(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】船外プロペラシャフトを備える多軸船のための配置構成、及び、該配置構成の製造方法
(51)【国際特許分類】
B63H 5/16 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
B63H5/16 Z
B63H5/16 D
(21)【出願番号】P 2021153405
(22)【出願日】2021-09-21
(62)【分割の表示】P 2016041381の分割
【原出願日】2016-03-03
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2015 103 285.6
(32)【優先日】2015-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509255794
【氏名又は名称】ベッカー マリン システムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レーマン ディルク
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4804312(US,A)
【文献】特許第5357319(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0124205(KR,A)
【文献】米国特許第7798875(US,B1)
【文献】特開2010-64740(JP,A)
【文献】特開昭58-493(JP,A)
【文献】実公第17359(大正14年)(JP,Y1T)
【文献】特開昭59-202991(JP,A)
【文献】特開平7-89488(JP,A)
【文献】特開2009-214866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 5/08, 5/16,25/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外プロペラシャフト(12)を備える多軸船のための配置構成(100)であって、該配置構成(100)は、
前記船外プロペラシャフト(12)を支持するための少なくとも2つのシャフトブラケット(10)であって、前記少なくとも2つのシャフトブラケット(10)はそれぞれ、該シャフトブラケット(10)を前記多軸船に固定するための少なくとも1つのシャフトブラケットアーム(11a、11b、11c)を有する、少なくとも2つのシャフトブラケット(10)と、
前記多軸船の所要駆動力を低減するための少なくとも2つの装置(20)であって、各装置(20)は前記少なくとも2つのシャフトブラケット(10)の1つに割り当てられ、前記少なくとも2つの装置(20)のそれぞれが少なくとも1つの水中翼を備える、少なくとも2つの装置(20)と
を備え、
前記少なくとも2つの装置(20)のそれぞれは前方ノズル(30)を備え、かつ、前記少なくとも2つの装置(20)のそれぞれは、水中翼として形成された少なくとも1つのフィン(40a、40b、40c、40d)を備え、前記少なくとも1つのフィン(40a、40b、40c、40d)は、前記前方ノズル(30)の内側に及び前記前方ノズル(30)の外側に配置されて
おり、前記少なくとも1つのフィン(40a、40b、40c、40d)は、ねじれるように形成されており、前記少なくとも1つの水中翼は、その長手方向に沿って見たときに異なるプロファイル厚を有し、前記少なくとも1つの水中翼のプロファイルは、プロファイル厚に関して、前記シャフトブラケット(10)に面する端部から前記シャフトブラケット(10)に面する側とは反対の端部に向かってテーパが付けられていることを特徴とする、配置構成(100)。
【請求項2】
シャフトブラケット(10)の前記少なくとも1つのシャフトブラケットアーム(11a、11b、11c)は、前記少なくとも2つの装置(20)のうちの1つと一体化されるように構成されている、請求項1に記載の配置構成。
【請求項3】
前記少なくとも2つの装置(20)のそれぞれはシャフトブラケット(10)に固定されている、請求項1又は2に記載の配置構成。
【請求項4】
前記少なくとも2つの装置(20)は、それぞれの前記シャフトブラケット(10)におけるプロペラ(13)に面する半体に固定されている、請求項3に記載の配置構成。
【請求項5】
各装置(20)の前記前方ノズル(30)は、少なくとも1つのシャフトブラケットアーム(11a、11b、11c)に固定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項6】
各装置(20)が3つのシャフトブラケットアーム(11a、11b、11c)を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項7】
2個から10個のフィン(40a、40b、40c、40d)が設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項8】
前記少なくとも1つの水中翼は、0°より大きく40°までの迎え角(γ)を有
する、請求項1~7のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項9】
前記少なくとも1つの
フィン(40a、40b、40c、40d)における前記シャフトブラケット(10)に面する領域において、前記少なくとも1つの
フィン(40a、40b、40c、40d)のねじれの程
度は、該少なくとも1つの
フィン(40a、40b、40c、40d)の残りの領域におけるねじれの程
度よりも大きい又は小さい、請求項
1~8のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項10】
前記少なくとも1つの水中翼における前記シャフトブラケット(10)に面する領域において、前記少なくとも1つの水中翼
の前記迎え角(γ)は、該少なくとも1つの水中翼の残りの領域におけ
る迎え角(γ)よりも大きい又は小さい、請求項8に記載の配置構成。
【請求項11】
前記少なくとも1つの水中翼は、該少なくとも1つの水中翼の長手方向におい
て異なるプロファイル長を有し、前記少なくとも1つの水中翼における前記シャフトブラケット(10)に面する領域は、該少なくとも1つの水中翼の残りの領域よりも前記プロファイル厚が大きく、かつ/又は、前記少なくとも1つの水中翼のプロファイルは、そ
のプロファイル長に関して、前記シャフトブラケット(10)に面する端部から前記シャフトブラケット(10)に面する側とは反対の端部に向かってテーパが付けられている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項12】
前記配置構成(100)は、前記船外プロペラシャフト(12)に対して動作可能に接続される少なくとも2つのプロペラ(13)と、少なくとも2つの舵(60)とをさらに備え、
前記少なくとも2つの舵(60)のそれぞれは、前記少なくとも2つのプロペラ(13)のうちの1つに割り当てられ、
前記少なくとも2つの舵(60)はそれぞれ、対応する前記プロペラ(13)のハブ(131)からわずかな距離(d
2)をおいて下流側に配置されている推進バルブ(61)を備える、請求項1~
11のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項13】
船外プロペラシャフト(12)を備える多軸船であって、前記多軸船は請求項1~
12のいずれか一項に記載の配置構成(100)を備える、多軸船。
【請求項14】
船外プロペラシャフト(12)を備える多軸船のための配置構成(100)を製造する方法であって、
前記配置構成(100)は、請求項1~12のいずれか一項に記載のように形成されており、
前記多軸船の所要駆動力を低減するための少なくとも2つの装置(20)が設けられ、
各装置(20)は前方ノズル(30)と少なくとも1つの水中翼とを備え、
水中翼として形成された少なくとも1つのフィン(40a、40b、40c、40d)が設けられ、
前記少なくとも1つの
フィン(40a、40b、40c、40d)は前記前方ノズル(30)の内側に及び前記前方ノズル(30)の外側に配置され、
前記少なくとも1つのフィン(40a、40b、40c、40d)は、ねじれるように形成されており、
前記少なくとも2つの装置(20)のそれぞれは、シャフトブラケット(10)の少なくとも1つのシャフトブラケットアーム(11a、11b、11c)が、前記少なくとも2つの装置(20)のうちの1つと一体化して構成されるように、前記多軸船の船外プロペラシャフト(12)のシャフトブラケット(10)上に配置されて該シャフトブラケット(10)に固定され
る、方法。
【請求項15】
a)それぞれが水中翼として形成されている少なくとも2つのシャフトブラケットアーム(11a、11b、11c)を設けて、前記少なくとも2つのシャフトブラケットアーム(11a、11b、11c)を、シャフトブラケットアームの一方の端部領域によりシャフトブラケット(10)に固定し、シャフトブラケットアームの他方の端部領域により前記多軸船の船体(50)に固定するステップと、
b)少なくとも2つのノズルセグメント(301、302、303)を備え、周が開放された又は閉じた前方ノズル(30)を設けるステップと、
c)前記少なくとも2つのシャフトブラケットアーム(11a、11b)の間に第1のノズルセグメント(301)を配置するステップと、
d)前記第1のノズルセグメント(301)の2つの端部領域のそれぞれを、前記少なくとも2つのシャフトブラケットアーム(11a、11b)のうちの隣接するシャフトブラケットアーム(11a、11b)の第1の側に固定するステップと、
e)第2のノズルセグメント(302、303)の少なくとも1つの端部領域を、前記少なくとも2つのシャフトブラケットアーム(11a、11b)のうちの1つの第2の側に固定するステップと、
を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
a1)
前記フィン(40a、40b、40c、40d)の一方の端部領域を前記シャフトブラケット(10)に固定するステップと、
b1)必要に応じて、前記ノズルセグメント(301、302、303)のうちの1つ又は複数に貫通孔を設けて、前記貫通孔を通して前記フィン(40a、40b、40c、40d)を案内し、前記フィン(40a、40b、40c、40d)を対応する前記ノズルセグメント(301、302、303)に固定するステップと、
b2)必要に応じて、1つ又は複数のフィン(40a、40b、40c、40d)を1つ又は複数のノズルセグメント(301、302、303)の外面に固定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、船外プロペラシャフトを備える多軸船、具体的には二軸船、のための配置構成、及び、該配置構成の製造方法に関する。本発明による配置構成は、特に、上記多軸船の駆動システムに好適であり、また、そのエネルギー効率の改善にも好適である。
【0002】
従来技術において、一軸船の所要駆動力を低減するための装置は公知である。例示として、ここで、欧州特許出願公開第2 100 808号明細書について言及しておく。
一般的な一軸船の場合は、船舶のプロペラのプロペラシャフトは該船舶の船体内部で延在する。このような船舶では、プロペラシャフトの端部のみが船舶の船体から突出し、船舶のスクリューはプロペラシャフトの突出端に取り付けられている。それに対して、船舶の種類のなかには、多軸船として装備される、つまり、少なくとも2つの船舶用スクリュー又は少なくとも2つの船舶用プロペラを備える船舶もある。具体的には、2つの船舶用スクリュー又は2つの船舶用プロペラを備える二軸船が知られている。多軸船によくみられる船舶の種類は、船外プロペラシャフトを備える多軸船である。この種の船舶では、少なくとも2つのプロペラシャフトは、少なくとも部分的に、船舶の船体外に配置される。この種の船舶では、通常、各プロペラシャフトの大部分が船外に配置される。例えば、プロペラシャフトは、少なくとも1mの長さ、好ましくは少なくとも3mの長さ、多くの場合は5m以上の長さで、船外に配置され得る。したがって、通常、プロペラシャフトの外側部分は、パイプ等によって覆われているだけであり、船舶の船体とは空間的に離れている。通常、プロペラシャフトの外側部分はそれぞれシャフトブラケットにより支持され、シャフトブラケットはシャフトブラケットアームを介して船舶の船体に接続される。シャフトブラケットは、通常、プロペラシャフトの端部領域に配置されるため、船舶のプロペラは、プロペラシャフトの長手方向におけるシャフトブラケットのすぐ後ろにて、プロペラシャフトに取り付けられる。各船外プロペラシャフトは、厳密に1つのシャフトブラケットによって支持されることが多い。
【0003】
そのような種類の船舶である船外プロペラシャフトを備える多軸船に関して、エネルギー効率を改善する装置又は所要駆動力を低減する装置はいずれも知られていない。
したがって、本発明の目的は、船外プロペラシャフトを備える多軸船のための配置構成を特定することであり、それによって、該多軸船の所要駆動力が低減され得る。
【0004】
この目的は、船外プロペラシャフトを備える多軸船、具体的には二軸船、のための配置構成により解決され、該配置構成は、プロペラシャフトを支持するための少なくとも2つのシャフトブラケットと、多軸船の所要駆動力を低減するための少なくとも2つの装置とを備え、少なくとも2つのシャフトブラケットはそれぞれ、該シャフトブラケットを多軸船に固定するための少なくとも1つのシャフトブラケットアームを、好ましくは少なくとも2つのシャフトブラケットアームを有し、少なくとも2つの装置のそれぞれは、1つのシャフトブラケットに割り当てられ、少なくとも2つの装置のそれぞれが少なくとも1つの水中翼を備える。該配置構成において、各シャフトブラケットの少なくとも1つのシャフトブラケットアームはさらに、装置の水中翼として形成され、シャフトブラケットアームの他にはさらなる水中翼は設けられていないか、あるいは、該配置構成の少なくとも2つの装置のそれぞれが前方ノズルを備え、少なくとも2つの装置のそれぞれにおいて、該装置の水中翼として形成された少なくとも1つのフィンがそれぞれ備えられ、少なくとも1つのフィンは、前方ノズルの内側にかつ/又は前方ノズルの外側に配置される。
【0005】
シャフトブラケットは、それぞれプロペラシャフトを固定するあるいは取り付けるため
に、かつ/又は、プロペラシャフトを支持するために、各プロペラシャフトの外側部分に配置される(すなわち、船体外に位置する)。各シャフトブラケットは、1つの、好ましくは2つ以上の、シャフトブラケットアームを介して、船舶の船体に連結される。シャフトブラケットアームは、支持ストラットとしての機能を有し、それゆえシャフトブラケットに作用する力が船体に伝達される。
【0006】
多軸船の所要駆動力を低減するための少なくとも2つの装置は、それぞれ、少なくとも1つの水中翼を、好ましくは複数の水中翼を備える。原則的には、少なくとも1つの水中翼は、水中翼プロファイルを有するあらゆる物体又はあらゆる装置によって形成され得る。上記装置における少なくとも1つの水中翼は、プロペラへの流入に影響を与えるために設けられ、それによって、より高いエネルギー効率が得られる。少なくとも1つの水中翼は、水中翼プロファイルを有する固定子、つまり、水中翼プロファイルを有する静止要素であることが好ましい。本説明中において、水中翼プロファイルを有する実施形態とは、少なくとも1つの水中翼の断面図をいう。好ましくは、少なくとも1つの水中翼は、その全体において、つまり、具体的には長手方向に延びている部分全体にわたって、水中翼プロファイルを有する。しかしながら、少なくとも1つの水中翼は、その長手方向から見た場合に、部分的に又は複数の部分のみで水中翼プロファイルを有していてもよい。また、少なくとも1つの水中翼が、長尺状をなすように、つまり、幅よりも長さの方がかなり長く、形成されることが有利である。少なくとも1つの水中翼は、最も有利なプロペラへの流入が得られてエネルギー効率が改善する又は所要駆動力が減少するように、形成又は構成されるべきである。具体的には、これは、少なくとも1つの水中翼がプロペラへの流入において(好適な位置で)プレツイストを生じさせることによって達成される。
【0007】
各シャフトブラケットに割り当てられた装置は、シャフトブラケットの領域にあるいはシャフトブラケット上に好適に配置され、かつ/又は、シャフトブラケットとあるいはシャフトブラケットの一部と一体化されるように、かつ/もしくは、シャフトブラケットとあるいはシャフトブラケットの一部と相互作用するように、形成される。船舶の進行方向を見ると、各シャフトブラケットに割り当てられた装置は、具体的には、シャフトブラケットの高さに配置されている。船舶の長手方向において、装置は、特に、シャフトブラケットを越えて突出しないように、具体的には船舶のプロペラの方向に突出しないように、配置される。
【0008】
本発明による配置構成の第1代替実施形態では、各シャフトブラケットの少なくとも1つのシャフトブラケットアームが水中翼として形成されて、装置の少なくとも1つの水中翼を形成する。各シャフトブラケットにおける複数の、具体的には少なくとも2つの、シャフトブラケットアームが、より好ましくはすべてのシャフトブラケットアームが、水中翼として形成されることが好適である。これは、少なくとも1つのシャフトブラケットアームが、少なくともその一部において、水中翼プロファイルを有することを意味する。水中翼として形成されたシャフトブラケットアームの他に、装置には、シャフトブラケットアームではないさらなる水中翼は設けられていない。この場合、既存のシャフトブラケットアームのみを水中翼として再設計すればよく、さらなる追加の水中翼を設ける必要は無い点において有利である。したがって、シャフトブラケットアームは、シャフトブラケットに対するシャフトブラケットアームの通常の支持機能を果たすことに加えて、該シャフトブラケットアームの水中翼プロファイルによってガイド機能を果たす。シャフトブラケットアームの一方の端部はシャフトブラケットに接続され、他方の端部は、船舶の船体に、具体的には固定して、接続される。少なくとも1つのシャフトブラケットアームの一部のみが水中翼として形成されている場合には、少なくとも、シャフトブラケットアームにおけるシャフトブラケットに面する領域が、水中翼として形成されると有利である。本代替実施形態では、装置は、水中翼として形成された少なくとも1つのシャフトブラケットアームのみから構成されてもよいし、あるいは、さらなる構成要素を備えていてもよい。
【0009】
配置構成の第2代替実施形態では、少なくとも2つの装置はそれぞれ、前方ノズルを備える。前方ノズルは、多軸船の進行方向におけるそれぞれのプロペラの上流側に配置されている。用語「進行方向において」とは、本明細書中において、多軸船が前進する方向として理解されるものとする。コルトノズルあるいはラダープロペラとは異なり、例えば、前方ノズルの内側にはいかなるプロペラも配置されていない。また、前方ノズルはプロペラから離間して配置される。前方ノズルは、該前方ノズルを通過する水の流れの少なくとも一部が、好ましくは全てが、下流側に配置されているプロペラへ案内されるように形成されると有利である。前方ノズルは、一般的には筒状である。しかしながら、原則的には、例えば角断面の形状等、任意の他の断面形状であってもよい。前方ノズルは、1つの部材として形成されてもよいし、一体的に形成されてもよく、あるいは、複数の個別の部分が組み合わされて前方ノズルを形成してもよい。これら個別の部分は、互いに、あるいは、装置及び/又は配置構成の他の要素と、好ましくは接続され、具体的には溶接される。好ましくは、前方ノズルの少なくとも一部の領域は、船舶のプロペラにおけるプロペラシャフトの上方に及び/又はプロペラシャフトの下方に配置される。
【0010】
原則的には、前方ノズルは、ノズルの又はノズルリングの一部分(例えばノズルリングの1/4、ノズルリングの1/3、ノズルリングの1/2、ノズルリングの2/3、ノズルリングの3/4等)のみを含んでいてもよい。このような実施形態では、周について見た場合に、前方ノズルは開放されるように形成されている。しかしながら、周方向において、前方ノズルは閉鎖されるように形成されることが好ましい。このため、ノズルは、周方向の360°にわたって連続的に形成され得る。いくつかの部分によって形成されている前方ノズルの場合には、特にノズルの周が閉鎖されている場合においても、前方ノズルの個別の部分が、配置構成の及び/又は装置の部分と接続されていてもよく、それによって、これらの接続部分がノズルの周の一部を形成する。周方向について見た場合に開放されている前方ノズルの場合は、前方ノズルは、周全体の少なくとも3/4が閉鎖されるように、あるいは周全体の少なくとも2/3が閉鎖されるように、あるいは周全体の少なくとも1/2が閉鎖されるように、あるいは周全体の少なくとも1/3が閉鎖されるように、あるいは周全体の少なくとも1/4が閉鎖されるように、形成され得る。
【0011】
前方ノズルの壁部は、各前方ノズルのノズルジャケット又はノズル壁部に囲まれる内部領域を形成し、理論的には流入口及び流出口において閉じている。周全体が閉じた前方ノズル、及び周方向において部分的に開放されている前方ノズルはともに、内部領域を形成する。周方向において部分的に開放されたノズルの場合には、端部領域は、周方向において前方ノズルのジャケットにより、また、ノズルジャケットの周方向における2つの端点の間にある理論上の平面により、囲まれている。
【0012】
水中翼として形成されている少なくとも1つのフィンは、前方ノズルの内側に、すなわち前方ノズルの内部領域に、かつ/又は、前方ノズルの外側に配置される。好ましくは、少なくとも1つのフィンは前方ノズルに固定して接続される。また、少なくとも1つのフィンが前方ノズルの内側に配置されるとともに、少なくとも1つのフィンが前方ノズルの外側に配置されてもよい。また、一方のフィンを前方ノズルの内側に配置し、他方のフィンを前方ノズルの外側に配置して2つのフィンを配置することも可能であり、各フィンをそれらの長手方向でみると、それらフィンは一方が他方の下流側に配置され、かつ、両フィンはノズルジャケットに固定されて、それによって、全体として単一のフィンをなす。少なくとも1つのフィンは、内側及び外側に配置されることも可能であり、これは例えば、フィンが前方ノズルジャケットを貫通している場合である。少なくとも1つのフィンが前方ノズルの外側に配置されている場合には、該少なくとも1つのフィンは、具体的にはその両端のうちの一方の端部にて前方ノズルに固定され、その他方の端部が自由端として形成されると有利である。少なくとも1つのフィンが前方ノズルの内部領域に配置されて
いる場合、該フィンは、その一方の端部にてノズルジャケットに固定されると有利である。また、他方の端部がシャフトブラケットに固定されると有利である。しかしながら原則的には、この端部は自由端として形成されてもよい。また、原則的には逆の実施形態も可能であり、この場合、少なくとも1つのフィンの一方の端部がシャフトブラケット上に配置され、他方の端部が前方ノズルの内側に配置されるとともに自由端として形成される。少なくとも1つのフィンは水中翼プロファイルを有し、かつ、ガイドフィンの形態で形成されることが好ましい、つまり、少なくとも1つのフィンは、具体的には横軸方向の長さよりも長手軸方向の長さがはるかに長い広がりを備えることが好ましい。
【0013】
本発明による配置構成の第2代替実施形態においては、1つ又は複数のシャフトブラケットアームは、少なくとも1つのフィンとして形成された水中翼に加えて、水中翼プロファイルを有し得る。具体的には、全てのシャフトブラケットアームが水中翼プロファイルを有していてもよい。
【0014】
本発明による配置構成の第1代替実施形態においては、シャフトブラケットアームの他にはさらなる水中翼が設けられていないが、前方ノズル又は前方ノズルの一部分は同様に設けられ得る。前方ノズルは、1つ又は複数のシャフトブラケットアームに好適に固定される。
【0015】
本発明による上記2つの代替実施形態においては、少なくとも1つの水中翼は、前方ノズルの内側又は前方ノズルの外側に、あるいはその両方に、配置され得る。また、水中翼が前方ノズルの内側のみに又は前方ノズルの外側のみに配置されてもよい。少なくとも1つの水中翼は、全体にわたって、つまり全長にわたって、水中翼プロファイルを有し得る。また、水中翼プロファイルは長手方向に関して部分的にのみ存在してもよい。少なくとも1つの水中翼がシャフトブラケットアームとして形成されている場合には、例えば、シャフトブラケットアームは一部分において水中翼プロファイルを有し、別の部分は、水中翼プロファイルを有さずに、例えば円形プロファイル、矩形プロファイル、あるいは他の(断面)プロファイルを有する通常の支持部として形成されてもよい。
【0016】
前方ノズルは、プロペラシャフトと同心状に又は同軸上に形成され得る。すなわち、前方ノズルの回転軸は、プロペラシャフトの軸上に位置していてもよい。しかし原則的には、前方ノズルの回転軸は、プロペラの軸に対して、具体的には上方へ、右へ、左へ、下方へ、あるいはこれらの変位方向のうちの2つの組み合わせで、ずらして配置されていてもよい。前方ノズルの回転軸は、プロペラシャフトの軸に対して傾斜するように配向されてもよい。
【0017】
前方ノズルのプロファイルは、すなわちノズルジャケットのプロファイルは、前方ノズルのプロファイルの最大長さの2%から20%、好ましくは5%から15%、特に好ましくは9%から12%、の範囲の最大厚を有することが好ましい。また、前方ノズルのプロファイルは、前方ノズルの直径の5%から60%、好ましくは20%から40%、より好ましくは25%から30%、の最大長さを有することが好ましい。さらにまた、前方ノズルは、回転対称に形成されても、回転非対称に形成されてもよい。前方ノズルが回転非対称である場合は、上記範囲を決定するために、直径の代わりに、前方ノズルの後縁部における互いに最も離れた位置にある2点間の最大距離が用いられる。具体的には、前方ノズルの外径が、考慮される。
【0018】
各装置は、プロペラからわずかな距離をおいて配置されることが好ましい。具体的には、装置とそれぞれ割り当てられたプロペラとの間の最大距離は、プロペラの直径の好ましくは最大50%、より好ましくは最大30%、最も好ましくは最大20%である。
【0019】
各装置が少なくとも2つのシャフトブラケットアームを備える場合、該2つのシャフトブラケットアームは、互いに対して、プロペラシャフトの周方向において、30°から120°、好ましくは50°から100°、より好ましくは60°から80°、の角距離で配置されることが好ましい。3つのシャフトブラケットアームが設けられている場合には、そのさらなるシャフトブラケットアームと、少なくとも2つのシャフトブラケットアームのうちの最も近い位置にあるシャフトブラケットアームとの角距離が、好ましくは30°から90°、より好ましくは50°から70°である。
【0020】
前方ノズル、シャフトブラケットアーム、シャフトブラケット、及び/又は、フィンは、全体が又は一部が金属製、具体的には鋼製、であることが好ましい。これに代えて、又はこれに加えて、他の材料、例えばセラミックあるいは、特に高強度及び/又は繊維強化プラスチック、を使用することも可能である。
【0021】
少なくとも2つの装置は、同一となるように形成されてもよく、あるいは相違するように形成されてもよく、特に非対称な船体を有する多軸船の場合には、少なくとも2つの装置は相違するように形成され得る。
【0022】
多軸船の所要駆動力は、本発明による配置構成を用いることによって、有利に低減される。多軸船の所要駆動力を低減するための装置を各シャフトブラケットに割り当てることによって、プロペラへの流入が流体的に最適となり、より高い駆動エネルギーが生じて所要駆動力が低減するように、該装置が十分に固定されて配置されることが確実となる。水中翼としてシャフトブラケットアームを備える実施形態は、シャフトブラケットを支持する又は固定するためにいかなる場合においてもシャフトブラケットアームが設けられなければならず、一方で支持機能を、他方でプロペラへの流入においてプレツイストを生じさせるための水中翼の機能を発揮するという、2つの機能を発揮することが可能な限りにおいて、有利である。前方ノズルを設けることによって、少なくとも領域ごとにプロペラへの流入が促進及び/又は均一化され、それによって、所要駆動力もまた低減される。また、前方ノズルは、該前方ノズルに固定され、かつ、フィンとして形成される水中翼を支持する。
【0023】
好適な実施形態では、シャフトブラケットの少なくとも1つのシャフトブラケットアームは、好ましくは少なくとも2つのシャフトブラケットアームは、いずれも、それぞれのシャフトブラケットに割り当てられた少なくとも2つの装置のうちの1つと一体化されるように構成されている。本説明中では、「一体化される」とは、少なくとも1つのシャフトブラケットアーム又は少なくとも2つのシャフトブラケットアームが、それぞれ、所要駆動力を低減するための装置の一部であることを意味する。一実施形態においては、装置は、シャフトブラケットアームのみで構成されることも可能であり、それはすなわち、シャフトブラケットアームが水中翼プロファイルとして形成され、その他には水中翼が設けられていない場合である。別の実施形態において、シャフトブラケットアームは、装置における複数の部分のうちの1つであり、シャフトブラケットアームが装置の他の部分と一体的に形成されることが好ましい、すなわち、シャフトブラケットアームは、具体的には装置の他の部分に固定して接続され、1つのユニットを形成することが好ましい。好適な実施形態においては、シャフトブラケット毎に、厳密に2つの、厳密に3つの、又は、厳密に4つの、シャフトブラケットアームを設けてもよい。したがって、好ましくはシャフトブラケット毎に2つから4つのシャフトブラケットアームを設ける、あるいは、好ましくはシャフトブラケット毎に2つから3つのシャフトブラケットアームを設けることも可能である。少なくとも2つのシャフトブラケットが、それぞれ同数のシャフトブラケットアームを有することが有利である。少なくとも2つのシャフトブラケットのシャフトブラケットアームが、位置及び/又は設計及び/又は寸法、具体的には長さ、厚さ、直径等、について同一に形成されるとより好ましい。代替例として、とりわけ非対称な船体を有す
る多軸船の場合に、位置及び/又は設計及び/又は寸法、具体的には長さ、厚さ、直径等、について異なる、少なくとも2つのシャフトブラケットのシャフトブラケットアームの実施形態が好ましい。シャフトブラケットアームは、ほぼ直線状に延在する長尺状支持ストラットとして形成されると有利である。
【0024】
少なくとも2つの装置のそれぞれがシャフトブラケットに固定されていると有利である。装置がシャフトブラケットアームを備える場合、該装置は、例えばシャフトブラケットアームを介して、シャフトブラケットに固定され得る。これに代えて、又はこれに加えて、装置は、シャフトブラケットに備えられている少なくとも1つのフィンによって、該シャフトブラケットに固定され得る。装置が前方ノズルをさらに備える場合、前方ノズルは、シャフトブラケットアーム及び/又はフィンを介して、シャフトブラケットに固定されてもよい。原則的には、前方ノズルはシャフトブラケットに直接固定され得る。これによって、装置に作用する力が、シャフトブラケットを介して船舶の船体に確実に伝達される。
【0025】
また、少なくとも2つの装置がいずれも、それぞれ対応するシャフトブラケットにおけるプロペラに面する方の半体に、具体的にはシャフトブラケットにおけるプロペラに面する方の端部領域に、固定されることがより好ましい。シャフトブラケットは、プロペラシャフトが取り付けられた長尺状スリーブの形態で形成されることが多い。プロペラに面するシャフトブラケットの半体に装置を配置することによって、装置とプロペラとの距離を可能な限り短くすることができる。本説明において、用語「シャフトブラケットの半体」とは、プロペラシャフトの軸線に対して理論上直角をなす線又は平面によって形成される半体と理解される。
【0026】
さらに、前方ノズルは、少なくとも1つのシャフトブラケットアームに、好ましくは複数のシャフトブラケットアームに、固定されることが好ましい。特に好ましいのは、前方ノズルがすべてのシャフトブラケットアームに固定されることである。具体的には、各装置について、前方ノズルは、厳密に2つのシャフトブラケットアームに、又は厳密に3つのシャフトブラケットアームに、又は厳密に4つのシャフトブラケットアームに、固定され得る。これによって、前方ノズルを安定して配置することができる。具体的には、複数の部分によって形成された前方ノズルが設けられてもよく、例えば、前方ノズルの1つの部分が2つのシャフトブラケットアームの間に固定され、また、前方ノズルの別の部分が該シャフトブラケットアームのそれぞれの他方側に固定される。船舶の進行方向を見たときに、シャフトブラケットアームは、ノズルジャケットと完全に一体化するように形成され得るため、シャフトブラケットアームはそれぞれ、接触点又は固定領域にてノズルジャケットによって完全に囲まれる。原則的には、船舶の進行方向を見たときに、シャフトブラケットアームは、部分的にのみノズルジャケット内に突出してもよい。
【0027】
一実施形態では、各装置が厳密に3つのシャフトブラケットアームを備えることが好ましい。これはとりわけ、配置構成の第1代替実施形態において好適であって、該実施形態では、シャフトブラケットアームが少なくとも1つの水中翼として形成され、シャフトブラケットアームの他にはさらなる水中翼は設けられていない。ここで、第1の、具体的には最も下方の、シャフトブラケットアームと、第2の、具体的には中央の、シャフトブラケットアームとの間の角距離が30°から90°、より好ましくは50°から70°、の範囲であり、かつ、第2の、具体的には中央の、シャフトブラケットアームと、第3の、具体的には上方の、シャフトブラケットアームとの間の角距離が、30°から90°、より好ましくは50°から70°、の範囲であるとより好適である。
【0028】
本発明の配置構成の第2代替実施形態によるさらに好適な実施形態では、水中翼として形成された少なくとも1つのフィン及び前方ノズルが設けられ、また、2つから10個の
、より好ましくは3つから7つの、最も好ましくは3つ又は4つの、フィンが設けられている。この場合、フィンは、前方ノズルの内側のみに固定されてもよく、あるいは前方ノズルの外側のみに固定されてもよく、あるいは内側及び外側の両方に固定されてもよい。内側のフィンは、シャフトブラケットと前方ノズルの内側とに対して固定されることが好ましい。より好ましくは、本実施形態では全体として3つ又は4つのフィン及び2つのシャフトブラケットアームが設けられ、この場合に、各フィンとして説明されるのは、前方ノズルの内側に位置する部分と前方ノズルの外側に位置する部分とを有するであろうが、一直線上に位置するため全体として1つのフィンをなし、1つのユニットとして機能するガイドフィンとして形成された、1つのフィンである。特に好適な実施形態では、2つのフィンが内側に位置する部分と外側に位置する部分とを有し、2つのシャフトブラケットアームが設けられていることに加えて、前方ノズルの内側のみに位置する1つ又は2つのさらなるフィンが設けられる。
【0029】
配置構成の少なくとも1つの水中翼が迎え角を有し、かつ/又は、少なくとも1つの水中翼がねじれるように形成されており、したがってねじれ角を有することがさらに好適である。ねじれ角は一定でもよく、変化していてもよい。迎え角は、流入の方向に応じて正か負となる。ゆえに、以下において詳細に特定される迎え角の範囲は、流入の方向に応じて正又は負となる値として理解すべきものである。より好ましくは、迎え角は、0°より大きく40°までの、好ましくは0°より大きく25°までの、より好ましくは3°から20°までの範囲とされる。少なくとも1つの水中翼の長さ方向でみると、迎え角は変化するようにあるいは一定に形成され得るものであり、第1の代替例において、少なくとも迎え角は、水中翼における一点にて上述の範囲のうちの1つの範囲内にあることが好ましい。複数の水中翼が設けられている場合には、すべての水中翼の迎え角が同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。また、水中翼のねじれの程度についても、同じでもあってもよく、互いに異なっていてもよい。少なくとも1つの迎え角を有し、かつ/又は、ねじれている水中翼は、具体的にはフィン及び/又はシャフトブラケットアームであってもよい。この場合、迎え角(しばしば流入角とも称される)は、流入する流体(本明細書では、具体的には水)の方向と、それぞれの水中翼断面における水中翼プロファイルの軸線との間の角度として理解すべきものである。したがって、迎え角によって、流入に関して、水中翼プロファイルの流入量の程度が特定される。少なくとも1つの水中翼がねじれた形状に又はうねった形状に形成されている場合には、水中翼の長さ方向で見ると、迎え角は必然的に変化する。具体的には、少なくとも1つの水中翼の長さ方向で見ると、一部の領域のみが迎え角を有し、別の領域は迎え角を有さず又は0°の迎え角を有して形成され得る。装置について、1つ又は複数の水中翼が迎え角を有していてもよく、あるいは1つ又は複数の水中翼が迎え角を有さない(すなわち、0°の迎え角を有する)ようにしてもよい。
【0030】
少なくとも1つの水中翼が迎え角を有する場合及び/又は少なくとも1つの水中翼がねじれた形状に形成されている場合に、少なくとも1つの水中翼におけるシャフトブラケットに面する領域において、少なくとも1つの水中翼の迎え角及び/又はねじれの程度は、該少なくとも1つの水中翼の残りの領域における迎え角及び/又はねじれの程度よりも大きい又は小さいことがより好適である。これによって、とりわけ、駆動効率に関して特に有利となるプロペラの流入領域において、より大きな又はより小さなプレツイストが形成されることが有利である。少なくとも1つの水中翼におけるシャフトブラケットに面する領域は、具体的には、少なくとも1つの水中翼がシャフトブラケットに隣接する領域であってもよい。例えば、この領域は、シャフトブラケットに面する水中翼の端部から、水中翼全長の最大40%にわたって、具体的には最大20%にわたって、より好ましくは最大10%にわたって、最も好ましくは最大5%にわたって延在する領域とし得る。代替例では、少なくとも1つの水中翼におけるシャフトブラケットに面する領域は、プロペラ直径の、最大50%の、好ましくは最大20%の、より好ましくは最大10%の、最も好まし
くは最大5%の、長さに対応する長さとし得る。迎え角が、シャフトブラケットに面する領域内で変化する場合には、すなわち迎え角が一定でない場合には、本例の目的のためには最大値を用いるべきである。本例において、用語「ねじれの程度」とは、長手方向で見た場合の少なくとも1つの水中翼の特定の領域内における最大ねじれ角と最小ねじれ角との差の大きさとして理解すべきものである。例えば、この目的のために使用される領域は、少なくとも1つの水中翼の全長のうちの、所定の長さ、具体的には1%から20%の長さ、好ましくは5%から10%の長さ、を有し得る。
【0031】
より好適な実施形態では、少なくとも1つの水中翼は、具体的にはシャフトブラケット又はフィンとして形成され得る少なくとも1つの水中翼は、該少なくとも1つの水中翼の長手方向において異なるプロファイル厚及び/又は異なるプロファイル長を有し得るように設けられている。本例において好適であるのは、とりわけ、少なくとも1つの水中翼におけるシャフトブラケットに面する上記領域が、該少なくとも1つの水中翼の残りの領域よりも、プロファイル厚が大きいことである。これに代えて、又はこれに加えて、少なくとも1つの水中翼のプロファイルは、そのプロファイル厚及び/又はプロファイル長に関して、シャフトブラケットに面する端部からシャフトブラケットに面する方向とは反対側の端部に向かってテーパが付けられていることが好適である。本実施形態について、少なくとも1つの水中翼におけるシャフトブラケットに面する領域は、前述の実施形態と同様に定義されるものであり、したがって、該定義は本例においても同様に用いられる。プロファイル長は、断面図におけるプロファイルの前端領域とプロファイルの後縁部との間の距離に対応し、それゆえ、翼弦線に沿って延在する。プロファイル厚とは、該プロファイルの最大厚をさす。また、本実施形態は、少なくとも1つの水中翼によって引き起こされたプレツイストによって、駆動効率をより高めるようにプロペラへの流入が生じることにおいて、有利である。
【0032】
船舶の進行方向との関連で、シャフトブラケットアームは、前方ノズル及び/又はフィンよりも大きな広がり又は幅を有する。具体的には、船舶の進行方向との関連で、シャフトブラケットアームは、前方ノズルが該シャフトブラケットアームに接続されている領域において前方ノズルよりも長くてもよい。この場合、船舶の進行方向との関連で、シャフトブラケットアームは、その両側で前方ノズルを越えて突出する。また、船舶の進行方向との関連で、少なくとも1つのフィンが、具体的にはフィンが前方ノズルに固定されている領域において、前方ノズルよりも小さな広がり又は最大で同じ広がりを有すると好適である。
【0033】
配置構成は、プロペラシャフトに対して動作可能に接続される少なくとも2つのプロペラと、少なくとも2つの舵とを備え、少なくとも2つの舵のそれぞれは、少なくとも2つのプロペラのうちの1つに割り当てられるとより好適である。また、少なくとも2つの舵はいずれも、対応するプロペラのハブからわずかな距離をおいて下流側に配置されている推進バルブを備えることが好ましい。本説明中において、「動作可能に接続される」とは、各プロペラシャフトが、動作可能に接続されたプロペラを駆動することを意味する。原則的には、推進バルブは、従来技術において公知であって、プロペラハブによって引き起こされるハブ渦が低減するようにプロペラハブと相互作用するように形成されることが多い。本願の出願人は、推進バルブを備える舵がそれぞれプロペラの下流側に配置される場合に、本発明による配置構成が特に高い駆動効率で作動することを発見した。いわゆるツイストラダーが設けられており、ラダーブレードの一部の領域同士がそれぞれ互いにずらして配置されている場合に、所要駆動力の効率はさらに向上し得る。推進バルブは、「バルブ」とよばれることも多い。
【0034】
また、本発明の目的は、船外プロペラシャフトを備える多軸船、具体的には二軸船、であって、上述の代替実施形態又は好適な実施形態のいずれかにおいて上述したような配置
構成を備える多軸船によっても解決される。
【0035】
さらに、本発明は、船外プロペラシャフトを備える多軸船、具体的には二軸船、のための配置構成を製造する方法に関する。上記方法において、本発明の目的は、船舶の所要駆動力を低減するための少なくとも2つの装置によって解決され、該装置において、各装置は前方ノズルと少なくとも1つの水中翼とを備え、少なくとも1つの水中翼は前方ノズルの内部に及び/又は前方ノズルの外部に配置され、シャフトブラケットの少なくとも1つのシャフトブラケットアームが、好ましくは少なくとも2つのシャフトブラケットアームが、少なくとも2つの装置のうちの1つと一体化して構成されるように、少なくとも2つの装置のそれぞれが、多軸船のプロペラシャフトのシャフトブラケット上に配置されて該シャフトブラケットに固定される。上記配置構成は、上述のように、代替実施形態又は好適な実施形態のいずれか1つによって形成されることが好適である。上記方法で用いられる構成要素は、具体的には装置、少なくとも1つの水中翼、前方ノズル、シャフトブラケット、プロペラシャフト、及び、シャフトブラケットアームは、上述した実施形態の1つによって形成されることが好ましい。
【0036】
上記方法のさらなる発展において、以下のステップが行われる。
a)それぞれが水中翼として形成されている少なくとも2つのシャフトブラケットアームを設けて、少なくとも2つのシャフトブラケットアームを、シャフトブラケットアームの一方の端部領域にてシャフトブラケットに固定し、シャフトブラケットアームの他方の端部領域にて船舶の船体に固定するステップと、
b)少なくとも2つのノズルセグメントを備え、周方向において開放された又は閉鎖された前方ノズルを設けるステップと、
c)少なくとも2つのシャフトブラケットアームの間に第1のノズルセグメントを配置するステップと、
d)第1のノズルセグメントの2つの端部領域のそれぞれを、少なくとも2つのシャフトブラケットアームのうちの隣接するシャフトブラケットアームの第1の側に固定するステップと、
e)第2のノズルセグメントの少なくとも1つの端部領域を、少なくとも2つのシャフトブラケットアームのうちの1つの第2の側に固定するステップ。
【0037】
この製造方法によって、装置は、具体的には装置の前方ノズルは、シャフトブラケットアームに一体的に接続される。これは、とりわけ、少なくとも2つのノズルセグメントであって、第1のノズルセグメントが2つのシャフトブラケットアーム間に固定され、他方のノズルセグメントが、それら少なくとも2つのシャフトブラケットのアームのうちの1つにおける、別の、第2の側に固定される、少なくとも2つのノズルセグメントを設けることによって達成される。両端部領域により、第2のノズルセグメントはそれぞれ、少なくとも2つのシャフトブラケットアームの第2の側に固定されることが好ましく、それによって全体として閉じたノズルの配置構成が得られる。したがって、ノズルセグメントは、環状セグメントとして形成されることが好ましく、ノズルセグメントが一体となって閉じた又は部分的に閉じた前方ノズルを形成する。この少なくとも2つのノズルセグメントは、互いに別体として設けられ、それぞれ別々にシャフトブラケットアームに固定される。上述のステップa)~e)は、異なる時間的順序で行われてもよい。これらのステップは、番号で特定された時間的順序で行われることが好ましい。また、少なくとも2つのシャフトブラケットアームが、同一のシャフトブラケットに固定されるか又は同一のシャフトブラケットを支持することが有利である。各シャフトブラケットアームの端部領域は、互いに径方向に、すなわち該シャフトブラケットアームの反対側に配置される。隣接するシャフトブラケットアームの「第1の側」及び「第2の側」という用語は、具体的にはシャフトブラケットアームの側面をさす。具体的には、これらの側面は、互いに反対側に配置される。固定は、溶接を用いてなされることが好ましい。
【0038】
また、以下のステップを付加的に含むことがより好ましい。
a1)水中翼として形成されたフィンを設けて、フィンの一方の端部領域をシャフトブラケットに固定するステップと、
b1)必要に応じて、ノズルセグメントのうちの1つ又は複数に貫通孔を設けて、該貫通孔を通してフィンを案内し、フィンをそれぞれのノズルセグメントに固定するステップと、
b2)必要に応じて、1つ又は複数のフィンを1つ又は複数のノズルセグメントの外面に固定するステップ。
【0039】
上述のステップa1)、b1)、及びb2)は、それぞれ、その順序とは異なる、好適な時間的順序で実施され得る。ステップb1)を参照すると、いくつかのフィンあるいはすべてのフィンが、ノズルセグメントの貫通孔を通って案内され得る。
【0040】
本発明は、また、船外プロペラシャフトを備える多軸船、具体的には二軸船、のための配置構成を製造するためのさらなる方法に関する。本方法において、本発明の目的は、船舶の所要駆動力を低減させるための少なくとも2つの装置を提供することによって解決され、該装置において、各装置は少なくとも1つの水中翼を備え、少なくとも2つの装置はそれぞれ、多軸船のプロペラシャフトのシャフトブラケットに配置されて固定され、シャフトブラケットのそれぞれには、一方の端部が多軸船の船体に接続され、他方の端部がシャフトブラケットに固定される少なくとも3つのシャフトブラケットアームが、好ましくは厳密に3つのシャフトブラケットアームが設けられ、少なくとも3つのシャフトブラケットアームはそれぞれ装置の水中翼として形成され、シャフトブラケットアームの他にはさらなる水中翼は設けられておらず、好ましくは各装置に、水中翼として形成された少なくとも3つのシャフトブラケットアームとともに装置を形成する前方ノズルが設けられ、代替実施形態又は好適な実施形態によれば、配置構成は、上述のように形成されることが好ましい。
【0041】
本発明の好ましい例示的な実施形態を図面を用いて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】一実施形態の配置構成を備える二軸船を、プロペラ及び舵を図示せずに、後方から示す概略図である。
【
図2】別の実施形態の配置構成を備える二軸船を、プロペラ及び舵を図示せずに、後方から示す概略図である。
【
図3】別の実施形態の配置構成を備える二軸船を、プロペラ及び舵を図示せずに、後方から示す概略図である。
【
図4】別の実施形態の配置構成を備える二軸船を、プロペラ及び舵を図示せずに、後方から示す概略図である。
【
図5】別の実施形態の配置構成を備える二軸船を、プロペラ及び舵を図示せずに、後方から示す概略図である。
【
図6】別の実施形態の配置構成を備える二軸船を、プロペラ及び舵を図示せずに、後方から示す概略図である。
【
図7】別の実施形態の配置構成を備える二軸船を、プロペラ及び舵を図示せずに、後方から示す概略図である。
【
図8A】配置構成とプロペラと舵とを備える二軸船の一部の領域を示す側面図である。
【
図8B】斜め前方から見た、
図8Aに係る実施形態を示す斜視図である。
【
図9A】推進バルブを有する舵を備える、
図8Aに係る実施形態を示す図である。
【
図9B】斜め前方から見た、
図9Aに係る実施形態を示す斜視図である。
【
図10A】フィン及びシャフトブラケットアームが固定されているシャフトブラケットを示す斜視図である。
【
図10B】
図10Aにおける、1つのシャフトブラケットアームのみを示し、フィンを図示しない図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
複数の実施形態において、同一の構成要素には以下の同一の参照符号が付される。
図1~7はいずれも二軸船を後方からみた図であり、各図は、二軸船における本発明に係る配置構成の異なる実施形態を示す。明確にするために、船舶のプロペラ、ならびに、該船舶のプロペラの下流側に配置される舵は、
図1~
図7において図示を省略している。
【0044】
図1は、船体50を有する二軸船を示し、該二軸船は、本発明による配置構成100を備える。配置構成100は2つのシャフトブラケット10を備え、2つのシャフトブラケット10にはプロペラシャフト12が取り付けられている。プロペラシャフト12は、少なくとも部分的に船体50の外側にある。したがって、シャフトブラケット10もまた船体50の外側にある。シャフトブラケット10は、プロペラシャフト12を被覆し、かつ支持する。船体50は、下方に突出する中央ウェブ51を有する。この中央ウェブ51の両側のそれぞれに、プロペラシャフト12を支持するシャフトブラケット10が設けられている。
【0045】
2つのシャフトブラケット10は各々、2つのシャフトブラケットアーム11a、11bを介して船体50に固定して接続されている。したがって、各シャフトブラケットアーム11a、11bは、一方の端部にて船体50に固定して接続され、その反対側の、他方の端部にてシャフトブラケット10に固定して接続されている。ゆえに、全体として、
図1には4つのシャフトブラケットアーム11a、11bが示されている。
【0046】
各シャフトブラケット10には、二軸船の所要駆動力を低減するための装置20が割り当てられる。各装置20は、前方ノズル30と、4つのフィン40a、40b、40c、40dとを備える。フィン40a、40b、40c、40dはそれぞれ、内側部分401及び外側部分402を備える。フィン40a、40b、40c、40dの内側部分401は、シャフトブラケット10から前方ノズル30まで延びており、フィン40a、40b、40c、40dの外側部分402は、前方ノズル30からフィン40a、40b、40c、40dの自由端403まで延びている。フィン40a、40b、40c、40dは、それぞれの内側部分401においてシャフトブラケット10に固定して接続される。同様に、フィン40a、40b、40c、40dは、前方ノズル30に固定して接続される。それゆえ、フィン40a、40b、40c、40dは、前方ノズル30の凹部(図では示さず)を介してノズルジャケットを通って案内され、該凹部の領域において前方ノズル30に、例えば溶接によって、固定して接続される。本実施形態においては、フィン40a、40b、40c、40dは、単一の連続的なガイドフィンによって構成される。代替の実施形態では、フィン40a、40b、40c、40dは、2つの部分から構成されることも可能であり、一方の部分は、前方ノズル30、具体的にはノズルジャケットの内側と、シャフトブラケット10との間にある内側部分401として形成され、他方の部分は、一端を有する外側部分402であって、前方ノズル30上において、具体的には前方ノズル30の外側のジャケット上において、フィン40a、40b、40c、40dの外側部分402として構成される。フィン40a、40b、40c、40dのすべてが水中翼プロファイルを有する。個々のフィン40a、40b、40c、40dの長さは、互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。また、個々のフィン40a、40b、40c、40dの角距離αも、互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0047】
図1に示される配置構成における前方ノズル30は、円形の断面を有するため、回転対称に形成されている。前方ノズル30は、個別のセクション30a、30b、30c、30d、30e、30fを有する。これらのセクションは、それぞれ、フィン40a、40b、40c、40dの間に、2つのシャフトブラケットアーム11a、11bの間に、あるいは、フィン40a、40b、40c、40dのうちの1つとシャフトブラケットアーム11a、11bのうちの1つとの間に、配置される。個別の前方ノズルセクション30a、30b、30c、30d、30e、30fは、別体の要素とすることも可能であり、あるいはその一部又は全部を一体の要素として形成することも可能である。具体的には、2つのシャフトブラケットアーム11a、11bの間に配置されるセクション30aは、着脱可能な別体のセクションとして、すなわち独立したノズルセグメントとして形成することも可能であり、残りの前方ノズルセクション30b~30fを1つの別個の結合要素として形成することも可能である。セクション30bはシャフトブラケットアーム11bとフィン40dとの間に配置され、前方ノズルセクション30cはフィン40dとフィン40cとの間に配置され、前方ノズルセクション30dはフィン40cとフィン40bとの間に配置され、前方ノズルセクション30eはフィン40bとフィン40aとの間に配置され、前方ノズルセクション30fはフィン40aとシャフトブラケットアーム11aとの間に配置されて、それらのそれぞれに固定される。
【0048】
また、シャフトブラケットアーム11a、11bは水中翼プロファイルを有する。したがって、具体的にはシャフトブラケットアーム11a、11bの内側部分111が水中翼プロファイルを有する。内側部分111は、シャフトブラケットアーム11a、11bのうちの、前方ノズル30の内側に、すなわち前方ノズル30の内部に配置される部分である。それに対して、原則的には、シャフトブラケットアーム11a、11bの外側部分112、すなわちシャフトブラケットアーム11a、11bのうちの前方ノズル30の外側に配置される部分は、少なくとも部分的に水中翼プロファイルを有することも可能であるが、水中翼プロファイルを全く有さなくてもよい。
【0049】
すべてのシャフトブラケットアーム11a、11b、ならびに、すべてのフィン40a、40b、40c、40dは、シャフトブラケット10から外側へ放射状に延出している。前方ノズル30は、シャフトブラケット10とあるいはプロペラシャフト12と同心状に配置される、つまり、前方ノズル30の回転軸は、シャフトブラケット10の軸上あるいはプロペラシャフト12の軸上に位置する。中央ウェブ51の右舷側及び左舷側にそれぞれ1つずつ位置する2つの装置20は、垂直軸511について互いに対称であり、該垂直軸511は、好ましくは船舶の横方向に関して該船舶の中央に位置し、本実施例では中央ウェブ51の中心軸によって形成される軸である。具体的には、フィン及びシャフトブラケットアームは、垂直軸511についてそれぞれ対称に配置されている。装置20は、2つのシャフトブラケットアーム11a、11bによって船体50に担持される。それゆえ、装置20に作用する力は、シャフトブラケットアーム11a、11bを介して船体50にも伝達される。
【0050】
図2は、
図1の実施形態に類似する実施形態を示す。相違するのは、
図2では、各装置20が、4つのフィンではなく、2つのフィン40a、40bのみを有することである。この点以外は、
図2における配置構成100は、
図1における配置構成と同様に形成されている。
図2の実施形態を構成するためには、
図1における各装置20からフィン40b及び40dを省略する必要があろう。したがって、
図2のフィン40a及び40bは、内側部分401と外側部分402とを備えるフィンである。
図1の実施形態と比較して、シャフトブラケットアーム11a、11bも変更されていない。具体的には、シャフトブラケットアーム間の角距離βも
図1の実施形態と同じである。
図1の実施形態と同様に本実施形態においても、すべてのフィン40a、40bそれぞれが、その全長にわたって水中翼プロファイルを有する。
【0051】
図3による実施形態は、
図1による実施形態と類似しているが、
図1の実施形態とは異なり、
図3におけるフィン40c及び40dは、それぞれ、内側部分401のみを有する。つまり、フィン40c、40dがシャフトブラケット10から前方ノズル30まで延在する一方で、フィン40a、40bは、シャフトブラケット10から前方ノズル30まで延在し、前方ノズル30を超えて外側へ突出している。具体的には、フィン40a、40bは内側部分401と外側部分402とを有するが、フィン40c及び40dは内側部分401のみを有する。フィン40a、40b、40c、40dそれぞれの間の角距離α、及び、フィン40a、40b、40c、40dとシャフトブラケットアーム11a、11bとの間の角距離αは、
図1における角距離と同じである。同様に、シャフトブラケットアーム11a、11b間の角距離βも
図1と同じである。
【0052】
図4は、
図1の説明図と類似する実施形態を示す。
図1の代替実施形態とは異なり、
図4による代替実施形態では、フィン40aには外側部分402のみが設けられている。それ以外のフィン40b、40c、40dはすべて、内側部分401と外側部分402とを有する。したがって、フィン40aは、前方ノズル30を始点としその自由端403まで延在する。これ以外については、フィンの位置決め及びシャフトブラケットアーム11a、11bの位置決めは、
図1の実施形態と同じである。
【0053】
図5による実施形態もまた、
図1の実施形態と類似している。
図1の代替実施形態とは異なり、
図5による代替実施形態は、3つのフィン、すなわちフィン40a、40b、及び40cのみを備える。
図1の実施形態と比較して、
図5によるフィンの配置構成を得るには、
図1においてフィン40cを省略する必要があるであろう。したがって、
図5におけるフィン40a、40b、及び40cはそれぞれ、内側部分401と外側部分402とを有する。
図5の代替実施形態において、
図1の代替実施形態とさらに相違する点は、前方ノズル30が、その全周が閉じるように形成されていないことである。
図1から
図4における前述した他の代替例では、前方ノズル30は、その全周が完全に閉じるように形成されている。
図5によれば、フィン40cとフィン40bとの間には、前方ノズルセグメントあるいはノズルジャケットが存在しない。したがって、ノズルの(仮想)全周の半分に満たない、前方ノズル30の下方領域は、開放して形成されている。開放された前方ノズルを有する本実施形態は、フィン及び/又はシャフトブラケットアームについての他の代替実施形態と組み合わせてもよい。
【0054】
したがって、前方ノズル30は、シャフトブラケットアーム11a、11bの間にある前方ノズルセクション30aと、シャフトブラケットアーム11bとフィン40cとの間にある前方ノズルセクション30bと、フィン40bとフィン40aとの間にある前方ノズルセクション30cと、フィン40aとシャフトブラケットアーム11aとの間にある前方ノズルセクション30dと、のみから構成される。その他のすべての実施形態の特徴は、具体的には
図5に設けられているフィン40a、40b、40cの配置構成及びシャフトブラケットアーム11a、11bの配置構成は、
図1の実施形態と同じである。
【0055】
図1と同様に、
図6の代替実施形態における装置20は、2つのシャフトブラケットアーム11a、11bを備える。
図6において、
図1による配置構成100の代替実施形態と相違する点は、単一のフィン40aのみが設けられていること、及び、ノズルセクション30aの形態である前方ノズル30が、単一のノズルセグメントを形成し、フィン40aとシャフトブラケットアーム11aとの間にのみ設けられていることである。これ以外には、さらなる前方ノズルセグメント又は前方ノズル部分は設けられていない。フィン40aは、シャフトブラケット10から前方ノズル30まで延在する内側部分401と、前方ノズル30から自由端403まで延在する外側部分402とを有する。
【0056】
上述の例示的な実施形態は、上記説明中に述べられた本発明による配置構成の第2代替実施形態に該当し、該実施形態において、装置は、前方ノズルと、各々が水中翼として形成された少なくとも1つのフィンとを備える。それに対して、
図7に例示されている以下に説明される代替実施形態は、上記説明中に述べられた本発明による配置構成の第1代替実施形態に該当し、該実施形態において、少なくとも1つのシャフトブラケットアームは、装置の水中翼として形成され、該シャフトブラケットアームの他には、いかなる水中翼も、具体的にはフィンとして形成されたいかなる水中翼も設けられていない。
【0057】
図1~
図6と同様に、
図7は、中央ウェブ51を有する船体50の背面図であり、中央ウェブ51の両側には、それぞれ、プロペラシャフト12が取り付けられたシャフトブラケット10が設けられている。シャフトブラケット10及び3つのシャフトブラケットアーム11a、11b、11cはそれぞれ、二軸船の所要駆動力を低減するための装置20を構成する。シャフトブラケット10は、シャフトブラケットアーム11a、11b、11cを介して船体50に固定して接続される。シャフトブラケットアーム11a、11b、11cは、シャフトブラケット10から放射状に延出しており、該シャフトブラケットアーム11a、11b、11cは、一端においてシャフトブラケット10に固定され、他端において船体50に固定されている。本実施形態では、3つのシャフトブラケットアーム11a、11b、11cのすべてが水中翼プロファイルを有する、すなわちそれら3つすべてが装置20の水中翼を形成している。この他には、さらなる水中翼は設けられておらず、具体的にはフィンが設けられていない。本実施形態では、前方ノズルも設けられていない。シャフトブラケットアーム11a、11b、11c及びシャフトブラケット10は、
図1~
図6の実施形態に基づいて構成され得る。
図7による実施形態では、2つの装置20が垂直軸511について対称である。基本的には、ある特定の実施形態であるか否かにかかわらず、該2つの装置は、(垂直軸について見ると)対称、具体的には軸対称、である実施形態が好ましい。これはなぜなら、多くの二軸船において、長手方向で見た船体の2つの半体は、原則的には対称に形成されるからである。
【0058】
図8A及び
図8Bは、装置20を側面図(
図8A)及び斜め前方から見た斜視図(
図8B)にて示す。装置20は、
図3に示される装置と同様に形成されている、つまり、装置20は、2つのシャフトブラケットアームと、全周が完全に閉じているノズルリング30と、内側部分401及び外側部分402を有する2つのフィン40a、40bと、内側部分401のみを有するさらなる2つのフィン40c、40dとを備えて形成されている。装置20は、さらに、プロペラシャフト12が取り付けられているシャフトブラケット10を備える。シャフトブラケットは、後端部101と前端部102とを有する。
図8Aから分かるように、装置20は、あるいは具体的には前方ノズル30は、それぞれ、前端部102よりも後端部101にかなり近接して配置されている。船舶の進行方向における延在具合を見ると、フィン40a、40b、40c、40dは前方ノズル30よりもわずかに短く、それによって前方ノズルの一部分は、前後方向におけるフィン40a、40b、40c、40dと前方ノズル30との間の接触領域において、各フィンを超えて突出している。それに対して、船舶の進行方向において、シャフトブラケットアーム11a、11bは前方ノズルよりも長いため、シャフトブラケットアーム11a、11bは、前方ノズルを越えて前方及び後方に突出している(具体的には
図8A参照)。
図8A及び
図8Bの説明図における前方ノズル30は、3つの別体のノズルセグメント301、302、303から構成され、これらノズルセグメント301、302、303が組み合わされて、周が閉じた1つのノズルリング30を形成する。ノズルセグメント301は、シャフトブラケットアーム11a、11b間に配置されてそれらに固定される。ノズルセグメント302は、その一方の側でシャフトブラケットアーム11bに接続され、他方側の端部で接合部304にて別のノズルセグメント303に接続される。ノズルセグメント303は、接合部304にてノズルセグメント302に接続され、また、他方側の端部でシャフトブラケットアーム11aに接続される。
【0059】
船舶の進行方向との関係において、装置20の下流側には、プロペラシャフト12により駆動されるプロペラ13が設けられている。プロペラ13は、シャフトブラケット10の後端部101に直接隣接している。前方ノズル30は、プロペラ13よりも小さな径を有する。例えば、前方ノズルの直径は、プロペラの直径の90%未満、好ましくは75%未満、より好ましくは60%未満とすることができる。フィンは、具体的には(内側部分401と外側部分402とを有する)フィン40a、40bは、プロペラの直径の半分の長さより短い長さを有する。船舶の進行方向との関係で、プロペラ13のさらに下流を見ると、舵60が設けられている。船体50に固定して接続されるスケグ52は、舵60の上方において舵60に続いて設けられている。特に
図8Aからわかるように、プロペラ13又はそのプロペラハブは、舵60から所定の距離d
1をおいて配置されている。
【0060】
図9A及び
図9Bによる実施形態は、
図8A及び
図8Bの実施形態と同様に構成される。具体的には、装置20ならびに対応する要素であるシャフトブラケットアーム11a、11b、シャフトブラケット10、前方ノズル30、及び、フィン40a、40b、40c、40dは、同様に形成される。
図9A及び
図9Bによる実施形態を一方とし、
図8A及び
図8Bによる実施形態を他方として、両者の唯一の違いは、
図9A及び
図9Bによる実施形態において舵60が推進バルブ61を備えることである。推進バルブ61の先端611とプロペラハブ131との間の距離d
2は、推進バルブを備えない
図8A及び
図8Bによる実施形態における距離d
1よりも、著しく短い。
【0061】
図10A及び
図10Bは、シャフトブラケット10の拡大斜視図を示す。
図10Aの説明図では、2つのシャフトブラケットアーム11a、11b、ならびに、4つのフィン40a、40b、40c、及び40dが図示されており、これらはいずれも、それぞれの一方の端部でシャフトブラケット10に固定されている。明確にするために、装置におけるその他の構成部材又は構成要素はいずれも図示されていない。具体的には、本説明図では、前方ノズルが図示されていない。
図10A及び
図10Bの説明図は斜視図であって、視認できない個々の要素の領域は破線で示されている。
図10Bは
図10Aと同じ図であるが、
図10Bは、シャフトブラケット10a及びシャフトブラケットアーム11aのみを示しており、明確にするために、その他のシャフトブラケットアーム11bならびにフィン40a、40b、40c、40dは図示されていない。
図10Aから分かるように、各フィンは、丸みを帯びた吸引側404と平坦なあるいは平坦状の圧力側405とを備える、水中翼プロファイルを有する。また、シャフトブラケットアーム11a、11bも、丸みを帯びたあるいはより湾曲した吸引側113とより平坦状のあるいは平坦な圧力側114とを備えることが見て取れるであろう。また、フィン40a、40b、40c、40dならびにシャフトブラケットアーム11a、11bは、それぞれ、捻転する(entwined)ようにあるいはねじれるように形成されていることが見て取れるであろう。また、シャフトブラケットアーム11a、11bならびにフィン40a、40b、40c、40dは、水流方向14に対して迎え角を有していることも見て取れる。迎え角γは、シャフトブラケットアームプロファイルの翼弦線115又はフィンプロファイルの翼弦線406のいずれかを一方の側とし、水流方向14を他方の側とし、この両者間の角度によって形成される。
【符号の説明】
【0062】
100…配置構成、101…シャフトブラケット後端部、102…シャフトブラケット前端部、10…シャフトブラケット、11a,11b,11c…シャフトブラケットアーム、111…シャフトブラケットアームの内側部分、112…シャフトブラケットアームの外側部分、113…シャフトブラケットアームの吸引側、114…シャフトブラケットアームの圧力側、115…シャフトブラケットアームの翼弦線、12…プロペラシャフト、13…プロペラ、131…プロペラハブ、14…水流方向、20…装置、30…前方ノズ
ル、301,302,303…前方ノズルセグメント、304…接合部、30a,30b,30c,30d,30e,30f…前方ノズルセクション、40a,40b,40c,40d…フィン、401…フィンの内側部分、402…フィンの外側部分、403…フィンの自由端、404…フィンの吸引側、405…フィンの圧力側、406…翼弦線フィン、50…船体、51…船体の中央ウェブ、511…垂直対称軸、52…スケグ、60…舵、61…推進バルブ、611…推進バルブの前側、d1,d2…角距離、α…フィンの角距離、β…シャフトブラケットアームの角距離、γ…迎え角。