(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】半田プリコート基板の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20240809BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20240809BHJP
B23K 3/06 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H05K3/34 505A
H05K3/34 505B
B23K1/00 330E
B23K3/06 W
(21)【出願番号】P 2020153435
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 憲
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 正幸
(72)【発明者】
【氏名】境 忠彦
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-098292(JP,A)
【文献】特開2018-006083(JP,A)
【文献】国際公開第2005/096367(WO,A1)
【文献】特開2008-130587(JP,A)
【文献】実開平01-084470(JP,U)
【文献】特開2003-083866(JP,A)
【文献】特開平07-302972(JP,A)
【文献】特開平01-099287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
B23K 1/00
B23K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に設けられた複数のランドに半田プリコートを形成することで半田プリコート基板を製造する方法であって、
複数の前記ランドに半田ペーストを供給する供給工程と、
複数の前記ランドの温度が、該ランドの周りの前記基板の表面温度よりも早く、前記半田ペーストに含まれる半田粒子の融点に達するように前記基板を加熱する加熱工程と、
溶融した前記半田粒子を冷却して固化することで前記半田プリコートを形成する冷却工程と、
を備え、
前記加熱工程では、前記基板の表面の温度が4℃/秒以上の上昇率で上昇するように前記基板を加熱する、半田プリコート基板の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、前記基板の表面側からよりも、前記基板の裏面側から強く前記基板を加熱する、請求項1に記載の半田プリコート基板の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、前記基板の裏面側からのみ前記基板を加熱する、請求項2に記載の半田プリコート基板の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程では、前記基板の裏面に接触する加熱プレートを用いて前記基板を加熱する、請求項1~3のいずれか1項に記載の半田プリコート基板の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程では、前記基板と前記加熱プレートとの間にシートを挟んだ状態で前記基板を加熱する、請求項4に記載の半田プリコート基板の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程では、前記基板を複数箇所で押さえながら前記基板を加熱する、請求項1~5のいずれか1項に記載の半田プリコート基板の製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程では、前記基板を複数箇所で押さえながら前記基板を冷却す
る、請求項1~6のいずれか1項に記載の半田プリコート基板の製造方法。
【請求項8】
基板の表面に設けられた複数のランドに半田プリコートを形成することで半田プリコート基板を製造する装置であって、
複数の前記ランドに半田ペーストを供給する供給部と、
複数の前記ランドの温度が、該ランドの周りの前記基板の表面温度よりも早く、前記半田ペーストに含まれる半田粒子の融点に達するように前記基板を加熱する加熱部と、
溶融した前記半田粒子を冷却して固化することで前記半田プリコートを形成する冷却部と、
を備え、
前記加熱部は、前記基板の表面の温度が4℃/秒以上の上昇率で上昇するように前記基板を加熱する、半田プリコート基板の製造装置。
【請求項9】
前記加熱部は、前記基板の表面側からよりも、前記基板の裏面側から強く前記基板を加熱する、請求項8に記載の半田プリコート基板の製造装置。
【請求項10】
前記加熱部は、前記基板の裏面側からのみ前記基板を加熱する、請求項9に記載の半田プリコート基板の製造装置。
【請求項11】
前記加熱部は、前記基板の裏面に接触して前記基板を加熱する加熱プレートを有する、請求項8~10のいずれか1項に記載の半田プリコート基板の製造装置。
【請求項12】
前記基板の加熱時に前記基板と前記加熱プレートとの間に挟まれるシートをさらに備える、請求項11に記載の半田プリコート基板の製造装置。
【請求項13】
前記基板の加熱時に前記基板を複数箇所で押さえる加熱時押え部をさらに備える、請求項8~12のいずれか1項に記載の半田プリコート基板の製造装置。
【請求項14】
前記基板の冷却時に前記基板を複数箇所で押さえる冷却時押え
部をさらに備える、請求項8~13のいずれか1項に記載の半田プリコート基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半田プリコート基板の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板のランドに半田プリコートを形成する方法が知られている(例えば、特許文献1)。同文献の方法では、マスクの開口部をランドに合わせて基板を覆った後、当該開口部に半田ペーストを供給することでランド上に半田ペーストを転写する。転写された半田ペーストを溶融することにより、半田プリコートが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板に実装される電子部品の微細化に伴い、隣り合うランド間の距離も短くなる傾向にある。そのようにランド間の距離が短い場合、非常に小さな粒子径の半田粒子を含む半田ペーストを用いて半田プリコートを形成することで、隣り合う半田プリコート同士が繋がること(以下、ブリッジ現象)を未然に防止できる。
【0005】
しかしながら、小さな粒子径の半田粒子を含む半田ペーストは高価であり、その使用は半田プリコートが形成された基板(以下、半田プリコート基板)の製造コストの増大につながる。このような状況において、本開示は、製造コストを抑えることができる半田プリコート基板の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面は、基板の表面に設けられた複数のランドに半田プリコートを形成することで半田プリコート基板を製造する方法に関する。当該半田プリコート基板の製造方法は、複数の前記ランドに半田ペーストを供給する供給工程と、複数の前記ランドの温度が、該ランドの周りの前記基板の表面温度よりも早く、前記半田ペーストに含まれる半田粒子の融点に達するように前記基板を加熱する加熱工程と、を備える。
【0007】
本開示の別の局面は、基板の表面に設けられた複数のランドに半田プリコートを形成することで半田プリコート基板を製造する装置に関する。当該半田プリコート基板の製造装置は、複数の前記ランドに半田ペーストを供給する供給部と、複数の前記ランドの温度が、該ランドの周りの前記基板の表面温度よりも早く、前記半田ペーストに含まれる半田粒子の融点に達するように前記基板を加熱する加熱部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、製造コストを抑えることができる半田プリコート基板の製造方法および製造装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の半田プリコート基板の製造装置の一例を示す正面図である。
【
図2】実施形態1の半田プリコート基板の製造装置の一部を示す側面図である。
【
図3】実施形態1の半田プリコート基板の製造装置の一部を示す側面図である。
【
図4】実施形態1の加熱部および加熱工程について説明するための概略図である。
【
図5】実施形態1の変形例の加熱部および加熱工程について説明するための概略図である。
【
図6】実施形態2の半田プリコート基板の製造装置の一部を示す斜視図である。
【
図7】実施形態2の加熱部および加熱工程について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る半田プリコート基板の製造方法および製造装置の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。
【0011】
本開示に係る半田プリコート基板の製造方法は、基板の表面に設けられた複数のランドに半田プリコートを形成することで半田プリコート基板を製造する方法であって、複数の前記ランドに半田ペーストを供給する供給工程と、複数の前記ランドの温度が、該ランドの周りの前記基板の表面温度よりも早く、前記半田ペーストに含まれる半田粒子の融点に達するように前記基板を加熱する加熱工程と、を備える。
【0012】
供給工程では、基板の表面に設けられた複数のランドに半田ペーストが供給される。この供給方法としては、任意のものを使用することができる。例えば、スクリーン印刷法によって半田ペーストを供給することが考えられるが、これに限られるものではない。
【0013】
加熱工程では、基板が加熱されることで、複数のランドの温度が、その周りの基板の表面温度よりも早く、半田ペーストに含まれる半田粒子の融点に達する。これにより、ランドの表面において半田粒子が溶けて集まる。そのように半田粒子が溶けて集まったものを、本開示では半田溶融核という。半田溶融核は、基板の加熱が進むにつれて、半田ペーストに含まれる周囲の半田粒子を引き寄せて成長する。そのようにして、半田ペーストに含まれる半田粒子がランド上に集まり、その後に形成される半田プリコートもランド上に留まる。その結果、粒子径の大きい半田粒子を含む半田ペーストを用いる場合でも、ブリッジ現象の発生を抑止することができる。
【0014】
ここで、加熱工程では、任意の加熱方法を使用することができる。例えば、リフロー炉、加熱プレート、または誘導加熱装置を用いて基板を加熱してもよいが、これらに限られるものではない。
【0015】
前記加熱工程では、前記基板の表面側からよりも、前記基板の裏面側から強く前記基板を加熱してもよい。これにより、複数のランドの温度が、その周りの基板の表面温度よりも早く上昇する。なぜなら、金属で構成されるランドは、その周囲の基板よりも熱伝導率が高く、基板の裏面側からの強い熱が相対的に伝わりやすいためである。
【0016】
前記加熱工程では、前記基板の裏面側からのみ前記基板を加熱してもよい。これにより、複数のランドの温度が、その周りの基板の表面温度よりも早く上昇する。なぜなら、金属で構成されるランドは、その周囲の基板よりも熱伝導率が高く、基板の裏面側からの熱が相対的に伝わりやすいためである。
【0017】
前記加熱工程では、前記基板の表面の温度が4℃/秒以上の上昇率で上昇するように前記基板を加熱してもよい。このような上昇率で基板の表面温度を上昇させることで、ブリッジ現象の発生をより一層抑止できる。
【0018】
前記加熱工程では、前記基板の裏面に接触する加熱プレートを用いて前記基板を加熱してもよい。加熱プレートの熱は、熱伝導率の高いランドに伝わりやすい。したがって、ランドの温度が、その周りの基板の表面温度よりも早く上昇する。
【0019】
前記加熱工程では、前記基板と前記加熱プレートとの間にシートを挟んだ状態で前記基板を加熱してもよい。シートを挟むことにより、加熱プレートとの接触によって基板が傷ついたり汚れたりするのを抑止することができる。
【0020】
前記シートは、前記基板および前記加熱プレートよりも軟らかい素材(例えば、シリコン)で構成されてもよい。軟らかいシートが基板や加熱プレートの表面形状にしたがって変形することで、加熱プレートから基板への伝熱性が向上され得る。
【0021】
前記加熱工程では、前記基板を複数箇所で押さえながら前記基板を加熱してもよい。これにより、加熱によって基板が反るのを抑止することができる。
【0022】
半田プリコート基板の製造方法は、前記加熱工程の後に、前記基板を複数箇所で押さえながら前記基板を冷却する冷却工程をさらに備えてもよい。これにより、冷却によって基板が反るのを抑止することができる。
【0023】
本開示に係る半田プリコート基板の製造装置は、基板の表面に設けられた複数のランドに半田プリコートを形成することで半田プリコート基板を製造する装置であって、複数の前記ランドに半田ペーストを供給する供給部と、複数の前記ランドの温度が、該ランドの周りの前記基板の表面温度よりも早く、前記半田ペーストに含まれる半田粒子の融点に達するように前記基板を加熱する加熱部と、を備える。
【0024】
供給部では、基板の表面に設けられた複数のランドに半田ペーストを供給する。この供給部としては、任意のものを使用することができる。例えば、スクリーン印刷を行うためのスキージを使用することが考えられるが、これに限られるものではない。
【0025】
加熱部は、基板を加熱することで、複数のランドの温度を、その周りの基板の表面温度よりも早く、半田ペーストに含まれる半田粒子の融点に達させる。これにより、ランドの表面において半田粒子が溶けて集まって半田溶融核が形成される。半田溶融核は、基板の加熱が進むにつれて、半田ペーストに含まれる周囲の半田粒子を引き寄せて成長する。そのようにして、半田ペーストに含まれる半田粒子がランド上に集まり、その後に形成される半田プリコートもランド上に留まる。その結果、粒子径の大きい半田粒子を含む半田ペーストを用いる場合でも、ブリッジ現象の発生を抑止することができる。
【0026】
ここで、加熱部としては、任意のもの使用することができる。例えば、リフロー炉、加熱プレート、または誘導加熱装置を使用することが考えられるが、これらに限られるものではない。
【0027】
前記加熱部は、前記基板の表面側からよりも、前記基板の裏面側から強く前記基板を加熱してもよい。これにより、複数のランドの温度が、その周りの基板の表面温度よりも早く上昇する。なぜなら、金属で構成されるランドは、その周囲の基板よりも熱伝導率が高く、基板の裏面側からの強い熱が相対的に伝わりやすいためである。
【0028】
前記加熱部は、前記基板の裏面側からのみ前記基板を加熱してもよい。これにより、複数のランドの温度が、その周りの基板の表面温度よりも早く上昇する。なぜなら、金属で構成されるランドは、その周囲の基板よりも熱伝導率が高く、基板の裏面側からの熱が相対的に伝わりやすいためである。
【0029】
前記加熱部は、前記基板の表面の温度が4℃/秒以上の上昇率で上昇するように前記基板を加熱してもよい。このような上昇率で基板の表面温度を上昇させることで、ブリッジ現象の発生をより一層抑止できる。
【0030】
前記加熱部は、前記基板の裏面に接触して前記基板を加熱する加熱プレートを有してもよい。加熱プレートの熱は、熱伝導率の高いランドに伝わりやすい。したがって、ランドの温度が、その周りの基板の表面温度よりも早く上昇する。
【0031】
半田プリコート基板の製造装置は、前記基板の加熱時に前記基板と前記加熱プレートとの間に挟まれるシートをさらに備えてもよい。シートを挟むことにより、加熱プレートとの接触によって基板が傷ついたり汚れたりするのを抑止することができる。
【0032】
半田プリコート基板の製造装置は、前記基板の加熱時に前記基板を複数箇所で押さえる加熱時押え部をさらに備えてもよい。そのような加熱時押え部により、加熱によって基板が反るのを抑止することができる。
【0033】
半田プリコート基板の製造装置は、前記加熱された前記基板を冷却する冷却部と、前記基板の冷却時に前記基板を複数箇所で押さえる冷却時押え部と、をさらに備えてもよい。そのような冷却時押え部により、冷却によって基板が反るのを抑止することができる。
【0034】
以下では、本開示に係る半田プリコート基板の製造方法および製造装置の例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する半田プリコート基板の製造方法の工程および製造装置の構成要素には、上述した工程および構成要素を適用できる。以下で説明する半田プリコート基板の製造方法の工程および製造装置の構成要素は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する半田プリコート基板の製造方法の工程および製造装置の構成要素のうち、本開示に係る半田プリコート基板の製造方法および製造装置に必須ではない工程および構成要素は省略してもよい。
【0035】
〈実施形態1〉
本開示の実施形態1について説明する。まず、半田プリコート基板の製造装置10(以下、単に「製造装置10」ともいう。)の構成について説明し、その後、半田プリコート基板の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう。)について説明する。
【0036】
-半田プリコート基板の製造装置-
図1~
図3に示す製造装置10は、基板1の表面に設けられた複数のランド3(
図4を参照)に半田プリコートを形成することで半田プリコート基板を製造する装置である。なお、本明細書では、基板1が搬送される方向をX方向とし、鉛直方向をZ方向とし、X方向とZ方向に垂直な方向をY方向とする。また、それぞれの方向に沿った軸をX軸、Y軸、およびZ軸とする。
【0037】
図1に示すように、製造装置10は、供給部100と、加熱部210と、冷却部220と、制御部20とを備える。供給部100、加熱部210、および冷却部220は、基台101上にX方向に一列に並んで配置されている。なお、理解を容易にするために、
図1では、供給部100、加熱部210、および冷却部220のそれぞれに基板1が配置されている一例を示す。
【0038】
(供給部)
供給部100は、スクリーン印刷によって、基板1の複数のランド3に半田ペーストPを供給する。なお、供給部100は、スクリーン印刷以外の方法によって半田ペーストPをランド3に供給してもよい。
【0039】
供給部100は、移動テーブル102と、昇降機構103と、印刷ステージ104と、印刷ヘッド113と、マスクプレート116と、印刷ステージコンベア231と、基板搬入コンベア234と、基板中継コンベア232とを有する。
【0040】
移動テーブル102は、基台101上において、X方向に間隔をあけて立設された一対の支持フレーム11の間に配置されている。移動テーブル102には、印刷ステージ104を昇降させる昇降機構103が配置されている。
【0041】
印刷ステージ104は、昇降機構103に結合された基部104aを有する。基部104aの上面には、支柱104bが設けられている。支柱104bの上端部には、X軸に沿って延びる基板ガイド104cが結合されている。基板ガイド104cの内側には、基板1を搬送するためのベルトを含む印刷ステージコンベア231が配置されている。
【0042】
移動テーブル102は、昇降機構103を水平移動、すなわち、X軸やY軸に沿って移動させることによって、印刷ステージ104を水平移動させる。移動テーブル102は、昇降機構103をZ軸回りに回転させることによって、印刷ステージ104をZ軸回りに回転させる。昇降機構103は、印刷ステージ104をZ軸に沿って移動、すなわち昇降させる。
【0043】
印刷ステージコンベア231は、一方の支持フレーム11の開口部を貫通して配設された基板搬入コンベア234と、他方の支持フレーム11の開口部を貫通して配設された基板中継コンベア232との間で基板1を受け渡すように構成される。基板搬入コンベア234によって搬入された基板1は、印刷ステージコンベア231に受け渡されて半田ペースト供給領域PAに搬送され、印刷ステージ104によって保持される。印刷ステージ104で半田ペーストPが供給された基板1は、印刷ステージコンベア231の半田ペースト供給領域PAから搬出され、基板中継コンベア232に受け渡される。
【0044】
基部104aの上面には、バックアップ昇降機構104eが配置されている。バックアップ昇降機構104eは、基板1を下から支持するバックアップ部104fを昇降させる。バックアップ部104fは、印刷ステージコンベア231の半田ペースト供給領域PAに基板1が搬入された状態で、上昇されることによって基板1の下面を支持する。
【0045】
一対の基板ガイド104cのそれぞれの上面には、X軸に沿って延びるサイドクランパ104dが設けられている。サイドクランパ104dは、駆動機構(図示せず)によって開閉される。バックアップ部104fは、基板1の下面を支持しながら、基板1の上面とサイドクランパ104dの上面とが実質的に面一になる高さまで基板1を上昇させる。基板1とサイドクランパ104dの高さがそろった状態でサイドクランパ104dが閉じることにより、基板1の両側面がサイドクランパ104dで挟まれ、基板1が固定される。このようにして、印刷ステージ104は基板1を保持する。
【0046】
一対の支持フレーム11の上端には、印刷ヘッド113を支持する支持ビーム113aが、直動ガイド機構11aを介してY軸に沿って移動可能に配置されている。支持ビーム113aの一端部は、送りねじとこれを回転させるモータなどで構成された周知の印刷ヘッド移動機構11bに結合されている。印刷ヘッド移動機構11bが駆動することで、印刷ヘッド113は、Y軸に沿って往復移動(スキージング動作)する。
【0047】
図2に示すように、印刷ヘッド113は、支持ビーム113aから下方に延出して設けられた後スキージ113bおよび前スキージ113cを有する。支持ビーム113aの上面に設けられたスキージ駆動部113dが駆動することで、スキージング動作の方向に応じて後スキージ113bと前スキージ113cのいずれかが下降する。
【0048】
印刷ヘッド113の下方には、マスクプレート116が水平な状態で配置されている。マスクプレート116には、厚さ方向に貫通したパターン孔(図示せず)が形成されている。パターン孔は、基板1の複数のランド3の配置や形状に対応して形成されている。供給部100は、マスクプレート116の上面に供給された半田ペーストP(
図3を参照)を後スキージ113bまたは前スキージ113cで移動させることで、半田ペーストPを所定の印刷パターンで基板1上に供給するスクリーン印刷を実行する。
【0049】
(加熱部)
加熱部210は、ランド3に供給された半田ペーストPを加熱して、半田ペーストPに含まれる半田粒子PLを溶融する。加熱部210は、供給部100から延びる基板中継コンベア232の下流側を覆う筐体213と、筐体213の内部に配置された第1ヒータ211および第2ヒータ212とを有する。筐体213には、加熱によって発生する半田ペーストPからの揮発成分を排気するための通気孔215が形成されている。
【0050】
第1ヒータ211は、基板中継コンベア232の下方に配置されている。第1ヒータ211は、下方から見て、加熱領域HAに位置する基板1の全体を覆う。第1ヒータ211は、加熱領域HAに位置する基板1の全体を下方から(すなわち、基板1の裏面側から)加熱する。
【0051】
本実施形態の基板中継コンベア232は、基板1の搬送方向に沿って延びる金属チェーンによって構成されているが(
図4を参照)、これに限られるものではない。
【0052】
第2ヒータ212は、基板中継コンベア232の上方に配置されている。第2ヒータ212は、上方から見て、加熱領域HAに位置する基板1の全体を覆う。第2ヒータ212は、加熱領域HAに位置する基板1の全体を上方から(すなわち、基板1の表面側から)加熱する。あるいは、第2ヒータ212は、加熱領域HAに位置する基板1を加熱しなくてもよい(すなわち、オフ状態にされてもよい)。
【0053】
第1ヒータ211および第2ヒータ212は、基板1の表面の温度が4℃/秒以上の上昇率で上昇するように基板1を加熱することが好ましい。このような上昇率で基板1を加熱することにより、ブリッジ現象の発生をより一層抑止することができる。なお、上昇率としては、基板1の表面温度が100℃から200℃に上昇するのに要する時間をΔt(単位:秒)として、(200-100)/Δt(単位:℃/秒)の値を用いることが考えられるが、これに限られるものではない。
【0054】
(冷却部)
冷却部220は、溶融した半田粒子PL(以下、「溶融半田」ともいう。)を冷却して固化する。冷却部220は、基板搬出コンベア233を覆う筐体224と、筐体224の内部に配置された冷却ファン221とを有する。筐体224には、冷却用の空気を導入および排出するための通気孔220a,220bが形成されている。冷却ファン221は、基板搬出コンベア233上の基板1を冷却する。これにより、溶融半田が冷却および固化される。
【0055】
(制御部)
制御部20は、供給部100、加熱部210、冷却部220、および各コンベア231~234を制御して基板1に半田プリコートを形成する作業を製造装置10に実行させる。制御部20は、基台101の内部に設けられている。制御部20は、演算処理装置(CPU)と、演算処理装置が実行可能なプログラムを格納した記憶装置(メモリ)などによって構成される。
【0056】
-基板の構成-
次に、基板1の構成について説明する。
図4に示すように、本実施形態の基板1は、基板本体2と、基板本体2の表面(上面)に設けられた複数のランド3と、各ランド3に接続されかつ基板本体2の裏面(下面)に露出する複数の配線パターン4とを有する。基板本体2は絶縁体で構成される一方、複数のランド3および配線パターン4は導体で構成される。
【0057】
このように、本実施形態の基板1は、両面プリント基板であるが、基板1の種類はこれに限らない。例えば、基板1は、片面プリント基板であってもよいし、多層プリント基板であってもよい。いずれの種類の基板1であっても、本開示の製造装置および製造方法を適用できる。
【0058】
-半田プリコート基板の製造方法-
次に、本実施形態の製造方法について説明する。製造方法は、供給工程と、加熱工程と、冷却工程とを備える。
【0059】
(供給工程)
供給工程では、基板1の表面に設けられた複数のランド3に半田ペーストPを供給する。具体的に、制御部20は、基板搬入コンベア234と印刷ステージコンベア231を作動させて、半田プリコートが形成されていない基板1を半田ペースト供給領域PAへ搬送する。続けて、制御部20は、バックアップ昇降機構104eを作動させてバックアップ部104fに基板1を支持させ、サイドクランパ104dによって基板1をクランプさせる。これにより、印刷ステージ104は基板1を保持する。
【0060】
次に、制御部20は、マスクプレート116に対する基板1の水平方向の位置を位置合わせした上で、昇降機構103を駆動することによって、基板1を上昇させてマスクプレート116の下面に当接させる。そして、制御部20は、印刷ヘッド113を作動させて半田ペーストPを基板1上にスクリーン印刷する。
【0061】
次に、制御部20は、昇降機構103を駆動することによって、基板1をマスクプレート116から引き離す(版離れ)。続けて、制御部20は、サイドクランパ104dとバックアップ昇降機構104eを作動させて、サイドクランパ104dによる基板1の固定を解除すると共に、バックアップ部104fを下降させて基板1を印刷ステージコンベア231上に載置する。そして、制御部20は、印刷ステージコンベア231および基板中継コンベア232を作動させて、基板1を加熱部210内の加熱領域HAに搬送する。
【0062】
(加熱工程)
加熱工程では、第1ヒータ211および第2ヒータ212により、または第1ヒータ211のみにより、ランド3上に半田ペーストPが供給された基板1を加熱する。具体的に、
図4に示すように、制御部20は、第1ヒータ211を高温で作動させて基板1を裏面側(下面側)から加熱する。制御部20は、第2ヒータ212を低温で作動させて基板1を表面側(上面側)から加熱するか、または第2ヒータ212を作動させない。
【0063】
このように第1ヒータ211および第2ヒータ212を制御すると、相対的に出力の高い第1ヒータ211が主な熱源となり、基板1は、加熱領域HAにおいて、表面側からよりも裏面側から強く加熱される。主な熱源としての第1ヒータ211の熱は、配線パターン4を経由してランド3に伝わる。これにより、各ランド3の温度は、当該ランド3の周りの基板1の表面温度よりも早く、半田ペーストPに含まれる半田粒子PLの融点に達する。
【0064】
ランド3の温度が半田粒子PLの融点に達すると、
図4の中段に示すように、ランド3の表面において半田溶融核Cが発生する。その後、半田溶融核Cは、周囲の半田粒子PLを引き寄せながら成長する。このとき、
図4の右側の半田溶融核Cは、隣り合うランド3の間の半田粒子PLも引き寄せる。最終的に、
図4の下段に示すように、ランド3の周りにあった半田粒子PLも含め、実質的に全ての半田粒子PLが溶けてランド3上に集まった状態になる。そして、制御部20は、基板中継コンベア232と基板搬出コンベア233を作動させて、基板1を冷却部220へ搬送する。
【0065】
(冷却工程)
冷却工程では、冷却ファン221により、ランド3上に溶融半田が存在する基板1を冷却する。具体的に、制御部20は、冷却ファン221を作動させることで、通気孔220a,220bを経由する空気流れにより基板1を冷却し、それにより溶融半田を固化させる。このようにして、基板1のランド3に半田プリコートが形成され、半田プリコート基板が完成する。そして、制御部20は、基板搬出コンベア233を作動させて、冷却された基板1(半田プリコート基板)を冷却部220から搬出する。
【0066】
〈実施形態1の変形例〉
本開示の実施形態1の変形例について説明する。本変形例は、上記実施形態1と加熱部210の構成が異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0067】
図5に示すように、本変形例の加熱部210は、第2ヒータ212を備えない。したがって、本変形例の加熱工程では、第1ヒータ211のみによって基板1が加熱される。換言すると、本変形例の加熱工程では、基板1の裏面側(下面側)からのみ基板1が加熱される。なお、本変形例においても、基板1の表面の温度が4℃/秒以上の上昇率で上昇するように基板1を加熱することが好ましい。
【0068】
このように、第2ヒータ212を備えないことで、換言すると熱源として第1ヒータ211のみを備えることで、製造装置10のコストの低減や構造の簡素化を図ることができる。
【0069】
〈実施形態2〉
本開示の実施形態2について説明する。本実施形態は、上記実施形態1と加熱部210および冷却部220の構成が異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0070】
(加熱部)
図6および
図7に示すように、本実施形態の加熱部210は、加熱プレート214と、シート216と、加熱時押え部217とを備える。
【0071】
加熱プレート214は、加熱領域HAに位置する基板1の裏面(下面)に接触して当該基板1を加熱する。より具体的に、加熱プレート214は、基板1の配線パターン4に接触しながら発熱することで、当該基板1を裏面側からのみ加熱する。これにより、
図7に示すように、上記実施形態1と同様、加熱により基板1のランド3上で半田溶融核が成長し、最終的に、ランド3上に溶融半田が集まった状態が実現される。
【0072】
シート216は、加熱プレート214による基板1の加熱時に、基板1と加熱プレート214との間に挟まれる。シート216は、基板1および加熱プレート214よりも軟らかい素材(例えば、シリコン)で構成される。シート216は、シート216を送り出す供給ローラ216aと、シート216を巻き取る回収ローラ216bとによって、基板1が所定枚数(例えば、1枚)入れ替わるごとに交換されることが好ましい。本実施形態の加熱工程では、基板1と加熱プレート214との間にシート216が挟まれた状態で、加熱プレート214により基板1が加熱される。
【0073】
加熱時押え部217は、加熱プレート214による基板1の加熱時に、基板1を複数箇所(この例では、基板1の4つの角部)で押さえる。加熱時押え部217は、それぞれが基板1を押さえる複数の脚217aと、複数の脚217aを連結する枠体217bとを有する。複数の脚217aおよび枠体217bは、高断熱性材料で構成される。本実施形態の加熱工程では、加熱時押え部217により基板1が複数箇所で押さえられた状態で、加熱プレート214により基板1が加熱される。
【0074】
(冷却部)
図6に示すように、本実施形態の冷却部220は、冷却時押え部222を有する。冷却時押え部222は、冷却ファン221による基板1の冷却時に、基板1を複数箇所(この例では、基板1の対向辺に沿った6箇所)で押さえる。冷却時押え部222は、基板1の裏面に当接する複数の下ローラ222aと、複数の下ローラ222aと共に基板1を挟み込む複数の上ローラ222bとを有する。各下ローラ222aおよび各上ローラ222bは、高断熱性材料で構成される。本実施形態の冷却工程では、冷却時押え部222により基板1が複数箇所で押さえられた状態で、冷却ファン221により基板1が冷却される。
【実施例】
【0075】
以下、実施例および比較例に基づいて実施の形態をより具体的に説明する。実施例によって、本開示の範囲は限定して解釈されない。
【0076】
以下のような構成の加熱部210、基板1、および半田ペーストPを用いて、各測定条件(比較例1,2および実施例1~3)につき、チップ200個に対してブリッジが発生する確率(以下、「ブリッジ発生率」という。)を測定した。この場合、ブリッジ発生率は、(ブリッジ発生数/200)×100(単位:%)で表される値である。
【0077】
具体的に、加熱部210として、アントム社製のリフロー炉UNI-6116を用いた。加熱工程では、第1ヒータ211のみを作動させ、第2ヒータ212をオフ状態とした。第1ヒータ211の設定温度は、230℃(比較例1)、260℃(比較例2)、300℃(実施例1)、330℃(実施例2)、および360℃(実施例3)とした。
【0078】
また、基板1として、150mm×100mmの矩形状で、厚みが0.8mmのものを用いた。基板1上のランド3の配置は、0201チップ部品を部品間距離70μmで実装する場合を想定したものとした。
【0079】
さらに、半田ペーストPとして、千住金属製のソルダペーストtype5(粒子径:15~25μm)を用いた。
【0080】
比較例1,2および実施例1~3の測定結果を表1に示す。ここで、上昇率は、基板1の表面温度が100℃から200℃まで上昇するのに要した時間をΔt(単位:秒)として、(200-100)/Δt(単位:℃/秒)で表される値である。
【表1】
【0081】
表1からわかるように、上昇率が4.00℃/秒以上となる条件で、ブリッジ発生率が0%であった。一方、上昇率が4.00℃/秒未満となる条件では、ブリッジ発生率が0%ではなく、ブリッジ現象の発生が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は、半田プリコート基板の製造方法および製造装置に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1:基板
2:基板本体
3:ランド
4:配線パターン
10:半田プリコート基板の製造装置
11:支持フレーム
11a:直動ガイド機構
11b:印刷ヘッド移動機構
20:制御部
100:供給部
101:基台
102:移動テーブル
103:昇降機構
104:印刷ステージ
104a:基部
104b:支柱
104c:基板ガイド
104d:サイドクランパ
104e:バックアップ昇降機構
104f:バックアップ部
113:印刷ヘッド
113a:支持ビーム
113b:後スキージ
113c:前スキージ
113d:スキージ駆動部
116:マスクプレート
210:加熱部
211:第1ヒータ
212:第2ヒータ
213:筐体
214:加熱プレート
215:通気孔
216:シート
216a:供給ローラ
216b:回収ローラ
217:加熱時押え部
217a:脚
217b:枠体
220:冷却部
220a:通気孔
220b:通気孔
221:冷却ファン
222:冷却時押え部
222a:下ローラ
222b:上ローラ
224:筐体
231:印刷ステージコンベア
232:基板中継コンベア
233:基板搬出コンベア
234:基板搬入コンベア
C:半田溶融核
HA:加熱領域
P:半田ペースト
PA:半田ペースト供給領域
PL:半田粒子