(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】粉末体及び粉末体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C05F 5/00 20060101AFI20240809BHJP
C05F 11/00 20060101ALI20240809BHJP
A23K 10/37 20160101ALI20240809BHJP
A23K 10/26 20160101ALI20240809BHJP
【FI】
C05F5/00
C05F11/00
A23K10/37
A23K10/26
(21)【出願番号】P 2020106283
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】514134941
【氏名又は名称】グレンカル・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中石 雅仁
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/044167(WO,A1)
【文献】特開2019-045078(JP,A)
【文献】特開2002-355002(JP,A)
【文献】特開2004-066196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F1/00-17/993
A23K10/00-10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水有機物から得られる粉末体であって、
水分率が20[%]以下で、かつ、中温性好気性菌の菌数が10
5/g以下であり、
示差熱分析法において発熱最大ピークが
350[℃]以上で検出さ
れ、
前記含水有機物が、野菜くず、果実くず、剪定草、飲料抽出後の有機物残渣、肉くず、魚くず、汚物及び廃棄食品のうちいずれかである、
粉末体。
【請求項2】
前記示差熱分析法において発熱最大ピークが
400[℃]以上700[℃]以下で検出される、
請求項1に記載の粉末体。
【請求項3】
肥料、飼料、又は、成形体の原料として用いる、
請求項1又は2に記載の粉末体。
【請求項4】
前記飲料抽出後の有機物残渣は、リンゴ粕、ミカン粕、葡萄粕、グレープフルーツ粕、桃粕、ニンジン粕、ピーマン粕、酒粕、緑茶粕、麦茶粕及びコーヒ粕のうちいずれかである、
請求項
1~3のいずれか1項に記載の粉末体。
【請求項5】
前記水分率、前記中温性好気性菌の菌数、及び、前記示差熱分析法による発熱最大ピークの検出温度が、製造から1年間、常温にて放置していたときの測定結果である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の粉末体。
【請求項6】
含水有機物から粉末体を製造する製造方法であって、
前記含水有機物を処理槽内に収容する収容工程と、
前記含水有機物を前記処理槽内で撹拌しながら加熱し、かつ、前記処理槽内から気体を1[m
3/min]以上300[m
3/min]以下で排気して、イオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスを1[m
3/min]以上300[m
3/min]以下で前記処理槽内に供給することで、前記含水有機物の水分子を分離させ前記含水有機物に含まれる水分を蒸発させる処理をして前記粉末体を製造する処理工程と、
を備える、粉末体の製造方法。
【請求項7】
前記処理工程は、
前記含水有機物の処理中、前記処理槽内の温度を25[℃]以上70[℃]以下の範囲で推移させ、
前記処理を、2時間以上70時間以下の時間、連続して行う、
請求項
6に記載の粉末体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末体及び粉末体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、生ごみ等の含水有機物は、好気性菌を利用した分解処理による処理が行われてきた。一般的な生ごみ処理装置は、羽根と換気装置を設けた処理槽におがくず、もみがら等の培養基材を収容し、ここに破砕機を通して破砕した生ごみを撹拌する方式を採用している。
【0003】
また、大気へ排出するバクテリアや悪臭の元になる分子をオゾンにより殺菌、分解し、無害な分子に変えて外気に放出することが提案されている(例えば、特許文献1)。そして、このようにして含水有機物から得られた粉末体については、単に廃棄せずに、肥料や飼料、成形体の原料(成形材)等、種々の用途に有効活用することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-136629号公報
【文献】特開2010-136683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、培養基材が不調の場合、含水有機物が処理されずに腐敗してしまうことから、得られた粉末体について種々の用途に利用できない恐れがある。また、含水有機物から得られた一般的な粉末体は、耐熱性が低く、おおよそ180[℃]~260[℃]程度で炭化し始めてしまう(特許文献2[0007]参照)。そのため、射出成形や押出成形等の成形加工により製造される成形体の原料等、180[℃]~260[℃]超の高温で加熱する必要がある場合には、成形体の原料として利用することは困難である。従って、耐熱性等が高く、種々の用途に幅広く利用することができる新たな粉末体の開発が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は以上の点を考慮してなされたもので、種々の用途に幅広く利用することができる粉末体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粉末体は、含水有機物から得られる粉末体であって、水分率が20[%]以下で、かつ、中温性好気性菌の菌数が105/g以下であり、示差熱分析法において発熱最大ピークが300[℃]以上で検出されるものである。
【0008】
本発明に係る粉末体の製造方法は、含水有機物から粉末体を製造する製造方法であって、前記含水有機物を処理槽内に収容する収容工程と、前記含水有機物を前記処理槽内で撹拌しながら加熱し、かつ、前記処理槽内から気体を1[m3/min]以上300[m3/min]以下で排気して、イオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスを1[m3/min]以上300[m3/min]以下で前記処理槽内に供給することで、前記含水有機物の水分子を分離させ前記含水有機物に含まれる水分を蒸発させる処理をして前記粉末体を製造する処理工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、示差熱分析法において発熱最大ピークの検出温度が従来の粉末体よりも高いことから、その分、従来の粉末体よりも利用用途が広がり、種々の用途に幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る粉末体の製造に用いる処理装置を側部側から見たときの断面構成を示した断面図である。
【
図2】
図1に示した処理装置を端部側から見たときの断面構成を示した断面図である。
【
図3】リンゴ粕から得られた粉末体の熱重量分析、示差熱重量分析及び示差熱分析の測定結果を示すグラフである。
【
図4】ニンジン粕から得られた粉末体の熱重量分析、示差熱重量分析及び示差熱分析の測定結果を示すグラフである。
【
図5】コーヒ粕から得られた粉末体の熱重量分析、示差熱重量分析及び示差熱分析の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(1)<本実施形態に係る粉末体>
本実施形態に係る粉末体は、処理槽内で含水有機物を撹拌しながら加熱しつつ、処理槽内から気体を1[m3/min]以上300[m3/min]以下で排気し、イオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスを処理槽内に供給する処理を行うことで製造される。
【0013】
粉末体の原材料となる含水有機物としては、例えば、野菜くず、果実くず、剪定草、飲料抽出後の有機物残渣、肉くず、サーモンなどの魚くず、汚物、廃棄食品等がある。飲料抽出後の有機物残渣としては、リンゴ粕、ミカン粕、葡萄粕、グレープフルーツ粕、桃粕、ニンジン粕、ピーマン粕、酒粕、緑茶粕、麦茶粕、コーヒ粕等がある。
【0014】
なお、これら含水有機物から粉末体を製造する場合、各含水有機物の種類毎に処理時間が若干異なってくることもあるため、複数種類の含水有機物を混合せずに、各含水有機物毎にそれぞれ処理をして粉末体を製造することが望ましい。
【0015】
本実施形態に係る粉末体は、肥料又は飼料として用いることができる他、例えば、サービストレイ、デスクトレイ、ペントレイ及びコースタートレイ等の種々のトレイ、コンテナやプランター等の容器、電子機器の部品、自動車の部品、ブロック、建材等、様々な成形体の原料(成形材とも称する)として用いることができる。
【0016】
含水有機物に対して上述した処理を行うことで製造された粉末体は、水分率が20[%]以下となり、かつ、中温性好気性菌の菌数が105/g以下となる。かかる構成に加えて、本実施形態に係る粉末体は、示差熱分析法において、大気中で加熱して室温から昇温させていった際に発熱最大ピークが300[℃]以上で検出されることから、耐熱性が高く、高温に加熱しても炭化し難いという特性を有する。
【0017】
本実施形態に係る粉末体の水分率は、乾燥減量法により測定することが可能である。乾燥減量法は、まず水分を含んだ処理前の含水有機物の重量を計測し、その後、含水有機物を加熱して水分を蒸発させ、水分がゼロになった含水有機物の重量を計測することによって、減量した重量を水分と仮定し、水分率を測定するものである。
【0018】
中温性好気性菌の菌数は、例えば、標準寒天平板培養法により測定することが可能である。本実施形態では、一般財団法人日本食品分析センターで行われる標準寒天平板培養法(https://www.jfrl.or.jp/storage/file/072.pdf)に従って中温性好気性菌の菌数を求めている。
【0019】
示差熱分析法において発熱最大ピークが現れる温度は、熱分析装置(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、示差熱熱重量同時測定装置(製品名「TG/DTA7220」))により測定することが可能である。具体的には、大気中で試料(粉末体)と基準物質(ここではアルミナ)を加熱して室温から昇温させてゆき、このときの試料と基準物質の温度差を測定し、得られた基準物質との温度差を示す曲線(以下、示差熱分析(DTA:Differential Thermal Analyzer)曲線とも称する)を解析することで、発熱最大ピークが現れる温度を特定することができる。
【0020】
本実施形態に係る粉末体では、示差熱分析法において、大気中で加熱して室温から昇温させていった際に発熱最大ピークが300[℃]以上、好ましくは350[℃]以上700[℃]以下、より好ましくは450[℃]以上600[℃]以下で検出されることが望ましい。
【0021】
本実施形態では、例えば、リンゴ粕、ニンジン粕及びコーヒ粕を処理してそれぞれ得られた粉末体について、示差熱分析法において発熱最大ピークが現れる温度を確認したところ、発熱最大ピークがいずれも400[℃]以上で検出されることを確認している。この検証試験については後述する。
【0022】
なお、上述したイオンガスを供給しないで生ごみ等の含水有機物を単に粉砕しながら加熱等し処理する従来の生ゴミ処理器によって製造された粉末体(以下、単に従来の粉末体と称する)では、示差熱分析法において発熱最大ピークが現れる温度が180[℃]~260[℃]程度であることが確認されている。すなわち、本実施形態に係る粉末体は、示差熱分析法において発熱最大ピークが現れる温度が、従来の粉末体よりも格段的に高くなっており、従来の粉末体とは明らかに異なる物性を有している。
【0023】
ここで、射出成形や押出成形等の成形加工により成形体を製造する場合には、一般的に、180[℃]~260[℃]超の高温で原料を加熱する必要がある。そのため、耐熱性が低い従来の粉末体を成形体の原料として用いると、加熱によって当該粉末体が炭化してしまうことから、成形体の原料として用いることは困難であった。
【0024】
これに対して、本実施形態に係る粉末体は、示差熱分析法において発熱最大ピークが現れる温度が300[℃]以上であり耐熱性が高いことから、成形加工により成形体を製造する場合に原料として用いても、加熱によって炭化し難いため、成形体の原料として用いることができる。
【0025】
また、従来の粉末体は、製造直後、水分率を20[%]以下にしても、時間経過とともに、水分率が上昇してゆき、水分率が20[%]超になってしまうことを確認している。また、従来の粉末体では、水分率が20[%]超になってしまうと、標準寒天平板培養法により測定される中温性好気性菌の菌数が108/g以上になることも確認している。その結果、従来の粉末体は、製造から所定期間が経過すると腐敗が始まり、製造直後の状態を1年間維持できないことから、長期保存が困難であった。
【0026】
一方、本実施形態に係る粉末体は、製造から1年間、常温にて放置した後に測定しても、上述した水分率、中温性好気性菌の菌数、及び、示差熱分析法による発熱最大ピークの検出温度が得られる。例えば、コーヒ粕やリンゴ粕を処理して得られた本実施形態に係る粉末体は、製造後に約1年間の間、常温(20[℃]±15[℃](5~35[℃]))にて放置していたが、製造から約1年後に水分率を測定したところ、水分率が未だ20[%]以下で、中温性好気性菌の菌数が105/g以下であることが確認できている。また、製造から約1年後でも、これら粉末体においては、示差熱分析法において発熱最大ピークが300[℃]以上で検出される。
【0027】
このような検証結果から考察すると、本実施形態に係る粉末体は、従来の粉末体と異なり、粉末体の多くの細胞壁が破壊されていないために、水分率等が製造時のまま長時間維持できていると推測することができる。また、製造時にイオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスを処理槽内に供給する処理を行っていることで、例えば、処理時における水クラスターのサイズや極性を小さくしたり、粉末体の高分子サイズを小さくしたり、高分子表面をポーラス状にしたり、粉末体を殺菌したり、粉末体を脱臭したり、粉末体の極性の大きさが調整されたりする等の様々な現象が生じていると推測される。
【0028】
その結果、長期間、水分率や中温性好気性菌の菌数、示差熱分析法による発熱最大ピークの検出温度を製造時のまま維持でき、長期的に保存可能で耐熱性が高い、肥料や飼料、成形体の原料となる粉末体を提供し得る。
【0029】
(2)<本実施形態に係る粉末体の製造方法>
(2-1)<本実施形態に係る粉末体の製造に用いる処理装置の全体構成>
次に、本実施形態に係る粉末体の製造に用いる処理装置の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る粉末体の製造に用いる処理装置10を、側部24側から見たときの断面構成を示した断面図であり、
図2は、処理装置10を端部22側から見たときの断面構成を示した断面図である。
【0030】
図1及び
図2に示すように、処理装置10は、処理槽12と、撹拌部14と、イオンガス供給部15と、排気部61と、加熱器72とを備えており、処理槽12内に収容された含水有機物を処理するものである。処理槽12は、底部20と、長手方向にて対向配置された一対の端部22(
図1)と、短手方向にて対向配置された一対の側部24(
図2)と、上部25とを有し、内部に密閉空間を形成している。処理槽12は、特に限定されないが、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)で形成することができる。処理槽12の底部20には、ロードセル28を介して基台26が設けられている。
【0031】
なお、本実施形態における処理槽12は、一対の端部22が対向する長手方向における密閉空間の長さが約4.5[m]程度、一対の側部24が対向する短手方向における密閉空間の幅が約2.3[m]程度、上部25から底部20の曲面78,80の最下部までの密閉空間の高さが約1.6[m]程度に選定されている。
【0032】
ロードセル28は、ロードセル28上に設置された処理槽12から加わる荷重を測定しており、操作パネル(図示せず)からのリセット命令を受けると、リセット命令を受けた時点の測定値を基準値として設定する。これにより、ロードセル28は、処理槽12内に含水有機物を収容した直後にリセット命令が与えられることで、処理前の含水有機物の重量を基準値として設置することができ、基準値を目安に、処理中の含水有機物の重量減少傾向や、処理終了後の含水有機物(粉末体)の重量を測定することができる。
【0033】
また、上部25には、所定位置に厚さ方向に開口した投入口68と、当該投入口68を開閉する蓋70とが設けられている。蓋70は、一端においてヒンジを介して上部25に回転可能に固定され、投入口68を開閉する。これにより、含水有機物は、蓋70が開状態となることで露出した投入口68から処理槽12内に投入され、蓋70が閉状態となることで密閉した処理槽12内に収容される。
【0034】
図2に示すように、側部24には、熱線ヒータ、PTCヒータなどの加熱器72がそれぞれ設けられている。加熱器72は、処理槽12内を加熱して、処理槽12内の温度を25[℃]以上70[℃]以下の範囲で推移させる。なお、ここで処理槽12内の温度とは、含水有機物が収容される処理槽12内の密閉空間に設置された温度計により測定される値である。
【0035】
このように、処理槽12内の温度が25[℃]以上70[℃]以下の範囲で推移する現象は、含水有機物の処理状態に応じて処理槽12内の温度が変化するためであるが、処理槽12内の温度が25[℃]以上70[℃]以下の範囲にあるときの処理槽12内の平均温度は、30[℃]以上50[℃]以下であることが望ましい。ここで、処理槽12内の平均温度とは、加熱器72による加熱によって処理槽12内の温度が25[℃]以上70[℃]以下の範囲にあるとき、処理槽12内の温度を所定間隔又は任意のタイミングで複数回測定していき、最終的に含水有機物の処理を終了したときの平均温度である。
【0036】
処理槽12内の平均温度が30[℃]未満になるような加熱処理で含水有機物を処理すると、含水有機物が乾燥し難いため、処理槽12内の平均温度は30[℃]以上であることが望ましい。また、処理槽12内の平均温度が50[℃]超となるような加熱処理で含水有機物を処理すると、含水有機物が乾燥し過ぎてしまう恐れがあり、処理終了時、粉末体が粉塵となって大気中に拡散し易くなるため、処理槽12内の平均温度は50[℃]以下であることが望ましい。
【0037】
処理槽12内に設けられる撹拌部14は、
図2に示すように、処理槽12の短手方向の一側に配置された第1撹拌部74と、他側に配置された第2撹拌部76とを有する。第1撹拌部74及び第2撹拌部76は同一構成を有しており、
図1に示すように、端部22間に配置された回転軸30と、当該回転軸30に設けられた羽根32とを有する。回転軸30は、端部22にそれぞれ設けられたベアリング34により、処理槽12に対し回転可能に支持されている。回転軸30の一端は、駆動部36に連結されている。
【0038】
本実施形態の場合、第1撹拌部74は反時計回り、第2撹拌部76は時計回りに回転し、処理槽12内に収容された含水有機物を、処理槽12の底部20側から、第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に向けて導くように撹拌する。
【0039】
底部20は、これら第1撹拌部74及び第2撹拌部76に沿った円弧上の曲面78,80を有する。曲面78,80は、回転軸30を中心に回転する第1撹拌部74と第2撹拌部76の各羽根32が円状に回転する軌道に沿って形成されている。
【0040】
かかる構成に加えて、本実施形態における処理槽12の上部25には、所定位置に厚さ方向に貫通した排気口57が設けられている。排気口57には、流路60を介して排気部61が接続されている。排気部61は、例えば、ブロワであり、処理槽12で含水有機物を処理している際、処理槽12内の気体を吸引し、処理槽12内の気体を外部へと排気する。
【0041】
本実施形態において、排気部61は、処理槽12内から気体を1[m3/min]以上300[m3/min]以下、より好ましくは50[m3/min]以上300[m3/min]以下で排気することが望ましい。なお、処理槽12内からの気体の排気量は、処理槽12内の気体を外気に排出する排気部61からの気体の排気量であり、例えば、排気部61をブロアとした場合には、ブロアの設定値を調整することで、所望の排気量に調整することができる。
【0042】
ここで、処理槽12には、処理槽12から気体が排気された分だけ、後述するイオンガス供給部15からイオンガス(ここでは、マイナスイオンを含む気体(例えば、マイナスイオンを含む空気))が供給される。この場合、処理槽12内から気体を1[m3/min]以上で排気することで、後述するイオンガス供給部15から処理槽12内に供給されるイオンガス供給量を最適な値に維持し得、また、処理槽12内で気体を適度に循環させて、処理槽12内における結露の発生を防ぎ、含水有機物の水分気化を促進させることができる。50[m3/min]以上とすることで、イオンガス供給部15からのイオンガス共有量を増やすことができ、また、処理槽12内で気体を一段と循環させて、より確実に結露の発生防止などの効果を得ることができる。
【0043】
一方、処理槽12内から気体を300[m3/min]以下で排気することで、イオンガス供給部15から処理槽12内に導かれたイオンガスを処理槽12内に留めることができ、また、処理槽12内で循環する気体によって含水有機物の水分が気化し過ぎてしまい、粉末体が粉塵となることを抑制できる。
【0044】
イオンガス供給部15は、マイナスイオン発生器38Aと、上側ノズル44が形成された上側供給管40Aと、マイナスイオン発生器38A及び上側供給管40Aを連通する流路42とを有する。イオンガス供給部15は、例えばコロナ放電や熱電離などによりマイナスイオン発生器38Aでマイナスイオンを発生させ、マイナスイオンを含むイオンガスを、流路42を経由して上側供給管40Aまで供給し、上側供給管40Aの上側ノズル44から処理槽12内に排出する。
【0045】
本実施形態では、処理槽12内からの気体の排気にともなってマイナスイオン発生器38Aから外気を吸引し、マイナスイオン発生器38Aを通過する気体内にマイナスイオンを発生させる。マイナスイオン発生器38Aは、例えば、外気に含まれる酸素や窒素などの気体分子から電子を離脱させることにより、気体分子をイオン化する。
【0046】
ここで、本実施形態では、排気部61による処理槽12内からの気体の排気量を調整することで、イオンガス供給部15から処理槽12内に供給されるイオンガス供給量が調整されている。この場合、イオンガス供給部15から処理槽12内に供給されるイオンガスは、イオン密度が200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上であることが望ましい。
【0047】
なお、例えば、「イオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスを1[m3/min]以上300[m3/min]以下で供給する」ということは、1分当たり200万×106=2×1012[pcs]以上のイオンを供給することを示す。このようにイオンを供給することによって、イオンが含水有機物中に確実に拡散し、含水有機物からの水分子の分離が促進され、含水有機物に含まれる水分が蒸発し含水有機物が減量される。
【0048】
なお、従来の生ゴミ処理器に用いるマイナスイオンは、生ゴミ処理器内を脱臭するために使用されており、生ゴミなど含水有機物自体に直接影響を与えて処理する観点からは使用されていない。そのため、生ゴミ処理器で生成されるイオンガスは、空気清浄機に用いられるイオン発生器のイオン密度程度であって、一般的に106[個/cc]オーダー程度である(参考文献1:特開2011-206665号公報、参考文献2:特開2008-175428号公報)。
【0049】
参考文献1、2に記載されたイオンカウンターITC-201Aのサンプリング風量は「約500cc/秒」と製品仕様に記載されている(https://www.andes.co.jp/product/prd_ai/prd_ai_inti_itc-201a/)。よって、106[個/cc]×500[cc/秒]より5×108[個/秒]と計算され、1分当たりに換算すると、3×109[個]と算出される。この値は、本願の「1分当たり2×1012[pcs]以上」という数値と比べると約3桁小さい値となる。
【0050】
そのため、従来の生ゴミ処理器に用いるイオンガスは、生ゴミ処理器内の臭気(気体)に拡散する程度であり、マイナスイオンを生ゴミ中にまで拡散させることまでは考慮されていない。
【0051】
これに対して、本実施形態では、処理槽12内のイオン密度を200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上として、処理槽12内のイオン密度を、従来の脱臭用に用いる生ゴミ処理器よりも格段的に高密度にすることで、イオンガス中のマイナスイオンが含水有機物中にも確実に拡散していき、含水有機物からの水分子の分離を促進している。
【0052】
ここで、含水有機物から分離した水分子は、処理槽12内を上昇していき、上記水分子の一部は、上昇する際に、水分子が複数(例えば、5~6個)結びついたクラスター構造が壊れ、蒸発し、排気部61によって外部へ放出される。
【0053】
一方、残りの水分子、すなわちクラスター構造を維持した水分子は、撹拌されている含水有機物と、処理槽12内の気体で満たされた空間との境界に滞留するが、イオンガスが、上記境界に吹き付けられるため、イオンガス中のマイナスイオンが、水分子のクラスター構造を分解する。クラスター構造が分解された水分子は、加熱器72によって加えられた熱量によって容易に蒸発し、排気部61によって外部へ放出される。
【0054】
上記のように、イオンガスのイオン密度を高密度にすることで、イオンガスが含水有機物中に含まれる水分を含水有機物から分離し、さらに、イオンガスが水分子のクラスター構造を分解する。したがって、処理装置10は、含水有機物に含まれる水分を蒸発して容易に減量することができる。
【0055】
ここで、処理槽12内のイオン密度を2000万[pcs/cc]超にすることで、マイナスイオンが含水有機物中に一段と拡散し易くなるので、その分、イオンガスによって、含水有機物中に含まれる水分を含水有機物から分離させることができ、また、水分子のクラスター構造の分解を促進させることができる。さらに、処理槽12内のイオン密度を6000万[pcs/cc]以上にすることで、含水有機物中にマイナスイオンを一段と確実に拡散させることができる。
【0056】
マイナスイオン発生器38Aに連通する上側供給管40Aは、例えば円形状の開口でなる上側ノズル44が所定位置に所定間隔で形成されている。また、上側供給管40Aは、回転軸30に平行に配置されており、回転軸30よりも上方の位置に設けられている。
【0057】
本実施形態の場合、上側供給管40Aは、処理槽12内に含水有機物を収容した際に当該含水有機物よりも上方に位置するように配置されており、処理槽12内に含水有機物を収容した際に当該含水有機物に埋もれずに、上側ノズル44を介して含水有機物の上方からイオンガスを照射することができる。
【0058】
上側供給管40Aは、処理槽12の短手方向の中央に設けられている排気口57を挟んで両側に配置された第1配管64と、第2配管66とを有する。第1配管64は一方の側部24(
図2中左側の側部)に沿うように、第2配管66は他方の側部24(
図2中右側の側部)に沿うように配置されている。
【0059】
第1配管64には、上側ノズル44として第1上側ノズル45が形成されており、第2配管66には、上側ノズル44として第2上側ノズル47が形成されている。第1上側ノズル45及び第2上側ノズル47は、水平方向の処理槽12の中央向きから鉛直方向の下向きの範囲に開口しているのが好ましい。
【0060】
本実施形態では、第1配管64の中心部と第1上側ノズル45を結ぶ直線a1と、第2配管66の中心部と第2上側ノズル47を結ぶ直線a1とが、第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に向けて延びている。これにより、第1配管64及び第2配管66は、処理槽12の底部20から第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に導かれた含水有機物と、処理槽12の気体で満たされた空間と、の境界に向けてイオンガスを照射する。
【0061】
(2-2)<処理装置を使用した粉末体の製造方法>
次に、処理装置10を使用して含水有機物から粉末体を製造する製造方法について説明する。この場合、使用者は、処理対象とする含水有機物を処理槽12内に投入し、処理槽12内の密閉空間に含水有機物を収容する(収容工程)。そして、使用者は、処理装置10の操作パネル(図示せず)を介して処理開始命令を与えることで、撹拌部14、排気部61、加熱器72及びマイナスイオン発生器38Aを駆動させ、処理装置10において含水有機物の処理を開始させる。
【0062】
この場合、処理装置10は、処理開始命令が与えられると、撹拌部14を駆動し、処理槽12内の含水有機物を撹拌する(撹拌工程)。なお、この際、撹拌部14による含水有機物の撹拌は、含水有機物が処理槽12内全体を循環する程度に撹拌させる。
【0063】
また、処理装置10は、処理開始命令が与えられると、排気部61を駆動し、処理槽12内から気体を1[m3/min]以上300[m3/min]以下で排気し始めるとともに(排気工程)、マイナスイオン発生器38Aを駆動して気体中にマイナスイオンを発生させる。
【0064】
マイナスイオン発生器38Aは、排気部61によって処理槽12内から気体が排気された分だけ外気を吸引し、外気に含まれる酸素や窒素などの気体分子から電子を離脱させ、気体分子をイオン化する。この際、排気部61による排気量が調整され、例えば、イオン密度が200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上のイオンガスが、イオンガス供給部15から処理槽12内に供給され、処理槽12内がイオンガスで満たされる(イオンガス供給工程)。
【0065】
また、この際、処理装置10は、加熱器72を駆動し、処理槽12内を加熱し、処理槽12内の温度を25[℃]以上70[℃]以下の間で推移させるとともに、この温度範囲での処理終了時における処理槽12内の平均温度が30[℃]以上50[℃]以下になるように調整する(加熱工程)。
【0066】
処理装置10は、このように、含水有機物の撹拌と、処理槽12内の加熱と、処理槽12内からの気体の排気と、イオン密度が所定以上のイオンガスの処理槽12内への供給とを所定時間継続して行う(処理工程)。
【0067】
これにより、処理装置10は、含水有機物の撹拌や加熱、排気による処理槽12内での気体の循環、処理槽12内へのイオンガスの供給を行い、その相乗効果によって、含水有機物中に含まれる水分子を分離し易くして含水有機物を分解するとともに、水分子のクラスター構造を分解してゆき、含水有機物が効率的に分解させてゆく。これにより、処理装置10により処理される含水有機物は、最終的に、所望する水分率となり、かつ当初の含水有機物よりも大幅に減量した粉末体となり得る。
【0068】
ここで、含水有機物の処理を終了する時間は、含水有機物の水分率を目安に決定することが望ましい。より具体的には、粉末体の水分率が2[%]以上20[%]以下、より好ましくは10[%]以上20[%]以下となったとき、含水有機物の処理を終了することが望ましい。なお、水分率は上述した乾燥減量法により測定した値である。
【0069】
含水有機物を処理することで得られる粉末体の水分率が2[%]未満になると、粉末体が乾燥し過ぎて粉塵となってしまい、処理槽12を開放した際などに粉末体が大気中に舞い上がるなどしてしまうため、粉末体の水分率は2[%]以上であることが望ましい。また、粉末体の水分率を20[%]以下にすることで、中温性好気性菌の菌数を105/g以下にでき、粉末体を肥料や飼料、成形体の原料として用いることができる。粉末体を肥料や飼料、成形体の原料として用いる場合には、取り扱い易さから、粉末体の水分率を10[%]以上20[%]以下とすることが望ましい。
【0070】
なお、このような含水有機物の処理時間は、含水有機物の投入量や、含水有機物の種類、含水有機物の水分状態、処理槽12内の加熱温度、イオンガスの供給量、処理槽12内からの気体の排気量などによって変わってくるものの、水分率が40[%]以上90[%]以下で、おおよそ30[kg]以上300[kg]以下程度の一般的な野菜くずや、飲料抽出後の有機物残渣であれば、例えば、上述した処理条件においてイオン密度を6000万[pcs/cc]以上にして、2時間以上70時間以下の時間で連続的に含水有機物を処理することで、水分率が20[%]以下の粉末体を得ることができる。
【0071】
なお、一般的には、50[℃]以下の低い温度の処理槽では、含水有機物内の中温性好気性菌の菌数を105/g以下にすることは難しい。しかしながら、処理装置10では、含水有機物を処理する際に、含水有機物の撹拌や、処理槽12内での気体の循環に加えて、含水有機物へのイオンガスの供給を行うことで、処理槽12内の平均温度を50[℃]以下に低くしても、これらの相乗効果により、短時間で粉末体の中温性好気性菌の菌数を105/g以下にすることができる。
【0072】
なお、上述した他に、含水有機物を処理して含水有機物の総量を減少させることを目的とした場合には、ロードセル28により得られる含水有機物の重量測定の結果を目安に、含水有機物の処理時間を決めることもできる。処理装置10では、上述した処理条件において、含水有機物を2時間以上70時間以下の時間で連続的に処理することで、処理槽12内の処理前の含水有機物を、8分の1以上3分の1以下にまで減少させることができる。
【0073】
この場合、処理装置10は、ロードセル28によって、処理槽12内における処理前の含水有機物の重量から8分の1以上3分の1以下になったことを検知し、音や光などにより使用者に通知することで、含水有機物の処理終了時を使用者に知らせることができる。
【0074】
(3)<動作及び効果>
以上の構成において、この粉末体は、含水有機物から得られ、水分率が20[%]以下で、かつ、中温性好気性菌の菌数が105/g以下であり、示差熱分析法において発熱最大ピークが300[℃]以上で検出される。この粉末体は、示差熱分析法において発熱最大ピークの検出温度が従来の粉末体よりも高いことから、その分、従来の粉末体よりも利用用途が広がり、種々の用途に幅広く利用することができる。例えば、粉末体の利用用途としては、肥料や飼料の他にも、高温で成形加工がされる成形体の原料としても用いることができる。
【0075】
また、このような粉末体の製造方法としては、まず、処理槽12内に収容した含水有機物を撹拌部14で撹拌するとともに、加熱器72によって処理槽12内を加熱する。また、これと同時に、処理装置10では、排気部61によって、処理槽12内から気体を1[m3/min]以上300[m3/min]以下で排気し、この排気にともない、イオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスをイオンガス供給部15から処理槽12内に供給し、含水有機物を処理する(処理工程)。
【0076】
このように、処理装置10では、従来の培養基材を用いることなく、含水有機物の撹拌と、処理槽12内の加熱と、処理槽12内からの気体の排気と、含水有機物へのイオンガスの供給と、により含水有機物を処理することで、本実施形態に係る粉末体を製造できる。
【0077】
また、処理装置10では、含水有機物の処理中、加熱器72によって処理槽12内の温度を25[℃]以上70[℃]以下の範囲で推移させ、望ましくはイオン密度を6000万[pcs/cc]以上にし、処理槽12内において含水有機物の処理を、2時間以上70時間以下の時間、連続して行うことが望ましい。これにより、水分率等が異なる種々の含水有機物から本実施形態に係る粉末体を製造することができる。
【0078】
このようして得らえる本実施形態に係る粉末体は、水分率が20[%]以下となり、また、栄養価も高いことから、肥料又は飼料として用いることができる。また、この粉末体は、水分率が20[%]以下、中温性好気性菌の菌数が105/g以下、示差熱分析法による発熱最大ピークの検出温度が300[℃]以上、という製造時の状態を、常温にて製造から1年放置しても維持できる。よって、長期保存が可能な粉末体を提供でき、取り扱い易い、肥料や、飼料、成形体の原料を実現できる。
【0079】
また、含水有機物を再利用するために製造した従来の粉末体については、示差熱分析法による発熱最大ピークの検出温度が300[℃]未満で、耐熱性が低いことから、射出成形や押出成形等のように高温による加熱が必要となる成形加工には使用が困難であったが、本実施形態に係る粉末体は、示差熱分析法による発熱最大ピークの検出温度を300[℃]以上にできることから、高温に加熱する成形加工にも使用することができる。
【0080】
(4)<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能であり、処理槽として、種々の大きさの処理槽を適用してもよい。また、上述した実施形態においては、イオンガス供給部として、マイナスイオン発生器38Aを設け、マイナスイオンのイオン密度が、200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上のイオンガスを処理槽12内に供給するイオンガス供給部15を適用したが、本発明はこれに限らない。例えば、イオンガス発生器としてプラスイオン発生器を設け、プラスイオンのイオン密度が、200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上のイオンガスを処理槽12内に供給するイオンガス供給部を適用してもよい。
【0081】
また、その他のイオンガス供給部としては、プラスイオン及びマイナスイオンの両方を発生させるイオン発生器を設け、プラスイオン及びマイナスイオンを合わせたイオン密度が、200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上のイオンガスを処理槽12内に供給するイオンガス供給部を適用してもよい。
【0082】
また、上述した実施形態においては、排気部61として、ブロワを設け、処理槽12内から気体を強制的に排気させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、吸引側となるマイナスイオン発生器38Aに、吸気部となるブロワを設け、排気部を単なるフィルタなどとし、吸気部での吸引によって、排気部から処理槽12内の気体を1[m3/min]以上300[m3/min]以下で排気するようにしてもよい。
【0083】
(5)<検証試験>
(5-1)<本実施形態に係る粉末体の水分率及び中温性好気性菌の菌数>
次に、含水有機物として、飲料抽出後のリンゴ粕、桃粕、ニンジン粕、ピーマン粕、酒粕、緑茶粕、麦茶粕及びコーヒ粕を用意し、各含水有機物から、上述した製造方法に従って、それぞれ別々に粉末体を製造し、各粉末体の水分率と中温性好気性菌の菌数とについて調べた。
【0084】
ここでは、これら処理槽12内から気体を50[m3/min]で排気し、処理槽12内に供給するイオンガスのイオン密度を6000万[pcs/cc]程度に維持し、含水有機物の処理中の処理槽12内の温度を20[℃]~70[℃]で推移させ、このような処理を所定時間連続して行った。
【0085】
具体的には、飲料抽出後で水分率が78.9[%]のリンゴ粕を200[kg]用意し、処理装置10を用いて上述した処理条件に従い、イオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、42時間継続して処理をした。得られた粉末体について、水分率と重量を調べたところ、水分率が3.2[%]となり、重量が45[kg]となることを確認した。得られた粉末体は処理前の重量からおおよそ5分の1に減少することを確認した。
【0086】
また、飲料抽出後で水分率が71.0[%]の桃粕を40[kg]用意し、処理装置10を用いて上述した処理条件に従い、イオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、18時間継続して処理した。得られた粉末体について、水分率と重量を調べたところ、水分率が6.2[%]となり、重量が12[kg]となることを確認した。得られた粉末体は処理前の重量からおおよそ4分の1に減少することを確認した。
【0087】
また、飲料抽出後で水分率が87.1[%]のニンジン粕を231[kg]用意し、処理装置10を用いて上述した処理条件に従い、イオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、48時間継続して処理した。得られた粉末体について、水分率と重量を調べたところ、水分率が2.8[%]となり、重量が24[kg]となることを確認した。得られた粉末体は処理前の重量からおおよそ10分の1に減少することを確認した。
【0088】
また、飲料抽出後で水分率が84.4[%]のピーマン粕を200[kg]用意し、処理装置10を用いて上述した処理条件に従い、イオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、48時間継続して処理した。得られた粉末体について、水分率と重量を調べたところ、水分率が12.1[%]となり、重量が68[kg]となることを確認した。得られた粉末体は処理前の重量からおおよそ3分の1に減少することを確認した。
【0089】
また、飲料抽出後で水分率が45.0[%]の酒粕(小麦ふすま含有)を189[kg]用意し、処理装置10を用いて上述した処理条件に従い、イオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、48時間継続して処理した。得られた粉末体について、水分率と重量を調べたところ、水分率が3.5[%]となり、重量が96[kg]となることを確認した。得られた粉末体は処理前の重量からおおよそ2分の1に減少することを確認した。
【0090】
また、飲料抽出後で水分率が86.4[%]の緑茶粕を106[kg]用意し、処理装置10を用いて上述した処理条件に従い、イオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、24時間継続して処理した。得られた粉末体について、水分率と重量を調べたところ、水分率が2.3[%]となり、重量が17[kg]となることを確認した。得られた粉末体は処理前の重量からおおよそ6分の1に減少することを確認した。
【0091】
また、飲料抽出後で水分率が80.2[%]の麦茶粕を130[kg]用意し、処理装置10を用いて上述した処理条件に従い、イオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、18時間継続して処理した。得られた粉末体について、水分率と重量を調べたところ、水分率が20[%]以下となり、重量が69[kg]となることを確認した。得られた粉末体は処理前の重量からおおよそ2分の1に減少することを確認した。
【0092】
また、飲料抽出後で水分率が47.0[%]のコーヒ粕を303[kg]用意し、処理装置10を用いて上述した処理条件に従い、イオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、68時間継続して処理した。得られた粉末体について、水分率と重量を調べたところ、水分率が19.8[%]以下となり、重量が109[kg]となることを確認した。得られた粉末体は処理前の重量からおおよそ3分の1に減少することを確認した。
【0093】
(5-2)<本実施形態に係る粉末体を長期保存したときの水分再吸湿に関する検証試験>
次に、リンゴジュースを製造したときに残ったリンゴジュース搾り粕(リンゴ粕)を、本実施形態の処理装置10を用いて処理をして粉末体を製造した。また、コーヒの搾り粕(コーヒ粕)についても、本実施形態の処理装置10を用いて処理をして粉末体を製造した。
【0094】
ここでは、処理槽12内から気体を50[m3/min]で排気し、処理槽12内に供給するイオンガスのイオン密度を6000万[pcs/cc]以上に維持し、含水有機物の処理中の処理槽12内の温度を20[℃]~70[℃]で推移させ、このような処理を約20時間程度、連続して行い、リンゴ粕及びコーヒ粕からそれぞれ別々に粉末体を製造した。なお、この検証試験では、上述した検証試験にて説明した実施例のリンゴ粕及びコーヒ粕とは異なる、リンゴ粕及びコーヒ粕を使用した。
【0095】
処理装置10を用いてリンゴ粕を処理して製造した粉末体(以下、リンゴ粕処理粉末体と称する)と、処理装置10を用いてコーヒ粕を処理して製造した粉末体(以下、コーヒ粕処理粉末体と称する)とについて、特に厳密な密封等の処理を行わず長期間保存したときの水分再吸湿について観察した。
【0096】
なお、コーヒ粕やリンゴ粕を処理して得られた本実施形態に係る粉末体については、この検証試験を行う前に、既に製造後約1年間の間、常温(20[℃]±15[℃](5~35[℃]))にて屋外に放置し、製造から約1年後でも、水分率が20[%]以下、中温性好気性菌の菌数が105/g以下、示差熱分析法において発熱最大ピークが300[℃]以上となることを確認しているが、その際には、これらの観点からの検証試験ではなかったことから、この検証試験は改めて行ったものである。
【0097】
この検証試験では、ポリエチレンやポリプロピレン等の丈夫な化学繊維で織られたシートで形成された、容量1000[kg]のフレキシブルコンテナバック(株式会社熱田資材社製、商品名 AS-002F(ワンウェイコンテナバック))を用意した。
【0098】
2019年6月20日に、日本の青森県弘前市内にある工場にて、上述したリンゴ粕処理粉末体を作製し、当該フレキシブルコンテナバック内にリンゴ粕処理粉末体を投入してゆき、フレキシブルコンテナバック全体をリンゴ粕処理粉末体で満たした。そして、リンゴ粕処理粉末体を詰め込んだフレキシブルコンテナバックの開口部を結んで密封状態とした。
【0099】
このようなリンゴ粕処理粉末体を詰め込んだフレキシブルコンテナバックを、上記工場(日本の青森県弘前市内)敷地内にある倉庫内に、積み上げずに単に並べて、そのまま放置した。なお、フレキシブルコンテナバックを放置した倉庫は、コンクリートブロックで側壁が形成され、屋根がトタンで形成されており、特に断熱材等を用いていない、雨や風をしのげる倉庫であった。
【0100】
また、コーヒ粕処理粉末体についても、同様にして、フレキシブルコンテナバックに詰め込んでゆき開口部を結んで密封し、リンゴ粕処理粉末体を詰め込んだフレキシブルコンテナバックを放置した同じ倉庫内に同様に放置した。
【0101】
ここでは、フレキシブルコンテナバックに詰め込んで検証試験を始める際のリンゴ粕処理粉末体及びコーヒ粕処理粉末体のそれぞれの水分率を測定した。この検証試験での水分率は上述した乾燥減量法により測定した値である。
【0102】
リンゴ粕処理粉末体は、2019年6月20日から検証試験を開始し、検証試験開始時の水分率は11.8[%]であった。そして、リンゴ粕処理粉末体を詰め込んだフレキシブルコンテナバックを、上述した日本の青森県弘前市内にある倉庫に常温で放置し続け、2020年1月7日に、フレキシブルコンテナバック内のリンゴ粕処理粉末体について、再び水分率を測定した。
【0103】
なお、検証試験を行う時期としては、季節変化や気温変動による影響等についても確認するため、夏(30[℃])と冬(-10[℃])の環境に晒される時期(2019年6月~2020年7月)を選んだ。
【0104】
2019年6月20日から2020年1月7日まで倉庫内に放置した、フレキシブルコンテナバック内のリンゴ粕処理粉末体の水分率は、12.2[%]であった。なお、リンゴ粕処理粉末体については、検証試験中、菌数検査等も行っており、約1ヵ月ごとにフレキシブルコンテナバックの開封を行っている。以上、検証試験の結果から、本実施形態の処理装置10で製造したリンゴ粕処理粉末体は、製造時に水分率を20[%]以下にできるとともに、製造時の水分率を20[%]以下のまま長期間(約6ヵ月間)維持できることが確認できた。また、2020年6月の時点においても、リンゴ粕処理粉末体について、製造時の水分率を20[%]以下のまま長期間維持できることを確認している。
【0105】
また、コーヒ粕処理粉末体は、2019年7月6日から検証試験を開始し、検証試験開始時の水分率は9.4[%]であった。そして、コーヒ粕処理粉末体を詰め込んだフレキシブルコンテナバックを、上述した日本の青森県弘前市内にある倉庫に常温で放置し続け、2020年1月7日に、フレキシブルコンテナバック内のコーヒ粕処理粉末体についても、再び水分率を測定した。
【0106】
2019年7月6日から2020年1月7日まで倉庫内に放置した、フレキシブルコンテナバック内のコーヒ粕処理粉末体の水分率は、9.4[%]であった。このことから、製造時に水分率を20%以下にしたコーヒ粕処理粉末体について、製造時の水分率を20[%]以下のまま長期間(約6ヵ月間)維持できることが確認できた。また、2020年6月の時点においても、コーヒ粕処理粉末体について、製造時の水分率を20[%]以下のまま長期間維持できることを確認している。
【0107】
これらリンゴ粕処理粉末体及びコーヒ粕処理粉末体については、標準寒天平板培養法により測定される中温性好気性菌の菌数が105/g以下になることも確認している。この検証試験では、約6ヵ月間保存した粉末体の測定結果であるが、水分率等の推移から急激な変化は見られず、1年間の長期保存が可能であることが改めて分かった。
【0108】
なお、生ごみ等の含水有機物を粉砕しながら加熱して処理する従来の生ゴミ処理器によって製造された従来の粉末体は、製造直後、水分率を20[%]以下にしても、時間経過とともに、水分率が上昇してゆき、一般的におおよそ3~4ヵ月程度で水分率が20[%]超となってしまうことは確認している。そして、従来の粉末体は、その結果、中温性好気性菌の菌数が108/g以上となり腐敗が始まり、長期保存が困難であることも確認している。
【0109】
本検証試験では、リンゴ粕とコーヒ粕とからそれぞれ製造した粉末体について長期保存し、水分再吸湿に関する検証試験を行ったが、これらリンゴ粕とコーヒ粕から得られた粉末体の検証結果から、その他の桃粕、ニンジン粕、ピーマン粕、酒粕、緑茶粕、麦茶粕についても、同様に、製造時の水分率を20[%]以下のまま期間維持できることが推測できる。
【0110】
すわなち、本実施形態に係る粉末体は、含水有機物を処理槽12内で撹拌しながら加熱し、かつ、処理槽12内から気体を1[m3/min]以上300[m3/min]以下で排気して、イオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスを1[m3/min]以上300[m3/min]以下で処理槽12内に供給することで、含水有機物の水分子を分離させ含水有機物に含まれる水分を蒸発させる処理が行われ、このような処理によって、従来の粉末体と異なり、粉末体の多くの細胞壁が破壊されずに、水分率を20[%]以下のままに長時間維持できていると言える。
【0111】
よって、上記の処理によって、桃粕、ニンジン粕、ピーマン粕、酒粕、緑茶粕、麦茶粕からそれぞれ製造した粉末体においても、リンゴ粕とコーヒ粕とから製造した粉末体と同様、粉末体の多くの細胞壁が破壊されずに水分率を20[%]以下にできるので、水分率をそのままに長時間維持できると推測できる。
【0112】
(5-3)<本実施形態に係る粉末体の熱重量分析、示差熱重量分析及び示差熱分析に関する検証試験>
次に、リンゴジュースを製造したときに残ったリンゴジュース搾り粕(リンゴ粕)と、ニンジンジュースを製造したときに残ったニンジン搾り粕(ニンジン粕)と、コーヒの搾り粕(コーヒ粕)とについても、それぞれ別々に本実施形態の処理装置10を用いて処理をして粉末体を製造した。
【0113】
処理条件としては、上述した検証試験と同様に、処理槽12内から気体を50[m3/min]で排気し、処理槽12内に供給するイオンガスのイオン密度を6000万[pcs/cc]以上に維持し、含水有機物の処理中の処理槽12内の温度を20[℃]~70[℃]で推移させ、このような処理を約20時間程度連続して行った。そして、リンゴ粕、ニンジン粕及びコーヒ粕からそれぞれ別々に粉末体を製造した。なお、この検証試験では、上述した検証試験にて説明した実施例のリンゴ粕、ニンジン粕及びコーヒ粕とは異なる、リンゴ粕、ニンジン粕及びコーヒ粕を使用した。
【0114】
得られた粉末体について、粉末体を加熱して重量減少を調べる熱重量分析と、熱重量の測定結果を微分した示差熱重量分析と、粉末体を加熱した際の吸熱又は発熱を調べる示差熱分析とを行った。
【0115】
粉末体に対する、熱重量分析、示差熱重量分析及び示差熱重量分析は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差熱熱重量同時測定装置(製品名「TG/DTA7220」)を用いて測定した。
【0116】
この場合、示差熱熱重量同時測定装置に、試料となる粉末体と、基準物質とするアルミナとを設置し、大気中で試料(粉末体)と基準物質(アルミナ)を加熱して、30[℃]から500[℃]まで昇温させた。そのときの試料の熱重量曲線(TG(Thermo Gravimetry)曲線)と、示差熱重量曲線(DTG(Differential Thermo-Gravimetry)曲線)と、示差熱曲線(DTA(Differential Thermal Analysis)曲線)とを、示差熱熱重量同時測定装置により測定した。
【0117】
その結果、リンゴ粕から製造した粉末体について
図3に示すような結果(「試料名:リンゴ」と表記)が得られた。
図3は、リンゴ粕から製造した粉末体に対して行った、熱重量分析、示差熱重量分析及び示差熱分析の測定結果を示す。
【0118】
図3中、熱重量分析の測定結果であるTG曲線(図中、「TG」と表記)は、温度[℃]を横軸とし、重量(質量)変化[mg]を縦軸として示している。また、示差熱重量分析の測定結果であるDTG曲線は、温度[℃]を横軸とし、重量(質量)変化速度[μg/min]を縦軸として示している。示差熱分析の測定結果であるDTA曲線は、温度[℃]を横軸とし、熱流として熱電対の起電力の出力[uV]を縦軸で示している。
【0119】
図3のTG曲線から、試験開始温度である30[℃]から200[℃]にかけて、主に試料に含まれる水分を原因とした重量減少(約0.25[mg]程度(約10[%])の重量減少)が生じた。その後、350[℃]付近にかけて、さらに重量減少が起こり、500[℃]に向かって燃焼している。
【0120】
図3のDTG曲線(図中、「DTG」と表記)では、70[℃]~80[℃]にピークが見られ、さらに、220[℃]付近及び350[℃]付近にもピークが見られた。これは重量減少に伴うものと考えられる。
【0121】
図3のDTA曲線(図中、「DTAと表記)では、100[℃]までに、水の揮発に伴う気化熱により吸熱のピークが確認できた。また、310[℃]付近に発熱のピークが見られたが、これらは加熱による熱分解ガスの発生に伴う発熱と推測される。また、430[℃]付近からの急峻なピークについては、炭化に向かう燃焼によるものと考えられ、おおよそ500[℃]付近に発熱最大ピークが現れて炭化することが推測できた。
【0122】
以上より、リンゴ粕から製造した粉末体は、示差熱分析法において発熱最大ピークが少なくとも400[℃]以上で検出されており、耐熱性が高いことが確認できた。
【0123】
ニンジン粕から製造した粉末体については
図4に示すような結果(「試料名:ニンジン」と表記)が得られた。
図4は、ニンジン粕から製造した粉末体に対して行った、熱重量分析、示差熱重量分析及び示差熱分析の測定結果(TG曲線、DTG曲線及びDTA曲線)を示す。
【0124】
図4のTG曲線から、試験開始温度である30[℃]から200[℃]にかけて、主に試料に含まれる水分を原因とした重量減少(約0.3[mg]程度(約10[%])の重量減少)が生じた。その後、320[℃]付近にかけて、さらに重量減少が起こり、500[℃]に向かって燃焼している。
【0125】
図4のDTG曲線では、220[℃]付近、250[℃]付近及び320[℃]付近にピークが見られた。これは重量減少に伴うものと考えられる。
【0126】
図4のDTA曲線では、200[℃]までに、水の揮発に伴う気化熱により吸熱のピークが確認できた。また、310[℃]付近に発熱のピークが見られたが、これらは加熱による熱分解ガスの発生に伴う発熱と推測される。また、500[℃]に向かって上昇する急峻なピークについては、炭化に向かう燃焼によるものと考えられ、おおよそ500[℃]付近に発熱最大ピークが現れて炭化することが推測できた。
【0127】
以上より、ニンジン粕から製造した粉末体は、示差熱分析法において発熱最大ピークが少なくとも400[℃]以上で検出されており、耐熱性が高いことが確認できた。
【0128】
コーヒ粕から製造した粉末体については
図5に示すような結果(「試料名:コーヒ」と表記)が得られた。
図5は、コーヒ粕から製造した粉末体に対して行った、熱重量分析、示差熱重量分析及び示差熱分析の測定結果(TG曲線、DTG曲線及びDTA曲線)を示す。
【0129】
図5のTG曲線から、試験開始温度である30[℃]から250[℃]にかけて、主に試料に含まれる水分を原因とした重量減少(約0.3[mg]程度(約10[%])の重量減少)が生じた。その後、350[℃]付近にかけて、さらに重量減少が起こり、500[℃]に向かって燃焼している。
【0130】
図5のDTG曲線では、300[℃]付近及び400[℃]付近にピークが見られた。これは重量減少に伴うものと考えられる。
【0131】
図5のDTA曲線では、200[℃]までに、水の揮発に伴う気化熱により吸熱のピークが確認できた。また、340[℃]付近に発熱のピークが見られたが、これらは加熱による熱分解ガスの発生に伴う発熱と推測される。また、500[℃]に向かって上昇する急峻なピークについては、炭化に向かう燃焼によるものと考えられ、おおよそ510[℃]付近に発熱最大ピークが現れて炭化することが推測できた。
【0132】
以上より、コーヒ粕から製造した粉末体は、示差熱分析法において発熱最大ピークが少なくとも400[℃]以上で検出されており、耐熱性が高いことが確認できた。
【0133】
よって、処理装置10の処理により、リンゴ粕、ニンジン粕及びコーヒ粕からそれぞれ製造された粉末体は、示差熱分析法において発熱最大ピークの検出温度がいずれも400[℃]以上となり、従来の粉末体よりも高いことから、その分、従来の粉末体よりも利用用途が広がり、種々の用途に幅広く利用できることが確認できた。
【符号の説明】
【0134】
10 処理装置
12 処理槽
14 撹拌部
15 イオンガス供給部
38A マイナスイオン発生器(イオン発生器)
61 排気部
72 加熱器