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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】畜舎用すのこ
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
A01K1/015 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221779
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021090362
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503378420
【氏名又は名称】日鉄ステンレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】森下 直彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 謙一
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-103571(JP,U)
【文献】実開昭48-032571(JP,U)
【文献】特開平08-322414(JP,A)
【文献】特開平10-201387(JP,A)
【文献】実開昭56-020456(JP,U)
【文献】特開昭55-138337(JP,A)
【文献】実開昭54-168374(JP,U)
【文献】特開2004-208581(JP,A)
【文献】米国特許第04135339(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00 - 1/12
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延びた複数のすのこ板を、前記第一方向に直交する第二方向に間隔を空けて平行配置した畜舎用すのこであって、
前記すのこ板は、
ステンレス鋼で構成され、
前記第一方向および前記第二方向を含む平面に平行な天板部と、
前記第二方向における前記天板部の両端部に設けられ、前記平面に対して傾斜し、かつ、前記天板部から離れる方向へ延びた一対の傾斜部と、
前記一対の傾斜部の端部から、前記平面の直交方向に沿って、前記天板部から離れる方向へ延た一対の第一縦壁部と、
前記天板部の前記両端部と、前記一対の傾斜部とを接続し、前記直交方向に沿って延びた、一対の第二縦壁部と、
を備え、
前記複数のすのこ板は、間隔Dを空けて配置されており、
前記一対の傾斜部は、前記天板部から離れるに従い、前記第二方向の間隔が狭まり、
前記一対の傾斜部それぞれは、前記平面に対して、角度θ(θ=20°~60°)で傾斜しており、
前記一対の第二縦壁部それぞれの前記直交方向の長さhは、h<Dtanθを満たす、
畜舎用すのこ。
【請求項2】
前記一対の第二縦壁部それぞれは、前記直交方向に平行である、請求項1に記載の畜舎用すのこ。
【請求項3】
前記複数のすのこ板は、間隔Dを空けて配置されており、
前記間隔Dは15~25mmである、
請求項1または請求項2に記載の畜舎用すのこ。
【請求項4】
前記天板部はエンボス加工されている、
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の畜舎用すのこ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜舎用すのこに関する。
【背景技術】
【0002】
畜舎、例えば豚舎では、多くの糞尿が排せつされる。畜産農家は、臭気対策および環境問題から、畜舎での糞尿除去処理を適切に行うことが求められている。このため、多くの畜舎は、糞尿ピット上にすのこを敷いた床面として、糞尿の清掃を行いやすくしている。清掃時には、糞尿をすのこの隙間から糞尿ピットへ落下させ、その糞用ピットから畜舎外へ排出する。
【0003】
特許文献1には、畜舎用コンクリートスノコが開示されている。特許文献1に記載のコンクリートスノコは、飼料に含まれるギ酸、乳酸などの有機酸による浸食劣化を抑制するために、高炉スラグ微粉末を含んだコンクリート材料を用いている。また、耐食性を持たせ、また、軽量化して設置を容易とするために、SUS430などのステンレス鋼を材料としたすのこも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-37649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すのこの隙間に糞尿を落下させることで、糞尿除去処理が行いやすくなる。糞尿を落下させる途中で、すのこ側面に糞が付着する場合がある。このような場合、すのこの上から水を噴射して、水圧により付着した糞を洗い落す必要がある。しかしながら、ステンレス鋼を材料としたすのこの場合、糞尿が付着した個所は、硫化水素環境となるため、そのまま放置すると、ステンレス鋼表面が腐食しやすい環境になる可能性がある。また、糞尿が付着したままにすると衛生上問題となる。このため、水が直接当たらない部分があると、その部分の糞を洗い落とせず、すのこを持ち上げたり、ブラシなどで擦ったりする必要があり、除糞作業が煩雑となるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、除糞作業を容易に行える畜舎用すのこを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一方向に延びた複数のすのこ板を、前記第一方向に直交する第二方向に間隔を空けて平行配置した畜舎用すのこであって、
前記すのこ板は、
前記第一方向および前記第二方向を含む平面に平行な天板部と、
前記第二方向における前記天板部の両端部それぞれに接続され、前記第二方向の外側から内側に向かうに従い、前記天板部から離れる方向へ延びた一対の傾斜部と、
前記一対の傾斜部それぞれの内側端部から、前記平面の直交方向に沿って、前記天板部から離れる方向へ延びた一対の第一縦壁部と、
を備え、
前記一対の傾斜部それぞれは、前記平面に対して、角度θ(θ=20°~60°)で傾斜している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、除糞作業を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の畜舎用すのこの斜視図である。
図2図2は、畜舎用すのこの正面図である。
図3図3は、畜舎用すのこの平面図である。
図4図4は、図3におけるIV-IV線における断面図である。
図5図5は、糞尿除去作業を行っている状態を示す図である。
図6図6は、畜舎用すのこの別の構成例を示す図である。
図7図7は、畜舎用すのこの別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の畜舎用すのこの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の畜舎用すのこ1の斜視図である。図2は、畜舎用すのこ1の正面図である。図3は、畜舎用すのこ1の平面図である。
【0012】
畜舎用すのこ1は、例えば豚舎の床に一つまたは複数設置される。以下では、畜舎用すのこ1を豚舎に設置した状態で方向を規定して説明する。以下に説明する第一方向および第二方向は、水平面における一方向である。したがって、第一方向および第二方向を含む平面(水平面)の直交方向は鉛直方向である。また、第一方向および第二方向は互いに直交する。
【0013】
糞尿には、腐食性が強い硫化水素が含まれている。このため、畜舎用すのこ1は、耐腐食性を持たせるためにステンレス鋼板から形成されている。ここで、用いるステンレス鋼板の鋼種は特に限定されるものではなく、硫化水素または畜舎の周辺環境を考慮して十分な耐食性を持つ鋼種を選択すればよい。例としては、オーステナイト系ステンレス鋼ではSUS304、SUS316、SUS316L、フェライト系ステンレス鋼ではSUS430、SUS430LX、SUS430J1L、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS443J1、SUS444、SUS445J1、SUS445J2、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼ではSUS821L1、SUS323L、SUS329J1が挙げられる。
【0014】
畜舎用すのこ1は、第一方向に延びた、すのこ板2Aおよびすのこ板2Bを有している。すのこ板2A、2Bは、第二方向に沿って平行に配置されている。すのこ板2A、2Bは、第一方向における両端部で、連結部材3により一体に固定されている。連結部材3の構成、および、すのこ板2A、2Bを固定する位置は、特に限定されないが、図1に示すように、すのこ板2A、2Bの下部の一部を覆うように、連結部材3を設けることで、養豚の体重により、畜舎用すのこ1で、豚舎の床が傷つくことを防止できる。また、畜舎用すのこ1が備えるすのこ板の数は、二つに限らず、三つ以上であってもよいし、着脱自在にすのこ板を連結して、個数を増減できる構造であってもよい。
【0015】
すのこ板2A、2Bは、第二方向において、間隔Dを空けて配置されている。間隔Dは、15mm~25mmであることが好ましい。間隔Dが15mm以下の場合、養豚の糞がすのこ板2A、2Bの間に詰まり、落下させづらくなるおそれがある。間隔Dが25mm以上の場合、養豚の足がすのこ板2A、2Bの間に落ちるおそれがある。
【0016】
図4は、図3におけるIV-IV線における断面図である。なお、図4の断面図では、連結部材3の図示は省略している。
【0017】
すのこ板2A、2Bは、一枚のステンレス鋼板に曲げ加工が施されて、天板部21と、一対の第一縦壁部221、222と、一対の傾斜部231、232と、一対の第二縦壁部241、242とを有している。すのこ板2A、2Bは同じ構成であるので、以下では、すのこ板2Aについて説明する。
【0018】
天板部21は、第一方向および第二方向に平行であって、第一方向へ延びた部材である。畜舎用すのこ1が設置された場合、天板部21は養豚が直接踏む部材である。天板部21は、養豚の滑りを防止するために、エンボス加工が施され、その平面には、凹凸部21Aが設けられている。上記したすのこ板2A、2Bの間隔Dは、第二方向における、すのこ板2Aの天板部21と、すのこ板2Bの天板部21との間の距離である。
【0019】
第二縦壁部241、242は、第二方向における天板部21の両端部それぞれから鉛直方向下側に延びている。第二縦壁部241、242は、鉛直方向に平行であって、第二方向に対向している。以下では、鉛直方向における第二縦壁部241、242の長さはhで表す。畜舎用すのこ1の上方から放水したときに、後述する傾斜部231、232に水が直接当たるように、長さhは、より短いほうが好ましい。すのこ板2A、2Bの間隔D、後述する傾斜部231、232の水平方向に対する角度θを用いると、h<Dtanθの関係を満たすことが好ましい。
【0020】
また、畜舎用すのこ1の隙間の入口である第二縦壁部241、242には、糞が付着しやすい。長さhをより短くすることで、糞の付着面積が小さくなり、糞の付着を抑制できる。
【0021】
傾斜部231、232は、第二縦壁部241、242を介して、第二方向における天板部21の両端部それぞれに接続されていて、水平方向に対して傾斜している。詳しくは、傾斜部231は、第二縦壁部241の下側端部から、天板部21から離れる下方へ延びている。傾斜部232は、第二縦壁部242の下側端部から、天板部21から離れる下方へ延びている。傾斜部231、232は、第二方向の間隔が、天板部21から離れるに従い狭くなるよう、傾斜している。傾斜部231、232それぞれは、水平方向に対して、同じ角度θで傾斜している。角度θは20°~60°である。
【0022】
一対の第一縦壁部221、222は、一対の傾斜部231、232の下側端部から、鉛直方向に沿って、天板部21から離れる方向へ延びている。第一縦壁部221は、傾斜部231の下側端部から下方へ延びている。第一縦壁部222は、傾斜部232の下側端部から下方へ延びている。
【0023】
一対の第一縦壁部221、222は、畜舎用すのこ1が敷かれる糞尿ピットの載置台に直接設置される部材である。鉛直方向における一対の第一縦壁部221、222の長さは適宜変更可能である。上記したように、第二縦壁部241、242の長さhは短いほうが好ましく、また、傾斜部231、232は所定の角度θで傾斜している。したがって、鉛直方向における一対の第一縦壁部221、222の長さを調整することで、畜舎用すのこ1の高さ(天板部21の高さ)が調整される。また、畜舎用すのこ1の高さを調整することで、すのこ床の剛性、すなわち、豚の体重によるすのこ床のたわみ量を調整できる。
【0024】
畜舎用すのこ1の隙間から糞を落下させるときに、畜舎用すのこ1の側面に糞が付着すると、その糞の除去作業が難しくなるが、畜舎用すのこ1は、上記構成とすることで、糞尿除去作業が行いやすくなる。以下に、その理由について説明する。
【0025】
図5は、糞尿除去作業を行っている状態を示す図である。以下では、図4および図5を参照して説明する。
【0026】
糞尿除去作業を行う場合、作業者100は、畜舎用すのこ1の上方から放水して、畜舎用すのこ1上の糞尿を洗い流す。図5の説明では、作業者100は、第二方向において、すのこ板2B側からすのこ板2A側へ向けて(図4の紙面右側から左側へ)放水するものとして説明する。畜舎用すのこ1の隙間から落下する糞は、畜舎用すのこ1の側面に付着することがある。畜舎用すのこ1の側面とは、第一縦壁部221、222、傾斜部231、232、および第二縦壁部241、242である。
【0027】
作業者100は、畜舎用すのこ1の隙間に水を噴射して、畜舎用すのこ1の側面に付着した糞を水圧で洗い落す。畜舎用すのこ1は、隙間に噴射された水が、傾斜部231、232に届く形状となっている。上記したように、第二縦壁部241、242の長さh、すのこ板2A、2Bの間隔D、傾斜部231、232の水平方向に対する角度θの関係は、h<Dtanθである。すのこ板2Aの傾斜部232を、その傾斜方向に沿って、すのこ板2B側へ延長した線を仮想線Xとした場合、h=Dtanθであるとき、仮想線X上に、すのこ板2Bの第二縦壁部241と天板部21との角部が位置するようになる。h<Dtanθである場合、第二縦壁部241と天板部21との角部は、仮想線Xよりも下方に位置する。このため、噴射された水が仮想線Xに平行であれば、その水は、すのこ板2Bの第二縦壁部241と天板部21との角部に邪魔されることなく、すのこ板2Aの傾斜部232に届くようになっている。つまり、作業者100は、水の方向が水平方向に対して角度θで傾斜するように放水すれば、噴射された水が仮想線Xに平行となり、すのこ板2Aの傾斜部232に届くようになっている。
【0028】
本実施形態では、角度θは20°~60°である。以下に、θを20°~60°とする理由を説明する。
【0029】
放水する際、作業者100は自身の腰あたりでホースを持つ姿勢となることが多い。ここで、作業者100の身長Lは、日本の成人男性の平均身長である約171cmとする。そうすると、放水口Pの高さL2は約90cmとなる。また、作業者100は、足元から、数メートル先まで広範囲に亘って放水することが一般的である。ここでは、作業者100は、放水口PからL3=50cm~L4=200cmの範囲に放水するものとする。
【0030】
この条件下において、L3の位置における水平方向に対する水の入射角θ1は、θ1=tan-1(90/50)=61°である。また、L4の位置における水平方向に対する水の入射角θ2は、θ2=tan-1(90/200)=24°である。このことから、上記角度θを20°~60°とすれば、放水口PからL3=50cm~L4=200cmの範囲に設置された、すのこ板2Aの傾斜部232および第二縦壁部242に対して、直接水を当てることができる。
【0031】
このように、傾斜部231、232および第二縦壁部241、242に対して直接水を当てて、傾斜部231、232および第二縦壁部241、242に付着した糞を水で洗い落すことができる。また、傾斜部231、232から落とされた糞の重み、または、傾斜部231、232を介して第一縦壁部221、222へ当たる水により、第一縦壁部221、222に付着した糞を洗い落すことができる。
【0032】
以上のように、畜舎用すのこ1の上方から放水することで、畜舎用すのこ1の側面に付着した糞を洗い落とすことができるため、畜舎用すのこ1を持ち上げたり、ブラシなどで擦ったりする必要がなく、除糞作業を容易に行える。
【0033】
(変形例)
図6および図7は、畜舎用すのこ1の別の構成例を示す図である。
【0034】
上記の実施形態では、畜舎用すのこ1の第二縦壁部241、242は、鉛直方向に平行となっているが、図6に示すように、第二縦壁部241、242は、天板部21から離れるに従い、第二方向の間隔が狭くなるよう、傾斜していてもよい。この場合、天板部21上の糞尿を落下させる際の糞切れ、尿切れをよくすることができる。
【0035】
また、図7に示すように、畜舎用すのこ1は、第二縦壁部241、242を有していなくてもよい。つまり、傾斜部231、232は、第二方向における天板部21の両端部それぞれに直接接続されている。この場合、傾斜部231、232に対して、さらに水を当てやすくなる。
【符号の説明】
【0036】
1 畜舎用すのこ
2A、2B すのこ板
3 連結部材
21 天板部
21A 凹凸部
221、222 第一縦壁部
231、232 傾斜部
241、242 第二縦壁部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7