(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ヒストンデアセチラーゼ阻害剤とBCL-2阻害剤とを含む医薬品配合物、及びそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20240809BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240809BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240809BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20240809BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20240809BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240809BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240809BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K31/352
A61K31/404
A61K31/495
A61K31/505
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019522675
(86)(22)【出願日】2017-11-03
(86)【国際出願番号】 US2017059927
(87)【国際公開番号】W WO2018085652
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-13
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512190767
【氏名又は名称】アセチロン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ACETYLON PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・ムーア
(72)【発明者】
【氏名】チェンイン・ミン
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】岩下 直人
【審判官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0150871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療するための医薬品配合物であって、
(a
)
【化1】
またはその医薬的に許容される塩である、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害
剤と、
(b
)2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、またはその医薬的に許容される塩
である、BCL-2阻害剤と、を含む、前記医薬品配合物。
【請求項2】
前記HDAC6阻害剤及び前記BCL-2阻害剤が同じ製剤中にある、請求項
1に記載の医薬品配合物。
【請求項3】
前記HDAC6阻害剤及び前記BCL-2阻害剤が別々の製剤中にある、請求項
1に記載の医薬品配合物。
【請求項4】
前記配合物が同時投与用または逐次投与用である、請求項
1に記載の医薬品配合物。
【請求項5】
前記がんが血液癌である、請求項
1に記載の医薬品配合物。
【請求項6】
前記がんが少なくとも1つの先行療法による治療に対して難治性または抵抗性である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬品配合物。
【請求項7】
細胞増殖及び
細胞生存率を低減させるための医薬品配合物であって、
(a
)
【化2】
またはその医薬的に許容される塩である、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害
剤と、
(b
)2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、またはその医薬的に許容される塩
である、BCL-2阻害剤と、を含み、
前記細胞が白血病細胞である、前記医薬品配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年11月4日に出願された米国仮特許出願第62/417,670号の利益を主張するものであり、本文献の全容は本明細書において参照により援用されている。
【背景技術】
【0002】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害によってがん細胞の増殖が阻止される可能性があるが、汎HDAC阻害による副作用は深刻であるため、代替のHDAC阻害プロファイルが所望される。
【0003】
HDAC6は、クラスIIbのHDACであり、α-チューブリン及びHSP90をはじめとする多くの細胞タンパク質からアセチル基を除去するものであることが公知である。これまで報告されてきたように、HSP90の過剰アセチル化によってその標的タンパク質、例えばER及びEGFRが不安定化される。HDAC6の阻害剤は、様々な種類のがんにおける抗がん増殖活性を実証してきた。HDAC6活性を遮断することにより多様なメカニズムを通してがん細胞の増殖が阻害されることが、明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Danial,N.N.and Korsmeyer,S.J.Cell(2004)116,205-219
【文献】Adams,J.M.and Cory,S.Science(1998)281,1322-1326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
がん患者に対する治療選択肢は多数あるにもかかわらず、効果的且つ安全な治療選択肢に対するニーズは、依然として存在している。とりわけニーズがあるのは、がん、特に現行の治療抵抗性及び/または難治性(refractive)のがんを治療または予防するのに効果的な方法である。このニーズは、本明細書に記載の方法のような併用療法を用いることによって達成することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中には、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤6(本明細書において「HDAC6」と称される)阻害剤と、B細胞リンパ腫2(本明細書において「BCL-2」と称される)阻害剤と、を含む、医薬品配合物が提供されている。
【0008】
一態様において、本明細書中に提供されている医薬品配合物は、以下を含む。
(a) 式I:
【化1】
のヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤またはその医薬的に許容される塩
(式中:環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
R
1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にOH、ハロ、またはC
1-6アルキルで置換可能であり、且つ
RはHまたはC
1-6アルキルである)と、
(b) BCL-2阻害剤。
【0009】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、環Bはアリールである。
【0010】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、R1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にハロで置換可能である。
【0011】
式Iの或る実施形態において、R1はOH、ハロ、またはC1-6アルキルで置換されるアリールである。
【0012】
式Iの別の実施形態において、R1はOH、ハロ、またはC1-6アルキルで置換されるC5-C7アリールである。
【0013】
式Iの別の実施形態において、R1はOH、ハロ、またはC1-6アルキルで置換されるC4-C7ヘテロアリールである。
【0014】
式Iの更に別の実施形態において、R1はOH、ハロ、またはC1-6アルキルで置換されるフェニルである。
【0015】
式Iの更に別の実施形態において、R1はハロで置換されるフェニルである。
【0016】
式Iの更に別の実施形態において、R1はクロロで置換されるフェニルである。
【0017】
式Iの別の実施形態において、環BはC5-C7アリールである。
【0018】
式Iの別の実施形態において、環BはC4-C7ヘテロアリールである。
【0019】
式Iの更に別の実施形態において、環Bはフェニルである。
【0020】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、
式IのHDAC6阻害剤は、
【化2】
またはその医薬的に許容される塩である。
【0021】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、式IのHDAC6阻害剤は、
【化3】
またはその医薬的に許容される塩である。
【0022】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、BCL-2阻害剤は、4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(4-モルホリニル)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェニル]スルホニル]ベンズアミド(ナビトクラックスまたはABT-263);テトロカルシンA;アンチマイシン;ゴシポール(例えば(-)-ゴシポール酢酸);オバトクラックス;エチル2-アミノ-6-ブロモ-4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-4H-クロメン-3-カルボキシレート(HA 14-1);オブリマーセン;Bak BH3ペプチド;4-[4-[(4’-クロロ[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]-ベンズアミド(ABT-737);2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、及びS55746(BCL201)、またはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0023】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、BCL-2阻害剤はベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩である。
【0024】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、HDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤は、同じ製剤中にある。本医薬品配合物の他の実施形態において、HDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤は、別々の製剤中にある。
【0025】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、本配合物は同時投与用または逐次投与用である。
【0026】
多様な実施形態において、本医薬品配合物は、がん治療を必要とする対象においてがん治療に用いることを用途とする。
【0027】
他の多様な実施形態において、本医薬品配合物は、がん治療用薬剤の調製の用に供する。
【0028】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、がんは血液癌である。
【0029】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、がんは急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(例、マントル細胞リンパ腫)、多発性骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である。
【0030】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、がんは少なくとも1つの先行療法による治療に対して難治性または抵抗性である。
【0031】
一態様では、がんの治療または予防を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されており、本方法は、本明細書中に提供されている治療的有効量の医薬品配合物を対象に投与することを含む。
【0032】
本方法の多様な実施形態において、がんは血液癌である。
【0033】
本方法の多様な実施形態において、がんは急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(例、マントル細胞リンパ腫)、多発性骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である。
【0034】
本方法の多様な実施形態において、がんは少なくとも1つの先行療法による治療に対して難治性または抵抗性である。
【0035】
本方法の多様な実施形態において、HDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤はほぼ同時に投与される。本方法の他の実施形態において、HDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤が、異なる時点で投与される。
【0036】
一態様では、細胞を本明細書中に提供されている医薬品配合物と接触させることを含む、白血病細胞の増殖及び生存率を低減させる方法が、本明細書中に提供されている。
【0037】
一態様において、本明細書中に提供されている医薬組成物は、以下を含む。
(a) 式I:
【化4】
のヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤またはその医薬的に許容される塩
(式中:環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
R
1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にOH、ハロ、またはC
1-6アルキルで置換可能であり、且つ
RはHまたはC
1-6アルキルである)と、
(b) BCL-2阻害剤。
【0038】
本組成物の或る実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を更に含む。
【0039】
本組成物の或る実施形態において、環Bはアリールである。多様な実施形態において、R1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にハロで置換可能である。
【0040】
本組成物の別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化5】
またはその医薬的に許容される塩である。
【0041】
本組成物の別の実施形態において、式Iの化合物は、
【化6】
またはその医薬的に許容される塩である。
【0042】
本組成物の多様な実施形態において、BCL-2阻害剤は、4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(4-モルホリニル)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェニル]スルホニル]ベンズアミド(ナビトクラックスまたはABT-263);テトロカルシンA;アンチマイシン;ゴシポール(例えば(-)-ゴシポール酢酸);オバトクラックス;エチル2-アミノ-6-ブロモ-4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-4H-クロメン-3-カルボキシレート(HA 14-1);オブリマーセン;Bak BH3ペプチド;4-[4-[(4’-クロロ[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]-ベンズアミド(ABT-737);2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、及びS55746(BCL201)、またはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0043】
本組成物の多様な実施形態において、BCL-2阻害剤はベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1A】
図1Aは、以下の細胞株:MOLM-13(
図1A)を、指示濃度の化合物B単独、ABT-199(本明細書中で「ベネトクラックス」とも称されるもの)単独、または化合物BとABT-199との配合物に曝露させた際の、生存率を示す。
【
図1B】
図1Bは、以下の細胞株:Kasumi-1(
図1B)を、指示濃度の化合物B単独、ABT-199(本明細書中で「ベネトクラックス」とも称されるもの)単独、または化合物BとABT-199との配合物に曝露させた際の、生存率を示す。
【
図1C】
図1Cは、以下の細胞株:MV-4-11(
図1C)を、指示濃度の化合物B単独、ABT-199(本明細書中で「ベネトクラックス」とも称されるもの)単独、または化合物BとABT-199との配合物に曝露させた際の、生存率を示す。
【
図2A】
図2Aは、MV-4-11細胞(
図2A)に対し、指示濃度の化合物B単独、ABT-199(本明細書中で「ベネトクラックス」とも称されるもの)単独、または化合物BとABT-199との配合物を投与した際の関数としてアネキシンV染色で測定された、アポトーシスの程度を示す。
【
図2B】
図2Bは、HL-60細胞(
図2B)に対し、指示濃度の化合物B単独、ABT-199(本明細書中で「ベネトクラックス」とも称されるもの)単独、または化合物BとABT-199との配合物を投与した際の関数としてアネキシンV染色で測定された、アポトーシスの程度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書中に提供されている医薬品配合物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と、BCL-2阻害剤と、を含む。具体的には、本明細書中に提供されている医薬品配合物は、以下を含む。
(a) 式I:
【化7】
のヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤またはその医薬的に許容される塩(式中:環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
R
1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にOH、ハロ、またはC
1-6アルキルで置換可能であり、且つ
RはHまたはC
1-6アルキルである)と、
(b) BCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩。
【0046】
以下、本明細書中に用いられている或る特定の用語について説明する。本発明の化合物の記載には、標準の命名法を用いる。別途定義されていない限り、本明細書中に用いられている全ての技術的及び科学的用語の意味は、本発明が属する技術分野の当業者に遍く理解されている意味と同じである。
【0047】
「アルキル」という用語は、或る実施形態において、それぞれ1~6個または1~8個の炭素原子を含有する、飽和の直鎖または分岐鎖の炭化水素残基を指す。C1-6アルキル残基の例としては、限定されるものではないが、メチル残基、エチル残基、プロピル残基、イソプロピル残基、n-ブチル残基、tert-ブチル残基、ネオペンチル残基、n-ヘキシル残基が挙げられ;C1-8アルキル残基の例としては、限定されるものではないが、メチル残基、エチル残基、プロピル残基、イソプロピル残基、n-ブチル残基、tert-ブチル残基、ネオペンチル残基、n-ヘキシル残基、ヘプチル残基、及びオクチル残基が挙げられる。アルキル置換基中の炭素原子数は、接頭辞「Cx-y」で表すことができる。式中:xは置換基中の炭素原子の最小数であり、yは置換基中の炭素原子の最大数である。
【0048】
本明細書において、単独または別の置換基の一部としての「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、別途明記しない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくは塩素を意味する。
【0049】
「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含むがこれらに限定されない、1つ以上の縮合または非縮合芳香環を有する単環式または多環式炭素環式環系を指す。いくつかの実施形態において、アリール基は6個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アリール基は6~10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アリール基は6~16個の炭素原子を有する。或る実施形態において、C5-C7アリール基が本明細書中に提供されている。
【0050】
「ヘテロアリール」という用語は、1つ以上の環形成原子が、酸素、硫黄または窒素などのヘテロ原子である、少なくとも1つの芳香環を有する単環式または多環式(例えば二環式または三環式以上の)縮合または非縮合の残基または環系を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、約1~6個の炭素原子を有し、更なる実施形態において1~15個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は5~16個の環原子を含み、そのうちの1個の環原子は酸素、硫黄及び窒素から選択される。0、1、2または3個の環原子は酸素、硫黄及び窒素から独立に選択される更なるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。ヘテロアリールとしては、限定されるものではないが、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノキサリニル、アクリジニル、及びそれらに類するものが挙げられる。或る実施形態において、C4-C7ヘテロアリール基が、本明細書中に提供されている。
【0051】
本明細書中に用いられている「配合物」、「治療剤配合物」または「医薬品配合物」という用語は、2つ以上の治療剤を独立に、同時に、または時間間隔内に(特にこれらの時間間隔が、配合物パートナーの協調、例えば相乗効果を示すことを可能にする場合)別々に投与可能な、投薬単位形態での固定的配合物、または非固定的配合物、または併用投与用の部品のキットのいずれかを指す。
【0052】
「併用療法」という用語は、本開示に記載されている治療的病態または障害の治療を目的として、2つ以上の治療剤を投与することを指す。そのような投与は、例えば一定の割合の活性成分を有する単一の製剤中または各活性成分について別々の製剤(例えば、カプセル剤及び/または静脈内製剤)中にあるこれらの治療剤を実質的に同時的に投与することを包含する。加えて、そのような投与はまた、各タイプの治療剤を、逐次的または別個(ほぼ同時にまたは異なる時点のいずれか)に使用することも包含する。活性成分を単一の製剤として投与するかそれとも別々の製剤として投与するかに関係なく、薬物は同じ治療過程の一環として同じ患者に投与される。いずれにせよ、治療レジメンは、本明細書に記載の病態または障害を治療するのに有益な効果をもたらす。
【0053】
本明細書において、「医薬的に許容される塩」という用語は、既存の酸残基または塩基残基をその塩形態に変換することにより親化合物が修飾された、本開示の化合物の誘導体を指す。医薬的に許容される塩の例としては、限定されるものではないが、アミンのような塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩、カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩または有機塩、及びそれらに類するものが挙げられる。本発明の医薬的に許容される塩としては、例えば、無毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の従来の無毒性の塩が挙げられる。本発明の医薬的に許容される塩は、塩基性残基または酸性残基を含有する親化合物から従来の化学的方法により合成することが可能である。そのような塩は、概して、水中もしくは有機溶媒中、またはその2つの混合物中で、これらの化合物の遊離酸形態または塩基形態を化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製できる。一般的に好ましいとされるのは、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体である。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418及びJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)に見出され、各文献の全容は本明細書において参照により援用されている。
【0054】
別途指定されていない限り、または本文により明確に指示されていない限り、本明細書中に提供されている医薬品配合物中の有用な治療剤に言及した場合、本化合物の遊離塩基類、及び本化合物の全ての医薬的に許容される塩類の両方を含む。
【0055】
本明細書中に用いられている「医薬的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激性アレルギー反応及びその他の問題のある合併症なしに妥当な利益/リスク比に匹敵する、温血動物、例えば哺乳動物の組織との接触に適した化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0056】
本明細書中に用いられている「固定的配合物」、「固定的用量」、及び「単一の製剤」という用語は、がん治療に対し共同的治療的に有効な量の両方の治療剤を患者に送達するように製剤化された、単一の担体またはビヒクルまたは剤形を指す。単一のビヒクルは、任意の医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、或る量の各薬剤を送達するように設計されている。いくつかの実施形態において、ビヒクルは錠剤、カプセル剤、丸剤またはパッチ剤である。他の実施形態において、ビヒクルは溶液または懸濁液である。
【0057】
「非固定的配合物」、「部品のキット」及び「別々の製剤」という用語は、同時的に、並行的に、または逐次的に特定の時間制限なしに別々の実体として患者に投与され、そのような投与によって、治療上有効なレベルの2つの化合物がそれを必要とする対象の体内に提供される、活性成分、すなわちHDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤を意味する。また、後者はカクテル療法、例えば3つ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0058】
「経口剤形」は、経口投与用に処方または意図された単位剤形を含む。本明細書中に提供されている医薬品配合物の或る実施形態において、HDAC6阻害剤(例えば、化合物AまたはB)は、経口剤形として投与される。
【0059】
本明細書中に用いられている「治療すること」または「治療」という用語は、対象における少なくとも1つの症状の軽減、緩和もしくは寛解、または疾患の進行を遅延させるのに有効な治療を含む。例えば、治療は、障害における1つもしくはいくつかの症状を漸減すること、またはがんのような障害を完全に根絶させることであり得る。
【0060】
本明細書中に用いられている「予防する」、「予防すること」または「予防」という用語は、予防される病態、疾患または障害に関連する、またはそれによって引き起こされる、少なくとも1つの症状を予防することを含む。
【0061】
「医薬的有効量」、「治療的有効量」または「臨床的有効量」の治療剤配合物という用語は、その配合物で治療された障害のベースラインの臨床的に観察可能な徴候及び症状を超えて、観察可能なもしくは臨床的に有意な改善をもたらすのに十分な量である。
【0062】
本明細書中に用いられている「共同的に治療活性」または「共同的治療効果」という用語は、治療される温血動物、特にヒトにおいて、好ましい時間間隔であるが、(好ましくは相乗的な)相互作用(共同的治療効果)を示す時間間隔で、治療剤を別々に(時系列的に交互に、特に配列特異的な様式にて)投与できることを意味する。これが事実かどうかは、とりわけ、本化合物の血中濃度を追跡することによって判別できる。これにより、少なくとも一定の時間間隔の間に治療の対象となるヒトの血液中に両方の化合物が存在することが明らかである。
【0063】
本明細書中に用いられている「対象」または「患者」という用語は、がん、または直接的もしくは間接的にがんを含む任意の障害に罹患しているかまたは煩悶している可能性のある動物を包含することを意図したものである。対象の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、類人猿、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、及びトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。或る実施形態において、対象は(例えばがんに罹患している、罹患するリスクに曝されている、またはがんに罹患する可能性のある)ヒトである。
【0064】
本明細書において、治療剤に対する「抵抗性」または「難治性(refractive)」という用語は、がん患者に言及した場合、治療剤と接触した結果として、がんが治療剤の効果に対する抵抗性を先天的に有すること、またはその抵抗性を達成したことを意味する。言い換えれば、特定の治療剤に関連した通常の標準治療に対してがんが抵抗性である。
【0065】
「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、別途注記しない限り、本明細書中でその非限定的意味及び非制限的意味で用いられる。
【0066】
「a」、「an」及び「the」という用語、ならびに本発明を説明する文脈における(特に特許請求の範囲の文脈における)同様の参照は、本明細書で別段の指定がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈すべきである。化合物、塩及びそれらに類するものに対し複数形を用いる場合、これはまた、単一の化合物、塩またはそれらに類するものも意味すると解釈される。
【0067】
「約」または「およそ」という用語は、関連する主題領域に精通した者によって理解されるのが一般的であるが、或る状況においては所与の値または範囲の20%以内、10%以内または5%以内を意味し得る。代替的に、特に生物学的システムにおいて、「約」という用語は、所与の値のほぼ対数以内(すなわち、1桁分)または2倍以内を意味する。
【0068】
本明細書中に用いられている「相乗効果」という用語は、例えば式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩、及びBCL-2阻害剤(例えば、ベネトクラックス)などの2つの薬剤が、がんの症状の進行またはその症状を遅延させる効果を生み出す作用で、例えば単独投与された各薬物の効果の単純な追加を上回る作用を指す。相乗効果の計算には、例えば、シグモイド-Emax式(Holford,N.H.G.and Scheiner,L.B.,Clin.Pharmacokinet.6:429-453(1981))、ロエベ加法性の方程式(Loewe,S.and Muischnek,H.,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313-326(1926))及びメジアン効果方程式(Chou,T.C.and Talalay,P.,Adv.Enzyme Regul.22:27-55(1984))のような適切な方法を用いることができる。上記に言及されている各式を実験データに適用し、対応するグラフを作成して、薬物の併用による効果を評価する一助とすることができる。上記に言及されている式に関連する対応するグラフはそれぞれ、濃度-効果曲線、イソボログラム曲線及び組合せ指数曲線である。本明細書中に提供されている医薬品配合物は、細胞増殖に関連して相乗効果を発揮し、白血病細胞株に関連して生存能力を呈する(例えば、実施例3及び実施例4を参照のこと)。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されている医薬品配合物は、相乗効果に帰結する量にて与えられる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されている医薬品配合物は、相加効果よりも大きい効果に帰結する量にて与えられる。
【0069】
「ヒストンデアセチラーゼ」または「HDAC」という用語は、コアヒストン中のリジン残基からアセチル基を除去し、そのようにして、凝縮された転写抑制クロマチンを形成する酵素を指す。現行では18種の公知のヒストンデアセチラーゼがあり、それらは4つのグループに分類されている。HDAC1、HDAC2、HDAC3、及びHDAC8を含むクラスI HDACは、酵母のRPD3遺伝子に関連している。HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC9、及びHDAC10を含むクラスII HDACは、酵母のHda1遺伝子に関連している。サーチュインとしても知られているクラスIII HDACは、Sir2遺伝子に関連しており、SIRT1-7を含む。HDAC11のみが含まれるクラスIV HDACは、クラスIとIIの両方のHDACの機能を有する。「HDAC」という用語は、別途指定されていない限り、18種の公知のヒストンデアセチラーゼのうちの任意の1つ以上を指す。
【0070】
本明細書中に用いられている「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」(HDAC阻害剤、HDACi、HDI)という用語は、ヒストンデアセチラーゼの少なくとも1つの活性を選択的に標的化、低下、または阻害する化合物を指す。
【0071】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤
本明細書中に提供されている医薬品配合物は、式I:
【化8】
のヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤(本明細書において「式Iの化合物」とも称される)またはその医薬的に許容される塩、
(式中:環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
R
1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にOH、ハロ、またはC
1-6アルキルで置換可能であり、且つ
RはHまたはC
1-6アルキルである)を含む。
【0072】
式Iの化合物の或る実施形態において、環Bはアリールである。多様な実施形態において、R1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にハロで置換可能である。
【0073】
式Iの或る実施形態において、R1はOH、ハロ、またはC1-6アルキルで置換されるアリールである。
【0074】
式Iの別の実施形態において、R1はOH、ハロ、またはC1-6アルキルで置換されるC5-C7アリールである。
【0075】
式Iの別の実施形態において、R1はOH、ハロ、またはC1-6アルキルで置換されるC4-C7ヘテロアリールである。
【0076】
式Iの更に別の実施形態において、R1はOH、ハロ、またはC1-6アルキルで置換されるフェニルである。
【0077】
式Iの更に別の実施形態において、R1はハロで置換されるフェニルである。
【0078】
式Iの更に別の実施形態において、R1はクロロで置換されるフェニルである。
【0079】
式Iの別の実施形態において、環BはC5-C7アリールである。
【0080】
式Iの別の実施形態において、環BはC4-C7ヘテロアリールである。
【0081】
式Iの更に別の実施形態において、環Bはフェニルである。
【0082】
具体的な実施形態において、式Iの化合物は、表1に示すような化合物Aもしくはその医薬的に許容される塩、または化合物Bもしくはその医薬的に許容される塩である。
【0083】
【0084】
便宜上、式Iのヒストンデアセチラーゼ6阻害剤及びその塩の群は、式Iの化合物として総称され、式Iの化合物に言及した場合、代替的に化合物のいずれかまたはその医薬的に許容される塩を指すことを意味する。
【0085】
式Iの化合物(例えば化合物A及び化合物B)は、公知のHDAC6阻害剤であり、PCT出願第WO2011/091213号に記載されており、本文献の全容は本明細書において参照により援用されている。化合物A及び化合物Bは、現在、多発性骨髄腫の治療のための第1b相臨床開発において調査されている。
【0086】
また、化合物A及び化合物Bの調製物は、本明細書において実施例1として記載されている。化合物A及び化合物Bは、遊離塩基形態にあることが好ましい。
【0087】
式Iの化合物の塩は、医薬的に許容される塩であることが好ましい。適切な対イオン形成性の医薬的に許容される塩は、当該分野において公知である。
【0088】
BCL-2阻害剤
本明細書中に用いられている「BCL-2阻害剤」という用語は、BCL-2の少なくとも1つの活性を選択的に標的とする、低下させる、または阻害する化合物を指す。B細胞リンパ腫2(Bcl-2)ファミリーのタンパク質は、ミトコンドリア(別称:「内因性」)アポトーシス経路の調節因子として重要とされている。Danial,N.N.and Korsmeyer,S.J.Cell(2004)116,205-219を参照。BCL-2の誤調節は、多種多様ながん、特に濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、及び慢性リンパ性白血病などの血液癌に関与している。Adams,J.M.and Cory,S.Science(1998)281,1322-1326。
【0089】
BCL-2阻害剤の例としては、限定されるものではないが、例えば、4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(4-モルホリニル)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェニル]スルホニル]ベンズアミド(ナビトクラックスまたはABT-263);テトロカルシンA;アンチマイシン;ゴシポール(例えば(-)-ゴシポール酢酸);オバトクラックス(GX15-070);エチル2-アミノ-6-ブロモ-4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-4H-クロメン-3-カルボキシレート(HA 14-1);オブリマーセン;Bak BH3ペプチド;4-[4-[(4’-クロロ[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]-ベンズアミド(ABT-737);2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、及びS55746(BCL201)が挙げられる。
【0090】
これらのBCL-2阻害剤はいずれも、本明細書中に提供されている医薬品配合物中に使用できる。
【0091】
或るBCL-2阻害剤の構造を、表2に示す。
【0092】
【0093】
或る実施形態において、BCL-2阻害剤は、表2に示す化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0094】
特定の実施形態において、BCL-2阻害剤はベネトクラックス(別称:「ABT-199」)、またはその医薬的に許容される塩である。
【0095】
ベネトクラックスは、少なくとも1回の先行療法を受けた17p欠失の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療に関してFDAによる承認を受けている(例えば、VENCLEXTA(商標)http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2016/208573s000lbl.pdfのFDAラベルを参照)。
【0096】
別の特定の実施形態において、BCL-2阻害剤はS55746である。S55746は、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞非ホジキンリンパ腫、または多発性骨髄腫の患者を対象とした臨床試験において現在研究されている。(例えばhttps://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02920697を参照)。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はナビトクラックスである。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はABT-737、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はHA-14-1、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はオバトクラックス、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はオブレマーソン、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はテトロカルシンA、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はBAK BH3ペプチド、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はアンチマイシン、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、BCL-2阻害剤はアンチマイシン、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、BCL-2阻害剤は、ゴシポールまたはその医薬的に許容される塩である。
【0097】
本明細書中に提供されているデータは、本明細書中に提供されている併用療法(例えば、HDAC6阻害剤とBCL-2阻害剤)が特定のがん細胞株の生存率を相乗的に低減させたことを示す(例えば、実施例3参照)。更に、本明細書中に提供されている併用療法は、特定のがん細胞株のアポトーシスを相乗的に増加させるものである(例えば、実施例4を参照)。
【0098】
式Iの化合物もしくはBCL-2阻害剤またはその両方は、遊離形態または医薬的に許容される塩形態で投与できる。
【0099】
また、がんの進行の遅延または治療に用いるための治療剤として、本明細書中に提供されている配合物を、その同時投与、個別投与または逐次投与のための説明書と共に含む市販パッケージも、本明細書中に提供されている。
【0100】
治療方法
本明細書中に提供されている治療的有効量の医薬品配合物を対象に投与することを含む、がんの治療または予防を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。本医薬品配合物は、以下を含む。
(a) 式I:
【化9】
のヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤またはその医薬的に許容される塩
(式中:環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
R
1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にOH、ハロまたはC
1-6アルキルで置換可能であり、且つ
RはHまたはC
1-6アルキルである)と、
(b) BCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩。
【0101】
或る実施形態において、本明細書中に提供されている治療的有効量の医薬品配合物を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。
【0102】
本方法の具体的な実施形態において、HDAC6阻害剤は、化合物B、またはその医薬的に許容される塩、及びBCL-2阻害剤はベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩である。
【0103】
本明細書中に提供されている方法は、固形腫瘍及び液性腫瘍の両方に用いることができる。更に、腫瘍の種類及び使用される特定の配合物に応じて、腫瘍体積の減少を得ることができる。本明細書中に開示されている配合物はまた、腫瘍の転移性拡散、及び微小転移の増殖または発生を防止するのにも好適である。本明細書中に開示されている配合物は、予後不良患者の治療に好適である。
【0104】
本方法の多様な実施形態において、がんは血液癌である。血液癌には、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫が含まれる。
【0105】
本方法の多様な実施形態において、がんは急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である。更なる実施形態において、がんはマントル細胞リンパ腫(MCL)である。なお更なる実施形態において、がんはB細胞リンパ腫である。
【0106】
本方法の多様な実施形態において、がんは少なくとも1つの先行療法による治療に対して難治性または抵抗性である。
【0107】
一実施形態において、治療的有効量の式IのHDAC阻害剤、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。いくつかの実施形態において、治療的有効量の化合物A、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。
【0108】
別の実施形態において、治療的有効量の式IのHDAC阻害剤、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、血液癌の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。いくつかの実施形態において、治療的有効量の化合物A、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、血液癌の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。
【0109】
別の実施形態において、治療的有効量の式IのHDAC阻害剤、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、白血病の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。いくつかの実施形態において、治療的有効量の化合物A、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、白血病の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。
【0110】
別の実施形態において、治療的有効量の化合物A、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。本実施形態は、治療量以下の量の化合物Aまたはベネトクラックスを本方法に使用できるような相乗効果を呈する。
【0111】
別の実施形態において、治療的有効量の化合物A、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、血液癌の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が提供されている。
【0112】
別の実施形態において、治療的有効量の化合物A、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、白血病の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が提供されている。
【0113】
更に別の実施形態は、治療的有効量の化合物A、またはその医薬的に許容される塩、ならびに4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(4-モルホリニル)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェニル]スルホニル]ベンズアミド(ナビトクラックスまたはABT-263);テトロカルシンA;アンチマイシン;ゴシポール;オバトクラックス;エチル2-アミノ-6-ブロモ-4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-4H-クロメン-3-カルボキシレート(HA 14-1);オブリマーセン;Bak BH3ペプチド;4-[4-[(4’-クロロ[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]-ベンズアミド(ABT-737);2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、及びS55746(BCL201)、またはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される治療的有効量のBCL-2阻害剤を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法である。
【0114】
他の実施形態において、治療的有効量の化合物B、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。いくつかの実施形態において、本方法は、治療的有効量の化合物B、またはその医薬的に許容される塩、ならびに4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(4-モルホリニル)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェニル]スルホニル]ベンズアミド(ナビトクラックスまたはABT-263);テトロカルシンA;アンチマイシン;ゴシポール;オバトクラックス;エチル2-アミノ-6-ブロモ-4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-4H-クロメン-3-カルボキシレート(HA 14-1);オブリマーセン;Bak BH3ペプチド;4-[4-[(4’-クロロ[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]-ベンズアミド(ABT-737);2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、及びS55746(BCL201)、またはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される治療的有効量のBCL-2阻害剤を対象に投与することを含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、治療的有効量の化合物B、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、血液癌の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。
【0116】
いくつかの実施形態において、治療的有効量の化合物B、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のBCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、白血病の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。
【0117】
別の実施形態において、治療的有効量の化合物B、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。本実施形態は、治療量以下の量の化合物Bまたはベネトクラックスを本方法に使用できるような相乗効果を呈する。
【0118】
別の実施形態において、治療的有効量の化合物B、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、血液癌の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。
【0119】
別の実施形態において、治療的有効量の化合物B、またはその医薬的に許容される塩、及び治療的有効量のベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、白血病の治療を必要とする対象においてそれを行う方法が、本明細書中に提供されている。
【0120】
本明細書中で考慮の対象とされる対象は典型的にはヒトであるが、本対象を治療が所望される任意の哺乳動物とする場合もある。それゆえ、本明細書に記載の方法は、ヒト及び動物の両方の用途に適用しても差し支えない。
【0121】
医薬品配合物及び組成物
本明細書中に提供されている医薬品配合物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と、BCL-2阻害剤と、を含む。
【0122】
一態様において、本明細書中に提供されている医薬品配合物は、以下を含む。
(a) 式I:
【化10】
のヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤またはその医薬的に許容される塩
(式中:環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
R
1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にOH、ハロ、またはC
1-6アルキルで置換可能であり、且つ
RはHまたはC
1-6アルキルである)と、
(b) BCL-2阻害剤、またはその医薬的に許容される塩。
【0123】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、環Bはアリールである。
【0124】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、R1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にハロで置換可能である。
【0125】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、式Iの化合物は、化合物A、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施形態において、式Iの化合物は、化合物Bまたはその医薬的に許容される塩である。
【0126】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、BCL-2阻害剤は、4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(4-モルホリニル)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェニル]スルホニル]ベンズアミド(ナビトクラックスまたはABT-263);テトロカルシンA;アンチマイシン;ゴシポール(例えば(-)-ゴシポール酢酸);オバトクラックス;エチル2-アミノ-6-ブロモ-4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-4H-クロメン-3-カルボキシレート(HA 14-1);オブリマーセン;Bak BH3ペプチド;4-[4-[(4’-クロロ[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]-ベンズアミド(ABT-737);2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、及びS55746(BCL201)、またはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0127】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、BCL-2阻害剤はベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩である。
【0128】
本医薬品配合物の特定の実施形態において、HDAC6阻害剤は、化合物Bまたはその医薬的に許容される塩、及びBCL-2阻害剤はベネトクラックスである。
【0129】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、HDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤は、同じ製剤中にある。本医薬品配合物の他の実施形態において、HDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤は、別々の製剤中にある。
【0130】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、本配合物は同時投与用または逐次投与用である。
【0131】
多様な実施形態において、本医薬品配合物は、がん治療を必要とする対象においてがん治療に用いることを用途とする。
【0132】
或る実施形態において、本発明の配合物は、有効量のHDAC6阻害剤(すなわち、式Iの化合物)及び有効量のBCL-2阻害剤を含む併用療法薬を、対象に投与することを含む、がんの治療または予防に用いられる。これらの化合物は、併用時に有益な効果を発揮する治療的に有効な投薬量にて投与するのが、好ましい。投与は、各成分を同時投与または逐次投与のいずれかで別々に投与することを含み得る。
【0133】
多様な実施形態において、本医薬品配合物は、がんの治療または予防用薬剤の調製の用に供する。更なる実施形態において、本医薬品配合物は、がん治療用薬剤の調製の用に供する。
【0134】
また、本明細書中に提供されている医薬品配合物は、固形腫瘍及び液状腫瘍の両方の増殖を阻害することが可能である。更に、腫瘍の種類及び使用される特定の配合物に応じて、腫瘍体積の減少を得ることができる。本明細書中に開示されている配合物はまた、腫瘍の転移性拡散、及び微小転移の増殖または発生を防止するのにも好適である。本明細書中に開示されている配合物は、予後不良患者の治療に好適である。
【0135】
他の多様な実施形態において、本医薬品配合物は、がん治療用薬剤の調製の用に供する。
【0136】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、がんは血液癌である。血液癌には、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫が含まれる。
【0137】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、がんは急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である。更なる実施形態において、がんはマントル細胞リンパ腫(MCL)である。なお更なる実施形態において、がんはB細胞リンパ腫である。
【0138】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、がんは少なくとも1つの先行療法による治療に対して難治性または抵抗性である。
【0139】
本明細書中に提供されている医薬組成物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と、BCL-2阻害剤と、を含む。
【0140】
本明細書において、「医薬組成物」という用語は、哺乳動物に影響を及ぼす特定の疾患または病態の予防または治療を目的に哺乳動物またはヒトなどの対象に投与される治療剤(複数可)を含む、混合物または溶液を指すものと定義される。
【0141】
一態様において、本明細書中に提供されている医薬組成物は、以下を含む。
(a) 式I:
【化11】
のヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤またはその医薬的に許容される塩
(式中:
環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
R
1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にOH、ハロ、またはC
1-6アルキルで置換可能であり、且つ
RはHまたはC
1-6アルキルである)と、
(b) BCL-2阻害剤。
【0142】
本組成物の或る実施形態において、環Bはアリールである。多様な実施形態において、R1はアリールまたはヘテロアリールであって、これらの各々は任意にハロで置換可能である。
【0143】
本組成物の別の実施形態において、式Iの化合物は、化合物Aまたはその医薬的に許容される塩である。本組成物の別の実施形態において、式Iの化合物は、化合物Bまたはその医薬的に許容される塩である。
【0144】
本組成物の多様な実施形態において、BCL-2阻害剤は、4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(4-モルホリニル)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェニル]スルホニル]ベンズアミド(ナビトクラックスまたはABT-263);テトロカルシンA;アンチマイシン;ゴシポール(例えば(-)-ゴシポール酢酸);オバトクラックス;エチル2-アミノ-6-ブロモ-4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-4H-クロメン-3-カルボキシレート(HA 14-1);オブリマーセン;Bak BH3ペプチド;4-[4-[(4’-クロロ[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]-ベンズアミド(ABT-737);2-((1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ)-4-(4-((4’-クロロ-5,5-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-N-((3-ニトロ-4-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)アミノ)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(ベネトクラックス)、及びS55746(BCL201)、またはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0145】
本組成物の多様な実施形態において、BCL-2阻害剤はベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩である。
【0146】
本組成物の具体的な実施形態において、式Iの化合物は、化合物A、またはその医薬的に許容される塩、及びBCL-2阻害剤はベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩である。
【0147】
本組成物の具体的な実施形態において、式Iの化合物は、化合物B、またはその医薬的に許容される塩、及びBCL-2阻害剤はベネトクラックス、またはその医薬的に許容される塩である。
【0148】
本組成物の或る実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を更に含む。本明細書において、「医薬的に許容される賦形剤」または「医薬的に許容される担体」という用語は、当業者に公知の、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、及びそれらに類するもの、ならびにそれらの配合物を含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照)。任意の従来の担体が本活性成分と適合しない場合を除き、治療用組成物または医薬組成物におけるその使用が想到される。
【0149】
本医薬組成物は、約0.1%~約99.9%、好ましくは約1%~約60%の治療剤(複数可)を含有し得る。
【0150】
経腸または非経口投与用の併用療法に好適な医薬組成物は、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセルもしくは坐薬、またはアンプルなどの単位剤形のものである。これらは、別途指示されていない限り、自体公知の方法で、例えば、種々の従来の混合、粉砕、直接圧縮、造粒、糖衣、溶解、凍結乾燥工程、溶融造粒、または当業者に容易に明らかな製作技術により製造される。必要な有効量は複数の投薬単位の投与によって達成され得ることから、各剤形の個々の用量に含まれる配合物パートナーの単位含有量がそれ自体有効量を構成する必要のないことが了解される。
【0151】
投与/用量
本明細書中に提供されている開示によるがんの治療方法は、(i)(a)遊離形態または医薬的に許容される塩形態のHDAC6阻害剤を投与することと、(ii)(b)遊離形態または医薬的に許容される塩形態のBCL-2阻害剤を、同時的または逐次的に、任意の順序で、共同的治療有効量で、好ましくは相乗的有効量で、例えば、日用量または間欠的投薬にて投与することと、を含み得る。本明細書中に提供されている医薬品配合物の個々の配合物パートナーは、治療過程を通して異なる時点で別々に投与することもできるし、または分割形態もしくは単一の配合物形態で同時に投与することもできる。したがって、明細書中に提供されている方法は、同時治療または交互治療の全てのそのようなレジメンを包含するものとして理解すべきであり、それに応じて「投与する」という用語を解釈すべきである。
【0152】
例えば、本方法の一実施形態において、HDAC6阻害剤が先に投与され、続いてBCL-2阻害剤が投与される。本方法の別の実施形態において、BCL-2阻害剤が先に投与され、続いてHDAC6阻害剤が投与される。
【0153】
式Iの化合物は、1日当たり約10mg~約1000mg(例えば、約10mg~約500mgなど)の量にて、単回用量でまたは分割使用を目的として、経口投与することが可能である。それゆえ、本明細書中に提供されている治療方法の或る実施形態において、式Iの化合物は、1日当たり約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mgまたは500mgの投薬量にて投与される。更なる実施形態において、式Iの化合物は、1日当たり約20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mgまたは200mgの投薬量にて投与される。本医薬品配合物の或る実施形態において、化合物Aは、600mg~3000mg(例えば、約600mg、約800mg、約1000mg、約1200mg、約1400mg、約1600mg、約1800mg、約2000mg)の量である。本医薬品配合物の更なる実施形態において、化合物Aは600mg~2000mgの量である。本医薬品配合物の好ましい実施形態において、化合物Aは180mg~480mgの量である。
【0154】
本医薬品配合物の別の実施形態において、化合物Aは、5mg~600mg(例えば、約5mg、約25mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg)の量である。本医薬品配合物の更に別の実施形態において、化合物Aは10mg~200mgである。
【0155】
本医薬品配合物の或る実施形態において、化合物Bは600mg~3000mg(例えば、約600mg、約800mg、約1000mg、約1200mg、約1400mg、約1600mg、約1800mg、約2000mg)の量である。本医薬品配合物の更なる実施形態において、化合物Bは600mg~2000mgの量である。本医薬品配合物の好ましい実施形態において、化合物Bは180mg~480mgの量である。
【0156】
本医薬品配合物の別の実施形態において、化合物Bは5mg~600mg(例えば、約5mg、約25mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg)の量である。本医薬品配合物の更に別の実施形態において、化合物Bは10mg~200mgである。
【0157】
本明細書中に提供されている併用療法の或る実施形態において、ベネトクラックスが経口投与される。更なる実施形態において、ベネトクラックスの日用量は、単回用量でまたは分割使用を目的として、1日当たり約10~約500mg(例えば、1日当たり約10mg~約400mg、約10mg~約300mg、または約10mg~約200mgなど)である。
【0158】
本明細書中に提供されている併用療法の他の実施形態において、BCL-2阻害剤(例えばベネトクラックス)は、1日当たり約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mg、または500mgの投薬量で投与される。更なる実施形態において、BCL-2阻害剤は、1日当たり約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、または200mgの投薬量で投与される。本医薬品配合物の或る実施形態において、式Iの化合物対BCL-2阻害剤の比率は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、式Iの化合物対BCL-2阻害剤の比率は、2:1~1:2、例えば2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば3:1、2:1もしくは1:1;4:1~1:1、例えば4:1、3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0159】
本医薬品配合物の別の実施形態において、化合物A対BCL-2阻害剤の比率は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、化合物A対BCL-2阻害剤の比率は、2:1~1:2、例えば2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば3:1、2:1もしくは1:1;4:1~1:1、例えば4:1、3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0160】
本医薬品配合物の別の実施形態において、化合物B対BCL-2阻害剤の比率は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、化合物B対BCL-2阻害剤の比率は、2:1~1:2、例えば2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0161】
本医薬品配合物の別の実施形態において、化合物A対ベネトクラックスの比率は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、化合物A対ベネトクラックスの比率は、2:1~1:2、例えば2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0162】
本医薬品配合物の別の実施形態において、化合物B対ベネトクラックスの比率は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、化合物B対ベネトクラックスの比率は、2:1~1:2、例えば2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0163】
確立済の試験モデルにより明らかにされ得るように、本明細書中に提供されているような医薬品配合物は、本明細書中で前述した有益な効果をもたらす。当業者は、そのような有益な効果を立証するうえで適切な試験モデルを選択することが、十分に可能である。本明細書中に提供されている医薬品配合物の薬理学的活性は、例えば、臨床試験または動物モデルにおいて実証可能である。
【0164】
或る実施形態において、本明細書中に提供されている医薬品配合物もしくは医薬組成物、またはその両者は、相乗効果を呈する。
【0165】
更なる実施形態において、対象に投与される相乗的配合物が、本明細書中に提供されている。本配合物は、本発明の配合物を含み、各成分の用量範囲は適切な腫瘍モデルまたは臨床試験において示唆される相乗的範囲に対応している。
【0166】
1つ以上の成分間の相乗的相互作用を算定する際には、治療を必要とする患者に対し異なるw/w比範囲及び用量にわたる成分を投与することによって、効果に関する最適範囲及び各成分の絶対用量範囲を断定的に測定できる。ヒトを対象とする場合、患者に対して臨床試験を実施することの複雑さ及びコストのために、相乗効果のための主要モデルとしてのこの形式の試験の使用は非現実的となり得るが、特定の実験における相乗効果を観察することによって他の種における効果を予測することが可能であり、相乗効果を更に定量する目的に使用可能な動物モデルが存在する。また、そのような研究の結果を使用することによって、有効用量比の範囲、絶対用量、及び血漿中濃度を予測することもできる。
【0167】
更なる実施形態において、対象に投与される相乗的配合物が、本明細書中に提供されている。本配合物は、本発明の配合物を含み、各成分の用量範囲は適切な腫瘍モデルまたは臨床試験において示唆される相乗的範囲に対応している。
【0168】
本発明の配合物中に使用される各配合物パートナーの有効投薬量は、使用される特定の化合物または医薬組成物、投与方法、治療対象の病態、及び治療対象の病態の重篤度に応じて異なってくる場合がある。それゆえ、本発明の配合物の投薬レジメンは、投与経路、ならびに患者の腎機能及び肝機能をはじめとする様々な要因に従って選択される。
【0169】
本明細書中に提供されている配合物の最適な比率、個々の及び併用した場合の投薬量、ならびに配合物パートナー(例えば、式Iの化合物及びBCL-2阻害剤)が毒性を呈することなしに効果を発揮する濃度は、標的部位への治療剤の利用可能性の動態に基づき、当業者に公知の方法を用いて算定される。
【0170】
配合物パートナーの各々の投薬量を有効とするには、本化合物(複数可)のうちの1つを、本配合物中の他の化合物(複数可)と比較してより頻繁に投与する必要のある場合がある。したがって、適切な投薬を可能にするため、化合物の配合物を含有する1つ以上の剤形と、配合物の化合物のうちの1つを含有するが他の化合物を含有しない1つ以上の剤形を、パッケージングされた医薬品中に含めてもよい。
【0171】
本明細書中で別途言及されていない限り、本発明の配合物中に使用される配合物パートナーが単一薬物として市販される形態で適用される場合、それらの投薬量及び投与様式は、それぞれの市販薬の添付文書中に提供されている情報に準じ得る。
【0172】
がん治療用の各配合物パートナーの最適な投薬量は、公知の方法を用いて各個体について経験的に特定することができ、様々な要因に依存する。これらの要因には、限定されるものではないが、病気の進行の程度、個人の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事、投与の時間及び経路、ならびに個人が服用しているその他の薬が挙げられる。最適な投薬量は、当該技術分野において周知の日常的試験及び手順を用いて確立することが可能である。
【0173】
単一剤形を製造するために担体材料と併用できる各配合物パートナーの量は、治療される個体及び特定の投与様式に応じて異なる場合がある。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されている薬剤の配合物を含む単位剤形は、薬剤が単独投与されたときに典型的に投与される配合物の各薬剤の量を含む。
【0174】
投与頻度は、使用される化合物、及び治療または予防すべき特定の病態に応じて変動する場合がある。当業者に周知されるように、一般的には、治療または予防の対象となる病態に好適なアッセイを用い、患者における治療上の有効性をモニターしてもよい。
【0175】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、HDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤は、同じ製剤中にある。代替的に、HDAC6阻害剤及びBCL-2阻害剤は、別々の製剤中にある。
【0176】
本医薬品配合物の多様な実施形態において、本配合物は同時投与用または逐次投与用である。
【0177】
本出願全体を通して引用されている全ての出典(参考文献、発行済み特許、公開済み特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む)の内容は、その全容が本明細書において参照により明示的に援用されている。別途定義されていない限り、本明細書中に用いられている全ての技術用語及び科学用語は、当業者に遍く知られている意味と一致する。
【実施例】
【0178】
下記実施例は、上記の本発明の例証であるが、本発明の範囲を限定することを多少なりとも意図したものではない。また、本発明の医薬品配合物の有益な効果は、当業者に自体公知の他の試験モデルによっても特定することができる。
【0179】
実施例1:2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)及び2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物B)の合成
【化12】
【0180】
中間体2の合成:
アニリン(3.7g、40mmol)、化合物1(7.5g、40mmol)、及びK2CO3(11g、80mmol)をDMF(100ml)中に溶かした混合物を脱気し、N2下で120℃にて一晩撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、EtOAc(200ml)で希釈してから、飽和ブライン(200ml×3)で洗浄した。有機層を分離し、Na2SO4上で乾燥、蒸発乾固させ、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1)で精製して、所望の生成物を白色固体(6.2g、64%)として得た。
【0181】
中間体3の合成:
化合物2(6.2g、25mmol)、ヨードベンゼン(6.12g、30mmol)、CuI(955mg、5.0mmol)、Cs2CO3(16.3g、50mmol)をTEOS(200ml)中に溶かした混合物を脱気し、窒素でパージした。結果として得られた混合物を140℃にて14時間撹拌し、室温に冷却した後、残渣をEtOAc(200ml)で希釈した。シリカゲル[50g、NH4F(100g)を水(1500ml)中に溶かした混液を、シリカゲル(500g、100~200メッシュ)に加えて予備調製したもの]上に95%EtOH(200ml)及びNH4F-H2Oを加えて、結果として得られた混合物を室温で2時間保持した。固化した物質を濾過し、EtOAcで洗浄した。濾液を蒸発乾固させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1)で精製して、黄色固体(3g、38%)を得た。
【0182】
中間体4の合成:
2規定NaOH(200ml)を、化合物3(3.0g、9.4mmol)をEtOH(200ml)中に溶かした溶液に加えた。混合物を60℃にて30分間撹拌した。溶媒を蒸発させた後、溶液を2規定HClで中和し、白色沈殿物を得た。懸濁液をEtOAc(2×200ml)で抽出し、有機層を分離して、水(2×100ml)、ブライン(2×100ml)で洗浄してから、Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去し、褐色固体(2.5g、92%)を得た。
【0183】
中間体6の合成:
化合物4(2.5g、8.58mmol)、化合物5(2.52g、12.87mmol)、HATU(3.91g、10.30mmol)、及びDIPEA(4.43g、34.32mmol)の混合物を、室温にて一晩撹拌した。反応混合物を濾過した後、濾液を蒸発乾固させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=2/1)で精製して、褐色固体(2g、54%)を得た。
【0184】
2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミドの合成:
化合物6(2.0g、4.6mmol)、水酸化ナトリウム(2規定、20mL)をMeOH(50ml)及びDCM(25ml)中に溶かした混合物を0℃にて10分間撹拌し、ヒドロキシルアミン(50%)(10ml)を0℃に冷却して、混合物に加えた。結果として得られた混合物を室温で20分間撹拌して、溶媒を除去した後、混合物を1M HClで中和して白色沈殿物を得た。粗生成物を濾過し、分取HPLCにより精製して、白色固体(950mg、48%)を得た。
【0185】
【0186】
中間体2の合成:
アニリン(3.7g、40mmol)、エチル2-クロロピリミジン-5-カルボキシレート1(7.5g、40mmol)、K2CO3(11g、80mmol)をDMF(100ml)中に溶かした混合物を脱気し、N2下で120℃にて一晩撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、EtOAc(200ml)で希釈してから、飽和ブライン(200ml×3)で洗浄した。有機層を分離し、Na2SO4上で乾燥、蒸発乾固させ、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1)で精製して、所望の生成物を白色固体(6.2g、64%)として得た。
【0187】
中間体3の合成:
化合物2(69.2g、1当量)、1-クロロ-2-ヨードベンゼン(135.7g、2当量)、Li2CO3(42.04g、2当量)、K2CO3(39.32g、1当量)、Cu(1当量45μm)をDMSO(690ml)中に溶かした混合物を脱気し、窒素でパージした。結果として得られた混合物を140℃にて36時間撹拌した。反応物を後処理して、93%の収率で化合物3を得た。
【0188】
中間体4の合成:
2規定NaOH(200ml)を、化合物3(3.0g、9.4mmol)をEtOH(200ml)中に溶かした溶液に加えた。混合物を60℃にて30分間撹拌した。溶媒を蒸発させた後、溶液を2規定HClで中和し、白色沈殿物を得た。懸濁液をEtOAc(2×200ml)で抽出し、有機層を分離して、水(2×100ml)、ブライン(2×100ml)で洗浄してから、Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去し、褐色固体(2.5g、92%)を得た。
【0189】
中間体5の合成:
本実施例のパートIの中間体6の合成に類似する手順を用いた。
【0190】
2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミドの合成:
本実施例のパートIの2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミドの合成に類似する手順を用いた。
【0191】
【0192】
ステップ(1):化合物11の合成:
エチル2-クロロピリミジン-5-カルボキシレート(7.0Kg)、エタノール(60Kg)、2-クロロアニリン(9.5Kg、2当量)及び酢酸(3.7Kg、1.6当量)を不活性雰囲気下で反応器に充填した。混合物を加熱還流した。少なくとも5時間後、反応物をHPLC分析に向けてサンプリングした(方法TM-113.1016)。分析で反応の完了が示された際に、混合物を70±5℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加えた。次いで、反応物を20±5℃に冷却し、混合物を更に2~6時間撹拌した。結果として得られた沈殿物を濾過し、エタノール(2×6Kg)及びヘプタン(24Kg)で洗浄する。ケークを減圧下50±5℃にて恒量になるまで乾燥させると、8.4Kgの化合物11(収率81%及び純度99.9%)が得られる。
【0193】
ステップ(2):化合物3の合成:
銅粉末(0.68Kg、1当量、75ミクロン未満)、炭酸カリウム(4.3Kg、1.7当量)、及びジメチルスルホキシド(DMSO、12.3Kg)を反応器(ベッセルA)に加えた。結果として得られた溶液を120±5℃に加熱し、別の反応器(ベッセルB)で、化合物11(2.9Kg)及びヨードベンゼン(4.3Kg、2当量)をDMSO(5.6Kg)中に溶かした溶液を、40±5℃に加熱してから、混合物を2~3時間かけてベッセルAに移した。HPLC分析(方法TM-113.942)で1%以下の化合物11が残存していることが判別されるまで、反応混合物を120±5℃にて8~24時間加熱した。
【0194】
ステップ(3):化合物4の合成:
工程(2)の混合物を90~100℃に冷却して、精製水(59Kg)を加えた。HPLCで1%以下の化合物3が残存していることが示されるまで、反応混合物を90~100℃にて2~8時間撹拌した。反応器を25℃に冷却し、反応混合物をセライト、次いで0.2ミクロンフィルターに通過して濾過し、濾液を集めた。濾液をメチルt-ブチルエーテルで2回抽出した(2×12.8Kg)。水層を0~5℃に冷却し、次いで温度を25℃未満に保持しながら6規定塩酸(HCl)でpH2~3に酸性化した。次に、反応物を5~15℃に冷却し、沈殿物を濾過して、冷水で洗浄した。ケークを45~55℃にて減圧下で恒量になるまで乾燥させ、90.3%のAUC純度で2.2kg(収率65%)の化合物4を得た。
【0195】
ステップ(4):化合物5の合成:
ジクロロメタン(40.3Kg)、DMF(33g、0.04当量)及び化合物4(2.3Kg)を反応フラスコに充填した。溶液を0.2μmフィルターに通して濾過し、フラスコに戻した。塩化オキサリル(0.9Kg、1当量)を30℃未満にて30~120分かけて添加漏斗で加えた。次いで、HPLC(方法TM-113.946)で反応の完了(化合物4≦3%)が確認されるまで、バッチを30℃未満で撹拌した。次に、ジクロロメタン溶液を濃縮し、残留した塩化アリルを40℃未満にて減圧下で除去した。HPLC分析で0.10%未満の塩化オキサリルが残存していることが示された際に、濃縮物を新しいジクロロメタン(24Kg)に溶解し、反応ベッセル(ベッセルA)に戻した。
【0196】
第2のベッセル(ベッセルB)に、メチル7-アミノヘプタン塩酸塩(化合物A1、1.5Kg、1.09当量)、DIPEA(2.5Kg、2.7当量)、4(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、42g、0.05当量)、及びDCM(47.6Kgs)を充填した。混合物を0~10℃に冷却し、温度を5℃~10℃に維持しながらベッセルA中の酸塩化物溶液をベッセルBに移した。反応物を5~10℃にて3~24時間撹拌し、その時点でHPLC分析で反応の完了が示された(方法TM-113.946、化合物4≦5%)。次いで、混合物を、1M HCl溶液(20Kg)を、精製水(20Kg)、7重炭酸ナトリウム(20kg)、精製水(20kg)、25%塩化ナトリウム溶液(20Kg)で抽出した。次いで、ジクロロメタンを40℃未満で真空蒸留し、イソプロピルアルコールで繰り返し追跡した。分析で1モル%未満のDCMが残存していることが示された際に、混合物を0~5℃に徐々に冷却し、0~5℃にて少なくとも2時間撹拌した。結果として得られた沈殿物を濾取し、冷イソプロピルアルコール(6.4Kg)で洗浄した。ケークをフィルター上で4~24時間吸引乾燥させてから、45~55℃にて減圧下で恒量になるまで更に乾燥させた。2.2Kg(収率77%)を、95.9%AUC純度法及び99.9重量%で単離した。
【0197】
ステップ(5):化合物(B)の合成:
塩酸ヒドロキシルアミン(3.3Kg、10当量)及びメタノール(9.6Kg)を反応器に充填した。結果として得られた溶液を0~5℃に冷却し、温度を0~10℃に維持しながら、25%ナトリウムメトキシド(11.2Kgs、11当量)をゆっくり加えた。いったん添加が完了したら、反応物を20℃にて1~3時間混合し、濾過して、濾過ケークをメタノール(2×2.1Kg)で洗浄した。濾液(ヒドロキシルアミン遊離塩基)を反応器に戻して0±5℃に冷却した。化合物5(2.2Kg)を加えた。反応が完了するまで反応物を撹拌した(方法TM-113.964、化合物5≦2%)。混合物を濾過し、水(28Kg)及び酢酸エチル(8.9Kg)を濾液に加えた。6規定HClを用いてpHを8~9に調整し、最大3時間撹拌した後、濾過した。濾過ケークを冷水(25.7Kg)で洗浄し、次いで減圧下で恒量まで乾燥させた。粗固体化合物(B)は、形態IV/パターンDであると判別された。
【0198】
粗製固体(1.87Kg)をイソプロピルアルコール(IPA、27.1Kg)に懸濁した。スラリーを75±5℃に加熱し、固体を溶解させた。化合物(B)の結晶(形態I/パターンA)を溶液に播種し、周囲温度に冷却した。結果として得られた沈殿物を1~2時間撹拌した後、濾過した。濾過ケークをIPA(2×9.5Kgs)ですすぎ、次に45~55℃にて減圧下で恒量になるまで乾燥させ、結晶性白色固体化合物(B)1.86kgを収率85%及び純度99.5%で得た(AUC%、表3のHPLC法)。
【0199】
【0200】
実施例2:HDAC酵素アッセイ
まず化合物BをDMSOで最終濃度の50倍に希釈して試験し、10.3倍希釈系列を作成した。化合物をアッセイ緩衝液(50mMのHEPES、pH7.4、100mMのKCl、0.001%のTween-20、0.05%のBSA、20μMのTCEP)中で最終濃度の6倍に希釈した。HDAC酵素(BPS Bioscience;San Diego,CAから購入されたもの)を、アッセイ緩衝液中で最終濃度の1.5倍に希釈した。0.05μMの最終濃度のトリペプチド基質及びトリプシンを、アッセイ緩衝液中で最終濃度の6倍に希釈した。これらのアッセイに使用した最終酵素濃度は、3.3ng/ml(HDAC1)、0.2ng/ml(HDAC2)、0.08ng/ml(HDAC3)及び2ng/ml(HDAC6)であった。使用した最終基質濃度は、16μM(HDAC1)、10μM(HDAC2)、17μM(HDAC3)及び14μM(HDAC6)であった。不透明な黒色384ウェルプレートのウェルに、5μlの化合物と20μlの酵素を二重に加えた。酵素及び化合物を共に室温にて10分間インキュベートした。5μlの基質を各ウェルに加え、プレートを60秒間振盪して、Victor 2マイクロタイタープレートリーダーに入れた。蛍光の発生を60分間モニターし、反応の線形速度を計算した。Graph Pad Prismを使用して4パラメータ曲線を当て嵌めることにより、IC50を算定した。化合物A及び化合物Bに関連するIC50については、表1を参照のこと。
【0201】
実施例3:ABT-199と化合物Bとの併用による、AML細胞株の生存率の相乗的低下
化合物Bは、ABT-199と相乗作用してAML細胞株の生存率を低下させる(
図1A~
図1C)。384ウェルプレート中で、およそのIC
50:IC
50を反映するように選択された一定の割合の化合物B及びABT-199を用い、MOLM-13、Kasumi-1及びMV-4-11細胞を72時間にわたって4回処置した。Calcusynソフトウェアを使用して、併用係数(CI)を計算した。各細胞株CI値:MOLM-13:CI=0.745;Kasumi-1:CI=0.442;MV-4-11:CI=0.779に関して、生存率の減分が推定50%であるときのCI値を計算した。CI<1は相乗作用を示す。それゆえ、化合物BとABT-199とを併用したことによって、試験された3つのAML細胞株の生存率がいずれも相乗的に低下した。
【0202】
実施例4:化合物BとABT-199(ベネトクラックス)との併用による、相乗的アポトーシスの誘発
AML細胞における単剤処置と比較して、化合物BとABT-199とを併用した場合、アポトーシスが更に上昇した(
図2A~
図2B)。MV-4-11及びHL-60細胞を、指示用量の化合物B単独、ABT-199(ベネトクラックス)単独、及び化合物Bとベネトクラックスとの併用にて48時間処置した。FACSを用いてアネキシンV陽性細胞を測定することにより、アポトーシスを評価した。化合物BとABT-199とを併用して処置した場合、いずれかの単剤での処置と比較して、アポトーシス細胞が相乗的に増加した。