(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】発光デバイスおよび光源デバイス
(51)【国際特許分類】
F21V 9/30 20180101AFI20240809BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20240809BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20240809BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20240809BHJP
F21V 7/04 20060101ALI20240809BHJP
F21V 7/22 20180101ALI20240809BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240809BHJP
【FI】
F21V9/30
H01S5/022
F21V29/502 100
F21V29/70
F21V7/04 100
F21V7/22
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020157070
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】503098724
【氏名又は名称】株式会社オキサイド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳光 聖茄
(72)【発明者】
【氏名】楠木 常夫
(72)【発明者】
【氏名】川部 英雄
(72)【発明者】
【氏名】大迫 純一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 重夫
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028430(JP,A)
【文献】特開2015-050124(JP,A)
【文献】特開2018-116911(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110031(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056469(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/046865(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/171775(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 9/30
F21V 29/502
F21V 29/70
F21V 7/04
F21V 7/22
F21Y 115/30
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光照射面を有し、前記励起光照射面に照射された励起光により蛍光を発する蛍光体層と、
前記蛍光体層から発せられた前記蛍光を前記励起光照射面に向かって反射する反射層と、
前記蛍光体層と前記反射層との間に設けられ
るとともに、前記蛍光体層および前記反射層に接して設けられ、前記蛍光体層の、前記反射層側の表面の凹凸よりも小さな凹凸の表面を前記反射層側に有する透明層と
を備え
、
前記透明層は、前記反射層に誘起される表面プラズモンによる干渉によって発光寿命変動比率が正となる範囲内の厚さとなっている
発光デバイス。
【請求項2】
前記蛍光体層は、蛍光物質を含む単結晶、または、蛍光物質と、蛍光物質とは異なる組成の材料との共晶もしくは焼成体で構成されている
請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記反射層が、Ag、Al、Agを含む化合物、または、Alを含む化合物で構成されている
請求項1または請求項2に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記透明層が、酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、ホウ素酸化物またはアルミニウム酸化物で構成されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記反射層がAgまたはAgを含む化合物で構成され、
前記透明層が酸化ケイ素で構成され、
前記蛍光体層が、Ceが添加されたYAG単結晶もしくはYAG多結晶と、サファイア単結晶もしくはサファイア多結晶との共晶で構成され、
前記透明層の厚さが5nm以上185nm以下、210nm以上325nm以下、370nm以上470nm以下、または525nm以上615nm以下となっている
請求項
1に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記蛍光体層で発生した熱を排熱する放熱基板を更に備えた
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記蛍光体層、前記透明層および前記反射層を含む積層体と、前記放熱基板とを互いに接合する接合層と、
前記反射層と前記接合層との間に設けられ、TiおよびTi化合物のうち少なくとも一方を含むチタン層と
を更に備えた
請求項
6に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記チタン層と前記接合層との間に設けられたAu層を更に備えた
請求項
7に記載の発光デバイス。
【請求項9】
蛍光を発する光源デバイスと、
前記光源デバイスに励起光を照射する励起光源と、
前記光源デバイスから発せられた前記蛍光と、前記光源デバイスで反射された前記励起光とを合成するとともに集光するレンズと
を備え、
前記光源デバイスは、
励起光照射面を有し、前記励起光照射面に照射された前記励起光により前記蛍光を発する蛍光体層と、
前記蛍光体層から発せられた前記蛍光を前記励起光照射面に向かって反射する反射層と、
前記蛍光体層と前記反射層との間に設けられ
るとともに、前記蛍光体層および前記反射層に接して設けられ、前記蛍光体層の、前記反射層側の表面の凹凸よりも小さな凹凸の表面を前記反射層側に有する透明層と
を有
し、
前記透明層は、前記反射層に誘起される表面プラズモンによる干渉によって発光寿命変動比率が正となる範囲内の厚さとなっている
光源デバイス。
【請求項10】
蛍光を発する光源デバイスと、
前記光源デバイスに励起光を照射する励起光源と、
前記光源デバイスから発せられた前記蛍光と、前記光源デバイスで反射された前記励起光とを反射するとともに合成するリフレクタと
を備え、
前記光源デバイスは、
励起光照射面を有し、前記励起光照射面に照射された前記励起光により前記蛍光を発する蛍光体層と、
前記蛍光体層から発せられた前記蛍光を前記励起光照射面に向かって反射する反射層と、
前記蛍光体層と前記反射層との間に設けられ
るとともに、前記蛍光体層および前記反射層に接して設けられ、前記蛍光体層の、前記反射層側の表面の凹凸よりも小さな凹凸の表面を前記反射層側に有する透明層と
を有
し、
前記透明層は、前記反射層に誘起される表面プラズモンによる干渉によって発光寿命変動比率が正となる範囲内の厚さとなっている
光源デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いた発光デバイスおよび光源デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクタや、照明、ヘッドライトなどの光学製品において、高輝度化が進んでいる。従来、このような光学製品では、光源として水銀ランプやハロゲンランプ、LEDが用いられていた。しかし、高輝度化に伴い、蛍光体およびレーザを用いた光源が検討されている。この光源では、例えば、蛍光体にレーザ光を励起光として照射し、それにより得られる蛍光とレーザ光との合成光が出射光として利用される。
【0003】
しかし、蛍光体およびレーザを用いた光源では、入力および出力のパワーが非常に大きい。そのため、わずかなエネルギーロスであっても、そのエネルギーロスで発生した熱によって、蛍光体が発熱し、発光強度が著しく減少する、温度消光という現象が発生する。また、発熱は、蛍光体にとって寿命を縮める要因ともなる。そこで、蛍光体を回転機構に取り付け、励起光を照射する時に蛍光体を回転させ、照射面を断続的に移動させることで単位面積当たりの照射時間を短縮し、温度消光の発生を抑制することが考えられる。しかし、この方法では、回転機構を設けたことによる光学製品の機構的信頼性の低下、大型化、高騒音化が課題となる。
【0004】
そこで、蛍光体を回転させる代わりに、蛍光体の裏面に放熱基板を貼り合わせ、蛍光体で発生した熱を放熱基板へ逃がすことが考えられる(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-192296号
【文献】特開2016-177979号
【文献】特開2013-187043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、蛍光体から発せられた蛍光が放熱基板に吸収されるのを避けるため、蛍光体と放熱基板との間に反射層が設けられる。しかし、単に反射層を設けただけでは、発光効率がさほど向上しない場合があった。従って、発光効率を向上させることの可能な発光デバイスおよび光源デバイスを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る発光デバイスは、励起光照射面を有し、励起光照射面に照射された励起光により蛍光を発する蛍光体層と、蛍光体層から発せられた蛍光を励起光照射面に向かって反射する反射層と、蛍光体層と反射層との間に設けられるとともに、蛍光体層および反射層に接して設けられ、蛍光体層の、反射層側の表面の凹凸よりも小さな凹凸の表面を反射層側に有する透明層とを備えている。透明層は、反射層に誘起される表面プラズモンによる干渉によって発光寿命変動比率が正となる範囲内の厚さとなっている。
【0008】
本発明の一側面に係る第1の光源デバイスは、蛍光を発する光源デバイスと、光源デバイスに励起光を照射する励起光源と、光源デバイスから発せられた蛍光と、光源デバイスで反射された励起光とを合成するとともに集光するレンズとを備えている。第1の光源デバイスにおいて、光源デバイスは、上述の光源デバイスと同様の構成を有している。
【0009】
本発明の一側面に係る第2の光源デバイスは、蛍光を発する光源デバイスと、光源デバイスに励起光を照射する励起光源と、光源デバイスから発せられた蛍光と、光源デバイスから発せられた蛍光と、光源デバイスで反射された励起光とを反射するとともに合成するリフレクタとを備えている。第2の光源デバイスにおいて、光源デバイスは、上述の光源デバイスと同様の構成を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面に係る発光デバイス、第1の光源デバイスおよび第2の光源デバイスによれば、蛍光体層と反射層との間に、蛍光体層の、反射層側の表面の凹凸よりも小さな凹凸の表面を反射層側に有する透明層を設けるようにしたので、平坦性の高い透明層に反射層を形成したときに、蛍光体層の裏面に直接、反射層を形成したときに形成されるような柱状配向が反射層に形成されるのを低減することができる。その結果、反射層で正反射し易くなるので、発光効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る発光デバイスの概略構成例を表す図である。
【
図2】
図1の蛍光複合体および反射層の断面写真である。
【
図3】比較例に係る蛍光体および反射層の断面写真である。
【
図4】
図1の透明層の厚さと発光寿命変動比率との関係の一例を表す図である。
【
図5】
図1の透明層の厚さと発光寿命変動比率との関係の一例を表す図である。
【
図6】
図1の透明層の厚さと発光寿命変動比率との関係の一例を表す図である。
【
図7】
図1の発光デバイスを備えた光源デバイスの概略構成例を表す図である。
【
図8】
図1の発光デバイスを備えた光源デバイスの概略構成例を表す図である。
【
図9】
図7の光源デバイスの概略構成の一変形例を表す図である。
【
図10】
図8の光源デバイスの概略構成の一変形例を表す図である。
【
図11】
図7の光源デバイスの概略構成の一変形例を表す図である。
【
図12】
図8の光源デバイスの概略構成の一変形例を表す図である。
【
図13】
図7~
図12の光源デバイスを備えた電子機器の概略構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本発明の一具体例であって、本発明は以下の態様に限定されるものではない。また、本発明は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。
【0013】
<1.実施の形態>
[構成]
本発明の一実施の形態に係る発光デバイス10について説明する。
図1は、発光デバイス10の概略構成例を表したものである。発光デバイス10は、励起光を受けて蛍光を放射する蛍光複合体16を備えた固定型波長変換デバイスである。発光デバイス10は、例えば、
図1に示したように、励起光照射面10Aに設けられた蛍光複合体16と、放熱基板11と、蛍光複合体16と放熱基板11との間に設けられた接合層12、密着性向上層13、拡散防止層14および反射層15とを備えている。
【0014】
蛍光複合体16は、例えば、蛍光体層16Bと透明層16Aとが積層された構造となっている。蛍光体層16Bが励起光照射面10A側に設けられており、透明層16Aが反射層15側に設けられている。
【0015】
蛍光体層16Bは、例えば、Ceが添加されたYAG単結晶(第1グレイン媒質)と、サファイア単結晶(第2グレイン媒質)との共晶であり、第1グレイン媒質と第2グレイン媒質とが絡み合った三次元構造を備えている。第1グレイン媒質は、単結晶で構成された蛍光グレイン媒質である。第2グレイン媒質は、単結晶で構成された非蛍光グレイン媒質である。蛍光体層16Bは、例えば、1または複数の第1グレイン媒質と1または複数の第2グレイン媒質とが絡み合った三次元構造を備えていてもよい。このとき、1または複数の第1グレイン媒質のうち、少なくとも1つの第1グレイン媒質は、蛍光物質を添加したYAG単結晶もしくはYAG多結晶を含んでいる。また、1または複数の第2グレイン媒質のうち、少なくとも1つの第2グレイン媒質は、サファイア単結晶もしくはサファイア多結晶を含んでいる。このような構成の蛍光体層16Bは、励起光照射面10Aに青色光が照射されると、照射光(青色光)を反射するとともに、黄色の蛍光を生成し、放射する。
【0016】
蛍光物質が添加されたグレイン媒質としては、Y3Al5O12:Ce3+(YAG)以外には、赤色用として、例えば、CaAlSiN3:Eu2+、(Ca,Sr)AlSiN3:Eu2+、Ca2Si5N8:Eu2+、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu2+、KSiF6:Mn4+、CaS:Eu2+などの蛍光体材料を用いることができる。また、蛍光物質が添加されたグレイン媒質としては、黄色用として、例えば、(Si,Ba)2SiO4:Eu2+、CaX(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+などの蛍光体材料を用いることができる。また、蛍光物質が添加されたグレイン媒質としては、緑色用として、例えば、Lu3Al5O12:Ce3+、Y3(Ga,Al)5O12:Ce3+、Ca3Sc2Si3O12:Ce3+、CaSc2O4:Eu2+、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、Ba3Si6O12N2:Eu2+、(Si,Al)6(O,N)8:Eu2+、SrGa2S4:Eu2+などの蛍光体材料を用いることができる。
【0017】
また、蛍光物質を添加するグレイン媒質は1種類とは限らない。蛍光物質を添加するグレイン媒質が2種類以上、蛍光体素子に含まれていてもよい。蛍光物質を添加されないグレイン媒質はサファイア以外の単結晶でもよい。また、ガラスや樹脂などのバインダが、蛍光物質を添加されたグレイン媒質間に介在していてもよい。蛍光物質を添加されたグレイン媒質(蛍光体粉末)をガラスや樹脂中に分散させたもの、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、または、蛍光体セラミックスが、蛍光体素子に含まれていてもよい。この蛍光物質を添加されないグレイン媒質は1種類とは限らない。蛍光物質を添加されないグレイン媒質が2種類以上、蛍光体素子に含まれていてもよい。また、蛍光物質を添加されたグレイン媒質を含む蛍光体素子において、蛍光物質を添加されたグレイン媒質の屈折率との屈折率差が大きいグレイン媒質が含まれていてもよい。また、高出力化のためには、透明で熱伝導率が高いグレイン媒質が蛍光体素子に含まれていることが好ましい。
【0018】
なお、蛍光体層16Bは、上記の構成に限定されるものではなく、他の構成となっていてもよい。蛍光体層16Bは、例えば、蛍光物質を含む単結晶で構成されていてもよいし、蛍光物質と、蛍光物質とは異なる組成の材料との共晶もしくは焼成体であってもよい。
【0019】
透明層16Aは、可視波長域の光を透過する透明性を有する層である。透明層16Aは、蛍光体層16Bの裏面(放熱基板11側の面)に接している。透明層16Aは、例えば、蛍光体層16Bの裏面(放熱基板11側の面)に対して、スパッタもしくは蒸着することにより形成されている。透明層16Aは、蛍光体層16Bの裏面(放熱基板11側の面)に対して、スパッタもしくは蒸着するのに適した材料で形成されていることが好ましい。そのような材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、オキシ窒化ケイ素(SiOxNy)、ホウ素酸化物(BxOy)またはアルミニウム酸化物(AlxOy)が挙げられる。
【0020】
透明層16Aの裏面(放熱基板11側の面)の凹凸は、蛍光体層16Bの裏面の凹凸と比べてより平坦となっている。透明層16Aは、蛍光体層16Bの裏面に対してスパッタもしくは蒸着を行うことにより透明層16Aを形成したときに、上述の平坦性を担保可能な厚さとなっている。透明層16Aの厚さは、例えば、5nm以上、1μm以下となっている。透明層16Aの厚さは、透明層16Aにおける光吸収・光散乱の影響を低減する観点からは、できるだけ薄くなっていることが好ましく、例えば、5nm以上となっていることが好ましい。また、透明層16Aの厚さは、スパッタもしくは蒸着を行う際に妥当な処理時間となるような大きさとなっていることが好ましく、例えば、1μm以下となっていることが好ましい。また、透明層16Aの厚さは、表面プラズモンによる干渉によって発光寿命が短くなるのを避ける観点からは、後述の所定の範囲内となっていることが好ましい。透明層16Aの好ましい厚さについては、後に詳述する。
【0021】
反射層15は、蛍光体層16Bを励起するために励起光照射面10Aに照射した光や、蛍光体層16Bから発せられた蛍光を励起光照射面10Aに向かって反射するために設けられた層である。反射層15は、蛍光体層16Bを励起するために励起光照射面10Aに照射した光や、蛍光体層16Bから放射された蛍光に対して高反射率の金属材料(例えば、Ag、Al)、または、そのような金属材料を含む化合物で形成されている。反射層15は、例えば、蛍光体層16Bの裏面(放熱基板11側の面)に対して、スパッタもしくは蒸着することにより形成されている。
【0022】
放熱基板11は、蛍光体層16Bにおいて発生した熱を排熱するための基板である。放熱基板11は、熱伝導性の高い材料で形成されており、例えば、銅(Cu)およびモリブデン(Mo)の合金(Mo-Cu)、または、銅(Cu)およびタングステン(W)の合金(Mo-W)で形成されている。接合層12は、蛍光複合体16、反射層15および拡散防止層14を含む積層体を放熱基板11に接合するための層である。接合層12は、例えば、半田材料(例えば、スズ(Sn)および金(Au)を主成分とする合金)で形成されている。
【0023】
密着性向上層13は、蛍光複合体16、反射層15および拡散防止層14を含む積層体と、接合層12との密着性を向上させるための層であり、例えば、厚さ200nmのAu層で構成されている。密着性向上層13は、例えば、拡散防止層14の裏面(放熱基板11側の面)に対して、スパッタもしくは蒸着することにより形成されている。拡散防止層14は、接合層12や放熱基板11に含まれる金属材料が反射層15に拡散し、反射層15を変性させるのを防止する層である。拡散防止層14は、例えば、チタン(Ti)およびチタン化合物のうち少なくとも一方を含むチタン層である。拡散防止層14は、例えば、厚さ200nmの窒化チタン(TiN)層を厚さ100nmの2つのチタン(Ti)層で挟んだ多層膜となっている。拡散防止層14は、例えば、反射層15の裏面(放熱基板11側の面)に対して、スパッタもしくは蒸着することにより形成されている。
【0024】
次に、透明層16Aについて詳細に説明する。
図2は、蛍光複合体16および反射層15の断面写真である。
図3は、比較例に係る蛍光体および反射層の断面写真である。
【0025】
蛍光体層について、波長変換を行う蛍光体の母材としてYAGなどの高い硬度を持つ材料を用いた場合、研磨時に砥粒による凹凸や割れ、欠けなどが生じる可能性がある。そのような荒れた面へ反射層を積層した場合、平滑度の高い反射層が得られず、蛍光体層から発せられる発光が反射層にて正反射され難くなる可能性がある。例えば、母材としてYAGを用いた蛍光体層に直接、アルミニウム反射層を積層させた場合、
図3(A)、
図3(B)に示したように、蛍光体層の表面の平滑度の低さにつられて反射層が柱状に配向して形成される。この柱状配向は蛍光体層の表面の凹凸や欠け、割れの影響によるものであり、平滑度の高い鏡面が蛍光体層の表面に形成されていないことを示す。
【0026】
一方、蛍光体層16B上に透明層16Aを形成し、透明層16A上に反射層15を形成した場合には、蛍光体層16Bの表面の凹凸や欠け、割れが透明層16Aによって埋め込まれ、平滑度の高い面が透明層16Aに形成されるので、その面に積層された反射層15には、比較例のような柱状構造が大幅に削減されており、平滑度の高い鏡面が反射層15に形成される。従って、反射層15には、比較例のような反射層の機能低下はほとんど生じ得ない。
【0027】
また、透明層16Aを設けることで、反射層15の平滑度が向上するだけでなく、表面プラズモンによる干渉の影響を回避することも可能となる。表面プラズモンは特にAgもしくはAg化合物を反射層15に用いた場合に、蛍光体層16Bに可視光が照射されることで誘起される。そのため、可視域の発光デバイス10では、表面プラズモンによる干渉の影響が顕著に表れやすく、その影響を回避することが望ましい。そこで、Ag反射層を用い、屈折率1.83の蛍光体材料(例えば、YAG)を用いた際の、蛍光体材料に含まれる発光分子が励起されることによって誘起される双極子と、蛍光体材料から発せられた蛍光と、蛍光体材料に照射した励起光が反射層に到達し反射層を構成するAgの表面に誘起される表面プラズモンとが干渉することで発生する蛍光寿命の変化について、CPS理論から計算を行い、最適な透明材料の厚さを求めた。その結果を
図4に示す。
【0028】
図4において、横軸は透明層16Aの厚さであり、縦軸はプラズモンが発生していない場合の蛍光体発光寿命と、プラズモンの影響を受けた場合の蛍光体発光寿命との比率(発光寿命変動比率)である。蛍光体内の発光分子が励起され出現した双極子とAg表面に発生したプラズモンが相互作用する際、双極子とプラズモンとの距離に応じて、発光寿命変動比率は
図4に示したように増減する。発光寿命の相対的な減少は、蛍光体中の双極子からプラズモンへのエネルギー移転が発生することで発生するため、避けるべき現象である。よって、透明層16Aの厚さは、CPS理論によって求められた
図4のグラフのうち、蛍光体発光寿命比率が正へ振れている領域の厚さとなっていることが望ましい。具体的には、透明層16Aの厚さは、5nm以上185nm以下、210nm以上325nm以下、370nm以上470nm以下、または525nm以上615nm以下となっていることが望ましい。
【0029】
なお、蛍光体発光寿命比率が正となるというのは、表面プラズモンにより干渉(パーセル効果)により、蛍光寿命が長くなったことを意味する。また、蛍光体発光寿命比率がゼロとなるというのは、表面プラズモンにより干渉(パーセル効果)の影響がない、つまり、蛍光寿命が変化しないことを意味する。また、蛍光体発光寿命比率が負となるというのは、表面プラズモンにより干渉(パーセル効果)により、蛍光寿命が短くなった、つまり、非輻射遷移が増加したことを意味する。
【0030】
また、発光寿命が反射層15の無い場合に比べ長いということは、蛍光体の発光が比較的長時間持続するということに対応するため、透明層16Aを、上記変動比率曲線のうち、より数値が正に振れた変動比率を有する厚さにすることが望ましい。加えて、反射層15と蛍光体層16Bとの距離が透明層16Aによって離れれば離れるほど、蛍光体層16Bから発せられた蛍光が透明層16Aによる吸収・散乱などの影響で反射層15へ到達し難くなったり、反射層15で反射されて蛍光体層16Bの外へ放出され難くなったりする可能性がある。そのため、透明層16Aの厚さは可能な限り薄いことが望ましい。よって、CPS理論から導かれた透明層16Aの適切な層の厚さのうち、できるだけ薄い厚さを選択することが望ましい。よって、表面プラズモンによる干渉の影響を抑制するために望まれる透明層16Aの厚さは、5nm以上185nm以下である。
【0031】
上記結果は蛍光材料の屈折率が1.83の場合に適応される、透明層16Aの厚さを求めたものである。しかし、蛍光体材料の屈折率が変わった場合についても、CPS理論から適した厚さを求めることが可能である。例として、蛍光体材料の屈折率が1.5の場合の計算結果を
図5に示し、蛍光体材料の屈折率が2.2の場合の計算結果を
図6に示す。
【0032】
蛍光材料の屈折率が1.5のとき、表面プラズモンによる干渉の影響を抑制し、かつ薄さを維持するために適した領域は、6.5nm以上10nm以下、または70nm以上2330nm以下である。また、蛍光材料の屈折率が2.2のとき、表面プラズモンによる干渉の影響を抑制し、かつ薄さを維持するために適した領域は、0nmよりも大きく、280nm以下である。
図4、
図5、
図6からは、蛍光体発光寿命比率は屈折率が増えるとともに正の領域になる領域が増えており、透明層16Aの厚さの適した範囲は広がる傾向にある。
【0033】
なお、反射層15の材料としてAlもしくはAl化合物を用いた場合には、表面プラズモンによる干渉が発生したとしても、可視領域の光とは相互作用し難いため、透明層16Aの厚さとして、表面プラズモンによる干渉の影響を考慮する必要はない。しかし、配向性向上を目的とする場合には、透明層16Aの厚さを30nm以上とすることが望ましい。
【0034】
Ag、Al、Agを含む化合物、またはAlを含む化合物を反射層15として用いる場合の透明層16Aの厚さは、スパッタや蒸着を用いて透明層16Aや反射層15を成膜する場合、成膜時間との兼ね合いで、1μm以下となっていることが望ましい。
【0035】
[効果]
次に、本実施の形態に係る発光デバイス10の効果について説明する。
【0036】
近年、プロジェクタや、照明、ヘッドライトなどの光学製品において、高輝度化が進んでいる。従来、このような光学製品では、光源として水銀ランプやハロゲンランプ、LEDが用いられていた。しかし、高輝度化に伴い、蛍光体およびレーザを用いた光源が検討されている。この光源では、例えば、蛍光体にレーザ光を励起光として照射し、それにより得られる蛍光とレーザ光との合成光が出射光として利用される。
【0037】
しかし、蛍光体およびレーザを用いた光源では、入力および出力のパワーが非常に大きい。そのため、わずかなエネルギーロスであっても、そのエネルギーロスで発生した熱によって、蛍光体が発熱し、発光強度が著しく減少する、温度消光という現象が発生する。また、発熱は、蛍光体にとって寿命を縮める要因ともなる。そこで、蛍光体を回転機構に取り付け、励起光を照射する時に蛍光体を回転させ、照射面を断続的に移動させることで単位面積当たりの照射時間を短縮し、温度消光の発生を抑制することが考えられる。しかし、この方法では、回転機構を設けたことによる光学製品の機構的信頼性の低下、大型化、高騒音化が課題となる。そこで、蛍光体を回転させる代わりに、蛍光体の裏面に放熱基板を貼り合わせ、蛍光体で発生した熱を放熱基板へ逃がすことが考えられる(例えば、特許文献1~3参照)。
【0038】
ところで、蛍光体から発せられた蛍光が放熱基板に吸収されるのを避けるため、蛍光体と放熱基板との間に反射層が設けられる。しかし、単に反射層を設けただけでは、発光効率がさほど向上しない場合があった。発光効率がさほど向上しない原因は、主に2つある。
【0039】
1つ目は、反射層に生じる柱状配向である。蛍光体層について、波長変換を行う蛍光体の母材としてYAGなどの高い硬度を持つ材料を用いた場合、研磨時に砥粒による凹凸や割れ、欠けなどが生じる可能性がある。そのような荒れた面へ反射層を積層した場合、蛍光体層の表面の平滑度の低さにつられて反射層が柱状に配向して形成される。反射層が柱状に配向すると、反射層で正反射し難くなり、発光効率が低下する可能性がある。従って、反射層に生じる柱状配向を低減することが、発光効率の向上にとって重要である。
【0040】
2つ目は、蛍光体と反射層との距離が近いために、表面プラズモンによる干渉の影響を受け、発光状態に変化が生じる場合である。蛍光現象による発光では、発光分子は励起エネルギーを照射されることで双極子となる。また、蛍光現象による発光及び励起光が金属層へ到達することで発生する表面プラズモンも、発光層にある発光分子同様、双極子として振る舞う。このとき、発光層に発生した双極子と金属性反射層表面の表面プラズモンとで干渉が発生する。この干渉は、発光分子と表面プラズモンとの間の距離に応じて、発光分子から表面プラズモンへエネルギー移動が生じることで発光分子の発光寿命に変化が生じる場合がある。特に銀反射膜における蛍光現象による発光との相互作用はCPS理論として知られており、銀反射膜上に誘起される表面プラズモンが発光分子の蛍光寿命に及ぼす影響が調べられている(非特許文献「R.R. Chance, A. Prock, and R., Silbey:"Life time of an emitted molecule near a partially reflecting surfaces, " J. Chem. Phys, 60, 2744-2748 (1974)」)。
【0041】
CPS理論によると、蛍光現象による発光の寿命は銀反射層境界から発光分子までの位置の関数として極大極小を繰り返す。このような表面プラズモンによる発光分子の蛍光寿命への影響は、発光寿命の変化だけにとどまらず、発光の特性を変化させる可能性があるため回避すべき現象である。特に、発光寿命が短縮した場合は発光分子から表面プラズモン分子へエネルギー移動が発生し、発光量の減少につながるなどの影響を及ぼす可能性があり回避するべきである。
【0042】
そこで、本発明では、これらの事情を考慮し、表面プラズモンによる影響を可能な限り排除し、かつ蛍光体を高効率かつ長期的な耐候性を担保するための構造を備えた発光デバイスを提案する。
【0043】
具体的には、本実施の形態に係る発光デバイス10では、蛍光体層16Bと反射層15との間に、蛍光体層16Bの裏面(励起光照射面10Aとは反対側の面)の凹凸よりも小さな凹凸の表面を裏面(励起光照射面10Aとは反対側の面)に有する透明層16Aが設けられている。これにより、平坦性の高い透明層16Aに反射層15を形成したときに、蛍光体層16Bの裏面に直接、反射層を形成したときに形成されるような柱状配向が反射層15に形成されるのを低減することができる。その結果、反射層15で正反射し易くなるので、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10では、蛍光体層16Bは、蛍光物質を含む単結晶、または、蛍光物質と、蛍光物質とは異なる組成の材料との共晶もしくは焼成体で構成されている。このとき、蛍光体層16Bと反射層15との間に、蛍光体層16Bの裏面の凹凸よりも小さな凹凸の表面を裏面に有する透明層16Aが設けられているので、柱状配向が反射層15に形成されるのを低減することができる。その結果、反射層15で正反射し易くなるので、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10において、反射層15が、Ag、Al、Agを含む化合物、または、Alを含む化合物で構成されている場合には、高反射率の反射層15を実現することができる。その結果、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10において、透明層16Aが、酸化ケイ素(SiO2)、オキシ窒化ケイ素(SiOxNy)、ホウ素酸化物(BxOy)またはアルミニウム酸化物(AlxOy)で構成されている場合には、透明層16Aをスパッタもしくは蒸着で形成することが可能である。スパッタもしくは蒸着で透明層16Aを形成した場合、透明層16Aの厚さを、蛍光体層16Bの裏面の凹凸の高さよりも厚く形成することで、透明層16Aの裏面を蛍光体層16Bの裏面よりも平坦化することができる。その結果、反射層15で正反射し易くなるので、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10において、透明層16Aの厚さが5nm以上1μm以下となっている場合には、スパッタもしくは蒸着を用いて、透明層16Aを容易に形成することができる。これにより、透明層16Aの裏面を蛍光体層16Bの裏面よりも平坦化することができ、反射層15で正反射し易くなるので、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10において、透明層16Aは、反射層15に誘起される表面プラズモンによる干渉によって発光寿命変動比率が正となる範囲内の厚さとなっている場合には、蛍光体の発光が比較的長時間持続する。これにより、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10において、反射層15がAgまたはAgを含む化合物で構成され、透明層16Aが酸化ケイ素(SiO2)で構成され、蛍光体層16Bが、Ceが添加されたYAG単結晶もしくはYAG多結晶と、サファイア単結晶もしくはサファイア多結晶との共晶で構成されている場合に、透明層16Aの厚さが5nm以上185nm以下、210nm以上325nm以下、370nm以上470nm以下、または525nm以上615nm以下となっているときには、蛍光体の発光が比較的長時間持続する。これにより、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10において、反射層15がAlまたはAlを含む化合物で構成され、透明層16Aが酸化ケイ素(SiO2)で構成されている場合に、透明層16Aの厚さが5nm以上1μm以下となっているときには、蛍光体の発光が比較的長時間持続する。これにより、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0051】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10では、放熱基板11が設けられている。これにより、蛍光体層16Bにおいて発生した熱を効率よく排熱することができるので、温度消光の発生を抑制することができる。その結果、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10では、反射層15と接合層12との間に、チタン(Ti)およびチタン化合物のうち少なくとも一方を含む拡散防止層14が設けられている。これにより、接合層12や放熱基板11に含まれる金属材料が反射層15に拡散し、反射層15を変性させるのを防止することができる。その結果、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0053】
また、本実施の形態に係る発光デバイス10では、拡散防止層14と接合層12との間に密着性向上層13が設けられている。これにより、蛍光複合体16、反射層15および拡散防止層14を含む積層体と、接合層12との密着性が向上するので、蛍光体層16Bにおいて発生した熱を効率よく排熱することができ、温度消光の発生を抑制することができる。その結果、発光デバイス10の発光効率を向上させることができる。
【0054】
<2.適用例>
以下に、上記実施の形態の発光デバイス10の適用例について説明する。なお、以下では、上記実施の形態と共通の構成要素に対しては、上記実施の形態で付されていた符号と同一の符号が付される。また、上記実施の形態と異なる構成要素の説明を主に行い、上記実施の形態と共通の構成要素の説明については、適宜、省略するものとする。
【0055】
[適用例A]
図7は、上記実施の形態の発光デバイス10を備えた光源デバイス100の概略構成例を表したものである。光源デバイス100は、例えば、発光デバイス10、レンズ20および青色励起光源30を備えている。青色励起光源30は、例えば、青色光Lbを出射するレーザである。青色励起光源30は、発光デバイス10の励起光照射面10Aに青色光Lbを照射することの可能な位置に配置されている。光源デバイス100において、発光デバイス10は、青色励起光源30から青色光Lbが照射されると、黄色光Ly(蛍光)を放射する蛍光体層16Bを含んで構成されている。レンズ20は、発光デバイス10で反射された青色光Lbと、発光デバイス10から放射された黄色光Lyとを合成するとともに集光し、疑似白色光Lwをコリメート光として外部に出力する光学部品である。このように、本適用例では、光源デバイス100に発光デバイス10が用いられる。これにより、光源デバイス100から疑似白色光Lwを高出力で出力することが可能である。
【0056】
[適用例B]
図8は、上記実施の形態の発光デバイス10を備えた光源デバイス200の概略構成例を表したものである。光源デバイス200は、例えば、発光デバイス10、リフレクタ40および青色励起光源30を備えている。光源デバイス200において、発光デバイス10は、青色励起光源30から青色光Lbが照射されると、黄色光Lyを放射する蛍光体層16Bを含んで構成されている。青色励起光源30は、例えば、青色光Lbを出射するレーザである。リフレクタ40は、放物曲面を有する反射鏡を有しており、反射鏡の焦点の位置に、発光デバイス10が配置されている。発光デバイス10は、励起光照射面10Aが反射鏡の放物曲面の原点と正対するように配置されており、反射鏡の放物曲面の原点には、開口が設けられている。青色励起光源30は、反射鏡の開口を介して発光デバイス10に青色光Lbを照射することの可能な位置に配置されている。リフレクタ40は、発光デバイス10で反射された青色光Lbと、発光デバイス10から放射された黄色光Lyとを反射鏡で反射するとともに合成し、疑似白色光Lwをコリメート光として外部に出力する光学部品である。本適用例では、光源デバイス200に発光デバイス10が用いられている。これにより、光源デバイス200から疑似白色光Lwを高出力で出力することが可能である。
【0057】
[適用例C]
図9は、上記適用例Aに係る光源デバイス100の概略構成の一変形例を表したものである。
図10は、上記適用例Bに係る光源デバイス200の概略構成の一変形例を表したものである。本適用例では、光源デバイス100,200は、発光デバイス10で反射された青色光Lbと、発光デバイス10から放射された黄色光Lyとの合成光に含まれる青色光Lbを遮断もしくは減衰し、黄色光Lyを選択的に透過するフィルタ50を備えている。本適用例では、フィルタ50が設けられていることにより、光源デバイス100,200からは、黄色光Lyが外部に出力される。本適用例では、光源デバイス100,200には発光デバイス10が用いられている。これにより、光源デバイス100,200から黄色光Lyを高出力で出力することが可能である。
【0058】
[適用例D]
図11は、上記適用例Aに係る光源デバイス100の概略構成の一変形例を表したものである。
図12は、上記適用例Bに係る光源デバイス200の概略構成の一変形例を表したものである。本適用例では、光源デバイス100,200は、青色励起光源30の他に、赤色光源60を備えている。赤色光源60は、例えば、赤色光Lrを出射するレーザである。赤色光源60は、発光デバイス10の励起光照射面10Aに赤色光Lrを照射することの可能な位置に配置されている。
【0059】
レンズ20は、発光デバイス10で反射された青色光Lbおよび赤色光Lrと、発光デバイス10から放射された黄色光Lyとを合成するとともに集光し、疑似白色光Lwをコリメート光として外部に出力する光学部品である。リフレクタ40は、発光デバイス10で反射された青色光Lbおよび赤色光Lrと、発光デバイス10から放射された黄色光Lyとを反射鏡で反射するとともに合成し、疑似白色光Lwをコリメート光として外部に出力する光学部品である。
【0060】
本適用例では、光源デバイス100,200には発光デバイス10が用いられている。これにより、光源デバイス100,200から疑似白色光Lwを高出力で出力することが可能である。また、本適用例では、赤色光源60が設けられているので、上記変形例A,Bと比べて、演色性を格段に向上させることができる。
【0061】
[適用例E]
図13は、上記適用例A~Dに係る光源デバイス100,200を備えた電子機器1000の概略構成例を表したものである。電子機器1000は、例えば、プロジェクタ、照明、ヘッドライト、サーチライト、内視鏡などの光学製品である。電子機器1000は、例えば、
図13に示したように、上記適用例A~Dに係る光源デバイス100,200と、上記適用例A~Dに係る光源デバイス100,200から入力された光(疑似白色光Lw,黄色光Ly)を光学的に処理し、それにより得られた光を出力光Loutとして外部に出力する光学系300とを備えている。電子機器1000は、さらに、例えば、
図13に示したように、上記適用例A~Dに係る光源デバイス100,200や、光学系300を制御する制御部400を備えている。本適用例では、電子機器1000には上記適用例A~Dに係る光源デバイス100,200が用いられている。これにより、電子機器1000から高出力の出力光Loutを出力することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…発光デバイス、10A…励起光照射面、11…放熱基板、12…接合層、13…密着性向上層、14…拡散防止層、15…反射層、16…蛍光複合体、16A…透明層、16B…蛍光体層、20…レンズ、30…青色励起光源、40…リフレクタ、50…フィルタ、60…赤色光源、100,200…光源デバイス、300…光学系、400…制御部、1000…電子機器、Lb…青色光、Lr…赤色光、Ly…黄色光、Lw…疑似白色光。