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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ロボットアーム姿勢登録システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020175139
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066663
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188662
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】林 博文
(72)【発明者】
【氏名】鍔本 和之
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-175608(JP,A)
【文献】特開2019-7891(JP,A)
【文献】米国特許第5079491(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、当該ロボットアームを動作させるロボットコントローラと、当該ロボットコントローラに前記ロボットアームの動作を制御する信号を出力するPLCと、操作者が前記ロボットアームを操作するために前記PLCに接続された設定ユニットとを少なくとも備えるロボットアーム姿勢登録システムであって、
前記設定ユニットは、
前記ロボットアームを操作するジョイスティックと、
当該ジョイスティックと併用される複数の操作ボタンと、
前記ロボットアームのモード指定を含む各種操作を行うための入力操作部と、
前記設定ユニットに関する各種設定を行う設定部とを備え、
前記ロボットアームのモードは、前記ロボットアーム先端の基準点に対する位置指定と前記ロボットアーム先端の姿勢指定とを登録可能な登録モードを含み、
少なくとも前記登録モードにおいては、前記複数の操作ボタンには、押下された状態で前記ジョイスティックの操作に基づく前記ロボットアーム先端に対する指示可能な動作(以下「指示可能動作」という。)の内容が、互いに異なるように割り当てられ、
前記指示可能動作は、前記ロボットアーム先端の基準点に対する移動及び/又は所定の基準軸を中心とした回転を含み、
前記登録モードが指定された場合、
前記設定部は、
前記複数の操作ボタンのうち何れかが押下された場合に限り、前記ジョイスティックの操作に基づく前記ロボットアームへの操作を許可するものとし、
前記複数の操作ボタンの何れかが押下された状態で前記ジョイスティックの操作が行われた場合、当該押下された操作ボタンに割り当てられた前記指示可能動作に基づいて前記ロボットアームの動作を制御し、
前記入力操作部によって登録操作が行われた場合、前記ロボットアーム先端の指定位置及び指定姿勢における前記ロボットアームの各関節及び各回転軸の駆動状態を示す登録情報を前記PLC又は前記ロボットコントローラが備える記憶部に対して登録する
ことを特徴とするロボットアーム姿勢登録システム。
【請求項2】
前記設定部は、
それぞれの前記指示可能動作を受け付ける前記ジョイスティックの入力操作の方向をそれぞれ基準操作方向としたとき、
前記ジョイスティックの入力操作の方向の前記基準操作方向に対するずれが所定範囲内である場合には、当該入力操作を当該基準操作方向への入力とみなす
ことを特徴とする請求項1記載のロボットアーム姿勢登録システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記ジョイスティックに対する入力操作時の前記ジョイスティックの軸の傾き度合いに応じて基準点に対する移動及び/又は前記基準軸を中心として回転の制御速度を決定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロボットアーム姿勢登録システム。
【請求項4】
前記ロボットアーム先端部分に設けた又は前記ロボットアーム先端部分の動作を撮影可能なカメラと、
前記カメラで撮影された撮影画像を表示する表示部とを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のロボットアーム姿勢登録システム。
【請求項5】
前記ロボットアーム先端部分に設けた又は前記ロボットアーム先端部分の動作を撮影可能なカメラを備え、
前記PLCは、前記登録情報に関連付けて、当該登録情報が示すロボットアームの位置及び姿勢の状態において実行される前記カメラの撮影条件に関する情報を前記記憶部に記憶する
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のロボットアーム姿勢登録システム。
【請求項6】
前記PLCは、前記登録情報に関連付けて、当該登録情報が示すロボットアームの位置及び姿勢の状態において実行される前記カメラの撮影対象となる表面欠陥の検知条件に関する情報を前記記憶部に記憶する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のロボットアーム姿勢登録システム。
【請求項7】
前記設定ユニットは、第1操作ボタン、第2操作ボタン及び第3操作ボタンを備え、
前記第1操作ボタンには、前記ロボットアーム先端の基準点を含む水平面内での移動という指示可能動作が、前記ジョイスティックの各入力操作方向に割り当てられ、
前記第2操作ボタンには、略鉛直上下方向への移動という指示可能動作が前記ジョイスティックの互いに反対な2方向からなる1組目の入力操作方向に割り当てられ、前記基準点を通る略鉛直線を中心軸とした回転が前記1組目の入力操作方向に直交しかつ互いに反対な2方向からなる2組目の入力操作方向に割り当てられ、
前記第3操作ボタンには、前記指示可能動作として前記基準点を含む水平面内で当該基準点において直交する2本の回転軸のそれぞれに対する回転が、前記ジョイスティックの互いに反対な2方向からなる3組目の入力操作方向、及び、前記3組目の入力操作方向と略直行しかつ互いに反対な2方向からなる4組目の入力操作方向に割り当てられる
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のロボットアーム姿勢登録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの姿勢状態を登録するためのロボットアーム姿勢登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の表面の欠陥(表面欠陥)を検出する手法の一つとして、対象物の表面を撮影することで取得された撮影画像を用いた検出方法が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、明暗パターンを有する複数の投影光を対象物に投影し、当該対象物の表面を複数回撮影して取得された複数の撮影画像を用いて、対象物の表面欠陥を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-018932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、対象物の表面欠陥を検出する手法の一つとして、複数の撮影画像から対象物の表面欠陥を抽出した画像を生成する方法が存在する。具体的には以下の方法で表面欠陥を検出する。まず、明暗パターンを有する複数の投影光を対象物に投影し、当該対象物の表面を複数回撮影して取得された複数の撮影画像について各画素位置における輝度値を対比して最大輝度値と最小輝度値とを抽出してそれらの差分を演算し、全ての画素位置について演算した当該差分の値を各画素の輝度値として採用することで対象物の表面欠陥を強調した画像(欠陥強調画像)を生成する。次に、欠陥強調画像と、当該欠陥強調画像を平滑化した画像との差分の値を各画素の輝度値として採用することで表面欠陥を抽出した画像(欠陥抽出画像)を生成し、欠陥抽出画像を用いて対象物の表面欠陥を検出する。
【0006】
このような表面検査において複数枚の撮影画像を取得するために、ロボットアームの先端に明暗パターンを投影するための表示装置とカメラを設置し、ロボットアームに様々な姿勢をとらせることで対象のワークに対して複数の方向から撮影を実行することが行われている。このような場合、例えば6軸ロボットアームの各姿勢を設定するためには、従来はロボット教示操作盤と呼ばれる入力端末を用いて6軸の座標を入力して調整を行う必要があり、教育を受けた専任のスタッフしか設定できず、設定が容易ではないという問題があった。また、表面検査の場合に限らず、ロボットアームの姿勢登録を行う必要がある状況においては、同様に姿勢登録が容易ではないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ロボットアームの姿勢状態の登録を容易に実行可能とするロボットアーム姿勢登録システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るロボットアーム姿勢登録システムは、ロボットアームと、当該ロボットアームを動作させるロボットコントローラと、当該ロボットコントローラに前記ロボットアームの動作を制御する信号を出力するPLCと、操作者が前記ロボットアームを操作するために前記PLCに接続された設定ユニットとを少なくとも備えるロボットアーム姿勢登録システムであって、前記設定ユニットは、前記ロボットアームを操作するジョイスティックと、当該ジョイスティックと併用される複数の操作ボタンと、前記ロボットアームのモード指定を含む各種操作を行うための入力操作部と、前記設定ユニットに関する各種設定を行う設定部とを備え、前記ロボットアームのモードは、前記ロボットアーム先端の基準点に対する位置指定と前記ロボットアーム先端の姿勢指定とを登録可能な登録モードを含み、少なくとも前記登録モードにおいては、前記複数の操作ボタンには、押下された状態で前記ジョイスティックの操作に基づく前記ロボットアーム先端に対する指示可能な動作(以下「指示可能動作」という。)の内容が、互いに異なるように割り当てられ、前記指示可能動作は、前記ロボットアーム先端の基準点に対する移動及び/又は所定の基準軸を中心とした回転を含み、前記登録モードが指定された場合、前記設定部は、前記複数の操作ボタンのうち何れかが押下された場合に限り、前記ジョイスティックの操作に基づく前記ロボットアームへの操作を許可するものとし、前記複数の操作ボタンの何れかが押下された状態で前記ジョイスティックの操作が行われた場合、当該押下された操作ボタンに割り当てられた前記指示可能動作に基づいて前記ロボットアームの動作を制御し、前記入力操作部によって登録操作が行われた場合、前記ロボットアーム先端の指定位置及び指定姿勢における前記ロボットアームの各関節及び各回転軸の駆動状態を示す登録情報を前記PLC又は前記ロボットコントローラが備える記憶部に対して登録することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るロボットアーム姿勢登録システムは、前記設定部が、それぞれの前記指示可能動作を受け付ける前記ジョイスティックの入力操作の方向をそれぞれ基準操作方向としたとき、前記ジョイスティックの入力操作の方向の前記基準操作方向に対するずれが所定範囲内である場合には、当該入力操作を当該基準操作方向への入力とみなすことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るロボットアーム姿勢登録システムは、前記設定部が、前記ジョイスティックに対する入力操作時の前記ジョイスティックの軸の傾き度合いに応じて基準点に対する移動及び/又は前記基準軸を中心として回転の制御速度を決定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るロボットアーム姿勢登録システムは、前記ロボットアーム先端部分に設けた又は前記ロボットアーム先端部分の動作を撮影可能なカメラと、前記カメラで撮影された撮影画像を表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るロボットアーム姿勢登録システムは、前記ロボットアーム先端部分に設けた又は前記ロボットアーム先端部分の動作を撮影可能なカメラを備え、前記PLCは、前記登録情報に関連付けて、当該登録情報が示すロボットアームの位置及び姿勢の状態において実行される前記カメラの撮影条件に関する情報を前記記憶部に記憶することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るロボットアーム姿勢登録システムは、前記PLCが、前記登録情報に関連付けて、当該登録情報が示すロボットアームの位置及び姿勢の状態において実行される前記カメラの撮影対象となる表面欠陥の検知条件に関する情報を前記記憶部に記憶することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るロボットアーム姿勢登録システムは、前記設定ユニットが、第1操作ボタン、第2操作ボタン及び第3操作ボタンを備え、前記第1操作ボタンには、前記ロボットアーム先端の基準点を含む水平面内での移動という指示可能動作が、前記ジョイスティックの各入力操作方向に割り当てられ、前記第2操作ボタンには、略鉛直上下方向への移動という指示可能動作が前記ジョイスティックの互いに反対な2方向からなる1組目の入力操作方向に割り当てられ、前記基準点を通る略鉛直線を中心軸とした回転が前記1組目の入力操作方向に直交しかつ互いに反対な2方向からなる2組目の入力操作方向に割り当てられ、前記第3ボタン操作ボタンには、前記指示可能動作として前記基準点を含む水平面内で当該基準点において直交する2本の回転軸のそれぞれに対する回転が、前記ジョイスティックの互いに反対な2方向からなる3組目の入力操作方向、及び、前記3組目の入力操作方向と略直行しかつ互いに反対な2方向からなる4組目の入力操作方向に割り当てられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願の実施の形態により1又は2以上の不足が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応するロボットアーム姿勢登録システムの構成の一例を表した説明図である。
図2】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応するロボットアーム姿勢登録システムにおける設定ユニットの一例を表した斜視図である。
図3】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する設定ユニットに対する操作制限について説明した説明図である。
図4】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する設定ユニットに対する操作制限について説明した説明図である。
図5】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する設定ユニットに対する操作制限について説明した説明図である。
図6】ロボットアームを用いた表面検査システムの他の例を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るロボットアーム姿勢登録システムの例について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応するロボットアーム姿勢登録システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、ロボットアーム姿勢登録システム100は、設定ユニット10と、PLC(Programmable Logic Controller)20と、ロボットアーム30と、コンピュータ(PC)40と、ロボットコントローラ70と、ロボット教示操作盤80とを備える。なお、ロボットアームはどのような作業に用いられるものであってもよいが、本例においては、対象物の表面検査を行う表面検査システムにおいて用いられるロボットアーム30である場合を例として説明を行う。なお、従来、ロボットアームの姿勢登録のためにロボット教示操作盤80が用いられており、本発明においても使用することは可能であるが、本例は、このロボット教示操作盤80を用いるよりも容易に姿勢登録を行うために設定ユニット10を用いることを特徴とする。
【0019】
設定ユニット10は、操作者がロボットアーム30を操作するためのコントローラであり、姿勢登録を行う際にも用いられる。ここで、図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応するロボットアーム姿勢登録システムにおける設定ユニットの一例を表した斜視図である。図2に示すように、設定ユニット10は、例えば、筐体11と、入力操作部12と、緊急停止ボタン13と、複数の操作ボタン14a~14c、ジョイスティック15と、外観には現れない内部に備えられた設定部とからなる。入力操作部12は、前記ロボットアームのモード指定を含む各種操作を行うためのものである。各種操作が可能であればどのようなものであってもよいが、例えば、タッチパネル液晶で構成してもよい。この入力操作部12において可能な操作の1つにモードの変更があり、そのモードの1つに、ロボットアーム姿勢登録を行うモードである登録モードが含まれるものとする。緊急停止ボタン13は、ロボットアームの緊急停止を行うためのボタンであり、安全の担保のために設けられることが好ましい。複数の操作ボタン14a~14cは、これらのうち何れかが押下された場合に限りジョイスティック15の操作に基づくロボットアーム30への操作を許可する構成とするためのボタンである。そして、少なくとも登録モードにおいては、複数の操作ボタン14a~14cのそれぞれに対して、押下された状態でのジョイスティック15の操作に基づくロボットアーム先端に対する指示可能な動作(以下「指示可能動作」という。)の内容が、互いに異なるように割り当てられていることを特徴とする。ジョイスティック15は、360度の方向入力を行うことが可能な操作部であり、このジョイスティック15に基づいてロボットアーム30に対する操作を行う。また、ジョイスティック15の操作量を把握するための手段として、軸15aの傾きを直接または間接に検知可能な構成とすることが好ましい。設定部は、ロボットアーム30に対する操作や登録モード時の各種処理の制御を実行する。
【0020】
PLC20は、ロボットアーム30を予め設定した動作を実行させるように自動制御(シーケンス制御)するための装置である。ロボットアーム姿勢登録システム100では、登録モードによって決定したロボットアーム30の姿勢状態をこのPLC20又はロボットコントローラ70に対して登録する。登録モード中に登録操作が行われた場合、そのときのロボットアーム30の先端の指定位置及び指定姿勢におけるロボットアームの各関節及び回転軸の状態を示す登録情報をPLC20又はロボットコントローラ70が備える記憶部に対して登録するようにする。また、本例のようにロボットアーム30にカメラ33を設置する構成においては、PLC20において、登録情報が示すロボットアームの姿勢状態において実行されるカメラの撮影条件に関する情報を登録情報に関連付けて記憶させるようにしてもよい。
【0021】
ロボットアーム30は、複数の可動関節や複数の回転軸を備えることで様々な動きを実現可能なアーム部31を少なくとも備えている。アーム部31の構成は様々なものを採用可能であるが、例えば、6軸ロボットアームを採用することが考えられる。また、本例においては、図1に示すように、アーム部31の先端部分に、ワークWに対して明暗パターンを投影するための投影ディスプレイ32と、明暗パターンが投影された状態のワークWを撮影するためのカメラ33とが表面検査に用いるための構成として設置されている例を用いて説明を行う。
【0022】
投影ディスプレイ32は、対象物に対する投影光の投影パターンを生成するための所定の画像を表示するための装置である。投影ディスプレイ32の例には、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどがある。なお、投影ディスプレイ32は、例えば複数のLED(Light Emission Diode)により構成されてもよい。カメラ33は、対象物を撮影する機能を備えていればどのようなものであってもよい。
【0023】
コンピュータ40は、本例のようにロボットアーム30にカメラ33を設置する構成において、投影する明暗パターンの制御、カメラ33による撮影の制御、撮影画像データの取得処理などを実行する。コンピュータ40は、一般的なパーソナルコンピュータであってもよく、例えば、本体装置41、入力装置としてのキーボード42及びマウス43、表示装置44を備えている。本体装置41は、一般的なコンピュータが通常備えているであろうCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)と、メモリと、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等のストレージとを備えているものとする。
【0024】
ロボットコントローラ70は、ロボットアーム30を専用プログラムに基づいて直接制御するための構成である。PLC20に記憶させた自動制御内容に基づいて実際にロボットアーム30を駆動させる処理を実行する。なお、PLC20とロボットコントローラ70の2つによってロボットアーム30を自動制御する構成を例に説明を行うが、ロボットアーム30を自動制御可能であればこれに限定されるものではなく、例えば、PLC20とロボットコントローラ70の2つの機能を両方備えた1つの装置に基づいて自動制御を行う構成であってもよい。
【0025】
ロボット教示操作盤80は、ロボットアーム30の姿勢登録操作を行うための端末装置である。通常は、労働安全衛生法にて規定される教育を受けた者だけがこのロボット教示操作盤80にてロボットに動作設定をすることができる。本発明は、このロボット教示操作盤80による複雑な操作の代わりに設定ユニット10による姿勢登録を提案するものである。
【0026】
次に、設定ユニット10の具体的な機能について説明を行う。本発明は、複数の操作ボタン14a~14cのそれぞれに対して、ジョイスティック15を操作したときにロボットアーム先端に対して指示可能な動作(以下「指示可能動作」という。)の内容が互いに異なるように割り当てることで、操作性を向上させ、ロボットアーム30に所望の姿勢状態をとらせる作業を容易に行えるようにしたことを特徴とするものである。以下、本例における支持可能動作の割り当ての例について説明を行う。なお、複数の操作ボタンの数は3つの場合に限定されるものではなく、また、各操作ボタンに対してどのような指示可能動作を割り当てるかについては、以下の説明の例に限定されるものではない。
【0027】
図3乃至図5は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する設定ユニット10に対する操作制限について説明した説明図である。図3乃至図5はそれぞれ、複数の操作ボタン14a~14cに対して割り当てた指示可能動作の内容を表している。
【0028】
図3は、操作ボタン14a(第1操作ボタン)に対して、ロボットアーム先端の基準点を含む水平面内での移動という指示可能動作を、ジョイスティックの各入力操作方向に割り当てた状態を表している。ここで、ロボットアーム先端の基準点とは、移動動作及び回転動作の基準とするための点のことをいう。ジョイスティック15による操作者からの指示内容をこの基準点に対して適用するという意図であり、基準点に対する指示内容が実現されるように、ロボットアーム30の各関節及び各回転軸を協働させる制御を行う。本例では、ロボットアーム30のアーム部31の先端における投影ディスプレイ32との接続箇所を基準点としている。この図3の例では、操作ボタン14aを押した状態でジョイスティック15に対して入力操作を行うと、ロボットアーム先端の基準点の高さは維持した状態で水平面内を基準点が移動するように制御が行われる。
【0029】
図4は、操作ボタン14b(第2操作ボタン)に対して、略鉛直上下方向への移動という指示可能動作を、ジョイスティック15の互いに反対な2方向からなる1組目の入力操作方向に割り当て、さらに、基準点を通る略鉛直線を中心軸(基準軸)とした回転という指示可能動作を、1組目の入力操作方向に直交しかつ互いに反対な2方向からなる2組目の入力操作方向を割り当てた状態を表している。より具体的には、図4においては、鉛直上下方向への移動という指示可能動作をジョイスティック15の上下の入力操作方向に割り当て、基準点を通る鉛直線を中心軸とした回転という指示可能動作をジョイスティック15の左右の入力操作方向に割り当てている。この図4の例では、操作ボタン14bを押した状態でジョイスティック15に対して上下方向の入力操作が行われると、ロボットアーム先端の基準点が鉛直上下方向に移動するように制御が行われる。また、操作ボタン14bを押した状態でジョイスティック15に対して左右方向の入力操作が行われると、ロボットアーム先端の基準点を通る鉛直線を中心軸とした回転が行われるように制御が行われる。
【0030】
図5は、操作ボタン14c(第3操作ボタン)に対して、基準点を含む水平面内で当該基準点において直交する2本の回転軸(基準軸)のそれぞれに対する回転という指示可能動作を、ジョイスティックの互いに反対な2方向からなる3組目の入力操作方向、及び、3組目の入力操作方向と略直行しかつ互いに反対な2方向からなる4組目の入力操作方向に割り当てた状態を表している。より具体的には、図5においては、図5に示す状態において投影ディスプレイ32の長辺に平行な回転軸に対する回転という指示可能動作をジョイスティック15の上下の入力操作方向に割り当て、図5に示す状態において投影ディスプレイ32の短辺に平行な回転軸に対する回転という指示可能動作をジョイスティック15の左右の入力操作方向に割り当てている。この図5の例では、操作ボタン14cを押した状態でジョイスティック15に対して上下方向の入力操作が行われると、ロボットアーム先端の基準点を(操作者から見て)横方向に通過する回転軸回りの回転動作が実行されるように制御が行われる。また、操作ボタン14cを押した状態でジョイスティック15に対して左右方向の入力操作が行われると、ロボットアーム先端の基準点を(操作者から見て)前後方向に通過する回転軸回りの回転動作が実行されるように制御が行われる。
【0031】
このようにして、操作ボタン14a~14cの何れかを押下しながらジョイスティック15を操作することで、登録したいロボットアーム30の姿勢状態を決定する。ここで、ロボットアーム30の姿勢状態とは、ロボットアーム30が備える複数の関節及び回転軸のそれぞれの駆動量(制御量)が定まることで確定されるロボットアーム全体の姿勢のことをいう。これに対して、ロボットアーム30の先端の姿勢状態とは、ロボットアーム30の先端部分のみの姿勢(傾き)のことをいう。登録したいロボットアーム30の姿勢状態が決まったら、設定ユニット10の入力操作部12によって登録操作を実行することで、その時のロボットアーム30の姿勢状態を特定するための複数の関節及び回転軸のそれぞれの駆動量(制御量)をPLC20又はロボットコントローラの記憶部に対して記憶させる。複数の姿勢状態について登録を行って連続的に処理を行うようにPLC20又はロボットコントローラに登録する場合においても、各姿勢状態を同様に決定して登録操作を実行することになる。
【0032】
また、ロボットアーム30の姿勢状態に関する登録情報に加えて、その姿勢状態において実行する撮影の撮影条件や表面欠陥の検知条件を関連付けて記憶させるようにしてもよい。撮影条件とは、例えば、投影ディスプレイ32に表示させる明暗パターンの内容及び変化態様、撮影時の露光時間(シャッタースピード)、絞り値(F値)、ISO感度、撮影回数などが挙げられる。検知条件とは、例えば、関心領域の場所と大きさ、OK/NGを判別する閾値の設定などが挙げられる。これらの撮影条件や検知条件をPLC20又はロボットコントローラの記憶部に直接記憶させるようにしてもよいし、コンピュータ40に撮影条件や表面欠陥の検知条件を識別コードとともに記憶させ、PLC20においては撮影条件や表面欠陥の検知条件を指定するための識別コードを登録情報に関連付けて記憶させるようにしてもよい。
【0033】
また、登録モードにおける設定ユニット10のジョイスティック15に対する入力操作については、指示可能動作と対応付けた基準操作方向を設定することになる。基準操作方向とは、指示可能動作に対応付けるジョイスティックの入力操作方向のことをいう。例えば、操作ボタン14b(第2操作ボタン)に対して、略鉛直上下方向への移動という指示可能動作を割り当てる際には、ジョイスティック15に対する上下方向の入力操作を対応付けているため、この場合上下方向(右方向への入力を0度とした場合の90度及び270度の方向)が基準操作方向となる。このような設定において、ジョイスティック15に対する入力操作方向と基準操作方向との間に角度のずれがあった場合に入力操作を拒否する構成としてしまうと操作性が悪くなってしまうため、ジョイスティックの入力操作方向の前記基準操作方向に対するずれが所定範囲内である場合には、当該入力操作を当該基準操作方向への入力とみなすようにしてもよい。例えば、上下方向が基準操作方向に設定されている場合に、70度~110度の範囲の入力操作は上方向の入力操作として受け付け、250度~290度の範囲の入力操作は上方向の入力操作として受け付けるというように、基準操作方向から±20度の範囲のずれについては、基準操作方向への入力とみなすようにする。このような設定とすることで、操作者はストレスなくロボットアーム30の姿勢状態の調整を行うことが可能となる。
【0034】
また、登録モードにおけるロボットアーム30の先端部分の移動速度、回転速度を、ジョイスティック15の軸15aの傾きに応じて調整するようにしてもよい。ジョイスティック15を大きく倒して操作したとき、すなわち、軸15aの傾きが大きいときは、ロボットアーム30の先端部分の移動速度、回転速度が速くなるように制御し、ジョイスティック15を小さく倒して操作したとき、すなわち、軸15aの傾きが小さいときは、ロボットアーム30の先端部分の移動速度、回転速度が遅くなるように制御するようにしてもよい。このような制御を行うことで、大まかな調整段階では速く移動及び回転させ、最終的な微調整段階においては遅く移動及び回転させるといった使い方が可能となるので、ロボットアーム30の姿勢状態の調整が容易になる。
【0035】
以上のように、本発明に係るロボットアーム姿勢登録システムによれば、設定ユニットは、ロボットアームを操作するジョイスティックと、当該ジョイスティックと併用される複数の操作ボタンと、ロボットアームのモード指定を含む各種操作を行うための入力操作部と、設定ユニットに関する各種設定を行う設定部とを備え、ロボットアームのモードは、ロボットアーム先端の基準点に対する位置指定とロボットアーム先端の姿勢指定とを登録可能な登録モードを含み、少なくとも登録モードにおいては、複数の操作ボタンには、押下された状態でジョイスティックの操作に基づくロボットアーム先端に対する指示可能な動作(以下「指示可能動作」という。)の内容が、互いに異なるように割り当てられ、指示可能動作は、ロボットアーム先端の基準点に対する移動及び/又は所定の基準軸を中心とした回転を含み、登録モードが指定された場合、設定部は、複数の操作ボタンのうち何れかが押下された場合に限り、前記ジョイスティックの操作に基づく前記ロボットアームへの操作を許可するものとし、複数の操作ボタンの何れかが押下された状態でジョイスティックの操作が行われた場合、当該押下された操作ボタンに割り当てられた指示可能動作に基づいて前記ロボットアームの動作を制御し、入力操作部によって登録操作が行われた場合、ロボットアーム先端の指定位置及び指定姿勢におけるロボットアームの各関節の状態を示す登録情報をPLC又はロボットコントローラが備える記憶部に対して登録するようにしたので、ロボットアームの姿勢状態の登録が容易に実行可能となる。
【0036】
すなわち、ロボットアームの関節、回転軸に対する駆動量の指定を直接に行う必要がなく、操作者はロボットアームの先端の基準点に対する移動または回転を指定して姿勢状態を変化させることができるため、従来に比較してロボットアームの姿勢状態の登録作業の労力が軽減されるという効果が得られる。
【0037】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態においては、ワークWに対するロボットアーム30の姿勢状態を操作者が観察しながら決定するものとして説明を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、ロボットアーム30の先端に設けられたカメラ33による撮影画像を、コンピュータ40が備える表示装置44に表示させるようにし、表示装置44に表示された撮影画像を操作者が観察しながらロボットアーム30の姿勢状態の調整を実行可能としてもよい。このように、撮影画像を観察しながら調整可能とすることで、ワークWの写り方を見て姿勢状態を決定できるため、表面検査に用いる撮影画像にとって適切な撮影角度への調整が容易になる。
【0038】
[第3の実施の形態]
第1及び第2の実施の形態においては、ロボットアーム30に対して投影ディスプレイ32とカメラ33を設置するものとして説明を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、ロボットアーム30aのアーム部31aの先端にワークWを掴むためのハンド部34を設け、また、固定位置に投影ディスプレイ50とカメラ60を設置して、ロボットアーム30aの姿勢状態を調整することで、固定された投影ディスプレイ50及びカメラ60に対してワークWを対峙させる構成であってもよい。このように使用されるロボットアーム30aについても、第1及び第2の実施の形態と同様に本発明を適用することが可能である。
【0039】
[第4の実施の形態]
第1乃至第3の実施の形態においては、ロボットアーム30の動きに制限を設けてはいなかったが、ロボットアーム30に対して所定の制限を掛けるようにしてもよい。例えば、ロボットアーム30が侵入できない禁止エリアを設定して、禁止エリアに侵入する操作については受け付けないようにしてもよい。このような禁止エリアを設定するといった制限をかけることにより、操作者の誤操作によってロボットアーム30の周辺において事前に危険性を排除することが可能となるので、操作者は安心して姿勢状態の調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
100 ロボットアーム姿勢登録システム
10 設定ユニット
11 筐体
12 入力操作部
13 緊急停止ボタン
14a~14c 操作用ボタン
15 ジョイスティック
15a 軸
20 PLC
30、30a ロボットアーム
31、31a アーム部
32 投影ディスプレイ
33 カメラ
34 ハンド部
40 コンピュータ
41 本体装置
42 キーボード
43 マウス
44 表示装置
50 投影ディスプレイ
60 カメラ
70 ロボットコントローラ
80 ロボット教示操作盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6