(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】シート分離装置及びシート分離方法
(51)【国際特許分類】
B65H 3/08 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
B65H3/08 310A
(21)【出願番号】P 2023575744
(86)(22)【出願日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2023034873
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】514243081
【氏名又は名称】株式会社東洋企画
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】大蔵 文武
(72)【発明者】
【氏名】蘇 民軍
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112249746(CN,A)
【文献】特開平04-322833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層状態のシートが載置される載置部と、
前記載置部に積層された積層状態のシートの最上のシートを吸引して持ち上げ、吸引した最上のシートを、積層状態のシートに対してめくり上げて分離する第1吸引機及び第2吸引機と、
前記積層状態のシートを分離する分離部と、
前記分離されたシートを搬送して後処理装置に受け渡す受渡部と、
を有し、
前記第1吸引機と第2吸引機は、前記分離部側と前記受渡部側に振り分けて配設されると共に、搬送機構によって、前記分離部と前記受渡部間で繰り返し移動し、前記搬送機構は、前記第1吸引機及び第2吸引機の一方が前記分離部でシートを分離して前記受渡部に移動しているときに、他方の吸引機を前記分離部に向けて移動するように制御する
ことを特徴とするシート分離装置。
【請求項2】
前記第1吸引機及び第2吸引機は、前記載置
部の両端側で、それぞれ180°湾曲する湾曲部と、前記載置
部の両端間を直線移動する直線移動部とを備えた無限軌道に沿って設置されていることを特徴とする請求項1に記載のシート分離装置。
【請求項3】
前記無限軌道は、前記載置
部の両サイドに設置されており、
前記第1吸引機及び第2吸引機は、前記両サイドの無限軌道に横架される支持シャフトに支持されていることを特徴とする請求項2に記載のシート分離装置。
【請求項4】
前記支持シャフトは、中心軸周りに回転駆動されると共に、前記無限軌道に沿って移動することを特徴とする請求項3に記載のシート分離装置。
【請求項5】
前記第1吸引機及び第2吸引機は、前記分離部に位置した際、最上のシートを吸引した状態で前記支持シャフトを回転駆動しながら、前記直線移動部を移動することを特徴とする請求項4に記載のシート分離装置。
【請求項6】
前記第1吸引機及び第2吸引機は、前記載置部を挟んで両側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のシート分離装置。
【請求項7】
前記第1吸引機及び第2吸引機は、シート表面に密着して吸引する複数の吸引パッドをそれぞれ備えており、
前記複数の吸引パッドは、前記分離されるシートの搬送方向と直交する方向に所定間隔をおいて直線状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載のシート分離装置。
【請求項8】
前記受渡部は、前記分離部で1枚に分離されたシートの先端側を支持する支持板を備えており、
前記支持板には、前記複数の吸引パッドにそれぞれ対応する複数の凹所が形成され、前記吸引パッドが凹所に位置した際、吸引パッドの吸引力を解除して、1枚に分離されたシートの先端側を前記支持板上に支持することを特徴とする請求項7に記載のシート分離装置。
【請求項9】
前記載置
部を、前記第1吸引機及び第2吸引機の吸引パッドに対して押し付ける押付駆動装置を有することを特徴とする請求項7に記載のシート分離装置。
【請求項10】
前記吸引機の回転速度よりも、吸引機の移動速度が大きくなるように前記吸引機及び支持シャフトを駆動制御することを特徴とする請求項5に記載のシート分離装置。
【請求項11】
分離部において、積層状態のシートに対し、最上のシートを吸引して持ち上げ、吸引した最上のシートを、積層状態のシートに対してめくり上げて分離する分離工程と、
前記めくり上げて分離したシートを搬送する搬送工程と、
前記搬送工程で搬送されたシートを後処理装置の受渡部に受け渡す受渡工程と、
を備え、
前記分離工程は、無限軌道に沿って配設された第1吸引機及び第2吸引機で連続してシートの分離を実行し、
前記搬送工程は、前記第1吸引機及び第2吸引機の一方を前記受渡部に搬送する際、他方の吸引機を前記分離部に向けて搬送することを特徴とするシート分離方法。
【請求項12】
前記分離工程は、前記吸引している最上のシートを、積層状態のシートに対してめくり上げながら前記後処理装置に受け渡すように搬送することを特徴とする請求項11に記載のシート分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積載されたシートを1枚ずつ分離するシート分離装置及びシート分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層状態にあるシート(例えば、袋状に形成されたシート)を1枚ずつ分離し、これを別の装置に搬送するシート分離装置が知られている。このようなシート分離装置は、1枚に分離されたシートを、その下流側に設置された後処理装置(例えば、ラベル貼付装置など)に搬送する。ところで、前記シートがプラスチック製で薄いと、静電気が帯電する性質があり、積層状態のシートから、最上のシートを分離するに際し、前記静電気によって袋同士が密着して剥がれ難くなる。
【0003】
例えば、特許文献1には、積層状態のシートから1枚ずつシートを確実に分離することが可能なシート分離装置が開示されている。
図11及び
図12を参照して、特許文献1に開示されたシート分離装置のシート分離の概略工程を説明する。
【0004】
最初、載置部に載置された積層状態にあるシートの最上のシート200の前側を吸引機201によって吸引し持ち上げる。次に、吸引機201は、持ち上げたシート200を略180°回動させながら搬送する(
図11(a)~(c))。この際、吸引して持ち上げたシート200は、吸引機201の回転によって、積層状態のシートに対してめくり上がるように分離される。すなわち、単に吸引機が積層方向(鉛直方向)に移動するだけでは、1枚目のシートと2枚目のシートが静電気等によって面全体で引き合っているため、1枚だけの分離は難しいが、吸引機を回転させることで、1枚目と2枚目との間は線方向の抵抗となり、1枚分離が容易に行えるようになる。
【0005】
そして、持ち上げられたシート200は、回動駆動される吸引機201によって、略180°反転した状態で下流位置まで搬送され、この位置で後処理装置(図示せず)に引き渡される(
図11(d))。その後、吸引機201は、反対向きに駆動され(
図12(a)~(c))、次のシートの1枚分離を行なうように、
図11(a)に示した初期位置に戻される(
図12(d))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した吸引機によるシートの分離方法では、吸引機が初期位置でシートを分離し、その後、略180°回転して下流側の受渡位置に搬送して後処理装置に受け渡し、再び初期値に戻る構成となっている。このように、吸引機は、初期位置と受渡位置を往復駆動されるため、シートの高速分離処理に限界がある。
【0008】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、積層状態にあるシートから、シートを1枚ずつ確実に分離して高速処理することが可能なシート分離装置、及び、シート分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係るシート分離装置は、積層状態のシートが載置される載置部と、前記載置部に積層された積層状態のシートの最上のシートを吸引して持ち上げ、吸引した最上のシートを、積層状態のシートに対してめくり上げて分離する第1吸引機及び第2吸引機と、前記積層状態のシートを分離する分離部と、前記分離されたシートを搬送して後処理装置に受け渡す受渡部と、を有し、前記第1吸引機と第2吸引機は、前記分離部側と前記受渡部側に振り分けて配設されると共に、搬送機構によって、前記分離部と前記受渡部間で繰り返し移動し、前記搬送機構は、前記第1吸引機及び第2吸引機の一方が前記分離部でシートを分離して前記受渡部に移動しているときに、他方の吸引機を前記分離部に向けて移動するように制御することを特徴とする。
【0010】
上記したシート分離装置では、載置部に載置された積層状態にあるシートの最上のシートを吸引機によって吸引しながら持ち上げ、積層状態のシートに対してめくり上がるように分離する。また、シートの分離は、前記第1吸引機と第2吸引機で連続的に行なうようにしており、前記第1吸引機及び第2吸引機の一方が前記分離部でシートを分離して、前記受渡部に移動したときに、他方の吸引機は前記分離部に向けて移動する。このため、1つの吸引機を往復駆動するよりも、シートの分離工程が短くなり、高速でシートの分離処理を行なうことが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るシート分離方法は、分離部において、積層状態のシートに対し、最上のシートを吸引して持ち上げ、吸引した最上のシートを、積層状態のシートに対してめくり上げて分離する分離工程と、前記めくり上げて分離したシートを搬送する搬送工程と、前記搬送工程で搬送されたシートを後処理装置の受渡部に受け渡す受渡工程と、を備え、前記分離工程は、無限軌道に沿って配設された第1吸引機及び第2吸引機で連続してシートの分離を実行し、前記搬送工程は、前記第1吸引機及び第2吸引機の一方を前記受渡部に搬送する際、他方の吸引機を前記分離部に向けて搬送することを特徴とする。
【0012】
このようなシート分離方法によれば、第1吸引機及び第2吸引機で、シートの分離と分離したシートの後処理装置への受け渡しを連続的に行うことができるため、高速でシートの分離処理を行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、積層状態にあるシートから、シートを1枚ずつ確実に分離して高速処理することが可能なシート分離装置、及び、シート分離方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るシート分離装置の一実施形態を前方側から見た概略斜視図。
【
図2】本発明に係るシート分離装置の一実施形態を後方側から見た概略斜視図。
【
図6】(a)から(d)は、シートの分離部において、吸引機(吸引パッド)の動作を順に示す図。
【
図7】1枚に分離してめくり上げたシートを受渡部に搬送した状態を示す概略図。
【
図8】(a)から(c)は、シートの分離工程、及び、搬送工程を示す概略図。
【
図9】吸引パッドによるシートの分離状態を示す概略図。
【
図10】吸引パッドによるシートの受渡状態を示す概略図。
【
図11】(a)から(d)は、従来のシートの分離工程を示す概略図。
【
図12】(a)から(d)は、
図11のシート分離工程が終了した後、次のシートの分離工程を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るシート分離装置の一実施形態を添付図面に沿って具体的に説明する。
図1から
図5は、本発明に係るシート分離装置の一実施形態を示す図であり、
図1は、前方側から見た概略斜視図、
図2は、後方側から見た概略斜視図、
図3は、側面図、
図4は、平面図、そして、
図5は、正面図である。また、図において、X方向は、シートの搬送方向(前後方向)、Y方向は、シートの搬送方向に対して直交する方向(幅方向)、Z方向は、シートの積層方向(上下方向)と定義する。
【0016】
本実施形態に係るシート分離装置1は、基台(フレーム)2と、基台2に設けられた載置部3とを備えている。前記載置部3は、基台2に設置される押付駆動装置5によって、上下方向(Z方向)に移動可能に設けられている。前記載置部3には、薄いシート(ナイロン等で形成された薄い袋やフィルム、紙など)を多数枚積層し(積層状態のシートをSで示す)、上から順番に1枚ずつ分離するのに適した構造となっている。ここで分離された最上のシートS1(
図7~
図10参照)は、図示しない後処理装置(例えば、ラベル装置、溶着装置など)に搬送される。
【0017】
前記シート分離装置1は、載置部3に積層された積層状態のシートSを吸引して持ち上げる吸引機10Aと、積層状態のシートSの縁部(一端部)に対向するように設置されたシート分離機構15とを備えている。このシート分離機構15は、各種公知の構成を用いることができ、例えば、載置部3上の積層状態のシートSの最上のシートS1に密着して押さえ付ける円形状のフランジ15Aを具備している。すなわち、積層状態のシートSの最上のシートS1は、フランジ15Aの円弧領域に押さえ付けられており、最上のシートS1が吸引機10A,10Bによって吸引されながら上昇すると、シートS1は分離作用を受け、2枚目以降のシートが連られて上昇することを抑止することが可能となる。なお、シート分離機構15は、積層状態のシートSの両サイドに係合して分離作用を与えるものであっても良い。
【0018】
前記吸引機10Aは、積層状態のシートSの一端部側に、Y方向に沿って所定間隔をおいて複数個(本実施形態では6個)配設されており、後述する支持シャフト12に支持されている。
【0019】
本発明に係るシート分離装置1は、上記した構成の吸引機及び支持シャフトが一対設けられている。
以下の説明では、図に示す状態を初期位置とし、載置部3の上方側に位置している吸引機を第1吸引機10A、載置部3の下方側に位置している吸引機を第2吸引機10Bと称する。
【0020】
これらの第1吸引機10Aと第2吸引機10Bは、初期位置では、シートの分離を行なう分離部A側と、シートの受け渡しを行なう受渡部B側に振り分けて配設されており、各吸引機は、搬送機構によって、それぞれ分離部と受渡部間で繰り返し移動する(一方向のみの移動)。また、第1吸引機10Aと第2吸引機10Bを移動させる搬送機構は、第1吸引機10A及び第2吸引機10Bの一方が分離部Aでシートを分離して受渡部Bに移動しているときに、他方の吸引機を分離部Aに向けて移動するように制御される。さらに、前記第1吸引機10Aと第2吸引機10Bの各支持シャフト12は、シートの分離を行なうように、中心軸の周りで回転駆動される。
【0021】
各吸引機10A,10Bの先端には、最上のシートS1の表面に密着して吸引する吸引パッド10aがそれぞれ設けられている。本実施形態では、図に示す吸引機10Aの位置が、積層シートを分離する分離位置(分離部A)であり、吸引機10Aが後方側に移動して、X方向からZ方向に方向変換する部分が、分離したシートを後処理装置に受け渡す受渡位置(受渡部B)となっている。
【0022】
前記吸引パッド10aは、吸引パッド内の空気を、吸気機構を介して吸引するように構成されている。このため、吸引機10Aの分離位置(初期位置)において、載置部3が上昇駆動されて、最上のシートS1が各吸引パッド10aに当接して吸引作用を受け、更に、吸引パッドが回転作用を受けながら後方側に移動すると、最上のシートS1は、積層状態のシートに対してめくり上げられて分離作用を受ける。
【0023】
本実施形態では、前記第1吸引機10A及び第2吸引機10Bは、無限軌道20に沿って移動可能に設置されている。前記無限軌道20は、載置部3の搬送方向の両端側(X方向の両端側)で、それぞれ180°で湾曲する湾曲部20Aと、載置部3の両端間を直線移動する直線移動部20Bとを備えており、略楕円形状で環状に構成されている。前記無限軌道20の表面には、環状のガイドレール21と、環状のガイドレール21の4つの角部に設けられたプーリ22に巻回されるベルト23とを備えており、これらは、第1吸引機10A、及び、第2吸引機10Bの搬送機構を構成する。
【0024】
本実施形態では、吸引機10A及び第2吸引機10Bによるシート分離動作、及び、各吸引機10A,10Bの搬送動作が安定するように、前記無限軌道20は、載置部3の両サイドに設置されている。また、前記第1吸引機10A及び第2吸引機10Bは、両サイドに設けられている無限軌道20間に横架される支持シャフト12に支持されている。
【0025】
具体的には、前記支持シャフト12の両端側は、前記ベルト23に固定される搬送ボックス25に保持されており、各搬送ボックス25に回転可能に支持された回転体25aがガイドレール21の表面に形成された係合溝21aに係合することで、支持シャフト12は、無限軌道20(環状のガイドレール21)に沿って搬送移動される。
【0026】
また、搬送ボックス25は、前記支持シャフト12を、中心軸に対して回転駆動させるように回転駆動機構を備えている。前記支持シャフト12は、前記搬送機構の駆動制御と共に、中心軸に対して回転駆動が制御される。すなわち、前記吸引機10A,10Bは、支持シャフト12周りの回転駆動が制御され、吸引パッド10aによる吸引動作と共に、支持シャフト12の移動制御によって、最上のシートをめくり上げるように分離する。
【0027】
具体的には、前記第1吸引機10A及び第2吸引機10Bは、前記分離部Aに位置した際、載置部3が上方に駆動されて最上のシートS1を吸引パッド10aに押し付け、吸引パッドの吸引動作でシートS1を吸引する。そして、この状態で支持シャフト12を回転駆動させながら、直線移動部20Bを後方側に移動することで、最上のシートS1は積層状態のシートに対してめくり上げて分離されるようになる。
【0028】
前記吸引機10A,10Bの吸引パッド10aの内部の空気は、吸気機構30を介して吸引するように構成されている。前記吸気機構30は、前記基台2に設置されており、本実施形態では、上記した無限軌道20の中央部に支持されている。前記吸気機構30は、回転可能に支持された円筒状の筐体31を備えている。前記筐体31の表面には、吸引用のノズル32が周方向に沿って吸引機に対応する数(本実施形態では12個)設置されている。
【0029】
上記した各ノズル32は、各吸引機10A,10Bのそれぞれのノズル10dとチューブ(図示せず)で接続されており、吸引機10A,10Bが無限軌道20に沿って移動する際、その移動に同期して、筐体31は回転駆動される。このため、両ノズル間を接続するチューブが絡むことはなく、各吸引機での吸引動作が確実に行えるようになる。また、各吸引機の吸引動作のON/OFFについては、吸引機10A,10Bが搬送されるガイドレール21の所定の位置に設置されたセンサからの駆動信号によって制御される。
【0030】
本実施形態では、前記第1吸引機10A及び第2吸引機10Bは、前記載置部3を挟んで両側(上側と下側)に位置するように構成されている。すなわち、前記第1吸引機10A及び第2吸引機10Bは、搬送方向の両側に振り分けられると共に、上下方向で対向する位置(無限軌道20の対角線位置)に配設されている(
図2,
図3,
図5)。
【0031】
前記受渡部Bは、分離部Aと同一平面上で下流側に位置しており、前記第2吸引機10Bは、第1吸引機10Aが受渡部Bに移動した際、載置部3の前端側に向けて駆動され、分離部Aの下方に位置した状態となっている。すなわち、前記搬送機構は、第1吸引機10Aが載置部3の上方側で前端側から後端側に移動する際、第2吸引機10Bを、載置部3の下方側で後端側から前端側に移動するように制御する。
【0032】
上記した無限軌道20のベルト23の回転駆動、各吸引機10A,10Bの吸引動作、各吸引機を支持する支持シャフト12の回転駆動、載置部3を上下動させる押付駆動装置5の駆動は、制御部によって動作制御される。この制御部は、例えば、基台2に設置される制御ボックス50内に収容されており、制御部に、各所に設置されたセンサからの検知信号が入力された際、上記した各構成素材が駆動制御される。
【0033】
本実施形態の受渡部Bは、上記したように、分離部Aと同一平面上で下流側に位置しており、分離部Aにおいて、めくり上げたシートをそのままの状態で後処理装置に受け渡しできるように構成されている。前記受渡部Bは、
図7の概略図に示すように、前記分離部Aで1枚に分離されてめくり上げられた状態で搬送されるシートS1の先端側を支持する支持板60を備えている。この支持板60には、前記支持シャフト12と共に移動してくる前記複数の吸引パッド10aのそれぞれが位置できるように、複数の凹所61が対応して形成されている。
【0034】
前記支持シャフト12が受渡部Bの所定の位置で停止すると、各吸引パッド10aの吸引が解除されて、シートS1はフリー状態となる。そして、支持板60上にあるシートS1は、搬送ローラ65によって、更に下流側に搬送され、後処理装置に送り込まれる。なお、支持板60及び搬送ローラ65は、シート分離装置1の構成要素であっても良いし、後処理装置の構成要素であっても良い。
【0035】
次に、上記したシート分離装置1によってシートを1枚ずつ分離する分離方法の全体動作を、
図6から
図10を併せて参照しながら説明する。
上記したように、本実施形態のシート分離装置1は、無限軌道20に沿って移動する第1吸引機10A及び第2吸引機10Bを備えている。これらの吸引機10A,10Bは、
図1,2に示すように、無限軌道20の対向位置に振り分け配設されており、初期位置では、第1吸引機10Aが分離部Aに位置している。
【0036】
以下、第1吸引機10Aが初期位置のときに、積層状態のシートSから最上のシートS1の分離を行ない、以後、連続してシートの分離を行なう工程について説明する。
第1吸引機10Aが分離部Aでシートの1枚分離を行なう際、第2吸引機10Bは載置部3の後方側の下方位置で待機状態にある(
図1,
図2)。このとき、吸引機10Aの吸引パッド10aは、
図6(a)に示すように、シートに対向するように下向きとなっている。
【0037】
この状態でシートが積層された載置部3を、前記押付駆動装置5によって上方に移動させ、吸引機10Aの吸引パッド10aに最上のシートS1を押し付けると共に、吸引パッドを吸引して最上のシートS1を吸引する。
【0038】
そして、最上のシートS1を吸引した状態で支持シャフト12を
図6(b)(c)に示すように、略180°回転する。この場合、積層状態にあるシートの2枚目のシートが密着していても、上記したシート分離機構15によって分離作用を受ける。
【0039】
次に、最上のシートS1を吸引したままの状態で、載置部3を下方向に駆動して吸引機10Aによって吸引された最上のシートS1を積層状態のシートSから離間させる。この離間工程では、載置部3の下降と共に、上記した支持シャフト12(吸引機10A)の回転駆動が行われているため、最上のシートS1はX方向前方側に引っ張りながら上方に引き上げられる。したがって、吸引している最上のシートS1は、積層状態のシートSに対して、次第に離間しながら前方に移動し、積層状態のシートに対してめくり上げて分離される(
図8(a))。
【0040】
また、吸引機10Aの回転工程と同期して、積層状態のシートSの表面に沿ってめくり上げた最上のシートS1を、積層状態のシートSから引き剥がすように吸引機10AをX方向の後方側に移動させる(
図8(b);移動工程)。この移動は、上記の搬送機構が、プーリ22を回転駆動することでベルト23が駆動され、ベルト23に固定されている搬送ボックス25を介して行われる。この回転工程、及び、移動工程では、最上のシートS1の先端縁側は、積層状態のシートSに対して上昇しながら反転しつつ後方に移動する。また、2枚目以降のシートは、シート分離機構15によって押さえ付けられているため、連れ上がることはない。
【0041】
このような回転工程、及び、移動工程では、吸引機10Aの回転速度(支持シャフト12の回転速度)よりも、吸引機10Aの後方側への移動速度が大きくなるように吸引機10A及び支持シャフト12を駆動制御することが好ましい。すなわち、シートの巻き上げ量が移動量以上になると、移動による剥離作用が十分に得られなくなり、複数のシートを巻き上げる可能性があるが、移動量を回動量よりも大きくすることで、十分な剥離作用を与えつつ巻き上げることができ、シートの分離効果を高くすることが可能となる。
【0042】
以上の分離方法によれば、最上のシートS1と2枚目のシートの面同士が静電気等によって密着していても、剥離する際の抵抗を線状にすることができ、1枚分離の確度が高くなる。
なお、吸引機10Aの回転角度については特に限定されることはないが、本実施形態では、
図6(a)から(c)に示すように、吸引パッド10aは、略180°回動駆動されるようになっている。これにより、その下流側に設置されている後処理装置に対して、分離されたシートを平面状にして送り込むことが可能となり、装置全体の大型化を抑制することができる。
【0043】
上記したように分離された最上のシートS1は、そのまま吸引機10Aと共に、後方側に向けて受渡部Bに搬送される(
図8(b))。この搬送は、上記したように、プーリ22が回転駆動されることで、プーリに巻回されるベルト23が駆動され、ベルト23に固定されている搬送ボックス25及び支持シャフト12を介してなされる。搬送ボックス25は、無限軌道20のガイドレール21の係合溝21aに係合しているため、吸引機10A,10Bは、支持シャフト12と共に安定して移動する。
【0044】
この吸引機10Aの受渡部Bへの移動に同期して、もう一方の吸引機10Bは、
図1及び
図2に示した位置から、前方側に移動する(
図8(b))。本実施形態では、吸引機10Aが受渡部Bに位置した状態で、もう一方の吸引機10Bは、載置部3の前端側の下方に位置した状態となっている(分離部Aでの分離を待機している状態)。
【0045】
また、吸引機10Bの前方側への移動に際しては、上記した吸引機10Aの吸引動作と同じ動作が得られるように、支持シャフト12は吸引パッド10aが下向きとなるように回転駆動される(
図6(d)の状態から
図6(a)の状態に回転駆動)。
【0046】
前記受渡部Bに位置している吸引機10Aは、分離したシートをそのままの状態で後処理装置に受け渡しする。前記受渡部Bでは、前記分離部Aで分離されたシートS1の先端側が支持板60に支持され、かつ、複数の吸引パッド10aのそれぞれが支持板60の複数の凹所61内に位置した状態で、吸引機10Aの駆動及び吸引動作が停止される。このとき、シートS1は支持板60上でフリー状態となり、そのまま搬送ローラ65の回転駆動によって、更に下流側に搬送され、後処理装置に送り込まれる。
【0047】
また、シートS1が後処理装置に送り込まれる動作に同期して、吸引機10Aは移動制御され、
図1,2で示すような初期位置となる。すなわち、吸引機10Bは、上記した分離部Aにおいて、同様な分離動作を行なうように位置付けされる。
このように、吸引機10A及び吸引機10Bによって、シートの分離、及び、後処理装置への受け渡し処理を連続的に行うことができる。
【0048】
上記した構成によれば、積層状態にあるシートから、シートを1枚ずつ確実に分離することが可能となる。また、従来のように、1つの吸引機を、前後に往復駆動してシート分離を行なうのではなく、吸引機を複数設置して、同一方向の回転動作で、連続的にシートの分離処理を行なうため、高速処理することが可能となる。
【0049】
以上、本発明に係るシート分離装置、及び、その分離方法の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、シートの1枚分離を行なう吸引機を複数設置して、連続処理できるような配置形態にしたことに特徴があり、その他の構成要素については特に限定されることはない。例えば、吸引機10A、10BのX方向の移動量、吸引パッド10aの回転半径については任意に設定される。この場合、X方向の移動量を短くすることで、更に高速処理が可能となり、吸引パッド10aの回転半径を小さくすることで、剥離する面積を小さくして、1枚分離の確実性を高め、高速分離処理を行なうことができる。
【0050】
前記分離部におけるシートの分離については、吸引機10A,10Bを回転させずにX方向に移動させるだけでも、最上のシートに剥離作用を与えることが可能であるが、剥離を確実に実行するために、吸引機(吸引パッド)を回転することが好ましい。また、吸引機10を初期位置に戻す処理は、前記受渡部Bで受け渡し処理が終わった後、任意のタイミングで回転駆動すれば良い。
【0051】
また、前記載置部3は上下駆動されることなく、各吸引機10A,10Bを上下駆動しても良いし、載置部3及び各吸引機10A,10Bの両者を上下駆動しても良い。すなわち、吸引機10と載置部3は、シートの積層方向に相対的に駆動可能となっていれば良い。また、吸引機10A,10Bの設置個数は、分離対象となるシートの大きさや材質等に応じて適宜、変更することができる。また、シート(支持シャフト)を搬送する搬送機構や支持シャフトを回転駆動する構成についても適宜変形することが可能である。また、受渡部Bの配設位置については、システムに応じて適宜、変形することが可能である。
【0052】
さらに、本発明に係るシート分離装置は、プラスチック製のフィルムシート、紙類や金属製のフィルムシート等、各種の積層されるシートを分離する装置として適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 シート分離装置
2 基台
3 載置部
10A,10B 吸引機
10a 吸引パッド
12 支持シャフト
20 無限軌道
20A 湾曲部20A
20B 直線移動部20B
21 ガイドレール21
22 プーリ
23 ベルト23
A 分離部
B 受渡部
【要約】
積層状態にあるシートから、シートを1枚ずつ確実かつ高速に分離することが可能なシート分離装置を提供する。
シート分離装置1は、載置部に積層された積層状態のシートの最上のシートを吸引して持ち上げ、吸引した最上のシートを、積層状態のシートに対してめくり上げて分離する第1吸引機10A及び第2吸引機10Bと、積層状態のシートを分離する分離部Aと、分離されたシートを搬送して後処理装置に受け渡す受渡部Bとを有する。記第1吸引機10Aと第2吸引機10Bは、分離部側と受渡部側に振り分けて配設されると共に、搬送機構によって、分離部と受渡部間で繰り返し移動する。また、搬送機構は、第1吸引機10A及び第2吸引機10Bの一方が分離部でシートを分離して受渡部に移動しているときに、他方の吸引機を分離部Aに向けて移動するように制御する。