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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】油脂感増強方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20240809BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20240809BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L27/10 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019207972
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021078395
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】北村 進吾
(72)【発明者】
【氏名】岸江 奈緒子
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0171317(US,A1)
【文献】特開2019-083826(JP,A)
【文献】特開2002-253143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂及びカルシウム塩を含有する固形油脂代替組成物であって、前記カルシウム塩を、熱凝固性β-1,3-グルカン1質量部に対し、0.01~1質量部含有することを特徴とする前記組成物。
【請求項2】
さらにセルロースを含有することを特徴とする請求項1に記載の固形油脂代替組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の固形油脂代替組成物を食品に含有させることを特徴とする食品の油脂感を増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱凝固性β-1,3-グルカン及びカルシウム塩を含有する固形油脂代替組成物、並びに該固形油脂代替組成物による食品の油脂感増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者による食品中の脂肪低減の要求の高まりに対して多くの食品の開発がなされてきたが、食品中の脂肪や、脂肪を構成する固形油脂を低減することにより生じる「風味面での不足」や、食感や口溶け感の不足といった「物性面での不足」について指摘されるようになってきている。
【0003】
食肉加工品に油脂含有カードランゲルを含有させる方法(特許文献1参照)や、β-1,3-グルカン、油脂及びゼラチンを含有する固形油脂用組成物(特許文献2参照)が提案され、また、熱凝固性β-1,3-グルカンのアルカリ水溶液で油脂を乳化した乳化液に、酸性物質を添加して撹拌混合して油脂を含む微粒状乳化ゲルの製造方法(特許文献3参照)が提案されているが、これらは食感や口溶け感の不足といった「物性面での不足」を補完するための手段であるといえる。
【0004】
一方、δ-ラクトン類を有効成分として含む油脂感増強剤(特許文献4参照)、(E)-6-オクテナールを有効成分とする、低脂肪食品の風味改善剤(特許文献5参照)、β-カリオフィレンを有効成分とする、味質向上剤(味質向上に油脂感増強が含まれる。)(特許文献6参照)が提案されているが、これらは油脂の風味を増強して「風味面での不足」を補完するための手段であるといえる。
【0005】
脂肪低減により生じる「風味面での不足」と「物性面での不足」のいずれもが補完されることが望ましく、上記の方法を組み合わせるのがよいと思われる。しかし、食品中の脂肪の存在形態の違いにより「不足」の形態は異なるため、選択可能な多様な手段を開発することは意義あることである。
【0006】
また、微細セルロース、水不溶性カルシウム素材、水溶性ガム類及び/又は親水性物質を含有する水性懸濁状組成物が、油脂代替等の低カロリー化基剤として食品組成物に使用することも知られている(特許文献7参照)が、ここでの水不溶性カルシウム素材は、栄養分としてカルシウムを強化する目的で配合されている。また、水溶性ガム類として例示されているカードランは水不溶性カルシウム素材が沈降を起こさず安定な分散状態を保つために配合されている。
【0007】
さらに、平均粒径が250ミクロン以下であり、かつ、表面の疎水度がJIS K6223の吸油量測定法による吸油量として35g以下である微細粒子を含有する食用油脂代替物が知られており、微細粒子として、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸第一カルシウム等のカルシウム塩が例示されている(特許文献8参照)。しかし、当該技術は、カルシウムに油脂を吸着させて油脂代替物としており、油脂低減効果は期待できても、油脂感の向上を想起させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平4-210580号公報
【文献】特開2012-147691号公報
【文献】特開2002-253143号公報
【文献】特開2011-83264号公報
【文献】特開2018-22号公報
【文献】特開2019-50774号公報
【文献】特開平10-237220号公報
【文献】特開2001-218550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、固形油脂(脂肪)を含有する食品において、かかる固形油脂の全部若しくは一部を代替するために用いられる固形油脂代替組成物であって、特に油脂感を増強できる組成物を提供すること、また、固形油脂(脂肪)を含有する食品を模した代替食品における油脂感の増強方法を提供することにある。
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来の熱凝固性β-1,3-グルカン及び油脂を含む組成物に、さらにカルシウム塩を含有させた固形油脂代替組成物が、一層油脂感を増強できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す事項で特定されるとおりのものである。
(1)熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂及びカルシウム塩を含有することを特徴とする固形油脂代替組成物。
(2)さらにセルロースを含有することを特徴とする上記(1)に記載の固形油脂代替組成物。
(3)上記(1)又は(2)に記載の固形油脂代替組成物を食品に含有させることを特徴とする食品の油脂感を増強する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固形油脂代替組成物を用いることにより、主に食肉・魚肉の油脂を含有した部位を加熱及び/又は成形加工した食品を摂食の際、当該食品からにじみ出る油脂の感覚である油脂感を向上させることができ、その結果食品における脂肪低減に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の固形油脂代替組成物は、熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂及びカルシウム塩を含有する組成物であり、上記熱凝固性β-1,3-グルカンとしては、D-グルコースを構成糖とし、β-1,3-グルコシド結合を主体とし、熱凝固性を有する多糖類であれば特に制限されず、例えば、カードラン、パラミロン、パキマン等を挙げることができるが、なかでもカードランを好適に例示することができる。
【0014】
上記カードランとしては、例えばアルカリゲネス属又はアグロバクテリウム属の微生物によって生産されるものが挙げられる。具体的にはアルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kにより生産されるカードラン[アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural Biological Chemistry),30巻,196頁(1966年)]、アルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kの変異株NTK-u(IFO13140)により生産されるカードラン(特公昭48-32673号)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(IFO13127)及びその変異株U-19(IFO13126)により生産されるカードラン(特公昭48-32674号)などを使用することができる。また、市販のカードラン(例えば、三菱商事ライフサイエンス社製)を用いることもできる。
【0015】
本発明に用いられる油脂としては、植物性油脂、動物性油脂のいずれであってもよく、具体的には、サフラワーサラダ油、大豆サラダ油、ぶどうサラダ油、ひまわりサラダ油、とうもろこしサラダ油、綿実サラダ油、ごまサラダ油、なたねサラダ油、こめサラダ油、調合サラダ油、精製サフラワー油、精製ぶどう油、精製大豆油、精製ひまわり油、精製とうもろこし油、精製綿実油、精製ごま油、精製なたね油、精製こめ油、精製落花生油、精製オリーブ油、精製パーム油、精製パーム核油、精製やし油、精製調合油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、食用パームオレイン、食用パームステアリン、魚油、鯨油、肝油、調合油、香味食用油又はそれらの混合物等を挙げることができる。用いる油脂の量は、特に制限されないが、熱凝固性β-1,3-グルカンに対して質量比(油脂:熱凝固性β-1,3-グルカン)で、90:10~10:90の範囲が好ましい。
【0016】
本発明に用いられるカルシウム塩は、水への溶解性にかかわらず、食品用途に使用できるものであれば特に制限はなく、具体的には、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム等を挙げることができる。本発明の固形油脂代替組成物において、カルシウム塩は、熱凝固性β-1,3-グルカン1質量部に対し、0.01~1質量部含有することが好ましい。
【0017】
本発明の固形油脂代替組成物は、必要に応じてさらにセルロースを含有してもよい。本発明に用いられるセルロースは、特に限定されず、具体的には、(微)結晶セルロース、粉末セルロース等が挙げられるが、中でも粉末セルロースが好ましい。粉末セルロースとしては、植物由来のセルロース繊維を微粉砕して得られたセルロース微粉末が好ましく、その平均粒子径は10~100μm、好ましくは20~60μmの範囲であり、その平均重合度は380~2500、好ましくは400~2250、より好ましくは440~2250の範囲であり、粒子の平均アスペクト比は4~10のものが好ましい。また、上記結晶セルロースとしては、平均重合度350以下であり、粒子の平均アスペクト比は通常3以下である。
必要に応じて本発明の固形油脂代替組成物に含有させるセルロース量は、固形分質量比で熱凝固性β-1,3-グルカン1質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、カルシウム塩1質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【0018】
本発明の固形油脂代替組成物は、油脂感増強効果を損なわない限り、さらに増粘剤、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類(カルシウム塩を除く)、着色料、澱粉類(加工澱粉も含まれる)、甘味料、酸味料、フレーバー類、調味料等の可食性の天然又は合成の食品素材を含有してもよく、その種類及び含有量は当業者によって適宜決定される。
【0019】
例えば、増粘剤としては、特に限定されず、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、寒天、カラギーナン、グアーガム、ペクチン、タマリンド種子多糖類、コンニャク粉、ジェランガム、アルギン酸塩等を挙げることができる。これらの増粘剤は単独で用いることができるが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
上記澱粉としては、食用のものであれば特に限定されず、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉又はこれらに架橋、エステル化、エーテル化、酸化、α化等を施した加工澱粉(難消化性含む)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
本発明の固形油脂代替組成物は、水分散媒中で、熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂及びカルシウム塩、さらに必要に応じて含有させる他の成分(以下、「1,3-β-グルカン等」という。)を、高速撹拌機等を用いて混合、分散させ、加熱することにより製造することができる。かかる水分散媒としては水、食塩水、各種緩衝液、水酸化ナトリウム水溶液、リン酸三ナトリウム水溶液、リン酸三カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液、酢酸水溶液等の酸性水溶液、アルコール水溶液などが挙げられるが、好ましくは水である。前記水分散媒中に1,3-β-グルカン等を分散して得られた分散溶液は、加熱前に必要に応じて脱気してもよい。前記分散溶液の脱気方法は特に限定されず、例えば、容器に充填し、公知脱気装置を用いて脱気してもよい。前記分散溶液の加熱方法としては、特に限定されず、煮沸加熱、蒸気加熱、加圧加熱、通電加熱等があげられる。加熱温度は、好ましくは75℃以上であり、より好ましくは、80~120℃であり、さらに好ましくは85~100℃である。また、加熱時間は、好ましくは5分間以上であり、より好ましくは5~90分間、さらに好ましくは15~60分間である。
【0022】
本発明の固形油脂代替組成物は、そのまま油脂代替物として用いることができ、植物油脂、動物油脂等の脂肪の全部又は一部の代替品として食品に混ぜてもよく、食品にインジェクションしてもよく、食品の表面に塗布してもよく、液体食品やペースト食品に添加してもよい。また、高速カッターなどで微粒子化して、各種調理等に使用してもよい。このようにして食品に本発明の固形油脂代替組成物を用いることにより、特に食品の油脂風味(油脂感)を改善し、油脂感を増強させることができる。なお、本発明にいう油脂感とは、主に食肉・魚肉の油脂を含有した部位を加熱及び/又は成形加工した食品を摂食の際、当該食品からにじみ出る油脂の感覚であり、そのほか飲食品中の乳脂、牛脂、豚脂などの動物脂、あるいは、キャノーラ油、コーン油、綿実油、オリーブオイル、パーム油などの植物油の存在により飲食品に与えられる厚み、深みなどの風味的特徴や、油脂を含む飲食品の飲食後に感じられる、適度な後味を与える口腔内の好ましいコート感なども含む。
【0023】
また、本発明の方法は、食品に熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂及びカルシウム塩を含有させることにより、食品の油脂感を増強させる方法である。
【0024】
上記食品としては、例えば、生鮮食肉、生鮮魚介肉、食肉ハム、ソーセージ等の食肉加工品、水産練り製品、ミートパティ、ハンバーグ、ミンチボール等の総菜類などの動植油脂類の使用が想定される食品、マヨネーズ、ドレッシング、ソース等の調味料、アイスクリーム、ホイップドクリーム等の乳製品、スープ、焼き物、炒め物、煮物、蒸し物、和え物等の調理品、パウンドケーキ、ブラウニー等の菓子類などを挙げることができる。さらに上記食品として、植物性タンパク質を用いたベーコン、ハンバーグ等の肉代替食品が挙げられ、これらの食品において、脂肪代替品として、本発明の固形油脂代替組成物は優れた効果が期待できる。
【0025】
前記食品は、熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂及びカルシウム塩を食品素材として使用すること以外はそれぞれの飲食品の通常の製造方法に準じて製造することができる。ここで「熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂及びカルシウム塩を食品素材として使用する」とは、熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂、カルシウム塩及び必要に応じて用いられるセルロース等の他の成分を含む上記固形油脂代替組成物を一体的に食品素材として使用する態様、熱凝固性β-1,3-グルカン、油脂、カルシウム塩及び必要に応じて用いられるセルロース等の他の成分が各々個別的に食品中に添加して使用する態様を含み、後者の場合には食した時に混然一体となって、油脂風味(油脂感)を示すことになる。後者の態様として、具体的には、赤身部分にカードラン、油脂及びセルロースを含有するゲルを用い、スジ部分にカルシウム塩粉末を用いて作られた魚肉代替食品の刺身風食品が挙げられる。該刺身風食品においては、カードラン、カルシウム塩、油脂及びセルロースが食品全体の別の部分を構成したとしても、食した時に混然一体となって、通常の刺身が有する油脂風味(油脂感)を口の中で再現することができる。
【実施例
【0026】
以下本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【実施例1】
【0027】
(固形油脂代替組成物の調製-1)
水78.5質量部と粉末状カードラン(三菱商事ライフサイエンス社製。以下同じ。)5質量部を撹拌して懸濁させ、水分散液を得た。この水分散液に、セルロース粉末(100メッシュパスが90%以上)2.5質量部、炭酸カルシウム2.0質量部、サラダ油10.0質量部及び加工澱粉2.0質量部を添加してさらに十分に撹拌し、耐熱性の型に流し入れ、これを脱気シーラーで脱気及びシーリングし、95℃の蒸気加熱装置(スチームコンベクションオーブン、マルゼン(株)製)に投入し、40分間蒸気加熱した。40分後、オーブンから取り出し、室温まで冷却し油脂含有ゲル組成物(本発明の固形油脂代替組成物に相当)を得た。
【実施例2】
【0028】
(固形油脂代替組成物の調製-2)
セルロース粉末を全量水に置き換えたほかは実施例1と同様にして油脂含有ゲル組成物(本発明の固形油脂代替組成物に相当)を得た。
【0029】
[比較例1]
炭酸カルシウムを全量水に置き換えたほかは実施例1と同様にして油脂含有ゲル組成物を得た。
【0030】
[比較例2]
炭酸カルシウム及びセルロースを全量水に置き換えたほかは実施例1と同様にして油脂含有ゲル組成物を得た。
【0031】
(官能評価)
実施例1、2及び比較例1、2で調製した油脂含有ゲル組成物をおよそ10mm×10mm×30mm程度の直方体状に切り出し、これを喫食した際、油脂感を感じる順に順位を付け1位を1点、2位を2点、3位を3点、4位を4点として評点した。1位、2位、及び/又は3位が2検体ある場合は、それぞれ1.5点、2.5点、3.5点とし、1位、2位がそれぞれ3検体ある場合は、それぞれ2点、3点とした。6名のパネルが評価し、検体ごとの評点の合計で評価した。また、喫食時の感想についても聴取した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すとおり、炭酸カルシウムを含有する実施例1及び2の油脂含有ゲル組成物は、噛むと油が染み出し、より強い油脂感が感じられるものであった。
【実施例3】
【0034】
(ベーコン風食品の製造)
ベーコン風食品の製造方法を、肉赤身製造用ゾルの調製と、脂肪製造用ゾルの調製と、それらを用いたベーコン風食品の製造に分けて以下に説明する。
【0035】
(肉赤身製造用ゾルAの調製)
水46質量部と粉末状カードラン2.8質量部を撹拌混合して水分散液を得た。得られた水分散液にリン酸三ナトリウム(無水)0.5質量部、水29質量部の水溶液を添加し、カードランを溶解させた後に、50質量%の発酵乳酸水溶液0.6質量部を添加してpH7.3に調整してカードランの均一な水分散液を得た。セルロース粉末(100メッシュパスが90%以上)2.5質量部、加工澱粉(アセチル化アジピン酸架橋澱粉)3.0質量部、デキストリン0.7質量部、粉末状大豆たん白2.0質量部、食塩1.0質量部、醤油0.5質量部、うま味調味料0.4質量部、香料(スミビヤキフレーバー、ベーコンフレーバー)0.5質量部、色素0.01質量部、サラダ油10.0質量部及び乳化剤0.23質量部を添加してよく撹拌混合し、肉赤身製造用ゾルAを調製した。
【0036】
(脂肪製造用ゾルBの調製)
水89質量部と粉末状カードラン5質量部を撹拌して懸濁させ、水分散液を得た。この水分散液に、炭酸カルシウム(白色色素)2.0質量部、サラダ油2.0質量部及び加工澱粉2.0質量を添加してさらに十分に撹拌して、脂肪製造用ゾルBを調製した。
【0037】
(ベーコン風食品の製造)
上記肉赤身製造用ゾルAを耐熱性の型に流し入れ、上記脂肪製造用ゾルBを肉赤身製造用ゾルAの上に流し込み、さらにその上に肉赤身製造用ゾルAを流し入れる工程を複数回繰返し、肉赤身製造用ゾルAと脂肪製造用ゾルBが複数層交互に積み重なったゾル積層体を耐熱性の型の中で調製した。ゾル積層体が調製された耐熱性の型を、脱気シーラーで脱気及びシーリングし、95℃の蒸気加熱装置(スチームコンベクションオーブン、マルゼン(株)製)に投入し、40分間蒸気加熱した。40分後、オーブンから取り出し、室温まで冷却し、塊状のベーコン風食品を製造した。これを、さらに-40℃に急速冷凍して2月間冷凍保存した。
【0038】
上記のようにして得られ、冷凍保存された塊状のベーコン風食品を室温で解凍したのち、層状になった肉赤身と脂肪に対して垂直方向から薄く切り分けて、その切身をサンプルとして評価した。
【0039】
(外観評価)
肉赤身部と脂肪部が層状になっており、外観はベーコンの薄切りを思わせた。薄切りした状態で持ち上げても、肉赤身部と脂肪部は切り離されることなく、密着していた。
【0040】
(官能評価)
数名のパネルに上記ベーコン風食品のサンプルを試食してもらったところ、実際のベーコンに似た食感、味及び風味であったとの評価を得た。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の固形油脂代替組成物を用いることにより、主に食肉・魚肉の油脂を含有した部位を加熱及び/又は成形加工した食品を摂食の際、当該食品からにじみ出る油脂の感覚である油脂感を向上させることができ、その結果食品における脂肪低減に貢献することができることから、本発明の組成物又は方法は、健康食品分野等の食品分野において有用である。