(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】磁気センサ、及びセンサシステム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
(21)【出願番号】P 2021504873
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006631
(87)【国際公開番号】W WO2020184115
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019047567
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長部 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤浦 英明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 義行
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015218855(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/090146(WO,A1)
【文献】特開2015-045529(JP,A)
【文献】特開2012-107963(JP,A)
【文献】特開2017-219319(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062778(WO,A1)
【文献】特開平01-097826(JP,A)
【文献】特表2011-503540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転角を検知するための磁気センサであって、
検知用磁気抵抗素子と、
キャンセル用磁気抵抗素子と、を備え、
前記検知用磁気抵抗素子の感磁方向に対する前記キャンセル用磁気抵抗素子の感磁方向の傾きが、前記検知用磁気抵抗素子からの出力信号に含まれる基本波の1周期に対応する前記回転角をαとし、nを1以上の自然数とした場合に、n×α/3、又はn×α/3+α/2を基準とする所定範囲内に収まっており、
前記検知用磁気抵抗素子は、
余弦波信号を出力する第1検知用ブリッジ回路と、
正弦波信号を出力する第2検知用ブリッジ回路と、を含み、
前記キャンセル用磁気抵抗素子は、
余弦波信号を出力する第1キャンセル用ブリッジ回路と、
正弦波信号を出力する第2キャンセル用ブリッジ回路と、を含み、
前記第1検知用ブリッジ回路の中心と前記第2検知用ブリッジ回路の中心とが一致して
おり、
前記第1検知用ブリッジ回路は、複数の第1検知用磁気抵抗パターンを有し、
前記第2検知用ブリッジ回路は、複数の第2検知用磁気抵抗パターンを有し、
前記第1キャンセル用ブリッジ回路は、複数の第1キャンセル用磁気抵抗パターンを有し、
前記第2キャンセル用ブリッジ回路は、複数の第2キャンセル用磁気抵抗パターンを有し、
前記複数の第1検知用磁気抵抗パターンと前記複数の第1キャンセル用磁気抵抗パターンと前記複数の第2検知用磁気抵抗パターンと前記複数の第2キャンセル用磁気抵抗パターンとは、第1検知用磁気抵抗パターン、第1キャンセル用磁気抵抗パターン、第2検知用磁気抵抗パターン、第2キャンセル用磁気抵抗パターンの順に、同一の円周上に沿って並んでいる、
磁気センサ。
【請求項2】
前記第1検知用ブリッジ回路の中心と前記第2検知用ブリッジ回路の中心と前記第1キャンセル用ブリッジ回路の中心と前記第2キャンセル用ブリッジ回路の中心とが一致している、
請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記検知用磁気抵抗素子及び前記キャンセル用磁気抵抗素子の各々は、異方性磁気抵抗素子である、
請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記検知用磁気抵抗素子は、4つの検知用磁気抵抗パターンを有し、
前記4つの検知用磁気抵抗パターンがフルブリッジ接続されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記キャンセル用磁気抵抗素子は、4つのキャンセル用磁気抵抗パターンを有し、
前記4つのキャンセル用磁気抵抗パターンがフルブリッジ接続されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1検知用ブリッジ回路と前記第2検知用ブリッジ回路と前記第1キャンセル用ブリッジ回路と前記第2キャンセル用ブリッジ回路とが、同一の円周上に配置されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記検知用磁気抵抗素子と前記キャンセル用磁気抵抗素子とが同一の基板に実装されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気センサと、
前記磁気センサからの出力信号に対して信号処理を行う処理回路と、を備える、
センサシステム。
【請求項9】
前記処理回路は、前記検知用磁気抵抗素子からの第1出力信号と前記キャンセル用磁気抵抗素子からの第2出力信号との差動演算を行った後に、前記差動演算の演算結果を増幅する、
請求項8に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記処理回路は、前記検知用磁気抵抗素子からの第1出力信号及び前記キャンセル用磁気抵抗素子からの第2出力信号を増幅した後に、増幅後の前記第1出力信号と前記第2出力信号との差動演算を行う、
請求項8に記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気センサ、及びセンサシステムに関する。より詳細には、本開示は、磁気抵抗素子を備える磁気センサ、及びセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの磁気センサを用いた回転角度センサ(センサシステム)が記載されている。特許文献1に記載の回転角度センサは、2つの磁気センサと、信号処理IC部(処理回路)とから構成される。プリント基板上には、2つの磁気センサが互いにθ=90度の位置に配置されている。このプリント基板上の対向する位置に、回転体に固定された磁石が配置されている。
【0003】
特許文献1に記載の回転角度センサでは、回転体の回転とともに回転する磁石が作る磁場を2つの磁気センサを用いて検出することにより、一方の磁気センサからX成分として正弦波が、他方の磁気センサからY成分として余弦波がそれぞれ検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載の回転角度センサでは、磁気センサからの出力信号に含まれる高調波成分により誤検知する可能性があり、そのため出力信号の高調波成分を低減することが望まれている。
【0006】
本開示の目的は、出力信号に含まれる高調波成分を低減することができる磁気センサ、及びセンサシステムを提供することにある。
【0007】
本開示の一態様に係る磁気センサは、回転体の回転角を検知するための磁気センサである。前記磁気センサは、検知用磁気抵抗素子と、キャンセル用磁気抵抗素子と、を備える。前記検知用磁気抵抗素子の感磁方向に対する前記キャンセル用磁気抵抗素子の感磁方向の傾きが、所定範囲内に収まっている。前記所定範囲は、前記検知用磁気抵抗素子からの出力信号に含まれる基本波の1周期に対応する前記回転角をαとし、nを1以上の自然数とした場合に、n×α/3、又はn×α/3+α/2を基準とする範囲である。前記検知用磁気抵抗素子は、余弦波信号を出力する第1検知用ブリッジ回路と、正弦波信号を出力する第2検知用ブリッジ回路と、を含む。前記キャンセル用磁気抵抗素子は、余弦波信号を出力する第1キャンセル用ブリッジ回路と、正弦波信号を出力する第2キャンセル用ブリッジ回路と、を含む。前記第1検知用ブリッジ回路の中心と前記第2検知用ブリッジ回路の中心とが一致している。前記第1検知用ブリッジ回路は、複数の第1検知用磁気抵抗パターンを有する。前記第2検知用ブリッジ回路は、複数の第2検知用磁気抵抗パターンを有する。前記第1キャンセル用ブリッジ回路は、複数の第1キャンセル用磁気抵抗パターンを有する。前記第2キャンセル用ブリッジ回路は、複数の第2キャンセル用磁気抵抗パターンを有する。前記複数の第1検知用磁気抵抗パターンと前記複数の第1キャンセル用磁気抵抗パターンと前記複数の第2検知用磁気抵抗パターンと前記複数の第2キャンセル用磁気抵抗パターンとは、第1検知用磁気抵抗パターン、第1キャンセル用磁気抵抗パターン、第2検知用磁気抵抗パターン、第2キャンセル用磁気抵抗パターンの順に、同一の円周上に沿って並んでいる。
【0008】
本開示の一態様に係るセンサシステムは、上述の磁気センサと、処理回路と、を備える。前記処理回路は、前記磁気センサからの出力信号に対して信号処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る磁気センサ及びセンサシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の磁気センサを構成する磁気抵抗素子の配置例を示す平面図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、同上の磁気センサを構成する検知用磁気抵抗素子の出力信号の波形図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、同上の磁気センサを構成する検知用磁気抵抗素子の別の出力信号の波形図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、同上の磁気センサを構成するキャンセル用磁気抵抗素子の出力信号の波形図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、同上の磁気センサを構成するキャンセル用磁気抵抗素子の別の出力信号の波形図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、同上の磁気センサを構成する検知用磁気抵抗素子の出力信号とキャンセル用磁気抵抗素子の出力信号との差動演算を行った後の信号の波形図である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、同上の磁気センサを構成する検知用磁気抵抗素子の別の出力信号とキャンセル用磁気抵抗素子の別の出力信号との差動演算を行った後の信号の波形図である。
【
図9】
図9は、実施形態の変形例1に係るセンサシステムを構成する処理回路のブロック図である。
【
図10】
図10は、実施形態の変形例2に係る磁気センサを構成する磁気抵抗素子の配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
(1)概要
以下、本実施形態に係る磁気センサ1、及び磁気センサ1を備えるセンサシステム10の概要について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る磁気センサ1、及びセンサシステム10は、例えば、車のステアリングシャフト等の回転体200(
図2参照)の回転角を検出するために用いられる。具体的には、回転体200にギア等を介して連結されている磁石からの磁界の変化により、後述する第1検知用磁気抵抗体131~134、及び第2検知用磁気抵抗体141~144の抵抗値が変化する。そして、第1検知用磁気抵抗体131~134、及び第2検知用磁気抵抗体141~144の抵抗値の変化を検出することにより、回転体200の回転角を検出することができる。
【0012】
本実施形態に係る磁気センサ1は、
図1に示すように、検知用磁気抵抗素子11と、キャンセル用磁気抵抗素子12と、を備える。本実施形態では一例として、検知用磁気抵抗素子11及びキャンセル用磁気抵抗素子12の各々は、異方性磁気抵抗素子(Anisotropic Magneto Resistance:AMR)である。
【0013】
検知用磁気抵抗素子11は、第1検知用ブリッジ回路13と、第2検知用ブリッジ回路14と、を含む。第1検知用ブリッジ回路13は、余弦波信号を出力する。第2検知用ブリッジ回路14は、正弦波信号を出力する。キャンセル用磁気抵抗素子12は、第1キャンセル用ブリッジ回路15と、第2キャンセル用ブリッジ回路16と、を含む。第1キャンセル用ブリッジ回路15は、余弦波信号を出力する。第2キャンセル用ブリッジ回路16は、正弦波信号を出力する。
【0014】
第1検知用ブリッジ回路13は、4つの第1検知用磁気抵抗パターン135~138を有する。第2検知用ブリッジ回路14は、4つの第2検知用磁気抵抗パターン145~148を有する。第1キャンセル用ブリッジ回路15は、4つの第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158を有する。第2キャンセル用ブリッジ回路16は、4つの第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168を有する。
【0015】
検知用磁気抵抗素子11の感磁方向M1に対するキャンセル用磁気抵抗素子12の感磁方向M2の傾きβ1は、所定範囲内に収まっている。所定範囲は、検知用磁気抵抗素子11からの出力信号V1,V2に含まれる基本波W11,W21(
図3A及び
図4A参照)の1周期に対応する回転体200の回転角をαとし、nを1以上の自然数とした場合に、n×α/3、又はn×α/3+α/2を基準とする範囲である。本実施形態では、検知用磁気抵抗素子11及びキャンセル用磁気抵抗素子12の各々がAMRであることから、基本波W11,W21の1周期αに対応する回転体200の回転角は180度である。また、本実施形態では一例として、所定範囲の基準は60度である。本開示でいう「感磁方向」とは、磁束に対して反応が最大となる方向をいい、例えば
図2に示すように、磁気抵抗パターンがミアンダ形状の場合には、当該ミアンダ形状の延伸方向が感磁方向になる。
【0016】
本実施形態に係るセンサシステム10は、
図1に示すように、上述の磁気センサ1と、処理回路2と、を備える。処理回路2は、磁気センサ1からの出力信号V1,V2,V3,V4に対して信号処理を行う。
【0017】
本実施形態に係る磁気センサ1、及びセンサシステム10では、検知用磁気抵抗素子11の感磁方向M1に対するキャンセル用磁気抵抗素子12の感磁方向M2の傾きβ1が所定範囲内に収まっている。そのため、検知用磁気抵抗素子11からの出力信号V1,V2とキャンセル用磁気抵抗素子12からの出力信号V3,V4との差動演算を行うことにより、出力信号V1,V2に含まれる高周波成分を低減することができる。ここで、出力信号V1,V2は、高調波成分として3倍波、4倍波、5倍波、…を含むが、特に3倍波による影響が最も大きいことから、以下に説明する磁気センサ1及びセンサシステム10では、出力信号V1,V2に含まれる3倍波の成分を除去する。
【0018】
(2)構成
以下、本実施形態に係るセンサシステム10の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。本実施形態に係るセンサシステム10は、
図1に示すように、磁気センサ1と、処理回路2と、を備えている。
【0019】
(2.1)磁気センサ
磁気センサ1は、
図1に示すように、検知用磁気抵抗素子11と、キャンセル用磁気抵抗素子12と、を備えている。検知用磁気抵抗素子11は、回転体200の回転角を検出するための素子である。キャンセル用磁気抵抗素子12は、検知用磁気抵抗素子11からの出力信号(第1出力信号)V1,V2に含まれる高調波成分を除去するための素子である。本実施形態における高調波成分は、例えば、出力信号V1,V2に含まれる3倍波の成分である。
【0020】
検知用磁気抵抗素子11は、第1検知用ブリッジ回路13と、第2検知用ブリッジ回路14と、を含む。
【0021】
第1検知用ブリッジ回路13は、例えば、複数(
図1では4個)の第1検知用磁気抵抗体131~134からなるフルブリッジ回路である。具体的には、第1検知用磁気抵抗体131,133の第1端同士を接続することにより第1直列回路を形成し、第1検知用磁気抵抗体132,134の第1端同士を接続することにより第2直列回路を形成している。そして、第1直列回路及び第2直列回路は、基準電位VcとグランドGNDとの間に電気的に並列に接続されている。言い換えると、第1検知用磁気抵抗体131,132の第2端が基準電位Vcに電気的に接続され、第1検知用磁気抵抗体133,134の第2端がグランドGNDに電気的に接続されている。ここで、第1検知用磁気抵抗体131~134の各々は、例えば、回転体200にギア等を介して連結されている磁石からの磁界の変化に応じて抵抗値が変化する。そして、第1検知用ブリッジ回路13では、第1検知用磁気抵抗体131,133の接続点と、第1検知用磁気抵抗体132,134の接続点とから、位相が180度異なる2つの余弦波信号が出力される。つまり、第1検知用ブリッジ回路13では、第1検知用磁気抵抗体131,133の接続点から+cos信号(余弦波信号)が出力され、第1検知用磁気抵抗体132,134の接続点から-cos信号(余弦波信号)が出力される。
【0022】
第2検知用ブリッジ回路14は、例えば、複数(
図1では4個)の第2検知用磁気抵抗体141~144からなるフルブリッジ回路である。具体的には、第2検知用磁気抵抗体141,143の第1端同士を接続することにより第1直列回路を形成し、第2検知用磁気抵抗体142,144の第1端同士を接続することにより第2直列回路を形成している。そして、第1直列回路及び第2直列回路は、基準電位VcとグランドGNDとの間に電気的に並列に接続されている。言い換えると、第2検知用磁気抵抗体141,142の第2端が基準電位Vcに電気的に接続され、第2検知用磁気抵抗体143,144の第2端がグランドGNDに電気的に接続されている。第2検知用ブリッジ回路14は、第1検知用ブリッジ回路13に対して45度回転させて配置されている。したがって、第2検知用ブリッジ回路14では、第2検知用磁気抵抗体141,143の接続点と、第2検知用磁気抵抗体142,144の接続点とから、位相が180度異なる2つの正弦波信号が出力される。つまり、第2検知用ブリッジ回路14では、第2検知用磁気抵抗体141,143の接続点から+sin信号(正弦波信号)が出力され、第2検知用磁気抵抗体142,144の接続点から-sin信号(正弦波信号)が出力される。言い換えると、検知用磁気抵抗素子11は、余弦波信号を出力する第1検知用ブリッジ回路13と、正弦波信号を出力する第2検知用ブリッジ回路14と、を含む。
【0023】
また、キャンセル用磁気抵抗素子12は、第1キャンセル用ブリッジ回路15と、第2キャンセル用ブリッジ回路16と、を含む。
【0024】
第1キャンセル用ブリッジ回路15は、例えば、複数(
図1では4個)の第1キャンセル用磁気抵抗体151~154からなるフルブリッジ回路である。具体的には、第1キャンセル用磁気抵抗体151,153の第1端同士を接続することにより第1直列回路を形成し、第1キャンセル用磁気抵抗体152,154の第1端同士を接続することにより第2直列回路を形成している。そして、第1直列回路及び第2直列回路は、基準電位VcとグランドGNDとの間に電気的に並列に接続されている。言い換えると、第1キャンセル用磁気抵抗体151,152の第2端が基準電位Vcに電気的に接続され、第1キャンセル用磁気抵抗体153、154の第2端がグランドGNDに電気的に接続されている。第1キャンセル用ブリッジ回路15は、第1検知用ブリッジ回路13に対して60度回転させて配置されている。第1キャンセル用ブリッジ回路15では、第1キャンセル用磁気抵抗体151,153の接続点と、第1キャンセル用磁気抵抗体152,154の接続点とから、位相が180度異なる余弦波状の2つの信号が出力される。つまり、第1キャンセル用ブリッジ回路15では、第1キャンセル用磁気抵抗体151,153の接続点から+cos信号が出力され、第1キャンセル用磁気抵抗体152,154の接続点から-cos信号が出力される。
【0025】
第2キャンセル用ブリッジ回路16は、例えば、複数(
図1では4個)の第2キャンセル用磁気抵抗体161~164からなるフルブリッジ回路である。具体的には、第2キャンセル用磁気抵抗体161,163の第1端同士を接続することにより第1直列回路を形成し、第2キャンセル用磁気抵抗体162,164の第1端同士を接続することにより第2直列回路を形成している。そして、第1直列回路及び第2直列回路は、基準電位VcとグランドGNDとの間に電気的に並列に接続されている。言い換えると、第2キャンセル用磁気抵抗体161,162の第2端が基準電位Vcに電気的に接続され、第2キャンセル用磁気抵抗体163,164の第2端がグランドGNDに電気的に接続されている。第2キャンセル用ブリッジ回路16は、第2検知用ブリッジ回路14に対して60度回転させて配置されている。また、第2キャンセル用ブリッジ回路16は、第1キャンセル用ブリッジ回路15に対して45度回転させて配置されている。したがって、第2キャンセル用ブリッジ回路16では、第2キャンセル用磁気抵抗体161,163の接続点と、第2キャンセル用磁気抵抗体162,164の接続点とから、位相が180度異なる正弦波状の2つの信号が出力される。つまり、第2キャンセル用ブリッジ回路16では、第2キャンセル用磁気抵抗体161,163の接続点から+sin信号が出力され、第2キャンセル用磁気抵抗体162,164の接続点から-sin信号が出力される。言い換えると、キャンセル用磁気抵抗素子12は、余弦波信号を出力する第1キャンセル用ブリッジ回路15と、正弦波信号を出力する第2キャンセル用ブリッジ回路16と、を含む。
【0026】
図2は、本実施形態に係る磁気センサ1を構成する検知用磁気抵抗素子11、及びキャンセル用磁気抵抗素子12の配置例を示す平面図である。検知用磁気抵抗素子11を構成する第1検知用磁気抵抗体131~134は、基板100の一面に実装されている第1検知用磁気抵抗パターン135~138を有する。検知用磁気抵抗素子11を構成する第2検知用磁気抵抗体141~144は、基板100の一面に実装されている第2検知用磁気抵抗パターン145~148を有する。また、キャンセル用磁気抵抗素子12を構成する第1キャンセル用磁気抵抗体151~154は、基板100の一面に実装されている第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158を有する。キャンセル用磁気抵抗素子12を構成する第2キャンセル用磁気抵抗体161~164は、基板100の一面に実装されている第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168を有する。
【0027】
第1検知用磁気抵抗パターン135~138、及び第2検知用磁気抵抗パターン145~148の各々は、例えば、鉄-ニッケル合金を含む金属パターンで形成されている。第1検知用磁気抵抗パターン135~138、及び第2検知用磁気抵抗パターン145~148の各々の形状は、例えば、ミアンダ形状である。本開示でいう「ミアンダ形状」とは、一方向に並んでいる複数の直線部を有しており、隣接する直線部の第1端又は第2端同士を交互に接続する形状をいう。第1検知用磁気抵抗パターン135~138、及び第2検知用磁気抵抗パターン145~148の各々の感磁方向は、磁気抵抗パターンを構成する複数の直線部が並ぶ方向と平行な方向である。
【0028】
また、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168の各々は、例えば、鉄-ニッケル合金を含む金属パターンで形成されている。第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168の各々の形状は、例えば、ミアンダ形状である。第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168の各々の感磁方向は、磁気抵抗パターンを構成する複数の直線部が並ぶ方向と平行な方向である。
【0029】
第1検知用磁気抵抗パターン135~138、及び第2検知用磁気抵抗パターン145~148は、
図2に示すように、基板100の一面において、回転体200の回転中心である点P1を中心とする円の円周C1上に配置されている。また、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168は、
図2に示すように、基板100の一面において、点P1を中心とする円の円周C1上に配置されている。言い換えると、第1検知用ブリッジ回路13と第2検知用ブリッジ回路14と第1キャンセル用ブリッジ回路15と第2キャンセル用ブリッジ回路16とが、同一の円周C1上に配置されている。
【0030】
第1検知用ブリッジ回路13を構成する4つの第1検知用磁気抵抗パターン135~138は、円周C1上に配置されている。具体的には、第1検知用磁気抵抗パターン136,137の各々は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン135の感磁方向に対して90度傾くように配置されている。また、第1検知用磁気抵抗パターン138は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン135の感磁方向と一致するように配置されている。
【0031】
第2検知用ブリッジ回路14を構成する4つの第2検知用磁気抵抗パターン145~148は、円周C1上に配置されている。具体的には、第2検知用磁気抵抗パターン145は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン135の感磁方向に対して45度傾くように配置されている。第2検知用磁気抵抗パターン146は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン136の感磁方向に対して45度傾くように配置されている。第2検知用磁気抵抗パターン147は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン137の感磁方向に対して45度傾くように配置されている。第2検知用磁気抵抗パターン148は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン138の感磁方向に対して45度傾くように配置されている。その結果、第2検知用磁気抵抗パターン146,147の各々の感磁方向は、第2検知用磁気抵抗パターン145の感磁方向に対して90度傾いている。また、第2検知用磁気抵抗パターン148の感磁方向は、第2検知用磁気抵抗パターン145の感磁方向と一致している。
【0032】
第1キャンセル用ブリッジ回路15を構成する4つの第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158は、円周C1上に配置されている。具体的には、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン135の感磁方向に対して60度傾くように配置されている。第1キャンセル用磁気抵抗パターン156は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン136の感磁方向に対して60度傾くように配置されている。第1キャンセル用磁気抵抗パターン157は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン137の感磁方向に対して60度傾くように配置されている。第1キャンセル用磁気抵抗パターン158は、その感磁方向が第1検知用磁気抵抗パターン138の感磁方向に対して60度傾くように配置されている。その結果、第1キャンセル用磁気抵抗パターン156,157の各々の感磁方向は、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155の感磁方向に対して90度傾いている。また、第1キャンセル用磁気抵抗パターン158の感磁方向は、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155の感磁方向と一致している。
【0033】
第2キャンセル用ブリッジ回路16を構成する4つの第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168は、円周C1上に配置されている。具体的には、第2キャンセル用磁気抵抗パターン165は、その感磁方向が第2検知用磁気抵抗パターン145の感磁方向に対して60度傾くように配置されている。第2キャンセル用磁気抵抗パターン166は、その感磁方向が第2検知用磁気抵抗パターン146の感磁方向に対して60度傾くように配置されている。第2キャンセル用磁気抵抗パターン167は、その感磁方向が第2検知用磁気抵抗パターン147の感磁方向に対して60度傾くように配置されている。第2キャンセル用磁気抵抗パターン168は、その感磁方向が第2検知用磁気抵抗パターン148の感磁方向に対して60度傾くように配置されている。その結果、第2キャンセル用磁気抵抗パターン166,167の各々の感磁方向は、第2キャンセル用磁気抵抗パターン165の感磁方向に対して90度傾いている。また、第2キャンセル用磁気抵抗パターン168の感磁方向は、第2キャンセル用磁気抵抗パターン165の感磁方向と一致している。
【0034】
ここで、本実施形態では、4つの第1検知用磁気抵抗パターン135~138で構成される第1検知用ブリッジ回路13の感磁方向を、例えば、第1検知用磁気抵抗パターン135の感磁方向M1とする。また、4つの第2検知用磁気抵抗パターン145~148で構成される第2検知用ブリッジ回路14の感磁方向を、例えば、第2検知用磁気抵抗パターン145の感磁方向とする。そして、第1検知用ブリッジ回路13と第2検知用ブリッジ回路14とで構成される検知用磁気抵抗素子11の感磁方向を、例えば、第1検知用磁気抵抗パターン135の感磁方向M1とする。
【0035】
一方、4つの第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158で構成される第1キャンセル用ブリッジ回路15の感磁方向を、例えば、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155の感磁方向M2とする。また、4つの第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168で構成される第2キャンセル用ブリッジ回路16の感磁方向を、例えば、第2キャンセル用磁気抵抗パターン165の感磁方向とする。そして、第1キャンセル用ブリッジ回路15と第2キャンセル用ブリッジ回路16とで構成されるキャンセル用磁気抵抗素子12の感磁方向を、例えば、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155の感磁方向M2とする。したがって、検知用磁気抵抗素子11の感磁方向M1に対するキャンセル用磁気抵抗素子12の感磁方向M2の傾きβ1は、第1検知用磁気抵抗パターン135の感磁方向M1に対する第1キャンセル用磁気抵抗パターン155の感磁方向M2の傾きβ1であり、例えば、60度である。傾きβ1は、60度に限らず、60度を基準とする所定範囲内に収まっていればよい。具体的には、所定範囲は60度±10度の範囲であることが好ましい。より好ましくは、所定範囲は60度±5度の範囲であるのがよい。
【0036】
(2.2)処理回路
処理回路2は、磁気センサ1の出力信号に対して信号処理を行う。処理回路2は、
図1に示すように、複数(
図1では6個)の差動増幅器(差動アンプ)21~26と、複数(
図1では2個)のA/D変換器27,28と、演算部29と、を備えている。
【0037】
差動増幅器21は、第1入力端子、第2入力端子、及び出力端子を有する。第1入力端子は、プラス側の入力端子であり、第1検知用ブリッジ回路13の第1検知用磁気抵抗体131,133の接続点に電気的に接続されている。第2入力端子は、マイナス側の入力端子であり、第1検知用ブリッジ回路13の第1検知用磁気抵抗体132,134の接続点に電気的に接続されている。差動増幅器21は、第1入力端子に入力された+cos信号と第2入力端子に入力された-cos信号とを差動増幅して2倍の振幅からなるcos信号を生成する。差動増幅器21は、生成したcos信号(以下、「出力信号V1」ともいう)を出力端子から出力する。
【0038】
差動増幅器22は、第1入力端子、第2入力端子、及び出力端子を有する。第1入力端子は、プラス側の入力端子であり、第2検知用ブリッジ回路14の第2検知用磁気抵抗体141,143の接続点に電気的に接続されている。第2入力端子は、マイナス側の入力端子であり、第2検知用ブリッジ回路14の第2検知用磁気抵抗体142,144の接続点に電気的に接続されている。差動増幅器22は、第1入力端子に入力された+sin信号と第2入力端子に入力された-sin信号とを差動増幅して2倍の振幅からなるsin信号を生成する。差動増幅器22は、生成したsin信号(以下、「出力信号V2」ともいう)を出力端子から出力する。
【0039】
差動増幅器23は、第1入力端子、第2入力端子、及び出力端子を有する。第1入力端子は、プラス側の入力端子であり、第1キャンセル用ブリッジ回路15の第1キャンセル用磁気抵抗体151,153の接続点に電気的に接続されている。第2入力端子は、マイナス側の入力端子であり、第1キャンセル用ブリッジ回路15の第1キャンセル用磁気抵抗体152,154の接続点に電気的に接続されている。差動増幅器23は、第1入力端子に入力された+cos信号と第2入力端子に入力された-cos信号とを差動増幅して2倍の振幅からなるcos信号を生成する。差動増幅器23は、生成したcos信号(以下、「出力信号V3」ともいう)を出力端子から出力する。
【0040】
差動増幅器24は、第1入力端子、第2入力端子、及び出力端子を有する。第1入力端子は、プラス側の入力端子であり、第2キャンセル用ブリッジ回路16の第2キャンセル用磁気抵抗体161,163の接続点に電気的に接続されている。第2入力端子は、マイナス側の入力端子であり、第2キャンセル用ブリッジ回路16の第2キャンセル用磁気抵抗体162,164の接続点に電気的に接続されている。差動増幅器24は、第1入力端子に入力された+sin信号と第2入力端子に入力された-sin信号とを差動増幅して2倍の振幅からなるsin信号を生成する。差動増幅器24は、生成したsin信号(以下、「出力信号V4」ともいう)を出力端子から出力する。
【0041】
差動増幅器25は、第1入力端子、第2入力端子、及び出力端子を有する。第1入力端子は、プラス側の入力端子であり、差動増幅器21からの出力信号V1が入力される。第2入力端子は、マイナス側の入力端子であり、差動増幅器23からの出力信号V3が入力される。差動増幅器25は、第1入力端子に入力された出力信号V1と第2入力端子に入力された出力信号V3とを差動増幅した出力信号V5を出力端子から出力する。
【0042】
差動増幅器26は、第1入力端子、第2入力端子、及び出力端子を有する。第1入力端子は、プラス側の入力端子であり、差動増幅器22からの出力信号V2が入力される。第2入力端子は、マイナス側の入力端子であり、差動増幅器24からの出力信号V4が入力される。差動増幅器26は、第1入力端子に入力された出力信号V2と第2入力端子に入力された出力信号V4とを差動増幅した出力信号V6を出力端子から出力する。
【0043】
A/D変換器27は、差動増幅器25からのアナログ信号(cos信号)を所定のサンプリング周期でアナログ/デジタル変換し、デジタル信号として出力する。
【0044】
A/D変換器28は、差動増幅器26からのアナログ信号(sin信号)を所定のサンプリング周期でアナログ/デジタル変換し、デジタル信号として出力する。
【0045】
演算部29は、A/D変換器27,28から入力される2つのデジタル信号(cos信号及びsin信号)に対して所定の演算処理を行う。具体的には、演算部29は、2つのデジタル信号に対してarctan演算を行うことにより角度を求める。ここで、回転体200の回転角をθとした場合には、arctan演算により求められる角度は2θ+30となる。したがって、演算部29は、求めた角度から30を引いた後、1/2を掛けることにより回転角θを求めることができる。
【0046】
処理回路2は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータで構成されている。つまり、処理回路2は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが処理回路2として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0047】
なお、以下の説明において、差動増幅器21,22から出力される出力信号V1,V2を、検知用磁気抵抗素子11からの出力信号V1,V2ということもある。また、差動増幅器23,24から出力される出力信号V3,V4を、キャンセル用磁気抵抗素子12からの出力信号V3,V4ということもある。
【0048】
(3)差動演算
次に、処理回路2における差動演算について、
図3A~
図8Bを参照して説明する。
図3Aは、差動増幅器21から出力される出力信号V1における基本波W11の波形図であり、
図3Bは3倍波(高調波)W12の波形図である。
図4Aは、差動増幅器22から出力される出力信号V2における基本波W21の波形図であり、
図4Bは3倍波W22の波形図である。
図5Aは、差動増幅器23から出力される出力信号V3における基本波W31の波形図であり、
図5Bは3倍波W32の波形図である。
図6Aは、差動増幅器24から出力される出力信号V4における基本波W41の波形図であり、
図6Bは3倍波W42の波形図である。
図7Aは、出力信号V1と出力信号V3とを差動増幅した後の基本波W51の波形図であり、
図7Bは3倍波W52の波形図である。
図8Aは、出力信号V2と出力信号V4とを差動増幅した後の基本波W61の波形図であり、
図8Bは3倍波W62の波形図である。
【0049】
差動増幅器21から出力される出力信号V1は、回転体200の回転角をθとした場合に、(1)式のように求められる。なお、(1)式におけるaは係数である。
【0050】
【0051】
そして、(1)式は、(2)式のように置き換えることができる。
【0052】
【0053】
ここで、(2)式における第1項は、基本波W11(
図3A参照)に相当し、(2)式における第2項は、3倍波W12(
図3B参照)に相当する。
【0054】
また、差動増幅器22から出力される出力信号V2は、(3)式のように求められる。
【0055】
【0056】
そして、(3)式は、(4)式のように置き換えることができる。
【0057】
【0058】
ここで、(4)式における第1項は、基本波W21(
図4A参照)に相当し、(4)式における第2項は、3倍波W22(
図4B参照)に相当する。
【0059】
また、差動増幅器23から出力される出力信号V3は、(5)式のように求められる。
【0060】
【0061】
ここで、(5)式における第1項は、基本波W31(
図5A参照)に相当し、(5)式における第2項は、3倍波W32(
図5B参照)に相当する。
【0062】
また、差動増幅器23から出力される出力信号V4は、(6)式のように求められる。
【0063】
【0064】
ここで、(6)式における第1項は、基本波W41(
図6A参照)に相当し、(6)式における第2項は、3倍波W42(
図6B参照)に相当する。
【0065】
そして、処理回路2は、差動増幅器25にて出力信号V1と出力信号V3とを差動増幅することにより出力信号V5を得る。また、処理回路2は、差動増幅器26にて出力信号V2と出力信号V4とを差動増幅することにより出力信号V6を得る。出力信号V5は、(7)式のように求められ、出力信号V6は、(8)式のように求められる。
【0066】
【0067】
【0068】
ここで、出力信号V5,V6の振幅は、出力信号V1,V2,V3,V4の振幅の
倍に増幅されている。
【0069】
差動増幅器25から出力される出力信号V5は、
図7A及び
図7Bに示すように、基本波W51のみが残っており、3倍波W52については0になっている。また、差動増幅器26から出力される出力信号V5についても、
図8A及び
図8Bに示すように、基本波W61のみが残っており、3倍波W62については0になっている。このように、本実施形態に係る磁気センサ1、及びセンサシステム10によれば、出力信号V1,V2に含まれる3倍波を除去(低減)することができる。
【0070】
(4)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。
【0071】
本開示におけるセンサシステム10は、例えば、処理回路2に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるセンサシステム10としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0072】
また、センサシステム10の複数の構成要素が、1つの筐体内に収容されていることはセンサシステム10に必須の構成ではなく、センサシステム10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。センサシステム10の一部の機能、例えば、処理回路2の機能は、サーバシステム又はクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0073】
(4.1)変形例1
上述の実施形態では、処理回路2は、検知用磁気抵抗素子11からの第1出力信号V1,V2とキャンセル用磁気抵抗素子12からの第2出力信号V3,V4との差動演算を行った後に、演算結果を増幅している。これに対して、処理回路2Aは、
図9に示すように、第1出力信号V1,V2及び第2出力信号V3,V4を増幅した後に、増幅後の第1出力信号V1,V2と第2出力信号V3,V4との差動演算を行ってもよい。以下、変形例1に係るセンサシステム10について、
図9を参照して説明する。なお、変形例1に係るセンサシステム10は、処理回路2A以外の構成については上述の実施形態に係るセンサシステム10と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
変形例1に係るセンサシステム10は、磁気センサ1と、処理回路2Aと、を備えている。処理回路2Aは、複数(
図9では4個)の差動増幅器21~24と、複数(
図9では4個)のA/D変換器27A,27B,28A,28Bと、演算部29Aと、を備えている。
【0075】
差動増幅器21は、第1検知用ブリッジ回路13からの+cos信号と-cos信号とを差動増幅し、出力信号V1を出力する。差動増幅器22は、第2検知用ブリッジ回路14からの+sin信号と-sin信号とを差動増幅し、出力信号V2を出力する。差動増幅器23は、第1キャンセル用ブリッジ回路15からの+cos信号と-cos信号とを差動増幅し、出力信号V3を出力する。差動増幅器24は、第2キャンセル用ブリッジ回路16からの+sin信号と-sin信号とを差動増幅し、出力信号V4を出力する。
【0076】
A/D変換器27Aは、差動増幅器21からの出力信号V1をデジタル信号に変換する。A/D変換器27Bは、差動増幅器22からの出力信号V2をデジタル信号に変換する。A/D変換器28Aは、差動増幅器23からの出力信号V3をデジタル信号に変換する。A/D変換器28Bは、差動増幅器24からの出力信号V4をデジタル信号に変換する。
【0077】
演算部29Aは、A/D変換器27A,27B,28A,28Bから入力される4つのデジタル信号に対して所定の演算処理を行う。具体的には、演算部29Aは、A/D変換器27A,27Bから入力される2つのデジタル信号に対してarctan演算を行うことにより第1角度を求める。また、演算部29Aは、A/D変換器28A,28Bから入力される2つのデジタル信号に対してarctan演算を行うことにより第2角度を求める。ここで、arctan演算後の第1角度及び第2角度には、3倍波の成分は含まれておらず、4倍波の成分に変換される。そして、変形例1のように、60度周期の3倍波は、arctan演算後に45度周期の4倍波になる。したがって、演算部29Aは、第1角度については、第1角度に1/2を掛けた第3角度を求める。また、演算部29Aは、第2角度については、第2角度から22.5を引いた後、1/2を掛けた第4角度を求める。そして、演算部29Aは、第3角度と第4角度との平均を取ることにより回転角θを求めることができる。このとき、第3角度と第4角度との和を取ることにより高調波成分を除去(低減)することができる。つまり、変形例1に係るセンサシステム10では、処理回路2Aは、検知用磁気抵抗素子11からの第1出力信号V1,V2、及びキャンセル用磁気抵抗素子12からの第2出力信号V3,V4を増幅した後に、増幅後の第1出力信号V1,V2と第2出力信号V3,V4との差動演算を行っている。これにより、検知用磁気抵抗素子11からの第1出力信号V1,V2に含まれる高調波成分(特に、3倍波の成分)を低減することができる。
【0078】
(4.2)変形例2
上述の実施形態では、
図2に示すように、第1検知用ブリッジ回路13、第2検知用ブリッジ回路14、第1キャンセル用ブリッジ回路15、及び第2キャンセル用ブリッジ回路16が、同一の円周C1上に配置されている。これに対して、
図10に示すように、第1検知用ブリッジ回路13Aの中心P11と第2検知用ブリッジ回路14Aの中心P12と第1キャンセル用ブリッジ回路15Aの中心P13と第2キャンセル用ブリッジ回路16Aの中心P14とが互いにずれていてもよい。以下、変形例2に係るセンサシステム10について、
図10を参照して説明する。なお、変形例2に係るセンサシステム10は、第1検知用ブリッジ回路13A、第2検知用ブリッジ回路14A、第1キャンセル用ブリッジ回路15A、及び第2キャンセル用ブリッジ回路16Aの配置以外は上述の実施形態に係るセンサシステム10と同様である。したがって、上述の実施形態に係るセンサシステム10と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
変形例2に係るセンサシステム10は、磁気センサ1と、処理回路2と、を備えている。磁気センサ1は、検知用磁気抵抗素子11と、キャンセル用磁気抵抗素子12と、を備えている。検知用磁気抵抗素子11は、第1検知用ブリッジ回路13Aと、第2検知用ブリッジ回路14Aと、を含む。キャンセル用磁気抵抗素子12は、第1キャンセル用ブリッジ回路15Aと、第2キャンセル用ブリッジ回路16Aと、を含む。
【0080】
第1検知用ブリッジ回路13Aは、
図10に示すように、4つの第1検知用磁気抵抗パターン135A~138Aを有する。また、第2検知用ブリッジ回路14Aは、
図10に示すように、4つの第2検知用磁気抵抗パターン145A~148Aを有する。4つの第1検知用磁気抵抗パターン135A~138Aは、基板100Aの一面に実装されており、平面視の形状は正方形状である。また、4つの第2検知用磁気抵抗パターン145A~148Aは、基板100Aの一面に実装されており、平面視の形状は正方形状である。
【0081】
第1キャンセル用ブリッジ回路15Aは、
図10に示すように、4つの第1キャンセル用磁気抵抗パターン155A~158Aを有する。第2キャンセル用ブリッジ回路16Aは、
図10に示すように、4つの第2キャンセル用磁気抵抗パターン165A~168Aを有する。4つの第1キャンセル用磁気抵抗パターン155A~158Aは、基板100Aの一面に実装されており、平面視の形状は正方形状である。また、4つの第2キャンセル用磁気抵抗パターン165A~168Aは、基板100Aの一面に実装されており、平面視の形状は正方形状である。
【0082】
第1検知用ブリッジ回路13A、第2検知用ブリッジ回路14A、第1キャンセル用ブリッジ回路15A、及び第2キャンセル用ブリッジ回路16Aは、互いに中心P11,P12,P13,P14がずれた状態に配置されている。本開示でいう「ブリッジ回路の中心」とは、ブリッジ回路を構成する磁気抵抗パターンを基板に実装した場合の平面視における中心を意味する。例えば、第1検知用ブリッジ回路13Aの場合、
図10に示す中心P11が「ブリッジ回路の中心」である。
【0083】
変形例2に係るセンサシステム10では、第1検知用ブリッジ回路13Aの中心P11と第2検知用ブリッジ回路14Aの中心P12と第1キャンセル用ブリッジ回路15Aの中心P13と第2キャンセル用ブリッジ回路16Aの中心P14とがずれている。これにより、ブリッジ回路13A~16Aごとに磁気抵抗パターン135A~168Aをまとめた状態で1枚の基板100Aに配置することができる。
【0084】
(4.3)その他の変形例
以下、上述の実施形態のその他の変形例を列挙する。
【0085】
上述の実施形態では、検知用磁気抵抗素子11及びキャンセル用磁気抵抗素子12の両方が異方性磁気抵抗素子(AMR)である。これに対して、例えば、検知用磁気抵抗素子11及びキャンセル用磁気抵抗素子12の一方が異方性磁気抵抗素子で、他方がトンネル磁気抵抗素子(TMR)、又は巨大磁気抵抗素子(GMR)であってもよい。さらに、検知用磁気抵抗素子11及びキャンセル用磁気抵抗素子12の両方がトンネル磁気抵抗素子、又は巨大磁気抵抗素子であってもよい。なお、検知用磁気抵抗素子11がTMR又はGMRである場合、上述の(1)、(2)、(3)、(7)、(8)式における2θがθになり、(1)、(3)式における6θが3θになる。さらに、上述の(2)、(4)式における「2」が削除される。また、キャンセル用磁気抵抗素子12がTMR又はGMRである場合、上述の(5)、(6)式における「2」が削除される。さらに、演算部29の演算処理において1/2を掛ける処理が不要になる。
【0086】
上述の実施形態では、第1検知用磁気抵抗パターン135~138、第2検知用磁気抵抗パターン145~148、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168のすべてがフルブリッジ接続されている。これに対して、例えば、第1検知用磁気抵抗パターン及び第2検知用磁気抵抗パターンがフルブリッジ接続され、第1キャンセル用磁気抵抗パターン及び第2キャンセル用磁気抵抗パターンがハーフブリッジ接続されていてもよいし、その逆でもよい。第1検知用磁気抵抗パターン及び第2検知用磁気抵抗パターンがハーフブリッジ接続されている場合には、上述の差動増幅器21,22が省略されてもよい。また、第1キャンセル用磁気抵抗パターン及び第2キャンセル用磁気抵抗パターンがハーフブリッジ接続されている場合には、上述の差動増幅器23,24が省略されてもよい。
【0087】
上述の実施形態では、第1検知用磁気抵抗パターン135~138、第2検知用磁気抵抗パターン145~148、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168が1枚の基板100に実装されている。これに対して、第1検知用磁気抵抗パターン135~138、第2検知用磁気抵抗パターン145~148、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168が別々の基板に実装されていてもよい。一例として、第1検知用磁気抵抗パターン135~138、及び第2検知用磁気抵抗パターン145~148を第1基板に実装し、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168を第2基板に実装してもよい。この場合において、第1基板と第2基板とを積層してもよいし、横並びに配置してもよい。また、第1検知用磁気抵抗パターン135~138、及び第2検知用磁気抵抗パターン145~148を基板の一面に実装し、第1キャンセル用磁気抵抗パターン155~158、及び第2キャンセル用磁気抵抗パターン165~168を基板の他面に実装してもよい。
【0088】
上述の実施形態では、検知用磁気抵抗素子11の感磁方向に対するキャンセル用磁気抵抗素子12の感磁方向の傾きβ1が60度であるが、傾きβ1は60度に限らず、60度の倍数であればよい。言い換えると、検知用磁気抵抗素子11からの出力信号V1,V2の基本波の1周期に対応する回転体200の回転角をαとし、nを1以上の自然数とした場合に、傾きβ1は、n×α/3を満たしていればよい。例えば、検知用磁気抵抗素子11がAMRの場合、αは180度であるため、この場合には、傾きβ1は60度の倍数であればよい。
【0089】
また、検知用磁気抵抗素子11の感磁方向に対するキャンセル用磁気抵抗素子12の感磁方向の傾きβ1は、30度であってもよい。この場合、出力信号V1,V2に含まれる高調波成分と出力信号V3,V4に含まれる高調波成分とが逆位相になるため、処理回路2において、出力信号V1と出力信号V3とを加算し、かつ出力信号V2と出力信号V4とを加算すればよい。また、傾きβ1は30度に限らず、n×α/3+α/2(nは1以上の自然数)を満たしていればよい。
【0090】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る磁気センサ(1)は、回転体(200)の回転角を検知するための磁気センサ(1)である。磁気センサ(1)は、検知用磁気抵抗素子(11)と、キャンセル用磁気抵抗素子(12)と、を備える。検知用磁気抵抗素子(11)の感磁方向(M1)に対するキャンセル用磁気抵抗素子(12)の感磁方向(M2)の傾き(β1)が、所定範囲内に収まっている。所定範囲は、検知用磁気抵抗素子(11)からの出力信号(V1,V2)に含まれる基本波(W11,W21)の1周期に対応する上記回転角をαとし、nを1以上の自然数とした場合に、n×α/3、又はn×α/3+α/2を基準とする範囲である。
【0091】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)からの出力信号(V1,V2)に含まれる高調波成分を低減することができる。
【0092】
第2の態様に係る磁気センサ(1)では、第1の態様において、検知用磁気抵抗素子(11)及びキャンセル用磁気抵抗素子(12)の各々は、異方性磁気抵抗素子である。
【0093】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)からの出力信号(V1,V2)に含まれる高調波成分を低減することができる。
【0094】
第3の態様に係る磁気センサ(1)では、第1又は2の態様において、検知用磁気抵抗素子(11)は、4つの検知用磁気抵抗パターン(135~138,145~148)を有する。4つの検知用磁気抵抗パターン(135~138,145~148)は、フルブリッジ接続されている。
【0095】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)の検知精度を向上させることができる。
【0096】
第4の態様に係る磁気センサ(1)では、第1~3のいずれかの態様において、キャンセル用磁気抵抗素子(12)は、4つのキャンセル用磁気抵抗パターン(155~158,165~168)を有する。4つのキャンセル用磁気抵抗パターン(155~158,165~168)は、フルブリッジ接続されている。
【0097】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)の検知精度を向上させることができる。
【0098】
第5の態様に係る磁気センサ(1)では、第1~4のいずれかの態様において、検知用磁気抵抗素子(11)は、余弦波信号を出力する第1検知用ブリッジ回路(13A)と、正弦波信号を出力する第2検知用ブリッジ回路(14A)と、を含む。第1検知用ブリッジ回路(13A)と第2検知用ブリッジ回路(14A)とは、互いに中心(P11,P12)がずれた状態に配置されている。
【0099】
この態様によれば、第1検知用ブリッジ回路(13A)及び第2検知用ブリッジ回路(14A)ごとにまとめた状態で一平面に配置することができる。
【0100】
第6の態様に係る磁気センサ(1)では、第5の態様において、キャンセル用磁気抵抗素子(12)は、余弦波信号を出力する第1キャンセル用ブリッジ回路(15A)と、正弦波信号を出力する第2キャンセル用ブリッジ回路(16A)と、を含む。第1検知用ブリッジ回路(13A)と第2検知用ブリッジ回路(14A)と第1キャンセル用ブリッジ回路(15A)と第2キャンセル用ブリッジ回路(16A)とは、互いに中心(P11,P12,P13,P14)がずれた状態に配置されている。
【0101】
この態様によれば、第1検知用ブリッジ回路(13A)、第2検知用ブリッジ回路(14A)、第1キャンセル用ブリッジ回路(15A)、及び第2キャンセル用ブリッジ回路(16A)ごとにまとめた状態で一平面に配置することができる。
【0102】
第7の態様に係る磁気センサ(1)では、第1~4のいずれかの態様において、検知用磁気抵抗素子(11)は、余弦波信号を出力する第1検知用ブリッジ回路(13)と、正弦波信号を出力する第2検知用ブリッジ回路(14)と、を含む。キャンセル用磁気抵抗素子(12)は、余弦波信号を出力する第1キャンセル用ブリッジ回路(15)と、正弦波信号を出力する第2キャンセル用ブリッジ回路(16)と、を含む。第1検知用ブリッジ回路(13)と第2検知用ブリッジ回路(14)と第1キャンセル用ブリッジ回路(15)と第2キャンセル用ブリッジ回路(16)とは、同一の円周(C1)上に配置されている。
【0103】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)からの出力信号(V1,V2)に含まれる高調波成分をより効果的に低減することができる。
【0104】
第8の態様に係る磁気センサ(1)では、第1~7のいずれかの態様において、検知用磁気抵抗素子(11)とキャンセル用磁気抵抗素子(12)とが同一の基板(100,100A)に実装されている。
【0105】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)とキャンセル用磁気抵抗素子(12)とを別々の基板に実装する場合に比べて、検知用磁気抵抗素子(11)とキャンセル用磁気抵抗素子(12)との配置精度が高くなる。
【0106】
第9の態様に係るセンサシステム(10)は、第1~8のいずれかの態様に係る磁気センサ(1)と、処理回路(2,2A)と、を備える。処理回路(2,2A)は、磁気センサ(1)の出力信号(V1,V2,V3,V4)に対して信号処理を行う。
【0107】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)からの出力信号(V1,V2)に含まれる高調波成分を低減することができる。
【0108】
第10の態様に係るセンサシステム(10)では、第9の態様において、処理回路(2)は、検知用磁気抵抗素子(11)からの第1出力信号(V1,V2)とキャンセル用磁気抵抗素子(12)からの第2出力信号(V3,V4)との差動演算を行った後に、上記差動演算の演算結果を増幅する。
【0109】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)からの第1出力信号(V1,V2)に含まれる高調波成分を低減することができる。
【0110】
第11の態様に係るセンサシステム(10)では、第9の態様において、処理回路(2A)は、検知用磁気抵抗素子(11)からの第1出力信号(V1,V2)及びキャンセル用磁気抵抗素子(12)からの第2出力信号(V3,V4)を増幅した後に、増幅後の第1出力信号(V1,V2)と第2出力信号(V3,V4)との差動演算を行う。
【0111】
この態様によれば、検知用磁気抵抗素子(11)からの第1出力信号(V1,V2)に含まれる高調波成分を低減することができる。
【0112】
第2~8の態様に係る構成については、磁気センサ(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0113】
第10又は11の態様に係る構成については、センサシステム(10)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 磁気センサ
11 検知用磁気抵抗素子
12 キャンセル用磁気抵抗素子
13,13A 第1検知用ブリッジ回路
135~138 検知用磁気抵抗パターン
14,14A 第2検知用ブリッジ回路
145~148 検知用磁気抵抗パターン
15,15A 第1キャンセル用ブリッジ回路
155~158 キャンセル用磁気抵抗パターン
16,16A 第2キャンセル用ブリッジ回路
165~168 キャンセル用磁気抵抗パターン
100,100A 基板
2,2A 処理回路
C1 円周
M1 検知用磁気抵抗素子の感磁方向
M2 キャンセル用磁気抵抗素子の感磁方向
P11,P12,P13,P14 中心
V1,V2 出力信号(第1出力信号)
V3,V4 出力信号(第2出力信号)
W11,W21 基本波
β1 傾き