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特許7535761滞在場所提案装置、滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】滞在場所提案装置、滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/02 20120101AFI20240809BHJP
【FI】
G06Q10/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022575122
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2021044250
(87)【国際公開番号】W WO2022153704
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021005869
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾上 圭介
(72)【発明者】
【氏名】王 燕峰
(72)【発明者】
【氏名】寺山 千尋
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206779(JP,A)
【文献】特開2013-131909(JP,A)
【文献】特開平06-011170(JP,A)
【文献】再公表特許第2018/180024(JP,A1)
【文献】三輪 和広,外3名,知的照明における執務者の好みの照度を基にした配席手法の検討,FIT2015 第14回情報科学技術フォーラム 講演論文集 第4分冊,日本,下間 芳樹,2015年08月24日,425-426頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置と通信し、前記センサ装置の位置情報と前記センサ装置の周囲環境の情報である環境情報を取得する取得部と、
滞在場所の環境に対する前記利用者の嗜好情報を記憶する記憶部と、
前記環境情報と前記嗜好情報に基づいて、前記複数の滞在場所の中から前記利用者の前記嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記1つ以上の滞在場所の情報を前記利用者に通知する通知部と、
前記利用者が操作する通信端末と通信し、前記通知部が通知した前記滞在場所に対する前記利用者の評価情報を前記通信端末から取得する評価情報取得部と、
前記評価情報に基づいて前記嗜好情報を更新する更新部と、
を備える、
滞在場所提案装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記利用者のスケジュールを更に記憶しており、
前記選択部は、前記環境情報と前記嗜好情報と前記スケジュールに基づいて、前記滞在場所を選択する、
請求項1記載の滞在場所提案装置。
【請求項3】
前記環境情報は、温度、湿度、混雑度、騒音レベル、照度のうちの少なくとも1つの測定値を含む、
請求項1又は2記載の滞在場所提案装置。
【請求項4】
請求項1-3のいずれかの滞在場所提案装置と、
1つ以上の前記センサ装置と、
を有する、
滞在場所提案システム
【請求項5】
コンピュータシステムによって実行される複数のステップを有する滞在場所提案方法であって、
前記複数のステップは、
利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置の位置情報と前記センサ装置の周囲環境の情報である環境情報を取得するステップと、
滞在場所の環境に対する前記利用者の嗜好情報を記憶するステップと、
前記環境情報と前記嗜好情報に基づいて、前記複数の滞在場所の中から前記利用者の前記嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を選択するステップと、
選択した前記1つ以上の滞在場所の情報を前記利用者に通知するステップと、
前記利用者が操作する通信端末と通信し、前記通知するステップで通知した前記滞在場所に対する前記利用者の評価情報を前記通信端末から取得するステップと、
前記評価情報に基づいて前記嗜好情報を更新するステップと、
を含む、
滞在場所提案方法
【請求項6】
1以上のプロセッサに、
請求項5記載の滞在場所提案方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、滞在場所提案装置、滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、利用者に対して利用者の滞在場所を提案する滞在場所提案装置、滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、屋内における位置情報と、当該位置情報に対応した屋内の位置における環境情報(アスベスト濃度や放射線量、温度や湿度、気圧、輝度、風速、音圧等)を測定する環境測定システムが記載されている。
【0003】
従来、従業員の座席が固定されていない、いわゆるフリーアドレスオフィスがある。フリーアドレスオフィスでは、各従業員は空いている座席を自由に選択して作業を行っている。したがって、従業員は、出勤したときに空いている座席(滞在場所)を探す必要があるが、選択可能な座席の環境(座席の周囲の温湿度、混雑度など)を事前に知ることができず、希望する座席を探し出すことが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-131909号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、利用者の嗜好に応じた滞在場所を提案することができる滞在場所提案装置、滞在場所提案システム、滞在場所提案方法、及びプログラムを提供することである。
【0006】
本開示の一態様に係る滞在場所提案装置は、取得部と、記憶部と、選択部と、通知部と、評価情報取得部と、更新部とを備える。前記取得部は、利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置と通信し、前記センサ装置の位置情報と前記センサ装置の周囲環境の情報である環境情報を取得する。前記記憶部は、滞在場所の環境に対する前記利用者の嗜好情報を記憶する。前記選択部は、前記環境情報と前記嗜好情報に基づいて、前記複数の滞在場所の中から前記利用者の前記嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を選択する。前記通知部は、前記選択部が選択した前記1つ以上の滞在場所の情報を前記利用者に通知する。前記評価情報取得部は、前記利用者が操作する通信端末と通信し、前記通知部が通知した前記滞在場所に対する前記利用者の評価情報を前記通信端末から取得する。前記更新部は、前記評価情報に基づいて前記嗜好情報を更新する。
【0007】
本開示の一態様に係る滞在場所提案システムは、前記滞在場所提案装置と、1つ以上の前記センサ装置とを有する。
【0008】
本開示の一態様に係る滞在場所提案方法は、コンピュータシステムによって実行される複数のステップを有する。前記複数のステップは、利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置の位置情報と前記センサ装置の周囲環境の情報である環境情報を取得するステップを含む。前記滞在場所提案方法は、滞在場所の環境に対する前記利用者の嗜好情報を記憶するステップを含む。前記滞在場所提案方法は、前記環境情報と前記嗜好情報に基づいて、前記複数の滞在場所の中から前記利用者の前記嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を選択するステップと、選択した前記1つ以上の滞在場所の情報を前記利用者に通知するステップと、前記利用者が操作する通信端末と通信し、前記通知するステップで通知した前記滞在場所に対する前記利用者の評価情報を前記通信端末から取得するステップと、前記評価情報に基づいて前記嗜好情報を更新するステップとを含む。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記滞在場所提案方法を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態に係る滞在場所提案装置及び滞在場所提案システムの構成図である。
図2図2は、同上の滞在場所提案装置及び滞在場所提案システムが運用されるオフィスビルの概略図である。
図3図3は、同上の滞在場所提案装置及び滞在場所提案システムが運用されるオフィスビルの1階の什器の配置図である。
図4図4は、同上の滞在場所提案装置及び滞在場所提案システムが運用されるオフィスビルの2階の什器の配置図である。
図5図5は、同上の滞在場所提案装置及び滞在場所提案システムが運用されるオフィスビルの3階の什器の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る滞在場所提案装置、滞在場所提案システム、滞在場所提案方法及びプログラムについて、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
(1)実施形態に係る滞在場所提案装置及び滞在場所提案システムの構成
実施形態に係る滞在場所提案システム4(以下、滞在場所提案システム4と略す。)は、実施形態に係る滞在場所提案装置1と、複数のセンサ装置2とを有する(図1参照)。
【0013】
実施形態に係る滞在場所提案装置1(以下、滞在場所提案装置1と略す。)は、利用者に対して、利用者の嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を提案する。
【0014】
実施形態における「滞在場所」は、利用者が勤務するフリーアドレスのオフィスにおいて、業務及び休息などを目的として利用者が滞在可能な場所、例えば、利用者(従業員)が自由に使用できる座席及び作業スペースなどを含む。ただし、「滞在場所」は、フリーアドレスのオフィスに限定されず、例えば、公共の図書館の座席及び自習スペースなど、許可された人又は不特定多数の人が利用可能な施設を含む。
【0015】
実施形態における「滞在場所の環境」は、滞在場所の温度(室温)、湿度、混雑度、騒音レベル、明るさ(照度)のうちの少なくとも1つを含む。ゆえに、実施形態における「滞在場所の環境情報」とは、滞在場所の温度の測定値、湿度の測定値、混雑度の測定値、騒音レベルの測定値、照度の測定値のうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
実施形態における「嗜好情報」は、利用者の嗜好に関する情報、例えば、暑がり、寒がり、にぎやかな場所を好む、静かな場所を好む、明るめの場所を好む、暗めの場所を好む、というような情報を含む。なお、利用者の嗜好情報は、後述するように利用者自身によって初期設定される。
【0017】
(1-1)センサ装置
センサ装置2は、複数の滞在場所のそれぞれに少なくとも1つずつ設置される。センサ装置2は、「滞在場所の環境」、具体的には、滞在場所の温度、湿度、混雑度、騒音レベル、照度のうちの少なくとも1つを測定する。センサ装置2は、測定した値(測定値)を無線信号によって送信する。ただし、以下に説明する実施形態において、複数のセンサ装置2はそれぞれ、温度、湿度、混雑度、騒音レベル、照度のすべてを測定する。
【0018】
センサ装置2は、センシングデバイス20と、通信回路21とを有する。ただし、センサ装置2は、電池を含む電源回路(不図示)を有し、電源回路からセンシングデバイス20及び通信回路21に動作電源を供給するように構成される。
【0019】
センシングデバイス20は、温度(室温)を測定するための温度センサ、相対湿度を測定するための湿度センサ、混雑度を測定するためのセンサ、騒音レベルを測定するための騒音計、照度を測定するための照度センサを有する。
【0020】
混雑度を測定するためのセンサは、後述する位置情報取得システム5が取得する利用者の位置情報に基づいて、滞在場所に存在している人の数を計数し、計数した人数を滞在場所の定員で除算した値を混雑度の測定値とするように構成される。ただし、混雑度を測定するためのセンサは、滞在場所を撮像した画像に対して画像処理を行うことにより、滞在場所に存在している人の数を計数して混雑度を測定するように構成されても構わない。
【0021】
通信回路21は、例えば、Bluetooth(登録商標)Low Energyの通信方式で無線通信を行う。ただし、通信回路21の通信方式は、Bluetooth(登録商標)Low Energyに限らず、例えば、Wi-Fi(登録商標)でもよい。
【0022】
通信回路21は、センシングデバイス20で測定した複数の測定値(温度、湿度、混雑度、騒音レベル、照度の各測定値)を含む無線信号を送信する。通信回路21が送信する無線信号において、送信元アドレスにはセンサ装置2に割り当てられた固有の識別符号(Bluetooth(登録商標)Address)が設定され、送信先アドレスにはブロードキャストアドレスが設定されている。なお、通信回路21は、アドバタイズメントパケットと呼ばれる無線信号(ビーコン信号)を所定の時間間隔及び所定の送信電力で送信する。通信回路21は、ビーコン信号によって複数の測定値を送信することもでき、ビーコン信号と異なる無線信号によって複数の測定値を送信することもできる。
【0023】
(1-2)滞在場所提案装置の構成
滞在場所提案装置1は、取得部10と、記憶部11と、選択部12と、通知部13とを備える(図1参照)。滞在場所提案装置1は、評価情報取得部14と、更新部15とを更に備えることができる。
【0024】
(1-2-1)取得部
取得部10は、位置情報取得システム5を介して、各センサ装置2の環境情報(温度等の測定値)、及び各センサ装置2の位置情報を取得する(図1参照)。
【0025】
実施形態における位置情報取得システム5は、複数の滞在場所のそれぞれに少なくとも1つずつ設置される複数のスキャナ50を有する(図2参照)。位置情報取得システム5は、複数のスキャナ50で受信するビーコン信号に基づいて、各センサ装置2の位置(設置場所)を推定する。位置情報取得システム5は、推定した各センサ装置2の位置を、各センサ装置2の識別符号と対応付けて記憶する。さらに、位置情報取得システム5は、取得部10に対して、各センサ装置2の環境情報と位置情報(設置場所の情報)を送信する。なお、取得部10と位置情報取得システム5の間の通信は、イーサネット(登録商標)などの有線通信及びWi-Fi(登録商標)などの無線通信のいずれでも構わない。
【0026】
(1-2-2)記憶部
記憶部11は、書換え可能な不揮発性の記憶媒体、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)、フラッシュメモリなどを有する。記憶部11は、利用者の嗜好情報及び利用者のスケジュールを、利用者に割り当てられた固有の識別情報(利用者ID)と対応付けて記憶する。また、記憶部11は、取得部10が取得する各センサ装置2の環境情報及び位置情報を各センサ装置2の識別符号と対応付けて記憶する。
【0027】
(1-2-3)選択部
選択部12は、環境情報と嗜好情報に基づいて、複数の滞在場所の中から利用者の嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を選択する。選択部12は、例えば、1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステムと、コンピュータシステムのプロセッサで実行されるコンピュータプログラムとで実現される。
【0028】
コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、選択部12としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリにあらかじめ記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0029】
選択部12は、利用者の識別情報に対応する嗜好情報を記憶部11から読み出す。例えば、選択部12が読み出した嗜好情報に、暑がり、静かな場所を好む、明るめの場所を好む、という利用者の嗜好が含まれていると仮定する。
【0030】
まず、選択部12は、複数のセンサ装置2の識別符号のうち、温度の測定値が27℃以下であるセンサ装置2の識別符号を抽出する。続いて、選択部12は、複数のセンサ装置2の識別符号のうち、騒音レベルの測定値が50dB未満であるセンサ装置2の識別符号を抽出する。選択部12は、複数のセンサ装置2の識別符号のうち、混雑度の測定値が0.5以下であるセンサ装置2の識別符号を抽出する。さらに、選択部12は、複数のセンサ装置2の識別符号のうち、照度の測定値が700lux以上であるセンサ装置2の識別符号を抽出する。ただし、各測定値に対する限度値は、利用者の嗜好情報に対応した値であり、後述するように利用者の評価に応じて更新される場合がある。
【0031】
そして、選択部12は、上記4通りの条件で抽出した識別符号のうち、すべての条件に合致した1つ以上の識別符号を選択する。ただし、すべての条件に合致する識別符号がない場合、選択部12は、いずれか3通りの条件に合致した1つ以上の識別符号を選択する。
【0032】
ここで、選択部12は、利用者の識別情報に対応するスケジュールを更に記憶部11から読み出し、スケジュールを加えた5通り(又は4通り)の条件に合致した1つ以上の識別符号を選択しても構わない。スケジュールは、ミーティングなどの予定と、その予定の場所(滞在場所)と、開始時刻及び終了時刻とを含む。例えば、開始時刻が14時のミーティングの予定がスケジュールに含まれている場合、選択部12は、13時から14時までの期間に対して、ミーティングが行われる場所の近くに設置されている1つ以上のセンサ装置2の識別符号を選択する。
【0033】
選択部12は、上述のようにして選択した1つ以上のセンサ装置2の識別符号に対応する位置情報を記憶部11から読み出す。そして、選択部12は、記憶部11から読み出した位置情報を通知部13に出力する。
【0034】
(1-2-4)通知部
通知部13は、選択部12が選択した1つ以上の滞在場所の情報を利用者に通知する。通知部13は、例えば、Wi-Fi(登録商標)用の集積回路と、モバイルデータ通信用の集積回路とを有する。モバイルデータ通信とは、通信事業者(通信キャリアとも呼ばれる)が提供するモバイルデータ通信網を介してインターネットなどの外部ネットワークと接続して行うデータ通信である。
【0035】
通知部13は、利用者が携帯する通信端末3との間で電波を通信媒体としたデータ通信を行う(図1参照)。通信端末3は、例えば、スマートフォン、ノートパソコン、スマートウォッチなどのウェアラブルコンピュータ、タブレット型のコンピュータなどを含む。
【0036】
通知部13は、1つ以上のセンサ装置2の位置情報を選択部12から受け取ると、受け取った位置情報を含み、利用者の通信端末3に割り当てられたデータ通信用のアドレスを送信先アドレスに設定した送信フレームを作成する。通知部13は、作成した送信フレームを無線信号によって送信する。
【0037】
ここで、通知部13は、利用者の通信端末3に送信フレームを直接送信する代わりに、サービス事業者が提供するプッシュ通知(Push Notification)のサービスを利用して、利用者の通信端末3に送信フレームを送信(通知)しても構わない。
【0038】
(1-2-5)評価情報取得部
評価情報取得部14は、利用者が操作する通信端末3と通信し、通知部13が通知した滞在場所に対する利用者の評価に関する情報(評価情報)を通信端末3から取得する。評価情報取得部14は、通知部13と同様にWi-Fi(登録商標)用の集積回路と、モバイルデータ通信用の集積回路とを有する。ただし、評価情報取得部14は、Wi-Fi(登録商標)用の集積回路と、モバイルデータ通信用の集積回路を通知部13と共用することが好ましい。
【0039】
実施形態における「評価情報」とは、滞在場所提案装置1から提案された1つ以上の滞在場所に対する利用者の評価を示す情報である。利用者の評価は、提案された1つ以上の滞在場所における温度、湿度、混雑度、騒音レベル、照度のそれぞれについて個別に行われることが好ましい。例えば、温度について、「高い」、「やや高い」、「適温」、「やや低い」、「低い」の5段階に評価した数値が評価情報となる。例えば、「適温」の評価値を「5」とし、「やや高い」の評価値を「4」とし、「やや低い」の評価値を「3」とし、「高い」の評価値を「2」とし、「低い」の評価値を「1」としている。ただし、上記5段階の評価は利用者の評価の一例にすぎない。なお、利用者は、利用者が携帯する通信端末3に評価値を入力し、入力した評価値を通信端末3から評価情報取得部14へ送信させる。
【0040】
(1-2-6)更新部
更新部15は、評価情報に基づいて嗜好情報を更新する。更新部15は、選択部12と同様に、コンピュータシステムと、コンピュータシステムのプロセッサで実行されるコンピュータプログラムとで実現される。ただし、更新部15は、選択部12とコンピュータシステムを共用することが好ましい。
【0041】
更新部15は、各項目(温度、湿度、混雑度、騒音レベル、照度)の評価値を項目ごとに集計し、項目ごとの平均値を算出する。更新部15は、平均値が2以下の項目について、その項目に対する限度値を変更(更新)する。例えば、温度に対する評価値の平均値が2から1.5の範囲にあれば、提案された滞在場所の温度が「適温」よりも「高い」と利用者が評価していると推定される。あるいは、温度に対する評価値の平均値が1.5から1の範囲にあれば、提案された滞在場所の温度が「適温」よりも「低い」と利用者が評価していると推定される。
【0042】
したがって、更新部15は、利用者が「適温」よりも「高い」と評価している場合、温度の測定値に対する限度値を、現状の限度値よりも低い限度値に更新する。あるいは、更新部15は、利用者が「適温」よりも「低い」と評価している場合、温度の測定値に対する限度値を、現状の限度値よりも高い限度値に更新する。なお、各測定値に対する限度値は記憶部11に記憶されており、更新部15は、記憶部11に記憶されている限度値を新しい限度値に書き換えることで限度値を更新する。
【0043】
(2)滞在場所提案装置及び滞在場所提案システムの動作
次に、滞在場所提案装置1及び滞在場所提案システム4の動作を詳細に説明する。
【0044】
オフィスビル7の1階71、2階72、3階73に、複数のセンサ装置2及び複数のスキャナ50がそれぞれ設置されている(図2参照)。複数のスキャナ50は、各階71-73の天井に間隔を空けて設置されている。
【0045】
また、各階71-73には、複数の机74と複数の椅子75が置かれている(図2及び図3図5参照)。そして、複数のセンサ装置2は、各階71-73の壁、及び複数の机74のそれぞれの上に配置されている(図2参照)。ただし、複数のセンサ装置2は電源(電池)を内蔵しているので、任意の場所に置かれることが可能である。
【0046】
ここで、滞在場所提案装置1が提案することのできる滞在場所は、センサ装置2が設置されている場所に対応している。したがって、センサ装置2の数が増えるほど、選択可能な滞在場所も細分化されて増加する。
【0047】
(2-1)初期設定
滞在場所提案装置1は、運用開始前に、以下の初期設定を行う。
【0048】
1つ目の初期設定では、取得部10がすべてのセンサ装置2の位置情報を位置情報取得システム5から取得する。そして、取得部10が取得した各センサ装置2の位置情報を、各センサ装置2の識別符号と対応付けて記憶部11が記憶する。
【0049】
2つ目の初期設定では、オフィスビル7に勤務するすべての従業員(利用者8)の利用者IDと各利用者8の嗜好情報を記憶部11に記憶させる。具体的には、各利用者8は、自己の通信端末3(例えば、勤務している企業から支給されているスマートフォン)を使用して、自己の嗜好情報及びスケジュールを滞在場所提案装置1に登録する。滞在場所提案装置1は、各利用者8の通信端末3から送信される嗜好情報及びスケジュールを、例えば、通知部13が有するWi-Fi(登録商標)用の集積回路又はモバイルデータ通信用の集積回路で受信する。そして、滞在場所提案装置1は、各利用者8の通信端末3から受信した嗜好情報とスケジュールを、各利用者8の利用者IDと対応付けて記憶部11に記憶する。
【0050】
(2-2)運用開始後の動作
滞在場所提案装置1及び滞在場所提案システム4の運用が開始されると、各センサ装置2が温度等の測定を開始し、温度等の測定値を含む無線信号(ビーコン信号)を定期的に送信する。
【0051】
各センサ装置2から送信される無線信号が位置情報取得システム5に受信される。そして、滞在場所提案装置1の取得部10は、位置情報取得システム5を通じて、各センサ装置2の位置情報と環境情報を取得する。滞在場所提案装置1の記憶部11は、取得部10が取得する各センサ装置2の位置情報と環境情報を記憶する。
【0052】
利用者8が携帯する通信端末3は、準天頂衛星システム(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDouなどのGNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)を利用する測位機能を有する。また、通信端末3は、Bluetooth(登録商標)Low Energyの通信方式による無線通信機能を有する。つまり、通信端末3は、測位衛星の信号を受信可能な場合に、GNSSを利用する測位機能によって自機の位置(利用者8の位置)を測位することができる。通信端末3は、GNSSを利用する測位機能によって測位した位置の情報(利用者8の位置情報)を、Wi-Fi(登録商標)又はモバイルデータ通信によって滞在場所提案装置1に送信する。
【0053】
また、通信端末3が測位衛星の信号を受信できない場合、位置情報取得システム5のスキャナ50に通信端末3が送信する無線信号(Bluetooth(登録商標)Low Energyのビーコン信号)の届く範囲であれば、位置情報取得システム5によって通信端末3の位置を測位可能である。位置情報取得システム5は、測位した通信端末3の位置情報を滞在場所提案装置1(の取得部10)に送信する。
【0054】
滞在場所提案装置1の選択部12は、利用者8の現在位置とオフィスビル7との距離が所定の距離以下になったとき、利用者8の滞在場所を選択する処理を実行する。あるいは、選択部12は、位置情報取得システム5から利用者8の位置情報が取得されたとき、利用者8の滞在場所を選択する処理を実行する。
【0055】
既に説明したように、選択部12は、複数のセンサ装置2の識別符号の中から、利用者8の嗜好情報に適した測定値を測定した1つ以上のセンサ装置2の識別符号を選択する。さらに、選択部12は、選択した1つ以上のセンサ装置2の識別符号に対応する位置情報を記憶部11から読み出す。そして、選択部12は、記憶部11から読み出した位置情報を通知部13に出力する。ただし、選択部12は、選択した1つ以上のセンサ装置2の位置情報だけでなく、当該1つ以上のセンサ装置2の温度等の測定値を記憶部11から読み出してもよい。
【0056】
ここで、センサ装置2の位置情報は、1階71から3階73の各階に設置されている複数の椅子75と一対一に対応している。つまり、センサ装置2の位置情報が、各階71-73に設置されている複数の椅子75のいずれか1つに対応している。ゆえに、選択部12が選択するセンサ装置2の位置情報(特定の椅子75)を、利用者8の嗜好情報(利用者8の好み)に対応した滞在場所として利用者8に提案することができる(図2及び図3図5参照)。
【0057】
通知部13は、選択部12から受け取った位置情報(又は位置情報と測定値)を含む送信フレームを作成する。通知部13は、作成した送信フレームを含む無線信号を通信端末3に直接送信してもよいし、プッシュ通知によって送信しても構わない。
【0058】
通信端末3は、通知部13から直接受信するか、あるいはプッシュ通知によって受信した位置情報(又は位置情報と測定値)を画面に表示して利用者8に通知する。利用者8は、滞在場所提案装置1から通知される位置情報(又は位置情報と測定値)を通信端末3の画面で確認することより、滞在場所提案装置1から提案された滞在場所を知ることができる。
【0059】
利用者8は、滞在場所提案装置1から提案された滞在場所に滞在し、その滞在場所の環境(温度、湿度、混雑度、騒音レベル、照度)に対する評価値(評価情報)を通信端末3に入力する。通信端末3は、利用者8によって入力された評価情報を含む無線信号を、滞在場所提案装置1に送信する。
【0060】
滞在場所提案装置1では、通信端末3から送信される無線信号を評価情報取得部14で受信する。評価情報取得部14は、無線信号に含まれる評価情報を更新部15に渡す。更新部15は、評価情報に基づいて、記憶部11に記憶されている限度値を更新する。
【0061】
(3)滞在場所提案装置の変形例
変形例の滞在場所提案装置1において、更新部15は、学習済みモデルを用いて各測定値に対する限度値を更新してもよい。
【0062】
更新部15は、学習済みモデルを用いて、評価情報取得部14が通信端末3(利用者8)から取得する評価情報を入力として限度値を決定する。学習済みモデルは、各通信端末3から取得される評価情報を訓練データとして、機械学習により生成される。なお、機械学習のアルゴリズムは、一例として、XGB(eXtreme Gradient Boosting)回帰である。ただし、機械学習のアルゴリズムは、XGB回帰に限らず、ニューラルネットワーク(Neural Network)、ランダムフォレスト(Randam Forest)、決定木(decision tree)、ロジスティック回帰(Logistic Regression)、サポートベクトルマシン(SVM:Support vector machine)、単純ベイズ(Naive Bayes)分類器、又はk近傍法(k-nearest neighbors)等であってもよい。さらに、機械学習のアルゴリズムは、混合ガウスモデル(GMM:Gaussian Mixture Model)、又はk平均法(k-means clustering)等であってもよい。また、更新部15で利用する機械学習の学習方法は、教師あり学習及び教師なし学習及び強化学習のいずれであってもよい。
【0063】
しかして、変形例の滞在場所提案装置1は、更新部15が学習済みモデルを用いて決定した規則に基づいて、各測定値に対する限度値を更新することにより、利用者8の評価の向上を図ることができる。
【0064】
(4)滞在場所提案方法及びプログラム
実施形態に係る滞在場所提案方法は、利用者8が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置2の位置情報とセンサ装置2の周囲環境の情報である環境情報を取得するステップを含む。実施形態に係る滞在場所提案方法は、滞在場所の環境に対する利用者8の嗜好情報を記憶するステップと、環境情報と嗜好情報に基づいて、複数の滞在場所の中から利用者8の嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を選択するステップとを含む。実施形態に係る滞在場所提案方法は、選択した1つ以上の滞在場所の情報を利用者8に通知するステップを含む。
【0065】
実施形態に係る滞在場所提案方法は、上述した滞在場所提案装置1によって実行されてもよいし、実施形態に係るプログラム(コンピュータプログラム)を1つ以上のプロセッサに実行させることで実現しても構わない。
【0066】
実施形態に係る滞在場所提案方法及びプログラムによれば、利用者8の嗜好情報(利用者8の好み)に対応した滞在場所を利用者8に提案することができる。
【0067】
(5)まとめ
本開示の第1の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、取得部(10)と、記憶部(11)と、選択部(12)と、通知部(13)とを備える。取得部(10)は、利用者(8)が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置(2)と通信し、センサ装置(2)の位置情報とセンサ装置(2)の周囲環境の情報である環境情報を取得する。記憶部(11)は、滞在場所の環境に対する利用者(8)の嗜好情報を記憶する。選択部(12)は、環境情報と嗜好情報に基づいて、複数の滞在場所の中から利用者(8)の嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を選択する。通知部(13)は、選択部(12)が選択した1つ以上の滞在場所の情報を利用者(8)に通知する。
【0068】
第1の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、利用者(8)の好みに応じた滞在場所を提案することができる。
【0069】
本開示の第2の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る滞在場所提案装置(1)において、記憶部(11)は、利用者のスケジュールを更に記憶していることが好ましい。選択部(12)は、環境情報と嗜好情報とスケジュールに基づいて、滞在場所を選択することが好ましい。
【0070】
第2の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、利用者(8)のスケジュールを加味して滞在場所を選択するので、利用者(8)にとっての利便性の向上を図ることができる。
【0071】
本開示の第3の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る滞在場所提案装置(1)において、環境情報は、温度、湿度、騒音レベル、照度のうちの少なくとも1つの測定値を含むことが好ましい。
【0072】
第3の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、温度、湿度、騒音レベル、照度のうちの少なくとも1つの測定値を環境情報に含むので、利用者(8)の好みに更に適した滞在場所を提案することができる。
【0073】
本開示の第4の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、第1-第3のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、評価情報取得部(14)と、更新部(15)とを更に備えることが好ましい。評価情報取得部(14)は、利用者が操作する通信端末(3)と通信し、通知部(13)が通知した滞在場所に対する利用者の評価情報を通信端末(3)から取得する。更新部(15)は、評価情報に基づいて嗜好情報を更新する。
【0074】
第4の態様に係る滞在場所提案装置(1)は、利用者(8)の嗜好情報が更新部(15)によって更新されるので、利用者(8)の好みに更に適した滞在場所を提案することができる。
【0075】
本開示の第5の態様に係る滞在場所提案システム(4)は、第1-第4のいずれかの態様に係る滞在場所提案装置(1)と、1つ以上のセンサ装置(2)とを有する。
【0076】
第5の態様に係る滞在場所提案システム(4)は、利用者(8)の好みに応じた滞在場所を提案することができる。
【0077】
本開示の第6の態様に係る滞在場所提案方法は、利用者が滞在可能な複数の滞在場所にそれぞれ設置されている1つ以上のセンサ装置(2)の位置情報とセンサ装置(2)の周囲環境の情報である環境情報を取得するステップを含む。第6の態様に係る滞在場所提案方法は、滞在場所の環境に対する利用者の嗜好情報を記憶するステップと、環境情報と嗜好情報に基づいて、複数の滞在場所の中から利用者の嗜好情報に適した1つ以上の滞在場所を選択するステップとを含む。第6の態様に係る滞在場所提案方法は、選択した1つ以上の滞在場所の情報を利用者に通知するステップを含む。
【0078】
第6の態様に係る滞在場所提案方法は、利用者(8)の好みに応じた滞在場所を提案することができる。
【0079】
本開示の第7の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第6の態様に係る滞在場所提案方法を実行させる。
【0080】
第7の態様に係るプログラムは、利用者(8)の好みに応じた滞在場所を提案することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 滞在場所提案装置
2 センサ装置
3 通信端末
4 滞在場所提案システム
10 取得部
11 記憶部
12 選択部
13 通知部
14 評価情報取得部
15 更新部
図1
図2
図3
図4
図5