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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】インパクトレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
B25B21/02 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020172769
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064182
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】村井 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】鹿田 暢亮
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0087448(US,A1)
【文献】特表2007-500607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00 - 23/18
B25D 16/00
B25F 5/00 - 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの前側に配置され、前記モータにより回転するハンマと、
前記ハンマを収容するハンマケースと、
前記ハンマの前側に配置され、前記ハンマにより回転方向に打撃される腕部と、前記腕部に繋がり前記ハンマケースに支持される円筒部と、前記円筒部の前側に配置される角柱形状のソケット嵌合部と、前記円筒部と前記ソケット嵌合部との間に配置され、前記ソケット嵌合部から後方へ向かうに従って拡径し、前記ソケット嵌合部の各側面からそれぞれ延設される舌片を備える拡径部と、を有するアンビルと、を含み、
前記アンビルの前記円筒部と前記拡径部との間で、且つ前記アンビルの軸方向で各前記舌片の後側に隣接する位置に、前記円筒部の周方向に連続する凹部が形成されているインパクトレンチ。
【請求項2】
前記凹部は、横断面半円状である請求項1に記載のインパクトレンチ。
【請求項3】
前記凹部の最深部の直径は、前記ソケット嵌合部の外接円の直径よりも小さくなっている請求項1又は2に記載のインパクトレンチ。
【請求項4】
前記ソケット嵌合部は、四角柱部であり、前記凹部の最深部の直径は、前記四角柱部の互いに平行な側面同士の間隔よりも大きくなっている請求項1乃至3の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項5】
各前記舌片の後側に隣接する前記凹部を第1の凹部として、前記第1の凹部の後側に前記周方向に連続する第2の凹部形成されている請求項1に記載のインパクトレンチ。
【請求項6】
前記第1の凹部と前記第2の凹部との間には、前記円筒部よりも小径となるリング状の突条が形成されている請求項5に記載のインパクトレンチ。
【請求項7】
前記第1の凹部と前記第2の凹部との間には、前記円筒部と同径となるリング状の突条が形成されている請求項5に記載のインパクトレンチ。
【請求項8】
前記第1の凹部と前記第2の凹部とは、前記アンビルの軸方向での幅が同じである請求項5乃至7の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項9】
前記第1の凹部と前記第2の凹部とは、前記アンビルの軸方向での幅が異なる請求項5乃至7の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項10】
前記第1の凹部及び前記第2の凹部は、それぞれ横断面半円状である請求項5乃至の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項11】
前記第1の凹部及び前記第2の凹部の最深部の直径は、それぞれ前記ソケット嵌合部の外接円の直径よりも小さくなっている請求項5乃至10の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項12】
前記ソケット嵌合部は、四角柱部であり、前記第1の凹部及び前記第2の凹部の最深部の直径は、それぞれ前記四角柱部の互いに平行な側面同士の間隔よりも大きくなっている請求項5乃至11の何れかに記載のインパクトレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットを装着するアンビルへ回転方向に間欠的なインパクトを発生させるインパクトレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
インパクトレンチは、特許文献1に開示されるように、モータから回転伝達されるスピンドルと、スピンドルにカム結合され、コイルバネで前方へ付勢されるハンマと、ハンマと回転方向で係止して前方へ突出するアンビルとを備える。アンビルは、円筒部を有し、円筒部の先端には四角柱部が形成される。四角柱部には、ソケットが装着されて、ソケットにボルトやナットを嵌合させて締め付けが行われる。締め付けが進んでアンビルへのトルクが高まると、ハンマがアンビルに対して係脱を繰り返すことで回転方向へ間欠的な衝撃(インパクト)を発生させる。
このインパクトレンチでは、インパクトの発生の際、アンビルの四角柱部の各角部とソケットの角孔の内面とが回転方向で強く接触し合うことで、アンビルに応力が発生する。この応力は、特に形状変化部分となる四角柱部の根元付近に集中するため、長時間の使用に伴い四角柱部の根元付近で折損するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2007-500607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のアンビルでは、その形状を工夫しつつ、四角柱部の根元付近への応力を緩和するようにしていた。
【0005】
本発明は、四角柱部等のソケット嵌合部の根元付近への応力をより効果的に緩和してアンビルの耐久性を向上させることができるインパクトレンチを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明、インパクトレンチであって、
モータと、
前記モータの前側に配置され、前記モータにより回転するハンマと、
前記ハンマを収容するハンマケースと、
前記ハンマの前側に配置され、前記ハンマにより回転方向に打撃される腕部と、前記腕部に繋がり前記ハンマケースに支持される円筒部と、前記円筒部の前側に配置される角柱形状のソケット嵌合部と、前記円筒部と前記ソケット嵌合部との間に配置され、前記ソケット嵌合部から後方へ向かうに従って拡径し、前記ソケット嵌合部の各側面からそれぞれ延設される舌片を備える拡径部と、を有するアンビルと、を含み、
前記アンビルの前記円筒部と前記拡径部との間で、且つ前記アンビルの軸方向で各前記舌片の後側に隣接する位置に、前記円筒部の周方向に連続する凹部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、凹部の形成により、ソケット嵌合部の根元付近への応力をより効果的に緩和してアンビルの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インパクトレンチの一部中央縦断面図である。
図2】アンビルの斜視図である。
図3図3Aはアンビルの側面図、図3Bは平面図、図3Cは正面図である。
図4図4A図3CのA-A線断面、図4BはB-B線断面をそれぞれ示す。
図5】変更例のアンビルの斜視図である。
図6図6Aは変更例のアンビルの側面図、図6Bは平面図、図6Cは正面図である。
図7図7A図6CのC-C線断面、図7BはD-D線断面をそれぞれ示す。
図8】変更例のアンビルの斜視図である。
図9図9Aは変更例のアンビルの側面図、図9Bは平面図、図9Cは正面図である。
図10図10A図9CのE-E線断面、図10BはF-F線断面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、インパクトレンチの一例を示す中央縦断面図である。
インパクトレンチ1は、本体2とハンドル3とを備える。本体2は前後方向に延び、ハンドル3は本体2から下向きに延びる。本体2の内部には、アンビル4の後部が収容されている。アンビル4の前部は、本体2の前端から前方へ突出している。
ハンドル3の上部には、トリガ6を前方へ突出させたスイッチ5が設けられる。スイッチ5の上側には、アンビル4の回転方向の正逆切替ボタン7が設けられている。トリガ6の上方には、アンビル4の前方を照射するライト8が設けられている。ハンドル3の下端には、バッテリ装着部9が形成される。バッテリ装着部9には、電源となるバッテリパック10が装着される。バッテリ装着部9内には、コントローラ(不図示)が収容される。
【0010】
本体2内には、後方から、ブラシレスモータ11と、減速機構12と、スピンドル13と、打撃機構14とが備えられる。ブラシレスモータ11は回転軸15を有する。回転軸15の回転は、減速機構12で減速される。減速された回転は、スピンドル13へ伝わる。
打撃機構14は、本体2の前部に設けられるハンマケース16内に収容される。打撃機構14は、スピンドル13に外装されるハンマ17と、ハンマ17を前方へ付勢するコイルバネ18とを備える。
ハンマ17は、スピンドル13との間に設けたボール19,19によって回転方向で結合される。ハンマ17の内周面とスピンドル13の外周面とには、ボール19,19が跨がって嵌合するカム溝20,20が形成される。コイルバネ18は、スピンドル13に外装されてハンマ17を前方へ付勢する。ハンマ17は、前面に一対の爪21,21を備える。
【0011】
アンビル4は、ハンマケース16の前筒部22に支持される。ハンマケース16はアルミニウム製である。前筒部22には、鉄製のインサートブッシュ22aがインサート成形されている。これにより、ハンマケース16にインサートブッシュ22aが強固に固定される。インサートブッシュ22aには、メタル軸受23が圧入されている。メタル軸受23は、アンビル4をスピンドル13と同軸で支持する。メタル軸受23がインサートブッシュ22aに圧入されることで、インサートブッシュ22aの幅(軸長)が小さくてもアンビル4をハンマケース16に対して保持できる。メタル軸受23の前方には、オイルシール24が配置されている。オイルシール24は、ハンマケース16の内部から外方へグリスが漏れ出すことを抑制している。
アンビル4の後端には、一対の腕部25,25が放射状に形成される。腕部25,25は、ハンマ17の爪21,21と回転方向で係合する。但し、腕部25及び爪21は、3つ以上であってもよい。腕部25及び爪21は、1つずつであってもよい。前筒部22と腕部25,25との間には、規制ワッシャ26が設けられる。アンビル4は、規制ワッシャ26によって前方への位置決めがされる。アンビル4の軸心には、後端から有底孔27が形成される。有底孔27の後端には、スピンドル13の前端に設けた小径部28が挿入される。
【0012】
図2は、アンビル4の前方からの斜視を示す。アンビル4において、腕部25,25の前方は、横断面円形の円筒部30となっている。円筒部30の前方側には、四角柱部31が設けられている。四角柱部31は、アンビル4の軸線Aと直交する断面が略正方形状となる。四角柱部31は、4つの側面32A,32B,32C,32Dと、各側面32A~32Dの間に位置する4つの角部33,33・・とを有している。
四角柱部31には、横断面が略正方形状である角孔51を有したソケット50が着脱可能に装着される。四角柱部31には、透孔34が、側面32A,32Cと直交状に貫通形成されている。透孔34は、ソケット50の抜け止めピンを貫通させるために設けられる。
【0013】
四角柱部31の後側には、拡径部35が形成されている。拡径部35は、四角柱部31の4つの側面32A~32Dの後端からそれぞれ後方へ延設される4つの舌片36からなる。各舌片36は、後方へ向かうに従ってアンビル4の径方向外側へ曲面状に広がる。各舌片36の後端外形は、正面視円弧状となっている。拡径部35は、ソケット50の後方への移動を規制するストッパとなる。
拡径部35の後方で円筒部30との間には、凹部37が形成されている。凹部37は、円筒部30の周方向に連続するリング状となっている。凹部37の横断面形状は、図3及び図4に示すように、半径r1の半円状となっている。凹部37の最深部の直径d1は、四角柱部31の互いに平行な側面32A,32C間の間隔S(二面幅)よりもやや大きくなるように形成されている。また、直径d1は、図3Cに示す四角柱部31の外接円Cの直径よりも小さくなるように形成されている。
凹部37において、横断面の前後の端縁を通る2つの接線で形成される溝角度θ1(図4A)は、90°以下となっている。
【0014】
アンビル4の後部の有底孔27は、前端が円筒部30内にとどまり、凹部37まで達しない長さとなっている。すなわち、有底孔27がアンビル4の径方向で凹部37とオーバーラップしないため、凹部37を設けてもアンビル4の強度は維持できる。
四角柱部31の前方には、細径部38が設けられる。この細径部38は、アンビル4の前端に配置されている。細径部38には、ソケット50を抜け止めするためのCリング状の弾性体39(図1)が保持される。
【0015】
以上の如く構成されたインパクトレンチ1においては、ハンドル3を把持した手でトリガ6を押し込み操作する。すると、スイッチ5がONしてバッテリパック10の電源によってブラシレスモータ11が駆動する。よって、回転軸15が回転して減速機構12を介してスピンドル13が減速回転する。スピンドル13が回転すると、ボール19,19を介してハンマ17が回転する。ハンマ17が回転すると、アンビル4が回転してソケット50によるボルト等の締付が可能となる。
締付が進んでアンビル4のトルクが高まると、ハンマ17がコイルバネ18の付勢に抗して後退する。すなわち、ハンマ17は、ボール19,19をカム溝20,20に沿って後方へ転動させながら後退する。そして、爪21,21が腕部25,25から外れると、ハンマ17は、コイルバネ18の付勢及びカム溝20の案内によって回転しながら前進する。よって、爪21,21が腕部25,25に再係合してアンビル4に回転打撃力(インパクト)を発生させる。このインパクトを間欠的に繰り返すことでさらなる締付が行われる。
【0016】
インパクトの発生の際、アンビル4の四角柱部31とソケット50の角孔51の内面との衝突によって四角柱部31に応力が発生する。しかし、円筒部30と拡径部35との間には凹部37が形成されているため、アンビル4には、拡径部35を挟んで四角柱部31と凹部37との2つの形状変化部分が存在する格好となる。凹部37の形状により、凹部37で発生する応力と四角柱部31で発生する応力との差が大きくならないように設定されている。このため、四角柱部31の根元付近に応力が集中することがなく、凹部37にも分散される。結果、四角柱部31の根元付近での破損が生じにくくなる。
【0017】
数値を挙げて具体例を説明する。例えば図3に示す軸方向の全長Lが49.5mm、腕部25の前面から四角柱部31の根元までの軸方向の長さL1が24.5mm、円筒部30の外径Dが18mm、四角柱部31の平行な側面32A,32C同士の間隔Sが12.7mmであるアンビル4を例にする。
この場合、凹部37は、横断面半円状の半径r1が3.5mm、最深部の直径d1が13.4mm、溝角度θ1が70°でそれぞれ形成される。
こうして凹部37を有するアンビル4と、同じ寸法設定で凹部37を有しない従来形状のアンビルとをモデル化し、各モデルにそれぞれ400Nmのモーメントを負荷して、四角柱部31の根元で発生する応力を解析した。
結果、凹部37を有するアンビル4は、凹部37を有しない従来形状のアンビルと比較して、10%程度の応力の低減が確認された。
【0018】
上記形態のインパクトレンチ1では、ブラシレスモータ11(モータ)と、ブラシレスモータ11の前側に配置され、ブラシレスモータ11により回転するハンマ17と、ハンマ17を収容するハンマケース16とを有する。また、インパクトレンチ1は、ハンマ17の前側に配置され、ハンマ17により回転方向に打撃される腕部25と、腕部25に繋がりハンマケース16に支持される円筒部30と、円筒部30の前側に配置される四角柱部31(ソケット嵌合部)と、円筒部30と四角柱部31との間に配置され、四角柱部31から後方へ向かうに従って拡径する拡径部35と、を有するアンビル4とを含む。そして、アンビル4の円筒部30と拡径部35との間に、円筒部30の周方向に連続する凹部37が形成されている。
この構成により、四角柱部31の根元付近への応力が緩和されてアンビル4の耐久性を向上させることができる。
【0019】
特に、凹部37は、横断面半円状となっている。よって、形状変化の小さい凹部37を形成することができ、凹部37で発生する応力を抑制できる。
凹部37の最深部の直径d1は、四角柱部31の外接円Cの直径よりも小さくなっている。よって、応力の緩和に効果的な凹部37を得ることができる。
凹部37の最深部の直径d1は、四角柱部31の互いに平行な側面32A,32C同士の間隔Sよりも大きくなっている。よって、凹部37を設けても必要な強度を確保できる。
但し、凹部37の直径d1は、間隔Sと同じ寸法としてもよいし、間隔Sより小さい寸法としてもよい。
また、直径d1は、外接円Cの直径と等しくしてもよいし、外接円Cの直径より大きくしてもよい。
【0020】
以下、変更例を説明する。
上記形態のアンビルは、円筒部と拡径部との間に1つの凹部を形成する構造となっているが、複数の凹部を形成することもできる。
図5図7は、変更例のアンビル4Aを示す。このアンビル4Aにおいて、凹部は、アンビル4Aの軸方向に、第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとの2つが形成されている。両凹部37A,38Bは、共に横断面半円状で、その半径は、第1の凹部37Aの半径r1が第2の凹部37Bの半径r2よりも僅かに大きくなるように設定されている。軸方向の幅は、第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとが略等しくなるように設定されている。
両凹部37A,37Bは、アンビル4Aの軸方向でオーバーラップして、両者の間には、円筒部30よりも小径となるリング状の突条40が形成されている。
両凹部37A,37Bの最深部の直径は、第1の凹部37Aの直径d1が第2の凹部37Bの直径d2よりも僅かに大きくなるように設定されている。直径d1,d2は、それぞれ四角柱部31の外接円Cの直径よりも小さくなっている。また、直径d1,d2は、それぞれ四角柱部31の互いに平行な側面32A,32C同士の間隔Sよりも大きくなるように設定されている。
【0021】
この場合もアンビル4Aに発生する応力は、四角柱部31と第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとに分散され、四角柱部31の根元付近に集中しない。よって、四角柱部31の根元付近への応力が緩和されてアンビル4Aの耐久性を向上させることができる。
数値を挙げて具体例を説明する。先に挙げた寸法設定のアンビルで、第1の凹部37Aの半円状の半径r1が2.5mm、第2の凹部37Bの半円状の半径r2が2.0mm、第1の凹部37Aの最深部の直径d1が13.1mm、第2の凹部37Bの最深部の直径d2が12.8mm、凹部37A,37B同士の軸方向のオーバーラップ長さが2.5mm、第1の凹部37Aの溝角度θ1が45°、第2の凹部37Bの溝角度θ2が40°となるモデルを作製し、当該モデルに400Nmのモーメントを負荷して、四角柱部31の根元で発生する応力を解析した。
結果、第1、第2の凹部37A,37Bを有するアンビル4Aは、凹部を有しない従来形状のアンビルと比較して、15%程度の応力の低減が確認された。
【0022】
この変更例においても、円筒部30と四角柱部31との間に、円筒部30の周方向に連続する第1の凹部37Aと、第1の凹部37Aの後側に配置され、円筒部30の周方向に連続する第2の凹部37Bとが形成されている。よって、四角柱部31の根元付近への応力が緩和されてアンビル4の耐久性を向上させることができる。
特に、第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとの間には、円筒部30よりも小径となるリング状の突条40が形成されている。よって、両凹部37A,37B同士が連結された格好となり、応力の分散に繋がる。
第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとは、アンビル4の軸方向での幅が同じとなっている。よって、応力の分散が均等となる。
【0023】
第1の凹部37Aと四角柱部31との間に、四角柱部31から後方へ向かうに従って拡径する拡径部35が形成されている。よって、四角柱部31の形状変化部分と第1の凹部37Aの形状変化部分とを明確に区切ることができ、応力の緩和効果が高くなる。
第1の凹部37A及び第2の凹部37Bは、それぞれ横断面半円状となっている。よって、形状変化の小さい第1、第2の凹部37A,37Bを形成することができ、両凹部37A,37Bで発生する応力を抑制できる。
第1の凹部37A及び第2の凹部37Bの最深部の直径d1,d2は、それぞれ四角柱部31の外接円Cの直径よりも小さくなっている。よって、応力の緩和に効果的な第1、第2の凹部37A,37Bを得ることができる。
第1の凹部37A及び第2の凹部37Bの最深部の直径d1,d2は、それぞれ四角柱部31の互いに平行な側面32A,32C同士の間隔Sよりも大きくなっている。よって、第1、第2の凹部37A,37Bを設けても必要な強度を確保できる。
【0024】
但し、図5図7の変更例において、第1、第2の凹部37A,37Bの半径r1,r2は、互いに等しくしてもよい。第1、第2の凹部37A,37Bの軸方向の幅も等しくして差し支えない。
直径d1,d2は、互いに等しく設定してもよい。外接円Cと同径としてもよいし、外接円Cより大きくしてもよい。
直径d1,d2は、間隔Sと同じ寸法としてもよいし、間隔Sより小さい寸法としてもよい。
【0025】
図8図10は、他の変更例のアンビル4Bを示す。このアンビル4Bにおいても、凹部は、アンビル4Bの軸方向に第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとの2つが形成されている。但し、両凹部37A,37Bの軸方向の幅は、第1の凹部37Aが第2の凹部37Bよりも大きく異なるように形成されている。よって、両凹部37A,37Bの横断面半円状の半径は、第1の凹部37Aの半径r1が第2の凹部37Bの半径r2よりも大きく異なるように形成されている。
また、両凹部37A,37Bは、軸方向で分離されて、両者の間には、円筒部30と同径となるリング状の突条41が形成されている。両凹部37A,37Bの最深部の直径は、第1の凹部37Aの直径d1が第2の凹部37Bの直径d2よりも僅かに小さくなるように設定されている。直径d1,d2は、それぞれ四角柱部31の外接円Cの直径よりも小さくなっている。また、直径d1,d2は、平行な側面32A,32C同士の間隔Sよりも大きくなっている。
【0026】
この場合もアンビル4Bに発生する応力は、四角柱部31と第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとに分散され、四角柱部31の根元付近に集中しない。よって、四角柱部31の根元付近への応力が緩和されてアンビル4Bの耐久性を向上させることができる。
数値を挙げて具体例を説明する。先に挙げた寸法設定のアンビルで、第1の凹部37Aの半円状の半径r1が3.0mm、第2の凹部37Bの半円状の半径r2が1.0mm、第1の凹部37Aの最深部の直径d1が12.9mm、第2の凹部37Bの最深部の直径d2が13.5mm、突条41の軸方向長さが1.3mm、第1の凹部37Aの溝角度θ1が45°、第2の凹部37Bの溝角度θ2が20°となるモデルを作製し、当該モデルに400Nmのモーメントを負荷して、四角柱部31の根元で発生する応力を解析した。
結果、第1、第2の凹部37A,37Bを有するアンビル4Bは、凹部を有しない従来形状のアンビルと比較して、12%程度の応力の低減が確認された。
【0027】
この変更例においても、円筒部30と四角柱部31との間に、円筒部30の周方向に連続する第1の凹部37Aと、第1の凹部37Aの後側に配置され、円筒部30の周方向に連続する第2の凹部37Bとが形成されている。よって、四角柱部31の根元付近への応力が緩和されてアンビル4の耐久性を向上させることができる。
特に、第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとの間には、円筒部30と同径となるリング状の突条41が形成されている。よって、両凹部37A,37B付近の強度を確保することができる。
第1の凹部37Aと第2の凹部37Bとは、アンビル4の軸方向での幅が異なる。よって、凹部を複数設けても円筒部30の軸方向の長さを確保することができる。
【0028】
但し、図8図10の変更例において、第1、第2の凹部37A,37Bの直径d1,d2は、互いに等しく設定してもよいし、直径d1が直径d2より大きくなるように設定してもよい。
直径d1,d2は、それぞれ外接円Cと同径としてもよいし、外接円Cより大きくしてもよい。
直径d1,d2は、間隔Sと同じ寸法としてもよいし、間隔Sより小さい寸法としてもよい。
【0029】
以下、上記各例に共通する変更例を説明する。
凹部の形状は上記各例に限らず、適宜変更できる。凹部の数を3つ以上とすることもできる。
凹部の横断面形状は、半円状に限らず、半長円状やV字状であってもよい。但し、V字状のように形状変化が大きくなると応力が集中するため、半円状や半長円状等の形状変化が緩やかな形状が望ましい。
拡径部は、四角柱部の側面から延設される4つの舌片からなるものに限らない。例えば4つの舌片同士を周方向に繋いで後端が円形となるリング状の拡開部(テーパ部)としてもよい。
四角柱部や円筒部、腕部の形状も変更可能である。四角柱部の透孔はなくてもよい。また、細径部も形成されなくてもよい。
ソケット嵌合部は、四角柱部に限らず、他の形状も採用できる。例えば、六角柱や八角柱等の他の多角形状の柱部としてもよい。要はソケットに設けられた略正方形状の角孔に回り止め状態で嵌合できればよい。
その他、モータはブラシレスでなくてもよい。バッテリパックを用いないAC機であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1・・インパクトレンチ、2・・本体、3・・ハンドル、4,4A,4B・・アンビル、11・・ブラシレスモータ、13・・スピンドル、14・・打撃機構、15・・回転軸、17・・ハンマ、24・・腕部、30・・筒部、31・・四角柱部、32A~32D・・側面、35・・拡径部、36・・舌片、37・・凹部、37A・・第1の凹部、37B・・第2の凹部、40,41・・突条、50・・ソケット、A・・アンビルの軸線、D・・円筒部の外径、d1,d2・・凹部の最深部の直径、r1,r2・・凹部の横断面半円状の半径、C・・四角柱部の外接円、S・・平行な側面同士の間隔、θ1,θ2・・溝角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10