(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電気装置、機器管理システム、機器管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240809BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H04Q9/00 311J
H04M11/00 301
(21)【出願番号】P 2021083383
(22)【出願日】2021-05-17
(62)【分割の表示】P 2020015867の分割
【原出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 明男
(72)【発明者】
【氏名】田原 永典
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-072561(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173121(WO,A1)
【文献】特開2008-242861(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0305956(US,A1)
【文献】特開2013-059247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを備え、電力の供給路上に設けられる配電用設備として機能する電気装置であって、
前記電気装置に電気的に接続される機器の制御及び監視の少なくとも一方を行う実行部と、
前記機器に関連する情報処理を行って制御指令を生成する処理部と、を更に備え、
前記実行部及び前記処理部は、前記ハウジングに保持されており、
前記実行部は、前記処理部が生成した前記制御指令を実行することで制御及び監視の少なくとも一方を行
い、
前記処理部は、
前記機器の識別情報を用いた認証の機能を有し、
前記認証に成功した場合に前記情報処理を実行する、
電気装置。
【請求項2】
前記ハウジングに保持されており、上位システムと通信可能な通信部を更に備える、
請求項1に記載の電気装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記上位システムにて機械学習により生成された学習済みモデルを前記上位システムから受信し、
前記処理部は、前記学習済みモデルを用いて前記情報処理を行う、
請求項2に記載の電気装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記上位システムでの前記機械学習に用いられる学習データを前記上位システムに送信する、
請求項3に記載の電気装置。
【請求項5】
前記通信部は、前記機器の制御を指示する制御指令を前記上位システムから受信し、
前記実行部は、前記制御指令に従って前記機器の制御を行う、
請求項2~4のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項6】
前記処理部は、複数のノードを有するブロックチェーンの個々のノードとして機能し、前記認証に用いる認証データをトランザクションデータとして記録する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記配電用設備に関する規格で定められた寸法を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項8】
前記処理部は、一辺が300μmの仮想正方形に収まるチップサイズのプロセッサにて実現される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項9】
前記処理部は、一辺が100μmの仮想正方形に収まるチップサイズのプロセッサにて実現される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項10】
前記処理部は、量子コンピュータにて実現される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項11】
前記量子コンピュータのサイズは、0.9mm
3
以下である、
請求項10に記載の電気装置。
【請求項12】
前記量子コンピュータは、54量子ビット以上である、
請求項10又は11に記載の電気装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の電気装置を複数備え、
前記複数の電気装置の各々は、前記ハウジングに保持されており互いに通信可能な連携通信部を更に備える、
機器管理システム。
【請求項14】
電力の供給路上に設けられる配電用設備を用いた機器管理方法であって、
前記配電用設備に電気的に接続される機器の制御及び監視の少なくとも一方を、前記配電用設備にて行う実行工程と、
前記機器に関連する情報処理と前記情報処理の結果に基づく制御指令の生成とを、前記配電用設備にて行う処理工程と、を有し、
前記実行工程では、前記処理工程での前記制御指令の実行により制御及び監視の少なくとも一方を行い、
前記処理工程では、
前記機器の識別情報を用いた認証を行い、
前記認証に成功した場合に前記情報処理を実行する、
機器管理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の機器管理方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電気装置、機器管理システム、機器管理方法及びプログラムに関し、より詳細には、機器の制御及び監視の少なくとも一方を行う電気装置、機器管理システム、機器管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多数の機器(給湯器等)と、これを管理するクラウドシステムと、を備える、IoTを活用した管理システムが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の管理システムでは、例えば、給湯器に常時取り付けられる保守制御ユニットが、給湯器を管理するための情報処理機能を有し、クラウドサービスとの通信機能を担い、給湯器の故障予兆の判定を行う。具体的には、給湯器における過電流閾値以下の値の定格内電流における比較的高めの値の電流データの発生の有無、頻度、又は電流データの値の変動パターン等が、保守制御ユニットからクラウドサービスに常時送信される。そして、そのような電流データと過電流の発生との因果関係が、クラウドサービスのAI機能により分析され、給湯器の制御基板の故障予兆の判定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成では、機器に付随する装置(保守制御ユニット)とクラウドシステムとの間で随時通信が行われるため、(故障予兆の判定等の)処理に通信による時間遅れが生じる、又は通信不良により処理が実行されない等の、通信環境に依存した不具合が生じやすい。
【0006】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、通信環境に依存した不具合が生じにくい、電気装置、機器管理システム、機器管理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電気装置は、ハウジングを備え、電力の供給路上に設けられる配電用設備として機能する電気装置である。前記電気装置は、実行部と、処理部と、を更に備える。前記実行部は、前記電気装置に電気的に接続される機器の制御及び監視の少なくとも一方を行う。前記処理部は、前記機器に関連する情報処理を行って制御指令を生成する。前記実行部及び前記処理部は、前記ハウジングに保持されている。前記実行部は、前記処理部が生成した前記制御指令を実行することで制御及び監視の少なくとも一方を行う。前記処理部は、前記機器の識別情報を用いた認証の機能を有する。前記処理部は、前記認証に成功した場合に前記情報処理を実行する。
【0008】
本開示の一態様に係る機器管理システムは、前記電気装置を複数備える。前記複数の電気装置の各々は、前記ハウジングに保持されており互いに通信可能な連携通信部を更に備える。
【0009】
本開示の一態様に係る機器管理方法は、電力の供給路上に設けられる配電用設備を用いた機器管理方法であって、実行工程と、処理工程と、を有する。前記実行工程は、前記配電用設備に電気的に接続される機器の制御及び監視の少なくとも一方を、前記配電用設備にて行う。前記処理工程は、前記機器に関連する情報処理と前記情報処理の結果に基づく
制御指令の生成とを、前記配電用設備にて行う。前記実行工程では、前記制御指令の実行により制御及び監視の少なくとも一方を行う。前記処理工程では、前記機器の識別情報を用いた認証を行う。前記処理工程では、前記認証に成功した場合に前記情報処理を実行する。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記機器管理方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、通信環境に依存した不具合が生じにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る機器管理方法が適用される施設の概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る機器管理システムの概略構成を示す説明図である。
【
図3】
図3は、同上の機器管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、同上の機器管理システムを用いた機器管理方法の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、同上の機器管理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、同上の機器管理方法におけるセンサシステムの例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る機器管理システムの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
(1)概要
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る機器管理方法、プログラム、電気装置1及び機器管理システム10(
図2参照)の概要について説明する。
【0014】
本実施形態に係る機器管理方法は、機器2の制御及び監視の少なくとも一方を行う方法である。このような機器管理方法は、例えば、施設F1に設置されている機器2の制御及び監視の少なくとも一方に用いられる。この機器管理方法によれば、例えば、センサの検知結果に応じて機器2の(通電の)オン/オフの切り替え等の制御を行うことで、センサを有しない機器2をセンサの検知結果に応じて動作させることができ、機器2に機能を付加することが可能となる。他にも、機器管理方法によれば、一例として、施設F1内又は施設F1外にいるユーザ(人)は、スマートフォン又はタブレット端末等の情報端末51(
図2参照)を用いて、機器2を制御したり機器2を監視したりすることが可能である。したがって、ユーザは、例えば、機器2を遠隔で管理(制御又は監視)できる。
【0015】
このような機器管理方法を実現するに際して、例えば、各機器2をクラウド(クラウドコンピューティング)等の外部システムに接続し、外部システムにて、機器2の制御及び監視の少なくとも一方のための情報処理を実行することが考えられる。ただし、このようなシステム構成では、機器2の制御及び監視の度に、機器2が外部システムと通信することになり、機器2の制御及び監視に際して、通信による時間遅れが生じる、又は通信不良により実行されない等の、通信環境に依存した不具合が生じやすい。
【0016】
そこで、本実施形態に係る機器管理方法では、機器2の制御及び監視の少なくとも一方を行う電気装置1として、以下のような構成を採用する。すなわち、本実施形態に係る電気装置1は、ハウジング17(
図2参照)を備え、電力の供給路上に設けられる配電用設備として機能する装置である。この電気装置1は、実行部12と、処理部13と、を更に備える。実行部12は、電気装置1に電気的に接続される機器2の制御及び監視の少なくとも一方を行う。処理部13は、機器2に関連する情報処理を行う。実行部12及び処理部13は、ハウジング17に保持されている。実行部12は、処理部13での情報処理の結果に基づいて制御及び監視の少なくとも一方を行う。
【0017】
このように、本実施形態に係る電気装置1によれば、配電用設備として機能する電気装置1に、機器2の管理(制御及び監視の少なくとも一方)を実行させることができる。そして、機器2の管理に必要な情報処理についても、配電用設備として機能する電気装置1にて行われるので、クラウド(クラウドコンピューティング)等の外部システムと機器2との通信を伴わずとも、機器2の管理が可能となる。したがって、機器2の制御及び監視に際して、通信による時間遅れが生じる、又は通信不良により実行されない等の、通信環境に依存した不具合が生じにくい、という利点がある。
【0018】
また、本実施形態に係る機器管理システム10は、電気装置1を複数備えている。複数の電気装置1の各々は、ハウジング17に保持されており互いに通信可能な連携通信部16(
図3参照)を更に備える。
【0019】
また、本実施形態に係る機器管理方法は、上記電気装置1を用いて機器2の管理(制御及び監視の少なくとも一方)を行うための方法である。つまり、本実施形態に係る機器管理方法は、電力の供給路上に設けられる配電用設備(電気装置1)を用いた機器管理方法である。この機器管理方法は、実行工程と、処理工程と、を有する。実行工程は、配電用設備(電気装置1)に電気的に接続される機器2の制御及び監視の少なくとも一方を、配電用設備(電気装置1)にて行う工程である。処理工程は、機器2に関連する情報処理を、配電用設備(電気装置1)にて行う工程である。実行工程では、処理工程での情報処理の結果に基づいて制御及び監視の少なくとも一方を行う。
【0020】
また、本実施形態に係るプログラムは、上記機器管理方法を具現化するためのプログラムである。つまり、本実施形態に係るプログラムは、上記機器管理方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0021】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る機器管理方法、プログラム、電気装置1及び機器管理システム10の詳細について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0022】
(2.1)前提
本開示でいう機器2の「管理」は、機器2の制御と監視との少なくとも一方を意味する。つまり、機器2の管理は、機器2の制御のみ、機器2の監視のみ、又はその両方(制御及び監視)を意味する。本実施形態では一例として、機器管理方法では、機器2の制御と監視との両方を、機器2の管理として実施する場合を想定する。
【0023】
本開示でいう「施設」は、オフィス、工場、ビル、店舗、学校、福祉施設又は病院等の非住宅施設、及び戸建住宅、集合住宅、又は戸建住宅若しくは集合住宅の各住戸等の住宅施設を含む。非住宅施設には、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、ホテル、旅館、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅及び空港等も含む。さらには、本開示でいう「施設」には、建物(建造物)だけでなく、球場、庭、駐車場、グランド及び公園等の屋外施設を含む。本実施形態では一例として、施設F1は、戸建住宅である。
【0024】
本開示でいう「配電用設備」は、電力の供給路上に設けられる種々の電気設備(器具及び装置を含む)であって、例えば、機器2に供給される電力の中継、又は、機器2に供給される電力の制御(オン/オフ制御を含む)を行う。ここでいう「電力」は交流及び直流のいずれであってもよい。配電用設備として機能する電気装置1は、一例として、分電盤、ブレーカ、配線器具、EV充電設備又は配線ダクト等の、施設F1の施工面(壁面、天井面又は床面等)に固定(設置)される設備を含む。ここでいう「配線器具」は、コンセント(Outlet)、スイッチ、調光装置、タイマスイッチ、センサスイッチ及び引掛シーリング等の、壁裏又は天井裏等に配置された電線(先行配線)に電気的に接続される設備である。さらに、電気装置1は、テーブルタップ、プラグ又はアダプタ等の、施設F1の施工面に固定されずに使用される、可搬型の設備を含む。本実施形態では一例として、電気装置1は、施設F1の施工面に固定(設置)される、分電盤及び埋込型の配線器具等を含む。
【0025】
本開示でいう「機器」は、配電用設備としての電気装置1に電気的に接続される種々の電気機器であって、例えば、電気装置1(配電用設備)からの電力供給を受けて動作する。言い換えれば、電気装置1は、機器2への電力の供給路上に設けられている。機器2は、例えば、家電機器又は設備機器等である。家電機器の例としては、テレビ受像機、照明機器(シーリングライト等を含む)及び録画再生機(HDD付DVDレコーダ及び外付けHDD等を含む)等がある。さらに、例えば、洗濯機、冷蔵庫、空調機器、空気清浄機、パーソナルコンピュータ、スマートスピーカ及びコンピュータゲーム機等も家電機器に含まれる。設備機器の例としては、パッケージエアコン(空調設備)、照明設備(ベースライト及びスポットライト等を含む)、蓄電設備、厨房設備(IHヒータ及び食器洗浄器等を含む)、入退室管理機器、コピー機及びファクシミリ等がある。さらに、例えば、給湯設備(エコキュート(登録商標)等を含む)、電動シャッタ、換気扇、24時間換気システム等の住設機器も設備機器に含まれる。また、機器2は、例えば、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、気圧(圧力)センサ、加速度センサ、振動センサ、音センサ及び匂いセンサ等のセンサも含む。本実施形態では一例として、機器2は、施設F1で使用される家電機器を含む。
【0026】
本開示でいう「ユーザ」は、機器2の管理(制御と監視との少なくとも一方)を行う者であって、個人と法人とのいずれであってもよいし、複数の個人又は法人の集合からなる団体(組織)であってもよい。本実施形態では一例として、ユーザが、施設F1の住人としての個人である場合を想定する。
【0027】
本開示でいう「遠隔」とは離れた場所を意味し、例えば、施設F1の敷地外のように施設F1の外部は、施設F1の遠隔に当たる。すなわち、本実施形態に係る機器管理方法によれば、施設F1の住人であるユーザは、例えば、施設F1の敷地外にいながらにして、施設F1にある機器2の管理(制御と監視との少なくとも一方)を、情報端末51を用いて実行することができる。もちろん、ユーザが施設F1内にいる場合でも、ユーザは、例えば、情報端末51を用いて、施設F1にある機器2の管理を行うことが可能である。
【0028】
本開示でいう「保持」は、持ち続けること全般を意味し、その態様としては、収容、固定、支持又は貼り付け等を含む。一例として、ハウジング17に保持されている実行部12及び処理部13は、ハウジング17に収容(内蔵)されていてもよいし、ハウジング17の一面(例えば背面)から露出するようにハウジング17に固定されていてもよい。
【0029】
(2.2)システムの全体構成
次に、本実施形態に係る機器管理方法を具現化する一態様である機器管理システム10を含む、システムの全体構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0030】
機器管理システム10は、上述したように、電気装置1を複数備えている。ここで、複数の電気装置1の各々は、ハウジング17に保持されており互いに通信可能な連携通信部16(
図3参照)を備えている。そのため、機器管理システム10に含まれる複数の電気装置1は、連携通信部16によって互いに通信可能に構成されている。本実施形態では、電気装置1は、1つの施設F1に複数設けられている。
【0031】
また、本実施形態では、1つの施設F1に設けられている複数の電気装置1が、上位システム3と共に、機器管理システム10を構成する。すなわち、本実施形態に係る機器管理システム10は、複数の電気装置1と、上位システム3と、を備えている。
【0032】
また、本実施形態に係る機器管理システム10は、管理対象となる機器2と共に、機器システム200を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る機器システム200は、機器管理システム10と、1つ以上の機器2と、を備えている。
【0033】
配電用設備として機能する電気装置1は、
図1に示すように、1つの施設F1に複数設けられている。複数の電気装置1は、施設F1における複数の部屋に分散して配置されている。
図1の例では、1つの部屋に1つ以上の電気装置1が設置されている。本実施形態では一例として、複数の電気装置1は、分電盤101、及び複数の配線器具102~112を含んでいる。ここでは、
図1に示すように、複数の配線器具102~112のうち、配線器具102,103,105,107,109,111はコンセント(Outlet)であって、配線器具104,106,108,110,112はスイッチであると仮定する。分電盤101及び複数の配線器具102~112を特に区別しない場合には、分電盤101及び複数の配線器具102~112の各々を単に「電気装置1」と呼ぶ。
【0034】
分電盤101は、電力系統43に電気的に接続されている。分電盤101には、電力系統43から、例えば、100V又は200V、60Hzの交流電力で供給される。分電盤101は、主幹ブレーカ、複数の分岐ブレーカ、及びキャビネットを備えている。主幹ブレーカ及び複数の分岐ブレーカは、キャビネット内に収容されている。分電盤101は、施設F1の壁面からなる施工面に取り付けられている。分電盤101は、電力系統43から供給される交流電力を、複数の分岐ブレーカにて複数の分岐回路へ分配する。
【0035】
複数の配線器具102~112は、いずれも分電盤101に電気的に接続されている。複数の配線器具102~112は、本実施形態では、施設F1の壁面からなる施工面に取り付けられる、埋込型の配線器具である。つまり、配線器具102~112は、施工面に固定され、施工面の裏側を通した電線を接続可能に構成された配線器具である。特に、これらの配線器具102~112は、施工面に形成されている施工孔に、筐体の少なくとも一部が埋め込まれた状態で、筐体が施工面に固定される、埋込型の配線器具である。
【0036】
複数の配線器具102~112のうち、コンセントとしての機能を有する配線器具102,103,105,107,109,111は、それぞれ1台以上の機器2を電気的に接続可能に構成されている。つまり、配線器具102,103,105,107,109,111は、それぞれ機器2のプラグを差し込み可能な接続口を有しており、接続口にプラグが差し込まれた機器2と電気的に接続される。よって、配線器具102,103,105,107,109,111は、施設F1の適当な場所において、機器2への電力供給の手段を実現する。
【0037】
複数の配線器具102~112のうち、スイッチ(壁スイッチ)としての機能を有する配線器具104,106,108,110,112は、それぞれ1台以上の機器2と分電盤101との間に挿入されている。本開示でいう「挿入」とは、電気的に接続される二者間への挿入を意味し、配線器具104,106,108,110,112は、分電盤101と機器2との間に電気的に接続されることになる。したがって、配線器具104,106,108,110,112に電気的に接続された機器2は、配線器具104,106,108,110,112を介して分電盤101に電気的に接続されることになる。よって、配線器具104,106,108,110,112は、分電盤101と機器2との間の導通/非導通を切り替えることによって、分電盤101と機器2への電力の供給/電力供給の停止を切り替える。
【0038】
すなわち、コンセント及びスイッチのいずれの配線器具102~112でも、配線器具102~112に電気的に接続された機器2に対しては、分電盤101で分配された電力系統43からの供給電力が、配線器具102~112を介して供給されることになる。言い換えれば、配線器具102~112は、機器2への電力の供給路上に設けられる種々の電気設備(器具及び装置を含む)である。同様に、分電盤101においても、機器2への電力の供給路上に設けられる種々の電気設備(器具及び装置を含む)である。厳密には、電力系統43と機器2との間の電力の供給路上には、分電盤101と少なくとも1つの配線器具102~112とが、挿入されることになる。
【0039】
また、これらの電気装置1は、いずれも通信機能を有している。詳しくは「(2.3)機器管理システムの詳細」の欄で説明するが、本実施形態では、施設F1にルータ42が設置されており、複数の電気装置1の各々は、ルータ42と通信可能に構成されている。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、信号を授受できることを意味する。本実施形態では一例として、複数の電気装置1の各々は、ルータ42との間で無線通信により、双方向に通信可能である。本開示でいう「無線通信」は、電波を伝送媒体として非接触で行う通信を意味する。また、本実施形態では一例として、複数の電気装置1の各々とルータ42との間の無線通信は、Wi-Fi(登録商標)に準拠した無線通信であることとする。
【0040】
また、実施形態では一例として、
図1に示すように、施設F1に設置された様々な機器2が複数の配線器具102~112に電気的に接続されている。コンセントからなる配線器具102,105,107,109,111に接続された機器2は、それぞれテレビ受像機201、洗濯機203、パーソナルコンピュータ205、空気清浄機207、空調機器209である。スイッチからなる配線器具104,106,108,110,112に接続された機器2は、それぞれ照明機器202,204,206,208,210である。テレビ受像機201、洗濯機203、パーソナルコンピュータ205、空気清浄機207、空調機器209及び照明機器202,204,206,208,210を特に区別しない場合には、各々を単に「機器2」と呼ぶ。
【0041】
照明機器202,204,206,208,210は、例えば、LED(Light Emitting Diode)からなる光源と、光源を点灯させる点灯回路と、を備え、電力供給時に光源が点灯する。したがって、配線器具104,106,108,110,112は、分電盤101と照明機器202,204,206,208,210との間の導通/非導通を切り替えることによって、照明機器202,204,206,208,210の点灯状態を切り替える。ここでいう「点灯状態」は、点灯/消灯の区別を含む。
【0042】
上位システム3は、インターネット等の公衆網41に接続されている。上位システム3は、一例として、クラウド(クラウドコンピューティング)にて実現される。公衆網41には、ルータ42が接続されている。上述したように、複数の電気装置1の各々は、ルータ42と通信可能であるため、複数の電気装置1の各々は、ルータ42を介して公衆網41に接続可能となる。したがって、上位システム3と複数の電気装置1の各々との間には、公衆網41を含む通信路が構築されることになる。
図1等では図示を省略しているが、ルータ42は直接的に公衆網41に接続されるのではなく、実際には、光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)等及び光回線等を介して、公衆網41に接続される。
【0043】
また、
図2に示すように、公衆網41には、スマートフォン又はタブレット端末等の情報端末51、及びスマートスピーカ等の操作端末52が接続されている。具体的には、情報端末51は、例えば、通信事業者が提供する携帯電話網(キャリア網)又は公衆無線LAN(Local Area Network)等を介して公衆網41に接続されてもよい。携帯電話網には、例えば、3G(第3世代)回線、LTE(Long Term Evolution)回線、4G(第4世代)回線又は5G(第5世代)回線等がある。これにより、情報端末51は、施設F1の外部であっても、携帯電話網に接続可能な環境であれば、携帯電話網を介して公衆網41に接続可能となる。
【0044】
(2.3)機器管理システムの詳細
次に、本実施形態に係る機器管理システム10の詳細な構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0045】
電気装置1は、上述したように、ハウジング17と、実行部12と、処理部13と、を備えている。また、本実施形態では、電気装置1は、ハウジング17、実行部12及び処理部13に加えて、第1通信部11(通信部)、記憶部14、第2通信部15及び連携通信部16を更に備えている。これらの構成に加えて、電気装置1は、配電用設備としての基本的な機能、つまり分電盤101であれば分電盤の機能、配線器具102~112であれば配線器具の機能を更に有している。
図2及び
図3では、複数の電気装置1(分電盤101及び複数の配線器具102~112)のうちの1つの電気装置1のみを示しているが、他の電気装置1においても同様の構成である。
【0046】
ハウジング17は、
図2に示すように、配電用設備としての外郭を成している。すなわち、ハウジング17は、少なくとも端子を構成する端子板等の配電用設備としての内部部品を収容している。また、本実施形態では、ハウジング17は、配電用設備としての内部部品の他、第1通信部11、実行部12、処理部13、記憶部14、第2通信部15及び連携通信部16等も収容する。ハウジング17は、例えば、電気絶縁性を有する合成樹脂製である。
【0047】
図2では、電気装置1として、コンセントとしての機能を有する配線器具を例示している。そのため、ハウジング17には、それぞれ機器2のプラグを差し込み可能な接続口が形成されている。特に、ここでは、電気装置1として、埋込型の配線器具を例示しており、ハウジング17は、埋込型のスイッチボックス等の取付部材を用いて施設F1の施工面(例えば壁面)に取り付けられる。すなわち、施工面には施工孔が形成されており、施工面の裏側(壁裏)に配置されたスイッチボックス等の取付部材に対して、ハウジング17が施工孔を通して取り付けられる。
【0048】
このようなハウジング17は、配電用設備に関する規格で定められた寸法を有する。本開示でいう「配電用設備に関する規格」は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)、又は各国で定められている、配電用設備についての各種の規格を含む。例えば、日本国であれば、日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)、内線規程又は電気設備の技術基準の解釈等を含む。
図2に例示する、埋込型の配線器具としての電気装置1にあっては、ハウジング17は、例えば、日本産業規格によって規格化された大角形連用配線器具の寸法を有する。このようなハウジング17は、例えば、配線器具用の取付枠を用いて施工面に取り付けられる。
【0049】
第1通信部11は、上位システム3の上位通信部31と通信する機能を有している。ここでは、第1通信部11は、ハウジング17に収容されることで、ハウジング17に保持されている。つまり、第1通信部11は、ハウジングに保持されており、上位システム3と通信可能に構成されている。本実施形態では一例として、第1通信部11はルータ42を介して公衆網41に接続され、公衆網41を介して上位システム3と通信する。ここで、電気装置1の通信方式は、有線通信、電波を伝送媒体とした無線通信、又は光を伝送媒体とした光通信等であってもよい。有線通信は、専用の通信線を伝送媒体として用いる通信方式だけでなく、電力線を伝送媒体として用いる電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)を含む。無線通信は、一例として、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の種々の方式を含む。
【0050】
ここでは、電気装置1の通信方式は、無線マルチホップ、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Ethernet(登録商標)、電力線搬送通信若しくはPoE(Power over Ethernet(登録商標))のいずれか、又はこれらの組み合わせである。ここでいう「電気装置1の通信方式」は、電気装置1が他装置との通信に用いる通信方式全般を意味する。したがって、ここでいう「電気装置1の通信方式」は、第1通信部11による上位システム3との通信(ルータ42との通信を含む)のみならず、第2通信部15による機器2との通信、及び連携通信部16による他の電気装置1との通信にも適用可能である。
【0051】
本実施形態では一例として、第1通信部11の通信方式は、Wi-Fi(登録商標)に準拠した無線通信である。特に、施設F1内で複数の電気装置1が使用されることを考慮して、3つのチャネルを利用するトライバンド方式のWi-Fi(登録商標)により、高速で安定した通信を実現することが好ましい。トライバンド方式のWi-Fi(登録商標)では、例えば、2.4GHz帯と、「W52・W53」及び「W56」の2つの5GHz帯と、が使用される。電気装置1では、バンドステアリング機能により、通信の混雑状況を判断し、これら3つの周波数帯域のうち空いている周波数帯へ自動的に誘導することにより、高速で安定した通信を実現できる。
【0052】
実行部12は、機器2の制御及び監視の少なくとも一方を行う。ここでは、実行部12は、ハウジング17に収容されることで、ハウジング17に保持されている。本実施形態では、上述したように、機器2の制御と監視との両方を、機器2の管理として実施するので、実行部12においても、機器2の制御と監視との両方を行う。実行部12は、処理部13での情報処理の結果に基づいて、機器2の制御及び監視を行う。
【0053】
実行部12が行う機器2の制御は、機器2の(通電の)オン/オフの切り替えを含み、更に、機器2の機能に応じた詳細な制御を含み得る。一例として、機器2がテレビ受像機201であれば、実行部12は、テレビ受像機201の(通電の)オン/オフの切り替え、視聴チャンネルの切り替え、及び音量調節等、機器2に対して種々の制御を行う。他の例として、機器2が照明機器202,204,206,208,210であれば、実行部12は、照明機器202,204,206,208,210の点灯/消灯の切り替え、調光レベルの調節、及び発光色の調節等、機器2に対して種々の制御を行う。特に、電気装置1がスイッチ若しくはブレーカ等のように開閉器としての機能を有している場合、又は、調光装置のように機器2への供給電力を調節する機能を有している場合、実行部12は、電気装置1を制御することで間接的に機器2を制御してもよい。つまり、電気装置1が開閉器であれば、実行部12は、電気装置1のオン/オフを切り替えることにより、機器2の(通電の)オン/オフの切り替えが可能である。
【0054】
実行部12が行う機器2の監視は、機器2の(通電の)オン/オフの監視を含み、更に、機器2の機能に応じた詳細な動作状態の監視を含み得る。一例として、機器2がテレビ受像機201であれば、実行部12は、テレビ受像機201の(通電の)オン/オフ、視聴チャンネル、及び音量等、機器2の種々の状態の監視を行う。他の例として、機器2が照明機器202,204,206,208,210であれば、実行部12は、照明機器202,204,206,208,210の点灯/消灯、調光レベル(明るさ)、及び発光色等、機器2の種々の状態の監視を行う。特に、電気装置1がスイッチ若しくはブレーカ等のように開閉器としての機能を有している場合、又は、調光装置のように機器2への供給電力を調節する機能を有している場合、実行部12は、電気装置1の動作から間接的に機器2を監視してもよい。つまり、電気装置1が開閉器であれば、実行部12は、電気装置1のオン/オフを監視することにより、機器2の(通電の)オン/オフの監視が可能である。
【0055】
処理部13は、機器2に関連する情報処理を行う。ここでは、処理部13は、ハウジング17に収容されることで、ハウジング17に保持されている。処理部13で実行された情報処理の結果は、実行部12での機器2の制御又は監視に用いられる。すなわち、実行部12は、処理部13での情報処理の結果に基づいて制御及び監視の少なくとも一方を行う。処理部13で行う情報処理は、例えば、機器2の監視結果に基づいて、機器2の制御内容を決定するための処理を含む。
【0056】
また、詳しくは「(2.5)機器管理方法」の欄で説明するが、本実施形態では、第1通信部11は、上位システム3にて機械学習により生成された学習済みモデルD2(
図4参照)を上位システム3から受信する。そして、処理部13は、学習済みモデルD2を用いて情報処理を行う。すなわち、処理部13は、機械学習によって得られた学習済みモデルD2、言い換えれば、学習済みの分類器を利用して、情報処理を実行する。つまり、処理部13は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いて、情報処理を生成する。さらに、第1通信部11は、上位システム3での機械学習に用いられる学習データD1(
図4参照)を上位システム3に送信する。第1通信部11は、学習データD1を、定期的又は不定期に上位システム3に送信する。
【0057】
記憶部14は、学習データD1、学習済みモデルD2、上位システム3にアクセスするための情報(上位システム3のアドレス等)、及び電気装置1に固有の識別情報等を記憶する。本実施形態では一例として、識別情報は、MAC(Media Access Control)アドレスである。また、記憶部14は、実行部12及び処理部13等での演算に必要な情報等を更に記憶する。記憶部14は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)のような書き換え可能な不揮発性メモリを含む。
【0058】
第2通信部15は、機器2との間でデータの授受を行う機能を有する。第2通信部15は、機器2のインタフェース21との間で通信可能に構成されている。上述したように、電気装置1の通信方式は、無線マルチホップ、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Ethernet(登録商標)、電力線搬送通信若しくはPoEのいずれか、又はこれらの組み合わせである。本実施形態では一例として、第2通信部15の通信方式は、電力線を伝送媒体として用いる電力線搬送通信(PLC)である。電気装置1は、機器2への電力の供給路上に設けられているため、電力線搬送通信であれば、電力線(機器2の電源ケーブルを含む)とは別に通信線を設けなくても、電気装置1と機器2との間でデータの授受が可能となる。
【0059】
さらに、本実施形態では、第2通信部15は、スマートフォンからなる情報端末51(
図4参照)、タブレット端末53(
図4参照)、ウェアラブル端末54(
図4参照)及びイメージセンサ等のセンサ端末55(
図4参照)とも通信可能である。本実施形態では一例として、第2通信部15と、これら情報端末51、タブレット端末53、ウェアラブル端末54及びセンサ端末55との間の通信方式は、Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の無線通信である。
【0060】
連携通信部16は、複数の電気装置1間でデータの授受を行う機能を有する。つまり、連携通信部16は、他の電気装置1の連携通信部16との間で通信可能に構成されている。上述したように、電気装置1の通信方式は、無線マルチホップ、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Ethernet(登録商標)、電力線搬送通信若しくはPoEのいずれか、又はこれらの組み合わせである。本実施形態では一例として、連携通信部16の通信方式は、電力線を伝送媒体として用いる電力線搬送通信(PLC)である。電気装置1は、機器2への電力の供給路上に設けられているため、電力線搬送通信であれば、電力線とは別に通信線を設けなくても、他の電気装置1との間でデータの授受が可能となる。
【0061】
ところで、本実施形態では、電気装置1の第1通信部11、実行部12及び処理部13は、機器管理方法における、テレメトリ機能(遠隔情報収集機能)と、制御機能と、ネットワーク管理機能と、の3つの機能を実現する。テレメトリ機能は、ノード(電気装置1から見て電力の供給先)側からプッシュ送信されたデータを取得する機能である。制御機能は、同期された分散型データベース(上位システム3)のセマンティクス(Semantics)に従って、データの送受信等を行う機能である。ネットワーク管理機能は、電気装置1を含むメッシュネットワークを、電気装置1が設置されている空間(施設F1)の環境に動的に適応させる機能である。
【0062】
本実施形態では一例として、これらの実現にあたって、電気装置1には、Plume社(Plume Design, Inc.)のOpenSync(商標)モジュールを実装する。すなわち、テレメトリ機能としてMQTT(Message Queue Telemetry Transport)を使用し、電気装置1は、電気装置1に接続されるノードたる機器2からの要求(Publish)に従って計測情報(計測値)を収集する。さらに、電気装置1は、計測情報を、異なる複数台の機器2間で共有できるように標準化された形式に変換し、これら複数台の機器2間での共有の他、上位システム3からの要求(Subscribe)に従って送信をする。制御機能としては、電気装置1は、分散型データベースとしてOVSDB(商標)を用い、同データベースに従って、上位システム3の制御信号の処理の他、データの送受信、優先順位付け、フィルタリング及びブロック等を行う。ネットワーク管理機能としては、電気装置1は、Open vSwitch(商標)を用い、メッシュネットワークを空間(施設F1)の環境に動的に適応させ、ユーザの接続管理、セキュリティチェック及び機器2の管理等を行う。
【0063】
上位システム3は、上位通信部31と、上位制御部32と、上位監視部33と、認証部34と、格納部35と、モデル生成部36と、を有している。
【0064】
上位通信部31は、電気装置1の第1通信部11と通信する機能を有している。本実施形態では、上位通信部31は公衆網41に接続され、公衆網41を介して電気装置1と通信する。
【0065】
上位制御部32は、機器2の制御を行う。上位制御部32が行う機器2の制御は、電気装置1の実行部12と同様に、機器2の(通電の)オン/オフの切り替えを含み、更に、機器2の機能に応じた詳細な制御を含み得る。
【0066】
上位監視部33は、機器2の監視を行う。上位監視部33が行う機器2の監視は、電気装置1の実行部12と同様に、機器2の(通電の)オン/オフの監視を含み、更に、機器2の機能に応じた詳細な動作状態の監視を含み得る。
【0067】
認証部34は、電気装置1の認証を行う。本実施形態では、認証部34は、電気装置1への通電後に、公衆網41を介して電気装置1からのアクセスを受けて、電気装置1の認証を行う。認証部34は、電気装置1の認証に成功した場合に、この電気装置1に対してIPアドレスを発行する。
【0068】
格納部35は、少なくとも学習済みモデルD2の生成に用いられる学習データD1、及び生成された学習済みモデルD2を格納する。また、格納部35は、認証部34で認証済みの電気装置1に関する情報を登録情報として格納する。本開示でいう「登録情報」は、少なくとも電気装置1の識別情報を含んでいる。本実施形態では、登録情報は、電気装置1の識別情報に加えて、電気装置1に付与したIPアドレス、ユーザID及びパスワード等を更に含んでいる。つまり、認証部34での認証が正常に完了した電気装置1に関する情報が、登録情報として格納部35に記憶されることになる。格納部35に格納(記憶)されている情報は、適宜、変更(追加及び削除を含む)可能である。
【0069】
モデル生成部36は、機械学習により学習済みモデルD2を生成する。本実施形態では、モデル生成部36は、電気装置1から定期的又は不定期に送信される学習データD1を用いて、機械学習を行い、学習済みモデルD2を生成する。
【0070】
このように、上位システム3は、学習器を有しており、機械学習により学習する機能を有している。ここでは一例として、上位システム3は、複数の電気装置1から収集される学習データD1を用いた深層学習(Deep Learning)により、学習済みモデル、つまり、学習済みの分類器を生成することと仮定する。モデル生成部36は、学習データD1に対して前処理を施すことにより、学習用データセットを生成し、学習用データセットを学習器に入力する。モデル生成部36の学習器は、学習済みモデルD2を生成するための学習器であって、その実態は、例えば、ニューラルネットワークのネットワークモデル、及びハイパーパラメータ等を含む学習用のソフトウェアである。このような学習器に学習用データセットが入力される処理を繰り返すことで、モデル生成部36は、学習済みモデルD2を生成する。
【0071】
モデル生成部36が生成した学習済みモデルD2は、上述したように、電気装置1に送信され、電気装置1の処理部13に実装される。モデル生成部36が生成した学習済みモデルD2が処理部13に実装されることにより、学習済みの分類器が生成される。そして、学習済みの分類器(処理部13)に入力データが入力されることにより、分類器より出力データを出力する。ここで、分類器(処理部13)に、機器2の監視結果に係る情報が入力されることで、分類器(処理部13)は、機器2の制御内容に係る情報を出力する。
【0072】
上位システム3は、例えば、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するコンピュータシステム(本実施形態では一例としてクラウドコンピューティング)を主構成とする。コンピュータシステムは、1以上のメモリに記録されているプログラムを1以上のプロセッサで実行することにより、上位システム3としての機能を実現する。プログラムは、予めメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような非一時的記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。言い換えれば、上記プログラムは、1以上のプロセッサを、上位システム3として機能させるためのプログラムである。
【0073】
機器2は、インタフェース(図中「I/F」と表記)21と、機能部22と、を有している。
図3では、複数の機器2のうちの1台の機器2のみを示しているが、他の機器2においても同様の構成である。
【0074】
インタフェース21は、電気装置1との間でデータの授受を行う機能を有する。本実施形態では一例として、インタフェース21は、電力線搬送通信(PLC)により、電気装置1の第2通信部15との間で通信可能に構成されている。インタフェース21は、電気装置1との間でデータを授受することにより、機器2の制御及び監視を可能とする。
【0075】
機能部22は、機器2としての基本的な機能、つまりテレビ受像機201であればテレビ受像機の機能、洗濯機203でれば洗濯機の機能、照明機器202,204,206,208,210であれば照明機器の機能を有している。
【0076】
(2.4)プロセッサの詳細
次に、本実施形態に係る電気装置1に含まれるプロセッサ100の詳細な構成について、
図2を参照して説明する。
【0077】
電気装置1の構成要素のうちの少なくとも処理部13は、ワンチップ(ワンパッケージ)のプロセッサ100にて実現されている。プロセッサ100は、ハウジング17に収容(内蔵)されることにより、ハウジング17に保持されている。
【0078】
本実施形態では、プロセッサ100として、微小なチップサイズのプロセッサが用いられる。例えば、プロセッサ100は、平面視において300μm以下のサイズのチップからなる。言い換えれば、処理部13は、一辺が300μmの仮想正方形に収まるチップサイズのプロセッサ100にて実現される。一例として、
図2に例示するように、プロセッサ100は、平面視において正方形状のチップ部品であって、その一辺の長さL1,L2が、いずれも300μm以下である。
【0079】
さらには、プロセッサ100は、平面視における一辺の長さL1,L2が、いずれも200μm以下であることが好ましい。また、プロセッサ100は、平面視における一辺の長さL1,L2が、いずれも100μm以下であることがより好ましい。この場合、処理部13は、一辺が100μmの仮想正方形に収まるチップサイズのプロセッサ100にて実現されることになる。
【0080】
また、ここでは、プロセッサ100のチップの厚みL3は、一辺の長さL1,L2のいずれよりも十分に小さい。つまり、本実施形態では一例として、プロセッサ100は、平板状のチップからなる。本実施形態に係る電気装置1では、実行部12及び処理部13によって占有される面積及び容積を小さく抑えることができる。
【0081】
本実施形態においては、プロセッサ100は、処理部13だけでなく、少なくとも実行部12の機能も兼ね備えている。言い換えれば、実行部12及び処理部13は、プロセッサ100にて実現されている。より詳細には、ワンチップの超小型コンピュータとしてのプロセッサ100が、実行部12及び処理部13として機能する。プロセッサ100は、1以上のメモリに記録されているプログラムを実行することにより、実行部12及び処理部13としての機能を実現する。プログラムは、予めメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような非一時的記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。言い換えれば、上記プログラムは、1以上のプロセッサを、実行部12及び処理部13として機能させるためのプログラムである。
【0082】
本実施形態では一例として、プロセッサ100はRISC(RSIC-V)の命令セットアーキテクチャにしたプロセッサである。一例として、プロセッサ100に含まれるトランジスタの数は、100×103個以上、1×106個以下である。また、プロセッサ100の消費電力は、一例として、10mW以下である。また、プロセッサ100の駆動クロックは、一例として、10MHz以下である。
【0083】
また、電気装置1は、上記構成に加えて、例えば、プロセッサ100等へ電力を供給するための電源回路等を備えている。電源回路は、例えば、電力系統43に電気的に接続され、電力系統43から供給される交流の電力を直流に変換して、プロセッサ100等へ電力供給する。
【0084】
(2.5)機器管理方法
次に、本実施形態に係る機器管理方法について、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0085】
図4は、本実施形態に係る機器管理システム10を用いた機器管理方法の一例を示す説明図である。
図5は、本実施形態に係る機器管理方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、電気装置1が導入される施設F1においては、例えば、Wi-Fi(登録商標)等のネットワーク環境が事前に構築されていることと仮定する。また、上述したように、本実施形態では、機器2の管理として、機器2の制御と監視との両方を実施することと仮定する。
【0086】
本実施形態に係る機器管理方法によれば、基本的な動作として、電気装置1は、公衆網41を介して、定期的又は不定期に、学習データD1を上位システム3に送信する。上位システム3は、機器管理システム10を構成する複数の電気装置1から、学習データD1を収集する。電気装置1は、例えば、実行部12にて機器2を監視することで得られる機器2に関連する計測情報、及び実行部12にて機器2を制御した制御履歴等の情報を、学習データD1として、第1通信部11にて上位システム3に送信する。「計測情報」について詳しくは、「(2.6)実行工程」の欄で説明する。
【0087】
上位システム3においては、学習データD1を用いて、モデル生成部36にて機械学習を実行し、学習済みモデルD2を随時生成する。生成された学習済みモデルD2は、上位システム3の格納部35に一時的に格納(記憶)される。
【0088】
ここで、学習済みモデルD2は、機器2の種別、品番又は個体ごとに生成されることが好ましい。一例として、4つの電気装置1に、機器2として洗濯機、冷蔵庫及び2台の空調機器がそれぞれ接続されている場合には、モデル生成部36は、洗濯機、冷蔵庫及び空調機器という機器2の種別ごとに、学習済みモデルD2を生成する。また、同様の場合において、モデル生成部36は、4台の機器2(洗濯機、冷蔵庫及び2台の空調機器)の個体ごとに、学習済みモデルD2を生成してもよい。
【0089】
また、学習済みモデルD2は、ユーザの属性又は個人ごとに生成されることが好ましい。ここでいう「ユーザの属性」は、ユーザの年齢層(年代)、性別、身長又は体型等を含む。一例として、1つの機器2を互いに異なる2つの年齢層のユーザが使用する場合、モデル生成部36は、ユーザの年齢層(属性)ごとに、学習済みモデルD2を生成する。また、他の例として、1つの機器2を2人のユーザが使用する場合、モデル生成部36は、ユーザ(個人)ごとに、学習済みモデルD2を生成する。
【0090】
本実施形態では一例として、学習済みモデルD2は、機器2の種別、かつユーザの属性ごとに、生成されることと仮定する。そのため、上位システム3では、学習済みモデルD2の生成に用いられる学習データD1についても、機器2の種別、かつユーザの属性ごとに収集する。そして、上位システム3は、機器2の種別、かつユーザの属性ごとに、機械学習を実行することによって、機器2の種別、かつユーザの属性ごとに学習済みモデルD2を生成する。生成された学習済みモデルD2は、機器2の種別、かつユーザの属性ごとに、格納部35に格納される。
【0091】
電気装置1においては、学習済みモデルD2を、定期的又は不定期に、アップデート(更新)する。本実施形態では、上述したように、処理部13は学習済みモデルD2を用いて情報処理を行うので、少なくとも電気装置1に学習済みモデルD2が記憶されていない状態(初期状態)においては、電気装置1は学習済みモデルD2のアップデートを行う。また、電気装置1は、例えば、上位システム3から学習済みモデルD2のアップデートの通知を通信により受信した場合にも、学習済みモデルD2のアップデートを行う。
【0092】
具体的には、電気装置1は、
図5に示すように、学習済みモデルD2のアップデートを行うか否かを判断する(S1)。学習済みモデルD2のアップデートを行う場合(S1:Yes)、電気装置1は、上位システム3との通信を行い(S2)、公衆網41を介して、学習済みモデルD2を上位システム3から受信する。電気装置1は、学習済みモデルD2を受信すると、記憶部14内の学習済みモデルD2の更新を実行する(S3)。そして、電気装置1は、処理部13での情報処理に用いる情報を収集する(S4)。このとき、電気装置1は、例えば、実行部12による機器2の監視結果、つまり計測情報等を、処理部13での情報処理に用いる情報として収集する。また、電気装置1は、例えば、第2通信部15による機器2との通信、又は連携通信部16による他の電気装置1との通信によって、処理部13での情報処理に用いる情報を収集してもよい。
【0093】
さらに、本実施形態では、電気装置1は、
図4に示すように、第2通信部15にて、情報端末51、タブレット端末53、ウェアラブル端末54及びセンサ端末55とも通信可能である。そこで、電気装置1は、これら情報端末51、タブレット端末53、ウェアラブル端末54及びセンサ端末55から、例えば、ユーザの現在位置、体温又は体調等の情報を、処理部13での情報処理に用いる情報として収集してもよい。
【0094】
一方、学習済みモデルD2のアップデートを行わなければ(S1:No)、電気装置1は、処理S2,S3をスキップして、処理部13での情報処理に用いる情報を収集する(S4)。
【0095】
処理部13での情報処理に用いる情報が収集されると、電気装置1は、処理部13にて、学習済みモデルD2を用いて情報処理を実行する(S5)。つまり、電気装置1は、収集した情報を処理部13の入力として、機器2の制御に係る情報、又は機器2の監視に係る情報を処理部13から出力する。言い換えれば、処理部13では、実行部12での機器2の制御又は監視に用いられる情報を、学習済みモデルD2を用いた情報処理によって生成する。そして、電気装置1は、処理部13での情報処理の結果に基づいて、機器2の制御及び監視の少なくとも一方(本実施形態では両方)を実行する実行工程を開始する(S8)。実行工程について詳しくは「(2.6)実行工程」の欄で説明する。
【0096】
図5のフローチャートは、機器管理方法の一例に過ぎず、処理を適宜省略又は追加してもよいし、処理の順番が適宜変更されていてもよい。例えば、
図5では、電気装置1と上位システム3との通信は、電気装置1が上位システム3から学習済みモデルD2を取得する際に行われるが、この例に限らない。例えば、学習済みモデルD2以外の、電気装置1に実装されている各種ソフトウェアのアップデートの際に、電気装置1と上位システム3との通信が行われてもよい。さらに、後述する遠隔制御工程に際しても、電気装置1と上位システム3との通信が行われる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る機器管理方法では、配電用設備として機能する電気装置1に、機器2の管理(制御及び監視の少なくとも一方)を実行させることができる。そして、機器2の管理に必要な情報処理についても、配電用設備として機能する電気装置1にて行われるので、上位システム3と機器2との通信を伴わずとも、機器2の管理が可能となる。したがって、機器2の制御及び監視に際して、通信による時間遅れが生じる、又は通信不良により実行されない等の、通信環境に依存した不具合が生じにくい、という利点がある。
【0098】
さらに、本実施形態に係る機器管理システム10では、複数の電気装置1が、各々の連携通信部16にて互いに通信可能である。そのため、複数の電気装置1が連携して、機器2の管理(制御及び監視の少なくとも一方)に必要な機能を担うことができる。よって、電力のインフラ(infrastructure)である配電用設備(電気装置1)を利用して、機器2に機能を付加することが可能となる。
【0099】
(2.6)実行工程
以下、本実施形態に係る機器管理方法の実行工程について、
図4を参照して詳細に説明する。
【0100】
まず、電気装置1(
図4では一例としてコンセントからなる配線器具)にて、機器2(
図4では一例として空調機器)を監視する場面について説明する。
【0101】
実行工程においては、電気装置1にて機器2の監視により、機器2に関連する計測情報を取得する。計測情報は、機器2で消費される電力に関する電力情報と、機器2の動作に関する動作情報と、機器2で計測された機器2の周辺の環境情報と、の少なくとも1つを含む。
【0102】
本開示でいう「電力情報」は、機器2で消費される電力に関連する情報全般を含み、例えば、消費電力の瞬時値、時間帯ごとの機器2での消費電力量、機器2に供給される電流値若しくは電圧値、又は消費電力波形、電流波形若しくは電圧波形等の情報である。また、消費電力波形、電流波形又は電圧波形等からは、機器2の種別(テレビ受像機、空調機器又は照明機器等の区別)、機器2の機種、又は機器2の特性等、機器2の属性に関する属性情報を推定可能である。したがって、電力情報は、機器2の属性情報を含む。このような電力情報については、電気装置1に設けられたセンサ(電流センサ等)で計測することによって、電気装置1が取得してもよいし、機器2との通信によって、電気装置1が機器2から取得してもよい。
【0103】
また、本開示でいう「動作情報」は、機器2の動作に関連する情報全般を含み、例えば、機器2の(通電の)オン/オフ及び動作モード等の情報である。より詳細には、機器2がテレビ受像機201であれば、動作情報は、テレビ受像機201の視聴チャンネル及び音量等の情報を含む。機器2が空調機器209であれば、動作情報は、設定温度、タイマの設定状態、風向及び風量等の情報を含む。機器2が録画再生機であれば、動作情報は、予約番組及び録画番組等の情報を含む。機器2が洗濯機であれば、動作情報は、必要な洗剤投入量、洗濯/すすぎ/脱水/乾燥等のモード、及び各モードでの運転時間等の情報を含む。機器2が冷蔵庫であれば、動作情報は、庫内温度、各庫の設定状況及び製氷時間等の情報を含む。機器2がパッケージエアコン(空調設備)であれば、動作情報は、稼働時間、累積稼働時間、フィルタ使用時間(フィルタをリセットしてからの経過時間)、及び温度又は湿度のセンサ情報等の情報を含む。機器2がコピー機であれば、動作情報は、稼働時間、トナー残量、用紙の使用枚数、及び用紙の残枚数等の情報を含む。さらに、動作情報は、機器2に関して、ユーザに知らせるための動作ログ又はエラー情報、並びに、施工業者(サービスマン)に知らせるための動作ログ又はエラー情報等を含んでもよい。このような動作情報については、例えば、機器2との通信によって電気装置1が機器2から取得してもよい。
【0104】
また、本開示でいう「環境情報」は、機器2で計測された機器2の周辺の情報全般を含み、例えば、温度(室温)、湿度、照度、気圧、速度、加速度、角速度、角加速度、音、及び匂い等の物理量に関する情報である。さらには、環境情報は、機器2の周辺空間における人の在否、紫外線量、赤外線量、又は受信電波強度等の情報を含んでいてもよい。このような環境情報については、例えば、機器2に設けられたセンサ(温度センサ等)の計測結果をベースに、機器2との通信によって電気装置1が機器2から取得する。
【0105】
実行工程においては、電気装置1が上述したような計測情報を、定期的に又は不定期に(随時)取得する。そして、電気装置1が取得した計測情報は、例えば、処理部13での情報処理に用いられる。
【0106】
さらに、実行工程において電気装置1にて機器2の監視により得られた機器2に関連する計測情報は、上位システム3にて1つ以上の電気装置1から収集され、1箇所(上位システム3)に集約される。つまり、複数の電気装置1が取得した複数の計測情報は、上位システム3のテレメトリ機能によって、上位システム3に集約される。言い換えれば、本実施形態に係る機器管理方法は、テレメトリ工程を更に有している。テレメトリ工程は、実行工程において電気装置1での機器2の監視により得られた機器2に関連する計測情報を、上位システム3にて1つ以上の電気装置1から収集する工程である。テレメトリ工程について詳しくは「(2.7)テレメトリ機能」の欄で説明する。
【0107】
本実施形態では一例として、情報端末51又は操作端末52(
図2参照)にて、専用のアプリケーションソフトが起動することで、情報端末51又は操作端末52は上位システム3にアクセスする。この状態で、ユーザが、情報端末51又は操作端末52にてユーザID及びパスワードを入力することで、このユーザに対応付けられている機器2を監視可能な状態となる。具体的には、情報端末51又は操作端末52は、機器2を監視するための監視コマンドの入力を受付可能な状態となる。1人のユーザに複数の機器2が対応付けられている状態では、監視コマンドには、複数の機器2の中から監視対象の機器2を特定(選択)するための情報が含まれる。
【0108】
結果的に、例えば、施設F1外にいるユーザが、情報端末51又は操作端末52を用いて、施設F1内の機器2で消費される電力に関連する情報(電力情報)を、確認することが可能となる。同様に、施設F1外にいるユーザは、情報端末51又は操作端末52を用いて、施設F1内の機器2の動作に関連する情報(動作情報)、及び機器2で計測された機器2の周辺の情報(環境情報)等についても、確認可能となる。よって、ユーザは、機器2を遠隔で監視することが可能となる。
【0109】
次に、電気装置1(
図4では一例としてコンセントからなる配線器具)にて、機器2(
図4では一例として空調機器)を制御する場面について説明する。
【0110】
実行工程では、電気装置1から電力の供給先に向けてデータを送信する。本開示でいう「電力の供給先」は、電気装置1から見て電力の供給先、つまり電力の供給路における下流側を意味する。具体的には、分電盤101からなる電気装置1にとっては、電力の供給先は、複数の配線器具102~112、及び複数の配線器具102~112に接続される複数の機器2を含む。一方、配線器具102~112からなる電気装置1にとっては、電力の供給先は、各配線器具102~112に接続される機器2を含む。本実施形態では一例として、電気装置1の第2通信部15は、電力線搬送通信(PLC)にて通信可能であるので、電力の供給路(電力線)にて電気装置1と接続された、電力の供給先の電気装置1又は機器2に向けてデータを送信可能である。
【0111】
ここで、実行工程では、電気装置1から機器2に送信されるデータに従って機器2を制御する。すなわち、機器2は、電気装置1から送信されるデータに従って制御されるので、上述したように、電気装置1から電力の供給先に向けてデータが送信されることで、電気装置1に接続されている機器2の制御が実現される。
【0112】
本実施形態では、実行部12は、少なくとも機器2の制御については、処理部13での情報処理の結果に基づいて実行する。処理部13で行う情報処理は、例えば、機器2の監視結果に基づいて、機器2の制御内容を決定するための処理を含む。特に、本実施形態では、処理部13での情報処理は、学習済みモデルD2を用いて行われる。
【0113】
一例として、機器2がテレビ受像機201であれば、処理部13は、情報処理により、テレビ受像機201の過去の視聴チャンネルを視聴履歴(監視結果)に基づいて、ユーザの嗜好を推定する。そして、処理部13は、情報処理により、推定されたユーザの嗜好に応じた視聴チャンネルへ切り替えるための、制御指令(制御内容)を生成する。その結果、実行部12では、ユーザの嗜好に応じた視聴チャンネルへ切り替えるように、機器2を制御することが可能である。
【0114】
他の例として、機器2が空調機器209であれば、処理部13は、情報処理により、空調機器209の過去の設定温度を含む運転履歴(監視結果)と、ユーザの体調との関係を推定する。そして、処理部13は、情報処理により、推定されたユーザの体調に応じた設定温度へ切り替えるための、制御指令(制御内容)を生成する。その結果、実行部12では、ユーザの体調に応じた設定温度へ切り替えるように、機器2を制御することが可能である。
【0115】
さらに、実行工程において電気装置1にて機器2の監視により得られた機器2に関連する計測情報に基づいて、電気装置1が他の機器2を制御することも可能である。これにより、複数の機器2を連動させるような制御も可能となる。一例として、テレビ受像機201と照明機器202とを連動させる場合には、テレビ受像機201の視聴チャンネルに合わせて、照明機器202の明るさを変更する等の制御が可能になる。他の例として、空調機器209と照明機器210とを連動させる場合、空調機器209の温度又は湿度のセンサ情報に合わせて、照明機器210の発光色を変更する等の制御が可能になる。これにより、機器2単体には実装されていない機能であっても、電気装置1による制御によって実現することが可能である。
【0116】
さらに、本実施形態に係る機器管理方法は、遠隔制御工程を更に有する。遠隔制御工程を具現化するにあたり、第1通信部11は、機器2の制御を指示する制御指令を上位システム3から受信する。実行部12は、制御指令に従って機器2の制御を行う。要するに、遠隔制御工程は、実行工程における電気装置1での機器2の制御を指示する制御指令を、上位システム3から電気装置1に送信する工程である。つまり、機器2の制御を指示するための制御指令は、公衆網41を介して、適宜、上位システム3から電気装置1に送信される。したがって、例えば、ユーザは、情報端末51又は操作端末52を用いて、上位システム3に問い合わせを行うことにより、施設F1に設置されている機器2を制御することができる。
【0117】
本実施形態では一例として、情報端末51又は操作端末52にて、専用のアプリケーションソフトが起動することで、情報端末51又は操作端末52は上位システム3にアクセスする。この状態で、ユーザが、情報端末51又は操作端末52にてユーザID及びパスワードを入力することで、このユーザに対応付けられている機器2を制御可能な状態となる。具体的には、情報端末51又は操作端末52は、機器2を制御するための制御コマンドの入力を受付可能な状態となる。1人のユーザに複数の機器2が対応付けられている状態では、制御コマンドには、複数の機器2の中から制御対象の機器2を特定(選択)するための情報が含まれる。上位システム3は、入力された制御コマンドに従って制御指令を生成し、電気装置1に送信する。
【0118】
結果的に、例えば、施設F1外にいるユーザが、情報端末51又は操作端末52を用いて、施設F1内の機器2を制御することが可能となる。よって、ユーザは、機器2を遠隔で制御することが可能となる。
【0119】
以上説明したように、本実施形態に係る機器管理方法によれば、電気装置1が上位システム3(クラウド)と接続されている場合には、電気装置1が上位システム3と通信することで、遠隔で監視及び制御を実現可能である。また、電気装置1と上位システム3との間の接続(通信)が遮断された場合でも、電気装置1が主体となり、機器2の監視及び制御を実現可能である。すなわち、電気装置1を含むエッジ側で、処理部13での情報処理を伴うような機器2の管理(制御及び監視)の機能が完結しているため、施設F1内の機器2の監視及び制御の信頼性を向上できる。ここでいう「エッジ側」は、クラウド(上位システム3)と、ネットワーク(公衆網41等)を介して接続されるエッジ側の端末(装置)全般を意味する。そのため、クラウドコンピューティング、フォグコンピューティング及びエッジコンピューティングの3階層を想定した場合、フォグコンピューティング及びエッジコンピューティングが、「エッジ側」に含まれる。
【0120】
(2.7)テレメトリ機能
次に、計測情報を、上位システム3にて1つ以上の電気装置1から収集するテレメトリ工程について、
図6を参照して説明する。
【0121】
図6に示すように、公衆網41には、センサシステム6が接続されている。センサシステム6は、機器2としてのセンサ61~65で計測された環境情報を管理するシステムである。センサシステム6は、上位システム3にて収集された多数の環境情報を、例えば、ビッグデータとして蓄積する。
【0122】
図6の例において、電気装置1(ここではコンセントからなる配線器具)は、各種のセンサ61~65を装着可能である。センサ61~65は、例えば、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、気圧(圧力)センサ、加速度センサ、振動センサ、音センサ又は匂いセンサ等の種々のセンサである。具体的には、センサ61~65は同一形状の筐体を有しており、電気装置1の装着部171に対して取外し可能に装着される。ここでは一例として、装着部171にはマグネットが配置されており、電気装置1は、マグネットの磁力によって各センサ61~65を保持する。さらに、装着部171は、例えば、非接触給電方式により、機器2としての各センサ61~65に電力供給する構成であることが好ましい。このような構成によれば、用途に応じて任意のセンサ61~65としての機能を電気装置1に付加することがでる。
【0123】
このように、本実施形態に係る機器管理方法では、環境情報は、機器2として電気装置1に設けられたセンサ61~65で検知された物理量に関する情報を含んでいる。ここで、センサ61~65は、
図6の例のように、電気装置1に対して取外し可能に装着される態様に限らず、例えば、電気装置1の筐体に分離できない態様で一体に設けられていてもよいし、電気装置1の筐体に内蔵されていてもよい。
【0124】
(3)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。本開示において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、実施形態1に係る電気装置1又は機器管理システム10と同様の機能は、機器管理方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0125】
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0126】
本開示における電気装置1及び機器管理システム10は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における電気装置1及び機器管理システム10としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0127】
また、機器管理システム10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは機器管理システム10に必須の構成ではなく、機器管理システム10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、機器管理システム10のうちの電気装置1に設けられている機能の少なくとも一部は、電気装置1とは別の筐体に設けられていてもよい。さらに、電気装置1の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0128】
反対に、実施形態1において、複数の装置に分散されている少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、電気装置1と上位システム3とに分散されている機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0129】
また、機器管理方法の用途は戸建住宅に限らず、戸建住宅以外の住宅施設、又は非住宅施設に機器管理方法が適用されてもよい。例えば、店舗(テナント)、オフィス、福祉施設、教育施設、病院及び工場等の非住宅施設において、機器管理方法が適用されてもよい。
【0130】
また、実施形態1では、電気装置1が、Plume社のOpenSync(商標)モジュールを実装しているが、OpenSync(商標)を用いることは、機器管理方法において必須ではない。同様に、テレメトリ機能としてMQTTを使用すること、及び、分散型データベースとしてOVSDB(商標)を用いること等についても、機器管理方法において必須ではない。
【0131】
また、電気装置1の通信方式は、無線マルチホップ、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Ethernet(登録商標)、電力線搬送通信(PLC)若しくはPoE(Power over Ethernet)のいずれか、又はこれらの組み合わせであればよく、実施形態1の例に限らない。例えば、第1通信部11の通信方式は、トライバンド方式のWi-Fi(登録商標)以外の無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。また、第2通信部15の通信方式は、電力線搬送通信(PLC)以外の通信方式であってもよく、例えば、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信であってもよい。さらに、電気装置1の通信方式は、3G(第3世代)回線、LTE回線、4G(第4世代)回線又は5G(第5世代)回線等の携帯電話網を利用した通信であってもよい。
【0132】
また、装着部171は、非接触給電方式に限らず、例えば、接触式の端子を有し、機器2としての各センサ61~65に対して、端子から電力供給する構成であってもよい。
【0133】
(実施形態2)
本実施形態に係る機器管理システム10Aは、
図7に示すように、複数の電気装置1Aが複数の施設F1,F2に設置されている点で、実施形態1に係る機器管理システム10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0134】
本実施形態では一例として、施設F1は、あるユーザが居住する戸建住宅であって、施設F2は、施設F1の入居者と同一のユーザが勤務するオフィスである場合を想定する。このように、複数の施設F1,F2を同一のユーザが利用するケースにおいては、ユーザは、施設F1に設置されている機器2、及び施設F2に設置されている機器2の両方について、管理(制御及び監視の少なくとも一方)を行う。
【0135】
本実施形態では、このようなケースにおいて、複数の電気装置1Aが認証機能を有している。すなわち、処理部13は、認証の機能を有している。処理部13は認証に成功した場合に情報処理を実行する。ここでいう「認証」は、ユーザ又は管理対象である機器2等の、認証対象についての正当性の認証を意味する。ここでいう認証の「成功」とは、認証対象の正当性が認められることを意味する。本実施形態では、正規の(正当な)ユーザ又は機器2の識別情報は処理部13にて予め登録されている。そのため、処理部13は、認証対象であるユーザ又は機器2について、識別情報と照合し、認証の成否を決定する。つまり、例えば、電気装置1Aに接続された機器2の識別情報(例えばMACアドレス等)が、予め登録されている識別情報と一致すれば、この機器2についての認証は成功であって、一致しなければ認証は失敗となる。
【0136】
そして、処理部13は、認証に成功した場合にのみ情報処理を実行し、認証に失敗した場合には情報処理を実行しない。これにより、例えば、不正なユーザ又は機器2から電気装置1Aにアクセスがあった場合にも、処理部13の情報処理に係る情報の漏洩、又は機器2の不正な制御及び監視を回避しやすい。例えば、オフィスである施設F2において、施設F1の居住者以外の不正なユーザから、施設F1の機器2への不正なアクセスがあった場合でも、電気装置1Aの認証にて、不正なアクセスは排除することができる。
【0137】
より詳細には、本実施形態では、分散型台帳技術であるブロックチェーン(Blockchain)を認証に利用する。すなわち、処理部13は、複数のノードを有するブロックチェーンの個々のノードとして機能し、認証に用いる認証データをトランザクションデータD3として記録する。要するに、複数の電気装置1Aの処理部13が、それぞれブロックチェーンのノードとなり、同一のトランザクションデータD3を扱う。本実施形態では、処理部13は、トランザクションデータD3を記憶部14に格納することで記録する。トランザクションデータD3は、認証に用いる認証データであって、具体的には、上記認証対象の識別情報等を含んでいる。
【0138】
このように、本実施形態に係る機器管理システム10Aでは、ブロックチェーンを利用した認証により、認証データの改ざんのリスクを低減することが可能である。結果的に、電力のインフラ(infrastructure)である配電用設備(電気装置1)を利用して、広く、高機能な機器2を提供する場合であっても、不正なアクセスを回避しやすくなる。
【0139】
また、実施形態2の変形例として、認証の手段は、ブロックチェーン以外の仕組みで実現されてもよい。
【0140】
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0141】
(実施形態3)
本実施形態に係る電気装置1では、量子コンピュータを用いている点が、実施形態1に係る電気装置1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0142】
本実施形態では、処理部13は、量子コンピュータにて実現される。要するに、本実施形態では、処理部13は、ノイマン型のコンピュータではなく、量子コンピュータからなる。また、本実施形態では、量子コンピュータは、処理部13だけでなく、少なくとも実行部12の機能も兼ね備えている。言い換えれば、実行部12及び処理部13は、量子コンピュータにて実現されている。
【0143】
量子コンピュータは、プログラム(例えば、量子プログラミング言語)を実行することにより、実行部12及び処理部13としての機能を実現する。プログラムは、予め量子コンピュータに実装されていてもよいし、メモリカードのような非一時的記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。言い換えれば、上記プログラムは、1以上のプロセッサを、実行部12及び処理部13として機能させるためのプログラムである。
【0144】
ここで、量子コンピュータのサイズは、0.9mm3以下である。この量子コンピュータは、ハウジング17に収容(内蔵)されることにより、ハウジング17に保持されている。よって、本実施形態に係る電気装置1では、実施形態1に係る電気装置1のプロセッサ100に負けず劣らず、実行部12及び処理部13によって占有される面積及び容積を小さく抑えることができる。
【0145】
また、本実施形態では、量子コンピュータは、54量子ビット(quantum bit)以上である。これにより、処理部13の処理速度の高速化を図ることが可能である。
【0146】
本実施形態に係る電気装置1では、処理部13として量子コンピュータを用いているので、例えば、学習済みモデルD2を用いた演算等の複雑な演算を高速に実行しやすくなる。
【0147】
実施形態3の変形例として、量子コンピュータは処理部13としてのみ機能してもよく、この場合、処理部13とは別に実行部12が設けられる。
【0148】
実施形態3で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1又は2で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0149】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る電気装置(1,1A)は、ハウジング(17)を備え、電力の供給路上に設けられる配電用設備として機能する電気装置である。電気装置(1,1A)は、実行部(12)と、処理部(13)と、を更に備える。実行部(12)は、電気装置(1,1A)に電気的に接続される機器(2)の制御及び監視の少なくとも一方を行う。処理部(13)は、機器(2)に関連する情報処理を行う。実行部(12)及び処理部(13)は、ハウジング(17)に保持されている。実行部(12)は、処理部(13)での情報処理の結果に基づいて制御及び監視の少なくとも一方を行う。
【0150】
この態様によれば、配電用設備として機能する電気装置(1,1A)に、機器(2)の管理(制御及び監視の少なくとも一方)を実行させることができる。そして、機器(2)の管理に必要な情報処理についても、配電用設備として機能する電気装置(1,1A)にて行われるので、クラウド(クラウドコンピューティング)等の外部システムと機器(2)との通信を伴わずとも、機器(2)の管理が可能となる。したがって、機器(2)の制御及び監視に際して、通信による時間遅れが生じる、又は通信不良により実行されない等の、通信環境に依存した不具合が生じにくい、という利点がある。
【0151】
第2の態様に係る電気装置(1,1A)は、第1の態様において、ハウジング(17)に保持されており、上位システム(3)と通信可能な通信部(第1通信部11)を更に備える。
【0152】
この態様によれば、電気装置(1,1A)において上位システム(3)との通信が可能となる。
【0153】
第3の態様に係る電気装置(1,1A)では、第2の態様において、通信部(第1通信部11)は、上位システム(3)にて機械学習により生成された学習済みモデル(D2)を上位システム(3)から受信する。処理部(13)は、学習済みモデル(D2)を用いて情報処理を行う。
【0154】
この態様によれば、処理部(13)が学習済みモデル(D2)を用いた情報処理を行うことで、実行部(12)において機器(2)の複雑な制御又は監視が実現可能となる。
【0155】
第4の態様に係る電気装置(1,1A)では、第3の態様において、通信部(第1通信部11)は、上位システム(3)での機械学習に用いられる学習データ(D1)を上位システム(3)に送信する。
【0156】
この態様によれば、電気装置(1,1A)から収集される学習データ(D1)を用いて、学習済みモデル(D2)を生成することが可能となる。
【0157】
第5の態様に係る電気装置(1,1A)では、第2~4のいずれかの態様において、通信部(第1通信部11)は、機器(2)の制御を指示する制御指令を上位システム(3)から受信する。実行部(12)は、制御指令に従って機器(2)の制御を行う。
【0158】
この態様によれば、機器(2)の遠隔制御が可能となる。
【0159】
第6の態様に係る電気装置(1,1A)では、第1~5のいずれかの態様において、処理部(13)は、認証の機能を有し、認証に成功した場合に情報処理を実行する。
【0160】
この態様によれば、例えば、不正なユーザ又は機器(2)から電気装置(1,1A)にアクセスがあった場合にも、処理部(13)の情報処理に係る情報の漏洩、又は機器(2)の不正な制御及び監視を回避しやすい。
【0161】
第7の態様に係る電気装置(1,1A)では、第6の態様において、処理部(13)は、複数のノードを有するブロックチェーンの個々のノードとして機能し、認証に用いる認証データをトランザクションデータ(D3)として記録する。
【0162】
この態様によれば、認証データの改ざんのリスクを低減することが可能である。
【0163】
第8の態様に係る電気装置(1,1A)では、第1~7のいずれかの態様において、ハウジング(17)は、配電用設備に関する規格で定められた寸法を有する。
【0164】
この態様によれば、電気装置(1,1A)の汎用性が高い。
【0165】
第9の態様に係る電気装置(1,1A)では、第1~8のいずれかの態様において、処理部(13)は、一辺が300μmの仮想正方形に収まるチップサイズのプロセッサにて実現される。
【0166】
この態様によれば、処理部(13)によって占有される面積及び容積を小さく抑えることができる。
【0167】
第10の態様に係る電気装置(1,1A)では、第1~8のいずれかの態様において、処理部(13)は、一辺が100μmの仮想正方形に収まるチップサイズのプロセッサにて実現される。
【0168】
この態様によれば、処理部(13)によって占有される面積及び容積を小さく抑えることができる。
【0169】
第11の態様に係る電気装置(1,1A)では、第1~10のいずれかの態様において、処理部(13)は、量子コンピュータにて実現される。
【0170】
この態様によれば、処理部(13)での複雑な演算を高速に実行しやすくなる。
【0171】
第12の態様に係る電気装置(1,1A)では、第11の態様において、量子コンピュータのサイズは、0.9mm3以下である。
【0172】
この態様によれば、処理部(13)によって占有される面積及び容積を小さく抑えることができる。
【0173】
第13の態様に係る電気装置(1,1A)では、第11又は第12の態様において、量子コンピュータは、54量子ビット以上である。
【0174】
この態様によれば、処理部(13)の処理速度の高速化を図ることが可能である。
【0175】
第14の態様に係る機器管理システム(10,10A)は、第1~13のいずれかの態様における電気装置(1,1A)を複数備える。複数の電気装置(1,1A)の各々は、ハウジング(17)に保持されており互いに通信可能な連携通信部(16)を更に備える。
【0176】
この態様によれば、機器(2)の制御及び監視に際して、通信による時間遅れが生じる、又は通信不良により実行されない等の、通信環境に依存した不具合が生じにくい、という利点がある。
【0177】
第15の態様に係る機器管理方法は、電力の供給路上に設けられる配電用設備(電気装置1、1A)を用いた機器管理方法である。機器管理方法は、実行工程と、処理工程と、を有する。実行工程にて、配電用設備(電気装置1,1A)に電気的に接続される機器(2)の制御及び監視の少なくとも一方を、配電用設備(電気装置1,1A)にて行う。処理工程にて、機器(2)に関連する情報処理を、配電用設備(電気装置1,1A)にて行う。実行工程では、処理工程での情報処理の結果に基づいて制御及び監視の少なくとも一方を行う。
【0178】
この態様によれば、機器(2)の制御及び監視に際して、通信による時間遅れが生じる、又は通信不良により実行されない等の、通信環境に依存した不具合が生じにくい、という利点がある。
【0179】
第16の態様に係るプログラムは、第15の態様における機器管理方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0180】
この態様によれば、機器(2)の制御及び監視に際して、通信による時間遅れが生じる、又は通信不良により実行されない等の、通信環境に依存した不具合が生じにくい、という利点がある。
【0181】
上記態様に限らず、実施形態1、実施形態2及び実施形態3に係る電気装置(1,1A)の種々の構成(変形例を含む)は、機器管理システム(10,10A)、機器管理方法又はプログラムにて具現化可能である。
【0182】
第2~13の態様に係る構成については、電気装置(1,1A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0183】
1,1A 電気装置(配電用設備)
2 機器
3 上位システム
10,10A 機器管理システム
11 第1通信部(通信部)
12 実行部
13 処理部
16 連携通信部
17 ハウジング
D1 学習データ
D2 学習済みモデル
D3 トランザクションデータ