は、装着状態においてたるみが生じる布であり、下部筒5は湾曲したフィルター3の底が下部筒5の最下部より下とならない高さを持つのが好ましい。
【0020】
たるみの無いフィルターあるいは固形のフィルター(金網など)の場合は、目が細かいと注がれる水の通り抜けが極端に悪くなる。それは面積が小さい事と、コーヒー粉末12がフィルターに密着して目を塞ぐためと考えられる。
【0021】
たるみのあるフィルター3は、図2に示すように冷水9を注ぐと水の力で粉末12を攪拌しフィルター3を揺らす効果があるので、コーヒー粉末12に含まれる微粉末がフィルター3に密着しにくいため、フィルター3の目を通り抜ける微粉末を含む冷水14は流出し易い。
【0022】
さらに、冷水9を蓄えた筒体20ごと上下左右に振ることが出来るので、フィルター3も筒体20の動きに合わせて動き、コーヒー粉末12の密着を防ぎ、微粉末を含んだ冷水14を通過させやすい。
【0023】
コーヒーの抽出は沸騰した湯10で行う。
【0024】
図1(a)に示す容器6は、抽出したコーヒーを受ける容器の一例であるが、下部筒5の直径D1と容器6の底の内径D2とがほぼ同じであることが好ましく、このような容器6に筒体20の下部筒5を入れると下部筒5の最下部(先端部)が閉塞される。このため、筒体20にコーヒー粉末12を入れ、適量の熱湯10を掛けると、筒体20内にコーヒー粉末12と熱湯10との混合物13が蓄えられるので、この混合物13を攪拌棒11などを使用してコーヒーの成分を抽出する。
【0025】
好みの時間で筒体20を器6から持ち上げると、抽出されたコーヒーは、素早く濾過され容器6に残る。
【0026】
このコーヒー抽出器100を用いたコーヒーの抽出方法をより詳細に説明する。図2(a)に示すように、コーヒー粉末12を筒体20の上部筒1に入れ、冷水9を数回に分けて十分に注ぐ。この際に、フィルター3の目を通るコーヒー粉末12の微粉末が流出する(水篩)。
【0027】
例えば、コーヒー豆10gのコーヒー粉末12中の微粉末を2gとし、1回の水篩で0.2g(10%)残ったとする(90%流出)。そうすると、2回目は0.2g×0.1 =0. 2gの残、3回目は0.02g×0.1=0.002gの残となる。従って 、3回の水篩でほぼ100%の微粉末を流出させることができる。この時、コーヒー粉末12の量が多い程、冷水9が微粉末を取り込みながらフィルター3を通過するのに時間がかかる。従って、筒体20を振るなどの作業も必要であるが、フィルター3がたるみのある布のため、筒体20の動きに連動し、コーヒー粉末12の密着を防ぐため、短時間で、フィルター3の目を通過可能な微粉末の殆どを流出させる事が出来る。
【0028】
以上は冷水9での処理であるから、食感を左右するほどのものではない。
【0029】
但し、フィルター3の種類にもよるが、全体から見れば微量ではあるものの、微粉末の流失と、冷水9に浸したために味や香りの成分も僅かではあるが流出するため、それらを見越して、やや多くの粉末を使用するのが好ましい。
【0030】
冷水9に浸した状態はドリップ式の(蒸らし)にあたる。
【0031】
次に上記、水分を含んだコーヒー粉末12の入っている筒体20を容器6に入れ、熱湯10を筒体20の中に注ぎ、コーヒーの成分を抽出する。この時、たとえ100°Cの熱湯を注いでも、コーヒー粉末12は冷水9を含んでいるので100°C以下の適温での抽出となる。
【0032】
容器6に筒体20を入れると、筒体20の最下部が閉塞される。ここに熱湯10を注入すると、コーヒー粉末12と混合した状態で筒体20内に留まるため、これを攪拌棒11で攪拌し、コーヒー粉末12の成分を抽出する事が出来る。
【0033】
次いで、好みの時間で筒体20を持ち上げると、素早く濾過され、透明度の高いコーヒーが出来あがる。
【0034】
実測値として、コーヒー1人前分13gのコーヒー粉末12を筒に入れ冷水9を注ぐと、水を含んで実測値が23gとなり、水分は10g、水温は22°Cであった。170gの熱湯10(96°C)で抽出すると、出来上がりは81°Cであり、筒体20や容器6に奪われた熱量を考えると適温での抽出であったと言える。
【0035】
従って、コーヒー粉末12中の微粉末を水篩し、沸騰した熱湯10を使用し、抽出する時間をコントロールすることで、透明度の高い美味しいコーヒーが出来る。
【0036】
本発明のコーヒー抽出器100の抽出対象物はコーヒーに限定されず、緑茶、紅茶、ウーロン茶等の各種の抽出対象物にも使用でき、透明度の高い飲み物を提供出来る。
【0037】
なお、上記コーヒー抽出器100は本発明の一実施例であって、適宜変更することができる。例えば、上記コーヒー抽出器100では、装着状態でたるみが生じるフィルター3を採用しているが、装着状態でたるみが生じないフィルターを採用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 上部筒
2 上接続部
3 フィルター
4 下接続部
5 下部筒
6 容器
7 下部筒径
8 器底径
9 冷水
10 熱湯
11 攪拌棒
12 コーヒー粉末
13 混合物
14 流出水
20 筒体
100 コーヒー抽出器
【要約】
【課題】沸騰した湯の冷ましや蒸らしの等の煩わしい作業を省きかつ微粉末の混入を防止して高品質のコーヒーを容易に抽出可能なコーヒー抽出器を提供する。
【解決手段】筒体20と、筒体の下部側であって先端部よりもやや上部側の装着位置において筒体を閉塞するフィルターとを備えてコーヒーを抽出可能に構成され、筒体20は、装着位置におけるフィルター3の着脱が可能に構成されると共に、抽出されたコーヒーを受ける容器6の下部の内面に先端部が当接した状態において筒体20に注いだ水が滞留するように構成されている。
【選択図】図1
図1
図2