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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/08 20060101AFI20240809BHJP
   H01G 9/012 20060101ALI20240809BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20240809BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01G9/08 C
H01G9/012 301
H01G9/012 303
H01G9/08 E
H01G9/00 290L
H01G9/15
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020034472
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021141088
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村中 隆則
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-017686(JP,A)
【文献】特開2005-150128(JP,A)
【文献】特開昭61-110418(JP,A)
【文献】実開昭61-182023(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/08
H01G 9/012
H01G 9/00
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子と電気的に接続されたリード部材と、
前記コンデンサ素子を前記リード部材の封止部とともに封止する外装部材と、
を備え、
前記封止部は、第1部分と第2部分とを有し、
前記外装部材は、
前記コンデンサ素子および前記第1部分を収容し、側部と底部とを有する樹脂ケースと、
前記コンデンサ素子および前記第1部分を覆い、かつ、前記コンデンサ素子と前記樹脂ケースとの隙間を埋めるように配された樹脂充填部と、
を備え、
前記樹脂充填部は、前記第1部分を封止しており、
前記側部は、前記第2部分を封止しており、
前記側部は、当該側部の内面側かつ底部側の一部のみにおいて、厚みが大きい厚肉部を有し、
前記第2部分は、前記厚肉部に埋設されている、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素子は、導出部を有する陽極体と、前記陽極体の少なくとも一部を覆う誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、前記固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極層と、を備え、
前記リード部材は、前記導出部と電気的に接続される陽極側のリード部材と、前記陰極層と電気的に接続される陰極側のリード部材と、を含む、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
陽極側の前記リード部材は、
前記側部の側面に沿って配される側面配置部と、
前記側面配置部に連設され、かつ、前記側部の端面の上に配されるとともに、前記外装部材から露出する端面配置部と、
前記側面配置部と、前記導出部と、を接続する陽極接続部と、
を備え、
前記側面配置部は、少なくとも前記底部側において、前記側部の内面に沿って配される内側面配置部を備え、
前記内側面配置部は、胴部と、前記底部に向かって延びる一対の脚部と、を有し、
前記陽極接続部は、前記胴部における一対の前記脚部の間から前記導出部に向かって配置され、
前記脚部は、前記厚肉部に埋設され、
前記第1部分は、前記胴部および前記陽極接続部を含み、
前記第2部分は、前記脚部を含む、請求項2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記陰極側のリード部材は、
前記側部の側面に沿って配される側面配置部と、
前記側面配置部に連設され、かつ、前記側部の端面の上に配されるとともに、前記外装部材から露出する端面配置部と、
前記側面配置部と、前記陰極層と、を接続する陰極接続部と、
を備え、
前記側面配置部は、少なくとも前記底部側において、前記側部の内面に沿って配される内側面配置部を備え、
前記内側面配置部は、幅広部を有し、
前記幅広部は、前記厚肉部に埋設される両端部と、前記厚肉部に埋設されない中央部と、を有し、
前記第1部分は、前記幅広部の中央部および前記陰極接続部を含み、
前記第2部分は、前記幅広部の両端部を含む、請求項2または3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記リード部材は、板金加工により得られた、請求項1~4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記陽極体は、弁作用金属を含む多孔質体と、前記多孔質体から植立させた陽極ワイヤーと、を備え、
前記陽極ワイヤーは、前記多孔質体に埋設される埋設部と、前記多孔質体から露出する前記導出部と、を有する、請求項2に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記樹脂ケースは、ポリアミド樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記樹脂充填部は、エポキシ樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記コンデンサ素子の表面の少なくとも一部が、防湿材で覆われている、請求項1~8のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
側部と底部とを有する樹脂ケースと、第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分が前記樹脂ケースに収容され、前記第2部分が前記側部に封止されていることにより前記樹脂ケースと一体化されたリード部材と、を得る第1工程と、
コンデンサ素子を、前記リード部材と一体化された前記樹脂ケース内に収容し、前記リード部材と電気的に接続する第2工程と、
前記コンデンサ素子および前記第1部分を覆い、かつ、前記コンデンサ素子と前記樹脂ケースとの隙間を埋めるように樹脂充填部を形成し、前記樹脂充填部で前記第1部分を封止する第3工程と、
を含み、
前記側部は、当該側部の内面側かつ底部側の一部のみにおいて、厚みが大きい厚肉部を有し、
前記第2部分は、前記厚肉部に埋設されている、電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記第1工程では、インサート成形により前記樹脂ケースで前記第2部分を封止する、請求項10に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記第2工程では、前記コンデンサ素子を前記樹脂ケース内に収容する前に、前記リード部材の前記コンデンサ素子との接続箇所に導電性接着剤または半田を塗布する、請求項10または11に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項13】
更に、前記第3工程の前に、前記樹脂ケース内の前記コンデンサ素子に防湿材を吹き付ける工程を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項14】
前記第3工程では、熱硬化性樹脂組成物を、前記コンデンサ素子が収容された前記樹脂ケース内に充填し、加熱し、硬化させて、前記樹脂充填部を形成する、請求項10~13のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項15】
更に、板金加工により前記リード部材を得る工程を含む、請求項10~14のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項16】
前記第1工程では、前記側部の外面または端面の側から外部に導出される部分aを有する前記リード部材を得、
更に、前記部分aを、当該部分aが前記外面または前記端面の上に倒れ込むように折り曲げる工程を含む、請求項10~15のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型等の形状を有する電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子と接続されたリード部材と、を備える。コンデンサ素子の封止は、リード部材が取り付けられたコンデンサ素子を所定の金型内に設置し、金型内に熱硬化性樹脂を充填し、加熱し、硬化させ、コンデンサ素子の周囲に樹脂外装体を形成することにより行われる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-29164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コンデンサ素子を覆う樹脂外装体の厚みばらつきが大きく、樹脂外装体の厚みが小さい部分が存在することで、樹脂外装体の膨れや割れ等に伴い電解コンデンサの封止性が低下することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み、本発明の一側面は、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子と電気的に接続されたリード部材と、前記コンデンサ素子を前記リード部材の封止部とともに封止する外装部材と、を備え、前記封止部は、第1部分と第2部分とを有し、前記外装部材は、前記コンデンサ素子および前記第1部分を収容し、側部と底部とを有する樹脂ケースと、前記コンデンサ素子および前記第1部分を覆い、かつ、前記コンデンサ素子と前記樹脂ケースとの隙間を埋めるように配された樹脂充填部と、を備え、前記樹脂充填部は、前記第1部分を封止しており、前記側部は、前記第2部分を封止している、電解コンデンサに関する。
【0006】
また、本発明の別の側面は、側部と底部とを有する樹脂ケースと、第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分が前記樹脂ケースに収容され、前記第2部分が前記側部に封止されているリード部材と、を得る第1工程と、コンデンサ素子を前記樹脂ケース内に収容し、前記リード部材と電気的に接続する第2工程と、前記コンデンサ素子および前記第1部分を覆い、かつ、前記コンデンサ素子と前記樹脂ケースとの隙間を埋めるように樹脂充填部を形成し、前記樹脂充填部で前記第1部分を封止する第3工程と、を含む、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電解コンデンサの封止性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図2図1のリード部材と一体化した樹脂ケースの平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5図2のV-V断面図である。
図6図2のVI-VI断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの別の例を模式的に示す断面図である。
図8図7のリード部材と一体化した樹脂ケースの平面図である。
図9】リード部材と一体化した樹脂ケースの中間体の一例を示す平面図である。
図10図8のX-X断面図である。
図11図10のXI-XI断面図である。
図12図8のXII-XII断面図である。
図13図8のXIII-XIII断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の第1工程で得られるリード部材と一体化した樹脂ケースの変形例として樹脂ケースの集合体を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[電解コンデンサ]
本発明の実施形態に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子と電気的に接続されたリード部材と、コンデンサ素子をリード部材の封止部とともに封止する外装部材と、を備える。リード部材の封止部は、第1部分と第2部分とを有する。外装部材は、側部および底部を有する樹脂ケース(以下、単に、ケースとも称する。)と、樹脂充填部と、を備える。ケースは、コンデンサ素子および上記の封止部の第1部分を収容している。樹脂充填部は、コンデンサ素子および上記の封止部の第1部分を覆っており、かつ、コンデンサ素子とケースとの隙間を埋めるように配されている。樹脂充填部は、リード部材の封止部の第1部分を封止しており、ケースの側部は、リード部材の封止部の第2部分を封止している。
【0010】
封止部の第1部分と第2部分は、リード部材の厚さ方向で区切られることで区別される。第1部分は、封止部のうち樹脂充填部と接している部分である。第2部分は、封止部のうち、樹脂ケースの側部と接している部分であり、かつ、リード部材の端面を除き、樹脂充填部と全く接していない部分である。
【0011】
ケース側部が第2部分を封止しているとは、ケースがリード部材と一体成形されることで第2部分がケース側部に埋設されていることを意味する。第2部分がケース側部に埋設されているとは、第2部分をケース側部の内面および外面の方向から見た場合に、第2部分が側部で覆われていることを意味する。第2部分がケース側部に埋設されることにより、リード部材の封止部がケースと一体化している。なお、第2部分を側部の端面の方向から見た場合に、第2部分はケースで覆われていてもよく、覆われていなくてもよい。
【0012】
ケース内にコンデンサ素子を収容して、外装部材の一部をケースで構成することにより、コンデンサ素子を覆う外装部材の厚みの製造バラツキが少なくなるため、外装部材の厚みに対する信頼性が向上し、電解コンデンサの封止性が高められる。第2部分がケース側部に埋設されることにより、リード部材はケースに強固に固定され、ケース内へのコンデンサ素子の収容時に、コンデンサ素子の所定箇所とリード部材を、銀接着剤等を用いて接着し、確実に接続することができる。
【0013】
リード部材の封止部は、更に、ケース底部に埋設される第3部分を有してもよい。ケース底部で第3部分を封止してもよい。ただし、この場合、電解コンデンサの厚みが大きくなり、電解コンデンサを低背化(薄型化)しにくいことがある。
【0014】
樹脂充填部の外表面(電解コンデンサの底部)側にリード部材の回路基板への実装面が配され、樹脂充填部の外表面と反対側のケース底部の外表面に型番等が刻印されることが好ましい。ケース底部の外表面は、樹脂充填部の外表面よりも凹凸が小さく、刻印を安定して行うことができる。
【0015】
リード部材の封止部は、第1部分および第2部分のみを有することが好ましい。すなわち、リード部材はケース側部のみに埋設されることが好ましい。この場合、リード部材を埋設可能なケースの厚みを確保しつつ、電解コンデンサの低背化(薄型化)を図り易い。また、リード部材がケース側部のみに埋設されることで、凹凸の小さい外表面を有するケース底部を得易く、ケース底部の外表面に刻印し易い。
【0016】
コンデンサ素子は、例えば、導出部を有する陽極体と、陽極体の少なくとも一部を覆う誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極層と、を備える。なお、電解コンデンサは、1つのコンデンサ素子を備えてもよく、板状または箔状のコンデンサ素子の複数枚を積み重ねた素子積層体を備えてもよい。
【0017】
電解コンデンサは、例えば、リード部材として、コンデンサ素子の陽極体の導出部と電気的に接続される陽極側のリード部材と、コンデンサ素子の陰極層と電気的に接続される陰極側のリード部材と、を備える。
【0018】
陽極側のリード部材は、導電性接着剤または半田を用いて陽極体の導出部と接合してもよく、抵抗溶接またはレーザー溶接により陽極体の導出部と接合してもよい。陰極側のリード部材は、例えば、導電性接着剤を用いて陰極層と接合される。導電性接着剤は、例えば、熱硬化性樹脂と、炭素粒子または金属粒子と、を含む。金属粒子には、例えば、銀粒子が用いられる。
【0019】
陽極体は、例えば、弁作用金属を含む多孔質体と、多孔質体から植立させた陽極ワイヤーと、を備える。陽極ワイヤーは、例えば、多孔質体に埋設される埋設部と、多孔質体から露出する露出部とを有し、当該露出部により上記の導出部が形成される。より具体的には、多孔質体の上には、誘電体層、固体電解質層、および陰極層がこの順に配されており、陽極ワイヤーの露出部(導出部)は、多孔質体、誘電体層、固体電解質層および陰極層で覆われず、外部に露出している。
【0020】
電解コンデンサの一例として、ケース内に1つのコンデンサ素子が収容され、陰極側のリード部材のみがケースの底部側まで延長して配置されてもよい。この場合、低背化(薄型化)の点で有利である。また、電解コンデンサの他の例として、ケース内に素子積層体が収容され、陽極側のリード部材および陰極側のリード部材の両方がケースの底部側まで延長して配置されてもよい。
【0021】
(リード部材)
リード部材は、外装部材で覆われる封止部と、外装部材からの露出部と、を有する。封止部は、ケース内に収容されるとともに樹脂充填部で覆われる第1部分と、ケース側部に埋設される第2部分と、を有する。
【0022】
リード部材は、ケース側部の側面に沿って配される側面配置部(ケース側部の内面に沿って配される内側面配置部およびケース側部の外面に沿って配される外側面配置部の少なくとも一方)を備えることが好ましく、内側面配置部を備えることがより好ましい。この場合、リード部材をケース側部に埋設し易い。また、ケース内にコンデンサ素子を収容するスペースを確保し易い。第2部分は、側面配置部の少なくとも一部を含むことが好ましく、内側面配置部の少なくとも一部を含むことがより好ましい。側面配置部(内側面配置部)の全体がケース側部に埋設されていてもよく、側面配置部(内側面配置部)の一部がケース側部に埋設されていてもよい。
【0023】
リード部材は、例えば、側面配置部と、側面配置部に連設され、かつ、側部の端面の上に配されるとともに、外装部材から露出する端面配置部と、側面配置部と陽極体の導出部または陰極層とを接続する接続部と、を備え、第2部分は側面配置部を含む。この場合、側面配置部は、少なくともケース底部側において内側面配置部を備え、第2部分は内側面配置部の少なくとも一部を含んでもよい。側面配置部全体が内側面配置部で構成されていてもよい。接続部は内側面配置部に連設されていてもよい。また、側面配置部は、ケース底部側で内側面配置部およびケース開口側で外側面配置部を備え、内側面配置部と外側面配置部とを繋ぐ連結部を有してもよい。外側面配置部は、外装部材から露出していてもよい。ケース側部は、連結部を通す貫通穴を有してもよい。このような連結部を更に配置する場合、連結部はケース側部に埋設される第2部分に含めてもよい。
【0024】
上記の接続部は、例えば、ケース底部の内面に沿って配される内底面配置部を含んでもよい。第3部分は、内底面配置部の一部を含んでもよい。
【0025】
リード部材には、例えば、リードフレームが用いられる。リード部材は、例えば、金属(合金)シートを用いて板金加工により作製される。リード部材の素材には、例えば、銅または銅合金が用いられる。電解コンデンサの小型化および低背化の観点から、金属(合金)シートの厚みは、25μm以上、200μm以下が好ましい。
【0026】
(樹脂ケース)
ケース側部は厚みが大きい厚肉部を有し、第2部分は厚肉部に埋設されていることが好ましい。厚肉部は、ケース側部の外面側で厚みが大きくなっていてもよい。厚肉部は、ケース側部の内面側で厚みが大きくなっていることが好ましい。この場合、リード部材の内側面配置部を厚肉部に埋設し易く、電解コンデンサの小型化に有利である。厚肉部は、ケース側部の内面側かつ底部側で厚みが大きくなっていることがより好ましい。
【0027】
また、互いに対向する一対のケース側部が、それぞれ、当該一対のケース側部の内面側で厚みが大きくなっている厚肉部を有することが好ましく、当該一対のケース側部の内面側かつ底部側で厚みが大きくなっている厚肉部(例えば、図2の厚肉部133,136および図8図9)の厚肉部433,436)を有することがより好ましい。また、ケース側部は、その幅方向の両端部で厚みが大きくなっている厚肉部(例えば、図2の厚肉部136および図8図9)の厚肉部436)を有することがより好ましい。この場合、厚肉部は、ケース内の所定位置にコンデンサ素子を設置する際のガイドとしての役割も果たすことができる。厚肉部により、ケースに取り付けられたリード部材とコンデンサ素子とが確実に接続されるように、コンデンサ素子を精度良く配置することができる。
【0028】
樹脂ケースは、例えば熱可塑性樹脂を含んでもよく、耐湿性の観点からポリアミド樹脂(PA)を含んでもよい。また、熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を用いてもよい。また、樹脂ケースは、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含んでもよい。
【0029】
(その他)
樹脂充填部は、熱硬化性樹脂組成物(例えばエポキシ樹脂組成物)の硬化物を含んでもよい。コンデンサ素子の水分との接触抑制の観点から、コンデンサ素子の表面の少なくとも一部が、防湿材で覆われていることが好ましい。防湿材には、例えば、シリコーン樹脂、フッ素系コート材などが用いられる。
【0030】
以下、コンデンサ素子の各構成要素について詳述する。
(陽極体)
陽極体は、例えば、弁作用金属を含む多孔質焼結体と、多孔質焼結体から植立させた陽極ワイヤーと、を備える。陽極ワイヤーは、多孔質焼結体に埋設される第1部分と、多孔質焼結体から露出する第2部分と、を有する。陽極ワイヤーの第2部分は、導出部としてリード部材との接続に利用される。陽極ワイヤーは、弁作用金属を含んでいてもよい。
【0031】
また、陽極体には、弁作用金属を含む箔(金属箔)を用いてもよい。箔は、誘電体層、固体電解質層および陰極層で覆われない露出部を有し、箔の露出部は、導出部としてリード部材との接続に利用される。
【0032】
弁作用金属としては、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)等が挙げられる。弁作用金属は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。多孔質焼結体または箔は、弁作用金属を、弁作用金属を含む合金または弁作用金属を含む化合物等の形態で含んでいてもよい。箔の厚みは、例えば、15μm以上、300μm以下である。多孔質焼結体の厚みは、例えば、15μm以上、5mm以下である。
【0033】
(誘電体層)
誘電体層は、例えば、陽極体に化成処理を施し、陽極体の表面を陽極酸化することにより形成される。誘電体層は、弁作用金属の酸化物を含み得る。例えば、弁作用金属としてタンタルを用いる場合、誘電体層はTaを含む。また、弁作用金属としてアルミニウムを用いる場合、誘電体層はAlを含む。なお、誘電体層は、これに限定されず、誘電体として機能するものであればよい。
【0034】
(固体電解質層)
固体電解質層は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。導電性高分子として、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、それらの誘導体等を用いることができる。導電性高分子を含む固体電解質層は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を誘電体層に塗布することにより、形成することができる。
【0035】
(陰極層)
陰極層は、例えば、カーボン層と金属ペースト層とを備える。カーボン層は、黒鉛等の導電性炭素材料を含む。カーボン層は、導電性を有していればよく、例えば、黒鉛等の導電性炭素材料を用いて形成される。金属ペースト層は、例えば、銀粒子等の金属粒子とバインダ樹脂とを含む組成物を用いて形成される。陰極層は、これに限定されず、集電機能を有するものであればよい。
【0036】
以下、本発明の実施形態に係る電解コンデンサの一例を、図1図6を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの一例を模式的に示す断面図である。図2は、図1のリード部材と一体化した樹脂ケースの平面図である。図3は、図2のIII-III断面図である。図4は、図3のIV-IV断面図である。図5は、図2のV-V断面図である。図6は、図2のVI-VI断面図である。
【0037】
電解コンデンサ100は、コンデンサ素子110と、コンデンサ素子110と電気的に接続されたリード部材200,300と、コンデンサ素子110を封止する外装部材120と、を備える。外装部材120は、側部131(131a~131d)および底部132を有する樹脂ケース130と、コンデンサ素子110と樹脂ケース130との隙間を埋めるように配された樹脂充填部140と、を備える。樹脂ケース130は、コンデンサ素子110を収容している。樹脂充填部140は、コンデンサ素子110を覆っている。
【0038】
コンデンサ素子110は、陽極体111と、陽極体111の少なくとも一部を覆う誘電体層112と、誘電体層112の少なくとも一部を覆う固体電解質層113と、固体電解質層113の少なくとも一部を覆う陰極層114と、を備える。
【0039】
陽極体111は、Ta等の弁作用金属を含む多孔質焼結体115と、多孔質焼結体115から植立させた陽極ワイヤー116と、を備える。陽極ワイヤー116は、多孔質焼結体115に埋設される埋設部116aと、多孔質焼結体115から露出する導出部116bと、を有する。導出部116bは、陽極側のリード部材200と電気的に接続されている。
【0040】
陰極層114は、カーボン層114aと金属ペースト層114bとを備える。金属ペースト層114bは、例えば、銀ペースト層である。陰極層114(金属ペースト層114b)は、陰極側のリード部材300と電気的に接続されている。誘電体層112は、例えば、Ta等の弁作用金属の酸化物を含む。固体電解質層113は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。
【0041】
外装部材120は、ほぼ直方体の外形を有しており、電解コンデンサ100もほぼ直方体の外形を有している。外装部材120の6つの主面のうちの5つは、樹脂ケース130の4つの側部131a~131dの外面および底部132の外面により構成され、残りの1つは、樹脂ケース130の開口において露出する樹脂充填部140の外面により構成される。
【0042】
陽極側のリード部材200は、側部131aの内面に沿って配される内側面配置部210と、側部131aの端面の上に配される端面配置部220と、陽極接続部230と、を備える。
【0043】
内側面配置部210は、胴部211と、底部132に向かって延びる一対の脚部212a,212bと、を有する。端面配置部220は、胴部211に連設され、胴部211との境界部から側部131aの端面の上に倒れ込み外側(樹脂ケース130の開口と反対側)へ折れ曲がるように配されている。端面配置部220は、外装部材120から露出しており、実装面220Sを有する。陽極接続部230は、胴部211における一対の脚部212a,212bの間から導出部116bに向かって配されている。陽極接続部230は、導電性接着剤等により形成される接着層231を介して導出部116bに接続されている。
【0044】
外装部材120は、リード部材200の封止部を封止している。リード部材200の封止部は、リード部材200のうち端面配置部220以外の部分を含む。リード部材200の封止部は、第1部分と第2部分とを有する。樹脂ケース130は、リード部材200の封止部の第1部分を収容している。樹脂充填部140は、第1部分を覆い、封止している。リード部材200の第1部分は、胴部211および陽極接続部230を含む。
【0045】
樹脂ケース130の側部131aは、リード部材200の封止部の第2部分を封止している。リード部材200の第2部分は、脚部212a,212bを含む。より具体的には、側部131aは、側部131aの内面側かつ底部側で厚みが大きくなっている厚肉部133を有する。脚部212a,212bは、厚肉部133に埋設されている。より具体的には、樹脂ケース130のリード部材200との一体成形により厚肉部133に脚部212a,212bが埋設されることで、穴部134a,134bが形成され、厚肉部133の穴部134a,134bの内壁が脚部212a,212bに固着している。
【0046】
陰極側のリード部材300は、側部131bの内面に沿って配される内側面配置部310と、側部131bの端面の上に配される端面配置部320と、内底面配置部330(陰極接続部)と、を備える。
【0047】
端面配置部320は、内側面配置部310に連設され、内側面配置部310との境界部から側部131bの端面の上に倒れ込み外側(樹脂ケース130の開口と反対側)へ折れ曲がるように配されている。端面配置部320は、外装部材120から露出しており、実装面320Sを有する。内底面配置部330は、内側面配置部310に連設され、底部132の内面に沿って配されている。内底面配置部330は、導電性接着剤等により形成される接着層331を介して内底面配置部330と対向する陰極層114に接続されている。
【0048】
外装部材120は、リード部材300の封止部を封止している。リード部材300の封止部は、リード部材300のうち端面配置部320以外の部分を含む。リード部材300の封止部は、第1部分と第2部分とを有する。樹脂ケース130は、リード部材300の封止部の第1部分を収容しており、樹脂充填部140は、第1部分を覆い、封止している。リード部材300の第1部分は、内底面配置部330および内側面配置部310(幅広部311の両端部312a,312bを除く。)を含む。
【0049】
樹脂ケース130の側部131bは、リード部材300の封止部の第2部分を封止している。リード部材300の第2部分は、幅広部311の両端部312a,312bを含む。より具体的には、側部131bは、側部131bの内面側かつ底部側で厚みが大きくなっている厚肉部136を有する。内側面配置部310は、幅広部311を有する。幅広部311の幅方向の両端部312a,312bが、厚肉部136に埋設されている。幅広部311の幅方向の中央部313は、厚肉部136からの露出面を有する。より具体的には、樹脂ケース130のリード部材300との一体成形により厚肉部136に幅広部311の幅方向の中央部313が収容されることで、くぼみ部137が形成され、厚肉部136のくぼみ部137の内壁が幅広部311の中央部313に固着している。同様に、厚肉部136に幅広部311の幅方向の両端部312a,312bが埋設されることで、一対の溝部138a,138bが形成され、厚肉部136の溝部138a,138bの内壁が幅広部311の両端部312a,312bに固着している。
【0050】
幅広部311の幅方向の中央部313の厚肉部136からの露出面と、当該露出面に対向する陰極層114とは、導電性接着剤等により形成される接着層を介して接続されていてもよい。リード部材300と陰極層114との電気的接続をより確実に行うことができる。
【0051】
本発明の実施形態に係る電解コンデンサの別の例を、図7図13を参照しながら説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの別の例を模式的に示す断面図である。図8は、図7のリード部材と一体化した樹脂ケースの平面図である。図9は、外側面配置部および端面配置部を形成する前の、リード部材と一体化した樹脂ケースの中間体の一例を示す平面図である。図10は、図8のX-X断面図である。図11は、図10のXI-XI断面図である。図12は、図8のXII-XII断面図である。図13は、図8のXIII-XIII断面図である。なお、図1と同じ符号を付けた部分については、図1と同じ構成であり、説明を省略する。
【0052】
電解コンデンサ400は、コンデンサ素子110と、コンデンサ素子110と電気的に接続されたリード部材500,600と、コンデンサ素子110を封止する外装部材420と、を備える。外装部材420は、側部431(431a~431d)および底部432を有する樹脂ケース430と、コンデンサ素子110と樹脂ケース430との隙間を埋めるように配された樹脂充填部440と、を備える。樹脂ケース430は、コンデンサ素子110を収容している。樹脂充填部440は、コンデンサ素子110を覆っている。
【0053】
外装部材420は、ほぼ直方体の外形を有しており、電解コンデンサ400もほぼ直方体の外形を有している。外装部材420の6つの主面のうちの5つは、樹脂ケース430の4つの側部431a~431dの外面および底部432の外面により構成され、残りの1つは、樹脂ケース430の開口において露出する樹脂充填部440の外面により構成される。
【0054】
陽極側のリード部材500は、側部431aの側面に沿って配される側面配置部510と、側部431aの端面の上に配される端面配置部520と、陽極接続部530と、を備える。側面配置部510は、内側面配置部510aと、外側面配置部510bと、内側面配置部510aと外側面配置部510bとを繋ぐ連結部510cと、を備える。
【0055】
内側面配置部510aは、樹脂ケース430の底部432側において側部431aの内面に沿って配されており、胴部511と、底部432に向かって延びる一対の脚部512a,512bとを有する。外側面配置部510bは、樹脂ケース430の開口側において側部431aの外面に沿って配されている。外側面配置部510bは、外装部材420から露出している。連結部510cは、内側面配置部510aの胴部511と、外側面配置部510bとを繋いでいる。
【0056】
端面配置部520は、外側面配置部510bに連設され、外側面配置部510bとの境界部から側部431aの端面の上に倒れ込み内側(樹脂ケース430の開口側)へ折れ曲がるように配されている。端面配置部520は、外装部材420から露出しており、実装面520Sを有する。陽極接続部530は、胴部511における一対の脚部512a,512bの間から導出部116bに向かって配されている。陽極接続部530は、導電性接着剤等により形成される接着層531を介して導出部116bに接続されている。
【0057】
外装部材420は、リード部材500の封止部を封止している。リード部材500の封止部は、リード部材500のうち端面配置部520および外側面配置部510b以外の部分を含む。リード部材500の封止部は、第1部分と第2部分とを有する。樹脂ケース430は、リード部材500の封止部の第1部分を収容しており、樹脂充填部440は、当該第1部分を覆っている。リード部材500の第1部分は、胴部511および陽極接続部530を含む。
【0058】
樹脂ケース430の側部431aは、リード部材500の封止部の第2部分を封止している。リード部材500の第2部分は、脚部512a,512bを含む。より具体的には、側部431aは、側部431aの内面側かつ底部側で厚みが大きくなっている厚肉部433を有する。脚部512a,512b(第2部分)は、厚肉部433に埋設されている。より具体的には、樹脂ケース430のリード部材500との一体成形により厚肉部433に脚部512a,512bが埋設されることで、穴部434a,434bが形成され、厚肉部433の穴部434a,434bの内壁が脚部512a,512bに固着している。これにより、樹脂ケース430とリード部材500とが一体化している。
また、側部431aは、連結部510cが貫通する穴部435を有する。連結部510cは、側部431aに埋設される第2部分に更に含まれる。
【0059】
陰極側のリード部材600は、側部431bの側面に沿って配される側面配置部610と、側部431bの端面の上に配される端面配置部620と、内底面配置部630(陰極接続部)と、を備える。側面配置部610は、内側面配置部610aと、外側面配置部610bと、内側面配置部610aと外側面配置部610bとを繋ぐ連結部610cと、を備える。
【0060】
内側面配置部610aは、底部432側において側部431bの内面に沿って配されている。外側面配置部610bは、底部432と反対側(樹脂ケース430の開口側)において側部431bの外面に沿って配されている。外側面配置部610bは、外装部材420から露出している。
【0061】
端面配置部620は、外側面配置部610bに連設され、外側面配置部610bとの境界部から側部431bの端面の上に倒れ込み内側(樹脂ケース430の開口側)へ折れ曲がるように配されている。端面配置部620は、外装部材420から露出しており、実装面620Sを有する。内底面配置部630は、内側面配置部610aに連設され、底部432の内面に沿って配されている。内底面配置部630は、導電性接着剤等により形成される接着層631を介して内底面配置部630と対向する陰極層114に接続されている。
【0062】
外装部材420は、リード部材600の封止部を封止している。リード部材600の封止部は、リード部材600のうち端面配置部620および外側面配置部610b以外の部分を含む。リード部材600の封止部は、第1部分と第2部分とを有する。樹脂ケース430は、リード部材600の封止部の第1部分を収容しており、樹脂充填部440は、当該第1部分を覆っている。リード部材600の第1部分は、内底面配置部630および内側面配置部610a(幅広部611の両端部612a,612bを除く。)を含む。
【0063】
樹脂ケース430の側部431bは、リード部材600の封止部の第2部分を封止している。リード部材600の第2部分は、幅広部611の両端部612a,612bを含む。より具体的には、側部431bは、側部431bの内面側かつ底部側で厚みが大きくなっている厚肉部436を有する。内側面配置部610aは、幅広部611を有する。幅広部611の幅方向の両端部612a,612bは、厚肉部436に埋設されている。幅広部611の幅方向の中央部613は、厚肉部436からの露出面を有する。より具体的には、樹脂ケース430のリード部材600との一体成形により厚肉部436に幅広部611の幅方向の中央部613が収容されることで、くぼみ部437が形成され、厚肉部436のくぼみ部437の内壁が幅広部611の中央部613に固着している。同様に、厚肉部436に幅広部611の幅方向の両端部612a,612bが埋設されることで、一対の溝部438a,438bが形成され、厚肉部436の溝部438a,438bの内壁が幅広部611の両端部612a,612bに固着している。
また、側部431bは、連結部610cが貫通する穴部439を有する。連結部610cは、側部431bに埋設される第2部分に更に含まれる。
【0064】
幅広部611の幅方向の中央部613の厚肉部436からの露出面と、当該露出面に対向する陰極層114とは、導電性接着剤により形成される接着層を介して接続されていてもよい。陰極リード部材600と陰極層114との電気的接続をより確実に行うことができる。
【0065】
[電解コンデンサの製造方法]
本発明の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法は、側部と底部とを有する樹脂ケースと、第1部分と第2部分とを有し、第1部分が樹脂ケースに収容され、第2部分が側部に封止されているリード部材と、を得る第1工程を含む。第2部分はケース側部に埋設され、それによりリード部材と樹脂ケースとが一体化している。
【0066】
また、上記の製造方法は、コンデンサ素子をケース内に収容し、リード部材と電気的に接続する第2工程と、コンデンサ素子および第1部分を覆い、かつ、コンデンサ素子とケースとの隙間を埋めるように樹脂充填部を形成し、前記樹脂充填部で前記第1部分を封止する第3工程と、を含む。
【0067】
(第1工程:樹脂ケースおよびリード部材の作製工程)
樹脂ケースは、射出成形、インサート成形、圧縮成形等の成形技術を用いて形成することができる。第1工程では、インサート成形によりケースを第2部分と一体成形し、第2部分をケースで封止することが好ましい。インサート成形により、第2部分が埋設された側部と、底部と、を有するケースを、容易に作製することができる。
【0068】
インサート成形では、例えば、予めリード部材が設置された金型内に、熱硬化性樹脂組成物を充填し、加熱により硬化させてケースを形成することができる。また、予めリード部材が設置された金型内に、熱可塑性樹脂(組成物)を加熱により軟化させて充填し、冷却により硬化させてケースを形成してもよい。
【0069】
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒等を含んでもよい。硬化剤、重合開始剤、触媒等は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。フィラーには、粒子状または繊維状の絶縁性材料が用いられる。
【0070】
熱硬化性樹脂としては、例えば、熱の作用により硬化または重合する化合物(例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等)が使用される。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ジアリルフタレート、不飽和ポリエステル等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、上記で例示するものを用いることができる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に加え、フィラー等を含んでもよい。
【0071】
リード部材は、金属(合金)シートを用いて板金加工により作製してもよい。例えば、板金加工により、図1のリード部材200,300や図8のリード部材500,600(図9のリード部材500a,600a)を作製してもよい。
【0072】
第1工程では、ケース側部の外面または端面の側から外部に導出される部分aを有するリード部材を得てもよい。この場合、上記の製造方法は、更に、部分aがケース側部の外面または端面の上に倒れ込むように部分aを折り曲げる工程を含んでもよい。このように、ケース側部の外面や端面を利用してリード部材を折り曲げてもよい。リード部材がケースと一体化していることで、部分aの折り曲げを安定して行うことができる。
【0073】
図1の電解コンデンサの場合、第1工程では、ケース側部131a,131bの端面側から外部に導出される部分240,340(部分a1)を有するリード部材を得てもよい。その後、部分240,340を、ケース側部131a,131bの端面の上に倒れ込むように外側(ケース130の開口と反対側、すなわち、図1中の破線矢印の方向)に折り曲げて、端面配置部220,320を形成してもよい。部分240,340の折り曲げ工程は、ケース内へのコンデンサ素子の収容前に行うことが好ましい。
【0074】
図7の電解コンデンサの場合、第1工程では、図9に示す、リード部材500a,600aを得てもよい。リード部材500a,600aは、ケース側部431a,431bの外面から外部に導出される部分540,640(部分a1)を有する。リード部材500a,600aにおける部分540,640以外の部分の構造は、リード部材500,600における外側面配置部510b,610bおよび端面配置部520,620以外の部分の構造と同じである。
【0075】
第1工程でリード部材500a,600aを得る場合、部分540,640を、ケース側部431a,431bの外面の上に倒れ込むようにケース430の開口側へ折り曲げてもよい。これにより、外側面配置部510b,610bと、図7中のケース側部431a,431bの端面側から外部に導出される部分540a,640a(部分a1)とを、形成してもよい。更に、部分540a,640aを、ケース側部431a,431bの端面の上に倒れ込むように内側(ケース430の開口側、すなわち、図7中の破線矢印の方向)に折り曲げて、端面配置部520,620を形成してもよい。部分540,640の折り曲げおよび部分540a,640aの折り曲げの工程は、ケース内へのコンデンサ素子の収容および樹脂充填部の形成の後に行うことが好ましい。
【0076】
(第2工程:樹脂ケース内へのコンデンサ素子の収容工程)
第2工程では、コンデンサ素子をケース内に収容する前に、予め、リード部材のコンデンサ素子との接続箇所に導電性接着剤または半田を塗布しておくことが好ましい。この場合、第2工程で、ケース内へのコンデンサ素子の収容と、コンデンサ素子とリード部材との接続とを、同時に行うことができる。
【0077】
例えば、図2に示すような、リード部材200、300と一体化したケース130の場合、予め、陽極接続部230および内底面配置部330の表面に導電性接着剤等を塗布しておくことが好ましい。ケース130内へのコンデンサ素子110の収容と、導出部116bと陽極接続部230との接着層231を介した接続および陰極層114と内底面配置部330との接着層331を介した接続とを、同時に行うことができる。
【0078】
例えば、図9に示すような、リード部材500a、600aと一体化したケース430の場合、予め、陽極接続部530および内底面配置部630の表面に導電性接着剤等を塗布しておくことが好ましい。ケース430内へのコンデンサ素子110の収容と、導出部116bと陽極接続部530との接着層531を介した接続および陰極層114と内底面配置部630との接着層631を介した接続とを、同時に行うことができる。
【0079】
また、ケース側部は、当該側部の内面側かつ底部側で厚みが大きくなっている厚肉部(例えば図2の厚肉部133,136や図9の厚肉部433,436)を有することが好ましい。この場合、第2工程でコンデンサ素子をケースの所定位置に設置し易い。
【0080】
(第3工程:樹脂充填部の形成工程)
樹脂充填部は、射出成形等の成形技術を用いて形成することができる。第3工程では、リード部材が接続されたコンデンサ素子が収容された樹脂ケース内に熱硬化性樹脂組成物を充填し、加熱し、硬化させて、樹脂充填部を形成してもよい。熱硬化性樹脂組成物としては、上記で例示するものを用いることができる。熱硬化性樹脂には、例えば、エポキシ樹脂が用いられる。また、第3工程では、樹脂ケース内に熱可塑性樹脂(組成物)を充填して、樹脂充填部を形成してもよい。
【0081】
電解コンデンサの封止性の向上の観点から、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂(組成物)の充填を複数回に分けて行い、1回の充填毎に真空脱泡(ケース内に充填された樹脂組成物内の気泡の除去)を行うことが好ましい。
【0082】
上記の製造方法は、更に、第3工程の前に、樹脂ケース内に収容されたコンデンサ素子に防湿材をスプレー等により吹き付ける工程を含んでもよい。防湿材は樹脂ケース内に吹き付けられ、樹脂ケース外への防湿材の飛散が抑制され、樹脂ケース外に配されるリード部材の露出部への防湿材の付着が抑制される。よって、リード部材の露出部をマスクする工程を別途設ける必要がなく、工程の複雑化が回避される。
【0083】
(樹脂ケースの集合体)
第1工程では、図14に示す樹脂ケースの集合体を得てもよい。図14は、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の第1工程で得られるリード部材と一体化した樹脂ケースの変形例として樹脂ケースの集合体を模式的に示す平面図である。
【0084】
図14に示すように、樹脂ケースの集合体700は、複数の樹脂ケース710と、複数の樹脂ケース710と一体化している一対のリード接続体720a,720bと、を備える。一対のリード接続体720a,720bの一方は、陽極側のリード接続体であり、一対のリード接続体720a,720bの他方は、陰極側のリード接続体である。
【0085】
リード接続体720a,720bは、複数の第1領域721a,721bと、複数の第1領域721a,721bを接続する第2領域722a,722bと、を有する。第1領域721a,721bは、上記のリード部材に対応する領域を含み、樹脂ケース710と一体化している。集合体700のうち樹脂ケース710と第1領域721a,721bを合わせた部分は、例えば、図2のリード部材200,300と一体化している樹脂ケース130と同様の構造を有してもよい。または、図9のリード部材500a,600aと一体化している樹脂ケース430と同様の構造を有してもよい。
【0086】
複数の第1領域721a,721bにおけるリード部材の封止部の第2部分の少なくとも一部に対応する領域が、それぞれ複数の樹脂ケース710の側部に埋設されている。複数の第1領域721a,721bにおけるリード部材の封止部の第1部分に対応する領域が、それぞれ複数の樹脂ケース710内に収容されている。リード接続体720a,720bは、板金加工により作製してもよい。
【0087】
第1工程で上記集合体700を得る場合、第2工程では、上記集合体700の複数の樹脂ケース710にそれぞれ複数のコンデンサ素子(例えば、図1のコンデンサ素子110)を収容し、複数のコンデンサ素子と、複数の第1領域721a,721bとを、それぞれ電気的に接続する。
【0088】
複数の第1領域721a,721bは、それぞれ、図2の陽極接続部230および内底面配置部330に対応する接続領域を有してもよい。または、図9の陽極接続部530および内底面配置部630に対応する接続領域を有してもよい。上記の接続領域に導電性接着剤または半田を塗布し、複数のコンデンサ素子と複数の第1領域721a,721bとの電気的接続を、効率的に行うことができる。
【0089】
次に、第3工程では、複数の樹脂ケース710内にそれぞれ複数の樹脂充填部を形成し、その後、複数の第1領域721a,721bと、第2領域722a,722bとを切り離し、複数の電解コンデンサを得る。図14の樹脂ケースの集合体700を用いることにより、複数の電解コンデンサを効率的に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る電解コンデンサは、高い信頼性が求められる様々な用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
100,400:電解コンデンサ、110:コンデンサ素子、111:陽極体、112:誘電体層、113:固体電解質層、114:陰極層、115:多孔質焼結体、116:陽極ワイヤー、116a:埋設部、116b:導出部、120,420:外装部材、130,430:樹脂ケース、131a~13d,431a~43d:側部、132,432:底部、133,136,433,436:厚肉部、134a,134b,434a,434b:穴部、137,437:くぼみ部、138a,138b,438a,438b:溝部、435,439:穴部、140,440:樹脂充填部、
200,300:リード部材、210,310:内側面配置部、211:胴部、212a,212b:脚部、220,320:端面配置部、220S,320S:実装面、230:陽極接続部、231:接着層、240,340:リード部材のケース側部の端面側から導出される部分、311:幅広部、312a,312b:幅広部の幅方向の両端部、313:幅広部の幅方向の中央部、330:内底面配置部、331:接着層、
500,600,500a,600a:リード部材、510,610:側面配置部、510a,610a:内側面配置部、510b,610b:外側面配置部、510c,610c:連結部、511:胴部、512a,512b:脚部、520,620:端面配置部、520S,620S:実装面、530:陽極接続部、531:接着層、540,640:リード部材のケース側部の外面側から導出される部分、540a,640a:リード部材のケース側部の端面側から導出される部分、611:幅広部、612a,612b:幅広部の幅方向の両端部、613:幅広部の幅方向の中央部、630:内底面配置部、631:接着層、
700:樹脂ケースの集合体、710:樹脂ケース、720a,720b:リード接続体、721a,721b:第1領域、722a,722b:第2領域
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