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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240809BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240809BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
C08L71/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018141902
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020015884
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】鷲頭 健介
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】細井 龍史
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125000(JP,A)
【文献】特開2006-213864(JP,A)
【文献】特開2000-239445(JP,A)
【文献】特開2003-128839(JP,A)
【文献】特開2007-270158(JP,A)
【文献】特開2005-171095(JP,A)
【文献】特開平11-286575(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第779330(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するジエン系ゴムと、
炭素-炭素2重結合とヘテロ原子を有するポリマーとを含み、
前記炭素-炭素2重結合が前記ジエン系ゴムと架橋可能なものであり、
前記ポリマーが、水10mLに対し、1gを懸濁した場合の不溶分が5質量%以上であり、かつ、テトラヒドロフラン10mLに対し、1gを懸濁した場合の不溶分が5質量%以上であり、
水によって可逆的に体積が変化し、下記式(1)及び(2)を満たすゴム組成物。
水湿潤時の体積/乾燥時の体積>1.00 (1)
(式中、体積は、ゴム組成物の25℃における体積である。)
乾燥時の70℃のtanδ<0.14 (2)
(式中、70℃のtanδは、70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で測定した損失正接である。)
【請求項2】
前記式(1)において、水湿潤時の体積/乾燥時の体積が1.03以上である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記式(1)において、水湿潤時の体積/乾燥時の体積が1.06以上である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、水湿潤時の体積/乾燥時の体積が1.10以上である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記式(2)において、乾燥時の70℃のtanδが0.13以下である請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記式(2)において、乾燥時の70℃のtanδが0.12以下である請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記式(2)において、乾燥時の70℃のtanδが0.11以下である請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ヘテロ原子が、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子である請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
ゴム成分100質量部に対して、前記ポリマーを5質量部以上含む請求項のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が95質量%以下である請求項1~のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
トレッド用ゴム組成物である請求項1~10のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のゴム組成物で少なくとも一部が構成されたタイヤ部材を有するタイヤ。
【請求項13】
前記タイヤ部材が、新品時又は走行時に最表面に位置する部材である請求項12記載のタイヤ。
【請求項14】
前記タイヤ部材がトレッドである請求項12記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車共通の課題として、安全性に対する意識がますます高まっており、ウェットグリップ性能の更なる改善が要求されている。これまで、ウェットグリップ性能改善のために様々な研究がなされており、シリカを配合したゴム組成物の発明が多々報告されている(例えば、特許文献1)。ウェットグリップ性能は、特に路面に接するトレッド部分のゴム組成物の性能に大きく左右されるため、トレッドなどのタイヤ用ゴム組成物の技術的改良が広く検討され、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-285524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が鋭意検討した結果、シリカを用いたトレッド用ゴム組成物の技術的改良により、タイヤのウェットグリップ性能は大幅な進歩を遂げているが、ドライ路面からウェット路面、またはウェット路面からドライ路面への路面変化などが起こった場合のグリップ性能の変化については、重要な技術課題として残っており、改善の余地があることが判明した。
この点について、本発明者が鋭意検討した結果、従来のゴムは、水に濡れていないドライ状態から水に濡れた所謂ウェット状態に変化した場合において体積は変化しない性質があるため、ウェット路面での充分な排水性能が得られず、その結果、ウェットグリップ性能はドライグリップ性能に対して低下する傾向があることが判明した。
また、本発明者が鋭意検討した結果、ウェットグリップ性能を向上させる方法として、オイルなどの軟化剤を配合してゴムを柔らかくする方法も存在するが、ゴムを柔らかくすると、低燃費性が悪化するという欠点があることも判明した。
このように、従来の技術では、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、低燃費性の総合性能を改善するという点では改善の余地があることが判明した。
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、低燃費性の総合性能を改善できるゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水によって可逆的に体積が変化し、下記式(1)及び(2)を満たすゴム組成物に関する。
水湿潤時の体積/乾燥時の体積>1.00 (1)
(式中、体積は、ゴム組成物の25℃における体積である。)
乾燥時の70℃のtanδ<0.14 (2)
(式中、70℃のtanδは、70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で測定した損失正接である。)
【0006】
上記式(1)において、水湿潤時の体積/乾燥時の体積が1.03以上であることが好ましく、1.06以上であることがより好ましく、1.10以上であることが更に好ましい。
【0007】
上記式(2)において、乾燥時の70℃のtanδが0.13以下であることが好ましく、0.12以下であることがより好ましく、0.11以下であることが更に好ましい。
【0008】
上記ゴム組成物は、ジエン系ゴムと、炭素-炭素2重結合とヘテロ原子を有するポリマーとを含むことが好ましい。
【0009】
上記ヘテロ原子が、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子であることが好ましい。
【0010】
上記ポリマーが、水10mLに対し、1gを懸濁した場合の不溶分が5質量%以上であることが好ましい。
【0011】
上記ポリマーが、テトラヒドロフラン10mLに対し、1gを懸濁した場合の不溶分が5質量%以上であることが好ましい。
【0012】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、上記ポリマーを5質量部以上含むことが好ましい。
【0013】
前記ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを含むことが好ましい。
【0014】
前記ゴム組成物は、ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0015】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が95質量%以下であることが好ましい。
【0016】
前記ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物であることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上記ゴム組成物で少なくとも一部が構成されたタイヤ部材を有するタイヤに関する。
【0018】
上記タイヤ部材が、新品時又は走行時に最表面に位置する部材であることが好ましい。
【0019】
上記タイヤ部材がトレッドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水によって可逆的に体積が変化し、上記式(1)及び(2)を満たすゴム組成物であるので、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、低燃費性の総合性能を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のゴム組成物は、水によって可逆的に体積が変化し、下記式(1)及び(2)を満たす。これにより、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、低燃費性の総合性能を改善できる。
水湿潤時の体積/乾燥時の体積>1.00 (1)
(式中、体積は、ゴム組成物の25℃における体積である。)
乾燥時の70℃のtanδ<0.14 (2)
(式中、70℃のtanδは、70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で測定した損失正接である。)
【0022】
上記ゴム組成物は前述の効果が得られるが、このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
ドライ路面においては、路面とタイヤ表面との接触面積を大きくするという観点で、タイヤの溝は浅い方が望ましく、一方、ウェット路面においては、路面とタイヤ表面に介在する水を排出するという観点で、タイヤの溝は深い方が望ましい。
そして、従来のタイヤに使用されるゴムの体積は、水の存在の有無による変化がないため、タイヤの溝は路面の状態に関わらず一定であり、このことがタイヤにおけるウェットグリップ性能、ドライグリップ性能の両立を難しくしていることが本発明者の検討の結果、明らかとなった。
一方、本発明のゴム組成物は、水によって可逆的に体積が変化し、上記式(1)を満たす。ここで、上記式(1)は、乾燥時の体積に比べて、水湿潤時の体積が大きいことを意味する。すなわち、本発明のゴム組成物は、水によって可逆的に体積が変化し、上記式(1)を満たすものであるが、これは、乾燥時の体積に比べて、水湿潤時の体積が大きく、かつ、体積が水の存在によって可逆的に変化することを意味する。
従って、ドライ路面からウェット路面へ変化すると、ゴム組成物が水によって湿潤されてゴム組成物の体積が増加し、タイヤの溝が深くなり、良好なグリップ性能(ウェットグリップ性能)が得られる。
一方、ウェット路面からドライ路面へ変化すると、水によって湿潤されたゴム組成物が乾燥されてゴム組成物の体積が減少し、タイヤの溝が浅くなり、良好なグリップ性能(ドライグリップ性能)が得られる。
このように、水によって可逆的に体積が変化し、かつ、上記式(1)を満たすことにより、路面の水の状態(ウェット路面、ドライ路面)に応じた適切な溝深さが得られ、ドライ路面での接触面積と、ウェット路面での排水性能が両立できるため、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能の総合性能を改善できる。
更に、本発明のゴム組成物は、上記式(2)を満たすことにより、低燃費性も改善できる。
従って、本発明のゴム組成物は、水によって可逆的に体積が変化し、上記式(1)及び(2)を満たすことにより、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、低燃費性の総合性能を改善できる。
なお、本明細書において、ゴム組成物の体積、tanδは、加硫後のゴム組成物の体積、tanδを意味する。また、tanδは、加硫後のゴム組成物に対し、粘弾性試験を実施することで得られる値である。
【0023】
本明細書において、水によって可逆的に体積が変化とは、水の存在によって、ゴム組成物(加硫後)の体積が可逆的に大きくなったり、小さくなったりすることを意味する。なお、例えば、乾燥時→水湿潤時→乾燥時と変化した場合に、体積が可逆的に変化すればよく、先の乾燥時と、後の乾燥時において、同一の体積を有さなくてもよいし、先の乾燥時と、後の乾燥時において、同一の体積を有していてもよい。
【0024】
本明細書において、乾燥時の体積とは、乾燥している状態のゴム組成物(加硫後)の体積を意味し、具体的には、実施例に記載の方法により乾燥したゴム組成物(加硫後)の体積を意味する。
本明細書において、水湿潤時の体積とは、水によって湿潤している状態のゴム組成物(加硫後)の体積を意味し、具体的には、実施例に記載の方法により、水によって湿潤したゴム組成物(加硫後)の体積を意味する。
【0025】
本明細書において、ゴム組成物(加硫後)の体積は、実施例に記載の方法により算出される体積を意味する。
【0026】
本明細書において、乾燥時の70℃のtanδとは、乾燥している状態のゴム組成物(加硫後)の70℃のtanδを意味し、具体的には、実施例に記載の方法により乾燥したゴム組成物(加硫後)の70℃のtanδを意味する。
【0027】
本明細書において、ゴム組成物(加硫後)の70℃のtanδは、70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で測定した損失正接である。
【0028】
上記式(1)の通り、(水湿潤時の体積/乾燥時の体積(水湿潤時のゴム組成物(加硫後)の体積/乾燥時のゴム組成物(加硫後)の体積))は1.00を超え、好ましくは1.03以上、より好ましくは1.06以上、更に好ましくは1.10以上、特に好ましくは1.16以上、最も好ましくは1.23以上、より最も好ましくは1.30以上、更に最も好ましくは1.36以上、特に最も好ましくは1.40以上、更には好ましくは1.46以上、更には好ましくは1.53以上、更には好ましくは1.70以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは3.00以下、より好ましくは2.80以下、更に好ましくは2.60以下、特に好ましくは2.40以下、最も好ましくは2.20以下、より最も好ましくは2.00以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0029】
上記式(2)の通り、乾燥時の70℃のtanδ(乾燥時のゴム組成物(加硫後)の70℃のtanδ)は0.14未満であり、好ましくは0.13以下、より好ましくは0.12以下、更に好ましくは0.11以下であり、下限は特に限定されないが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0030】
なお、ゴム組成物の上記式(1)で表される体積変化、水による可逆的な体積変化は、水に対して、水素結合、イオン結合などの可逆的な分子結合が可能な化合物を配合することにより達成できる。より具体的に説明すると、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、炭素-炭素2重結合とヘテロ原子を有するポリマーとを併用することにより、ゴム組成物の上記式(1)で表される体積変化、水による可逆的な体積変化を実現できる。これは、ヘテロ原子は、ゴム組成物中で、水に対して、水素結合、イオン結合などの可逆的な分子結合が可能であり、この分子結合が形成された結果、水湿潤時のゴム組成物の体積が増加するためである。
更には、上記併用により、加硫の際に炭素-炭素2重結合によりポリマーがゴム成分に架橋されてゴム成分に固定されるため、ゴム成分からの上記ポリマーの遊離を抑制でき、ゴム表面に上記ポリマーが析出することを抑制でき、グリップ性能(ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能)の低下も抑制できる。
【0031】
また、乾燥時の70℃のtanδは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、軟化剤、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、ゴム成分と相溶性の高い軟化剤を使用したり、変性ゴムを使用したり、充填材としてシリカを使用したり、可塑剤としてのオイルを減らしたり、硫黄を増やしたり、加硫促進剤を増やしたり、シランカップリング剤を増やしたりすると70℃のtanδは小さくなる傾向がある。
【0032】
より具体的に説明すると、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、炭素-炭素2重結合とヘテロ原子を有するポリマーとを併用することにより、ゴム組成物の上記式(1)で表される体積変化、水による可逆的な体積変化を実現できると共に、乾燥時の70℃のtanδも所望の範囲内に調整することが可能となる。
【0033】
ゴム組成物の上記式(1)で表される体積変化、水による可逆的な体積変化を達成する他の手段としては、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、炭素-炭素2重結合とヘテロ原子を有するポリマーとを併用することにより、加硫の際に炭素-炭素2重結合によりポリマーがゴム成分に架橋されてゴム成分に固定されるため、ゴム成分からの上記ポリマーの遊離を抑制でき、ゴム組成物の上記式(1)で表される体積変化、水による可逆的な体積変化を達成することができる。
炭素-炭素2重結合を持たない場合、ゴム組成物が水に触れた際に水中へ遊離してしまい、可逆的な体積変化が得られない場合がある。
【0034】
乾燥時の70℃のtanδを上記範囲内とする他の手段としては、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、炭素-炭素2重結合とヘテロ原子を有するポリマーとを併用することにより、加硫の際に炭素-炭素2重結合によりポリマーがゴム成分に架橋されてゴム成分に固定されるため、ゴム成分からの上記ポリマーの遊離を抑制でき、70℃のtanδを小さくできる。
【0035】
以下、使用可能な薬品について説明する。
【0036】
ゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジエン系ゴムが好ましく、イソプレン系ゴム、BR、SBRがより好ましく、SBRが更に好ましい。イソプレン系ゴム、SBRの併用、BR、SBRの併用、イソプレン系ゴム、BR、SBRの併用も好ましい。
【0037】
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
【0038】
ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0039】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
SBRのスチレン量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0041】
SBRのビニル量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。上記範囲内であると、BRとの相溶性が良好となり、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0042】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0044】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0045】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
BRのシス量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0048】
BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよい。変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。好ましい態様は変性SBRの場合と同様である。
【0049】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0050】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0051】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0052】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0053】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
また、シス量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)、ビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定でき、スチレン量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0054】
上記ゴム組成物は、炭素-炭素2重結合とヘテロ原子を有するポリマー(重合体)を含むことが好ましい。
【0055】
炭素-炭素2重結合は、ジエン系ゴムと架橋されるために必要であり、その数は特に限定されない。
【0056】
ヘテロ原子は、炭素原子、水素原子以外の原子を意味し、水に対して、水素結合、イオン結合などの可逆的な分子結合が可能な限り特に限定されないが、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子であることが好ましく、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。なお、ヘテロ原子は、上記ポリマーの主鎖(骨格)中に存在することが好ましく、上記ポリマーの繰り返し単位中に存在することがより好ましい。
【0057】
酸素原子を含む構造、基としては、エーテル基、エステル、カルボキシ基、カルボニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。なかでも、エーテル基が好ましく、オキシアルキレン基がより好ましい。
窒素原子を含む構造、基としては、アミノ基(第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基)、アミド基、ニトリル基、ニトロ基等が挙げられる。なかでも、アミノ基が好ましく、第三級アミノ基がより好ましい。
ケイ素原子を含む構造、基としては、シリル基、アルコキシシリル基、シラノール基等が挙げられる。なかでも、シリル基が好ましく、アルコキシシリル基がより好ましい。
硫黄原子を含む構造、基としては、スルフィド基、硫酸基、硫酸エステル、スルホ基等が挙げられる。
リン原子を含む構造、基としては、リン酸基、リン酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン原子を含む構造、基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲノ基等が挙げられる。
【0058】
オキシアルキレン基とは、-(AO)-で表される基であり、-(AO)-で表される基(nは繰り返し単位数)であることが好ましい。
オキシアルキレン基AO中のアルキレン基Aの炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0059】
オキシアルキレン基AO中のアルキレン基Aは、直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、より嵩高い構造となり、効果がより好適に得られるという理由から、分岐状が好ましい。
効果がより好適に得られるという理由から、AOは、炭素数2~3のオキシアルキレン基(オキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO))、炭素数2~3のオキシアルキレン基に分岐鎖R(Rは、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表す。)が結合した基であることが好ましく、炭素数2~3のオキシアルキレン基、炭素数2~3のオキシアルキレン基に分岐鎖Rが結合した基を併用することがより好ましい。なお、分岐鎖Rは、酸素原子に隣接する炭素原子に結合していることが好ましい。
【0060】
のヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は、特に限定されない。炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
のヘテロ原子を有してもよい炭化水素基としては、下記式で表される基が好ましい。
【化1】
【0061】
-(AO)-で表される基は、下記式(B)で表される基であることが更に好ましく、下記式(A)~(B)で表される基であることが特に好ましく、下記式(C)で表される基を併用することもできる。
【化2】
【0062】
上記ポリマーが2種以上のオキシアルキレン基を含む場合、オキシアルキレン基の配列はブロックでもランダムでもよい。
【0063】
上記ポリマーとしては、上記式(B)で表される基(構造単位)を含む重合体が好ましく、上記式(A)~(B)で表される基(構造単位)からなる重合体がより好ましい。
上記ポリマー100mol%中の上記式(B)で表される基(構造単位)の含有量は、好ましくは2mol%以上、より好ましくは5mol%以上であり、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、更に好ましくは30mol%以下、特に好ましくは20mol%以下である。
【0064】
上記ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上、より好ましくは5万以上、更に好ましくは10万以上、特に好ましくは50万以上であり、好ましくは300万以下、より好ましくは250万以下、更に好ましくは200万以下、特に好ましくは150万以下、最も好ましくは100万以下である。
【0065】
上記ポリマーは、水10mLに対し、1gを懸濁した場合の不溶分(水不溶分)が5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上、より最も好ましくは80質量%以上、更に最も好ましくは90質量%以上であり、上限は特に限定されない。
上記不溶分は、実施例に記載の方法により測定できる。
上記不溶分が多いほど、ゴムを水に湿潤した場合に、上記ポリマーが水に溶出する量を低減でき、可逆的な体積変化をより好適に達成できる。
【0066】
上記ポリマーは、テトラヒドロフラン10mLに対し、1gを懸濁した場合の不溶分(THF不溶分)が5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上、より最も好ましくは90質量%以上であり、上限は特に限定されない。
上記不溶分は、実施例に記載の方法により測定できる。
ジエン系ゴムはテトラヒドロフランに対し、溶解性を有するため、上記ポリマーのテトラヒドロフランに対する不溶分が多いほど、ジエン系ゴムに相容せずに水湿潤時の体積増加効果を十分に得られる傾向がある。
【0067】
上記ポリマーは、市販品を用いてもよいが、ヘテロ原子を有するモノマーから重合物を調製することにより製造してもよい。
ヘテロ原子を有するモノマーとしては、特に限定されるわけではないが、酸素原子を有するモノマーの例としては、ビニルエーテル、アルコキシスチレン、アリルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどのエーテル類、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステル類、酸無水物、窒素原子を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、N-ビニルカルバゾール、カルバミン酸、カプロラクタム、ケイ素原子を有するモノマーとしては、アルコキシシリルスチレン、アルコキシシリルビニル類などが挙げられる。
ヘテロ原子を有するモノマーに不飽和結合が含まれていない場合は、ヘテロ原子を有するモノマーと共に、炭素-炭素2重結合を有するモノマー(例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンモノマー、スチレンなどのビニルポリマー)を重合すればよい。
重合方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0068】
上記ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上、最も好ましくは40質量部以上、より最も好ましくは50質量部以上、更に最も好ましくは60質量部以上、特に最も好ましくは70質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0069】
上記ゴム組成物は、シリカを含んでもよい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上、好ましくは60m/g以上、より好ましくは80m/g以上、更に好ましくは160m/g以上である。また、上記NSAは、好ましくは600m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下、特に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0071】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0072】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは60質量部以下、最も好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0073】
上記ゴム組成物において、充填剤(補強性充填剤)100質量%中のシリカの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0074】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのジスルフィド結合を有するジスルフィド系シランカップリング剤がより好ましい。
【0075】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0076】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含んでもよい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上であり、また、好ましくは150m/g以下、より好ましくは130m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0078】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0079】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは60質量部以下、最も好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0080】
上記ゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果が良好に得られるという理由から、プロセスオイルが好ましく、アロマ系プロセスオイルがより好ましい。
【0081】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0082】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0083】
上記ゴム組成物は、樹脂を含有していてもよい。
樹脂としては、タイヤ工業で汎用されているものであれば特に限定されず、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、α-メチルスチレン系樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、C5樹脂、C9樹脂等が挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0085】
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0086】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0087】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0088】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
【0089】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0090】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0091】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0092】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0093】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0094】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0095】
上記ゴム組成物は硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0097】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0098】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0099】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)製等の製品を使用できる。
【0100】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0101】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0102】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0103】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0104】
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、ショルダー、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、水と接触し得る部材(トレッド、サイドウォール、ショルダー)に好適に用いられ、トレッドにより好適に用いられる。キャップトレッド及びベーストレッドで構成されるトレッドの場合、キャップトレッドに好適に使用可能である。
水と接触し得る部材としては、新品時又はタイヤの摩耗が進行する走行時にタイヤの最表面に位置する部材(トレッド、サイドウォール、ショルダー)が挙げられる。
【0105】
本発明のタイヤ(空気入りタイヤ等)は、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0106】
なお、上記タイヤのタイヤ部材(例えば、トレッド)は、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0107】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例
【0108】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0109】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、ヘキサン、1,3-ブタジエン、スチレン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルを投入した。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン及びn-ブチルリチウムを、それぞれ、シクロヘキサン溶液及びn-ヘキサン溶液として投入し、重合を開始した。
撹拌速度を130rpm、反応器内温度を65℃とし、単量体を反応器内に連続的に供給しながら、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合を3時間行った。次に、得られた重合体溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドを添加し、15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性スチレンブタジエンゴム(SBR)を得た。
【0110】
(製造例2)重合体1(エポキシド・アリルグリシジルエーテル共重合体)の合成
窒素置換したガラス製フラスコにジエチルエーテルを500mL添加し、内部温度を0℃以下に冷却した後、0.55mol/Lのトリイソブチルアルミニウム/ヘキサン溶液を10mL添加し、次いで0.55mol/Lのエタノール/ジエチルエーテル溶液を内部温度が10℃を超えないよう滴下した。次いで、エチレンオキサイドおよびアリルグリシジルエーテルをモル比で9/1、合計重量200gになるように混合した溶液を、内部温度が10℃を超えないように滴下した後、8時間撹拌させた。次いで、外部温度50℃/内部圧力1.0kPa以下で溶媒を減圧留去した後、残った残渣を水に懸濁させたものを濾過して、濾過残渣をTHFで洗浄した後、50℃/1kPa以下で恒量に達するまで減圧乾燥し、80%の収率で重合体1(赤外吸収スペクトルにて上記式(A)に由来するエーテル基および上記式(B)に由来する炭素-炭素のピークが確認された。重量平均分子量(Mw)は78万、ポリマー100mol%中の上記式(B)で表される基(構造単位)の含有量は8mol%であった)を得た。
【0111】
(製造例3)重合体2(アミン・アリルグリシジルエーテル共重合体)の合成
エチレンオキサイドをトリグリシジルアミンに変更した点以外は、製造例2と同様に操作して、80%の収率でトリグリシジルアミンとアリルグリシジルエーテルの重合体2(製造例2と同様の分析を行いアミンの吸収と炭素-炭素2重結合由来のピークを確認し、重量平均分子量は98万、ポリマー100mol%中の上記式(B)で表される基(構造単位)の含有量は8mol%であった)を得た。
【0112】
(製造例4)重合体3(シリル・アリルグリシジルエーテル共重合体)の合成
エチレンオキサイドをトリエトキシシリルグリシジルエーテルに変更した点以外は、製造例2と同様に操作して、80%の収率でトリエトキシシリルグリシジルエーテルとアリルグリシジルエーテルの重合体3(製造例2と同様の分析を行いシラノールの吸収と炭素-炭素2重結合由来のピークを確認し、重量平均分子量は64万、ポリマー100mol%中の上記式(B)で表される基(構造単位)の含有量は8mol%であった)を得た。
【0113】
また、得られた重合体1~3について下記の評価を行った。
【0114】
<水不溶分の測定>
ガラス製フラスコにポリマーを1g計量し、水10mLを注ぎ、内部温度66℃で10分撹拌した後、内部温度25℃以下になるまで撹拌を続けた後、材質セルロース、メッシュサイズ5Cのろ紙により濾過し、濾紙に残った残渣を温度80℃、内圧0.1kPa以下で8時間乾燥し、重量を測定し、下記式により水不溶分を算出した。
水不溶分(質量%)=残渣の乾燥重量(g)/ポリマーの初期重量(g)x100
【0115】
<THF不溶分の測定>
ガラス製フラスコにポリマーを1g計量し、テトラヒドロフラン10mLを注ぎ、内部温度66℃で10分撹拌した後、内部温度25℃以下になるまで撹拌を続けた後、材質セルロース、メッシュサイズ5Cのろ紙により濾過し、濾紙に残った残渣を温度80℃、内圧0.1kPa以下で8時間乾燥し、重量を測定し、下記式によりTHF不溶分を算出した。
THF不溶分(質量%)=残渣の乾燥重量(g)/ポリマーの初期重量(g)x100
【0116】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:上記方法で合成したSBR(変性S-SBR、スチレン量:25質量%、ビニル量:59モル%、非油展品)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス量:97質量%)
NR:TSR20
重合体1:上記方法で合成した重合体1(水不溶分:96質量%、THF不溶分:96質量%)
重合体2:上記方法で合成した重合体2(水不溶分:82質量%、THF不溶分:96質量%)
重合体3:上記方法で合成した重合体3(水不溶分:92質量%、THF不溶分:92質量%)
シリカ:ローデシア社製のZEOSIL 1165MP(NSA:160m/g)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシースト9H(DBP吸油量115ml/100g、NSA:110m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX-140(アロマ系プロセスオイル)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:フレキシス(株)製のサントフレックス13(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD))
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
【0117】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0118】
得られた加硫ゴム組成物を下記により評価した。結果を表1に示す。
【0119】
(体積の測定法)
室温25℃で管理された場所で、計量誤差±0.2%の1000mLメスシリンダーに300mLの水を正確に計量し、測定サンプルを入れ、水の体積増量分を体積とした。
また、下記の計算方法によって、体積変化率を算出した。
体積変化率=(水湿潤時の体積)/(乾燥時の体積)
【0120】
(水湿潤時の体積)
加硫ゴム組成物(半径25mm、高さ51mmの円柱状)を500mlの水に25℃で12時間浸漬させることにより、水湿潤後の加硫ゴム組成物を得た。得られた水湿潤後の加硫ゴム組成物の体積を上記の方法で測定し、水湿潤時の体積とした。そして、加硫ゴム組成物の体積(加硫ゴムの体積)を100として指数表示した。
【0121】
(乾燥時の体積)
水湿潤後の加硫ゴム組成物を80℃、1kPa以下の条件で恒量になるまで減圧乾燥し、乾燥後の加硫ゴム組成物を得た。得られた乾燥後の加硫ゴム組成物の温度を25℃に戻した後、乾燥後の加硫ゴム組成物の体積を上記の方法で測定し、乾燥時の体積とした。そして、加硫ゴムの体積を100として指数表示した。
【0122】
(再水湿潤時の体積)
乾燥後の加硫ゴム組成物(半径25mm、高さ51mmの円柱状)を500mlの水に25℃で12時間浸漬させることにより、再水湿潤後の加硫ゴム組成物を得た。得られた再水湿潤後の加硫ゴム組成物の体積を上記の方法で測定し、再水湿潤時の体積とした。そして、加硫ゴムの体積を100として指数表示した。
【0123】
(乾燥時のtanδ)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、乾燥後の加硫ゴム組成物の70℃のtanδを測定した。測定条件は以下のとおりである。
測定温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hz
【0124】
(低燃費性指数)
得られた未加硫ゴム組成物シートをトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と張り合わせ170℃/12分でプレス加硫することで、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を作成した。転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100としたときの指数で表示した(低燃費性指数)。指数が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。
【0125】
(ウェットグリップ性能指数)
得られた未加硫ゴム組成物シートをトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と張り合わせ170℃/12分でプレス加硫することで、カート用タイヤ(タイヤサイズ:11 x 1.10―5)を作成した。該カート用タイヤをカートに装着し、予め散水した路面の1周2kmのテストコースを8周走行して、グリップ性能を比較例1を100として、200点満点でテストドライバーが評価した。
【0126】
(ドライグリップ性能指数)
得られた未加硫ゴム組成物シートをトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と張り合わせ170℃/12分でプレス加硫することで、カート用タイヤ(タイヤサイズ:11 x 1.10―5)を作成した。該カート用タイヤをカートに装着し、乾燥路面の1周2kmのテストコースを8周走行して、グリップ性能を比較例1を100として、200点満点でテストドライバーが評価した。
【0127】
【表1】
【0128】
表1より、水によって可逆的に体積が変化し、上記式(1)及び(2)を満たす実施例は、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、低燃費性の総合性能を改善できることが分かった。