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特許7535794ナチュラルキラー細胞のエクスビボ増殖のための方法およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞のエクスビボ増殖のための方法およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240809BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20240809BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240809BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240809BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240809BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240809BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALN20240809BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALN20240809BHJP
   C07K 14/55 20060101ALN20240809BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20240809BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240809BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20240809BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20240809BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240809BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/51
A61P37/02
A61K45/00
A61K31/454
A61K39/395 N
C12N5/0786
C12N5/0784
C07K14/55
C12M3/00
C12N5/10
C12P21/02 K
C12N15/24
C12N15/63 Z
【請求項の数】 55
(21)【出願番号】P 2021530868
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2019062639
(87)【国際公開番号】W WO2020112493
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】62/773,132
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュポール、エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】レズヴァニ、ケイティ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】NINA SHAH; ET AL,ANTIGEN PRESENTING CELL-MEDIATED EXPANSION OF HUMAN UMBILICAL CORD BLOOD YIELDS LOG-SCALE EXPANSION OF NATURAL KILLER CELLS WITH ANTI-MYELOMA ACTIVITY,PLOS ONE,2013年10月18日,Vol. 8, No. 10,p. E76781(1-9),https://doi.org/10.1371/journal.pone.0076781
【文献】SHAH NINA,EX VIVO EXPANDED CORD BLOOD NATURAL KILLER CELLS AS A NOVEL THERAPEUTIC FOR MULTIPLE MYELOMA,[ONLINE],TEXAS MEDICAL CENTER LIBRARY,2015年08月,p. I-X, 1-36,https://pdfs.semanticscholar.org/ccd0/71e9511c477b9fefb7f2462ff9849730389e.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12M 3/00
C12P 21/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖のためのエクスビボ方法であって、
(a)臍帯血由来の単核細胞(MNC)の出発集団を取得するステップと;
(b)抗原提示細胞(APC)とIL-2の存在下でMNCを刺激するステップと、前記APCが、膜結合型IL-21(mbIL-21)を発現するように操作されており;
(c)前記細胞をAPCで再刺激して、増殖したNK細胞を生成するステップとを含み、
前記方法が、バイオリアクターで実施され、
前記APCがユニバーサル抗原提示細胞(uAPC)であり、前記uAPCが、(1)CD48および/またはCS1(CD319)と、(2)膜結合型インターロイキン-21(mbIL-21)と、(3)41BBリガンド(41BBL)とを発現するように操作されている、
方法。
【請求項2】
前記APCが、IL-21、IL-15、IL-7、IL-18、および/またはIL-2を発現するように操作されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記uAPCがCD48を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記uAPCがCS1を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記uAPCがCD48およびCS1を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、CD3陽性の細胞を枯渇させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記枯渇がステップ(b)と(c)の間に実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が前記バイオリアクターから除去される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記臍帯血からMNCの出発集団を得るステップが、デキストラン、ヒト血清アルブミン(HSA)、DNAse、および/または塩化マグネシウムの存在下で臍帯血を解凍することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記臍帯血からMNCの出発集団を取得するステップが、デキストランおよびDNaseの存在下で臍帯血を解凍することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記臍帯血が、10%デキストランの存在下で洗浄される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記臍帯血が塩化マグネシウムの存在下で懸濁される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記塩化マグネシウムが200mMの濃度である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
取得するステップが、単核細胞(MNC)を得るためにフィコール密度勾配遠心分離を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、ステップ(b)中、いかなる培地成分の除去または追加も含まない、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記バイオリアクターがガス透過型バイオリアクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)の前記刺激するステップが、3~5Lの培地中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記APCがガンマ照射される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記MNCとAPCが、1:2の比で培養されている、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記IL-2が、50~200IU/mLの濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記IL-2が、100IU/mLの濃度である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記IL-2が、2~3日ごとに補充される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(b)が、6~8日間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)が7日間実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)が前記細胞の分割を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞がIL-2を2回補給される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、3、4、5、または6つのバイオリアクターの前記使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、10未満のバイオリアクターの前記使用を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記NK細胞が、少なくとも500倍、800倍、1000倍、3000倍、または5000倍に増殖される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記バイオリアクターで前記NK細胞を培養することにより、静置液体培養と比較して1000倍を超えるNK細胞が生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、ヒト白血球抗原(HLA)マッチングを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記NK細胞の出発集団が、ハプロタイプ一致ドナーから得たものでない、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が15日未満で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が14日で実施される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記増殖したNK細胞が、末梢血から増殖したNK細胞を含むように、抗腫瘍活性が増強されている、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記増殖したNK細胞が、末梢血から増殖したNK細胞と比較して、細胞周期、細胞分裂、および/またはDNA複製遺伝子のより高い発現を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記増殖したNK細胞が、末梢血から増殖したNK細胞と比較して、より高い増殖能力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記増殖したNK細胞が疲弊を示さない、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
疲弊が、パーフォリン、グランザイム、CD57、KLRG1、およびPD1の発現を測定することにより検出される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記増殖したNK細胞が、パーフォリンおよびグランザイムの高発現を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記増殖したNK細胞が、CD57、KLRG1、およびPD1の低発現を有するか、またはこれらを発現しない、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記増殖したNK細胞が、臨床的に適切な用量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記臍帯血が、凍結した臍帯血である、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記凍結した臍帯血が感染症について試験される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記臍帯血が、プールされた臍帯血である、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記臍帯血が、3、4、5、6、7、または8の個々の臍帯血ユニットからプールされる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記NK細胞が自己でない、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記NK細胞が同種異系でない、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記uAPCが、内因性HLAクラスI、II、またはCD1d分子を本質的に発現しない、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記uAPCが、ICAM-1(CD54)およびLFA-3(CD58)を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記uAPCが、白血病細胞由来のaAPCとしてさらに定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記白血病細胞由来のaAPCが、K562細胞としてさらに定義される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記増殖したNK細胞を凍結保存することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
請求項1に記載の方法によって生成されたNK細胞の集団と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項55】
対象の疾患または障害の治療に使用するための、請求項1に記載の方法によって生成された有効量のNK細胞を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる2018年11月29日出願の米国特許仮出願第62/773,132号に対する優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、一般に、細胞生物学、分子生物学、免疫学、および医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖のための方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、いくつかの異なる血液の悪性腫瘍および固形腫瘍を有する患者に対する細胞免疫療法の刺激的な供給源として浮上している;しかし、養子移入されたNK細胞を使用するほとんどの研究は、自己のヒト白血球抗原(HLA)に適合したドナーまたはハプロタイプ一致のドナー;長く複雑な増殖手順;注入された細胞の不十分な持続性および不十分なインビボ増殖;ならびに期待外れの抗腫瘍活性が必要であることによって制限されている。
【0004】
NK細胞の生成に理想的な細胞源はよくわかっていない。患者(すなわち、自己)または成人同種異系ドナーの末梢血NK(PB-NK細胞)細胞が最も一般的に使用される;しかし、このアプローチは、白血球除去輸血を受けるために、6つのHLA分子のうちの少なくとも3つがレシピエントと一致している自発的なドナーを必要とする。成人PB NK細胞のもう一つの欠点は、養子移入の後のインビボ増殖および持続性が最適以下であることである。したがって、臍帯血(CB)は、世界中のCBバンクに100万を超えるCBユニットが凍結されて使用できる状態になっている膨大な世界在庫を考えると、NK細胞を生成するための造血細胞の魅力的な供給源である。
【0005】
CB-NK細胞は、固有の特性を有し、その特性により、CB-NK細胞は、細胞周期、細胞分裂およびDNA複製に関連する遺伝子のより高い発現をはじめとする養子療法のために末梢血から増殖させたNK細胞よりも優れていることが示されている。CBの普及の障害は、臨床的に適切である用量で冷凍CBユニットから機能性NK細胞を増殖させることが難しいことである。したがって、CBからNK細胞を増殖させる改善された方法に対する、まだ対処されていない必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、本開示は、抗原提示細胞(APC)とIL-2の存在下で臍帯血由来の単核細胞(MNC)を刺激するステップ;およびこの細胞をAPCで再刺激して、増殖したNK細胞を生成するステップを含む、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖のためのエクスビボ方法を提供し、少なくとも一部の例では、本方法はバイオリアクター内で実施される。刺激するステップは、MNCをNK細胞に向けることができる。再刺激するステップは、IL-2の存在を含んでいても含んでいなくてもよい。具体的な態様では、本方法は、刺激するステップ中にいかなる培地成分の除去または追加も含まない。具体的な態様では、本方法は、15日未満などの特定の時間枠内で、例えば14日で実施される。
【0007】
特定の実施形態では、本開示は、(a)臍帯血由来の単核細胞(MNC)の出発集団を取得するステップ;(b)抗原提示細胞(APC)とIL-2の存在下でMNCを刺激するステップ;および(c)該細胞をAPCで再刺激して、増殖したNK細胞を生成するステップとを含む、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖のためのエクスビボ方法を提供する。この方法は、バイオリアクターで実施され、適正製造基準(GMP)に準拠している。ステップ(b)の刺激は、MNCをNK細胞に向けることができる。ステップ(c)は、IL-2の存在を含んでいても含んでいなくてもよい。具体的な態様では、本方法は、ステップ(b)中にいかなる培地成分の除去または追加も含まない。具体的な態様では、本方法は、15日未満で、例えば14日で実施される。
【0008】
一部の態様では、本方法は、例えばCD3などの1つまたは複数の具体的なマーカーに陽性の細胞を枯渇させることをさらに含む。特定の態様では、枯渇させるステップは、(b)と(c)の間に実施される。一部の態様では、細胞は、CD3枯渇のためにバイオリアクターから取り出され、ステップ(c)のためにバイオリアクターに入れられる。
【0009】
特定の態様では、臍帯血からMNCの出発集団を得るステップは、デキストラン、ヒト血清アルブミン(HSA)、DNAse、および/または塩化マグネシウムの存在下で臍帯血を解凍することを含む。具体的な態様では、臍帯血からMNCの出発集団を取得するステップは、デキストランおよび/またはDNaseの存在下で臍帯血を解凍することを含む。具体的な態様では、臍帯血は、5~20%、例えば10%のデキストランの存在下で洗浄される。特定の態様では、臍帯血は、塩化マグネシウムの存在下で、例えば100~300mM、特に200mMの濃度で懸濁される。一部の態様では、取得するステップは、単核細胞(MNC)を得るためにフィコール密度勾配遠心分離を実施することを含む。
【0010】
特定の態様では、バイオリアクターは、ガス透過型バイオリアクターである。具体的な態様では、ガス透過型バイオリアクターは、G-Rex100MまたはG-Rex100である。一部の態様では、ステップ(b)の刺激は、3~5Lの培地、例えば3、3.5、4、4.5、または5Lの培地で実施される。
【0011】
一部の態様では、APCはガンマ照射される。特定の態様では、APCは、膜結合型IL-21(mbIL-21)を発現するように設計されている。具体的な態様では、APCは、IL-21、IL-15、および/またはIL-2を発現するように設計されている。一部の態様では、MNCとAPCは、1:2の比で培養されている。一部の態様では、IL-2は、50~200IU/mL、例えば100IU/mLの濃度である。具体的な態様では、IL-2は、2~3日ごとに補充される。
【0012】
具体的な態様では、ステップ(b)は、6~8日間、例えば7日間実施される。一部の態様では、ステップ(c)は、6~8日間、例えば7日間実施される。一部の態様では、ステップ(c)は、細胞の分割を含まない。具体的な態様では、細胞は、ステップ(c)中にIL-2を2回補給され、特定の例では、他の培地成分はステップ(c)中に追加または除去されない。
【0013】
一部の態様では、本方法は、3、4、5、または6つのバイオリアクターの使用を含む。具体的な態様では、本方法は、10未満のバイオリアクターの使用を含む。
【0014】
具体的な態様では、NK細胞は、少なくとも500倍、800倍、1000倍、1200倍、1500倍、2000倍、2500倍、3000倍、または5000倍に増殖される。具体的な態様では、NK細胞をバイオリアクター内で培養することにより、静置液体培養と比較して1000倍以上のNK細胞が生成される。
【0015】
特定の態様では、本方法は、ヒト白血球抗原(HLA)のマッチングを含まない。一部の態様では、NK細胞の出発集団は、ハプロタイプ一致ドナーからは得られない。
【0016】
一部の態様では、増殖したNK細胞は、末梢血から増殖したNK細胞を含むように、抗腫瘍活性が増強されている。特定の態様では、増殖したNK細胞は、末梢血から増殖したNK細胞と比較して、1つまたは複数の細胞周期遺伝子、1つまたは複数の細胞分裂遺伝子、および/または1つまたは複数のDNA複製遺伝子の発現がより高い。一部の態様では、増殖したNK細胞は、末梢血から増殖したNK細胞と比較して、より高い増殖能力を有する。一部の態様では、増殖したNK細胞は疲弊を示さない。特定の態様では、疲弊は、パーフォリン、グランザイム、CD57、KLRG1、および/またはPD1の発現を測定することによって検出される。一部の態様では、増殖したNK細胞は、パーフォリンおよびグランザイムの高発現を有する。特定の態様では、増殖したNK細胞は、CD57、KLRG1、および/またはPD1の発現が低いか、またはこれらを発現しない。
【0017】
一部の態様では、増殖したNK細胞は、臨床的に適切な用量を含む。特定の態様では、臍帯血は凍結した臍帯血である。具体的な態様では、凍結した臍帯血は、1つまたは複数の感染症、例えばA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、クルーズトリパノソーマ、HIV、ヒトTリンパ球向性ウイルス、梅毒、ジカウイルスなどについて検査されている。一部の態様では、臍帯血は、例えば3、4、5、6、7、または8の個々の臍帯血ユニットからなどからプールされた臍帯血である。
【0018】
一部の態様では、NK細胞は、例えばレシピエント個人に関して、自己ではない。特定の態様では、NK細胞は、例えばレシピエント個人に関して、同種異系ではない。
【0019】
一部の態様では、APCは、ユニバーサル抗原提示細胞(uAPC)である。特定の態様では、uAPCは、(1)CD48および/またはCS1(CD319)、(2)膜結合型インターロイキン-21(mbIL-21)、および(3)41BBリガンド(41BBL)を発現するように設計されている。一部の態様では、uAPCは、CD48を発現する。特定の態様では、uAPCは、CS1を発現する。具体的な態様では、uAPCは、CD48およびCS1を発現する。一部の態様では、uAPCは、内因性HLAクラスI、II、および/またはCD1d分子を本質的に発現しない。特定の態様では、uAPCは、ICAM-1(CD54)および/またはLFA-3(CD58)を発現する。具体的な態様では、uAPCは、K562細胞などの白血病細胞由来のaAPCとしてさらに定義される。
【0020】
さらなる態様では、本方法は、増殖したNK細胞を凍結保存することをさらに含む。
【0021】
さらに本明細書では、実施形態(例えば、(a)、臍帯血由来の単核細胞(MNC)の出発集団を取得するステップ;(b)抗原提示細胞(APC)とIL-2の存在下でMNCを刺激するステップ;および(c)該細胞をAPCで再刺激して、増殖したNK細胞を生成するステップ、この際、本方法は、バイオリアクター内で実施され、GMPに準拠している)により生成されるNK細胞の集団と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0022】
さらなる実施形態は、対象の疾患または障害の治療に使用するための、実施形態(例えば、(a)、臍帯血由来の単核細胞(MNC)の出発集団を取得するステップ;(b)抗原提示細胞(APC)とIL-2の存在下でMNCを刺激するステップ;および(c)該細胞をAPCで再刺激して、増殖したNK細胞を生成するステップ、この際、本方法は、バイオリアクター内で実施され、GMPに準拠している)により生成される有効量のNK細胞を含む組成物を提供する。
【0023】
もう一つの実施形態は、対象の免疫関連障害の治療のための、実施形態(例えば、(a)、臍帯血由来の単核細胞(MNC)の出発集団を取得するステップ;(b)抗原提示細胞(APC)とIL-2の存在下でMNCを刺激するステップ;および(c)該細胞をAPCで再刺激して、増殖したNK細胞を生成するステップ、この際、本方法は、バイオリアクター内で実施され、GMPに準拠している)により生成される有効量のNK細胞を含む組成物の使用を提供する。
【0024】
もう一つの実施形態では、実施形態(例えば、(a)、臍帯血由来の単核細胞(MNC)の出発集団を取得するステップ;(b)抗原提示細胞(APC)とIL-2の存在下でMNCを刺激するステップ;および(c)該細胞をAPCで再刺激して、増殖したNK細胞を生成するステップ、この際、本方法は、バイオリアクター内で実施され、GMPに準拠している)にしたがって増殖したNK細胞の有効量を対象に投与することを含む、疾患または障害を治療するための方法が提供される。
【0025】
さらなる態様では、本方法は、化学療法を投与することをさらに含む。一部の態様では、化学療法は、増殖したNK細胞の前に投与される。特定の態様では、化学療法は骨髄破壊的である。他の態様では、化学療法は骨髄非破壊的である。一部の態様では、化学療法はリンパ球除去化学療法である。具体的な態様では、リンパ球除去化学療法は、フルダラビンに基づくリンパ球除去化学療法である。具体的な態様では、化学療法はレナリドミドである。
【0026】
具体的な態様では、本方法はHLAマッチングを実施することを含まない。具体的な態様では、対象は、移植片対宿主病または他の毒性を発症しない。
【0027】
一部の態様では、疾患または障害は免疫関連障害である。特定の態様では、免疫関連障害は、自己免疫障害、移植片対宿主病、同種移植片拒絶反応、または炎症状態である。一部の態様では、疾患または障害は癌、例えば多発性骨髄腫である。
【0028】
さらなる態様では、本方法は、少なくとも第2の治療薬を投与することをさらに含む。一部の態様では、少なくとも第2の治療薬は、化学療法、免疫療法、手術、放射線療法、またはバイオセラピーを含む。一部の態様では、NK細胞および/または少なくとも第2の治療薬は、静脈内、腹腔内、気管内、腫瘍内、筋肉内、内視鏡的、病巣内、経皮的、皮下、局所性に、あるいは直接注射または灌流によって投与される。
【0029】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の精神および範囲内のさまざまな変更および修正は、詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示としてのみ記載されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに実証するために含まれている。本開示の方法および組成物は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つまたは複数を参照することによってよりよく理解され得る。
【0031】
図1A】臍帯血(CB)NK細胞では、末梢血(PB)NK細胞と比較して、細胞増殖に関与する遺伝子の発現が高いことを示す図である。
図1B】臍帯血(CB)NK細胞では、末梢血(PB)NK細胞と比較して、細胞活性化に関与する遺伝子の発現が高いことを示す図である。
図1C】臍帯血(CB)NK細胞では、末梢血(PB)NK細胞と比較して、細胞間接着に関与する遺伝子の発現が高いことを示す図である。
図1D】臍帯血(CB)NK細胞では、末梢血(PB)NK細胞と比較して、細胞周期に関与する遺伝子の発現が高いことを示す図である。
図1E】臍帯血(CB)NK細胞では、末梢血(PB)NK細胞と比較して、DNA複製に関与する遺伝子の発現が高いことを示す図である。
【0032】
図2】CBのNK細胞がPB-NK細胞よりも高い増殖能力を有することを示す図である。
【0033】
図3】急速にエクスビボで増殖したCB NK細胞(RE-CB NK細胞)が、疲弊の表現型のエビデンスを示さないことを示す図である。
【0034】
図4】RE-CB NK細胞は、BLIイメージング(右パネル)および生存率(左パネル)に示されるように、多発性骨髄腫(MM)の免疫不全マウスモデルにおいて強固な抗腫瘍活性を誘導する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
特定の実施形態では、本開示は、NK細胞のエクスビボ増殖のための方法を提供する。本発明の方法は、凍結CBユニットなどのCBユニットからの適正製造基準(GMP)準拠し高度に機能的なNK細胞を製造するための堅牢で急速な増幅プロトコールを提供する。したがって、本発明の方法は、生きているドナーがいなくても実施することができる。堅牢なNK細胞は、新鮮または凍結した末梢血細胞から生成することもできる。本方法は、NK細胞に特異的な増殖能力を有していても有していなくてもよい、ユニバーサル抗原提示細胞(uAPC)などの抗原提示細胞(APC)の存在下での増殖を含むことがある。急速にエクスビボで増殖したCB NK細胞(RE-CB NK細胞)は、新鮮な状態で注入することもできるし、後日使用することができるように最適化された条件を使用して凍結保存することもできる。重要なことに、本方法は、臨床用量のNK細胞の大規模増殖を提供する。
【0036】
NK細胞の増殖は、バイオリアクターなどの閉鎖系で実施することができる。本研究は、CB-NK細胞が、静置液体培養系よりも一貫した堅牢な増殖、例えば1,000倍以上などで生成され得ることを示した。
【0037】
一部の態様では、本発明のGMPに準拠した手順には、NK細胞培養の第1週と第2週に最適化された特定の培養条件の使用が含まれている。培地の量を増加させること、したがって培養液中の細胞の濃度を下げることは、増殖の大きさ、培養を実施するために必要な時間とロジスティクス、および手順にかかる費用に目覚ましい効果を及ぼした。最初の7日間の培養について表2A、そして第2週の培養について表2Bに示されるように、培地量が少なく細胞濃度が高い場合(G-Rex100)と比較して、培地量が多く細胞濃度が低い場合(G-Rex100M)では、有意に良好な拡大倍数が達成される。最適化された手順に必要なバイオリアクターは少なくなり、同じまたはそれ以上のNK細胞用量を生成するために必要な細胞は少なくなる。これが示されるのは例えば7日目で、同じ用量を達成するため各G-Rex100Mに播種するのに必要な細胞数は4分の1である。0~7日目は、従来法のように細胞に補給しないなど、培養への介入は必要ない。7~14日目の最適化された手順では、細胞は分割を必要とせず、2回だけ補給される(ただし、別の方法では、1回、3回、または4回以上補給される)。より少ない培地およびサイトカインが使用され、技術者の時間も減るため、コストが削減され、ロジスティクスが向上する。重要なのは、7~14日目の培養に必要な介入が最小限であること(例えば、IL2が2回追加だけ)である。これにより、技術的な時間が節約されるだけでなく、微生物汚染の可能性が大幅に低下する。これは、培養物を1日おきに分割して補給を繰り返すため、微生物汚染のリスクが高くなる、目下使用されている現在のNK細胞増殖手順とは対照的である。表2Cに要約されるように、最適化されたアプローチは、技術者の時間を29%削減する。
【0038】
本研究は、急速にエクスビボで増殖したCB NK細胞(RE-CB NK)が、たとえHLAがマッチングしない場合でも、毒性または移植片対宿主病のリスクなく、安全に注入され得ることを示した。また、RE-CB NK細胞を注入する前に、化学療法(例えば、幹細胞レスキューまたはリンパ球除去化学療法を伴うまたは伴わない、骨髄破壊的、骨髄非破壊的または強度を下げた化学療法など)を投与すると、CB-NK細胞のインビボでの増殖および活性化を促進し、腫瘍の動物モデルならびに患者において腫瘍の退縮に関連することが示された。したがって、これらの細胞は、まさに「すぐに使える」免疫療法製品であり、注入前に追加の治療を必要とし得る患者に最大の柔軟性をもたらす。
【0039】
したがって、本開示は、血液悪性腫瘍および固形腫瘍などの癌の治療のための方法をさらに提供する。治療は、幹細胞レスキューまたはリンパ球除去化学療法を伴うかまたは伴わない、骨髄破壊的、骨髄非破壊的、または強度を下げた化学療法とともにNK細胞を投与することを含み得る。化学療法は、NK細胞の注入の前に投与されてもよい。NK細胞は、CD16などのNK細胞受容体を標的とする治療法と組み合わせて投与されることで、細胞を標的に向け直し、したがってさまざまな腫瘍に対する応答を高めることができる。CD16などのNK細胞受容体を標的とする治療法は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、または三重特異性抗体であり得る。特定の例では、NK細胞は、化学療法および/または他の免疫療法と組み合わされない。
【0040】
I.定義
本明細書において、明記された成分に関して「本質的に含まない」とは、明記された成分のいずれも意図的に組成物に配合されていないこと、および/または、汚染物質としてまたは微量でのみ存在することを意味するために使用される。そのため、組成物の意図しない汚染に起因する明記された成分の総量は、0.05%をはるかに下回り、好ましくは0.01%を下回る。具体的な例では、標準的な分析方法で明記された成分の量を検出することができない組成物がある。
【0041】
本明細書の明細書において使用される場合、「a」または「an」は、1つまたは複数を意味し得る。本明細書の1つまたは複数の特許請求の範囲において使用される場合、「含む」という単語と併せて使用される場合、「a」または「an」という単語は、1つまたは複数を意味し得る。
【0042】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すと明示的に示されているか、または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は代替物と「および/または」のみを指す定義を支持する。本明細書において「別の」は、少なくとも第2のまたはそれより多くのものを意味する。「約」、「実質的に」および「およそ」という用語は、一般に、述べた値のプラスまたはマイナス5%を意味する。
【0043】
「免疫障害」、「免疫関連障害」、または「免疫介在性障害」とは、免疫応答が疾患の発症または進行に重要な役割を果たす障害を指す。免疫介在性障害には、自己免疫障害、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主病ならびに炎症状態およびアレルギー状態が含まれる。
【0044】
疾患または状態を「治療すること」または治療は、疾患の徴候または症状を軽減するために、患者に1つまたは複数の薬物を投与することを含み得るプロトコールを実行することを指す。望ましい治療効果には、疾患の進行速度の低下、病状の寛解または緩和、および予後の緩解または改善が含まれる。軽減は、疾患または状態の徴候または症状が現れる前、ならびにそれらが現れた後に起こり得る。したがって、「治療すること」または「治療」には、疾患または望ましくない状態を「予防すること」または「予防」が含まれ得る。さらに、「治療すること」または「治療」は、徴候または症状の完全な軽減を必要とせず、治癒を必要とせず、患者にわずかな効果しか及ぼさないプロトコールを特に含む。
【0045】
本願を通して使用される「治療上の利益」または「治療上有効」という用語は、この状態の医学的治療に関して対象の幸福を促進または増強するあらゆるものを指す。これには、限定されるものではないが、疾患の徴候または症状の頻度または重症度の低下が含まれる。例えば、癌の治療は、例えば、腫瘍のサイズの縮小、腫瘍の浸潤性の低下、癌の成長速度の低下、または転移の予防を含み得る。癌の治療は、癌を有する対象の生存を延長することを指すこともある。
【0046】
「対象」および「患者」とは、霊長類、哺乳動物、および脊椎動物などのヒトまたは非ヒトのいずれかを指す。具体的な実施形態では、対象はヒトである。
【0047】
「医薬的または薬理学的に許容される」という語句は、必要に応じてヒトなどの動物に投与された場合に、有害反応、アレルギー反応またはその他の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。抗体またはさらなる有効成分を含む医薬組成物の調製は、本開示を踏まえて、当業者に公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物が、FDA Office of Biological Standardsが要求する無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度基準を満たす必要があることは理解されるであろう。
【0048】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される担体」には、ありとあらゆる水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、生理食塩水、非経口ビヒクル、例えば塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル)、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、水分および栄養分補給剤、当業者に公知の材料およびそれらの組合せなどが含まれる。医薬組成物中のさまざまな成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメーターに従って調整される。
【0049】
「ハプロタイピング」、「HLAマッチング」または「組織タイピング」という用語は、例えば特定の対象のリンパ球にどのHAL遺伝子座(または遺伝子座)が発現するかを決定することによって対象のハプロタイプまたは組織型を特定するために使用される方法を指す。しかし、特定の実施形態では、この方法は、ヒト白血球抗原(HLA)マッチングを含まない。HLA遺伝子は、6番染色体の短腕の領域である主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に位置し、細胞間相互作用、免疫応答、臓器移植、癌の発生、および疾患に対する感受性に関与している。移植に重要な6つの遺伝子座があり、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DR、HLA-DP、およびHLA-DQと呼ばれている。各遺伝子座には、いくつかの異なる対立遺伝子のいずれかが存在し得る。ハプロタイピングに広く使用されている方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、対象のDNAを、MHC抗原をコードする遺伝子の既知のセグメントと比較する。遺伝子のこれらの領域の変動性は、対象の組織型またはハプロタイプを決定する。血清学的方法は、細胞の表面の血清学的に定義された抗原を検出するためにも使用される。HLA-A、-B、および-Cの決定基は、既知の血清学的手法で測定することができる。簡単に説明すると、対象のリンパ球(新鮮な末梢血から分離)を、すべての既知のHLA抗原を認識する抗血清とともにインキュベートする。細胞を、さまざまな種類の抗血清を含む顕微鏡ウェルを備えたトレイに広げる。細胞を30分間インキュベートした後、さらに60分間補体をインキュベートする。リンパ球がその表面に抗血清中の抗体に認識される抗原を有する場合、そのリンパ球は溶解される。染料を添加して、細胞膜の透過性および細胞死の変化を示すことができる。溶解によって破壊される細胞のパターンは、組織学的不適合性の程度を示している。例えば、HLA-A3の検査を受けている人のリンパ球が、HLA-A3の抗血清を含むウェルで破壊された場合、検査はこの抗原群に対して陽性である。
【0050】
「抗原提示細胞(APC)」という用語は、1つまたは複数の抗原を、免疫系の特定のエフェクター細胞によって認識可能なペプチドMHC複合体の形で提示することができ、それによって提示された1つまたは複数の抗原に対して有効な細胞性免疫反応を誘導することができる細胞のクラスを指す。「APC」という用語は、マクロファージ、B細胞、内皮細胞、活性化T細胞、および樹状細胞などの無傷の全細胞、あるいは、抗原を提示できる天然に存在する分子または合成分子、例えばβ2-ミクログロブリンと複合体化した精製MHCクラスI分子などを包含する。
【0051】
「機能的に閉じた」という用語は、系全体を密閉することによるか、または収集系とのすべての接続に滅菌バリアフィルターを設けることによって、流体の無菌性を確保するために密封された系を指す。
【0052】
「バイオリアクター」という用語は、細胞に栄養分を供給し、代謝産物を除去し、閉鎖された滅菌系で細胞増殖を行う物理化学的環境を提供する大規模な細胞培養システムを指す。具体的な態様では、生物学的および/または生化学的プロセスは、監視され制御された環境条件および操作条件、例えば、pH、温度、圧力、栄養分の供給、および廃棄物の除去などの下で発展する。本開示によれば、本発明の方法での使用に適したバイオリアクターの基本的な種類には、中空糸バイオリアクターが含まれる。
【0053】
II.NK細胞の増殖
特定の態様では、本開示は、CB由来のNK細胞の増殖に関する。NK細胞は、細胞周期、細胞分裂およびDNA複製に関与する遺伝子のより高い発現に関連する特有の利点を有し得る(図1A図1Eに示す通り)。したがって、本発明の方法は、CB由来NK細胞の増殖のための急速なGMP準拠の増殖プロトコールを提供する。
【0054】
例示的なプロトコールでは、臍帯血ユニット(例えば、20%または全部)を解凍し、フィコール密度勾配遠心分離を使用して単核細胞を分離することによりNK細胞が得られる。洗浄は、解凍後および単核細胞の分離後に行ってよい。次に、細胞をIL-2(100U/mL)およびAPC、例えばガンマ照射(100Gy)aAPC(例えば、クローン9膜結合型IL-21(mbIL-21)aAPCまたはuAPCなど)とともにインキュベートする。バイオリアクター、例えばG-Rexバイオリアクター内のNK細胞とaAPCの比は、2:1であってよい。2日目に、細胞培養にIL-2を補給し、増殖速度を監視する。6日目または7日目に、CD3+細胞は、Miltenyi XSカラムおよびSuperMACS(商標)セパレータを使用するなどによって枯渇する可能性がある。次に、IL-2を補給しながら細胞をIL-2(100U/mL)とともにインキュベートし、その後、14日目に回収した。
【0055】
解凍は、37℃の水浴中の滅菌床で行われてよい。培地は、L-グルタミンを含むRPMI 1640、Clicks培地、およびヒトAB(例えば、10%)血清を含んでいてもよい。洗浄は、450xGで10分間の遠心分離によって実施されてよい。洗浄液は、0.1~10%、例えば0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%などのHSA DPBS、10%のデキストラン DPBS、DNaseおよび塩化マグネシウムを含み得る。
【0056】
単核分離は、洗浄したCB細胞の一部でもチューブ内のFicoll-Paqueの上に層にすることによって実施されてよい。その後、細胞を遠心分離し、血漿が混入している上層と血漿を除去することができる。細胞をさらに遠心分離し、上清を除去し、細胞を培地に再懸濁してもよい。
【0057】
具体的な態様では、品質管理は、細胞数、生存率、キメラ現象、免疫表現型検査、不稔性、マイコプラズマPCR、グラム染色、エンドトキシン、クロムアッセイ、およびサイトカインアッセイ分析を実行することにより、プロセス全体を通じて実施される。
【0058】
NK細胞は、APCなどの設計されたフィーダー細胞の存在下で増殖されてよい。APCは、NK共刺激分子およびサイトカインを活性化するためのリガンドを発現することができる。例えば、APCは、CD48、CS1、IL-21、IL-2および/またはIL15を発現するUAPCであってよい。
【0059】
特定の実施形態では、NK細胞は、当技術分野で周知の方法によって臍帯血から誘導される。具体的な実施形態では、免疫細胞は、CB、例えばプールされたCBから分離される。具体的には、本発明の急速な増殖プロトコールは、凍結および解凍されたCBユニット由来または臨床用CBバンクから選択された新鮮なCBユニット由来のNK細胞を分離し増殖することを含み得る。CBは、2、3、4、5、6、7、8、10、またはそれ以上のユニットからプールされてよい。NK細胞は、自己であっても同種異系であってもよい。分離されたNK細胞は、細胞療法を投与される対象に対してハプロタイプが一致していてもよい。しかし、具体的な態様では、NK細胞は、自己でもなくHLA一致もしていない。NK細胞は、ヒトのCD16、CD56、CD8などの特定の表面マーカーによって検出することができる。
【0060】
特定の態様では、NK細胞の出発集団は、フィコール密度勾配遠心分離を使用して単核細胞を分離することによって得られる。細胞培養物は、CD3、CD14、および/またはCD19細胞を発現する任意の細胞を枯渇させてもよく、CD56/CD3細胞またはNK細胞の割合を決定するために特徴付けてもよい。
【0061】
細胞は、本発明のAPC、例えばUAPCなどの存在下で増殖させることができる。増殖は、約2~30日間、例えば3~20日間、特に12~16日間、例えば12、13、14、15、16、17、18、または19日間、具体的には約14日間であってよい。NK細胞とAPCSは、約3:1~1:3、例えば2:1、1:1、1:2など、具体的には約1:2の比で存在してよい。拡大培養は、増殖を促進するサイトカイン、例えばIL-2、IL-21、および/またはIL-18などをさらに含んでよい。サイトカインは、約10~500U/mL、例えば100~300U/mLなど、特に約200U/mLの濃度で存在してよい。サイトカインは、2~3日ごとなど、拡大培養で補充されてよい。APCは、CAR形質導入後など、少なくとも2回は培養に添加されてよい。
【0062】
増殖の後、NK細胞は直ちに注入されてもよく、凍結保存などにより保存されてもよい。特定の態様では、NK細胞は、約1、2、3、4、5日以内にバルク集団としてエクスビボで数日、数週間、または数ヶ月間増殖し得る。
【0063】
増殖したNK細胞は、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-α、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などのI型サイトカインを分泌することができ、それが自然免疫細胞と適応免疫細胞の両方、ならびに他のサイトカインおよびケモカインを活性化する。これらのサイトカインの測定を用いて、NK細胞の活性化状態を決定することができる。さらに、NK細胞の活性化を決定するための当分野で公知の他の方法を、本開示のNK細胞の特徴付けに使用してもよい。
【0064】
A.バイオリアクター
NK細胞は、バイオリアクターなどの機能的に閉じた系で増殖させることができる。増殖は、G-Rex 細胞培養装置などのガス透過型バイオリアクターで実施されてよい。バイオリアクターは、平均450mLの容量で1x10~3x10の間の総細胞をサポートすることができる。
【0065】
バイオリアクターは、静的バイオリアクター、攪拌フラスコバイオリアクター、回転壁容器バイオリアクター、中空糸バイオリアクターおよび直接灌流バイオリアクターを含む一般的なカテゴリにしたがって分類することができる。バイオリアクター内では、細胞は、遊離していてもよく、固定され、多孔質の3次元足場(ヒドロゲル)に播種されていてもよい。
【0066】
中空糸バイオリアクターは、培養中の物質移動を促進するために使用することができる。中空糸バイオリアクターは、中空糸をベースにした三次元細胞培養系であり、中空糸は、平行に配列された小型の半透性の毛細管膜であり、典型的な分子量カットオフ(MWCO)範囲は10~30kDaである。これらの中空糸膜は、中空糸バイオリアクターカートリッジを作成するために、管状のポリカーボネートシェル内に束ねられて収容される場合が多い。カートリッジ内には、入口ポートと出口ポートも取り付けられており、2つの区画、つまり、中空糸内部の毛細管内(IC)空間と中空糸を囲む毛細管外(EC)空間がある。
【0067】
したがって、本開示の場合、バイオリアクターは、中空糸バイオリアクターであり得る。中空糸バイオリアクターは、細胞が繊維の内腔内に埋め込まれており、培地が内腔外空間を灌流するか、あるいは、中空糸を通してガスおよび培地の灌流をもたらし、細胞は内腔外空間で成長する。
【0068】
中空糸は、バイオリアクター内の栄養分の送達と廃棄物の除去に適しているべきである。中空糸は、どんな形状であってもよく、例えば、円形で管状であってもよいし、同心円の形であってもよい。中空糸は、吸収性または非吸収性の膜で構成されていてよい。例えば、中空糸の適した成分には、ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリグラクチン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/トリメチレンカーボネート、セルロース、メチルセルロース、セルロース系高分子、セルロースエステル、再生セルロース、プルロニック(登録商標)、コラーゲン、エラスチン、およびそれらの混合物が含まれる。
【0069】
バイオリアクターは、細胞を播種する前にプライミングされていてもよい。プライミングは、PBSなどの緩衝液によるフラッシングを含み得る。プライミングは、バイオリアクターをフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質でコーティングすることも含み得る。次に、バイオリアクターは、アルファMEMなどの培地で洗浄されてよい。
【0070】
具体的な実施形態では、本発明の方法は、GRexバイオリアクターを使用するGRexフラスコの底面はガス透過膜であり、その上に細胞が存在する。そのため、細胞は高度に酸素化された環境にあり、高密度に成長させることができる。この系はスケールアップが容易であり、頻繁な培養操作をあまり必要としない。GRexフラスコは、標準的な組織培養インキュベーターおよび細胞実験装置と互換性があり、養子細胞療法(ACT)プログラムを開始するために必要な特殊な装置と設備投資を削減する。
【0071】
細胞は、約100~1,000細胞/cm、例えば約150細胞/cm、約200細胞/cm、約250細胞/cm、約300細胞/cm、例えば約350細胞/cm、例えば約400細胞/cm、例えば約450細胞/cm、例えば約500細胞/cm、例えば約550細胞/cm、例えば約600細胞/cm、例えば約650細胞/cm、例えば約700細胞/cm、例えば約750細胞/cm、例えば約800細胞/cm、例えば約850細胞/cm、例えば約900細胞/cm、例えば約950細胞/cm、または約1000細胞/cmの密度でバイオリアクターに播種されてよい。詳細には、細胞は、約400~500細胞/cm、例えば約450細胞/cmの密度でバイオリアクターに播種されてよい。
【0072】
バイオリアクターに播種される細胞の総数は、約1.0×10~約1.0×10細胞、例えば約1.0×10~5.0.0×10、5.0×10~1.0×10、1.0×10~5.0×10、5.0×10~1.0×10細胞であってよい。具体的な態様では、バイオリアクターに播種される細胞の総数は、約1.0×10~約3.0×10、例えば約2.0×10細胞である。
【0073】
細胞は、任意の適した細胞培地に播種されてよく、その多くは市販されている。例示的な培地としては、DMEM、RPMI、MEM、Media 199、HAMSなどが挙げられる。一実施形態では、培地は、アルファMEM培地、特にL-グルタミンを補充したアルファMEMである。培地には、成長因子、サイトカイン、ホルモン、またはB27、抗生物質、ビタミンおよび/または小分子薬1つまたは複数が補充されていてもよい。詳細には、培地は血清フリーであってよい。
【0074】
一部の実施形態では、細胞は室温でインキュベートされてよい。インキュベーターは加湿されていて、約5%のCOおよび約1%のOの雰囲気を有してよい。一部の実施形態では、CO濃度は、約1~20%、2~10%、または3~5%の範囲であってよい。一部の実施形態では、O濃度は、約1~20%、2~10%、または3~5%の範囲であってよい。
【0075】
B.抗原提示細胞
マクロファージ、Bリンパ球、樹状細胞を含む抗原提示細胞は、それらが特定のMHC分子を発現することによって区別される。APCは抗原を内在化し、その抗原の一部をMHC分子とともに外側の細胞膜に再発現させる。MHCは、複数の遺伝子座をもつ大型の遺伝子複合体である。MHCの遺伝子座は、クラスIおよびクラスIIMHCと呼ばれる2つの主要なクラスのMHC膜分子をコードする。Tヘルパーリンパ球は一般にMHCクラスII分子に関連する抗原を認識し、T細胞傷害性リンパ球はMHCクラスI分子に関連する抗原を認識する。MHCは、ヒトではHLA複合体と呼ばれ、マウスではH-2複合体と呼ばれる。
【0076】
場合によっては、aAPCは、実施形態の治療用組成物および細胞療法用製品を調製するのに有用である。抗原提示系の調製および使用に関する一般的なガイダンスについては、例えば、米国特許第6,225,042号、同第6,355,479号、同第6,362,001号および同第6,790,662号;米国特許出願公開第2009/0017000号および同第2009/0004142号;ならびに国際公開第2007/103009号を参照されたい。
【0077】
aAPC系は、少なくとも1つの外因性補助分子を含んでよい。任意の適した数および組合せの補助分子が用いられてよい。補助分子は、共刺激分子および接着分子などの補助分子から選択されてよい。例示的な共刺激分子には、CD86、CD64(FcγRI)、41BBリガンド、およびIL-21が含まれる。接着分子には、セレクチンなどの炭水化物結合糖タンパク質、インテグリンなどの膜貫通型結合糖タンパク質、カドヘリンなどのカルシウム依存性タンパク質、ならびに、例えば、細胞と細胞または細胞とマトリックスの接触を促進する細胞間接着分子(ICAM)などの単回膜貫通型免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリータンパク質が含まれ得る。例示的な接着分子には、LFA-3およびICAM、例えばICAM-1が含まれる。共刺激分子および接着分子を含む例示的な補助分子の選択、クローニング、調製、および発現に有用な技術、方法、および試薬は、例えば、米国特許第6,225,042号、同第6,355,479号、および同第6,362,001号に例示されている。
【0078】
C.ユニバーサル抗原提示細胞
本開示の一部の実施形態は、ユニバーサル抗原提示細胞(UAPCS)の製造および使用に関する。UAPCは、NK細胞およびT細胞などの免疫細胞の増殖に使用することができる。UAPCは、膜結合型IL-21(mbIL-21)および41BBL(CD137リガンド)を発現するように設計され得る。
【0079】
UAPCは、CD137リガンドおよび/または膜結合サイトカインを発現するように設計され得る。膜結合型サイトカインは、mIL-21またはmIL-15であり得る。具体的な実施形態では、UAPCは、CD137リガンドおよびmIL-21を発現するように設計されている。APCは、白血病細胞などの癌細胞から誘導され得る。APCは、内因性HLAクラスI、II、またはCD1d分子を発現しない場合がある。それらは、ICAM-1(CD54)およびLFA-3(CD58)を発現する場合がある。特に、APCは、CD137リガンドとmIL-21を発現するように設計されたK562細胞などのK562細胞であってよい。APCは照射されてよい。この技術は、レトロウイルス形質導入などの当技術分野で公知の方法によるものであってよい。
【0080】
サイトカインは、免疫細胞の全クラス(NK細胞を含む)に対して非常に強力な制御を発揮し、細胞の運命、細胞応答の活性および有効性に影響を及ぼす。NK細胞を活性化するサイトカイン刺激の力は、それらの「天然の」エフェクター機能が環境介入に非常に敏感であり、プライミングがインビボでNK細胞の挙動を調節し得ることを裏付ける。
【0081】
臨床的に適切な量のNK細胞を獲得する問題に対処するために、本発明の方法は、本発明のUAPCプラットフォーム技術におけるNK細胞増殖のドライバーとしてインターロイキン(IL-21)を使用する。ヒトにおいて、IL-10およびIL-21によるNK細胞刺激は、STAT3依存的にNKG2D発現を誘導する。サイトカイン受容体は多くの免疫細胞で同様の細胞シグナル伝達成分を共有しているが、NK細胞特異的シグナル伝達は増殖のためにIL-21受容体とSTAT3の結合に依存している。
【0082】
サイトカインのシグナル伝達は、リンパ球の生存および増殖の維持に重要である。インビボでは、IL-2投与が、NK細胞を増殖させるための唯一のFDAに認可された方法である。別の強力なNK細胞活性化因子であるIL-15について、IL-2の可能性のある代替物として第I相臨床試験が行われているが、全身投与後に重大な毒性が予想されている。重大な毒性とは別に、これらのサイトカインは、NK細胞の持続性を制限しながらT細胞の増殖も誘導する。シグナル伝達のための同じ受容体を共有しているにもかかわらず、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、およびIL-21受容体は、多様な細胞に対して明確で特異的な効果を持つ。
【0083】
1.膜結合型IL-21
特定の実施形態では、NK細胞に特異的に活性化するために、IL-21が本発明のUAPCを生成するために使用され得る。共通するサイトカイン受容体ガンマ鎖(γc)との二量体化によってシグナルを伝達できるIL-2受容体ベータ鎖の近縁である、IL-21受容体(IL21R)は、活性化されたヒトNK細胞(トリガーされる準備ができている細胞)においてアップレギュレートされている。I型サイトカインであるIL-21は、T、B、およびNK細胞の機能を調節することができるが、本発明者らは、ヒトNK細胞のみがIL21受容体シグナル伝達経路の活性化を介して有意な増殖をおこなうことを見出した(21日間で1000倍)。逆に、IL21は、CD8+ve T細胞の収縮に重要な役割を果たしている1。
【0084】
IL21Rシグナル伝達は、非常に強力な細胞増殖活性化因子であるSTAT3によって主に駆動される。IL21R-STAT3結合は、免疫沈降と、抗ホスホチロシン抗体を用いるウエスタンブロッティングによって検証されたように、GASおよびシス誘導エレメントへのIL-21誘導性STAT3 DNA結合によって推進される2。IL21媒介増殖の分子的基盤は、IL21Rのチロシン510(Y510)にあることが具体的に突き止められており、これがSTAT1およびSTAT3のIL-21誘導性リン酸化を媒介する3。この機構は、Stat1/Stat3ダブルノックアウトマウスでのIL-21の応答が弱まっていることからも明らかである。
【0085】
IL21Rのシグナル伝達は、NKの細胞毒性に重要である。ヒトIL21Rの欠損は、51Cr標識K562標的細胞の細胞溶解障害に関連しているが、抗体依存性細胞傷害性は影響を受けない4。一遺伝子性の非胚性致死欠損(IL21Rの機能喪失変異)は、優れた描写の機会を提供し、したがって、先天性NK細胞溶解応答のモデル化、強化、および形成に有用である。
【0086】
CD56dimとCD56brightの両方の細胞集団が同様の数の表面IL21Rを保有している場合でさえも、IL-21シグナル伝達はNK細胞サブセットを選択的に形成する。IL-21によるSTAT1およびSTAT3リン酸化の誘導は、CD56dim NK細胞と比較してCD56brightで高かった。対照的に、IL-21は、同様にT細胞の増殖を推進するIL-2活性化経路であるSTAT5の活性化に影響を及ぼさない。STAT3の活性化に加えて、IL-21のシグナル伝達は、MAPK、およびPI3K経路も含み、NK細胞においてIFN-ガンマ、T-bet、IL-12Rベータ2、およびIL-18Rをはじめとする自然免疫応答遺伝子の発現を誘導し、それらに腫瘍細胞を殺傷するようプライミングする。
【0087】
IL-21を効率的に利用するために、mbIL-21の発現を用いて、NK細胞上のIL21Rとのトランス相互作用を集中させ、局在化させてもよい。mbIL21は膜に近接しているため、必要な場所ですぐに利用できる、したがって、外部から供給される大量かつ高濃度のIL-21がなくても最適な細胞増殖を維持することができる。照射されたK562-mb15-41BBLとの共培養は、末梢血由来のCD56+CD3-NK細胞の中央値で21.6倍の増殖を誘導した。この増殖は、単独でまたは組み合わせて、IL-2、IL-12、IL-15、IL-21を含む共有γcファミリー由来の可溶性サイトカインだけでの刺激と比較して高い。比較すると、本発明のUAPCSは、14~21日間でNK細胞を少なくとも1000倍(3-log)増殖することができる。UAPCでのmbIL21の発現も、外因性の臨床グレードのサイトカインの必要性を取り除くことができる。
【0088】
2.4-1BBL(4-1BBリガンド、CD137リガンド、CD137L、TNFSF9)
NK細胞機能のサイトカインによるプライミングという概念に加えて、NK細胞内の活性化分子との直接的な物理的相互作用により、細胞の増殖応答が増強される。CD137(4-1BB)は、腫瘍壊死受容体(TNF-R)遺伝子ファミリーのメンバーであり、細胞の増殖、分化、およびプログラムされた細胞死(アポトーシス)を媒介する。マウス受容体が最初に特徴付けられ、続いてヒトホモログが特徴付けられた。これはアミノ酸レベルで60%の同一性を共有し、細胞質/シグナル伝達ドメインにかなり保存されている。CD137は主に活性化T細胞およびNK細胞で発現し、炎症部位の胸腺細胞、骨髄細胞、および内皮細胞でさまざまなレベルで検出される。生理学的CD137シグナル伝達は、1)Bcl-XLの活性化を通じて生存を促進するNF-κB、および2)細胞周期の進行を特異的に推進するPI3K/ERK1/2経路に媒介される。
【0089】
活性化されたNK細胞では、CD137はサイトカイン誘導性共刺激分子であり、これは次に、細胞増殖およびIFN-γ分泌を増加させることによってNK細胞の抗腫瘍応答を推進する。CD137L-/-ノックアウトマウスを使用した研究により、抗腫瘍免疫細胞の発生におけるCD137/CD137Lシグナル伝達の重要性が解明された。CD137-/-ノックアウトマウスは、対照マウスと比較して腫瘍転移の頻度が4倍高かった。
【0090】
CD137リガンド(CD137L、4-1BBリガンド)は、TNFスーパーファミリーの34kDaの糖タンパク質メンバーであり、主に、B細胞、マクロファージ、および樹状細胞を含む活性化された抗原提示細胞(APC)で検出され、活性化されたT細胞にも一過性に低レベルで発現する。ヒトCD137Lは、マウスの対応物と比較して36%しか相同性がない10。アゴニストCD137抗体の抗腫瘍効果と一致して、CD137L結合はCTLおよび抗腫瘍活性を誘発することが示されている。
【0091】
したがって、本発明のUAPCSは、最適な刺激のためにCD137の生理学的カウンター受容体である4-1BBリガンドを発現するように設計されてよい。
【0092】
3.SLAM/CD48
サイトカインのコンディショニングおよび4-1BBLとの共刺激とは別に、NK細胞と標的細胞との直接の物理的相互作用も、細胞応答、すなわち標的細胞の死滅に影響を及ぼす。相同免疫グロブリン受容体のシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、以前はCD2スーパーファミリーとしても公知)ファミリーは、広く発現し、免疫系で重要な役割を果たしているが、細胞間相互作用という点で特に重要である。
【0093】
したがって、本開示のUAPCは、1つまたは複数のSLAMファミリー抗原を発現し得る。SLAM ファミリーのメンバーには、CD2、CD48、CD58(LFA-3)、CD244(2B4)、CD229(Ly9)、CD319(CS1(CD2サブセット1);CRACC(CD2様受容体活性化細胞傷害性細胞))、およびCD352(NTB-A(NK-T-B抗原))が含まれる。具体的な態様では、UAPCは、CD48および/またはCS1を発現する。NK細胞は、SLAMファミリー(SLAMF)の少なくとも3つのメンバーを発現する。それらは、2B4細胞、NK細胞、T細胞およびB細胞抗原(NTB-A)、およびCD2様受容体活性化細胞傷害性細胞(CRACC)であり、それぞれのリガンドであるCD48、NTB-A、およびCRACCを、標的細胞上で、場合により他のNK細胞上で認識する。SLAMF1、3、5、6、7、8、および9は、同種親和性(自己リガンド)受容体であるが、SLAMF2およびSLAMF4は互いにカウンター受容体(異好性)である。既知の同種親和性が広い範囲(3桁)(解離定数Kd、1μM未満~200μM)であることは、SLAM糖タンパク質の重複しているが別個のシグナル伝達機構の機構的な基礎を示している。
【0094】
【表1】
【0095】
具体的な実施形態では、本発明のUAPCは、CD48を発現して細胞間相互作用を増加させ、NK細胞応答を増強するように設計されている。CD48は、NK細胞、T細胞、単球、および好塩基球の表面に見出されるグリコシルホスファチジルイノシトールアンカータンパク質(GPI-AP)であり、これらの細胞の接着および活性化経路に関与する。細胞内ドメインがないにもかかわらず、CD48の刺激は、脂質ラフトのシグナル伝達因子の再配列、Lckキナーゼ活性、およびチロシンリン酸化を誘導する。接着・共刺激分子として、CD48は、Bリンパ球およびTリンパ球、NK細胞、マスト細胞、および好酸球において多数の効果を誘導する。ヒトNK細胞では、CD48はNK細胞の重要な活性化因子である2B426のカウンター受容体である。異好性相互作用は、CD244とMHC-Iとの相互作用に関して競合すると考えられている。したがって、2B4/CD48相互作用は、ヒトNK細胞では活性化シグナルを誘導するが、マウスNK細胞では抑制性シグナルを送る。
【0096】
同じ集団の細胞間の2B4-CD48相互作用、すなわちNK細胞-NK細胞相互作用またはT細胞-T細胞相互作用は、通常はCD48を欠くK562骨髄系細胞株などのAPCでCD48を発現させることにより、活性化の促進を導くが、UAPCはトランスでNK細胞の強力な2B4シグナル伝達経路をオンにすることができる。
【0097】
4.SLAM/CS1
一部の実施形態では、本発明のUAPCは、NK細胞の殺傷力をオンにする共刺激分子として、SLAMファミリーのもう1つのメンバーであるCS1を発現するように設計されている。2B4にカウンター結合するCD48とは異なり、CS1相互作用は同種親和性であり、シス対トランス相互作用の状況において特徴付けることができる。通常はCS1を含まないK562細胞は、CS1を発現するように設計することができる。
【0098】
III.遺伝子操作された抗原受容体
本開示のNK細胞は、操作されたTCRおよび/またはCARなどの抗原受容体を発現するように遺伝子操作することができる。例えば、NK細胞は、癌抗原に対して抗原特異性を有するTCRを発現するように修飾されている。異なる抗原などへの複数のCARおよび/またはTCRをNK細胞に追加することができる。
【0099】
適した修飾方法は、当技術分野で公知である。例えば、上記のSambrook and Ausubelを参照されたい。例えば、細胞は、Heemskerkら、2008およびJohnsonら、2009に記載されている形質導入技術を使用して、癌抗原に対する抗原特異性を有するTCRを発現するように形質導入されてよい。
【0100】
全長TCRαおよびβ(またはγおよびδ)鎖をコードするRNAのエレクトロポレーションを、レトロウイルスによって形質導入されたTCR鎖と内因性TCR鎖の対合によって引き起こされる自己反応性の長期的な問題を克服するための代替手段として使用することができる。そのような代替対合が一過性トランスフェクション戦略で行われたとしても、導入されたTCRα鎖およびβ鎖は一過性にしか発現しないため、生成された可能性のある自己反応性T細胞は、しばらくするとこの自己反応性を失うことになる。導入されたTCRα鎖およびβ鎖の発現が減少すると、正常な自己T細胞のみが残る。これは、全長TCR鎖が安定したレトロウイルス形質導入によって導入された場合には当てはまらない。レトロウイルス形質導入によって導入されたTCR鎖は失われることがなく、患者には常に自己反応性が存在する。
【0101】
一部の実施形態では、細胞は、1つまたは複数の抗原受容体をコードする遺伝子工学を介して導入された1つまたは複数の核酸、およびそのような核酸の遺伝子操作された産物を含む。一部の実施形態では、核酸は異種である、すなわち、細胞または細胞から得た試料、例えば別の生物または細胞から得られるものなどには通常存在しない、これは、例えば、通常、操作されている細胞および/またはそのような細胞が由来する生物には見られない。一部の実施形態では、核酸は、自然界に存在しない核酸(例えば、キメラ)など、天然に存在しない核酸である。
【0102】
一部の実施形態では、CARは、抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞の表面に発現するタンパク質である。一部の実施形態では、CARは、TCR様CARであり、抗原は、TCRのように主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の文脈において細胞表面で認識される、細胞内タンパク質のペプチド抗原などのプロセシングされたペプチド抗原である。
【0103】
CARおよび組換えTCRを含む例示的な抗原受容体、ならびに受容体を設計して細胞に導入するための方法には、例えば、国際公開第200014257号、同第2013126726号、同第2012/129514号、同第2014031687号、同第2013/166321号、同第2013/071154号、同第2013/123061号、米国特許出願公開第US2002131960号、US2013287748号、US20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号、および同第8,479,118号、および欧州特許出願第EP2537416号に記載されるもの、および/またはSadelainら、2013;Davilaら、2013;Turtleら、2012;Wuら、2012に記載されるものが含まれる。一部の態様では、遺伝子操作された抗原受容体には、米国特許第7,446,190号に記載されるもの、および国際特許出願公開第WO/2014055668(A1)号に記載されるCARが含まれる。
【0104】
A.キメラ抗原受容体
一部の実施形態では、CARは、a)細胞内シグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、およびc)抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含む。
【0105】
一部の実施形態では、操作された抗原受容体には、活性化または刺激性CAR、共刺激性CAR(国際公開第2014/055668号を参照)、および/または抑制性CAR(iCAR、Fedorovら、2013を参照)を含むCARが挙げられる。CARは、一般に、一部の態様ではリンカーおよび/または1つまたは複数の膜貫通ドメインを介して、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結された細胞外抗原(またはリガンド)結合ドメインを含む。そのような分子は、一般に、天然の抗原受容体を介したシグナル、共刺激受容体と組み合わせたそのような受容体を介したシグナル、および/または共刺激受容体のみを介したシグナルを模倣するかまたは近づく。
【0106】
本開示の特定の実施形態は、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数のシグナル伝達モチーフを含む細胞外ドメインを含む、免疫原性を低減するためにヒト化されたCAR(hCAR)を含む、抗原特異的CARポリペプチドをコードする核酸をはじめとする、核酸の使用に関する。特定の実施形態では、CARは、1つまたは複数の抗原間で共有された空間を含むエピトープを認識し得る。特定の実施形態では、結合領域は、モノクローナル抗体の相補決定領域、モノクローナル抗体の可変領域、および/またはそれらの抗原結合フラグメントを含み得る。もう一つの実施形態では、その特異性は、受容体に結合するペプチド(例えば、サイトカイン)に由来する。
【0107】
ヒトCAR核酸は、ヒト患者の細胞免疫療法を増強するために使用されるヒト遺伝子であり得ると想定される。具体的な実施形態では、本発明は、全長CARのcDNAまたはコード領域を含む。抗原結合領域またはドメインは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,190,304号に記載されているものなどの特定のヒトモノクローナル抗体に由来する単鎖可変フラグメント(scFv)のV鎖およびV鎖のフラグメントを含み得る。フラグメントは、ヒト抗原特異的抗体の任意の数の異なる抗原結合ドメインでもあり得る。より具体的な実施形態では、フラグメントは、ヒト細胞での発現のためのヒトコドン使用のために最適化された配列にコードされる抗原特異的scFvである。
【0108】
配置は、二重特異性抗体または多量体などの多量体であり得る。多量体は、軽鎖と重鎖の可変部分の交差対合によってジアボディを形成している可能性が最も高い。構造体のヒンジ部分は、完全に削除されているものから、第一システインが維持されているもの、セリンではなくプロリンで置換されているもの、第一システインまで切断されているものなど、複数の選択肢を有し得る。Fc部分は削除することができる。安定している、および/または二量体化するタンパク質は、この目的を果たすことができる。Fcドメインの1つだけ、例えば、ヒト免疫グロブリンのCH2またはCH3ドメインのいずれかだけを使用することができる。二量体化を改善するために修飾されたヒト免疫グロブリンのヒンジ、CH2およびCH3領域を使用することもできる。免疫グロブリンのヒンジ部分だけを使用することもできる。CD8αの部分を使用することもできる。
【0109】
一部の実施形態では、CAR核酸は、膜貫通ドメインおよび修飾されたCD28細胞内シグナル伝達ドメインなどの他の共刺激受容体をコードする配列を含む。他の共刺激受容体には、限定されるものではないが、CD28、CD27、OX-40(CD134)、DAP10、DAP12、および4-1BB(CD137)の1つまたは複数が含まれる。CD3ζによって開始される一次シグナルに加えて、ヒトCARに挿入されたヒト共刺激受容体によって提供される追加のシグナルは、NK細胞の完全な活性化に重要であり、インビボ持続性および養子免疫療法の治療的成功を改善するのに役立ち得る。
【0110】
一部の実施形態では、CARは、特定の抗原(またはマーカーまたはリガンド)、例えば、養子療法によって標的化される特定の細胞型に発現する抗原、例えば癌マーカーなど、および/または正常または非疾患細胞型で発現する抗原などの減衰応答を誘導することを意図する抗原などに対する特異性を持って構築される。したがって、CARは、一般に、その細胞外部分に1つまたは複数の抗原結合分子、例えば、1つまたは複数の抗原結合フラグメント、ドメイン、または部分、あるいは1つまたは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。一部の実施形態では、CARには、抗体分子の1または複数の抗原結合部分、例えば、モノクローナル抗体(mAb)の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)鎖に由来する単鎖抗体フラグメント(scFv)が含まれる。
【0111】
キメラ抗原受容体の特定の実施形態では、受容体の抗原特異的部分(抗原結合領域を含む細胞外ドメインと呼ぶこともある)は、腫瘍関連抗原または病原体特異的抗原結合ドメインを含む。抗原には、デクチン-1などのパターン認識受容体によって認識される炭水化物抗原が含まれる。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の細胞表面に発現している限り、どんな種類であってもよい。腫瘍関連抗原の例示的な実施形態としては、CD19、CD20、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、CD56、EGFR、c-Met、AKT、Her2、Her3、上皮腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異rasなどが挙げられる。特定の実施形態では、腫瘍関連抗原の量が少ない場合に、CARをサイトカインと共発現させて持続性を改善することができる。例えば、CARは、IL-15と共発現させてよい。
【0112】
キメラ受容体をコードするオープンリーディングフレームの配列は、ゲノムDNA源、cDNA源から得ることができるか、または(例えば、PCRを介して)合成することができるか、またはそれらの組み合わせであり得る。ゲノムDNAのサイズとイントロンの数によっては、イントロンがmRNAを安定化させることがわかっているため、cDNAまたはその組合せを使用することが望ましい場合がある。また、内因性または外因性の非コード領域を使用してmRNAを安定化することがさらに有利であり得る。
【0113】
キメラ構築物は、裸のDNAとして、または適切なベクターで免疫細胞に導入することができると想定される。裸のDNAを使用してエレクトロポレーションによって細胞を安定的にトランスフェクトする方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号を参照されたい。裸のDNAは、一般に、プラスミド発現ベクターに発現に適切な方向で含まれるキメラ受容体をコードするDNAを指す。
【0114】
あるいは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)を使用して、キメラ構築物を免疫細胞に導入することができる。本開示の方法に従って用いるのに適したベクターは、免疫細胞で非複製性の適したベクターである。細胞内に維持されるウイルスのコピー数が、細胞の生存能力を維持ほど十分に低い、ウイルスに基づく多数のベクターが公知であり、例えば、HIV、SV40、EBV、HSV、またはBPVに基づくベクターなどがある。
【0115】
一部の態様では、抗原特異的結合、または認識成分は、1つまたは複数の膜貫通型および細胞内シグナル伝達ドメインに連結されている。一部の実施形態では、CARには、CARの細胞外ドメインと融合した膜貫通ドメインが含まれる。一実施形態では、CAR内のドメインの1つに自然に関連付けられている膜貫通ドメインが使用される。一部の例では、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化するために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとそのようなドメインとの結合を回避するアミノ酸置換によって選択または修飾される。
【0116】
一部の実施形態の膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合、一部の態様のドメインは、膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域には、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS/CD278、GITR/CD357、NKG2D、およびDAP分子に由来する(すなわち、少なくともそれらの1つまたは複数の膜貫通領域を含む)ものが含まれる。あるいは、一部の実施形態での膜貫通ドメインは合成である。一部の態様では、合成膜貫通ドメインは、主に疎水性の残基、例えば、ロイシンおよびバリンなどを含む。一部の態様では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。
【0117】
特定の実施形態では、NK細胞などの免疫細胞を遺伝子改変するために本明細書に開示されるプラットフォーム技術は、(i)エレクトロポレーションデバイス(例えば、ヌクレオフェクター)を使用する非ウイルス遺伝子移入、(ii)エンドドメイン(例えば、CD28/CD3-ζ、CD137/CD3-ζ、または他の組合せ)を介してシグナルを送るCAR、(iii)抗原認識ドメインと細胞表面を接続する可変長の細胞外ドメインを有するCAR、および、一部の例では、(iv)CAR免疫細胞を強固にかつ数値的に拡大できるK562由来の人工抗原提示細胞(aAPC)(Singhら、2008;Singhら、2011)を含む。
【0118】
B.T細胞受容体(TCR)
一部の実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体には、組換えTCRおよび/または天然に存在するT細胞からクローン化されたTCRが含まれる。「T細胞受容体」または「TCR」とは、可変aおよびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとして公知)または可変γおよびδ鎖(それぞれTCRγおよびTCRδとしても公知)を含み、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合できる分子を指す。一部の実施形態では、TCRは、αβ型である。
【0119】
一般に、αβ型およびγδ型で存在するTCRは一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は異なる解剖学的位置または機能を持っている場合がある。TCRは、細胞の表面に、または可溶性の形で見出すことができる。一般に、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見出され、そこでは一般に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識を担っている。一部の実施形態では、TCRは、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質側末端も含み得る(例えば、Janewayら、1997を参照)。例えば、一部の態様では、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端に短い細胞質側末端を有することができる。一部の実施形態では、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変タンパク質に関連している。特に明記しない限り、「TCR」という用語は、その機能的なTCRフラグメントを包含すると理解されるべきである。この用語は、αβ型またはγδ型のTCRを含む無傷または全長TCRも包含する。
【0120】
したがって、本明細書において、TCRへの言及は、任意のTCRまたは機能的フラグメント、例えば、MHC分子に結合した特定の抗原ペプチド、すなわちMHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合部分などを含む。同義的に使用することができる、TCRの「抗原結合部分」または「抗原結合フラグメント」とは、TCRの構造ドメインの一部を含むが、完全なTCRが結合する抗原に結合する分子(例えば、MHC-ペプチド複合体)を指す。場合によっては、抗原結合部は、一般に各鎖が3つの相補性決定領域を含むなどの、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変a鎖および可変β鎖などのTCRの可変ドメインを含む。
【0121】
一部の実施形態では、TCR鎖の可変ドメインは、TCR分子の結合部位を形成し、ペプチド特異性を決定することにより、抗原認識を付与し、ペプチド特異性を決定する、免疫グロブリンに類似したループまたは相補性決定領域(CDR)を形成するために結合する。一般に、免疫グロブリンのように、CDRはフレームワーク領域(FR)によって分離される(例えば、Joresら、1990;Chothiaら、1988;Lefrancら、2003を参照)。一部の実施形態では、CDR3は処理された抗原の認識を担う主なCDRであるが、アルファ鎖のCDR1は抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することも示されており、一方で、ベータ鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2はMHC分子を認識すると考えられている。一部の実施形態では、β鎖の可変領域は、さらなる超可変性(HV4)領域を含むことができる。
【0122】
一部の実施形態では、TCR鎖は定常ドメインを含む。例えば、免疫グロブリンのように、TCR鎖(例えば、a鎖、β鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリンドメイン、すなわちN末端の可変ドメイン(例えば、VまたはVp;一般に、Kabat番号付けに基づくアミノ酸1~116である。Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、US Dept.Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991、第5版)と、細胞膜に隣接する1つの定常ドメイン(例えば、a鎖定常ドメインまたはC、一般にKabatに基づくアミノ酸117~259、β鎖定常ドメインまたはCP、一般にKabatに基づくアミノ酸117~295)を含み得る。例えば、一部の例では、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインと、CDRを含む2つの膜遠位可変ドメインを含む。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、2つの鎖間を連結する短い接続配列が含まれている。一部の実施形態では、TCRは、TCRが定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含むように、α鎖およびβ鎖のそれぞれに追加のシステイン残基を有していてもよい。
【0123】
一部の実施形態では、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含むことができる。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは正に帯電している。一部の例では、TCR鎖は細胞質側末端を含む。一部の例では、この構造により、TCRはCD3のような他の分子と会合することが可能になる。例えば、膜貫通領域をもつ定常ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し、CD3シグナル伝達装置または複合体の不変サブユニットと会合することができる。
【0124】
一般に、CD3は、哺乳類で3つの異なる鎖(γ、δ、およびε)と、ζ鎖を持つことができる多タンパク質複合体である。例えば、哺乳類では、この複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖と、CD3ζ鎖のホモ二量体を含むことができる。CD3γ、CD3δ、およびCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連した細胞表面タンパク質である。CD3γ、CD3δ、およびCD3ε鎖の膜貫通領域は負に帯電している。これは、これらの鎖が正に帯電したT細胞受容体鎖と会合することを可能にする特性である。CD3γ、CD3δ、およびCD3ε鎖の細胞内テールは、それぞれ、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフすなわちITAMとして公知の保存されたモチーフを1つ含むが、各CD3ζ鎖は3つ有する。一般に、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与している。これらのアクセサリー分子は負に帯電した膜貫通領域を有し、TCRから細胞にシグナルを伝播する役割を果たす。CD3鎖およびζ鎖は、TCRとともに、T細胞受容体複合体として公知の形態を形成する。
【0125】
一部の実施形態では、TCRは、2つの鎖αおよびβ(または任意選択でγおよびδ)のヘテロ二量体であってもよく、またはそれは単鎖TCR構築物であってもよい。一部の実施形態では、TCRは、例えば、1つまたは複数のジスルフィド結合によって連結された2つの別個の鎖(αおよびβ鎖またはγおよびδ鎖)を含むヘテロ二量体である。一部の実施形態では、標的抗原(例えば、癌抗原)のTCRが特定され、細胞に導入される。一部の実施形態では、TCRをコードする核酸は、公開されているTCRのDNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などにより、多様な供給源から得ることができる。一部の実施形態では、TCRは、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマ、または他の公開されている供給源などの細胞などの生物学的供給源から得られる。一部の実施形態では、T細胞は、インビボで分離された細胞から得ることができる。一部の実施形態では、高親和性T細胞クローンを患者から分離し、TCRを分離することができる。一部の実施形態では、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであってよい。一部の実施形態では、標的抗原のTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、すなわちHLA)で操作されたトランスジェニックマウスで生成されたものである。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurstら、2009およびCohenら、2005を参照)。一部の実施形態では、ファージディスプレイを使用して標的抗原に対するTCRを分離する(例えば、Varela-Rohenaら、2008およびLi、2005参照)。一部の実施形態では、TCRまたはその抗原結合部分は、TCRの配列の知識から合成によって生成することができる。
【0126】
C.抗原
遺伝子操作された抗原受容体によって標的化される抗原の中には、養子細胞療法を介して標的化される、疾患、状態、または細胞型において発現する抗原がある。疾患および状態の中には、増殖性、腫瘍性、および悪性の疾患および障害があり、これには、癌および腫瘍が含まれ、これには、血液癌、リンパ腫、白血病、および/または骨髄腫などの免疫系の癌、例えばB、T、および骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫などが含まれる。一部の実施形態では、抗原は、正常または非標的細胞または組織と比較して、疾患または状態の細胞、例えば、腫瘍または病原性細胞で選択的に発現または過剰発現する。他の実施形態では、抗原は正常細胞で発現する、かつ/また操作された細胞で発現する。
【0127】
任意の適した抗原を本発明の方法で使用することができる。例示的な抗原としては、限定されるものではないが、感染性病原体、自己(auto-)/自己(self-)抗原、腫瘍/癌関連抗原、および腫瘍ネオ抗原からの抗原分子が挙げられる(Linnemannら、2015)。具体的な態様では、抗原には、NY-ESO、EGFRvIII、Muc-1、Her2、CA-125、WT-1、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A10、TRAIL/DR4、およびCEAが挙げられる。具体的な態様では、2つ以上の抗原受容体の抗原としては、限定されるものではないが、CD19、EBNA、WT1、CD123、NY-ESO、EGFRvIII、MUC1、HER2、CA-125、WT1、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A10、TRAIL/DR4、および/またはCEAが挙げられる。これらの抗原の配列は、当技術分野で公知であり、例えば(すべてGenBank(登録商標)のアクセッション番号である)、CD19(アクセッション番号NG_007275.1)、EBNA(アクセッション番号NG_002392.2)、WT1(アクセッション番号NG_009272.1)、CD123(アクセッション番号NC_000023.11)、NY-ESO(アクセッション番号NC_000023.11)、EGFRvIII(アクセッション番号NG_007726.3)、MUC1(アクセッション番号NG_029383.1)、HER2(アクセッション番号NG_007503.1)、CA-125(アクセッション番号NG_055257.1)、WT1(アクセッション番号NG_009272.1)、Mage-A3(アクセッション番号NG_013244.1)、Mage-A4(アクセッション番号NG_013245.1)、Mage-A10(アクセッション番号NC_000023.11)、TRAIL/DR4(アクセッション番号NC_000003.12)、および/またはCEA(アクセッション番号NC_000019.10)である。
【0128】
腫瘍関連抗原は、前立腺、乳房、結腸直腸、肺、膵臓、腎臓、中皮腫、卵巣、または黒色腫の癌に由来し得る。例示的な腫瘍関連抗原または腫瘍細胞由来抗原には、MAGE 1、3、およびMAGE4(または国際公開公報第WO99/40188号に開示されるものなどの他のMAGE抗原);PRAME;BAGE;RAGE、Lage(NY ESO1としても公知);SAGE;およびHAGEまたはGAGEが挙げられる。腫瘍抗原のこれらの限定されない例は、黒色腫、肺癌、肉腫、および膀胱癌などの広範囲の腫瘍型で発現している。例えば、米国特許第6,544,518号を参照されたい。前立腺癌腫瘍関連抗原には、例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺酸性リン酸塩、NKX3.1、および前立腺の6回膜貫通上皮抗原(STEAP)が含まれる。
【0129】
その他の腫瘍関連抗原としては、Plu-1、HASH-1、HasH-2、CriptoおよびCriptinが挙げられる。さらに、腫瘍抗原は、多くの癌の治療に有用な、短い10アミノ酸長のペプチドである全長ゴナドトロピンホルモン放出ホルモン(GnRH)などの自己ペプチドホルモンであってもよい。
【0130】
腫瘍抗原には、HER-2/neu発現などの腫瘍関連抗原の発現を特徴とする癌に由来する腫瘍抗原が含まれる。目的の腫瘍関連抗原としては、系統特異的腫瘍抗原、例えばメラノサイト-黒色腫系統抗原MART-1/Melan-A、gp100、gp75、mda-7、チロシナーゼおよびチロシナーゼ関連タンパク質などが挙げられる。例示的な腫瘍関連抗原としては、限定されるものではないが、1つまたは複数の、p53、Ras、c-Myc、細胞質セリン/トレオニンキナーゼ(例えば、A-Raf、B-Raf、およびC-Raf、サイクリン依存性キナーゼ)、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、MART-1、BAGE、DAM-6、-10、GAGE-1、-2、-8、GAGE-3、-4、-5、-6、-7B、NA88-A、MART-1、MC1R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、TRK受容体、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、ウィルムス腫瘍抗原(WT1)、AFP、-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CEA、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70~2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、BCR-ABL、インターフェロン調節因子4(IRF4)、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RAR、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子1(TACSTD1)TACSTD2、受容体チロシンキナーゼ(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)(特に、EGFRvIII)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR))、細胞質チロシンキナーゼ(例えば、src-ファミリー、syk-ZAP70ファミリー)、インテグリン結合キナーゼ(ILK)、シグナル伝達性転写因子STAT3、STATS、およびSTATE、低酸素誘導因子(例えば、HIF-1およびHIF-2)、核内因子κB(NF-B)、Notch受容体(例えば、Notch1~4)、c-Met、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)、WNT、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERKs)、およびそれらの調節サブユニット、PMSA、PR-3、MDM2、メソテリン、腎細胞癌-5T4、SM22-α、炭酸脱水酵素I(CAI)およびIX(CAIX)(G250としても公知)、STEAD、TEL/AML1、GD2、プロテイナーゼ3、hTERT、肉腫転座切断点、EphA2、ML-IAP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、GD3、フコシルGM1、メソテリアン(mesothelian)、PSCA、sLe、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GLoboH、NY-BR-1、RGsS、SART3、STn、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE 1、B7H3、legumain、TIE2、Page4、MAD-CT-1、FAP、MAD-CT-2、fos関連抗原1、CBX2、CLDN6、SPANX、TPTE、ACTL8、ANKRD30A、CDKN2A、MAD2L1、CTAG1B、SUNC1、LRRN1およびイディオタイプのいずれかに由来するかまたはこれを含む腫瘍抗原が挙げられる。
【0131】
抗原には、腫瘍細胞で変異した遺伝子、または正常細胞を比較して腫瘍細胞で異なるレベルで転写された遺伝子に由来するエピトープ領域またはエピトープペプチド、例えば、テロメラーゼ酵素、サバイビン、メソテリン、変異ras、bcr/abl再配列、Her2/neu、変異または野生型p53、シトクロムP450 1B1、およびN-アセチルグルコサミントランスフェラーゼ-Vなどの異常に発現したイントロン配列;骨髄腫およびB細胞リンパ腫で特有のイディオタイプを生成する免疫グロブリン遺伝子のクローン再配列;腫瘍ウイルスプロセスに由来するエピトープ領域またはエピトープペプチドを含む腫瘍抗原、例えば、ヒトパピローマウイルスタンパク質E6およびE7;エプスタイン・バーウイルスタンパク質LMP2;腫瘍選択的に発現する非変異癌胎児性タンパク質、例えば、癌胎児性抗原およびαフェトプロテインが含まれてよい。
【0132】
他の実施形態では、抗原は、ウイルス、真菌、寄生虫、および細菌などの病原性微生物または日和見性病原性微生物(本明細書では感染症微生物とも呼ばれる)から得られるかまたはこれらに由来する。特定の実施形態では、そのような微生物に由来する抗原には、全長タンパク質が含まれる。
【0133】
本明細書に記載される方法での使用が想定される抗原を有する例示的な病原性生物には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、インフルエンザA、B、およびC型、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルスおよびJCウイルス)、アデノウイルス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)をはじめとするブドウ球菌属(Staphylococcus)の種、および肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)をはじめとする連鎖球菌属(Streptococcus)の種が含まれる。当業者に理解されるように、本明細書に記載される抗原として使用するための、これらおよび他の病原性微生物に由来するタンパク質、およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、刊行物および公共データベース、例えばGENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)、およびTREMBL(登録商標)などで特定することができる。
【0134】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来の抗原には、HIVビリオンの構造タンパク質(例えば、gp120、gp41、p17、p24)、プロテアーゼ、逆転写酵素、または、tat、rev、nef、vif、vprおよびvpuによってコードされるHIVタンパク質のいずれかが含まれる。
【0135】
単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV1およびHSV2)に由来する抗原には、限定されるものではないが、HSV後期遺伝子から発現したタンパク質が含まれる。後期の遺伝子群は主にビリオン粒子を形成するタンパク質をコードする。そのようなタンパク質には、ウイルスキャプシドを形成する(UL)由来の5つのタンパク質、UL6、UL18、UL35、UL38、および主要なカプシドタンパク質UL19、UL45、およびUL27が含まれ、これらはそれぞれ、本明細書に記載される抗原として使用され得る。本明細書で抗原として使用することが想定される他の例示的なHSVタンパク質には、ICP27(H1、H2)、糖タンパク質B(gB)および糖タンパク質D(gD)タンパク質が含まれる。HSVゲノムは、少なくとも74の遺伝子を含み、それぞれが抗原として使用される可能性のあるタンパク質をコードしている。
【0136】
サイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原には、CMV構造タンパク質、ウイルス複製の最初期および初期段階で発現するウイルス抗原、糖タンパク質IおよびIII、カプシドタンパク質、コートタンパク質、下部マトリックスタンパク質pp65(ppUL83)、p52(ppUL44)、IE1および1E2(UL123およびUL122)、UL128-UL150の遺伝子クラスターからのタンパク質産物(Rykmanら、2006)、外被糖タンパク質B(gB)、gH、gN、およびpp150が含まれる。当業者に理解されるように、本明細書に記載される抗原として使用するためのCMVタンパク質は、公共データベース、例えばGENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)、およびTREMBL(登録商標)で特定することができる(例えば、Bennekovら、2004;Loewendorfら、2010;Marschallら、2009参照)。
【0137】
特定の実施形態での使用が想定されるエプスタイン・Banウイルス(EBV)由来の抗原には、EBV溶解タンパク質gp350およびgp110、エプスタイン・Ban由来核抗原(EBNA)-1、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、EBNA-リーダータンパク質(EBNA-LP)および潜伏膜タンパク質(LMP)-1、LMP-2AおよびLMP-2Bを含む潜伏サイクル感染中に産生されるEBVタンパク質が含まれる(例えば、Lockeyら、2008参照)。
【0138】
特定の実施形態での使用が想定される呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の抗原には、RSVゲノムにコードされる11のタンパク質、すなわち、NS1、NS2、N(ヌクレオカプシドタンパク質)、M(マトリックスタンパク質)SH、GおよびF(ウイルスコートタンパク質)、M2(第2マトリックスタンパク質)、M2-1(伸長因子)、M2-2(転写調節)、RNAポリメラーゼ、およびリン酸化タンパク質Pのいずれかまたはその抗原フラグメントが含まれる。
【0139】
使用が想定される水疱性口内炎ウイルス(VSV)由来の抗原には、VSVゲノムにコードされる5つの主なタンパク質、すなわち、大型タンパク質(L)、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、リン酸化タンパク質(P)、およびマトリックスタンパク質(M)のいずれか、およびその抗原フラグメントが含まれる(例えば、Riederら、1999参照)。
【0140】
特定の実施形態での使用が想定されるインフルエンザウイルス由来の抗原には、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質M1およびM2、NS1、NS2(NEP)、PA、PB1、PB1-F2、およびPB2が含まれる。
【0141】
例示的なウイルス抗原としては、限定されるものではないが、アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリシウイルスポリペプチド(例えば、カリシウイルスカプシド抗原)、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド(B型肝炎コアまたは表面抗原、C型肝炎ウイルスE1またはE2糖タンパク質、コア、または非構造タンパク質)、ヘルペスウイルスポリペプチド(単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質を含む)、感染性腹膜炎ウイルスポリペプチド、白血病ウイルスポリペプチド、マールブルグウイルスポリペプチド、オルソミクソウイルスポリペプチド、パピローマウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド(例えば、血球凝集素およびノイラミニダーゼポリペプチド)、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド(例えば、ポリオウイルスカプシドポリペプチド)、ポックスウイルスポリペプチド(例えば、ワクシニアウイルスポリペプチド)、狂犬病ウイルスポリペプチド(例えば、狂犬病ウイルス糖タンパク質G)、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、およびロタウイルスポリペプチドも挙げられる。
【0142】
特定の実施形態では、抗原は細菌抗原であってよい。特定の実施形態では、目的の細菌抗原は、分泌されたポリペプチドであってよい。他の特定の実施形態では、細菌抗原には、細菌の外側の細胞表面に露出したポリペプチドの1つまたは複数の部分を有する抗原が含まれる。
【0143】
使用が想定されるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むブドウ球菌属(Staphylococcus)の種由来の抗原には、Agr系、SarおよびSae、Arl系、Sarホモログ(Rot、MgrA、SarS、SarR、SarT、SarU、SarV、SarX、SarZおよびTcaR)、Srr系およびTRAPなどの病原性制御因子が含まれる。抗原として役立ち得る他のブドウ球菌属(Staphylococcus)のタンパク質には、Clpタンパク質、HtrA、MsrR、アコニターゼ、CcpA、SvrA、Msa、CfvAおよびCfvBが含まれる(例えば、Staphylococcus:Molecular Genetics,2008 Caister Academic Press,Ed.Jodi Lindsay参照)。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の2つの種(N315およびMu50)のゲノムが配列決定されており、例えばPATRIC(PATRIC:The VBI PathoSystems Resource Integration Center,Snyderら、2007)で公開されている。当業者に理解されるように抗原として使用するためのブドウ球菌属(Staphylococcus)のタンパク質は、他の公共データベース、例えばGenBank(登録商標)、Swiss-Prot(登録商標)、およびTrEMBL(登録商標)でも特定することができる。
【0144】
本明細書に記載される特定の実施形態で使用が想定される肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)由来の抗原には、ニューモリシン、PspA、コリン結合プロテインA(CbpA)、NanA、NanB、SpnHL、PavA、LytA、Pht、およびピリンタンパク質(RrgA;RrgB;RrgC)が含まれる。肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の抗原性タンパク質も当技術分野で公知であり、一部の実施形態で抗原として使用することができる(例えば、Zyskら、2000参照)。肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の毒性株の完全なゲノム配列は配列決定されており、当業者に理解されるように、本明細書で使用する肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)タンパク質は、他の公共データベース、例えばGENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)、およびTREMBL(登録商標)でも特定することができる。本開示による抗原として特に興味深いタンパク質には、病原性因子および肺炎球菌の表面に露出していると予測されるタンパク質が含まれる(例えば、Froletら、2010年参照)。
【0145】
抗原として使用され得る細菌抗原の例としては、限定されるものではないが、アクチノミセス属のポリペプチド、バチルス属のポリペプチド、バクテロイデス属のポリペプチド、ボルデテラ属のポリペプチド、バルトネラ属のポリペプチド、ボレリア属のポリペプチド(例えば、ボレリア・ブルグドルフェリOspA)、ブルセラ属のポリペプチド、カンピロバクター属のポリペプチド、キャプノサイトファーガ属のポリペプチド、クラミジア属のポリペプチド、コリネバクテリウム属のポリペプチド、コクシエラ属のポリペプチド、デルマトフィルス属のポリペプチド、エンテロコッカス属のポリペプチド、エーリキア属のポリペプチド、エシェリキア属のポリペプチド、フランシセラ属のポリペプチド、フソバクテリウム属のポリペプチド、ヘモバルトネラ属のポリペプチド、ヘモフィルス属のポリペプチド(例えば、インフルエンザ菌b型外膜タンパク質)、ヘリコバクター属のポリペプチド、クレブシエラ属のポリペプチド、L型細菌ポリペプチド、レプトスピラ属のポリペプチド、リステリア属のポリペプチド、マイコバクテリア属のポリペプチド、マイコプラズマ属のポリペプチド、ナイセリア属のポリペプチド、ネオリケッチア属のポリペプチド、ノカルジア属のポリペプチド、パスツレラ属のポリペプチド、ペプトコッカス属のポリペプチド、ペプトストレプトコッカス属のポリペプチド、肺炎連鎖菌のポリペプチド(すなわち、ストレプトコッカス・ニューモニエのポリペプチド)(本明細書の記載を参照)、プロテウス属のポリペプチド、シュードモナス属のポリペプチド、リケッチア属のポリペプチド、ロシャリメア属のポリペプチド、サルモネラ属のポリペプチド、赤痢菌属のポリペプチド、ブドウ球菌属のポリペプチド、A群連鎖球菌のポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌のMタンパク質)、B群連鎖球菌(ストレプトコッカス・アガラクチア)のポリペプチド、トレポネーマ属のポリペプチド、およびエルシニア属のポリペプチド(例えば、ペスト菌のF1およびV抗原)が挙げられる。
【0146】
真菌抗原の例としては、限定されるものではないが、アブシジア属のポリペプチド、アクレモニウム属のポリペプチド、アルテルナリア属のポリペプチド、アスペルギルス属のポリペプチド、バシジオボラス属のポリペプチド、ビポラリス属のポリペプチド、ブラストミセス属のポリペプチド、カンジダ属のポリペプチド、コクシジオイデス属のポリペプチド、コニディオボラス属のポリペプチド、クリプトコッカス属のポリペプチド、クルバラリア属のポリペプチド、エピデルモフィトン属のポリペプチド、エクソフィアラ属のポリペプチド、ゲオトリクム属のポリペプチド、ヒストプラズマ属のポリペプチド、マヅレラ属のポリペプチド、マラセチア属のポリペプチド、ミクロスポルム属のポリペプチド、モニリエラ属のポリペプチド、モルチェレラ属のポリペプチド、ムコール属のポリペプチド、ペシロマイセス属のポリペプチド、ペニシリウム属のポリペプチド、フィアレモニウム(Phialemonium)ポリペプチド、フィアロフォラ属のポリペプチド、プロトテカ属のポリペプチド、シュードアレシェリア属のポリペプチド、シュードミクロドキウム(Pseudomicrodochium)ポリペプチド、フィチウム属のポリペプチド、リノスポリジウム属のポリペプチド、リゾプス属のポリペプチド、スコレコバシジウム(Scolecobasidium)ポリペプチド、スポロトリクス属のポリペプチド、ステムフィリウム(Stemphylium)ポリペプチド、トリコフィトン属のポリペプチド、トリコスポロン属のポリペプチド、およびキシロハイファ(Xylohypha)ポリペプチドが挙げられる。
【0147】
寄生原虫抗原の例としては、限定されるものではないが、バベシア属のポリペプチド、バランチジウム属のポリペプチド、ベスノイチア属のポリペプチド、クリプトスポリジウム属のポリペプチド、エイメリア属のポリペプチド、エンセファリトゾーン属のポリペプチド、エントアメーバ属のポリペプチド、ジアルジア属のポリペプチド、ハモンジア属のポリペプチド、ヘパトゾーン属のポリペプチド、イソスポラ属のポリペプチド、リーシュマニア属のポリペプチド、微胞子虫のポリペプチド、ネオスポラ属のポリペプチド、ノゼマ属のポリペプチド、ペンタトリコモナス属のポリペプチド、プラスモジウム属のポリペプチドが挙げられる。寄生蠕虫抗原の例としては、限定されるものではないが、アカントケイロネマ属のポリペプチド、アエルロストロンギルス属のポリペプチド、アンシロストーマ属のポリペプチド、アンギオストロンギルス属のポリペプチド、アスカリス属のポリペプチド、ブルギア属のポリペプチド、ブノストマム属のポリペプチド、キャピラリア属のポリペプチド、カベルチア属のポリペプチド、クーペリア属のポリペプチド、クレノソーマ属のポリペプチド、ディクチオカウルス属のポリペプチド、ジオクトフィーマ属のポリペプチド、ジペタロネーマ属のポリペプチド、ジフィロボスリウム属のポリペプチド、ジプリジウム属のポリペプチド、ジロフィラリア属のポリペプチド、ドラクンクルス属のポリペプチド、エンテロビウス属のポリペプチド、フィラロイデス属のポリペプチド、ヘモンクス属のポリペプチド、ラゴチラスカリス(Lagochilascaris)ポリペプチド、ロア属のポリペプチド、マンソネラ属のポリペプチド、ムエレリウス属のポリペプチド、ナノフィエタス属のポリペプチド、ネカトール属のポリペプチド、ネマトジルス属のポリペプチド、エソファゴストム属のポリペプチド、オンコセルカ属のポリペプチド、オピストルキス属のポリペプチド、オステルタギア属のポリペプチド、パラフィラリア属のポリペプチド、パラゴニムス属のポリペプチド、パラスカリス属のポリペプチド、フィサロプテラ属のポリペプチド、プロトストロンギルス属のポリペプチド、セタリア属のポリペプチド、スピロセルカ属のポリペプチドスピロメトラ属のポリペプチド、ステファノフィラリア属のポリペプチド、ストロンギロイデス属のポリペプチド、ストロンギルス属のポリペプチド、テラジア属のポリペプチド、トキサスカリス属のポリペプチド、トキソカラ属のポリペプチド、トリキネラ属のポリペプチド、トリコストロンギルス属のポリペプチド、トリチュリス属のポリペプチド、ウンシナリア属のポリペプチド、およびウケレリア属のポリペプチド.(例えば、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)のスポロゾイト周囲タンパク質(PfCSP))、スポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓状態抗原1のカルボキシル末端(PfLSA1c-term)、および輸出タンパク質1(PfExp-1)、ニューモシスチス属のポリペプチド、サルコシスティス属のポリペプチド、シストソーマ属のポリペプチド、タイレリア属のポリペプチド、トキソプラズマ属のポリペプチド、およびトリパノソーマ属のポリペプチドが挙げられる。
【0148】
外部寄生虫抗原の例としては、限定されるものではないが、ノミ;マダニ(カタダニおよびヒメダニを含む);ハエ、例えば、ユスリカ、蚊、スナバエ、クロバエ、ウシアブ、ノサシバエ、メクラアブ、ツェツェバエ、サシバエ、ハエ幼虫症を引き起こすハエおよび咬みつきブヨなど;アリ;クモ、シラミ;ダニ;およびトコジラミおよびサシガメなどの半翅類昆虫由来のポリペプチド(抗原ならびにアレルゲンを含む)が挙げられる。
【0149】
D.自殺遺伝子
本開示の免疫細胞のCARは、1つまたは複数の自殺遺伝子を含む場合がある。本明細書において使用される「自殺遺伝子」という用語は、プロドラッグを投与すると、その宿主細胞を殺傷する化合物への遺伝子産物の移行をもたらす遺伝子と定義される。使用されてよい自殺遺伝子/プロドラッグの組合せの例は、単純ヘルペスウイルス-チミジンキナーゼ(HSV-tk)とガンシクロビル、アシクロビル、またはFIAU;オキシドレダクターゼとシクロヘキシミド;シトシンデアミナーゼと5-フルオロシトシン;チミジンキナーゼチミジル酸キナーゼ(Tdk::Tmk)とAZT;およびデオキシシチジンキナーゼとシトシンアラビノシドである。
【0150】
大腸菌(E.coli)プリンヌクレオシドホスホリラーゼは、プロドラッグである6-メチルプリンデオキシリボシドを、毒性プリンである6-メチルプリンに変換する、いわゆる自殺遺伝子である。プロドラッグ療法で使用される自殺遺伝子の他の例は、大腸菌シトシンデアミナーゼ遺伝子およびHSVチミジンキナーゼ遺伝子である。
【0151】
例示的な自殺遺伝子には、CD20、CD52、EGFRv3、リミデュシッド、または誘導性カスパーゼ9が含まれる。一実施形態では、EGFR変異体IIIの切断型(EGFRv3)は、セツキシマブによって除去され得る自殺抗原として使用されてよい。本開示で使用され得る当技術分野で公知のさらなる自殺遺伝子には、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、チトクロムp450酵素(CYP)、カルボキシペプチダーゼ(CP)、カルボキシルエステラーゼ(CE)、ニトロレダクターゼ(NTR)、グアニンリボシルトランスフェラーゼ(XGRTP)、グリコシダーゼ酵素、メチオニン-α,γ-リアーゼ(MET)、およびチミジンホスホリラーゼ(TP)が含まれる。
【0152】
E.送達方法
当業者であれば、本開示の抗原受容体の発現のために、標準的な組換え技術(例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれる、Sambrookら、2001およびAusubelら、1996を参照)によってベクターを構築するのに十分な知識を身に着けているであろう。ベクターには、限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、および人工染色体(例えば、YAC)、例えば、レトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNVなどに由来)、レンチウイルスベクター(例えば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIVなどに由来)、その複製能力のある形態、複製欠損形態、および腸のない形態を含むアデノウイルス(Ad)ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルス40(SV-40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳癌ウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ポリオウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルスベクター、マラバウイルスベクターおよびB群アデノウイルスエンアデノツシレブ(enadenotucirev)ベクターなどが含まれる。
【0153】
a.ウイルスベクター
抗原受容体をコードするウイルスベクターは、本開示の特定の態様において提供され得る。組換えウイルスベクターを生成する際、非必須遺伝子は、通常、異種(または非天然)タンパク質の遺伝子またはコード配列で置き換えられる。ウイルスベクターは、ウイルス配列を利用して核酸および場合によってはタンパク質を細胞に導入する一種の発現構築物である。特定のウイルスは、受容体に媒介されるエンドサイトーシスを介して細胞に感染したり細胞に侵入したり、宿主細胞のゲノムに組み込まれてウイルス遺伝子を安定にかつ効率的に発現したりする能力のため、外来核酸を細胞(例えば、哺乳類細胞)に移入する魅力的な候補となっている。本発明の特定の態様の核酸を送達するために使用され得るウイルスベクターの限定されない例を以下に記載する。
【0154】
レンチウイルスは複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、envに加えて、制御的または構造的な機能を持つ他の遺伝子が含まれている。レンチウイルスベクターは、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照)。
【0155】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染する能力があり、インビボとエクスビボの両方の遺伝子移入および核酸配列の発現に使用することができる。例えば、非分裂細胞に感染できる組換えレンチウイルスは、適切な宿主細胞にパッケージング機能を有する2つ以上のベクター、すなわちgag、polおよびenv、ならびにrevおよびtatをトランスフェクトしたもので、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,994,136号に記載されている。
【0156】
b.調節エレメント
本開示において有用なベクターに含められる発現カセットは、特に、タンパク質コード配列に作動可能に連結された真核生物転写プロモーター、介在配列を含むスプライスシグナル、および転写終結/ポリアデニル化配列を(5’-から-3’方向に)含む。真核細胞のタンパク質をコードする遺伝子の転写を制御するプロモーターとエンハンサーは、複数の遺伝的エレメントで構成されている。細胞機構は、各エレメントによって伝達される制御情報を収集および統合することができ、さまざまな遺伝子が転写調節の別個の、しばしば複雑なパターンを進化させることを可能にする。本開示の文脈で使用されるプロモーターには、構成的、誘導性、および組織特異的プロモーターが含まれる。
【0157】
(i)プロモーター/エンハンサー
本明細書で提供される発現構築物は、抗原受容体の発現を推進するためのプロモーターを含む。プロモーターは一般に、RNA合成の開始点を配置するように機能する配列を含む。この最もよく知られている例はTATAボックスであるが、TATAボックスを持たない一部のプロモーター、例えば哺乳類の末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターおよびSV40後期遺伝子のプロモーターなどでは、開始点自体を覆う別個のエレメントが開始場所を固定するのに役立っている。追加のプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を調節する。一般に、これらは開始点の上流30110bpの領域に位置するが、多くのプロモーターが開始点の下流にも機能エレメントを含むことが示されている。コード配列をプロモーター「の制御下」に置くために、転写リーディングフレームの転写開始点の5’末端を、選択したプロモーターの「下流」(すなわち、3’)に配置する。「上流」のプロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0158】
プロモーターエレメント間の間隔は柔軟であることが多いため、エレメントが互いに反転または移動した場合にプロモーター機能は保存される。tkプロモーターでは、プロモーターエレメント間の間隔は、50bp間隔に増やすことができ、その後は活性が低下し始める。プロモーターに応じて、個々のエレメントは協同的にまたは独立的に機能して、転写を活性化することができると思われる。プロモーターは、「エンハンサー」と組み合わせて使用されてもされなくてもよく、エンハンサーは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列を指す。
【0159】
プロモーターは、コーディングセグメントおよび/またはエクソンの上流に位置する5’非コード配列を分離することによって得られるように、核酸配列に天然に会合するものであってよい。このようなプロモーターは「内因性」と呼ぶことができる。同様に、エンハンサーは、その配列の下流に位置しようと上流に位置しようと、核酸配列に天然に会合するものであってよい。あるいは、組換えまたは異種プロモーターの制御下でコード核酸セグメントを配置することにより、特定の利点が得られ、組換えまたは異種プロモーターとは、その自然環境では核酸配列に通常は会合しないプロモーターを指す。また、組換えまたは異種エンハンサーは、その自然環境では核酸配列に通常は会合しないエンハンサーを指す。このようなプロモーターまたはエンハンサーには、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、任意の他のウイルスまたは原核細胞もしくは真核細胞から分離されたプロモーターまたはエンハンサー、ならびに、「自然起源」でない、すなわち転写制御領域の異なるエレメント、および/または発現を変化させる変異を含む、プロモーターまたはエンハンサーが含まれ得る。例えば、組換えDNAの構築で最も一般的に使用されるプロモーターには、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース、およびトリプトファン(trp)プロモーター系が含まれる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成によって作製することに加えて、配列は、本明細書に開示される組成物に関連して、組換えクローニングおよび/またはPCR(商標)をはじめとする核酸増幅技術を使用して生成されてもよい。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの非核細胞小器官内の配列の転写および/または発現を指示する制御配列も同様に用いることができると想定される。
【0160】
当然のことながら、発現のために選択された細胞小器官、細胞型、組織、器官、または生物におけるDNAセグメントの発現を効果的に指示するプロモーターおよび/またはエンハンサーを用いることが重要であろう。分子生物学の当業者は、一般に、タンパク質発現のためにプロモーター、エンハンサー、および細胞型の組合せの使用を知っている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Sambrookら、1989を参照)。用いるプロモーターは、構成的、組織特異的、誘導性、および/または、組換えタンパク質および/またはペプチドの大規模生産において有利であるような、導入したDNAセグメントの高レベル発現を指示するために適切な条件下で、有用であり得る。プロモーターは、異種であっても内因性であってもよい。
【0161】
さらに、任意のプロモーター/エンハンサーの組合せ(例えば、ワールドワイドウェブのepd.isb-sib.ch/による真核生物プロモーターデータベースEPDBの通り)も、発現を推進するために使用することができる。T3、T7またはSP6細胞質発現系の使用は、もう一つの可能な実施形態である。適切な細菌ポリメラーゼが送達複合体の一部として、または追加の遺伝子発現構築物として提供されれば、真核細胞は、特定の細菌プロモーターからの細胞質の転写をサポートすることができる。
【0162】
プロモーターの限定されない例としては、初期または後期ウイルスプロモーター、例えば、SV40初期または後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)初期プロモーターなど;真核細胞プロモーター、例えば、βアクチンプロモーター、GADPHプロモーター、メタロチオネインプロモーターなど;ならびに、最小のTATAボックスの近くの連結された応答エレメントプロモーター、例えばサイクリックAMP応答エレメントプロモーター(cre)、血清応答エレメントプロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)および応答エレメントプロモーター(tre)などが挙げられる。また、ヒト成長ホルモンプロモーター配列(例えば、Genbankに記載されているヒト成長ホルモン最小プロモーター、アクセッション番号X05244、ヌクレオチド283~341)またはマウス乳房腫瘍プロモーター(ATCCより入手可能、カタログ番号ATCC45007)を使用することも可能である。特定の実施形態では、プロモーターは、CMV IE、デクチン-1、デクチン-2、ヒトCD11c、F4/80、SM22、RSV、SV40、Ad MLP、β-アクチン、MHCクラスIまたはMHCクラスIIプロモーターであるが、治療用遺伝子の発現を推進するために有用な任意の他のプロモーターが本開示の実践に適用可能である。
【0163】
特定の態様では、本開示の方法は、エンハンサー配列、すなわち、プロモーターの活性を増加させ、シスで、それらの配向に関係なく、比較的長距離(標的プロモーターから数キロベースまでの距離)でさえも作用する可能性を有する核酸配列にも関する。しかし、エンハンサーの機能は、所与プロモーターのすぐ近くでも機能し得るため、必ずしもそのような長距離に限定されない。
【0164】
(ii)開始シグナルおよび連結発現
本開示で提供される発現構築物では、コード配列の効率的な翻訳のために、特定の開始シグナルが使用されることもある。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは隣接配列が含まれる。ATG開始コドンを含む、外因性翻訳制御シグナルを提供する必要があり得る。当業者であれば容易にこれを決定し、必要なシグナルを得ることができるであろう。挿入物全体の翻訳を確実にするために、開始コドンが所望のコード配列のリーディングフレームと「インフレーム」でなければならないことはよく知られている。外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然または合成のいずれかであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメントを含めることにより増強することができる。
【0165】
特定の実施形態では、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用を用いて多重遺伝子、または多シストロン性メッセージが生成される。IRESエレメントは、5’メチル化キャップ依存的翻訳のリボソームスキャンモデルを迂回することができ、内部部位で翻訳を開始する。ピコナウイルス科の2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎ウイルス)由来のIRESエレメントが、哺乳類メッセージ由来のIRESとともに記載されている。IRESエレメントは、異種オープンリーディングフレームに連結することができる。それぞれがIRESによって分離されている、複数のオープンリーディングフレームは、一緒に転写して、ポリシストロン性メッセージを作製することができる。IRESエレメントのおかげで、各オープンリーディングフレームは効率的な翻訳のためにリボソームにアクセス可能である。単一のメッセージを転写する単一のプロモーター/エンハンサーを使用して、多数の遺伝子を効率的に発現させることができる。
【0166】
さらに、特定の2A配列エレメントを使用して、本開示で提供される構築物において遺伝子の連結または共発現を作出してもよい。例えば、単一のシストロンを形成するようにオープンリーディングフレームを連結することにより、切断配列を使用して遺伝子を共発現させることができる。例示的な切断配列は、F2A(口蹄病ウイルス2A)または「2A様」配列である(例えば、トーセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス2A;T2A)。
(iii)複製起点
ベクターを宿主細胞内で増殖させるために、それは、1つまたは複数の複製起点部位(しばしば「ori」と呼ばれる)、例えば、上記のEBVのoriPに対応する核酸配列、または複製が開始される特定の核酸配列である、プログラミングの際に同様または高度な機能を持つ、遺伝子操作されたoriPを含み得る。あるいは、上記のような他の染色体外複製ウイルスの複製起点または自己複製配列(ARS)を用いることができる。
【0167】
c.選択およびスクリーニング可能なマーカー
一部の実施形態では、本開示の構築物を含む細胞は、マーカーを発現ベクターに含めることにより、インビトロまたはインビボで特定することができる。そのようなマーカーは、細胞に特定可能な変化を与え、発現ベクターを含む細胞を容易に特定することを可能にすることになる。一般に、選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するマーカーである。正の選択マーカーとは、そのマーカーの存在が選択を可能にするものであり、負の選択マーカーとは、そのマーカーの存在が選択を妨げるものである。正の選択マーカーの例は、薬剤耐性マーカーである。
【0168】
通常、薬物選択マーカーを含めることは、形質転換体のクローニングおよび特定に役立ち、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子は、有用な選択マーカーである。条件の実施に基づいて形質転換体の識別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、GFPなどの比色分析を基本とするスクリーニング可能なマーカーを含む他の種類のマーカーも想定される。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などの負の選択マーカーとしてのスクリーニング可能な酵素を利用してもよい。また、当業者であれば、おそらくFACS分析と組み合わせて、免疫学的マーカーを用いる方法を知っているであろう。遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現させることができる限り、使用されるマーカーは重要ではないと考えられている。選択およびスクリーニング可能なマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
【0169】
d.核酸送達のその他の方法
抗原受容体をコードする核酸のウイルス送達に加えて、以下は、所与宿主細胞への組換え遺伝子送達のさらなる方法であり、したがって本開示において考慮される。
【0170】
本開示の免疫細胞へのDNAまたはRNAなどの核酸の導入は、本明細書に記載されるように、または当業者に公知であるように、細胞の形質転換のための核酸送達のための任意の適した方法を使用してよい。そのような方法としては、限定されるものではないが、エクスビボトランスフェクションによる、マイクロインジェクションを含む注射による;エレクトロポレーションによる;リン酸カルシウム沈殿による;DEAE-デキストランとポリエチレングリコールを使用することによる;直接の音波負荷による;リポソーム媒介トランスフェクションおよび受容体媒介トランスフェクションによる;微粒子銃による;炭化ケイ素繊維での撹拌による;アグロバクテリウム媒介形質転換による;乾燥/阻害媒介DNA取込みによるなどのDNAの直接送達、およびこれらの方法の任意の組合せが挙げられる。これらなどの技術の適用を通じて、1つまたは複数の細胞小器官、1つまたは複数の細胞、1つまたは複数の組織または1つまたは複数の生物が、安定的にまたは一時的に形質転換され得る。
【0171】
IV.治療の方法
本発明の方法は、臍帯血または末梢血からの、NK細胞免疫療法のための多数の高機能NK細胞の生成を促進することができる。また、本発明の方法は、CAR-NK細胞療法の機能性を増強するために使用することもできる。したがって、本明細書では、NK細胞を単独で、またはNK細胞上のCD16または他の受容体に結合し、細胞を標的に向け直す、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体と組み合わせて養子注入すること、したがって異なる腫瘍に対する応答を増大させることによる、疾患の治療のための方法が提供される。
【0172】
一部の実施形態では、本開示は、有効量の本開示のNK細胞を投与することを含む免疫療法のための方法を提供する。一実施形態では、医学的疾患または障害は、免疫応答を誘発するNK細胞集団の移入によって治療される。本開示の特定の実施形態では、癌または感染は、免疫応答を誘発するNK細胞集団の移入によって治療される。本明細書では、個体に有効量のNK細胞療法を投与することを含む、個体の癌の進行を治療または遅延させるための方法が提供される。本発明の方法は、免疫障害、固形癌、血液癌、およびウイルス感染症の治療に適用することができる。
【0173】
本発明の治療方法が有用である腫瘍には、固形腫瘍または血液腫瘍に見られような、任意の悪性細胞型が含まれる。例示的な固形腫瘍としては、限定されるものではないが、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、および乳房からなる群から選択される器官の腫瘍を挙げることができる。例示的な血液腫瘍としては、骨髄、T細胞またはB細胞の悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、骨髄腫などの腫瘍が挙げられる。本明細書に記載の方法を使用して治療され得る癌のさらなる例としては、限定されるものではないが、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、胃癌(胃腸癌および消化管間質癌を含む)、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、様々な種類の頭頸部癌、および黒色腫が挙げられる。
【0174】
癌は、これらに限定されないが、具体的には以下の組織型であり得る:新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨大紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管細胞癌;肝細胞癌;肝細胞癌と胆管細胞癌の複合型;小柱腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープの腺癌;腺癌、家族性大腸腺腫症;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;嫌色素性腺癌;好酸球癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状濾胞状腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭嚢胞腺癌;乳頭漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫、悪性;英膜細胞種、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;悪性黒子由来黒色腫;末端黒子型黒色腫;結節性黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎生期癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起細胞腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン(hodgkin’s);傍肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の明記された非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;毛様細胞白血病;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);および慢性骨髄芽球性白血病。
【0175】
特定の実施形態は、白血病の治療方法に関する。白血病は血液または骨髄の癌であり、血液細胞、通常は白血球(ロイコサイト)の異常な増殖(増殖による産生)を特徴とする。これは、血液腫瘍と呼ばれる幅広い疾患群の一部である。白血病は、幅広い疾患を網羅する広義の用語である。白血病は、臨床的および病理学的に、急性型と慢性型に分けられる。
【0176】
本開示の特定の実施形態では、NK細胞は、癌または感染症を有する個体など、それを必要とする個体に送達される。その後、これらの細胞は個体の免疫系を強化して、それぞれの癌または病原性細胞を攻撃する。一部の例では、個体には、1つまたは複数の用量の免疫細胞が提供される。個体に2回以上の免疫細胞の投与が提供される場合、投与と投与の間の期間は、個体内での増殖のための時間を与えるのに十分であるべきであり、特定の実施形態では、投与と投与の間の期間は1、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上の日数である。
【0177】
本開示の特定の実施形態は、免疫介在性障害を治療または予防するための方法を提供する。一実施形態では、対象は自己免疫疾患を有する。自己免疫疾患の限定されない例としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック性皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡(cicatrical pemphigoid)、CREST症候群、寒冷凝集素、クローン病、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、エリテマトーデス、メニエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病または免疫介在性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群(微小変化病、巣状糸球体硬化症、またはメブラン腎症など)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎(結節性多発性動脈炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、または疱疹状皮膚炎脈管炎など)、白斑、およびウェジナー肉芽腫症が挙げられる。したがって、本明細書に開示される方法を使用して治療することができる自己免疫疾患の例としては、限定されるものではないが、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、クローン病;潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、脈管炎、または乾癬が挙げられる。対象は、喘息などのアレルギー性障害を有する可能性もある。
【0178】
さらに別の実施形態では、対象は移植された臓器または幹細胞のレシピエントであり、NK細胞は拒絶反応を予防および/または治療するために使用される。移植片は、顔の組織などの複合移植片であり得る。NK細胞は、移植の前に、移植と同時に、または移植後に投与することができる。一部の実施形態では、NK細胞は、移植の前、例えば移植の少なくとも1時間前、少なくとも12時間前、少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも1週間前、少なくとも2週間前、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前、または少なくとも1カ月前に投与される。一つの具体的な、限定されない例では、治療上有効な量のNK細胞の投与は、移植の3~5日前に行われる。
【0179】
一部の実施形態では、対象は、NK細胞療法の前に骨髄非破壊的なリンパ球除去化学療法を投与され得る。骨髄非破壊的なリンパ球除去化学療法は、任意の適した経路で投与され得る任意の適したそのような療法であり得る。骨髄非破壊的なリンパ球除去化学療法は、例えば、特に癌が転移性であり得る黒色腫である場合には、シクロホスファミドおよびフルダラビンの投与を含み得る。シクロホスファミドおよびフルダラビンの例示的な投与経路は、静脈内である。同様に、任意の適した用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンが投与され得る。具体的な態様では、約60mg/kgのシクロホスファミドが2日間投与され、その後約25mg/mのフルダラビンが5日間投与される。
【0180】
特定の実施形態では、NK細胞の成長および活性化を促進する成長因子が、NK細胞と同時に、またはNK細胞に続いて対象に投与される。免疫細胞成長因子は、NK細胞の成長および活性化を促進する任意の適した成長因子であり得る。適した免疫細胞成長因子の例としては、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15、およびIL-12が挙げられ、これらは単独で、またはIL-2とIL-7、IL-2とIL-15、IL-7とIL-15、IL-2、IL-7とIL-15、IL-12とIL-7、IL-12とIL-15、またはIL-12とIL2のような様々な組合せで使用することができる。
【0181】
治療上有効な量のNK細胞は、非経口投与、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、または関節内注射、または注入を含む多数の経路によって投与することができる。
【0182】
養子細胞療法で用いるNK細胞の治療上有効な量は、治療されている対象において所望の効果を達成する量である。例えば、これは、自己免疫疾患または同種免疫疾患の進行を阻害するため、または退行を引き起こすために必要なNK細胞の量、あるいは疼痛および炎症などの自己免疫疾患によって起こる症状を緩和できるNK細胞の量であり得る。これは、炎症に関連する症状、例えば疼痛、浮腫および体温上昇などを緩和するために必要な量であり得る。これはまた、移植された臓器の拒絶を減少させるかまたは予防するために必要な量でもあり得る。
【0183】
NK細胞集団は、疾患と一致する治療計画、例えば、疾患状態を改善するための1日から数日にわたる単回または数回の用量、あるいは疾患の進行を阻害し、疾患の再発を防ぐための長期間にわたる定期的な用量で投与することができる。製剤に用いる正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度にも依存することになるため、開業医の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。NK細胞の治療有効量は、治療を受ける対象、苦痛の重症度および種類、ならびに投与方法に依存することになる。一部の実施形態では、ヒト対象の治療で使用され得る用量は、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、または少なくとも3.8×1010個のNK細胞/mに及ぶ。特定の実施形態では、ヒト対象の治療で使用される用量は、約3.8×10から約3.8×1010個までのNK細胞/mに及ぶ。さらなる実施形態では、NK細胞の治療有効量は、約5×10細胞/体重kgから約7.5×10細胞/体重kgまで、例えば約2×10細胞から約5×10細胞/体重kgまで、または約5×10細胞から約2×10細胞/体重kgまで変化する可能性がある。NK細胞の正確な量は、対象の年齢、体重、性別、および生理学的状態に基づいて、当業者によって容易に決定される。有効量は、インビトロでまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から推定することができる。
【0184】
NK細胞は、免疫介在性障害の治療用の1つまたは複数の他の治療薬と組み合わせて投与されてよい。併用療法としては、限定されるものではないが、1つまたは複数の抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤および抗真菌剤、抗腫瘍剤(例えば、フルオロウラシル、メトトレキサート、パクリタキセル、フルダラビン、エトポシド、ドキソルビシン、またはビンクリスチン)、免疫枯渇剤(immune-depleting agents)(例えば、フルダラビン、エトポシド、ドキソルビシン、またはビンクリスチン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、またはデキサメタゾンもしくはプレドニゾンなどのグルココルチコイド)、抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾンもしくはプレドニゾンなどのグルココルチコイド、またはアセチルサリチル酸、イブプロフェンもしくはナプロキセンナトリウムなどの非ステロイド系抗炎症剤)、サイトカイン(例えば、インターロイキン-10またはトランスフォーミング成長因子-β)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、またはワクチンを挙げることができる。さらに、限定されるものではないが、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリンおよびタクロリムス);mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン);ミコフェノール酸モフェチル、抗体(例えば、CD3、CD4、CD40、CD154、CD45、IVIG、またはB細胞を認識するもの);化学療法剤(例えば、メトトレキサート、トレオスルファン、ブスルファン);放射線照射;あるいはケモカイン、インターロイキンまたはそれらの阻害剤(例えば、BAFF、IL-2、抗IL-2R、IL-4、JAKキナーゼ阻害剤)をはじめとする免疫抑制剤または免疫原性剤が投与され得る。そのような追加の医薬品は、所望の効果に応じて、NK細胞の投与前、投与中、または投与後に投与することができる。細胞および薬剤のこの投与は、同じ経路または異なる経路で、同じ部位または異なる部位のいずれかで行うことができる。
【0185】
B.医薬組成物
NK細胞と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物および製剤も本明細書において提供される。
【0186】
本明細書に記載される医薬組成物および製剤は、所望の純度を有する有効成分(例えば抗体またはポリペプチドなど)を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 22nd edition,2012)と、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で混合することによって調製され得る。薬学的に許容される担体は、通常、用いられる投与量および濃度ではレシピエントに対して無毒であり、それには、限定されるものではないが:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンをはじめとする抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンをはじめとするその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。本明細書中の例示的な薬学的に許容される担体には、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International、Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの間質性(insterstitial)薬物分散剤がさらに含まれる。rHuPH20を含む特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0187】
C.併用療法
特定の実施形態では、本発明の実施形態の組成物および方法は、少なくとも1つの追加の治療法と組み合わせたNK細胞集団を含む。追加の治療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述の組合せであってよい。追加の治療法は、アジュバントまたはネオアジュバント療法の形態であってよい。
【0188】
一部の実施形態では、追加の治療法は、小分子酵素阻害剤または抗転移剤の投与である。一部の実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、抗悪心剤などの、治療の副作用の発生および/または重症度を軽減することを目的とした薬剤)の投与である。一部の実施形態では、追加の治療法は放射線療法である。一部の実施形態では、追加の治療法は手術である。一部の実施形態では、追加の治療法は放射線療法と手術の併用である。一部の実施形態では、追加の治療法はγ線照射である。一部の実施形態では、追加の治療法は、PBK/AKT/mTOR経路、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス 阻害剤、および/または化学予防剤を標的とする治療法である。追加の治療法は、当技術分野で公知の1つまたは複数の化学療法剤であってよい。
【0189】
NK細胞療法は、免疫チェックポイント療法などの追加の癌療法に対して、前、最中、後、または様々な組合せで投与することができる。投与は、同時から、数分、数日、数週間にわたる間隔で行うことができる。免疫細胞療法が追加の治療薬とは別に患者に提供される実施形態では、一般的に、2つの化合物が依然として患者に有利な複合効果を発揮することができるように、それぞれの送達時間の間にかなりの時間が経過しないようにするであろう。そのような例では、抗体療法および抗癌療法を互いに約12~24または72時間以内に、より特に互いに約6~12時間以内に患者に提供することが想定される。状況によっては、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6、または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)の期間を空けて、治療期間を大幅に延長することが望ましいこともある。
【0190】
さまざまな組合せが用いられてよい。下の例の場合、NK細胞療法が「A」であり、抗癌療法が「B」である:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0191】
本発明の実施形態の任意の化合物または治療法の患者への投与は、薬剤の毒性がある場合にはそれを考慮に入れて、そのような化合物の投与のための一般的なプロトコールに従うことになる。そのため、一部の実施形態では、併用療法に起因する毒性を監視するステップがある。
【0192】
1.化学療法
幅広い種類の化学療法剤が、本発明の実施形態に従って使用され得る。「化学療法」という用語は、癌を治療するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、癌の治療において投与される化合物または組成物を暗示するために使用される。これらの薬剤または薬物は、細胞内でのそれらの活性モード、例えば、それらが細胞周期に影響を与えるかどうか、およびどの段階で影響を与えるかによって分類される。あるいは、薬剤は、DNAを直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、または核酸合成に影響を与えることによって染色体分裂および有糸分裂の異常を誘発する能力に基づいて特徴付けることができる。
【0193】
化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)をはじめとするエチレンイミンおよびメチルメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体のトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、およびウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine)などのニトロソウレア(nitrosureas);エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特にカリチアマイシンγIIおよびカリチアマイシンωI1)などの抗生物質;ダイネマイシンAをはじめとするダイネマイシン;クロドロン酸などのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アウトラルニシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、プテロプテリン、およびトリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、およびフロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトンなどのアンドロゲン;ミトタンおよびトリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシンおよびアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベルカリンA(verracurin A)、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチンなどの白金錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリカマイシン、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0194】
2.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く使用されてきたその他の要因には、一般にγ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位元素の指向性送達として知られているものが含まれる。マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号および第4,870,287号)、およびUV照射などのその他の形態のDNA損傷因子も想定される。これらの要因はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製と修復、および染色体の組み立てと維持に対する広範囲の損傷に影響を与えている可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)の一日線量の50~200レントゲンから、単回線量の2000~6000レントゲンに及ぶ。放射性同位元素の線量範囲は幅広く変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強度と種類、および腫瘍細胞による取り込みに依存する。
【0195】
3.免疫療法
当業者は、追加の免疫療法が、実施形態の方法と組み合わせて、またはそれとともに使用されてよいことを理解するであろう。癌治療の状況において、免疫療法は、一般に癌細胞を標的にして破壊する免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存する。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))はそのような一例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上の一部のマーカーに特異的な抗体であってよい。抗体は単独で治療のエフェクターとして機能することもあれば、他の細胞を動員して実際に細胞の死滅に影響を与えることもある。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)と結合されて、標的化薬剤としての機能を果たすこともある。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的にまたは間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってよい。さまざまなエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0196】
抗体薬物複合体は、癌治療薬の開発への画期的なアプローチとして登場した。癌は世界の主な死因の一つである。抗体薬物複合体(ADC)は、細胞殺傷薬に共有結合されたモノクローナル抗体(MAb)を含む。このアプローチは、その抗原標的に対するMAbの高い特異性と、非常に強力な細胞傷害性薬物を組み合わせて、濃縮レベルの抗原を有する腫瘍細胞にペイロード(薬物)を送達する、「武装した」MAbをもたらす。薬物の標的化送達も、正常組織でのその曝露を最小限に抑えるので、毒性が低下し、治療指数が改善される。2011年のADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)と2013年のKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシンまたはT-DM1)の2つのADC薬がFDAに承認されたことにより、このアプローチは有効になった。現在、癌治療の臨床試験のさまざまな段階で30を超えるADC薬の候補がある(Lealら、2014)。抗体工学とリンカー・ペイロードの最適化がますます成熟していく中で、新しいADCの発見と開発は、このアプローチに適した新しい標的の特定と検証、および標的化MAbの生成にますます依存している。ADC標的の2つの判定基準は、腫瘍細胞における発現の増加/高レベルの発現と、強固な内部移行である。
【0197】
免疫療法の一態様では、腫瘍細胞は、標的化に適した、つまり、他の細胞の大部分には存在しないマーカーを有していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらうちのいずかが、本発明の実施形態の状況において標的化に適している可能性がある。一般的な腫瘍マーカーには、CD20、癌胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erb B、およびp155が含まれる。免疫療法の別の態様は、抗癌効果と免疫刺激効果を組み合わせることである。免疫刺激分子も存在し、それには、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、およびFLT3リガンドなどの成長因子が含まれる。
【0198】
現在調査中または使用中の免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、マイコバクテリウム・ボビス、熱帯熱マラリア原虫、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号および同第5,739,169号;HuiおよびHashimoto、1998;Christodoulidesら、1998);サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、βおよびγ、IL-1、GM-CSF、およびTNF(Bukowskiら、1998;Davidsonら、1998;Hellstrandら、1998);遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、およびp53(Qinら、1998;Austin-Ward and Villaseca、1998;米国特許第5,830,880号および同第5,846,945号);ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185(Hollander、2012;Hanibuchiら、1998;米国特許第5,824,311号)である。1つまたは複数の抗癌療法が、本明細書に記載される抗体療法とともに使用され得ることが想定される。
【0199】
一部の実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、シグナルを下げる。免疫チェックポイント封鎖によって標的化され得る抑制性免疫チェックポイントには、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276としても公知)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、CD152としても公知)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)およびT細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサー(VISTA)が含まれる。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸および/またはCTLA-4を標的とする。
【0200】
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子、リガンドまたは受容体の組換え体などの薬物であり得るか、または特に、ヒト抗体などの抗体であってよい(例えば、国際公開公報WO2015016718号;Pardoll、Nat Rev Cancer、12(4):252~64、2012;両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。免疫チェックポイントタンパク質またはその類似体の既知の阻害剤を使用することができる、特に、キメラ化、ヒト化、またはヒト型の抗体を使用することができる。当業者であれば分かるように、本開示で言及される特定の抗体には、代替の名称および/または同等の名称が使用されていることがある。そのような代替の名称および/または同等の名称は、本開示の文脈において互いに交換可能である。例えば、ランブロリズマブは、MK-3475およびペンブロリズマブという代替の名称および同等の名称でも知られていることが知られている。
【0201】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1とそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1および/またはPDL2である。もう一つの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1とその結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PDL1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。もう一つの実施形態では、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2とその結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PDL2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであってよい。例示的な抗体は、すべて参照により本明細書に援用される米国特許第8735553号、同第8354509号、および同第8008449号に記載されている。本明細書で提供される方法で使用するためのその他のPD-1軸アンタゴニストは、米国特許出願公開第20140294898号、同第2014022021号、および同第20110008369号に記載されるなど当技術分野で公知であり、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0202】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびCT-011からなる群から選択される。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPDL1またはPDL2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)としても公知のニボルマブは、国際公開第2006/121168号に記載の抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475としても公知のペンブロリズマブは、国際公開第2009/114335号に記載の抗PD-1抗体である。hBATまたはhBAT-1としても公知のCT-011は、国際公開第2009/101611号に記載の抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても公知のAMP-224は、国際公開第2010/027827号および国際公開第2011/066342号に記載のPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0203】
本明細書で提供される方法で標的化され得る別の免疫チェックポイントは、CD152としても公知の細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列のGenbankアクセッション番号はL15006である。CTLA-4は、T細胞の表面に見出され、抗原提示細胞の表面のCD80またはCD86に結合すると「オフ」スイッチとして機能する。CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面に発現し、抑制性シグナルをT細胞に伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4はT細胞共刺激タンパク質であるCD28に類似しており、両方の分子が抗原提示細胞上のCD80およびCD86(それぞれB7-1およびB7-2とも呼ばれる)に結合する。CTLA4は抑制性シグナルをT細胞に伝達するが、CD28は刺激性シグナルを伝達する。細胞内CTLA4は制御性T細胞にも見出され、それらの機能に重要であり得る。T細胞受容体およびCD28によるT細胞の活性化は、B7分子の抑制性受容体であるCTLA-4の発現の増加を導く。
【0204】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0205】
本発明の方法での使用に適した抗ヒト-CTLA-4抗体(またはそれから誘導されるVHおよび/またはVLドメイン)は、当技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認められている抗CTLA-4抗体を使用することができる。例えば、抗CTLA-4抗体は、以下に開示されている。米国特許第8,119,129号、国際公開第01/14424号、国際公開第98/42752号;国際公開第00/37504号(トレメリムマブとしても公知のCP675,206;旧チシリムマブ)、米国特許第6,207,156;Hurwitzら(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95(17):10067-10071;Camachoら(2004)J Clin Oncology 22(145):Abstract No.2505(抗体CP-675206);およびMokyrら(1998)Cancer Res 58:5301-5304は、本明細書に開示される方法で使用され得る。前述の刊行物のそれぞれの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。CTLA-4への結合について、これらの当該技術分野で承認されている抗体のいずれかと競合する抗体も使用することができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際公開第2001014424号、同第2000037504号、および米国特許第8,017,114号に記載されており、すべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0206】
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、およびヤーボイ(登録商標)として公知)またはその抗原結合フラグメントおよび変異体(例えば、国際公開第01/14424を参照)である。他の実施形態では、抗体は、イピリムマブの重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、一実施形態では、抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびにイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、上記の抗体と同じCTLA-4上のエピトープとの結合について競合する、かつ/または結合する。もう一つの実施形態では、抗体は、上記の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、95%、または99%の可変領域同一性)を有する。
【0207】
CTLA-4を調節するためのその他の分子としては、すべて参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5844905号、同第5885796号および国際特許出願第WO1995001994号および同第1998042752号に記載されるようなCTLA-4リガンドおよび受容体;ならびに、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8329867号に記載されるようなイムノアドヘシンが挙げられる。
【0208】
4.手術
癌患者の約60%は、予防的、診断または病期分類、治癒的、緩和的手術を含む何らかの種類の手術を受ける。治癒的手術には、癌性組織の全部または一部を物理的に除去、切除、および/または破壊する切除術が含まれ、本発明の実施形態の治療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の治療法と併用することができる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて、手術による治療には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡制御手術(モース手術)が含まれる。
【0209】
癌性細胞、組織、または腫瘍の一部または全部を切除すると、体内に空洞が形成される場合がある。治療は、灌流、直接注射、または追加の抗癌療法を伴う領域の局所適用によって達成され得る。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、または7日ごとに、または1、2、3、4、および5週間ごとに、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12か月ごとに繰り返されてよい。これらの治療は、投与量もさまざまであり得る。
【0210】
5.その他の薬剤
治療の治療効力を改善するために、その他の薬剤を本発明の実施形態の特定の態様と組み合わせて使用することができると想定される。これらの追加の薬剤には、細胞表面受容体およびGAP結合のアップレギュレーションに影響を与える薬剤、細胞分裂阻害剤および分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖細胞の感受性を高める薬剤、またはその他の生物学的製剤が含まれる。GAP結合の数を増加させることによる細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増加させるであろう。他の実施形態では、細胞分裂阻害剤または分化剤を、本発明の実施形態の特定の態様と組み合わせて使用して、治療の抗過剰増殖効力を改善することができる。細胞間接着の阻害剤は、本発明の実施形態の効力を改善すると想定されている。細胞間接着阻害剤の例は、焦点接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。さらに、抗体c225などの、アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を増加させる他の薬剤を、本発明の実施形態の特定の態様と組み合わせて使用して、治療効力を改善することができると想定される。
【0211】
V.製造品またはキット
NK細胞を含む製造品またはキットも本明細書で提供される。製造品またはキットは、個体の癌の進行を治療または遅延させるため、または癌を有する個体の免疫機能を増強するためにNK細胞を使用するための説明書を含む添付文書をさらに含むことができる。本明細書に記載される抗原特異的NK細胞はいずれも製造品またはキットに含めることができる。適した容器には、例えば、ボトル、バイアル、バッグおよびシリンジが含まれる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニルやポリオレフィンなど)、または金属合金(ステンレス鋼やハステロイなど)などのさまざまな材料で形成されてよい。一部の実施形態では、容器は製剤を保持し、容器上のラベルまたは容器に関連するラベルは、使用方法を示すことができる。製造品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および取扱説明書を備えた添付文書をはじめとする、商業的およびユーザーの観点から望ましいその他の材料をさらに含むことがある。一部の実施形態では、製造品は、1つまたは複数の別の薬剤(例えば、化学療法剤、および抗悪性腫瘍剤)をさらに含む。1つまたは複数の薬剤に適した容器には、例えば、ボトル、バイアル、バッグおよびシリンジが含まれる。
【0212】
VI.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められている。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると考えられ得ることを当業者は理解するはずである。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、それでも本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0213】
実施例1-NK細胞の増殖
NK細胞は有望な抗腫瘍エフェクターとして研究されてきたが、多くの障壁が治療上の利用を制限している。それは主にNK細胞の数が少ないことに関連しており、養子免疫療法のためにエクスビボでの増殖が必要である。患者または成人同種異系ドナーの末梢血NK(PB-NK細胞)細胞が最も一般的に使用される;しかし、このアプローチは、白血球除去輸血を受けるために、6つのHLA分子のうちの少なくとも3つがレシピエントと一致している自発的なドナーを必要とする。成人PB NK細胞のもう一つの欠点は、養子移入の後のインビボ増殖および持続性が最適以下であることである。
【0214】
本発明の研究により、CBから生成されたNK細胞が、細胞増殖、細胞活性化、細胞接着、細胞周期、およびDNA複製に関与する遺伝子のより高い発現に関連する特有の利点を有し得ることが示された(図1A図1E)。したがって、4-1 BBリガンド、IL21またはIL-15を発現するフィーダー細胞などの操作されたフィーダー細胞、およびCD48またはCSlなどのNK共刺激分子を活性化するためのリガンドを使用してCB由来NK細胞を増殖させるための迅速なGMP準拠の増殖プロトコールが開発された。
【0215】
NK細胞は、凍結融解されたCBユニットから、または臨床CBバンクから選択された新鮮なCBユニットから、単離および増殖された。本発明の戦略の特有の態様は、ドナーとレシピエントの間にHLA一致の要件がなく、真に「すぐに使える」細胞療法製品が可能になることである。可能な場合、CBユニットはレシピエントとのKIRリガンドの不一致に基づいて選択される。
【0216】
図2に示すように、2週間の培養期間内に、中央値803倍の増殖(範囲346~5547)が達成された。これは、PB NK細胞で達成された増殖(中央値380、範囲99~1515;P=0.036))よりも大幅に高く、CB-NK細胞の固有の増殖特性を示している。RE-CBのNK細胞は機能的な表現型を示し(図3)、高発現のパーフォリンおよびグランザイム、ならびにCD57、KLRG1およびPD1の発現の欠如によって示されるように、疲弊の証拠はない。
【0217】
RE-CBのNK細胞は、インビトロで腫瘍細胞株に対して高い細胞傷害性を示し、照射後の免疫不全マウスで強力な抗腫瘍活性を誘導した図4。さらに、RE-CBのNK細胞製品(6つのHLA対立遺伝子のうち1~5つで一致)が、60人以上の血液癌患者に対して、自家幹細胞レスキューを伴う高用量化学療法、同種異系幹細胞移植を伴う骨髄破壊的、骨髄非破壊的または強度を下げた化学療法の後、およびフルダラビンに基づくリンパ球除去化学療法の後に投与されたが、移植片対宿主病または他の毒性を示さなかった。
【0218】
本発明の方法は、培養を実行するために必要な時間およびロジスティクスを改善し、手順のコストを下げるように最適化された。最適化には、培地の量を増やすこと、したがって細胞の濃度を下げることが含まれた。最初の7日間の培養について表2A、そして第2週の培養について表2Bに示されるように、培地量が少なく細胞濃度が高い場合(G-Rex100)と比較して、培地量が多く細胞濃度が低い場合(G-Rex100M)では、有意に良好な拡大倍数が達成された。最適化された手順に必要なバイオリアクターは少なくなり、同じまたはそれ以上のNK細胞用量を生成するために必要な細胞は少なくなった。これが示されるのは7日目で、同じ用量を達成するために各G-Rex100Mに播種するのに必要な細胞数は4分の1であった。0~7日目は、(以前の手順で少なくとも2回補給した場合と比較して)、培養への介入は必要なかった。
【0219】
7~14日目の最適化された手順では、細胞は分割を必要とせず、2回だけ補給された。使用する培地とサイトカインが少なくなり、技術者の時間が減り、これらすべてがコストを節約し、ロジスティクスを改善した。さらに、7日目から14日目の培養に介入する必要性が最小限に抑えられた(IL2を2回添加するだけ)。これにより、技術時間が節約されただけでなく、微生物汚染の可能性が大幅に低下した。これは、培養物を1日おきに分割して補給を繰り返すため、微生物汚染のリスクが高くなる、目下使用されている現在のNK細胞増殖手順とは対照的であった。表2Cに要約されるように、最適化されたアプローチは、技術者の時間を29%削減した。
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【0220】
最適化された培養ロジスティクス、コストおよび微生物汚染リスクの低下に加えて、本発明の方法のアプローチには、いくつかのその他の新規かつ重要な特徴がある。図2に示すように、2週間の培養期間内に、中央値803倍の増殖(範囲346~5547)が達成された。これは、PB NK細胞(中央値380、範囲99~1515;P=0.036))よりも大幅に高く、CB-NK細胞の固有の増殖特性を示した。RE-CBのNK細胞は機能的な表現型を示した図3、高発現のパーフォリンαおよびグランザイム、ならびにCD57、KLRG1およびPD1の発現の欠如によって示されるように、疲弊の証拠はなかった。RE-CBのNK細胞は、インビトロで腫瘍細胞株に対して高い細胞傷害性を示し、照射後の免疫不全マウスで強力な抗腫瘍活性を誘導した(図4)。さらに、急速に増殖した(RE)-CB NK細胞製品(6つのHLA対立遺伝子のうち1~5つで一致)が、80人以上の血液癌患者に対して、自家幹細胞レスキューを伴う高用量化学療法、同種異系幹細胞移植を伴う骨髄破壊的、骨髄非破壊的または強度を下げた化学療法の後、およびフルダラビンに基づくリンパ球除去化学療法の後に投与されたが、移植片対宿主病または他の毒性はなかった。より具体的には、60人の多発性骨髄腫の患者は、化学療法(メルファランとレナリドミド)および自家移植と併用して、CB-NK細胞を安全に受け入れた。表3に示すように、CB NK細胞を受けた42人の患者の多発性骨髄腫(MM)および高リスクMM患者(プロトコール2011-0379に登録)は、メルファランと自家移植による標準治療(SOC)を受けた153人のMMおよびHRMM患者と比較して、≧最良部分奏効(VGPR)および完全奏効(CR)率を経験した。
【表3】
【0221】
モノクローナル抗体エロツズマブ(elotuzamab)は、次のようにNK細胞を刺激するだけでなく、それらを多発性骨髄腫細胞に標的化する。
● エロツズマブは、CD16結合を介して、およびNK細胞へのSLAMF7の直接ライゲーションにより、NK細胞抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を増強する
● エクスビボで増殖したNK細胞は、非増殖細胞よりもエロツズマブに媒介される細胞毒性が高いことを示す
● レナリドミドへのエロツズマブの追加は、SLAMF7hi NK細胞耐性骨髄腫細胞株に対するCB-NK ADCCをさらに増強する
【0222】
このデータに基づいて、エロツズマブ(elotuzamab)を化学療法製剤(メルファランとレノリダミド)に追加し、15人の追加のHRMM患者をCB NK細胞で治療した。表4に示すように、NK細胞を投与されなかった患者と比較して、≧VGPRおよびCR率は、NK細胞を投与されたこれらの高リスク患者で高く、NK細胞とエロツズマブ(elotuzamab)を投与された患者でさらに高かった。骨髄生検での100日目の最小残存病変(MRD)陰性化率も、NK細胞を投与された両方の群で優れていた。現在までに、15人の患者全員が生存しており、移植から1年後に進行性骨髄腫の証拠があるのは1人だけである。この患者は、100日目に骨髄でMRD陽性であった数少ない患者の1人であった。15人の患者のうち14人は進行がないままである。明らかに、本開示のCB NKに基づく治療法は、高リスクの多発性骨髄腫の患者に有効である。
【表4】
【0223】
別の試験(2015-0751)では、難治性/再発性の非ホジキンリンパ腫の14人の患者が、患者とのHLA一致に関係なく、増殖させたCB NK細胞を投与された。これらの患者はすべて、注入またはその他の毒性もなく、GVHDもなく、安全にCB NK細胞を投与された。これらの難治性患者の半数以上(57%)が完全寛解を達成し、この治療後1年でも無憎悪を維持している。これらの結果は、これらのCB NK細胞が、患者またはCBユニットの時間と費用のかかるHLAタイピングを必要とせずに、すぐに使える製品として使用できることを強調している。第3の試験(2012-0819)では、19人の患者が同種移植と併せてCB NK細胞を投与された。これらの患者はこれらの細胞製品産物に非常によく耐え、同様に治療されたがCB NK細胞を使用しない患者よりも白血病の再発が少ないようである。これらのデータは、いくつかの異なる臨床設定における増殖したCB NK細胞の安全性および有効性を示している。
【0224】
したがって、本発明の方法は、臍帯血からNK細胞を増殖して、GMP準拠の臨床用量を達成するために使用できる。
* * *
【0225】
本明細書に開示され、特許請求される方法はすべて、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作成し、実行することができる。本発明の組成物および方法が好ましい実施形態に関して説明されたが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法に、その方法のステップに、またはその方法の一連のステップに変化を加えることができることは当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤を、本明細書に記載される薬剤の代わりに使用してもよく、それでも同じまたは同様の結果が得られることが明らかであろう。当業者に明らかなこのような同様の代替物および変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると見なされる。

参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載された内容を補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
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図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4