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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240809BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B01J19/00 D
H05K3/18 L
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020146053
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041048
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都築 茂
(72)【発明者】
【氏名】三由 裕一
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-016010(JP,U)
【文献】実開昭56-023677(JP,U)
【文献】実開平01-120937(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第115608126(CN,A)
【文献】特開2011-256450(JP,A)
【文献】特開平11-061499(JP,A)
【文献】特開2013-129913(JP,A)
【文献】特開平5-329452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
H05K 3/18
C23G 3/00
C23G 5/04
C25D 5/02
C25D 7/06
B08B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を処理するための溶液が入れられる容器を備える処理システムであって、
前記容器は、
前記対象物を通過させる複数の通過口と、
前記溶液からの揮発ガスを排気するための排気口と、を有し、
前記処理システムは、
前記容器の内壁面と前記容器内の前記溶液の液面との間に位置し、少なくとも一部が前記排気口に対向している内側壁部を更に備え
前記複数の通過口は、
前記容器の外側から前記容器の内側に前記対象物を通過させる第1通過口と、
前記容器の内側から前記容器の外側に前記対象物を通過させる第2通過口と、を含み、
前記内側壁部は、
前記内側壁部の厚さ方向から見て前記第1通過口に重なり前記対象物を通過させる第1内側通過口と、
前記内側壁部の厚さ方向から見て前記第2通過口に重なり前記対象物を通過させる第2内側通過口と、を有する、
処理システム。
【請求項2】
対象物を処理するための溶液が入れられる容器を備える処理システムであって、
前記容器は、
前記対象物を通過させる複数の通過口と、
前記溶液からの揮発ガスを排気するための排気口と、を有し、
前記処理システムは、
前記容器の内壁面と前記容器内の前記溶液の液面との間に位置し、少なくとも一部が前記排気口に対向している内側壁部を更に備え、
前記複数の通過口は、
前記容器の外側から前記容器の内側に前記対象物を通過させる第1通過口と、
前記容器の内側から前記容器の外側に前記対象物を通過させる第2通過口と、を含み、
前記容器は、開口を更に有し、
前記排気口と前記開口との最短距離が、前記排気口と前記第1通過口との最短距離及び前記排気口と前記第2通過口との最短距離それぞれよりも短い、
処理システム。
【請求項3】
前記対象物を前記容器内で前記溶液に浸漬させることによって前記対象物を処理する、
請求項1又は2に記載の処理システム。
【請求項4】
前記容器は、
上面に開口部を有する箱状であり、前記溶液が入れられる溶液槽と、
前記通過口及び前記排気口を有し、前記溶液槽の前記開口部の一部を覆うカバーと、を含み、
前記内側壁部は、
前記カバーと前記溶液槽内の前記溶液の液面との間に位置し、少なくとも一部が前記排気口に対向している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項5】
前記内側壁部は、前記排気口の正面から見て前記排気口の全域に重なっている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項6】
前記内側壁部は、前記排気口の正面から見て前記排気口よりも大きい、
請求項5に記載の処理システム。
【請求項7】
前記排気口の正面から見て、
前記内側壁部の外周と前記第1通過口との最短距離が、前記内側壁部の前記外周と前記排気口との最短距離よりも短く、
前記内側壁部の前記外周と前記第2通過口との最短距離が、前記内側壁部の前記外周と前記排気口との最短距離よりも短い、
請求項1~6のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項8】
ロール状に巻回された前記対象物を巻き出す巻き出しロールと、
前記対象物をロール状に巻き取る巻き取りロールと、を更に備え、
前記処理システムでは、
前記巻き出しロールから巻き出された前記対象物が前記第1通過口を通過し、
前記溶液により処理された前記対象物が前記第2通過口を通過して前記巻き取りロールに巻き取られる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項9】
前記内側壁部の厚さ方向において前記内側壁部と前記容器の前記内壁面との最短距離は、前記内側壁部と前記液面との距離よりも短い、
請求項1~8のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項10】
前記排気口を通して前記揮発ガスを排気する排気装置を更に備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項11】
前記容器は、前記排気口を複数有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項12】
前記複数の排気口は、2つの排気口であり、
前記2つの排気口を正面から見たときに、前記2つの排気口が前記容器の外壁面の中心を基準として点対称に配置されている、
請求項11に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理システムに関し、より詳細には、処理用の溶液を利用して対象物を処理する処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、表面処理方法として、少なくとも片面に金属層を有する長尺状のフィルム状部材をロールツーロール方式で搬送しながらその表面を連続的に処理する方法を開示している。
【0003】
特許文献1に記載された表面処理方法では、ほぼ密閉された空間内でフィルム状部材の金属層を有する面に酸を含む液体を塗布するとともに、1秒当たり空間内に存在するガスの15~50%を置換する。
【0004】
また、特許文献1は、ロールツーロール方式で搬送される長尺フィルム状部材に連続的に電気めっきを施す電気めっき部と、電気めっき部で電気めっきを施す前に長尺フィルム状部材に連続的に表面処理を施す前処理部とからなる電気めっき装置を開示している。前処理部は、長尺フィルム状部材に浸漬により塗布させる酸を含む液体が貯められたほぼ密閉された容器と、1秒当たり容器内の空間に存在するガスの15~50%を置換するガス置換手段と、を有している。
【0005】
容器には、長尺フィルム状部材の容器への搬入及び搬出がそれぞれ行われる入口及び出口が設けられている。また、容器には、酸性ミストを含んだガスを排気するための排気口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-124418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
処理用の溶液を利用して対象物の処理を行う処理システム及び処理方法では、溶液から溶液の成分が揮発して溶液の成分が変化してしまうことがあった。
【0008】
本開示の目的は、溶液からの溶液の成分の揮発を抑制することが可能な処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る処理システムは、対象物を処理するための溶液が入れられる容器を備える。前記容器は、前記対象物を通過させる複数の通過口と、前記溶液からの揮発ガスを排気するための排気口と、を有する。前記処理システムは、内側壁部を更に備える。前記内側壁部は、前記容器の内壁面と前記容器内の前記溶液の液面との間に位置する。前記内側壁部は、少なくとも一部が前記排気口に対向している。前記複数の通過口は、前記容器の外側から前記容器の内側に前記対象物を通過させる第1通過口と、前記容器の内側から前記容器の外側に前記対象物を通過させる第2通過口と、を含む。前記内側壁部は、前記内側壁部の厚さ方向から見て前記第1通過口に重なり前記対象物を通過させる第1内側通過口と、前記内側壁部の厚さ方向から見て前記第2通過口に重なり前記対象物を通過させる第2内側通過口と、を有する。
本開示の一態様に係る処理システムは、対象物を処理するための溶液が入れられる容器を備える。前記容器は、前記対象物を通過させる複数の通過口と、前記溶液からの揮発ガスを排気するための排気口と、を有する。前記処理システムは、内側壁部を更に備える。前記内側壁部は、前記容器の内壁面と前記容器内の前記溶液の液面との間に位置する。前記内側壁部は、少なくとも一部が前記排気口に対向している。前記複数の通過口は、前記容器の外側から前記容器の内側に前記対象物を通過させる第1通過口と、前記容器の内側から前記容器の外側に前記対象物を通過させる第2通過口と、を含む。前記容器は、開口を更に有する。前記排気口と前記開口との最短距離が、前記排気口と前記第1通過口との最短距離及び前記排気口と前記第2通過口との最短距離それぞれよりも短い。
【発明の効果】
【0011】
本開示の処理システムでは、溶液からの溶液の成分の揮発を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る処理システムの要部斜視図である。
図2図2は、同上の処理システムの要部断面図である。
図3図3は、同上の処理システムのブロック構成図である。
図4図4は、同上の処理システムの動作説明図である。
図5図5は、比較例に係る処理システムの動作説明図である。
図6図6は、実施形態の変形例1に係る処理システムの要部断面図である。
図7図7は、実施形態の変形例2に係る処理システムの要部断面図である。
図8図8は、実施形態の変形例3に係る処理システムの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
下記の実施形態等において説明する図1、2、4~8は模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0014】
(実施形態)
以下、実施形態に係る処理システム1について、図1~4に基づいて説明する。
【0015】
(1)概要
処理システム1は、例えば、工場等に設置され、処理用の溶液9を利用して対象物8を処理(例えば、化学的被覆又は化学的処理)する。対象物8を用いて製造されるデバイスは、例えば、プリント配線基板、半導体装置、コンデンサ、機能性フィルム状デバイス等であるが、これらに限らない。また、溶液9は、例えば、めっき液、重合液、エッチング液、現像液、剥離液、コーティング液、触媒スラリー及び洗浄液の群から選択される1種類の溶液であるが、これらに限らない。溶液9の濃度は、対象物8の処理条件等に応じて予め決められている。
【0016】
処理システム1は、例えば、容器2内に溶液9としてめっき液が入れられている場合、対象物8を処理することによって、対象物8にめっき膜を形成する。処理システム1は、例えば、容器2内に溶液9として重合液が入れられている場合、対象物8を処理することによって、対象物8に導電性高分子膜を形成する。
【0017】
(2)処理システムの構成
処理システム1は、対象物8を処理するための溶液9が入れられる容器2を備える。容器2は、対象物8を通過させる通過口21と、溶液9からの揮発ガスを排気するための排気口24と、を有する。溶液9からの揮発ガスは、溶液9から揮発した成分を含むガスである。処理システム1は、通過口21を開放した状態で、対象物8を容器2内で溶液9に浸漬させることによって対象物8を処理する。
【0018】
処理システム1では、容器2は、通過口21を複数(例えば、2つ)有する。複数の通過口21は、容器2の外側から容器2の内側に対象物8を通過させる第1通過口22と、容器2の内側から容器2の外側に対象物8を通過させる第2通過口23と、を含む。容器2において、第1通過口22は、処理前の対象物8の入口となり、第2通過口23は、処理後の対象物8の出口となる。
【0019】
処理システム1は、例えば、ロールツーロール方式の処理システムであり、巻き出しロール11と、巻き取りロール12と、を更に備える。巻き出しロール11は、ロール状に巻回された対象物8を巻き出す。巻き取りロール12は、対象物8をロール状に巻き取る。対象物8は、フィルム状であるが、これに限らず、例えば、帯状であってもよい。処理システム1は、巻き出しロール11及び巻き取りロール12を駆動する駆動装置10(図3参照)と、駆動装置10を制御する制御装置7(図3参照)と、を更に備える。
【0020】
処理システム1では、図2に示すように、巻き出しロール11が第1回転方向R1に回転し、巻き取りロール12が第2回転方向R2に回転する。容器2の第1通過口22及び第2通過口23の各々は、対象物8の幅方向に長いスリット状である。
【0021】
処理システム1は、巻き出しロール11と巻き取りロール12との間で対象物8を容器2に出し入れするためのガイドロールセットを備えている。ガイドロールセットは、第1ガイドロール13と、第2ガイドロール14と、第3ガイドロール15と、第4ガイドロール16と、を含む。第1ガイドロール13は、巻き出しロール11の側方において容器2の第1通過口22の上方に位置している。第2ガイドロール14は、容器2内において溶液9中で第1通過口22の下方に位置している。第3ガイドロール15は、容器2内において溶液9中で第2通過口23の下方に位置している。第4ガイドロール16は、第2通過口23の上方において巻き取りロール12の側方に位置している。
【0022】
ガイドロールセットでは、第1ガイドロール13と第2ガイドロール14とによって、巻き出しロール11から巻き出された対象物8が第1通過口22を通過するように対象物8をガイドする。ガイドロールセットでは、第2ガイドロール14と第3ガイドロール15とによって、対象物8を溶液9中において第1通過口22の下方の位置から第2通過口23の下方の位置にガイドする。ガイドロールセットでは、第3ガイドロール15と第4ガイドロール16とによって、対象物8が第2通過口23を通過するように対象物8をガイドする。また、ガイドロールセットでは、第4ガイドロール16によって対象物8を巻き取りロール12にガイドする。
【0023】
処理システム1は、容器2内に配置される内側壁部5を更に備える。内側壁部5は、容器2の内壁面20と容器2内の溶液9の液面91との間に位置する。実施形態に係る処理システム1では、内側壁部5は、内側壁部5の厚さ方向において容器2の内壁面20のうち液面91に対向する部位及び液面91から離れている。言い換えれば、内側壁部5は、内側壁部5の厚さ方向において容器2の内壁面20のうち液面91に対向する部位から所定距離(例えば、1cm~2cm)を開けて配置されており、液面91とは接していない。内側壁部5は、排気口24に対向している。内側壁部5は、排気口24の正面から見て(図2の上側から見て)、排気口24の全域に重なっている。内側壁部5は、例えば、ステンレス鋼によって形成されているが、これに限らない。
【0024】
容器2は、溶液槽3と、カバー4と、を含む。溶液槽3は、上面33に開口部34を有する箱状であり、溶液9が入れられる。カバー4は、複数の通過口21及び排気口24を有し、溶液槽3の開口部34の一部を覆う。したがって、容器2の内外は、複数の通過口21及び排気口24それぞれによって連通している。溶液槽3は、例えば、ステンレス鋼によって形成されているが、これに限らない。また、カバー4は、例えば、ステンレス鋼によって形成されているが、これに限らない。
【0025】
溶液槽3は、例えば、矩形箱状である。溶液槽3は、底壁31と、底壁31の外周から全周にわたって上方に延びる外周壁32と、を有する。底壁31は、矩形板状である。外周壁32は、矩形枠状である。溶液槽3に入れられる溶液9の液面91の液位は、溶液槽3の上面33よりも低い基準高さレベル以下である。基準高さレベルは、溶液槽3に入れられる溶液9の液面91の液位に関して許容される高さレベルである。基準高さレベルは、対象物8に対して溶液9による処理が行われるように決められる。また、処理システム1では、対象物8が溶液9に浸漬されたとき溶液9が溶液槽3から溢れないように決められる。処理システム1では、基準高さレベルは、第2ガイドロール14及び第3ガイドロール15の上端の高さレベルよりも高い。
【0026】
カバー4は、上壁41と、上壁41の外周から全周にわたって下方に延びる外周壁42と、を有する。上壁41は、矩形板状である。外周壁42は、矩形枠状である。容器2では、2つの通過口21が、カバー4の上壁41に形成されている。2つの通過口21は、カバー4の短手方向において互いに離れている。カバー4の上側から見て、第1通過口22及び第2通過口23は、カバー4の上壁41の短手方向の第1端及び第2端にそれぞれ形成されている。第1通過口22及び第2通過口23は、カバー4の上側から見て、第1通過口22と第2通過口23との並んでいる方向に直交する方向に長いスリット状である。カバー4は、上壁41の一部を上方に延出させた円筒状の延出部44を有しており、延出部44の先端に上述の排気口24を有する。カバー4の上側から見て、排気口24は、第1通過口22と第2通過口23との間に位置している。カバー4では、カバー4の上側から見て、排気口24と第1通過口22との距離と、排気口24と第2通過口23との距離と、が同じである。
【0027】
処理システム1では、延出部44に、排気ダクトを接続することが可能となっている。排気ダクトの内部空間は、排気口24を通して容器2の内部空間とつながる。また、処理システム1は、排気装置6(図3参照)を更に備えている。排気装置6は、例えば、排気ポンプ61であり、排気ダクトを通して容器2内の揮発ガスを含む気体を排気する。これにより、処理システム1では、容器2内の空間を負圧状態に減圧可能であり、揮発ガスが第1通過口22及び第2通過口23それぞれを通過して容器2の外へ漏れるのを抑制できる。排気装置6は、例えば、上述の制御装置7によって制御される。
【0028】
処理システム1は、センサ部19(図3参照)を更に備える。センサ部19は、複数の風速センサを含む。複数の風速センサは、容器2の複数の通過口21に一対一に対応しており、対応する通過口21を通して容器2の外側から容器2の内側へ向かう気流の風速を検出する。この風速は、排気装置6の排気速度等に依存し得る。制御装置7は、センサ部19の出力に基づいて、複数の通過口21それぞれでの気流の風速が所定速度(例えば、0.4m/sec)以上となるように排気装置6の排気速度等を制御するように構成されていてもよい。制御装置7は、複数の風速センサそれぞれの出力に基づいて容器2内の気体が複数の風速センサそれぞれに対応する通過口21を通して漏れているか否かを判断することもできる。揮発ガスの成分の種類によっては、排気装置6が、排気ポンプ61に加えて、揮発ガスの成分を捕獲するフィルタと、揮発ガスの成分を分解する分解装置と、の少なくとも一方を含んでいてもよい。また、排気装置6は、排気ポンプ61に限らず、排気ファンであってもよい。
【0029】
制御装置7は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、1又は複数のコンピュータを有している。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御装置7としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ(磁気ディスク)等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0030】
内側壁部5は、カバー4と溶液槽3内の溶液9の液面91との間においてカバー4及び液面91から離れて位置し、排気口24に対向している。これにより、処理システム1では、第1通過口22及び第2通過口23と排気口24とが、容器2(のカバー4)と内側壁部5との間の隙間S1を通してつながっている。処理システム1は、内側壁部5を保持する保持部を更に備える。内側壁部5は、保持部を介して、カバー4から所定の距離を空けた状態を維持しつつ、カバー4に保持される。保持部の構造は特に限定されず、例えば内側壁部5と連続一体となって形成されてもよい。保持部は、例えば、ボルトを通す孔が設けられていて、ボルト及びナットを利用してカバー4に保持されてもよい。また、処理システム1は、内側壁部5を含む内側カバーを備え、内側カバーが内側カバーを容器2に取り付けるためのフランジ部を有していてもよい。この場合、フランジ部が、保持部に相当する。
【0031】
処理システム1では、排気口24が溶液槽3の底壁31の上方に位置しており、液面91の上方に位置している。内側壁部5は、カバー4の内側に位置している。内側壁部5は、平板状である。内側壁部5の厚さ方向から見た内側壁部5の外周形状は、矩形状である。内側壁部5は、カバー4の上壁41よりも小さい。内側壁部5は、内側壁部5の厚さ方向が上下方向と揃うように容器2内に配置されている。内側壁部5は、内側壁部5の厚さ方向において第1通過口22及び第2通過口23には重ならない。これにより、処理システム1は、内側壁部5が対象物8に接触するのを抑制することができる。
【0032】
内側壁部5は、上下方向において、カバー4の上壁41から上記所定距離(例えば、1cm~2cm)だけ離れて位置している。上記所定距離は、容器2の内壁面20のうち液面91に対向する部位(上壁41において液面91に対向する面)と内側壁部5との距離であり、内側壁部5と液面91との距離よりも短い。また、内側壁部5は、カバー4の外周壁42の内側において、外周壁42から離れて位置している。第1通過口22と第2通過口23との並んでいる方向における内側壁部5の長さは、第1通過口22と第2通過口23との距離と同じである。容器2の上側から見て、内側壁部5の矩形状の外周に含まれる2つの長辺のうち一方の長辺は、第1通過口22における第2通過口23側の開口縁と揃っており、他方の長辺は、第2通過口23における第1通過口22側の開口縁と揃っている。つまり、内側壁部5は、第1通過口22及び第2通過口23のいずれとも重ならないように配置されている。処理システム1では、排気口24の正面から見て(又は内側壁部5の厚さ方向から見て)、内側壁部5の外周と第1通過口22との最短距離が、内側壁部5の外周と排気口24との最短距離よりも短い。実施形態に係る処理システム1では、排気口24の正面から見て内側壁部5の外周と第1通過口22との最短距離は、ゼロであるが、ゼロである場合に限らない。また、処理システム1では、排気口24の正面から見て(又は内側壁部5の厚さ方向から見て)、内側壁部5の外周と第2通過口23との最短距離が、内側壁部5の外周と排気口24との最短距離よりも短い。実施形態に係る処理システム1では、排気口24の正面から見て内側壁部5の外周と第2通過口23との最短距離は、ゼロであるが、ゼロである場合に限らない。
【0033】
内側壁部5は、排気口24の正面から見て円形状の排気口24の全域に重なっている。処理システム1では、内側壁部5は、上下方向において排気口24の全域に重なっている。
【0034】
処理システム1では、内側壁部5は、排気口24の正面から見て排気口24よりも大きい。処理システム1では、排気口24を内側壁部5の厚さ方向において内側壁部5に投影すると、内側壁部5の矩形状の外周の内側に、円形状の排気口24が投影される。
【0035】
(3)処理システムの動作
処理システム1では、巻き出しロール11から巻き出された対象物8が第1通過口22を通過し、溶液9により処理された対象物8が第2通過口23を通過して巻き取りロール12に巻き取られる。例えば、溶液9がめっき液の場合、溶液9により処理された対象物8には、めっき膜が形成されている。例えば、溶液9がピロール(CN)を含む重合液の場合、溶液9により処理された対象物8には、導電性高分子膜が形成されている。
【0036】
処理システム1では、容器2内で溶液9からの揮発ガスは、排気口24を通して排気される。図4は、実施形態に係る処理システム1において気体の流れる方向を矢印で模式的に示した図である。これに対して、図5は、比較例に係る処理システム1rにおいて気体の流れる方向を矢印で模式的に示した図である。比較例に係る処理システム1rは、実施形態に係る処理システム1の内側壁部5を備えていない点のみ、実施形態に係る処理システム1と相違する。
【0037】
比較例に係る処理システム1rでは、排気口24から容器2内の気体が排出されるので、複数の通過口21それぞれから容器2内に流入して液面91近くの空間を通って排気口24に向かう気流が発生しやすい。このため、比較例に係る処理システム1rでは、溶液9中の成分の揮発量が増加しやすく、溶液9から揮発した成分に関する溶液9中の濃度が低下して、溶液9による処理により形成される生成物(例えば、めっき膜、導電性高分子膜等)の品質が低下してしまう可能性がある。生成物がめっき膜の場合、品質としては、例えば、めっき膜の膜質、厚さ、膜中成分、対象物8への密着性等が挙げられる。生成物が導電性高分子膜の場合、導電性高分子膜の膜質、導電率、厚さ、対象物8への密着性等が挙げられる。
【0038】
これに対して、実施形態に係る処理システム1は、排気口24から容器2内の気体が排出される点は比較例に係る処理システム1rと同じであるが、内側壁部5を備えているので、複数の通過口21それぞれから容器2内に流入して容器2の内壁面20と内側壁部5との間の隙間S1を通って排気口24に向かう気流が発生しやすい。これにより、実施形態に係る処理システム1では、液面91の近くの空間(内側壁部5と液面91との間の空間等)を通って排気口24に向かう気流が発生しにくくなる。言い換えれば、実施形態に係る処理システム1では、液面91付近の空気の動きを抑制することが可能となり、溶液9からの溶液9の成分の揮発が気流の影響で促進されることを抑制することが可能となる。空気の動きを抑制するとは、空気の循環を抑制することと、空気の風速を遅くすることと、同様の意味である。よって、実施形態に係る処理システム1は、溶液9の成分の揮発を抑制することが可能となり、溶液9の経時変化を抑制することが可能となる。実施形態に係る処理システム1は、溶液9の成分の揮発を抑制することにより、溶液9において揮発した成分の補充量を抑制することも可能となる。
【0039】
(4)まとめ
(4-1)処理システム
実施形態に係る処理システム1は、対象物8を処理するための溶液9が入れられる容器2を備える。容器2は、対象物8を通過させる複数の通過口21と、溶液9からの揮発ガスを排気するための排気口24と、を有する。処理システム1は、内側壁部5を更に備える。内側壁部5は、容器2の内壁面20と容器2内の溶液9の液面91との間に位置する。内側壁部5は、少なくとも一部が排気口24に対向している。
【0040】
実施形態1に係る処理システム1は、溶液9からの溶液9の成分の揮発を抑制することが可能となる。
【0041】
実施形態に係る処理システム1は、排気口24からの排気量を少なくすることが可能となる。これにより、実施形態に係る処理システム1は、排気装置6の消費電力を低減することが可能となり、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0042】
(4-2)処理方法
実施形態に係る処理方法は、対象物8を処理するための溶液9が入れられた容器2の通過口21(第1通過口22)から対象物8を容器2内に入れ、溶液9を利用して対象物8を処理する。処理方法では、溶液9の揮発ガスを、容器2の内壁面20と溶液9の液面91との間に位置し容器2の排気口24に対向している内側壁部5と、内壁面20と、の間の隙間S1を通して、排気口24から排気させる。
【0043】
実施形態に係る処理方法では、溶液9からの溶液9の成分の揮発を抑制することが可能となる。
【0044】
(5)変形例
上記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0045】
(5-1)変形例1
実施形態の変形例1に係る処理システム1aについて、図6を参照して説明する。変形例1に係る処理システム1aに関し、実施形態に係る処理システム1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
変形例1に係る処理システム1aでは、実施形態1に係る処理システム1と比べて、内側壁部5の厚さ方向から見た内側壁部5の外形サイズが大きい。
【0047】
変形例1に係る処理システム1aでは、内側壁部5は、内側壁部5の厚さ方向から見て第1通過口22に重なり対象物8を通過させる第1内側通過口52と、内側壁部5の厚さ方向から見て第2通過口23に重なり対象物8を通過させる第2内側通過口53と、を有する。排気口24、第1通過口22及び第2通過口23を内側壁部5の厚さ方向において内側壁部5に投影すると、内側壁部5の矩形状の外周の内側に、円形状の排気口24とスリット状の第1通過口22及び第2通過口23が投影される。第1内側通過口52は、第1通過口22の内側壁部5への投影領域の全域にわたって形成されている。第1内側通過口52は、スリット状であり、第1通過口22と同じ大きさである。また、第2内側通過口53は、第2通過口23の内側壁部5への投影領域の全域にわたって形成されている。第2内側通過口53は、スリット状であり、第2通過口23と同じ大きさである。
【0048】
変形例1に係る処理システム1aは、実施形態1に係る処理システム1と比べて、溶液9からの溶液9の成分の揮発を抑制することが可能となる。
【0049】
(5-2)変形例2
実施形態の変形例2に係る処理システム1bについて、図7を参照して説明する。変形例2に係る処理システム1bに関し、実施形態に係る処理システム1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
変形例2に係る処理システム1bでは、実施形態1に係る処理システム1と比べて、内側壁部5の厚さ方向から見た内側壁部5の外形サイズが小さい。
【0051】
変形例2に係る処理システム1bにおいても、内側壁部5の一部が排気口24に対向しており、排気口24の正面から見て、排気口24の全域が内側壁部5に重なっている。
【0052】
変形例2に係る処理システム1bは、実施形態に係る処理システム1と同様、溶液9からの溶液9の成分の揮発を抑制することが可能となる。ただし、液面91付近の空気の動きを抑制する観点では、内側壁部5の外形サイズがより大きいほうが好ましく、変形例2に係る処理システム1bよりも内側壁部5の外形サイズの大きな、実施形態に係る処理システム1、変形例1に係る処理システム1aのほうが有利である。
【0053】
(5-3)変形例3
実施形態の変形例3に係る処理システム1cについて、図8を参照して説明する。変形例3に係る処理システム1cに関し、実施形態に係る処理システム1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
変形例3に係る処理システム1cは、容器2が開口25を更に有する点で、実施形態に係る処理システム1と相違する。開口25は、カバー4の上壁41と外周壁42とに跨って形成されている。
【0055】
変形例3に係る処理システム1cでは、排気口24と開口25との距離が、排気口24と第1通過口22との距離及び排気口24と第2通過口23との距離よりも短い。これにより、変形例3に係る処理システム1cでは、容器2の外側から開口25を通して容器2内に電気配線やセンサの接続ケーブルを通すことができるとともに、排気口24を通して排気する気体の排気量を少なくすることが可能となる。
【0056】
また、変形例3に係る処理システム1cでは、容器2が排気口24を複数(図示例では、2つ)有している。2つの排気口24は、上側から見て、第1通過口22と第2通過口23との並んでいる方向とは直交する方向において互いに離れて位置している。また、変形例3に係る処理システム1cは、容器2が開口25を複数(図示例では、2つ)有しており、複数の開口25と複数の排気口24とが一対一に対応している。変形例3に係る処理システム1cでは、容器2の上側から見て、2つの排気口24及び2つの開口25が、一方の開口25、一方の排気口24、他方の排気口24及び他方の開口25の順に並んでいる。内側壁部5は、容器2の上側から見て、複数の排気口24の全域に重なるように配置されている。
【0057】
変形例3に係る処理システム1cは、容器2が複数の排気口24及び複数の開口25を有するので、容器2からの排気量を少なくすることが可能となる。
【0058】
(5-4)その他の変形例
例えば、排気口24は、容器2において溶液9の液面91よりも高い位置(基準高さレベルよりも高い位置)にあればよく、カバー4の上壁41から上方に延出させた延出部44が有する場合に限らない。排気口24は、カバー4の上壁41に形成されていてもよいし、カバー4の外周壁42に形成されていてもよいし、カバー4の上壁41と外周壁42とに跨って形成されていてもよいし、カバー4の外周壁42と溶液槽3の外周壁32とに跨って形成されていてもよい。
【0059】
また、内側壁部5は、少なくとも一部が排気口24に対向していればよい。また、内側壁部5は、平板状に限らず、例えば、湾曲した板状であってもよいし、波板状であってもよい。また、内側壁部5は、厚さ方向に交差する2つの主面のうち一方の主面が平面状で、他方の主面が凸曲面状又は凹曲面状であってもよいし、2つの主面が凸曲面状であってもよいし、2つの主面が凹曲面状であってもよい。
【0060】
また、処理システム1、1a、1b、1cは、巻き出しロール11と巻き取りロール12とのペアを複数ペア有し、2つ1ペアの通過口21(第1通過口22、第2通過口23)を複数ペア有していてもよい。これにより、処理システム1、1a、1b、1cは、複数の巻き出しロール11から巻き出される複数の対象物8を同時に処理することが可能となり、タクトタイムの短縮化を図れる。
【0061】
また、処理システム1、1a、1b、1cは、巻き出しロール11及び巻き取りロール12の各々がそれぞれの軸方向において離れて複数の対象物8を巻回可能であり、2つ1ペアの通過口21(第1通過口22、第2通過口23)を複数ペア有していてもよい。
【0062】
また、処理システム1、1a、1b、1cは、ロールツーロール方式の処理システムに限らず、対象物8の形状も、フィルム状、リボン状等に限らない。また、処理システムは、処理前の対象物8の容器2内への投入、処理後の対象物8の容器2からの取り出しをロボットによって行うように構成されていてもよい。例えば、この場合、容器2における通過口21の数は、複数に限らず、1つであってもよい。
【0063】
また、対象物8の処理は、容器2内で溶液9に浸漬されることによって行われる処理に限らず、溶液9の蒸気によって行われる処理(例えば、蒸気エッチング)であってもよい。
【0064】
また、処理システム1、1a、1b、1cは、操作表示装置を更に備えていてもよい。操作表示装置は、表示装置とタッチパッドとを含むタッチパネルを備え、ユーザインターフェイス(GUI:Graphic User Interface)として機能する。制御装置は、操作表示装置の表示装置に情報を出力し、操作表示装置のタッチパッドから入力される情報を受け付ける。
【0065】
操作表示装置には、必要に応じて様々な画面が表示される。操作表示装置は、専用でなくても、パーソナルコンピュータ等であってもよい。処理システム1、1a、1b、1cでは、操作表示装置が、作業者等が操作可能な操作部を構成している。また、処理システム1、1a、1b、1cは、操作表示装置の代わりに、表示装置と操作装置とを個別に備えていてもよい。この場合、操作装置が、ユーザが操作可能な操作部を構成する。操作部は、種々のスイッチとタッチパネルとの少なくとも一方を備えていればよい。種々のスイッチには、例えば、処理システム1、1a、1b、1cの運転の開始を指示する押釦スイッチ、処理システム1、1a、1b、1cの運転の停止を指示する押釦スイッチ、緊急停止用の押釦スイッチ等が含まれている。
【0066】
処理システム1、1a、1b、1cでは、作業者等が操作表示装置を利用して、制御装置による制御内容等を設定できるように構成されている。これにより、処理システム1、1a、1b、1cでは、作業者等が、処理システム1、1a、1b、1cでの対象物8に対する溶液9での処理の条件(例えば、対象物8を溶液9に浸漬させている時間)等を適宜設定できるようになっている。
【0067】
なお、処理システム1、1a、1b、1cは、溶液9を用いたウェット処理を行うシステムであるが、容器2の内側において排気口の少なくとも一部に対向する内側壁部5を配置する構成は、チャンバ(容器)内でドライ処理を行うシステムにも適用可能である。
【0068】
(態様)
本明細書には、以下の態様が開示されている。
【0069】
第1の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)は、対象物(8)を処理するための溶液(9)が入れられる容器(2)を備える。容器(2)は、対象物(8)を通過させる通過口(21)と、溶液(9)からの揮発ガスを排気するための排気口(24)と、を有する。処理システム(1)は、内側壁部(5)を更に備える。内側壁部(5)は、容器(2)の内壁面(20)と容器(2)内の溶液(9)の液面(91)との間に位置する。内側壁部(5)は、少なくとも一部が排気口(24)に対向している。
【0070】
第1の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)は、溶液(9)からの溶液(9)の成分の揮発を抑制することが可能となる。
【0071】
第2の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)は、第1の態様において、対象物(8)を容器(2)内で溶液(9)に浸漬させることによって対象物(8)を処理する。
【0072】
第2の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、対象物(8)を浸漬させる溶液(9)の成分の経時変化を抑制することが可能となる。
【0073】
第3の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、第1又は2の態様において、容器(2)は、溶液槽(3)と、カバー(4)と、を含む。溶液槽(3)は、上面(33)に開口部(34)を有する箱状であり、溶液(9)が入れられる。カバー(4)は、通過口(21)及び排気口(24)を有し、溶液槽(3)の開口部(34)の一部を覆う。内側壁部(5)は、カバー(4)と溶液槽(3)内の溶液(9)の液面(91)との間に位置し、少なくとも一部が排気口(24)に対向している。
【0074】
第3の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、溶液(9)からの溶液(9)の成分の揮発を抑制することが可能となる。
【0075】
第4の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、第1~3の態様のいずれか一つにおいて、内側壁部(5)は、排気口(24)の正面から見て排気口(24)の全域に重なっている。
【0076】
第4の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、液面(91)付近での気流の発生を、より抑制することが可能となり、溶液(9)からの溶液(9)の成分の揮発を、より抑制することが可能となる。
【0077】
第5の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、第4の態様において、内側壁部(5)は、排気口(24)の正面から見て排気口(24)よりも大きい。
【0078】
第5の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、溶液(9)からの溶液の成分の揮発を、より抑制することが可能となる。
【0079】
第6の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、第1~5の態様のいずれか一つにおいて、容器(2)は、通過口(21)を複数有する。複数の通過口(21)は、容器(2)の外側から容器(2)の内側に対象物(8)を通過させる第1通過口(22)と、容器(2)の内側から容器(2)の外側に対象物(8)を通過させる第2通過口(23)と、を含む。
【0080】
第6の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、タクトタイムの短縮を図れる。
【0081】
第7の態様に係る処理システム(1)では、第6の態様において、排気口(24)の正面から見て、内側壁部(5)の外周と第1通過口(22)との最短距離が、内側壁部(5)の外周と排気口(24)との最短距離よりも短い。排気口(24)の正面から見て、内側壁部(5)の外周と第2通過口(23)との最短距離が、内側壁部(5)の外周と排気口(24)との最短距離よりも短い。
【0082】
第7の態様に係る処理システム(1)では、溶液(9)からの溶液の成分の揮発を、より抑制することが可能となる。
【0083】
第8の態様に係る処理システム(1a)では、第6又は7の態様において、内側壁部(5)は、内側壁部(5)の厚さ方向から見て第1通過口(22)に重なり対象物(8)を通過させる第1内側通過口(52)と、内側壁部(5)の厚さ方向から見て第2通過口(23)に重なり対象物(8)を通過させる第2内側通過口(53)と、を有する。
【0084】
第8の態様に係る処理システム(1a)では、溶液(9)からの溶液の成分の揮発を、より抑制することが可能となる。
【0085】
第9の態様に係る処理システム(1c)では、第6~8の態様のいずれか一つにおいて、容器(2)は、開口(25)を更に有する。排気口(24)と開口(25)との最短距離が、排気口(24)と第1通過口(22)との最短距離及び排気口(24)と第2通過口(23)との最短距離それぞれよりも短い。
【0086】
第9の態様に係る処理システム(1c)では、容器(2)内に電気配線やセンサの接続ケーブルを通しつつ排気量を抑制できる。
【0087】
第10の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)は、第6~9の態様のいずれか一つにおいて、巻き出しロール(11)と、巻き取りロール(12)と、を更に備える。巻き出しロール(11)は、ロール状に巻回された対象物(8)を巻き出す。巻き取りロール(12)は、対象物(8)をロール状に巻き取る。処理システム(1;1a;1b;1c)では、巻き出しロール(11)から巻き出された対象物(8)が第1通過口(22)を通過し、溶液(9)により処理された対象物(8)が第2通過口(23)を通過して巻き取りロール(12)に巻き取られる。
【0088】
第10の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、対象物(8)を連続的に処理することが可能となる。
【0089】
第11の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、第1~10の態様のいずれか一つにおいて、内側壁部(5)の厚さ方向において内側壁部(5)と容器(2)の内壁面(20)との最短距離は、内側壁部(5)と液面(91)との距離よりも短い。
【0090】
第11の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、溶液(9)からの溶液(9)の成分の揮発を抑制することが可能となる。
【0091】
第12の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)は、第1~11の態様のいずれか一つにおいて、排気装置(6)を更に備える。排気装置(6)は、排気口(24)を通して揮発ガスを排気する。
【0092】
第12の態様に係る処理システム(1;1a;1b;1c)では、容器(2)内の溶液(9)からの揮発ガスを排気装置(6)によって排気することができる。
【0093】
第13の態様に係る処理システム(1c)は、第1~12の態様において、容器(2)は、排気口(24)を複数有する。
【0094】
第13の態様に係る処理システム(1c)は、排気口(24)ごとの排気量を抑制することが可能となる。
【0095】
第14の態様に係る処理システム(1c)は、第13の態様において、複数の排気口(24)は、2つの排気口(24)である。2つの排気口(24)を正面から見たときに、2つの排気口(24)が容器(2)の外壁面(容器2の上面)の中心を基準として点対称に配置されている。
【0096】
第14の態様に係る処理システム(1c)は、排気口(24)ごとの排気量を抑制することができる。
【0097】
第15の態様に係る処理方法は、対象物(8)を処理するための溶液(9)が入れられた容器(2)の通過口(21)から対象物(8)を容器(2)内に入れ、溶液(9)を利用して対象物(8)を処理する。処理方法では、溶液(9)からの揮発ガスを、容器(2)の内壁面(20)と溶液(9)の液面(91)とから離れて位置し少なくとも一部が容器(2)の排気口(24)に対向している内側壁部(5)と、内壁面(20)と、の間の隙間(S1)を通して、排気口(24)から排気させる。
【0098】
第15の態様に係る処理方法では、溶液(9)からの溶液(9)の成分の揮発を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
1、1a、1b、1c 処理システム
2 容器
20 内壁面
21 通過口
22 第1通過口
23 第2通過口
24 排気口
25 開口
3 溶液槽
31 底壁
32 外周壁
33 上面
34 開口部
4 カバー
41 上壁
42 外周壁
44 延出部
5 内側壁部
52 第1内側通過口
53 第2内側通過口
6 排気装置
61 排気ポンプ
7 制御装置
8 対象物
9 溶液
91 液面
11 巻き出しロール
12 巻き取りロール
13 第1ガイドロール
14 第2ガイドロール
15 第3ガイドロール
16 第4ガイドロール
S1 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8