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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20240809BHJP
   A61B 3/107 20060101ALI20240809BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A61B3/13
A61B3/107
A61F9/007 200C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020199420
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087476
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 有司
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐美子
(72)【発明者】
【氏名】李 福実
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-250822(JP,A)
【文献】国際公開第2015/042120(WO,A1)
【文献】特開2012-152469(JP,A)
【文献】特開2006-136714(JP,A)
【文献】特開2014-198277(JP,A)
【文献】特表2011-528592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0039510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
A61F 9/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の前眼部画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記前眼部画像において特徴点を入力する特徴点入力部と、を備えており、
前記表示部は、前記特徴点が入力されたときに、
前記被検眼に対して算出された乱視軸を示す乱視軸線と、前記特徴点を通過する経線を示す特徴線の一方を前記前眼部画像に重畳した重畳画像と、
前記乱視軸線と前記特徴線のうち前記前眼部画像に重畳して表示された線に対して前記前眼部画像に重畳して表示されなかった線の角度を示す模式図と、を同一画面上に表示可能となっている、眼科装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記特徴線を前記被検眼の前記前眼部画像に重畳して表示し、
前記模式図は、前記特徴線に対応する線と、前記乱視軸線に対応する線と、を図示している、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記模式図は、被検眼内の切開位置を示す切開線をさらに図示している、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記模式図は、被検眼内に挿入されるトーリックIOLの輪郭を示す輪郭線をさらに図示している、請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記模式図を、表示画像内の第1の位置から前記第1の位置とは異なる第2の位置に移動して表示可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記重畳画像は、平面視すると矩形状の輪郭線を有しており、
前記第1の位置は、前記重畳画像の4つのコーナ部の1つであり、
前記第2の位置は、前記重畳画像の4つのコーナ部の他の1つである、請求項5に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、眼科装置に関する。詳細には、被検眼の乱視軸に関する情報を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の乱視軸に関する情報を検査者に提示する眼科装置が開発されている。例えば、特許文献1には、被検眼の乱視軸を算出し、被検眼の前眼部画像に乱視軸を重畳して表示する眼科装置が開示されている。特許文献1の眼科装置では、前眼部画像上には、被検眼内の特徴点を通る経線が乱視軸と共に重畳して表示されている。これにより、検査者は、表示画像から特徴点を通る経線に対する乱視軸の角度を視覚的に把握可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-250822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の眼科装置では、特徴点を通る経線と乱視軸が前眼部画像に重畳して表示されている。このため、特許文献1の眼科装置では、前眼部画像上に多くの情報が重畳されて表示されることになり、それらの情報によって前眼部像の特徴部分(例えば、虹彩の模様、結膜の血管等)を視認し難くなる。その結果、被検眼の前眼部像と、実際の前眼部との対比が難しくなる場合があった。
【0005】
本明細書は、前眼部画像を確認し易くしながら、被検眼の乱視軸を把握し易くする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する眼科装置は、被検眼の前眼部画像を表示する表示部と、表示部に表示された前眼部画像において特徴点を入力する特徴点入力部と、を備えている。表示部は、特徴点が入力されたときに、被検眼に対して算出された乱視軸を示す乱視軸線と、特徴点を通過する経線を示す特徴線の一方を前眼部画像に重畳した重畳画像と、乱視軸線と特徴線のうち前眼部画像に重畳して表示された線に対して前眼部画像に重畳して表示されなかった線の角度を示す模式図と、を同一画面上に表示可能となっている。
【0007】
上記の眼科装置では、特徴線と乱視軸線とがなす角度を模式図を用いて図示することで、特徴線と乱視軸線の両者を前眼部画像上に重畳して表示する必要がなくなる。このため、乱視軸の角度を検査者に把握可能としながら、前眼部画像上に重畳される情報を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る眼科装置の概略構成を示す図。
図2】被検眼の乱視軸の角度を表示する処理の一例を示すフローチャート。
図3】表示部に表示される前眼部画像と模式図の一例を示す図。
図4】模式図の一例を示す図。
図5】輪郭線内における模式図の移動の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
(特徴1)本明細書が開示する眼科装置では、表示部は、特徴線を被検眼の前眼部画像に重畳して表示してもよい。模式図は、特徴線に対応する線と、乱視軸線に対応する線と、を図示していてもよい。このような構成によると、模式図に特徴線に対応する線と乱視軸線に対応する線を表示することにより、検査者は、特徴線に対する乱視軸の角度を視覚的に把握し易くなる。また、前眼部画像に特徴線を重畳して表示すると共に、模式図に特徴線に対応する線を図示することにより、模式図と前眼部画像とを対比させて被検眼の乱視軸を把握することが容易になる。
【0011】
(特徴2)本明細書が開示する眼科装置では、模式図は、被検眼内の切開位置を示す切開線をさらに図示していてもよい。このような構成によると、前眼部画像に重畳する情報を増やすことなく、検査者は、切開位置を容易に把握することができる。
【0012】
(特徴3)本明細書が開示する眼科装置では、模式図は、被検眼内に挿入されるトーリックIOLの輪郭を示す輪郭線をさらに図示していてもよい。このような構成によると、前眼部画像に重畳する情報を増やすことなく、検査者は、被検眼内に挿入されるトーリックIOLの位置を容易に把握することができる。
【0013】
(特徴4)本明細書が開示する眼科装置では、表示部は、模式図を、表示画像内の第1の位置から第1の位置とは異なる第2の位置に移動して表示可能であってもよい。例えば、模式図によって、前眼部画像が見難くなることがある。模式図の表示位置が移動可能に構成されていることによって、前眼部画像を確認し難くなることを回避することができる。
【0014】
(特徴5)本明細書が開示する眼科装置では、重畳画像は、平面視すると矩形状の輪郭線を有していてもよい。第1の位置は、重畳画像の4つのコーナ部の1つであってもよい。第2の位置は、重畳画像の4つのコーナ部の他の1つであってもよい。このような構成によると、模式図は、移動前後においていずれも重畳画像のコーナ部に配置される。重畳画像において、検査者が確認したい主要部分(例えば、被検眼の角膜や虹彩の部分)は中央に配置され易く、周辺部、特にコーナ部には主要部分が比較的配置され難い。模式図がコーナ部に配置されることにより、模式図の移動前後のいずれにおいても、模式図を前眼部画像の主要部分に重なり難くすることができる。
【実施例
【0015】
図面を参照して、実施例に係る眼科装置10について説明する。図1に示すように、眼科装置10は、撮影部12と、入力部14と、表示部16と、制御部18を備えている。
【0016】
撮影部12は、被検眼を正面から撮影した画像(以下、前眼部画像ともいう)を生成するために、被検眼を正面から撮影するように構成されている。なお、撮影部12では、被検眼の前眼部画像を撮影できるように構成されていればよく、撮影方式については特に限定されない。また、撮影部12は、被検眼に同心円状の複数のリング光を投影し、被検眼からの反射像(複数のリング像)を撮影可能に構成されている。撮影された複数のリング像を制御部18が解析することで、角膜形状マップが生成される。なお、撮影部12は、さらに光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いて被検眼の前眼部の断層画像を撮影するように構成されていてもよい。なお、被検眼の前眼部の断層画像の撮影方法についても特に限定されない。また、撮影部12は、公知の眼科装置に用いられるものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0017】
入力部14は、検査者から各種の情報の入力を受け付けるように構成されている。検査者が入力する情報としては、例えば、被検眼の前眼部画像における特徴点30(図3参照)を挙げることができる。特徴点30は、被検眼の前眼部画像内において、検査者が被検眼の特徴が表れていると考える部位であり、例えば、被検眼の血管や虹彩紋理、又は検査者により被検眼内に印されたマーキング等である。本実施例では、入力部14は、マウス及びキーボード等の入力装置である。検査者が、前眼部画像上の特徴点30を特定し、入力部14によって特定した特徴点30を入力する。また、入力部14は、特徴点以外の被検眼に関する各種の情報(例えば、切開位置、ケラト値、切開角度、惹起乱視等)についても入力可能に構成されている。表示部16は、被検眼に関する各種の情報を表示するように構成されている。本実施例では、表示部16は、モニタ等の表示装置である。表示部16に表示される情報としては、撮影部12で撮影された被検眼の前眼部画像と、後述する模式図40が含まれる。なお、本実施例では、入力部14と表示部16が別個に設けられているが、このような構成に限定されない。入力部と表示部は、一体で構成されていてもよく、例えば、タッチパネル等であってもよい。
【0018】
制御部18は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。制御部18は、撮影部12、入力部14及び表示部16に接続されており、撮影部12、入力部14及び表示部16を制御している。
【0019】
次に、被検眼の乱視軸の角度を表示する処理について説明する。被検眼にトーリックIOLを挿入する際には、被検眼の乱視軸に合わせてトーリックIOLを正確な角度で挿入する必要がある。本実施例の眼科装置10では、トーリックIOLを正確に挿入するために、被検眼の乱視軸の角度等の情報を表示する。
【0020】
図2に示すように、まず、制御部18は、被検眼の前眼部画像を取得する(S12)。具体的には、撮影部12において被検眼の前眼部の断層画像が撮影され、撮影された断層画像が制御部18に入力される。被検眼の前眼部画像を取得すると、制御部18は、取得した被検眼の前眼部画像を表示部16に表示させる(S14)。
【0021】
次いで、制御部18は、被検眼の特徴点30(図3参照)が入力されたか否かを判断する(S16)。具体的には、検査者が、表示部16に表示される被検眼の前眼部画像内の特徴点30(例えば、血管、虹彩紋理又はマーキング等)を特定し、入力部14を介して特定した特徴点30を入力する。制御部18は、特徴点30が入力されるまで待機する(ステップS16でNO)。
【0022】
特徴点30が入力されると(ステップS16でYES)、制御部18は、前眼部画像に特徴線32(図3参照)を重畳して表示する(S18)。特徴線32とは、角膜頂点と特徴点30を通過する直線(経線)である。制御部18は、ステップS16で入力された特徴点30を通過するように特徴線32を生成し、生成した特徴線32を前眼部画像に重畳して表示する。
【0023】
次いで、制御部18は、模式図40を生成する(S20)。模式図40は、被検眼の特徴線32と乱視軸との間の角度を示す図である。図4に示すように、模式図40は、略円形であり、被検眼の特徴線32に対応する線42(以下、単に「特徴線42」ともいう)と、被検眼の乱視軸を示す乱視軸線44と、被検眼を切開する際の切開位置を示す切開線46と、トーリックIOLの輪郭を示すトーリックIOL輪郭線48を備えている。
【0024】
特徴線42は、模式図40の中心を通過する直線であって、前眼部画像と模式図40を同一画面上に表示したときに、前眼部画像に重畳される特徴線32と平行な直線となる。乱視軸線44は、模式図40の中心を通過する直線(具体的には、強主経線又は弱主経線)であり、前眼部画像と模式図40を同一画面上に表示したときに、被検眼の乱視軸(強主経線又は弱主経線)と平行な直線となる。本実施例では、乱視軸は、制御部18において算出される。具体的には、制御部18は、撮影部12で撮影された画像から角膜形状マップを生成し、生成した角膜形状マップから乱視軸を算出する。なお、角膜形状マップの生成方法は、公知の方法を用いて生成でき、また、角膜形状マップから乱視軸を算出する方法も、公知の方法を用いることができるため、これらの詳細な説明は省略する。模式図40が特徴線42と乱視軸線44を備えることにより、検査者は、模式図40から被検眼の特徴線32と乱視軸との間の相対角度を把握することができる。また、図4に示すように、模式図40には、角度を示す目盛りが設けられている。これにより、検査者は、被検眼の特徴線32と乱視軸との間の相対角度を把握し易くなる。
【0025】
切開線46は、トーリックIOLを挿入するための切開位置を示す線である。切開線46は、検査者によって入力された切開位置に基づいて決定されてもよいし、特徴点30の位置に基づいて決定されてもよい。トーリックIOL輪郭線48は、被検眼内にトーリックIOLが挿入された後のトーリックIOLの配置予定位置を示す。トーリックIOL輪郭線48は、被検眼のケラト値、切開角度、惹起乱視等の情報に基づいて算出される。本実施例では、制御部18は、撮影部12で撮影された画像を用いて生成された角膜形状マップから被検眼のケラト値、切開角度、惹起乱視等の情報を算出する。なお、被検眼のケラト値、切開角度、惹起乱視等の情報は、入力部14を介して検査者が入力してもよい。
【0026】
模式図40が生成されると、制御部18は、生成した模式図40を表示部16に表示させる(S22)。図3に示すように、前眼部画像は、矩形状の輪郭線60を有している。制御部18は、模式図40を輪郭線60の内部の予め設定された位置に表示させる。本実施例では、制御部18は、模式図40を輪郭線60内の右下のコーナ部62付近に表示させる。
【0027】
次いで、制御部18は、ステップS22で輪郭線60内に表示した模式図40が、前眼部画像の特徴部位と重なっているか否かを判定する(S24)。輪郭線60内には、前眼部と共に、上眼瞼や下眼瞼等の被検者の皮膚の画像も表示されている。前眼部は輪郭線60の中央付近に表示され、輪郭線60の4つのコーナ部付近にはあまり表示されないことが多い。本実施例では、模式図40は、輪郭線60内の右下のコーナ部62付近に表示される。このため、模式図40のほとんどは被検者の皮膚の画像と重なるが、前眼部の大きさや輪郭線60に対する前眼部の表示位置によっては、模式図40が前眼部と部分的に重なることもある。ただし、模式図40が前眼部と部分的に重なる場合であっても、被検眼内の特徴部位と重ならなければ、模式図40によって被検眼が把握し難くなることはない。ここで、被検眼内の特徴部位は、被検眼内の血管、虹彩紋理又はマーキングした部分であり、上述した特徴点30と同一であってもよいし、特徴点30と共に特徴点30以外の血管、虹彩紋理又はマーキングした部分も含んでいてもよい。模式図40がこのような特徴部位と重なると、被検眼を把握し難くなることがある。このため、制御部18は、ステップS22で模式図40を輪郭線60内に表示したことにより、模式図40が特徴部位と重なっているか否かを判定する。具体的には、まず、制御部18は、前眼部画像を解析し、特徴部分を特定する。そして、制御部18は、特定した特徴部分とステップS22で表示した模式図40が重なっているか否かを判定する。
【0028】
模式図40が特徴部位と重なっている場合(ステップS24でYES)、制御部18は、模式図40の表示位置を変更する(S26)。具体的には、制御部18は、模式図40を、ステップS22で表示した位置から移動先として設定されている別の位置に移動させる。例えば、本実施例では、ステップS22において、模式図40は、輪郭線60内の右下のコーナ部62付近に表示される。模式図40が特徴部位と重なる場合には、図5に示すように、制御部18は、模式図40を輪郭線60内の右下のコーナ部62付近から左下のコーナ部64付近に移動させる。これにより、特徴部位と重なることなく、模式図40を輪郭線60内に表示することができる。一方、模式図40が特徴部位と重なっていない場合(ステップS24でNO)、制御部18は、ステップS26をスキップし、処理を終了する。
【0029】
本実施例では、前眼部画像には特徴線32のみを重畳し、その他の乱視軸線、切開線及びトーリックIOL輪郭線は重畳しない。このように、前眼部画像に重畳する情報を低減することによって、検査者が前眼部画像(特に、特徴部位)を把握し難くなることを回避することができる。また、乱視軸線44、切開線46及びトーリックIOL輪郭線48は、特徴線42と共に模式図40によって図示し、模式図40は、前眼部画像と同一画面上に表示される。前眼部画像と同一画面上に、上記の各種情報を図示した模式図40を表示することによって、前眼部画像に重畳することなく、各種情報を検査者に示すことができる。特徴線32、42は、前眼部画像と模式図40の両方に示されている。このため、検査者は、特徴線32、42を基準として、模式図40に図示される乱視軸線44、切開線46及びトーリックIOL輪郭線48のそれぞれが前眼部画像のどの位置に対応するのかを容易に把握することができる。このように、模式図40により、前眼部画像が見易い状態を維持したまま、トーリックIOL挿入に関する各種の情報を把握することができる。
【0030】
なお、本実施例では、ステップS16において検査者が被検眼の特徴点30を入力していたが、このような構成に限定されない。例えば、制御部18が前眼部画像を解析して特徴点30を特定してもよい。また、制御部18が1つ以上の特徴点30となり得る部位を検出して検査者に提示し、検査者が提示された1つ以上の部位から1つを選択し、選択した部位を特徴点30としてもよい。
【0031】
また、本実施例では、乱視軸は、被検眼の断層画像から生成された角膜形状マップに基づいて算出されたが、このような構成に限定されない。例えば、乱視軸に関する情報は、外部から入力されてもよく、また、角膜形状マップや乱視軸に関する情報についても、外部から入力されてもよい。また、本実施例では、角膜形状マップは、撮影部12で撮影された複数のリング像から生成されたが、このような構成に限定されない。撮影部は、角膜形状マップを生成可能な方法で被検眼を撮影すればよく、被検眼の撮影方法については特に限定されない。
【0032】
また、本実施例では、前眼部画像に特徴線32を重畳したが、このような構成に限定されない。前眼部画像には、特徴線32を重畳する代わりに乱視軸線のみが重畳されていてもよい。この場合には、前眼部画像と模式図40の両方に乱視軸線が示されることになる。このため、検査者は、乱視軸線を基準として、模式図40に図示される特徴線42、切開線46及びトーリックIOL輪郭線48のそれぞれが前眼部画像のどの位置に対応するのかを容易に把握することができる。
【0033】
また、本実施例では、制御部18において模式図40が前眼部画像内の特徴部位と重なるか否かを判定し、両者が重なる場合には制御部18が模式図40を移動させていたが、このような構成に限定されない。制御部18が自動で模式図40を移動させる代わりに、検査者が模式図40を移動させるか否かを判断し、手動で模式図40を移動するように指示してもよい。
【0034】
また、本実施例では、模式図40は最初に右下のコーナ部62付近に表示され、模式図40が前眼部画像の特徴部位と重なる場合には左下のコーナ部64付近に移動されたが、このような構成に限定されない。模式図40が最初に表示される位置は、右下のコーナ部62以外の他のコーナ部付近であってもよいし、4つのコーナ部以外の位置であってもよい。また、模式図40が最初に表示される位置は、検査者が所望の位置に設定してもよい。また、模式図40を移動する位置についても、特に限定されない。例えば、検査者が輪郭線60内の所望の位置に自由に移動してもよい。また、4つのコーナ部付近等の複数の位置を移動先として設定し、設定した複数の位置のうちのどこに移動するのを検査者が選択できるようにしてもよい。さらに、模式図40が最初に表示される位置は、予め設定した位置であってもよいし、前回移動させた位置であってもよい。あるいは、以前に移動させた位置を記憶させておき、記憶された位置のうち最も多い位置を模式図40が最初に表示される位置としてもよい。また、同一の被検者において一方の眼(例えば、右眼)について上記の処理を実行した後、続けて他方の眼(例えば、左眼)について上記の処理を実行する場合には、一方の眼において模式図40を表示した位置(移動した場合には、移動後の位置)に基づいて、他方の眼において最初に模式図40を表示する位置を決定してもよい。例えば、他方の眼において最初に模式図40を表示する際に、一方の眼において模式図40を表示した位置と同じ位置に模式図40を表示してもよいし、一方の眼において模式図40を表示した位置と対称の位置に模式図40を表示してもよい。
【0035】
また、模式図40を表示する際の模式図40の大きさは、検査者によって変更できるように構成されていてもよい。また、模式図40を表示する際の模式図40の色についても、検査者によって変更できるように構成されていてもよい。
【0036】
また、本実施例では、模式図40は、特徴線42、乱視軸線44、切開線46及びトーリックIOL輪郭線48を図示していたが、このような構成に限定されない。模式図は、特徴線と乱視軸線とがなす角度が把握できるように図示されていればよく、上記の線42、44、46、48の全てが図示されていなくてもよい。また、模式図として図示する線の種類を検査者が設定・変更できるように構成されていてもよい。あるいは、検査者が模式図40に含まれる線42、44、46、48のうちのいずれかを選択すると、選択した線が模式図40から消えたり、消えた線を再び図示したりできるように構成されていてもよい。例えば、検査者が模式図40を選択(例えば、入力部14であるマウスにより選択)すると、模式図40の設定画面が表示され、検査者が設定画面から模式図40に図示する線の種類を設定できるように構成されていてもよい。
【0037】
また、本実施例では、模式図40の乱視軸線44は、被検眼の乱視軸(強主経線又は弱主経線)に相当する直線(すなわち、前眼部画像と模式図40を同一画面上に表示したときに、被検眼の乱視軸と平行な直線)であったが、このような構成に限定されない。例えば、乱視軸線は、被検眼の乱視軸に基づいて計算されたトーリックIOLを挿入する角度を示す直線(例えば、切開による惹起乱視を考慮した切開後の乱視軸に相当する直線)であってもよい。
【0038】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
10:眼科装置
12:撮影部
14:入力部
16:表示部
18:制御部
30:特徴点
32:前眼部画像の特徴線
40:模式図
42:模式図の特徴線
44:乱視軸線
46:切開線
48:トーリックIOL輪郭線
60:前眼部画像の輪郭線
62、63:コーナ部
図1
図2
図3
図4
図5