(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】複合フィルム、包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240809BHJP
B65D 81/34 20060101ALN20240809BHJP
【FI】
B32B27/00 D
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2020122943
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼村 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】小野 栞
(72)【発明者】
【氏名】川取 康博
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124859(JP,A)
【文献】特開2015-151187(JP,A)
【文献】特開2017-109402(JP,A)
【文献】特開2005-219800(JP,A)
【文献】特開2009-057061(JP,A)
【文献】実開昭56-138075(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
81/32-81/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層と、がこの順で積層された複合フィルムであって、
前記基材層と前記ヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm以上であり、
前記基材層と前記ヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm未満であ
り、
前記複合フィルムは、前記ヒートシール層の側から施され、前記熱軟化性接着樹脂層に到達しているハーフカットを有し、かつ
前記基材層と前記ヒートシール層との間に、前記熱軟化性接着樹脂層以外の接着層を有しない、
複合フィルム。
【請求項2】
前記熱軟化性接着樹脂層は、JIS Z0237に準じた粘着強度が、1.0N/25mm以上である、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記ヒートシール層が互いに熱融着されて形成されたシール部を備える、請求項
1又は2に記載の複合フィルムから形成された包装袋であって、
前記ハーフカットは、前記包装袋の内側から外側まで、前記シール部を横断する、包装袋。
【請求項4】
電子レンジ用である、請求項
3に記載の包装袋。
【請求項5】
容器本体の上端開口部を密封するための、請求項
1又は2に記載の複合フィルムから形成された蓋材であって、
前記密封は、前記上端開口部を前記蓋材が被覆するように、前記ヒートシール層が前記容器本体に熱融着されて、開封可能な接合部を形成するものであり、
前記ハーフカットは、前記接合部において、前記容器本体の内側から外側まで横断するように配置されている、蓋材。
【請求項6】
電子レンジ用である、請求項
5に記載の蓋材。
【請求項7】
容器本体と、
前記容器本体の上端開口部を密封するための、請求項
1又は2に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、
を含む開封可能な蓋付き容器であって、
前記容器本体の前記上端開口部は、フランジを有し、
前記ヒートシール層が前記フランジに熱融着されて、開封可能な接合部を形成し、
前記ハーフカットは、前記容器本体の内側から外側まで、前記接合部を横断する、
開封可能な蓋付き容器。
【請求項8】
電子レンジ用である、請求項
7記載の蓋付き容器。
【請求項9】
請求項
1又は2に記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記ヒートシール層を含むシートに、ロータリーダイカッターにより、前記ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施す、ハーフカット作製工程と、
前記ハーフカット作製工程の後に、前記ヒートシール層を含むシートに、前記基材層及び/又は前記熱軟化性接着樹脂層を積層する積層工程と、を備える、
複合フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルム、包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、意図した位置から蒸気抜き可能な、電子レンジ用パウチが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パウチの包装材料として、基材層、熱軟化性層、及びヒートシール層が、この順で積層された積層体が提案されている。そして、積層体のヒートシール層側からハーフカットを施し、電子レンジで加熱調理したときに、ヒートシール層同士が熱融着されたヒートシール部において、当該ハーフカットを通して蒸気を通過させることで、パウチから蒸気抜きするとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された包装材料は、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性樹脂層以外に、接着層を有していた。具体的には、特許文献1に記載された熱軟化性樹脂層は、ハーフカットが施された領域のみに配置されており、熱軟化性樹脂層は、接着層の中に点在して埋め込まれる状態となっていた。
【0006】
このため、特許文献1に記載された包装材料は、積層体の製造工程が複雑になるばかりか、コストも大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性を有する樹脂層の1層のみを配置した場合であっても、従来と同等の蒸気抜き性能を実現することのできる、複合フィルム、当該複合フィルムから形成された包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、包装材料となる複合フィルムの熱軟化性樹脂層として、基材層とヒートシール層との間の特定温度におけるラミネート強度が、特定の範囲となるものを適用すれば、従来と同等の蒸気抜き性能を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0009】
《態様1》
少なくとも、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層と、がこの順で積層された複合フィルムであって、
前記基材層と前記ヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm以上であり、
前記基材層と前記ヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm未満である、
複合フィルム。
《態様2》
前記熱軟化性接着樹脂層は、JIS Z0237に準じた粘着強度が、1.0N/25mm以上である、態様1に記載の複合フィルム。
《態様3》
前記複合フィルムは、前記ヒートシール層の側から施され、前記熱軟化性接着樹脂層に到達しているハーフカットを有する、態様1又は2に記載の複合フィルム。
《態様4》
前記ヒートシール層が互いに熱融着されて形成されたシール部を備える、態様3に記載の複合フィルムから形成された包装袋であって、
前記ハーフカットは、前記包装袋の内側から外側まで、前記シール部を横断する、包装袋。
《態様5》
電子レンジ用である、態様4に記載の包装袋。
《態様6》
容器本体の上端開口部を密封するための、態様3に記載の複合フィルムから形成された蓋材であって、
前記密封は、前記上端開口部を前記蓋材が被覆するように、前記ヒートシール層が前記容器本体に熱融着されて、開封可能な接合部を形成するものであり、
前記ハーフカットは、前記接合部において、前記容器本体の内側から外側まで横断するよう配置されている、蓋材。
《態様7》
電子レンジ用である、態様6に記載の蓋材。
《態様8》
容器本体と、
前記容器本体の上端開口部を密封するための、態様3に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、
を含む開封可能な蓋付き容器であって、
前記容器本体の前記上端開口部は、フランジを有し、
前記ヒートシール層が前記フランジに熱融着されて、開封可能な接合部を形成し、
前記ハーフカットは、前記容器本体の内側から外側まで、前記接合部を横断する、
開封可能な蓋付き容器。
《態様9》
電子レンジ用である、態様8記載の蓋付き容器。
《態様10》
態様3に記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記ヒートシール層を含むシートに、ロータリーダイカッターにより、前記ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施す、ハーフカット作製工程と、
前記ハーフカット作製工程の後に、前記ヒートシール層を含むシートに、前記基材層及び/又は前記熱軟化性接着樹脂層を積層する積層工程と、を備える、
複合フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合フィルムによれば、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性を有する樹脂層の1層のみを配置した構成であっても、従来と同等の蒸気抜き性能を有する、パウチ等の包装袋や、開封可能な容器等を作製することができる。
【0011】
また、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性接着樹脂層以外に接着層を配置しない構成とした場合には、複合フィルムの製造工程を簡易なものとすることができるため、生産能力及び生産コストに寄与することができる。
【0012】
更に、必要となる箇所にハーフカットを備えさせることによって、電子レンジ等による加熱に際して、意図した位置から蒸気抜きを実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る包装袋を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る包装袋が、蒸気抜きするときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《複合フィルム》
本発明の複合フィルムは、少なくとも、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層と、がこの順で積層された複合フィルムであり、基材層とヒートシール層とが特定のラミネート強度を有する。
【0015】
本発明の複合フィルムは、基材層とヒートシール層とが特定のラミネート強度を有するようにする熱軟化性接着樹脂層を備えるため、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性接着樹脂層の1層のみを配置した構成であっても、従来と同等の蒸気抜き性能を有する、パウチ等の包装袋や、開封可能な容器等を作製することができる。
【0016】
また、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性接着樹脂層以外に接着層を配置しない構成とした場合には、複合フィルムの製造工程を簡易なものとすることができるため、生産能力及び生産コストに寄与することができる。
【0017】
更に、必要となる箇所にハーフカットを備えさせることによって、電子レンジ等による加熱に際して、意図した位置から蒸気抜きを実施することができる。
【0018】
《複合フィルムの構成》
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルムの構成について説明する。
図1に、本発明の複合フィルムの一実施形態に係る断面図を示す。
【0019】
図1に示される本発明の複合フィルムの一実施形態に係る複合フィルム10は、基材層1と、基材層1の内側に積層配置された熱軟化性接着樹脂層2と、熱軟化性接着樹脂層2の内側に積層配置されたヒートシール層3と、を備える。
【0020】
本発明の複合フィルムは、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層と、を必須の構成として含み、これらがこの順で積層されている。本発明においては、基材層、熱軟化性接着樹脂層、及びヒートシール層以外に、任意の層を備えていてもよく、任意の層としては、例えば、バリア性を付与するためのバリア層や、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0021】
図1に示される複合フィルム10は、本発明において必須の構成である、基材層1、熱軟化性接着樹脂層2、及びヒートシール層3のみを備える態様であるが、例えば、基材層1、熱軟化性接着樹脂層2、ヒートシール層3との間や、これらの層を含む積層体の外側に、これら以外の層が存在していてもよい。
【0022】
本発明の複合フィルムを構成するそれぞれの層の厚み等は、複合フィルムの用途等に応じて、適宜決定することができる。
【0023】
<基材層>
基材層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。
【0024】
本発明の複合フィルムは、基材層、熱軟化性接着樹脂層、及びヒートシール層とが、この順で積層されているため、基材層は、例えば包装袋や包装体等の構造体を形成したときに、構造体の外層となる。このため、基材層は、最内層となるヒートシール層を熱融着して構造体を形成する時の保護層となりうる。また、内容物の表示等のための印刷を施すための印刷層ともなりうる。
【0025】
基材層を構成する材料としては、樹脂等、特に保護層となり、印刷が可能となる樹脂等であれば、特に限定されるものではない。一般的に用いられている樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のポリオレフィン、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0026】
基材層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0027】
なお、基材層は、予め成形されたフィルムから作製されることが好ましい。基材層となるフィルムは、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0028】
また、基材層となるフィルムには、アルミニウム等の金属や、酸化珪素、酸化アルミニウム等の酸化物が蒸着されていてもよい。
【0029】
更に、基材層となるフィルムは、単層であっても、複層からなる積層体となっていてもよい。
【0030】
<熱軟化性接着樹脂層>
熱軟化性接着樹脂層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。熱軟化性接着樹脂層は、基材層とヒートシール層との間に配置される。
【0031】
本発明の複合フィルムは、基材層とヒートシール層とが特定のラミネート強度を有するようにする熱軟化性接着樹脂層を備えていることで、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性接着樹脂層の1層のみを配置した構成であっても、従来と同等の蒸気抜き性能を有する、パウチ等の包装袋や、開封可能な容器等を作製することができる。
【0032】
また、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性接着樹脂層以外に接着層を配置しない構成とした場合には、複合フィルムの製造工程を簡易なものとすることができるため、生産能力及び生産コストに寄与することができる。
【0033】
(熱軟化性接着樹脂)
熱軟化性接着樹脂層の材料となる熱軟化性接着樹脂としては、特に限定されるものではなく、基材層とヒートシール層とが、後記する特定のラミネート強度を有するようにできるものであればよい。
【0034】
例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
市販の材料をそのまま適用することも可能であり、例えば、LX-500(DIC株式会社)、エリーテル(登録商標)XP-1648-45EA(ユニチカ株式会社)、TM-396(東洋モートン株式会社)等が挙げられる。
【0036】
(ラミネート強度)
本発明の複合フィルムは、基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度が、1.5N/15mm以上であり、基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度が、1.5N/15mm未満である。
【0037】
基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度が、1.5N/15mm以上であることにより、本発明の複合フィルムから形成された構造体は、常温付近で十分な強度を有し、保管及び取り扱いに際して基材層とヒートシール層との間での剥離等が発生しない。
【0038】
基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.8N/15mm以上、2.0N/15mm以上、2.4N/15mm以上、2.8N/15mm以上、又は3.0N/15mm以上であってよい。
【0039】
一方で、基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度は、6.0N/15mm以下、5.0N/15mm以下、4.5N/15mm以下、4.0N/15mm以下、3.5N/15mm以下、又は3.0N/15mm以下であってよい。
【0040】
また、基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度が、1.5N/15mm未満であることにより、本発明の複合フィルムから形成された構造体が加熱された場合に、熱軟化性接着樹脂層の中に空間が形成され易くなり、当該空間を通して蒸気を移動させることで、従来と同等の蒸気抜き性能を発揮することができる。
【0041】
基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度は、1.2N/15mm以下、1.0N/15mm以下、0.8N/15mm以下、0.5N/15mm以下、0.2/15mm以下、0.1/15mm以下、又は0.05N/15mm以下であってよい。
【0042】
一方で、基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度は、0.01N/15mm以上、0.05N/15mm以上、0.1N/15mm以上、0.2N/15mm以上、0.3N/15mm以上、0.4N/15mm以上、又は0.5N/15mm以上であってよい。
【0043】
本発明の複合フィルムは、基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度が、70℃におけるラミネート強度より大きいものなっている。すなわち、本発明の複合フィルムが電子レンジ等で加熱されると、基材層とヒートシール層との間のラミネート強度は小さくなり、軟化性樹脂層の中に空間を形成し易くなる。
【0044】
本発明の複合フィルムは、基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度が、70℃におけるラミネート強度より大きいものなっていることで、電子レンジ等による加熱によって、熱軟化性接着樹脂層内に空間を形成し、形成した空間を通して蒸気を移動させることができるようになる。
【0045】
(粘着強度)
熱軟化性接着樹脂層は、JIS Z0237に準じた粘着強度が、1.0N/25mm以上であることが好ましい。
【0046】
熱軟化性接着樹脂層は、JIS Z0237に準じた粘着強度が、1.0N/25mm以上であれば、隣接する層との十分な接着性を有するため、本発明の複合フィルムから形成された構造体の保管時、及び取り扱い時において、剥離等の問題を回避することができる。
【0047】
また、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性接着樹脂層以外に、接着層を存在させる必要がなくなるため、複合フィルムの製造工程を簡易なものとすることができ、生産能力及び生産コストに寄与することができる
【0048】
熱軟化性接着樹脂層のJIS Z0237に準じた粘着強度は、1.5N/25mm以上、2.0N/25mm以上、2.5N/25mm以上、3.0N/25mm以上、3.5N/25mm以上、4.0N/25mm以上、又は4.5N/25mm以上であってよい。
【0049】
一方で、熱軟化性接着樹脂層のJIS Z0237に準じた粘着強度は、10.0N/25mm以下、9.0N/25mm以下、8.0N/25mm以下、7.0N/25mm以下、6.0/25mm以下、5.0/25mm以下、又は4.0N/25mm以下であってよい。
【0050】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。
【0051】
ヒートシール層は、例えば包装袋や包装体等の構造体を形成する際に、熱融着される層となる。このため、ヒートシール層は、複合フィルムの最内層となるように配置する。
【0052】
ヒートシール層を構成する材料としては、熱接着が可能であり、成形された構造体に十分なシール強度を付与できるものであれば、特に限定されるものではない。公知の材料を適用することができ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0053】
例えば、内容物が充填される包装袋等の構造体を形成する場合には、本発明の複合フィルムを構成するヒートシール層は、内容物を充填するための空間を形成する層となる。このため、耐内容物性を付与したい場合には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることが好ましい。
【0054】
ヒートシール層は、上記の材料から予め成形されたフィルムを用いて形成してもよいし、基材層、熱軟化性接着樹脂層、及び必要に応じてその他の層が積層された積層体の表面に、ヒートシール層を形成するための材料を溶融して押出し、冷却固化させて形成してもよい。
【0055】
また、ヒートシール層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0056】
更に、ヒートシール層は、単層であっても、複層からなる構成であっていてもよい。
【0057】
なお、本発明の複合フィルムを構成するヒートシール層は、使用の際に接合部の開封が容易となるよう、イージーピール性(易開封性)を有していてもよい。イージーピール性を有するヒートシール層とすれば、例えば、本発明の複合フィルムから蓋材を形成し、容器本体と熱融着させて包装体を形成した場合に、内容物を取り出すための開封が容易となる。
【0058】
(ハーフカット)
本発明の複合フィルムは、ヒートシール層の側から施され、熱軟化性接着樹脂層に到達しているハーフカットを有していてもよい。
【0059】
ここで、ハーフカットとは、複合フィルムの厚さ方向に形成され、複合フィルムの厚さ方向に貫通しない切れ目をいう。
【0060】
本発明の複合フィルムは、必要となる箇所にハーフカットを備えさせることによって、電子レンジ等による加熱に際して、意図した位置から蒸気抜きを実施することが可能となる。
【0061】
上記の通り、本発明の複合フィルムから構造体を形成した場合には、ヒートシール層が構造体の内側となり、すなわち、内容物と接する層となる。したがって、加熱によって内容物から発生する蒸気は、ハーフカットを通して、複合フィルムの厚み方向に入り込んでいくこととなる。
【0062】
このとき、ハーフカットが熱軟化性接着樹脂層に到達していれば、内容物から発生した蒸気は、ハーフカットを通過して直接、熱軟化性接着樹脂層まで到達することとなる。その結果、熱軟化性接着樹脂層は、蒸気の熱によって直接的に温められ、間接的に温められる場合よりも軟化が容易となる。
【0063】
したがって、本発明の複合フィルムは、蒸気抜きが必要となる箇所にハーフカットを備えさせておくことで、意図した位置から蒸気抜きを実施することが可能となる。
【0064】
図1に示される複合フィルム10においては、ハーフカットCは、ヒートシール層3の側から設けられ、熱軟化性接着樹脂層2の表面に到達している。
【0065】
なお、ハーフカットの深さは、熱軟化性接着樹脂層の表面までであっても、あるいは、熱軟化性接着樹脂層の内部まで施されていても、更には、熱軟化性接着樹脂層を貫通していても、いずれであってもよい。
【0066】
ただし、ハーフカットは、複合フィルムの最外層となる基材層には到達しない深さであることが好ましい。ハーフカットが基材層に到達すると、複合フィルムから形成される構造体の強度が低下する場合がある。
【0067】
特には、ハーフカットは、ヒートシール層のみに施されていることが好ましい。ヒートシール層のみにハーフカットを施すことができれば、複合フィルムの強度が最も高くなる状態で、本発明の効果を享受することができる。
【0068】
ハーフカットの形状は、連続的な線であっても、断続的な線であってもいずれでもよい。また、少なくとも1本が施されていればよく、その数は限定されない。複数本のハーフカットを備えさせる場合には、ハーフカット同士は、略並行であることが好ましい。
【0069】
また、ハーフカットの長さは、特に限定されるものではない。蒸気抜きを実施したい箇所のみが備えるような長さであってもよいし、複合フィルムの全体にわたって、均等に設けてもよい。
【0070】
ハーフカットを形成する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、複合フィルムを形成した後に、レーザー等で作製してもよいし、複合フィルムを生産する途中で、ダイカッター等により、ヒートシール層を含むシートのヒートシール層側から作成し、その後に他の層と積層させて複合フィルムとしてもよい。
【0071】
<その他の層>
本発明の複合フィルムは、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層とを、必須の構成層として含んでいれば、これら以外の層が含まれていてもよい。
【0072】
その他の層としては、特に限定されるものではなく、例えば、バリア性を付与するためのバリア層や、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0073】
バリア性を付与するためのバリア層としては、例えば、酸素や水蒸気等のガスを遮断する機能を発現する、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、又はポリアクリロニトリル(PAN)からなる層等が挙げられる。
【0074】
強度を補強するための補強層の材料としては、例えば、紙、合成紙、不織布等が挙げられる。これらには、隣接する層との接着性を付与するための接着剤が塗布されていてもよい。また、上記の基材層を構成する材料による層を、基材層とは別に、補強層として備えさせることも可能である。
【0075】
層と層との間を接着するための接着層としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーからなる層等が挙げられる。
【0076】
また、その他の層は、層と層とをドライラミネート又はホットメルトラミネートする際に使用する、接着剤からなる層であってもよい。
【0077】
その他の層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。また、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0078】
《複合フィルムの製造方法》
本発明の複合フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0079】
ハーフカットを有する複合フィルムを製造方法する場合には、特に限定されるものではないが、例えば、複合フィルムを製造した後に、レーザー等でハーフカットを作製する方法が挙げられる。
【0080】
あるいは、複合フィルムを生産する途中で、ハーフカットを作製し、ハーフカットを有する層とその他の層とを積層させて、複合フィルムとしてもよい。この場合には、例えば、ヒートシール層を含むシートに、ロータリーダイカッターを用いて、ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、ヒートシール層を含むシートに、基材層や熱軟化性接着樹脂層を積層する(積層工程)ことで、複合フィルムを製造することがきる。
【0081】
《複合フィルムの作用》
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルムの作用について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る包装袋を示す図である。また、
図3は、本発明の一実施形態に係る包装袋が、蒸気抜きするときの概略図である。
【0082】
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、特に限定されるものではない。本発明の複合フィルムは、最内層がヒートシール層となっているため、ヒートシール層を互いに熱融着させたり、フランジを有する容器本体のフランジ部にヒートシール層を熱融着させる等により、様々な構造体を形成することができる。
【0083】
図2は、ヒートシール層を互いに熱融着させて形成した包装袋を示す図である。
図2は、ハーフカットCを有する本発明の複合フィルム10の外周が互いに熱融着されて、シール部4が形成された包装袋100となっている。
【0084】
複合フィルム10は、
図1に示される、基材層1、熱軟化性接着樹脂層2、及びヒートシール層3からなる積層体であり、
図2に示されるように、複合フィルム10は、X方向及びY方向で形成されたX-Y面に、各層が延在し、Z方向(図示せず)が複合フィルム10の厚み方向となる。すなわち、
図2は、基材層1側から見た、包装袋100の上面図である。
【0085】
図2に示される包装袋100を構成する複合フィルム10において、ハーフカットCは、断続的な直線で設けられており、包装袋100のシール部4を、包装袋100の内側から外側まで横断するように形成されている。
【0086】
このような包装袋100が加熱され、包装袋100の内部に充填された内容物から蒸気が発生した場合には、
図2に示されるように、発生した蒸気5は、シール部4のハーフカットCが施された箇所から、包装袋100の外部に排出される。
【0087】
ここで、蒸気5は、シール部4のハーフカットCが施された箇所から、包装袋100の外部に排出される作用について、
図3を用いて説明する。
【0088】
図3には、複合フィルム10のZ方向(図示せず)となる断面図が示されており、
図1に示される複合フィルム10が、
図2に示される包装袋100となり、当該包装袋100が加熱されて、包装袋100の内容物から蒸気5が発生した場合に、蒸気5によって、複合フィルム10の熱軟化性接着樹脂層2が軟化した状態が示されている。
【0089】
包装袋100の内部で発生した蒸気5は、複合フィルム10のヒートシール層3に形成されたハーフカットCから、複合フィルム10の厚み方向(Z方向)に入り込み、熱軟化性接着樹脂層2に到達すると、直接、熱軟化性接着樹脂層2に熱を与える。これにより、熱軟化性接着樹脂層2は軟化し、柔軟になる。
【0090】
包装袋100の内部の圧力は、内容物から発生する蒸気の圧力によって高まり、上昇する。そして、
図3に示されるように、内圧の上昇によって、軟化した熱軟化性接着樹脂層2とヒートシール層3との間で層間剥離が生じ、熱軟化性接着樹脂層2は、蒸気5の圧力によって包装袋100の外側に持ち上がり、当該剥離部分に空間6が形成される。
【0091】
そして、
図2に示されるように、シール部4を横断するように形成されているハーフカットCの領域に発現した空間6を通して、内容物から発生した蒸気5は、包装袋100の内部から外部へと排出される。
【0092】
《複合フィルムの用途》
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、特に限定されるものではない。
【0093】
例えば、本発明の複合フィルムのヒートシール層を互いに熱融着することで、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラシック(登録商標)、ブリックパック(登録商標)、チューブ容器等を形成することができる。また、ヒートシール層にチャックを設けて、チャック付き包装袋とすることもできる。
【0094】
あるいは、例えば、本発明の複合フィルムから蓋材を形成し、容器本体に熱融着することで、開封可能な包装体とすることもできる。
【0095】
以下に、本発明の複合フィルムを用いた包装袋、及び蓋材について説明する。
【0096】
(包装袋)
包装袋は、本発明の複合フィルムのヒートシール層が互いに熱融着されて、シール部を形成することで作製することができる。
【0097】
このとき、複合フィルムにハーフカットを施し、ヒートシール層が互いに熱融着されたシール部を、包装袋の内側から外側に、ハーフカットが横断するように配置してもよい。
【0098】
ハーフカットがシール部を、包装袋の内側から外側に横断する形態とすれば、包装袋を加熱したときに、当該ハーフカット部分に、蒸気を通過させるための空間を形成することができる。そして、当該空間から、包装袋の内部で発生した蒸気を、包装袋の外部に排出することができる。
【0099】
このような包装袋は、加熱がなされる包装袋に好適に用いることができ、例えば、電子レンジ用の包装袋として、大変に有益なものとなる。
【0100】
(蓋材)
本発明の複合フィルムは、容器本体の上端開口部を密封するための蓋材ともなりうる。
【0101】
容器本体の密封は、容器の上端開口部を本発明の複合フィルムからなる蓋材が被覆するように、複合フィルムのヒートシール層を容器本体に熱融着させることで、開封可能な接合部を形成して行うことができる。
【0102】
容器の上端開口部が、フランジを有する場合には、本発明の複合フィルムからなる蓋材のヒートシール層を、容器本体のフランジに熱融着させて、開封可能な接合部を形成することで、蓋付き容器を形成してもよい。
【0103】
このとき、ヒートシール層がイージーピール性(易開封性)を有するものであれば、形成された密封容器は、開封容易な蓋付き容器となる。
【0104】
また、複合フィルムにハーフカットを施し、ハーフカットを、容器本体のフランジとヒートシール層とが熱融着された接合部を、容器本体の内側から外側に横断するように配置してもよい。
【0105】
ハーフカットが接合部を、容器本体の内側から外側に横断する形態とすれば、密閉容器を加熱したときに、当該ハーフカット部分に、蒸気を通過させるための空間が形成される。そして、当該空間から、密閉容器の内部で発生した蒸気を、密閉容器の外部に排出することができる。
【0106】
このような蓋付き容器は、加熱がなされる蓋付き容器に好適に用いることができ、例えば、電子レンジ用の蓋付き容器として、大変に有益なものとなる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例等により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0108】
<材料>
実施例及び比較例においては、層を構成する材料として、以下を準備した。
【0109】
(1)基材層
・Ny#15:ナイロンフィルム(ボニール(登録商標)RX、興人フィルム&ケミカルズ株式会社、厚み:15μm)
【0110】
(2)熱軟化性接着樹脂層又は接着剤層
・LX-500(DIC株式会社)
・エリーテル(登録商標)XP-1586-45EA
・エリーテル(登録商標)XP-1648-45EA(ユニチカ株式会社)
・TM-396(東洋モートン株式会社)
・LX-500/KW-75(DIC株式会社)
・エリーテル(登録商標)XP-1541-45EA(ユニチカ株式会社)
・エリーテル(登録商標)UE-3223(ユニチカ株式会社)
・TM-396/CAT-22B(東洋モートン株式会社)
【0111】
(3)ヒートシール層
・CPP#30:無延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:30μm)
・E1901T#50:積層PPフィルム(ディファレン(登録商標)E1901T、DIC株式会社、厚み:50μm)
【0112】
(4)その他
・剥離ニス:ポリコート(登録商標)P-91/P-91レジューサー=3/1(DIC株式会社)
【0113】
《実施例1~5、比較例1~4》
<複合フィルムの製造>
表1に記載した材料を用いて、基材層となるフィルムと、ヒートシール層となるフィルムを、熱軟化性接着樹脂又は接着剤によって接着し、積層体を作製した。なお、熱軟化性接着樹脂又は接着剤の塗工量は、それぞれ1.5g/m2とした。
【0114】
積層体におけるヒートシール層となるフィルムには、ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、ヒートシール層を含むシートに、基材層や熱軟化性接着樹脂層を積層して、ハーフカットを有する複合フィルムを得た。
【0115】
《比較例5》
基材層となるNy#15ナイロンフィルムフィルムに、剥離ニスであるポリコート(登録商標)P-91/P-91レジューサー=3/1(DIC株式会社)を、塗工量1.5g/m2塗工した。剥離ニスが乾燥した後、表1に記載した材料を用いて、実施例1~5、及び比較例1~4と同様にして、ヒートシール層となるフィルムを、接着剤によって接着し、積層体を作製した。
【0116】
積層体におけるヒートシール層となるフィルムには、ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、ヒートシール層を含むシートに、基材層や熱軟化性接着樹脂層を積層して、ハーフカットを有する複合フィルムを得た。
【0117】
<ラミネート強度の測定>
実施例1~5、及び比較例1~5で得られた複合フィルムを15mm幅にカットし、基材層とヒートシール層との層間強度を、25℃雰囲気下と70℃雰囲気下にて測定した。なお、測定は、T字剥離にて、300mm/minの条件で実施し、変位20~50mmの区間平均を求めた。結果を表1に示す。
【0118】
<パウチの作製>
実施例1~5、及び比較例1~5で作製した複合フィルムを用いて、内寸130mm×135mmのピロー袋を作製した。このとき、ピロー袋の内部に、水10ccを充填したレンジアップ可能な容器を封入した。また、ハーフカットは、ピロー袋のシール部に、包装袋の内側から外側まで、シール部を横断するように配置した。なお、ピロー袋の作製条件は、インパルスシーラーにより、加熱1.3秒、冷却2.0秒とした。
【0119】
<パウチの蒸気の通過性評価>
作製したパウチに対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、ヒートシール部からパウチの内側の蒸気が排出されたか確認した。なお、それぞれのパウチについて、5回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:5回すべてにおいて、蒸気が排出された。
×:5回すべてにおいて、蒸気が排出されなかった。
【0120】
<蓋付き容器の作製>
実施例2~4、及び比較例2~5で作製した複合フィルムを蓋材として用いて、水5ccを充填したPPカップ(フランジ幅:5mm、開口内径:60mm)のフランジに、加熱したヒートシールバーを用いて熱融着させて、蓋付き容器を作製した。ハーフカットは、容器と蓋材との接合部となるフランジに、容器の内側から外側まで、接合部を横断するように配置した。なお、ヒートシール条件は、150℃、圧力3.0kgf/cm2にて、2.5秒とした。
【0121】
<蓋付き容器の蒸気の通過性評価>
作製した蓋付き容器に対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、接合部から容器の内側の蒸気が排出されたか確認した。それぞれの容器について、5回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:5回すべてにおいて、蒸気が排出された。
×:5回すべてにおいて、蒸気が排出されなかった。
【0122】
<大型蓋付き容器の作製>
実施例2~4、及び比較例2~5で作製した複合フィルムを蓋材として用いて、水5ccを充填したPPカップ(フランジ幅:10mm、開口径:175mm×125mm)のフランジに、加熱したヒートシールバーを用いて熱融着させて、大型蓋付き容器を作製した。ハーフカットは、容器と蓋材との接合部となるフランジに、容器の内側から外側まで、接合部を横断するように配置した。なお、ヒートシール条件は、150℃、圧力3.0kgf/cm2にて、2.5秒とした。
【0123】
<大型蓋付き容器の蒸気の通過性評価>
作製した大型蓋付き容器に対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、接合部から容器の内側の蒸気が排出されたか確認した。それぞれの容器について、5回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:5回すべてにおいて、蒸気が排出された。
×:5回すべてにおいて、蒸気が排出されなかった。
【0124】
【0125】
《参考例1~5》熱軟化性接着樹脂層の粘着強度の測定
実施例1~3、及び比較例2~3で使用した熱軟化性接着樹脂又は接着剤を、Ny#15:ナイロンフィルム(ボニール(登録商標)RX、興人フィルム&ケミカルズ株式会社、厚み:15μm)の表面に、塗工量1.5g/m2にて塗工した。続いて、25mm幅に切り出して、試験板(ステンレス版)に貼り付けることで、評価サンプルを作製した。貼り付けに際しては、圧着ローラー(2kg)を2往復させて、圧着させた。
【0126】
作製した評価サンプルについて、ストログラフを用いて、25℃雰囲気下にて、粘着強度の測定を実施した。測定は、180°剥離にて、500mm/minの条件で実施し、変位20~50mmの区間平均を求めた。結果を表2に示す。
【0127】
【符号の説明】
【0128】
10 複合フィルム
1 基材層
2 熱軟化性接着樹脂層
3 ヒートシール層
4 シール部
5 蒸気
6 空間
100 包装袋
C ハーフカット