(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】光照射式脱毛装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2021017232
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜平
(72)【発明者】
【氏名】春日井 秀紀
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518612(JP,A)
【文献】米国特許第6595985(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
A61N 5/06―5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
400~1200nmの波長の光を出射する光源と、
前記光源からの光照射のオン/オフを制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、脱毛処理時における前記光源からの単回の光照射に際し、前記光源をオン状態とオフ状態とを交互に繰り返し、かつ、0.1~1.0秒のオン状態の時間と0.1~1.0秒のオフ状態の時間とを可変に制御し、n番目(但し、nは1から始まる自然数)のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)と、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)とが、次の条
件(2)を満足するように前記光源のオン状態とオフ状態とを制御し、
さらに、前記制御ユニットは、n番目(但し、nは1から始まる自然数)のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)と、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)とが次の条件(3)を満足し、かつ、n番目のオン状態とn+1番目のオン状態との間における前記光源のオフ状態の時間T
OFF
(n~n+1)と、n+1番目のオン状態とn+2番目のオン状態との間における前記光源のオフ状態の時間T
OFF
(n+1~n+2)とが、次の条件(4)を満足するように制御する、光照射式脱毛装置。
条件(2):Eg(n+1)=A×Eg(n) 1≦A≦2
条件(3):Eg(n)=Eg(n+1)
条件(4):T
OFF
(n~n+1)>T
OFF
(n+1~n+2)
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記光源のオン状態の時間の調整により前記Eg(n)及び前記Eg(n+1)を制御する、請求項1に記載の光照射式脱毛装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光照射式脱毛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の体毛の脱毛をする手段として、皮膚表面に所定波長の光を照射して発熱させて毛包近傍の細胞にダメージを与えることで脱毛効果を得るといった方法が知られている。そのような装置として、光照射式脱毛装置が挙げられる。
【0003】
光照射式脱毛装置は、光源を有する発光ユニットを備えている。また、光照射式脱毛装置の光源としては、ナローバンドな波長スペクトルを持つ光源又はブロードバンドな波長スペクトルを持つ光源が用いられるのが一般的である(特許文献1、2参照)。ナローバンドな波長スペクトルを持つ光源としては、LED(Light Emitting Diode)又はレーザー等が挙げられる。ブロードバンドな波長スペクトルを持つ光源としては、フラッシュランプが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、特に570~1200nmの波長範囲のピーク発光波長を有する光源(VCSEL:面発光レーザー)により、1~600msの範囲で処理光パルスを放射する装置が記載されている。そして、2~30J/cm2の範囲の照射エネルギーを与えることで脱毛効果を得るものである。特許文献2には、700~980nmの赤色~近赤外波長の範囲のピーク発光波長のLEDダイを有する発光ユニットを備える装置が記載されている。そして、発光ユニットから60~120msの範囲の処理光パルスを放射し、3~7J/cm2の範囲の照射エネルギーを皮膚に与えることで脱毛効果を得るものである。
【0005】
特許文献1及び2に記載の装置は、いずれも所定波長の光を発する光源を、脱毛しようとする皮膚表面に近づけた状態で、光源から所定時間光を照射することで脱毛処理を施す。すなわち、光照射時の発熱により毛包近傍の細胞にダメージを与えて脱毛効果を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5715128号公報
【文献】特表2019-509087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような光照射式脱毛装置は、単回で強い光を照射すると高い脱毛効果が得られる。しかし、十分な脱毛効果を得るためにより強い光を照射すると、急激に皮膚温度が上昇するため、ユーザに傷みなどの不快感を与えることがある。特に、ユーザの皮膚の性状、痛みに関する感度が様々であるため、十分な脱毛効果を得ることと、光照射時の不快感を抑制することとはトレードオフの関係にあり、両立することは困難である。
【0008】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、十分な脱毛効果と、光照射時の不快感の抑制との両立を図ることができる光照射式脱毛装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の態様に係る光照射式脱毛装置は、400~1200nmの波長の光を出射する光源と、光源からの光照射のオン/オフを制御する制御ユニットと、を備える。そして、制御ユニットは、脱毛処理時における光源からの単回の光照射に際し、光源をオン状態とオフ状態とを交互に繰り返し、かつ、オン状態の時間とオフ状態の時間とを可変に制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、十分な脱毛効果と、光照射時の不快感の抑制との両立を図ることができる光照射式脱毛装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の光照射式脱毛装置を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る光源の概略的な配置状態の例を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態の光照射式脱毛装置の要部のブロック図である。
【
図5】本実施形態の光照射式脱毛装置の光照射時における、経過時間と光密度との関係の一例を示すグラフである。
【
図6】本実施形態の光照射式脱毛装置の光照射時における、経過時間と光密度との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0013】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0014】
また、以下の実施の形態では、出射口を上方に向けた状態で光照射式脱毛装置の上下方向Zと規定する。また、光照射式脱毛装置の水平方向における長手方向を幅方向Yと規定する。さらに、光照射式脱毛装置の水平方向における短手方向(上下方向Z及び幅方向Yに直交する方向)を前後方向Xと規定する。
また、本実施形態では、本体部におけるスイッチ部が設けられている側を前後方向の前方と規定して説明する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、光照射式脱毛装置1は、ハウジング5と、光源10と、温度センサ13と、皮膚冷却部20と、冷却器40と、制御ユニット50とを備えている。
【0016】
ハウジング5の一端には、光照射式脱毛装置1の光の出射口となる開口部が設けられている。ハウジング5の開口部には光源10が設けられており、皮膚に対して光が照射される。また、ハウジング5の光源10とは反対側には底部が形成されている。ハウジング5には、複数の第1開口部6と複数の第2開口部7とが設けられており、外部の空気が複数の第1開口部6から取り入れられ、複数の第2開口部7から排出される。ハウジング5の内側には、光源10と、温度センサ13と、皮膚冷却部20と、冷却器40と、制御ユニット50とが収容されている。
【0017】
図3は、本実施形態に係る光源10の概略的な配置状態の例を示す斜視図である。なお、
図3では、温度センサ13、皮膚冷却部20、冷却器40の一部の構成などを省略している。
図1~
図3に示すように、本実施形態では、光源10は複数のLED(Light Emitting Diode)を含んでいる。LEDは基板12上に略等間隔に離間配置された状態で実装されている。光源10は図示しない電源と電気的に接続されており、電源から電力が供給されることにより、光源10から光が照射される。
【0018】
光源10は400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射する。上記のような光が皮膚に照射されることにより、毛包のメラニンが上記光を吸収して発熱する。そして、この熱により毛包に含まれる毛母体がダメージを受け、毛の排出が促進される。光の波長は、500nm以上であってもよく、600nm以上であってもよく、700nm以上であってもよく、800nm以上であってもよい。また、光の波長は、1000nm以下であってもよく、900nm以下であってもよい。光源10から照射される光は、400nm以上1200nm以下の範囲内にピーク波長を有する光であってもよい。光が上記のような範囲内にピーク波長を有する場合であっても、照射される光は上記範囲外の波長成分を含んでいてもよい。また、LEDの各々が同一の波長スペクトルを有する必要はなく、異なる波長スペクトルの光を照射するLEDを組合せて使用してもよい。なお、上記波長は光源10の温度が25℃である場合に照射される光の波長である。
【0019】
光源10は、放射照度が15W/cm2超50W/cm2未満の条件で光を照射することが好ましい。15W/cm2超の放射照度で光を照射することにより、成長期初期~成長期の毛に高い脱毛効果を与えることが可能となる。また、50W/cm2未満の放射照度で光を照射することにより、光照射による皮膚温度の上昇を抑制することができる。そのため、皮膚がより確実に冷却され、皮膚刺激を低減することができる。放射照度は、20W/cm2を超えていてもよく、25W/cm2を超えていてもよく、30W/cm2を超えていてもよい。また、放射照度は、45W/cm2未満であってもよく、40W/cm2未満であってもよい。
【0020】
皮膚冷却部20は光源10と対向する位置に配置されている。皮膚冷却部20は、光源10と接触していてもよく、光源10と空間を空けて配置されていてもよい。また、皮膚冷却部20は、光源10とは反対側において皮膚と接触するように設けられている。皮膚冷却部20は透光性を有する材料により形成されている。光源10から光が照射されると、皮膚冷却部20は光源10から照射される光を透過し、皮膚冷却部20を透過した光が皮膚に照射される。皮膚冷却部20は例えば透光性を有するプレートであり、本実施形態では円板の皮膚冷却部20を使用している。
【0021】
皮膚冷却部20は、光源10から照射された光が吸収されにくい材料で形成されていることが好ましい。具体的には、皮膚冷却部20の全光線透過率は、80%以上であることが好ましい。全光線透過率が80%以上であると、光源10から照射された光の大部分が皮膚冷却部20を透過することができる。そのため、多くの光をメラニンに到達させることができ、脱毛効果を促進することができる。また、皮膚冷却部20によって吸収されて熱に変換される光の量を低減することができることから、皮膚冷却部20の温度上昇を抑制することができる。光が皮膚冷却部20に吸収されにくくする観点から、全光線透過率は90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。全光線透過率の上限の値は100%である。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に従って測定することができる。
【0022】
皮膚冷却部20の屈折率は1.7以上であることが好ましい。皮膚冷却部20の屈折率が1.7以上であると、光源10からの光が皮膚冷却部20で吸収されにくい。皮膚冷却部20は、屈折率の値が大きい程光を透過しやすくなる。そのため、屈折率は、1.8以上であることがより好ましく、1.9以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。屈折率の上限の値は特に限定されないが、10であってもよい。屈折率は、JIS B7071-1:2015に従って最小偏角法によって測定することができる。
【0023】
皮膚冷却部20は、皮膚と接触した場合に皮膚を冷却する。皮膚冷却部20は熱伝導性が高い材料を含むことが好ましい。皮膚冷却部20の熱伝導率は1W/mK以上であることが好ましい。熱伝導率が1W/mK以上であると、光源10からの光及び皮膚によって皮膚冷却部20が加温されても、熱が放散されやすいため、皮膚を効果的に冷却することができる。熱伝導率の値が大きい程、皮膚冷却部20の熱伝導性が高くなり、皮膚冷却部20の冷却効果が高くなる傾向にある。そのため、冷却効率の観点からは、皮膚冷却部20の熱伝導率は2W/mK以上であることがより好ましく、10W/mK以上であることがさらに好ましく、30W/mK以上であることが特に好ましく、100W/mK以上であることが最も好ましい。熱伝導率の上限の値は特に限定されないが、100000W/mKであってもよい。熱伝導率は、JIS R1611:2010に従ってレーザフラッシュ法によって測定することができる。
【0024】
皮膚冷却部20は、無機物質を含んでいてもよい。具体的には、皮膚冷却部20は、Al2O3、ZnO、ZrO2、MgO、GaN、AlN及びダイヤモンドからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいることが好ましい。これらの材料は、屈折率及び熱伝導率が高いため、皮膚冷却部20の透光性及び熱伝導性を向上させることができる。なお、Al2O3(サファイア)の屈折率は1.79であり、熱伝導率は42W/mKである。ZnOの屈折率は2.01であり、熱伝導率は20W/mKである。ZrO2の屈折率は2.13であり、熱伝導率は3W/mKである。MgOの屈折率は1.74であり、熱伝導率は47W/mKである。GaNの屈折率は2.346であり、熱伝導率は200W/mKである。AlNの屈折率は2.175であり、熱伝導率は150W/mKである。ダイヤモンドの屈折率は2.417であり、熱伝導率は1000W/mKである。
【0025】
皮膚冷却部20は、耐熱性及び透光性の観点などから、シリコーン樹脂などの樹脂を含んでいてもよい。また、皮膚冷却部20は、シリコーン樹脂などの樹脂と、樹脂に分散された高熱伝導フィラーとを含んでいてもよい。皮膚冷却部20が高熱伝導フィラーを含むことで皮膚冷却部20の熱が放散されやすくなるため、皮膚を効果的に冷却することができる。高熱伝導フィラーは、上述のような無機物質を含んでいてもよい。
【0026】
皮膚冷却部20における無機物質の割合は10質量%以上であることが好ましい。皮膚冷却部20における無機物質の割合を10質量%以上とすることにより、皮膚冷却部20の熱伝導性を向上させることができる。皮膚冷却部20における無機物質の割合は30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。
【0027】
皮膚冷却部20は-5℃以上35℃未満となるように冷却されることが好ましい。皮膚冷却部20が-5℃以上となるように冷却されることにより、冷却に伴う皮膚の痛みが発生しにくいように皮膚を冷却することができる。一方、皮膚冷却部20が35℃未満となるように冷却されることにより、光照射時の皮膚温度上昇による炎症を抑制することができる。皮膚冷却部20は、より好ましくは0℃以上、さらに好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上となるように冷却することが好ましい。また、皮膚冷却部20は、より好ましくは30℃未満、さらに好ましくは25℃未満、特に好ましくは20℃未満、最も好ましくは15℃未満となるように冷却されることが好ましい。
【0028】
温度センサ13は、皮膚冷却部20の温度を検出する。皮膚冷却部20の温度を検出することで、皮膚冷却部20の温度を精密に制御することができる。温度センサ13は、皮膚冷却部20と対向するように設けられている。温度センサ13は、具体的には、基板12に実装されている。本実施形態では、温度センサ13は接触式温度センサを含んでいる。接触式温度センサとしては、サーミスタ、熱電対及び測温抵抗体などが挙げられる。
【0029】
冷却器40は、皮膚冷却部20を冷却する。光照射式脱毛装置1が冷却器40を備えていることにより、皮膚冷却部20をより低温にすることができる。そのため、皮膚冷却部20による皮膚冷却効果をより向上させることができる。冷却器40は、放熱部41と、送風部45とを含んでいる。
【0030】
放熱部41は、皮膚冷却部20と接続されており、皮膚冷却部20から奪い取った熱を放熱する。放熱部41は、接続部42と、把持部43と、放熱フィン44とを含んでいる。
【0031】
接続部42は板状の部材である。接続部42の一方の面である第1面には、基板12が設けられている。基板12は接続部42よりも小さく、接続部42の内側に収まるように設けられている。接続部42の第1面における基板12の外側には把持部43が接続されている。接続部42の第1面とは反対側の面である第2面には、放熱フィン44が設けられている。
【0032】
把持部43は、接続部42の第1面から上下方向Zの上方向に向かって突き出しており、皮膚冷却部20の全周縁を把持している。したがって、光源10は、皮膚冷却部20、把持部43及び接続部42で囲われている。光源10で生成された熱は、皮膚冷却部20並びに冷却器40の放熱部41を介して放熱される。なお、把持部43は、皮膚冷却部20の全周縁を把持しているが、把持部43は皮膚冷却部20の少なくとも一部と接続されていればよい。
【0033】
放熱フィン44は、接続部42の光源10とは反対側の面に設けられている。そのため、皮膚冷却部20の熱は、把持部43及び接続部42を通じて放熱フィン44へ移動する。放熱フィン44は、複数のフィンを含んでおり、空気との接触面積が大きいため、熱が放散されやすくなっている。
【0034】
放熱部41は、熱伝導性に優れる材料を含んでいることが好ましい。放熱部41の熱伝導率の値は、皮膚冷却部20よりも大きくてもよい。具体的には、放熱部41は、アルミニウム、鉄及び銅などの金属を含んでいてもよい。把持部43、接続部42及び放熱フィン44は、同じ材料によって形成されていてもよく、異なる材料によって形成されていてもよい。
【0035】
送風部45は、放熱部41に空気を送ることによって放熱部41を冷却する。送風部45は、例えばファンを含んでおり、ファンが回転することによって、気流が発生する。ハウジング5には、送風部45と対向する箇所に複数の第1開口部6が設けられている。また、ハウジング5には、放熱フィン44と対向する箇所に複数の第2開口部7が設けられている。そのため、送風部45を駆動させると、複数の第1開口部6を通じてハウジング5の外部から取り入れられた空気が放熱フィン44に送られる。放熱フィン44と接触した空気の熱は、放熱フィン44の熱と交換され、放熱フィン44が冷却される。放熱フィン44と接触して温められた空気は、複数の第2開口部7を通じてハウジング5の外部に排出される。
【0036】
なお、本実施形態では、空冷式の冷却器について説明したが、空冷式の冷却器に加えて、又は空冷式の冷却器に代えて、ペルチェ素子などを用いて皮膚冷却部20を冷却してもよい。ペルチェ素子を用いて皮膚冷却部20を冷却することにより、皮膚冷却部20をより強力に冷却することができる。
【0037】
制御ユニット50は、光源10のオン状態及びオフ状態を制御する。また、制御ユニット50は、送風部45の駆動及び停止を制御する。制御ユニット50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んでいる。
【0038】
光照射式脱毛装置1において、光照射を司る系統として、
図4のブロック図に示すように、電源部、制御ユニット50、光源10、及び皮膚冷却部20を備える。光照射式脱毛装置1の操作スイッチを操作することで電源をオンにすると、制御ユニット50に電力が供給され、光照射の待機状態となる。光照射に際し、制御ユニット50は光源10のオン/オフを制御する。脱毛処理を開始する形態としては、例えば、本体に設けられたスイッチ類(不図示)を、ユーザが操作したときに脱毛処理が開始されるという形態が挙げられる。他には、皮膚を検知するセンサが設け、センサが皮膚を検知したことを制御ユニット50が感知したときに光照射する形態としてもよい。
【0039】
以上の本実施形態の光照射式脱毛装置においては、光源から400~1200nmの波長の光を出射する。また、制御ユニットは、光源からの光照射のオン/オフを制御する。そして、制御ユニットは、脱毛処理時における光源からの単回の光照射に際し、光源をオン状態とオフ状態とを交互に繰り返し、かつ、オン状態の時間とオフ状態の時間とを可変に制御する。光源がオン状態のときに皮膚の温度上昇があるが、光源がオフ状態のときには皮膚の温度が低下し、そのようなオン状態とオフ状態とが交互に繰り返されるため、急激な皮膚温度の上昇を抑えることができる。ひいては、ユーザに与える不快感を抑制することができる。また、脱毛に必要な総エネルギーは9~50J/cm2であるとすると、単回の光照射のうち、光源のオン状態で放出する照射エネルギーの合計が9~50J/cm2となるようにすると十分な脱毛効果が得られる。つまり、脱毛に必要な十分な総エネルギーが与えられながらも、ユーザ個別の性条によらず、ユーザに与える不快感を抑制することができる。
【0040】
一方、従来の光照射式脱毛装置は、オン状態及びオフ状態の制御がなく、脱毛に必要な照射エネルギーを単回の光照射において常時オン状態で行うため、皮膚温度が急激に上昇し、ユーザに不快感を与える。
【0041】
本実施形態において、「単回の光照射」とは、ある皮膚領域に対して、十分な脱毛効果が得られる程度の照射エネルギーで行う、連続した1回の光照射を意味する。ここで、「連続した」とは、光源のオン状態が連続することを意味するのではなく、光源のオン状態とオフ状態とが混在する処理が連続することを意味する。
【0042】
単回の光照射において、皮膚の急激な温度上昇を抑えるには、光照射の開始時は低い照射エネルギーとし、その後、照射エネルギーを徐々に増大させることが好ましい。そうすると、ユーザは光照射による発熱の刺激に慣れることから、十分な脱毛効果を得るための照射エネルギーを得るまでに、傷みなどの不快感を抑制することができる。
【0043】
上記のように、照射エネルギーを徐々に増大させるため、本実施形態において、制御ユニットが、脱毛処理時における光源からの単回の光照射に際し、以下のように制御するように設定することが好ましい。すなわち、制御ユニットは、n番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)と、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)とが、次の条件(1)及び(2)を満足するように光源のオン状態とオフ状態とを制御することが好ましい。ここで、本実施形態においては、光源をオン状態とオフ状態とが交互に繰り返されるように制御されるが、n番目のオン状態と、n+1番目のオン状態は、単回の光照射において、光源のオン状態が1番目、2番目、・・・n番目、n+1番目であることを意味する。なお、nは1から始まる自然数である。
条件(1):Eg(n)≦Eg(n+1)
条件(2):Eg(n+1)=A×Eg(n) A≧1
【0044】
条件(1)は、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)が、n番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)以上のエネルギーであることについて規定する。また、条件(2)は、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)が、n番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)に定数Aを乗じたエネルギーであることについて規定する。条件(2)において、定数Aは1以上であるため、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)は、n番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)よりも大きくA倍である。すなわち、条件(1)及び(2)を満足することで、経時的に徐々に光照射のエネルギーが増大していくこととなる。
【0045】
以上のように、本実施形態においては、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)が、n番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)以上のエネルギーよりも大きくなるように光照射をする。光照射によるエネルギーの調整は、光照射時間、光源における発光素子数(LED数)、若しくは電流の調整など、又はそれらの組合せによって行うことができる。例えば、光照射時間によるエネルギーの調整の場合、光源のオン/オフの制御による光照射時間を制御することにより行うことができる。また、発光素子数によるエネルギーの調整の場合、発光させる発光素子の増減により制御することができる。さらに、電流によるエネルギーの調整の場合、電流制御回路などにより行うことができる。中でも、光照射時間によるエネルギーの調整は、制御ユニットによる光源のオン/オフを制御することのみで実現でき、別部材を要しない点で最も好ましい。すなわち、光照射時間によるエネルギーの調整の場合、光源の駆動電流又は発光素子数で照射エネルギーを制御する場合と比較して低コストで実現可能である。
【0046】
図5のグラフは、光照射時における、経過時間と光密度との関係を示している。より具体的には、
図5は、光源(光密度一定)のオン状態の時間を、1番目から順に徐々に増し、光照射によるエネルギー(Eg(1)~Eg(5))を経時的に漸増した状態を示している。なお、
図5において、Eg(1)~Eg(5)の長方形の面積がエネルギーの大きさを示す。そして、当該面積の合計が、脱毛に必要な十分な総エネルギーであればよい。そのように構成することで、脱毛に必要な総エネルギーを皮膚に与えられながらも、ユーザに与える不快感を抑制することができる。
【0047】
図5において、Eg(n)とEg(n+1)との間が光照射をオフ状態とした時間である。
図5においては、光照射をオフとした時間はいずれも等しいが、条件(1)及び(2)を満足するのであれば、光照射がオフ状態となる時間は必ずしも等しくする必要はない。
【0048】
図5において、光照射をオフ状態とした時間としては、例えば、0.1~1.0秒とすることができる。また、エネルギーEg(1)~Eg(5)の各々は、例えば、0.1~1.0秒の間で漸増するように設定することができる。
【0049】
条件(2)において、1≦A≦2に設定するとすることが好ましい。定数Aを2以下とすることで、皮膚表面温度が高くなり過ぎず、痛みの発生を抑制することができる。
【0050】
また、定数Aは、1≦A≦2の範囲においてユーザが変更できるようにスイッチ類を設けるなどしてもよい。例えば、定数Aが1の場合を「弱」モード、1.5の場合を「中」モード、2の場合を「強」モードとすることが考えられる。
【0051】
以上の好ましい形態は、以下のように表現することもできる。すなわち、当該好ましい形態の光照射式脱毛装置は、400~1200nmに波長のピークを有する複数のLEDと、LEDの発光を制御する制御ユニットとを備える。そして、制御ユニットは、LEDのオン/オフを繰り返し、LED-オン時の放射エネルギーを制御する構成であって、照射エネルギーは前段照射Eg(n)と次段照射Eg(n+1)とからなり、前段照射であるEg(n)≦次段照射であるEg(n+1)であり、かつ、Eg(n+1)=A×Eg(n)(n>0かつ1≦A)である。ここで、LEDは
図1~4における光源10に対応し、制御ユニットは
図2、4における制御ユニット50に対応する。また、当該形態の光照射式脱毛装置の効果は上述の効果と同じである。
【0052】
一方、本実施形態において、制御ユニットが、脱毛処理時における光源からの単回の光照射に際し、以下のように制御するように設定してもよい。すなわち、制御ユニットは、n番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)と、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)とが条件(3)を満足するように制御する。併せて、制御ユニットは、n番目のオン状態の光照射とn+1番目の光照射との間における光源のオフ状態の時間TOFF(n+1~n+2)と、n+1番目のオン状態の光照射とn+2番目の光照射との間における光源のオフ状態の時間TOFF(n~n+1)とが条件(4)を満足するように制御する。なお、nは1から始まる自然数である。
条件(3):Eg(n)=Eg(n+1)
条件(4):TOFF(n~n+1)>TOFF(n+1~n+2)
【0053】
条件(3)は、n番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n)と、n+1番目のオン状態の光照射によるエネルギーEg(n+1)とが等しいことについて規定する。また、条件(4)は、n+1番目のオン状態の光照射とn+2番目のオン状態の光照射との間における光源のオフ状態の時間TOFF(n+1~n+2)が、n番目の光照射とn+1番目の光照射との間における光源のオフ状態の時間TOFF(n~n+1)よりも短いことについて規定する。すなわち、条件(3)及び(4)を満足することで、1番目~n+1番目までの光照射によるエネルギーが一定となり、かつ、経時的に光照射のオフ状態の時間が減少していくこととなる。すなわち、条件(3)及び(4)を満足することで、経時的に徐々に光照射のエネルギーが増大していくこととなる。
【0054】
図6のグラフは、光照射時における、経過時間と光密度との関係を示している。より具体的には、
図6は、光照射によるエネルギーEg(1)~Eg(5)において、光源(光密度一定)のオン状態の時間をいずれも一定とし、各々の間の光源のオフ状態の時間T
OFF(1~2)~T
OFF(4~5)を経時的に漸減した状態を示している。
図6に示すように、オフ時間が短くなることで単回の照射時間中に照射される平均エネルギーEgが徐々に増大することなる。また、
図5と同様に、Eg(1)~Eg(5)の長方形の面積がエネルギーの大きさを示す。そして、当該面積の合計が、脱毛に必要な十分な総エネルギーであればよい。そのように構成することで、脱毛に必要な総エネルギーを皮膚に与えられながらも、ユーザに与える不快感を抑制することができる。
【0055】
図6において、光照射をオン状態とした時間としては、例えば、0.1~1.0秒とすることができる。また、光照射をオフ状態とした時間T
OFF(1~2)~T
OFF(4~5)の各々は、例えば、0.1~1.0秒の間で漸減するように設定することができる。
【0056】
図6においては、1番目の光照射によるエネルギーEg(1)が大きく、ユーザに不快感を与える場合には、Eg(1)のみに対して、光照射時間を短くするなどしてエネルギーを小さくしてもよい。
【0057】
本実施形態の光照射式脱毛装置は、皮膚表面温度を測定するセンサをさらに備え、制御ユニットは、センサが測定した皮膚表面温度に基づき、光照射時間を制御することが好ましい。そのような構成によると、皮膚表面温度が高いときには、光照射時間を短くしたり、光照射を休止したりすることで、ユーザに与える不快感を抑制することができる。
【0058】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示は、十分な脱毛効果と、不快感の抑制との両立を図ることができる光照射式脱毛装置に適用可能である。具体的には、家庭用脱毛装置、業務用脱毛装置などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 光照射式脱毛装置
5 ハウジング
10 光源
12 基板
13 温度センサ
20 皮膚冷却部
40 冷却器
41 放熱部
42 接続部
43 把持部
44 放熱フィン
45 送風部
50 制御ユニット