(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】スチレン系共重合樹脂
(51)【国際特許分類】
C08F 212/04 20060101AFI20240809BHJP
C08F 220/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C08F212/04
C08F220/02
(21)【出願番号】P 2020017315
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】上宮田 源
(72)【発明者】
【氏名】金山 明弘
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104861105(CN,A)
【文献】特開2018-095848(JP,A)
【文献】特開2019-172867(JP,A)
【文献】特開昭60-181107(JP,A)
【文献】特開昭57-002311(JP,A)
【文献】WANG, J. et al.,Poly(styrene-ran-cinnamic acid) (SCA), an approach to modified polystyrene with enhanced impact toughness, heat resistance and melt strength,RSC Advances,2019年,vol.9,pp.39631-39639
【文献】NAYANATHARA, U. et al.,Synthesis, photodegradable and antibacterial properties of polystyrene-cinnamaldehyde copolymer film,Polymer Degradation and Stability,2018年,vol.155,pp.195-207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F212/00-212/36
C08F220/00-220/70
C08L 25/00- 25/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体単位と、以下の一般式(2)で表わされる桂皮酸系単量体単位とを有し、重量平均分子量が50000以上のスチレン系共重合樹脂。
【化1】
(上記一般式(2)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子
、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、R
3はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、bは1~5の整数を表す。式中の*は他の原子との結合手を表す。)
【請求項2】
前記スチレン系単量体単位及び前記桂皮酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位の含有量が5~95質量%である、請求項1に記載のスチレン系共重合樹脂。
【請求項3】
前記スチレン系単量体単位及び前記桂皮酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位の含有量が10~90質量%である、請求項1又は2に記載のスチレン系共重合樹脂。
【請求項4】
前記スチレン系単量体単位は、以下の一般式(1)で表わされる、請求項1~3のいずれか1項に記載のスチレン系共重合樹脂。
【化2】
(上記一般式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、aは1~5の整数を表す。式中の*は他の原子との結合手を表す。)
【請求項5】
一般式(3)で表わされる繰り返し単位を有する、請求項1~4のいずれかに記載のスチレン系共重合樹脂。
【化3】
(上記一般式(3)中、
R
1
及びR
2
はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ、シアノ基、又は置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、
R
4
及びR
5
はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、R
3
はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、n及びmはそれぞれ独立して重合度を表わし、a及びbはそれぞれ独立して、1~5の整数を表わす。)
【請求項6】
ガラス転移温度が106℃~160℃である、請求項1~5のいずれかに記載のスチレン系共重合樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系共重合樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は成形加工性に優れ、且つ比較的安価なことから、食品包装容器や、弁当、惣菜等の食品の容器包装材料、住宅の断熱材用の発泡ボード、拡散剤を入れた液晶テレビの拡散板等に広く用いられている。
【0003】
一方、地球温暖化防止ならびに枯渇資源である石油使用量低減の意識の高まりにより、従来の石油由来プラスチック材料からカーボンニュートラルな植物由来プラスチック材料への置き換えが検討されている。近年、コンビニエンスストアー等の業務用に使用する電子レンジの普及、及び電子レンジの使用時間の短縮のため、より高出力(短時間で、より高温になりやすい)の機器が使用されている。
【0004】
耐熱性の高いスチレン系樹脂としては、スチレン-メタクリル酸樹脂等があげられる。当該樹脂については、より耐熱性の高い樹脂を得るにはメタクリル酸の含量を増やすことが必要であり、この場合、メタクリル酸に起因するゲル化物の発生がしやすくなり、シート表面に外観不良が見られる場合がある。特許文献1には、スチレン-メタクリル酸樹脂が記載され、実施例では、重合原料液にオクチルアルコールを添加してゲル化を抑制する方法が記載されている。非特許文献1では、植物から採取可能な「桂皮酸」から誘導されるエステル類若しくはアミド若しくはアルデヒドとスチレンとを単官能の開始剤を利用して共重合することでガラス転移温度の高い共重合体を得る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-87332号公報
【文献】Biomacromolecules、20,192-203(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、樹脂の耐熱性及び外観の観点で不十分である。非特許文献1では数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwの双方が低いため成形体としての利用が困難である。したがって、耐熱性、外観双方に優れる樹脂が求められている。そこで、本発明は、耐熱性、外観、及び成形性に優れたスチレン系共重合樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意研究を進めた結果、スチレン類と桂皮酸誘導体とを共重合して得られた樹脂により、耐熱性、外観、及び成形性に優れる耐熱スチレン系樹脂が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]本発明は、スチレン系単量体単位と、桂皮酸系単量体単位とを有し、重量平均分子量が50000以上のスチレン系共重合樹脂である。
【0009】
「2」本発明において、前記スチレン系単量体単位及び前記桂皮酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位の含有量が5~95質量%であることが好ましい。
【0010】
「3」本発明において、前記スチレン系単量体単位及び前記桂皮酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位の含有量が10~90質量%であることが好ましい。
【0011】
「4」本発明において、前記スチレン系単量体単位は、以下の一般式(1)で表わされることが好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、aは1~5の整数を表す。式中の*は他の原子との結合手を表す。)
「5」本発明において、前記桂皮酸系単量体単位は、一般式(2)で表わされることが好ましい。
【化2】
(上記一般式(2)中、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、bは1~5の整数を表す。式中の*は他の原子との結合手を表す。)
「6」本発明において、一般式(3)で表わされる繰り返し単位を有することが好ましい。
【化3】
(上記一般式(3)中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、n及びmはそれぞれ独立して重合度を表わし、a及びbはそれぞれ独立して、1~5の整数を表わす。)
【0012】
「7」本発明において、ガラス転移温度が106℃~160℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、耐熱性、外観、及び成形性に優れたスチレン系共重合樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[スチレン系単量体単位と桂皮酸系単量体単位との共重合樹脂及び当該共重合樹脂を含む樹脂組成物]
本発明の一様態は、スチレン系単量体単位、桂皮酸系単量体単位を有する共重合樹脂であり、重量平均分子量が50000以上のスチレン系共重合樹脂を提供する。
これにより、耐熱性、外観、及び成形性に優れたスチレン系共重合樹脂を提供できる。
【0015】
<スチレン系単量体単位と桂皮酸系単量体単位とを有するスチレン系共重合樹脂>
本実施形態において、スチレン誘導体と桂皮酸誘導体とから形成されたスチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位及び桂皮酸単量体単位を含む共重合体であり、その分子量は50000以上である。
【0016】
<<スチレン系単量体単位>>
本実施形態におけるスチレン系単量体単位としては、以下の一般式(1)で表わされることが好ましい。
【化4】
(上記一般式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し。式中の*は他の原子との結合手を表す。)
【0017】
上記一般式(1)中、R1は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はフェニル基が好ましく、水素原子、置換若しくは無置換の炭素原子数1から8までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はフェニル基が好ましく、より好ましくは水素原子、置換若しくは無置換の炭素原子数1から3までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。
【0018】
上記一般式(1)中、R2は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から8までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から8までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から8までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から8までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基がより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、無置換の炭素原子数1から3までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は無置換の炭素原子数1から3までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基がさらに好ましい。
【0019】
上記一般式(1)中、アルキル基又はアルコキシ基が置換される場合の置換基Sとしては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、水酸基、炭素原子数1~3の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、又はシアノ基が好ましい。
【0020】
上記一般式(1)中、aは、1~5の整数を表し、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。
【0021】
本明細書における「炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
本明細書における「炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキソキシ基、n-ヘプトキシ基、n-オクトキシ基、2-エチルヘキソキシ基等が挙げられる。
【0023】
本実施形態において、スチレン系単量体単位を形成するスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、インデン等のスチレン誘導体が挙げられる。工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本明細書における「スチレン系単量体単位」とは、スチレン系単量体由来の繰り返し単位を意味し、より詳細には、スチレン系単量体が重合反応又は架橋反応により、当該単量体中の不飽和二重結合が単結合になった構造単位をいう。
【0025】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂中のスチレン系単量体単位、及び桂皮酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン系単量体の含有量は、5~95質量%であることが好ましく、より好ましくは10~90質量%、さらに好ましくは20~85質量%、よりさらに好ましくは30~80質量%である。この含有量が5質量%未満では、樹脂の流動性が低下し、他方、95質量%を超えると、桂皮酸系単量体単位を所望量存在させることができないため、所望の効果が得られない。
【0026】
<<桂皮酸系単量体単位>>
本実施形態における桂皮酸系単量体単位は、以下の一般式(2)で表わされることが好ましい。
【化5】
(上記一般式(2)中、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表すものとする。bは1~5の整数を表わす。)
【0027】
上記一般式(2)中、R3は、水素原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状のアルコキシ基、又はアミノ基が好ましく、水素原子、水酸基、又は置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状のアルコキシ基、又はアミノ基がより好ましく、水酸基又は置換若しくは無置換の炭素原子数1から8までの直鎖状のアルコキシ基がさらに好ましい。
【0028】
上記一般式(2)中、R4は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、又は置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から8までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基がより好ましく、水素原子、置換若しくは無置換の炭素原子数1から3までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基がさらに好ましい。
【0029】
上記一般式(2)中、R5は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1から10までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素原子数1から8までの直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は置換若しくは無置換の炭素原子数1から3までの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が好ましい。
【0030】
上記一般式(2)中、アルキル基が置換される場合の置換基Lとしては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が好ましい。
【0031】
上記一般式(2)中、bは、1~5の整数を表し、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。
【0032】
上記桂皮酸系単量体としては、例えば、桂皮酸、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、桂皮酸プロピル、桂皮酸2エチルヘキシル、パラメチル桂皮酸メチル、パラメトキシ桂皮酸メチル、桂皮酸アミド、桂皮アルデヒド等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。耐熱性の向上効果が大きく、40度にて液状でハンドリング性に優れることから桂皮酸メチル、桂皮酸エチルが好ましい。
【0033】
本明細書における「桂皮酸系単量体単位」とは、桂皮酸系単量体由来の繰り返し単位を意味し、より詳細には、桂皮酸系単量体が重合反応又は架橋反応により、当該単量体中の不飽和二重結合が単結合になった構造単位をいう。
【0034】
本実施形態において、桂皮酸系単量体単位は、耐熱性の向上に寄与する。前記共重合樹脂中のスチレン系単量体単位、及び桂皮酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、桂皮酸系単量体単位の含有量は、5~95質量%であることが好ましく、より好ましくは10~90質量%、さらに好ましくは15~80質量%、よりさらに好ましくは20~70質量%の範囲である。この含有量が5質量%未満では耐熱性向上の効果の発現が不十分であり、他方、95質量%を超えると、前記共重合樹脂中の流動性が低下し成形性の悪化を招来するため好ましくない。
【0035】
<<その他の単量体単位>>
本発明に係るスチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位と、桂皮酸系単量体とを、必須に含む共重合体であり、必要により、不飽和カルボン酸系単量体単位及び/又は不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を含有する共重合体であることが好ましい。
【0036】
――不飽和カルボン酸系単量体単位――
本発明に係るスチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位と、桂皮酸系単量体と、不飽和カルボン酸系単量体単位と、を含有する共重合体であることが好ましい。本発明に係るスチレン系樹脂中に不飽和カルボン酸系単量体単位が存在すると、耐熱性を向上させるという効果をさらに奏する。
【0037】
本明細書において「不飽和カルボン酸系単量体単位」は、不飽和カルボン酸系単量体由来の繰り返し単位をいう。当該不飽和カルボン酸系単量体としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0038】
本発明に係るスチレン系樹脂中における不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量はスチレン系単量体単位、桂皮酸系単量体、及びその他単量体単位の合計量を(100質量%)に対して、1~8質量%であることが好ましい。
【0039】
不飽和カルボン酸系単量体単位が共重合体中に1質量%以上存在すると、耐熱性を向上させるという効果を奏する。不飽和カルボン酸系単量体単位が共重合体中に8質量%以下存在すると、耐熱性と流動性のバランスに優れるという効果を奏する。
【0040】
――不飽和カルボン酸エステル系単量体単位――
本発明に係るスチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位と、桂皮酸系単量体と、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位と、を含有する共重合体であることが好ましい。
【0041】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位以外のその他の単量体単位を、所望の効果を損なわない範囲で更に含有することができるが、典型的には、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位からなる。その他の単量体単位の含有量は、スチレン系共重合樹脂100質量%に対して、0~10質量%としてよい。
【0042】
スチレン系共重合樹脂中のスチレン系単量体単位、桂皮酸系単量体単位、及び任意成分の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量は、それぞれ、前記共重合樹脂を核磁気共鳴(1H-NMR)測定装置で測定したときのスペクトルの積分比から求めることができる。
【0043】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50000以上であり、5万~50万であることが好ましい。Mwは、より好ましくは5万~40万、更に好ましくは6万~30万である。Mwが5万~50万であると、成形性と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られる傾向にある。スチレン系共重合樹脂のMn、及びMwは、ゲルパーミエイション・クロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定することができる。
【0044】
本発明に係るスチレン系共重合樹脂は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体が挙げられ、ランダム共重合体がより好ましい。
【0045】
本発明に係るスチレン系共重合樹脂は、一般式(3)で表わされる繰り返し単位を有することが好ましい。
【化6】
(上記一般式(3)中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5、並びにa及びbの好ましい条件は、上述した通りであり、上記一般式(3)中、n及びmはそれぞれ独立して、重合度を表わし、500~5000が好ましく、500~4000がより好ましく、600~3000がさらに好ましい。)
【0046】
本実施形態における好適なスチレン系共重合樹脂の一例としては、上記一般式(3)で表わされる繰り返し単位を有し、且つ上記一般式(3)中、R1及びR4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表し、R2及びR5はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R3は、水酸基、又は炭素原子数1~10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を表し、a及びbはそれぞれ独立して、1~3の整数を表す、スチレン系共重合樹脂が好ましい。
【0047】
上記一般式(3)において、n/(n+m)が0.05~0.90であることが好ましい。また、別の観点では、n/(n+m)が0.10~0.85であることが好ましい。さらに、上記一般式(3)において、m/(n+m)が0.10~0.95であることが好ましい。また、別の観点では、m/(n+m)が、0.15~0.90であることが好ましい。そして、本発明に係るスチレン系共重合樹脂が、一般式(3)で表わされる繰り返し単位から構成される二元共重合体である場合は、n/(n+m)とm/(n+m)との合計が概ね1になることが好ましい。
【0048】
一方、本発明に係るスチレン系共重合樹脂が、一般式(3)で表わされる繰り返し単位と、上記の不飽和カルボン酸系単量体単位及び/又は不飽和カルボン酸エステル系単量体単位と、を有する3以上の多元共重合体である場合において、不飽和カルボン酸系単量体単位の重合度をpとし、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位をqとすると、
n/(n+m+p+q)は、0.05~0.80が好ましい。そして、m/(n+m+p+q)は、0.05~0.80が好ましい。また、p/(n+m+p+q)は、0.01~0.30が好ましく、q/(n+m+p+q)は、0.01~0.30が好ましい。
【0049】
<スチレン系共重合樹脂の製造方法>
スチレン系共重合樹脂の重合方法については、特に制限はないが、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とからなる。
【0050】
スチレン系共重合樹脂の重合方法については、特に制限はないが、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とからなる。
【0051】
以下、本実施形態のスチレン系共重合樹脂の重合方法についてより詳細に説明する。
スチレン系共重合樹脂を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4ービス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート等のモノカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等が挙げられる。分解速度と重合速度との観点から、とりわけt-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネートならびに1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0052】
スチレン系共重合樹脂の重合時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、αメチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等が挙げられる。
【0053】
スチレン系共重合樹脂の重合方法として、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等、アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば、脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、30質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が30質量部以下であれば、重合速度の低下、及び得られる樹脂の機械的強度の低下が抑制されるため好ましい。重合前に、全単量体100質量部に対して5~30質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0054】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂には、スチレン系樹脂において使用が一般的な各種添加剤を、適宜添加してもよい。例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、ゴム状重合体粒子(スチレン系共重合樹脂を内包してもよい)、鉱油等が挙げられる。また、スチレン-ブタジエンブロック共重合体やMBS樹脂等の補強材についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。これらの各種添加剤の含有量は、スチレン系共重合樹脂100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。添加剤の配合の方法については特に規定はないが、例えば、共重合体の重合時に添加して重合する方法や樹脂組成物を得る際、ブレンダーで予め添加剤を混合し、押出機やバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
【0055】
スチレン系共重合樹脂を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、用いる重合方法に応じて適宜選択すればよい。例えば、塊状重合による場合には、完全混合型反応器を1基又は複数基連結した重合装置を用いることができる。
【0056】
また、脱揮工程についても特に制限はなく、塊状重合で行う場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。脱揮方法としては、例えば、加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、又は揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0057】
「スチレン系樹脂の製造方法」
本発明に係るスチレン系共重合樹脂の製造方法の一例について、以下説明する。
本発明に係るスチレン系共重合樹脂の好ましい製造方法は、スチレン系単量体と、桂皮酸系単量体と、を混合して混合溶液を調製する工程と、前記混合溶液を所定の重合条件で重合する工程とを含む。
【0058】
<<所定の重合条件>>
上述した所定の重合条件とは、混合溶液を反応器にフィードし、その混合溶液を60~200度にする工程を含み、反応器中は窒素等の不活性ガス雰囲気若しくは空気雰囲気でもよい。重合は熱重合、開始剤重合、光重合のいずれでもよく、光重合の場合の好ましい照射条件の波長は150~400nmである。重合の反応活性種はラジカル、アニオン、カチオンのいずれでもよく、望ましくはラジカルである。
【0059】
<スチレン系共重合樹脂を含む組成物>
本発明に係るスチレン系共重合樹脂は、1種単独の樹脂としてもよく、2種以上を組み合わせた混合樹脂としてもよい。混合樹脂の場合、スチレン系共重合樹脂の諸物性は、混合樹脂について定められてよい。混合樹脂は、2種以上の樹脂を混練することにより得ることができる。
【0060】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を含む組成物は、上記スチレン系共重合樹脂以外に、一般的な各種添加剤を、公知の作用効果を達成するために添加してもよい。例えば安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、ゴム状重合体粒子(スチレン系共重合樹脂を内包してもよい)、鉱油等があげられる。また、スチレン-ブタジエンブロック共重合体又はMBS樹脂等の補強材についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。配合の方法については特に規定はないが、例えば、重合時に添加して重合する方法、又は重合後溶融混練する前に、ブレンダーであらかじめ添加剤を混合し、その後、押出機又はバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
【0061】
本実施形態において、上述のようスチレン系共重合樹脂を含む組成物には各種添加剤を添加させることができるが、スチレン系共重合樹脂を含む組成物中のスチレン系共重合樹脂の含有量は、特に限定されないが95質量%以上であることが好ましく、より好ましくは97質量%であり、さらに好ましくは99質量%以上である。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例及び比較例に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されると解されるべきでない。なお、実施例及び比較例における樹脂の分析、評価方法は、下記のとおりである。
【0063】
[分析・評価方法]
(1)ガラス転移温度の測定
得られたスチレン系共重合樹脂0.1gを5gのトルエンに溶解し、その溶液を20mlのメタノール中に0.2ml/secの速度で滴下した。沈殿物をろ過して回収した。この操作を2回繰り返し、沈殿物風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥した。そして、得られた乾燥後の共重合樹脂のTgを(株)島津製作所製のDSC-60を使って、JIS K7121に準拠して求めた。
具体的には、窒素下、10℃/minで室温から200℃まで昇温し、その後10℃/minで室温まで戻し、再び10℃/minで200℃まで昇温した。2度目の昇温過程で測定されるガラス転移温度をTgとした。
【0064】
(2)重量平均分子量、数平均分子量、及びZ平均分子量の測定
得られたスチレン系共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)、スチレン系共重合樹脂の数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mz/Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
試料調製 :テトラヒドロフランにスチレン系共重合樹脂を約0.05質量%となるよう溶解
測定条件
機器 :TOSOH HLC-8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM-H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35mL/min
検出器 :RI 、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
【0065】
(3)スチレン系単量体単位、桂皮酸系単量体単位、及び任意成分であるその他単量体単位の含有量の測定
スチレン系共重合樹脂中のスチレン系単量体単位、桂皮酸系単量体単位、及び任意成分であるその他単量体単位の含有量(質量%)は、核磁気共鳴(1H-NMR)装置で測定したスペクトルの積分比から、組成比を定量した。試料調製:スチレン系共重合樹脂75mgをd3-クロロホルム 0.75mLに室温で溶解した。
測定機器:日本電子(株)製、JNM ECA-500
測定条件:測定温度60℃、観測核1H、積算回数256回、繰返し時間45秒
【0066】
(4)成形性の評価
200℃にて得られたスチレン系共重合樹脂を、長辺6cm×短辺1.5cm×厚み0.3cmの空間を有する圧縮成形用金型に入れアルミ板で挟み、それを200℃で予熱を4分行い、続いて200℃、10MPaで1分間加圧し、その後水冷した圧縮板で冷却を2分間行うことにより圧縮成形を行った。そして、取出しの際に成形片に割れが生じたものは、成形性を不良(×)とし、割れなく取り出せた際は成形性を良(○)として評価を行った。
【0067】
(5)ゲル化の評価
スチレン系共重合樹脂の外観不良の原因である樹脂中のゲルは、脱揮工程若しくは押し出し機内での長時間滞留部で脱水縮合により生成される。評価用促進試験として、真空ポンプを備えた乾燥機中にて、サンプルとして5×102Paで230℃、6時間加熱したスチレン系共重合樹脂を0.1g取り、テトラヒドロフラン10mLに溶解させ24時間静置し、不要物の有無を目視にて観測した。
【0068】
[実施例1]
重合原料組成液をスチレン39.98質量部、桂皮酸40質量部、N,N-ジメチルホルムアミド20質量部、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(以下パーブチルI)0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系共重合樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系共重合樹脂Aを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。
【0069】
[実施例2]
重合原料組成液をスチレン9.98質量部、桂皮酸メチル90質量部、パーブチルI 0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系共重合樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系共重合樹脂Bを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例3]
重合原料組成液をスチレン49.98質量部、桂皮酸メチル50質量部、パーブチルI 0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系共重合樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系共重合樹脂Cを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。
【0071】
[実施例4]
重合原料組成液をスチレン99.98質量部、桂皮酸エチル90質量部、パーブチルI 0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系共重合樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系共重合樹脂Dを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。
【0072】
[実施例5]
重合原料組成液をスチレン9.98質量部、桂皮酸エチル90質量部、パーブチルI 0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系共重合樹脂を風乾後、160℃ 、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系共重合樹脂Eを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。
【0073】
[実施例6]
重合原料組成液をスチレン49.98質量部、桂皮酸イソプロピル50質量部、パーブチルI 0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系共重合樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系共重合樹脂Fを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。
【0074】
[実施例7]
重合原料組成液をスチレン89.96質量部、桂皮酸メチル10質量部、パーブチルI 0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系樹脂Gを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例8]
重合原料組成液をスチレン9.98質量部、桂皮酸メチル45質量部、桂皮酸エチル45質量部、パーブチルI 0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系共重合樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系共重合樹脂Hを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
重合原料組成液をスチレン99.98質量部、パーブチルI 0.02質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系樹脂Iを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。桂皮酸系単量体が含まれていないため、スチレン系樹脂HのTgは105℃にであった。
【0077】
[比較例2]
重合原料組成液をスチレン93.96質量部、桂皮酸メチル6質量部、パーブチルI 0.04質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系樹脂Jを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。ガラス転移温度は107℃と耐熱性は向上したが、開始剤量を増加させたため、得られたスチレン系樹脂Iの重量平均分子量Mwが45000まで低下し、圧縮成形時に割れが生じ成形が不良であった。
【0078】
[比較例3]
重合原料組成液をスチレン49.96質量部、桂皮酸メチル50質量部、パーブチルI 0.04質量部を混合溶解させ、攪拌機を備えた1.0Lのフラスコに加え、100℃に設定したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら所定時間反応経過後オイルバスから取り出した。室温まで冷却後全量をメタノールに沈殿させ沈殿物をろ過して回収した。これを500mLのTHFに溶解しメタノールに再度沈殿させ、得られたスチレン系樹脂を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥させ、スチレン系樹脂Kを製造した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。開始剤量を増加させたため、得られたスチレン系樹脂Kの重量平均分子量Mwが41000まで低下し、圧縮成形時に割れが生じ成形が不良であった。
【0079】
[比較例4]
重合原料組成液をスチレン70.8質量部、メタクリル酸5.2質量部、エチルベンゼン23.97質量部、パーヘキサC0.03質量部を混合溶解させ、攪拌機を備え、温度コントロール可能な4.2Lの完全混合型反応器から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズし、スチレン系樹脂Lを製造した。押出機の温度は200~250℃に設定した。上述の製造法によって得られた共重合組成及び評価結果を表1に示す。スチレン系樹脂LのTgは123℃であったが、加熱試験にてゲルが発生した。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、耐熱性、機械的強度、外観、及び透明性に優れるため、非発泡及び発泡の押出板、シート、更にこれらの二次加工による成形品、例えば、射出成形等による成形品(例えば、弁当、惣菜等の食品の容器包装材料)の製造に好適に使用可能である。