(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】吹付けガン
(51)【国際特許分類】
B05B 7/04 20060101AFI20240809BHJP
B05B 7/24 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B05B7/04
B05B7/24
(21)【出願番号】P 2020187679
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】品川 肇
(72)【発明者】
【氏名】飯山 拓
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼橋 拓
(72)【発明者】
【氏名】寺垣 拓志
(72)【発明者】
【氏名】山本 千奈津
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-165164(JP,A)
【文献】特開平04-360962(JP,A)
【文献】特開昭63-039655(JP,A)
【文献】特開2015-006644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/04
B05B 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部と、他端部とを有する外筒と、
ノズルを有し、前記ノズルが前記外筒内に位置するように設けられている内筒と、
開口部を有する小径部、及び、前記小径部より内径が大きく形成されている大径部を有する縮径部であって、前記縮径部は、中空かつ先細の筒状であり、前記大径部から前記小径部まで、内径が連続的に小さくなるように形成されている縮径部と、
内径が一定の中空筒状の部材であって、先端部と、基端部と、空気導入部とを有する延長部と、を備え、
前記縮径部は、前記縮径部の前記小径部が前記ノズルより噴出方向側に配置され、
前記基端部は前記一端部に接続され、
前記空気導入部は、前記延長部において周方向に一定間隔で設けられた穴、又は前記先端部から切りかかれている切欠きである、
吹付け施工に用いる吹付けガン。
【請求項2】
前記延長部は、前記外筒と一体的に形成されている、請求項
1に記載の吹付けガン。
【請求項3】
一端部と、他端部とを有する外筒と、
ノズルを有し、前記ノズルが前記外筒内に位置するように設けられている内筒と、
開口部を有する小径部、及び、前記小径部より内径が大きく形成されている大径部を有する縮径部であって、前記縮径部は、中空かつ先細の筒状であり、前記大径部から前記小径部まで、内径が連続的に小さくなるように形成されている縮径部と、
内径が一定、かつ、前記外筒の外径より大きく形成されている中空筒状に形成されている延長部
と、を備え、
前記縮径部は、前記縮径部の前記小径部が前記ノズルより噴出方向側に配置され、
前記延長部は、
先端部と、基端部と、端面部と、空気導入部とを有し、前記基端部に前記一端部の少なくとも一部が差し込まれた状態で配置されており、
前記基端部の端部と、前記外筒との間の全周の空間には、前記端面部が配置されており、
前記端面部には前記空気導入部が複数配置されている、
吹付け施工に用いる吹付けガン。
【請求項4】
前記空気導入部は、前記延長部において周方向に一定間隔で設けられた穴である、請求項
3に記載の吹付けガン。
【請求項5】
前記延長部は、前記外筒と一体的に形成されている、請求項
3又は4に記載の吹付けガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃吹付け断熱材等の施工に用いる吹付けガンに関し、特に新規なノズル構造を備えた吹付けガンに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、建築用途向けの耐火被覆工法には、大別して吹付け工法、巻付け工法、成形板工法、及び塗装工法があり、その中でも、主としてロックウールを吹付けする耐火被覆が用いられている。ロックウールによる吹付け工法が多く用いられる理由としては、複雑な構造体に対して施工可能であること、吹付材をホース圧送することによりプラントから離れた場所での施工が可能で施工効率が高いこと、原料コストが安いことが挙げられる。一方、建築現場での作業員不足による労働力不足、熟練作業者の高齢化、等により、さらなる作業性の向上が求められている。さらに、吹付け工法は、施工中に粉じんが発生しやすいため、現場作業員や、周辺住民への環境に配慮して、粉じん量が低減できる工法の要求も高まってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉じん量の低減という上記要求に対し、混和剤を添加する方法が提案されている。しかし、この方法では、添加原料が増えることによるコストアップ、混和剤の添加に必要となる混錬の長時間化によるセメントスラリー粘度の過大な増加、及び、強度発現への悪影響の可能性が懸念される。また他の方法として、特許文献1に示されているように、セメントスラリーの供給管を分岐させ、一部をガンの内側、又は外側から吐出させ、ロックウールの飛散を抑制することを目的としたノズルが提案されている。しかし、この方法では、ガン先端部分の重量が増すこと、及び、操作手順が多くなることで、特に長時間の作業では作業者の負担が大きくなり、施工性が低下することが懸念される。加えてこの方法では、吐出口が増えることで吐出口にセメントスラリーが詰まるリスクが増大する課題もある。
【0005】
本発明は、従来のロックウールによる吹付け工法の施工性に関する上記の課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、セメントスラリーが詰まるリスクを増大させることなく、吹付け工法の施工性を向上させるとともに、粉じん量を低減させることができる吹付けガンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る吹付けガンは、一端部と、他端部とを有する外筒と、ノズルを有し、ノズルが外筒内に位置するように設けられている内筒と、開口部を有する小径部、及び、小径部より内径が大きく形成されている大径部を有する縮径部であって、縮径部は、大径部から小径部まで、内径が連続的に小さくなるように形成されている縮径部と、を備え、縮径部は、縮径部の小径部がノズルより噴出方向側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セメントスラリーが詰まるリスクを増大させることなく、吹付け工法の施工性を向上させるとともに、粉じん量を低減させることができる吹付けガンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明と、従来との両方の実施の形態に関するシステム図である。
【
図2】本発明と、従来との両方の実施の形態に関する、
図1と異なる別の実施の形態に関するシステム図である。
【
図3】実施の形態1に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図4】
図3の実施の形態1に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図5】実施の形態2に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図6】
図5の実施の形態2に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図7】実施の形態3に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図8】
図7の実施の形態3に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図9】実施の形態4に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図10】
図9の実施の形態4に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図11】実施の形態5に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図12】
図11の実施の形態5に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図13】実施の形態6に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図14】
図13の実施の形態6に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図15】実施の形態7に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図16】
図15の実施の形態7に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図17】実施の形態8に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図18】
図17の実施の形態8に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図19】実施の形態9に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図20】
図19の実施の形態9に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図21】
図3の実施の形態1に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図22】
図5の実施の形態2に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図23】
図7の実施の形態3に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図24】
図9の実施の形態4に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図25】
図11の実施の形態5に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図26】
図13の実施の形態6に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図27】
図15の実施の形態7に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図28】
図17の実施の形態8に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図29】
図19の実施の形態9に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図30】比較例1の吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図31】比較例1の吹付けガンを示した斜視図である。
【
図32】比較例1の吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【
図33】実施の形態10に係る吹付けガンを示した正面断面図である。
【
図34】
図33の実施の形態10に係る吹付けガンを示した斜視図である。
【
図35】
図33の実施の形態10に係る吹付けガンの噴出材の流速分布を示した流速線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態である吹付けガン101a~101kと、吹付けガン101a~101kが適用される吹付けシステムとを、添付図面に沿って説明する。本発明は、細部形状が異なる実施の形態1~10を含み、それぞれ吹付けガン101a~101kに相当する。吹付けガン101a~101k以外の吹付けシステムは従来と同じ構成であり、また何れの実施の形態1~10の吹付けガン101a~101kにも共通である。なお、図中、同一または対応する部分には、同一符号を付して、それらの説明は省略する。
<実施の形態1>
まず、本発明の吹付けガン101aを接続する吹付けシステムを説明する。
図1及び
図2は、本発明の形態である吹付けガン101aを備える吹付けシステムを示す概要図である。
図1には、乾式工法に用いられる吹付けシステムが示されている。また、
図2には、半乾式工法に用いられる吹付けシステムが示されている。
【0010】
図1に示されている乾式工法では、混綿材料A+Bと、水Cとを別々に圧送し、吹付けガンでそれらを混合して吹付ける方法である。乾式工法が用いられる吹付けシステムは、スラリーミキサー200と、スラリーポンプ210と、解綿機(吹付け機)300と、ブロア310と、吹付けガン101a~101kとを備えている。水Cは、スラリーミキサー200に投入され、スラリーポンプ210により、圧送される。また、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBとの混合である混綿材料は、解綿機(吹付け機)300に投入されて混ぜ合わされ、ブロア310により加圧されて圧送される。バインダーBは、セメント、又はセメントと合成樹脂エマルジョンとの両方が用いられる。本吹付けシステムの構成は、本発明に係るシステムと、従来のシステムとの両方に共通している。
【0011】
図2に示されている半乾式工法では、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと水Cとの混合物を別々に圧送し、吹付けガン101a~101kでそれらを混合して吹付ける方法である。乾式工法が用いられる吹付けシステムは、スラリーミキサー200と、スラリーポンプ210と、解綿機(吹付け機)300と、ブロア310と、コンプレッサ400と、吹付けガン101a~101kとを備えている。バインダーBと、水Cとは、スラリーミキサー200に投入され、スラリーポンプ210により、圧送される。また、混綿材料であるロックウール又は粒状綿Aは、解綿機(吹付け機)300に投入され、ブロア310により加圧されて圧送される。バインダーBは、セメント、合成樹脂エマルジョン、無機硬化剤の何れか、又はそれらの混合物である。本吹付けシステムの構成は、本発明に係るシステムと、従来のシステムとの両方に共通している。また、吹付け作業に対する吹付けシステムの吹付け能力が充分な場合などでは、コンプレッサ400は省略することも可能である。
【0012】
以下に、本発明の実施の形態1である吹付けガン101aを添付図面に沿って説明する。
図3は、実施の形態1に係る吹付けガン101aの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図4は、吹付けガン101aの斜視図である。
【0013】
吹付けガン101aは、外筒10と、内筒20と、縮径部30とを備えている。外筒10は、外面13と、内面14とを有し、外筒10の中心軸方向にわたって内径rが一様に形成されているストレートな円管部材である。外筒10と、縮径部30とは、両者の中心軸X-X方向に接続されている。また、内筒20は、一部が外筒10の内部に配置されて固定されている。吹付け材は、外筒10と、縮径部30との共通の中心軸X-Xと平行である吹付け材噴出方向Lに噴出する。吹付けガン101aの全長は、265mmに形成されている。なお、各寸法は、作り易さ、吹付け材の種類、施工面の条件、等により、適宜変更できる。
【0014】
外筒10は、吹付け材噴出側である一端部11と、吹付け材供給側である他端部12とを有している。外筒10の吹付け材供給側である他端部12には、解綿機(吹付け機)300から吹付け材が供給される、図示しないホースが接続されている。また、外筒10の一端部11と他端部12との間には、内筒20が貫通して配置される内筒配置穴15が設けられている。外筒10の全長は180mm、板厚は2mm、内径rは46mmに形成されている。
【0015】
内筒20は、外面23と、内面24とを有し、内径sが略一様に形成されている、屈曲した円管部材である。内筒20は、ノズル27が設けられている一方部21と、吹付け材供給側である他方部22とを有している。他方部22には、スラリーポンプ210から水、又は水とバインダーとの混合物であるスラリーが供給される、図示しないホースが接続されている。
【0016】
内筒20は、一方部21と、他方部22との間に、2つの第1屈曲部25、第2屈曲部26を有している。一方部21側の第1屈曲部25は、内筒20が内筒20の中心軸X-Xに対して鋭角となる所定の角度で形成されている。さらに、他方部22側の第2屈曲部26は、一方部21と他方部22との間の内筒20の中心軸X-Xに対して、第1屈曲部25の屈曲の向きとは反対向きに、鋭角となる所定の角度で形成されている。すなわち、一方部21と第1屈曲部25との間の内筒20と、第2屈曲部26と他方部22との間の内筒20とは、平行である。上記のように形成された内筒20は、外筒10の内筒配置穴15に、一方部21側から、第1屈曲部25と第2屈曲部26との間の部分まで差し込まれ、一方部21が外筒10の中心軸X-Xに平行になるようにして固定されている。
【0017】
縮径部30は、外面33と、内面34とを有し、先端が先細に形成されている中空部材である。縮径部30は、流路径を徐々に縮小することで、流速を増す部材である。縮径部30の、外面33と、内面34とは、中心軸X-Xに対し、テーパ角ta6°で形成されている、縮径部30は、吹付け材が噴出する開口部35が設けられている小径部31と、一定の外径内径とで形成されている円筒部36が設けられている大径部32とを有している。縮径部30は、円筒部36が外筒10の外面13に嵌め合わされて固定されている。縮径部30の全長は85mm、板厚は2mm、開口部35の直径は32mm、円筒部36の長さは30mmに形成されている。
【0018】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2である吹付けガン101bを説明する。
図5は、実施の形態2に係る吹付けガン101bの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図6は、吹付けガン101bの斜視図である。実施の形態2は、実施の形態1に対し、縮径部30bの形状のみが異なる。縮径部30bは、外面33bと、内面34bとを有し、先端が先細に形成されている中空部材である。縮径部30bは、流路径を徐々に縮小することで、流速を増す部材である。縮径部30bの、外面33bと、内面34bとは、中心軸X-Xに対し、テーパ角tb17°で形成されている、縮径部30bは、吹付け材が噴出する開口部35bが設けられている小径部31bと、大径部32bとを有している。縮径部30bの大径部32bの外径内径は、外筒10と同じ寸法に形成されている。縮径部30bは、外筒10の一端部11に接続されている。縮径部30bと、外筒10とは、一体的に形成されていてもよい。縮径部30bの長さは30mm、開口部35bの直径は、32mmに形成されている。
【0019】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3である吹付けガン101cを説明する。
図7は、実施の形態3に係る吹付けガン101cの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図8は、吹付けガン101cの斜視図である。実施の形態3は、実施の形態1に対し、縮径部30bの形状と、延長部40cを有することのみが異なる。縮径部30bは、実施の形態2と同じものである。すなわち、実施の形態3は、実施の形態2に対し、延長部40cを有することのみが異なる。
【0020】
延長部40cは、外面43cと、内面44cとを有し、外筒10の外径と略同じ内径が一様に形成されている、ストレートな円管部材である。延長部40cは、外筒10cを吹付け材噴出方向L側に延長することで、ノズル27より吹付け材噴出方向L側の流路空間を確保し、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと、水Cとを安定して混ぜ合わせる部材である。延長部40cは、先端部41cと、基端部42cと、先端部41cと基端部42cとの間に形成されている複数の空気導入部45cと、を有している。延長部40cは、基端部42c側の内面44cが、外筒10の一端部11側の外面13にはめ込まれて固定されている。空気導入部45cは、延長部40cの中心軸X-Xに平行に形成されている長穴形状の穴であり、延長部40cの周方向等間隔に4つ形成されている。空気導入部45cの長穴全長は75mm、幅は13mmである。延長部40cは、全長100mmであり、縮径部30bの小径部31bの端部からの噴出方向側の長さは30mmである。また、延長部40cの基端部42c側の端部から40mmが外筒10にはめ込まれている。そのため、外筒10の外面13に接することなく空気が通過できる有効長穴長は、約40mmである。なお、空気導入部45cは、周方向一定間隔で設けられた穴、又は先端部41cからその穴まで切りかかれている切欠きであってもよい。また41cの外面が傾斜面になっていてもよい。
【0021】
<実施の形態4>
次に、実施の形態4である吹付けガン101dを説明する。
図9は、実施の形態4に係る吹付けガン101dの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図10は、吹付けガン101dの斜視図である。実施の形態4は、実施の形態1に対し、縮径部30bの形状と、延長部40dを有することのみが異なる。縮径部30bは、実施の形態2と同じものである。また、実施の形態4の延長部40dは、実施の形態3の延長部40cに対し、全長と、空気導入部45dの形状とが異なる。
【0022】
延長部40dは、外面43dと、内面44dとを有し、外筒10の外径と略同じ内径が一様に形成されている、ストレートな円管部材である。延長部40dは、外筒10を吹付け材噴出方向L側に延長することで、ノズル27より吹付け材噴出方向L側の流路空間を確保し、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと、水Cとを安定して混ぜ合わせる部材である。延長部40dは、先端部41dと、基端部42dと、先端部41dと基端部42dとの間に形成されている複数の空気導入部45dと、を有している。延長部40dは、基端部42d側の内面44dが、外筒10の一端部11側の外面13にはめ込まれて固定されている。空気導入部45dは、延長部40dの中心軸X-Xに対し直角に形成されている長穴形状の穴であり、延長部40dの周方向等間隔に4つ形成されている。空気導入部45dの長穴全長は29mm、幅は13mmである。延長部40dは、全長70mmであり、縮径部30bの小径部31bの端部からの噴出方向側の長さは20mmである。また、延長部40dの基端部42d側の端部から20mmが外筒10にはめ込まれている。空気導入部45dは、空気導入部45dの基端部42d側の端部が、延長部40dの基端部42dから37mmの位置になるように、配置されている。また、延長部40dの中心軸X-X方向において、空気導入部45dの円周縁部の最も先端部41d側の端部の位置は、縮径部30bの小径部31bの端部の位置と同じ位置である。空気導入部45dは、外筒10の外面13に接することなく配置されているため、空気導入部45dの全ての部分で空気を通すことができる。なお、空気導入部45dは、周方向一定間隔で設けられた穴、又は先端部41dからその穴まで切りかかれている切欠きであってもよい。
【0023】
<実施の形態5>
次に、実施の形態5である吹付けガン101eを説明する。
図11は、実施の形態5に係る吹付けガン101eの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図12は、吹付けガン101eの斜視図である。実施の形態5は、実施の形態1に対し、縮径部30bの形状と、延長部40eを有することのみが異なる。縮径部30bは、実施の形態2と同じものである。また、実施の形態5の延長部40eは、実施の形態4の延長部40dに対し、空気導入部45eの位置のみが異なる。なお、空気導入部45eの形状は、実施の形態4の空気導入部45dと同じである。
【0024】
延長部40eは、外面43eと、内面44eとを有し、外筒10の外径と略同じ内径が一様に形成されている、ストレートな円管部材である。延長部40eは、外筒10を吹付け材噴出方向L側に延長することで、ノズル27より吹付け材噴出方向L側の流路空間を確保し、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと、水Cとを安定して混ぜ合わせる部材である。延長部40eは、先端部41eと、基端部42eと、先端部41eと基端部42eとの間に形成されている複数の空気導入部45eと、を有している。延長部40eは、基端部42e側の内面44eが、外筒10の一端部11側の外面13にはめ込まれて固定されている。空気導入部45eは、延長部40eの中心軸X-Xに対し直角に形成されている長穴形状の穴であり、延長部40eの周方向等間隔に4つ形成されている。空気導入部45eの長穴全長は29mm、幅は13mmである。延長部40eは、全長70mmであり、縮径部30bの小径部31bの端部からの噴出方向側の長さは20mmである。また、延長部40eの基端部42e側の端部から20mmが外筒10にはめ込まれている。空気導入部45eは、空気導入部45eの基端部42e側の端部が、延長部40eの基端部42eから20mmの位置になるように、配置されている。空気導入部45eは、外筒10の外面13に接することなく配置されているため、空気導入部45eの全ての部分で空気を通すことができる。なお、空気導入部45eは、周方向一定間隔で設けられた穴、又は先端部41eからその穴まで切りかかれている切欠きであってもよい。
【0025】
<実施の形態6>
次に、実施の形態6である吹付けガン101fを説明する。
図13は、実施の形態6に係る吹付けガン101fの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図14は、吹付けガン101fの斜視図である。実施の形態6は、実施の形態1に対し、縮径部30bの形状と、延長部40fを有することのみが異なる。縮径部30bは、実施の形態2と同じものである。また、実施の形態6の延長部40fは、実施の形態4の延長部40dに対し、空気導入部45fの形状のみが異なる。
【0026】
延長部40fは、外面43fと、内面44fとを有し、外筒10の外径と略同じ内径が一様に形成されている、ストレートな円管部材である。延長部40fは、外筒10を吹付け材噴出方向L側に延長することで、ノズル27より吹付け材噴出方向L側の流路空間を確保し、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと、水Cとを安定して混ぜ合わせる部材である。延長部40fは、先端部41fと、基端部42fと、先端部41fと基端部42fとの間に形成されている複数の空気導入部45fと、を有している。延長部40fは、基端部42f側の内面44fが、外筒10の一端部11側の外面13にはめ込まれて固定されている。空気導入部45fは、円形の穴であり、延長部40fの周方向等間隔に12個形成されている。空気導入部45fの穴径は直径12.5mmであり、基端部42fから、空気導入部45fの円周縁部の最も基端部42f側の端部までの長さは、37.5mmである。また、延長部40fの中心軸X-X方向において、空気導入部45fの円周縁部の最も先端部41f側の端部の位置は、縮径部30bの小径部31bの端部の位置と同じ位置である。空気導入部45fは、外筒10の外面13に接することなく配置されているため、空気導入部45fの全ての部分で空気を通すことができる。なお、空気導入部45fは、周方向一定間隔で設けられた穴、又は先端部41fからその穴まで切りかかれている切欠きであってもよい。
【0027】
<実施の形態7>
次に、実施の形態7である吹付けガン101gを説明する。
図15は、実施の形態7に係る吹付けガン101gの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図16は、吹付けガン101gの斜視図である。実施の形態7は、実施の形態1に対し、縮径部30bの形状と、延長部40gを有することのみが異なる。縮径部30bは、実施の形態2と同じものである。また、実施の形態7の延長部40gは、実施の形態5の延長部40eに対し、空気導入部45gの形状のみが異なる。なお、空気導入部45gの形状は、実施の形態6の空気導入部45fと同じである。
【0028】
延長部40gは、外面43gと、内面44gとを有し、外筒10の外径と略同じ内径が一様に形成されている、ストレートな円管部材である。延長部40gは、外筒10gを吹付け材噴出方向L側に延長することで、ノズル27より吹付け材噴出方向L側の流路空間を確保し、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと、水Cとを安定して混ぜ合わせる部材である。延長部40gは、先端部41gと、基端部42gと、先端部41gと基端部42gとの間に形成されている複数の空気導入部45gと、を有している。延長部40gは、基端部42g側から20mmが、外筒10の一端部11側の外面13にはめ込まれて固定されている。空気導入部45gは、円形の穴であり、延長部40gの周方向等間隔に12個形成されている。空気導入部45gの穴径は直径12.5mmであり、基端部42gから、空気導入部45gの円周縁部の最も基端部42g側の端部までの長さは、20mmである。すなわち、延長部40gの中心軸X-X方向において、空気導入部45gの円周縁部の最も基端部42g側の端部の位置は、外筒10の一端部11の端部の位置と同じ位置である。空気導入部45gは、外筒10の外面13に接することなく配置されているため、空気導入部45gの全ての部分で空気を通すことができる。なお、空気導入部45gは、周方向一定間隔で設けられた穴、又は先端部41gからその穴まで切りかかれている切欠きであってもよい。
【0029】
<実施の形態8>
次に、実施の形態8である吹付けガン101hを説明する。
図17は、実施の形態8に係る吹付けガン101hの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図18は、吹付けガン101hの斜視図である。実施の形態8は、実施の形態1に対し、縮径部30がなく、延長部40hを有することが異なっている。外筒10は、実施の形態1の外筒10と同じである。外筒10の一端部11には、中空の円筒部材である延長部40hが接続されている。延長部40hは、外筒10を吹付け材噴出方向L側に延長することで、ノズル27より吹付け材噴出方向L側の流路空間を確保し、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと、水Cとを安定して混ぜ合わせる部材である。吹付けガン101hの全長は250mmであり、延長部40hの全長は70mmである。すなわち、ノズル27の先端から吹付けガン101hの延長部40hの先端までの長さは、70mmである。吹付けガン101hの延長部40hを除く部分は、後述する従来の吹付けガンと同じものである。なお、外筒10と延長部40hとは、一体的に形成されていてもよい。
【0030】
<実施の形態9>
次に、実施の形態9である吹付けガン101jを説明する。
図19は、実施の形態9に係る吹付けガン101jの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図20は、吹付けガン101jの斜視図である。実施の形態9は、実施の形態1に対し、縮径部30bを有し、外筒10jの一端部11j側が延長され、空気導入部45jが設けられていることが異なっている。外筒10jの延長された部分は、実施の形態3~8の延長部40c~40hと同じ作用をもたらすものであり、外筒10jを吹付け材噴出方向L側に延長することで、ノズル27より吹付け材噴出方向L側の流路空間を確保し、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと、水Cとを安定して混ぜ合わせる部材である。すなわち、実施の形態9では、外筒10jと延長部とが一体的に形成されている。外筒10jは、外面13jと、内面14jとを有し、内径rが一様に形成されている、ストレートな円管部材である。また、外筒10jは、一端部11jと、他端部12jと、一端部11jと他端部12jとの間に、複数の空気導入部45jを有している。外筒10jには、内筒20が固定されており、他端部12jの端部からノズル27までの長さは166mmである。
【0031】
また、外筒10jには、実施の形態2と同じ縮径部30bが、外筒10jの内部に固定されている。縮径部30bは、外筒10jの内部において、大径部32bの端部が、ノズル27の先端から4mmの位置になるように外筒10j内に固定されている。また、外筒10jの縮径部30bが取り付けられている周辺部には、空気導入部45jが設けられている。空気導入部45jは、長さ30mm、幅14mmの長穴形状であり、外筒10jの中心軸X-X方向に平行になる向きで、外筒10jの周方向等間隔に4つ設けられている。空気導入部45jが設けられている外筒10jの中心軸X-X方向位置は、
図19に示されているように、空気導入部45jの他端部12j側が縮径部30bと重なる位置である。空気導入部45jは、外筒10jの外面13jに接することなく配置されているため、空気導入部45jの全ての部分で空気を通すことができる。なお、空気導入部45jは、周方向一定間隔で設けられた穴、又は一端部11jからその穴まで切りかかれている切欠きであってもよい。
【0032】
<実施の形態10>
次に、実施の形態10である吹付けガン101kを説明する。
図33は、実施の形態10に係る吹付けガン101kの中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図34は、吹付けガン101kの斜視図である。実施の形態10は、実施の形態1に対し、縮径部30bを有し、延長部40kを有することのみが異なる。縮径部30bは、実施の形態2と同じものである。また、実施の形態10の延長部40kは、実施の形態3の延長部40cに対し、全長と、内径と、空気導入部45kの位置と形状が異なる。
延長部40kは、外筒10よりも大きな内径の44kと、外筒10と略同じ内径の47kと、44kと47kを一定の間隔で保持しながら基端部側で接続固定する隔壁と、を有している。隔壁には空気導入部として、吹付材の噴出方向と略平行に開口部を複数設けている。開口部の直径は12.5mmで、円周方向に均等な間隔で12個形成されている。延長部40kは、外筒10に延長部の47kが差し込まれて保持される。延長部40kは、外筒10を吹付け材噴出方向L側に延長することで、ノズル27より吹付け材噴出方向L側の流路空間を確保し、ロックウール又は粒状綿Aと、バインダーBと、水Cとを安定して混ぜ合わせる部材である。延長部40kの全長は70mmであり、内径は78mmである。なお空気導入部45kは、周方向一定間隔で設けられた穴、又は先端部41kからその穴まで切り欠かれている切り欠きあるいは、47kの先端からその穴まで切り欠かれている切り欠きであってもよい。
【0033】
[流体解析ソフトによる流速分布検討]
上記の各実施の形態1~10について、流速分布の検討を流体解析ソフトで行った。性能を比較するため、従来の吹付けガンである比較例1と比較した。この結果が
図21~
図29、
図32及び
図35に示されている。
図30~
図31には、従来の吹付けガンである比較例1が示されている。
図30は従来の吹付けガン110の中心軸X-X方向に沿った断面による正面断面図である。また、
図31は、吹付けガン110の斜視図である。吹付けガン110は、縮径部30が無い以外は、実施の形態1の吹付けガン101aと同じものである。吹付けガン110は、一端部11に開口部16を有している。
【0034】
次に、
図21~
図29、
図32及び
図35の実施の形態1~10の各流速線図と、表1の流体解析ソフトによる各実施の形態1~10の最大流速計算結果とを説明する。
図21~
図29、
図32及び
図35の流速線図は、全て各実施の形態1~10の吹付けガン101a~101kのガン先から140mmの距離における流速を示す線図である。流速を7.5m/sごとに領域で示している。各流速領域には、X1(流速0m/s近辺)から、X11(75m/s~82.5m/s)まで、流速に対応した符号を付している。X1からX11までの各流速範囲は、次のとおりである。また、表1の最大流速計算結果は、実施の形態1~9におけるそれぞれの最大流速値を示している。
X1=0m/s以上7.5m/s未満
X2=7.5m/s以上15m/s未満
X3=15m/s以上22.5m/s未満
X4=22.5m/s以上30m/s未満
X5=30m/s以上37.5m/s未満
X6=37.5m/s以上45m/s未満
X7=45m/s以上52.5m/s未満
X8=52.5m/s以上60m/s未満
X9=60m/s以上67.5m/s未満
X10=67.5m/s以上75m/s未満
X11=75m/s以上82.5m/s未満
【0035】
図21は、実施の形態1の流速分布計算結果である。最大流速は62.2m/sであり、X9の領域として示されている。縮径部30を備えることで流速が向上している。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX7からX3の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0036】
図22は、実施の形態2の流速分布計算結果である。最大流速は実施の形態中最速である79.2m/sであり、X11の領域として示されている。実施の形態1よりもより大きいテーパ角tbを有する縮径部30を備えることで流速が向上している。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX8からX3の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0037】
図23は、実施の形態3の流速分布計算結果である。最大流速は67.3m/sでありX9の領域として示されている。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX7からX3の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0038】
図24は、実施の形態4の流速分布計算結果である。最大流速は65.5m/sでありX9の領域として示されている。最大流速は実施の形態2より落ちるものの、流速域は、ほぼ中心に向かって同心円状に分布している。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX8からX3の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0039】
図25は、実施の形態5の流速分布計算結果である。最大流速は66.3m/sでありX9の領域として示されている。最大流速は実施の形態2より落ちるものの、流速域は、ほぼ中心に向かって同心円状に分布している。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX8からX3の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0040】
図26は、実施の形態6の流速分布計算結果である。最大流速は67.9m/sでありX10の領域として示されている。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX9からX3の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0041】
図27は、実施の形態7の流速分布計算結果である。最大流速は65.8m/sでありX9の領域として示されている。最大流速は実施の形態2より落ちるものの、流速域は、ほぼ中心に向かって同心円状に分布している。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX8からX3の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0042】
図28は、実施の形態8の流速分布計算結果である。最大流速は34.0m/sでありX5の領域として示されている。縮径部30、30bが無い分、最大流速は、他の実施の形態よりかなり低くなっている。流速域は、ほぼ中心に向かって同心円状に分布している。また、吹付け材の噴出範囲は、実施の形態1~7より広がっている。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX4からX1の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0043】
図29は、実施の形態9の流速分布計算結果である。最大流速は56.8m/sでありX8の領域として示されている。吹付け材の噴出範囲は、実施の形態1~7より広がっている。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX7からX4の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0044】
図35は、実施の形態10の流速分布計算結果である。最大流速は76.9m/sでありX11の領域として示されている。流速域は、ほぼ中心に向かって同心円状に分布している。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX8からX3の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。実施の形態10の流速分布は、比較例に比べ最大流速が大幅に高い。また流速の遅い最外周の分布範囲が狭く、さらに外周から内周に向けてほぼ同心円状に徐々に流速が高まっていることが判る。
【0045】
図32は、従来の吹付けガンである比較例1の流速分布計算結果である。最大流速は34.5m/sでありX5の領域として示されている。吹付け材の噴出範囲は、実施の形態1~7より広い範囲である。流速域は、ほぼ中心に向かって同心円状に分布している。外周から内周に向けて徐々に流速が高まっている分布中の中央付近において、逆に流速が低くなっているX4からX1の領域が存在するが、これは内筒20とノズル27との影響を受けて流速が低下している下流域であると思われる。
【0046】
【0047】
[各実施の形態の試作品による吹付け施工実験]
各実施の形態1~9について、試作品を用いて吹付け施工実験を行った。性能を比較するため、従来の吹付けガンである比較例1と比較した。吹付け条件は、次のとおりである。吹付け材のスラリー比率は、セメント1:水2とした。スラリーとロックウールとの吐出量比率について、スラリー8kg/分に対し、ロックウール4kg/分となるようにした。すなわち、スラリー中のセメントとロックウールとの固形分比率は、セメント4に対しロックウール6の比率となるようにした。
【0048】
表2には、各実施の形態1~9の施工実験結果が示されている。実施の形態1~9の全てについて、目視による5段階評価を行った。評価項目は、粉じんの飛び散り、材料の混ざり具合、ロックウールの締り具合の3項目である。上記のそれぞれの項目について、従来の吹付けガンである比較例1を評点3として、次の指標で相対評価した。
5-現状のガンに対し、大きく向上している
4-現状のガンに対し、明らかに向上している
3-現状のガンと同等
2-現状のガンに対し、明らかに劣っている
1-現状のガンに対し、大きく劣っている
【0049】
また、一部の実施の形態を除いて、施工面に実際に吹付けされた吹付け材の平均密度を測定した。さらに、実施の形態1、3、7、9については、落ち綿低減率を測定した。落ち綿低減率とは、天井面へ30秒間吹付けた時に、地面に敷いたシートに落ちたロックウール(スラリー付着分を含む)の質量について、従来の比較例1の吹付けガンで発生した落ち綿に対する各実施の形態1~9の吹付けガンの低減率である。この値が大きいほど、従来の吹付けガンに対し、施工面に付着せずに落ちる吹付け材が少ないということを意味している。落ち綿低減率の具体的算出法は、次のとおりである。
落ち綿低減率(%)=(従来の吹付けガンの落ち綿(g)-実施の形態の吹付けガン落ち綿(g))/従来の吹付けガンの落ち綿(g)×100
【0050】
粉じんの飛び散り、材料の混ざり具合、ロックウールの締り具合の評価結果
各実施の形態1~9を比較例1と比較した結果、粉じんの飛び散り、材料の混ざり具合、ロックウールの締り具合の評価結果の全体としてみると、全ての実施の形態1~9は、ほとんどの項目において、比較例1を上回っていた。粉じんの飛び散りでは、実施の形態4、8が比較例1と同等である3であり、実施の形態2、5~7が若干上回る3.5、実施の形態1、3、9は、明らかに向上している4であった。材料の混ざり具合は、実施の形態1~9の全てが、比較例1に対し、明らかに向上している4であった。ロックウールの締り具合は、実施の形態8が比較例1と同等である3であり、実施の形態1~7、9は、比較例1に対し、明らかに向上している4であった。すなわち、実施の形態1~9の全てにおいて、従来の吹付けガンに対し、明らかに向上していた。
【0051】
平均密度については、次のとおりである。実施の形態2は0.29g/cm3、実施の形態4、7、9は、0.30g/cm3、実施の形態1、5は0.32g/cm3、実施の形態3は0.34g/cm3、実施の形態6は0.35g/cm3であった。一方、比較例1は0.26g/cm3であった。すなわち、測定した実施の形態1~7、9の全てが、従来の吹付けガンに対し、明らかに向上していた。
【0052】
落ち綿低減率については、次のとおりである。落ち綿低減率は、実施の形態1、3、7、9についてのみ比較した。実施の形態7は30.1%であった。実施の形態1は41.6%であった。実施の形態9は49.5%であった。実施の形態3は、比較した4つの実施の形態では一番良く、64.0%であった。すなわち、比較した実施の形態1、3、7、9の全てについて、従来の吹付けガンに対し、施工面から落下する量が明らかに低減していた。
【0053】
【0054】
以上の結果より、全ての実施の形態1~9は、従来の吹付けガンに対し、明らかな向上が見られた。また実施の形態10は、実施の形態1~7および9に類似する最大流速を示しているため、ロックウールの締まり具合は実施の形態1~7および9と同様と考えられる。また実施の形態10は、流速分布も実施の形態1、3、7と類似した分布形状で外周から内周に向けて徐々に流速が高まっているため、比較例1に対して、落ち綿量の低減効果が得られると考えられる。実施の形態1~10は、従来の吹付けガンに対し、縮径部30、30b、及び/又は、延長部40c、40d、40e、40f、40g、40h、40j、40kを追加的に備えているだけであるから、作業者の負担を増やすことなく、吹付け工法の施工性を向上させることができる。また、実施の形態1~10は、従来の吹付けガンに対し、粉じんの飛び散り、又は落ち綿低減の何れか又は両方で向上していることから、実施の形態1~10の何れにおいても、従来の吹付けガンに対し、粉じん量を低減させることができる。
【0055】
本発明の吹付けガン101a~101kでは、縮径部30、30bを備えている。
【0056】
本発明の上記構成によれば、流速を増加させることができる。また、粉じんの飛び散りを抑えるとともに、ロックウールの締まり具合、平均密度、落ち綿低減率を向上させることができる。
【0057】
また、本発明の吹付けガン101c~101gおよび101j~101kでは、空気導入部45c~45kを有する延長部40c~40kを備えている。
【0058】
本発明の上記構成によれば、粉じんの飛び散りを抑えるとともに、平均密度、落ち綿低減率を向上させることができる。
【0059】
また、本発明の吹付けガン101c~101gおよび101j~101kでは、空気導入部45c~45kは穴、又は前記先端部から切りかかれている切欠きを備えている。
【0060】
本発明の上記構成によれば、穴、又は切欠きという加工容易な構成で空気導入部45c~45kを備えることができる。よって、粉じんの飛び散りを抑えるとともに、平均密度、落ち綿低減率を向上させる空気導入部を容易に設けることができる。
【0061】
また、本発明の吹付けガン101jでは、延長部は外筒10jと一体的に形成されている。
【0062】
本発明の上記構成によれば、外筒10jを形成する際に、延長部も同時に形成することができる。よって、延長部の作用を備える外筒10jを容易に作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、不燃物を吹付ける吹付けガンに適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 外筒、11 一端部、12 他端部、20 内筒、27 ノズル、
30,30b 縮径部、31,31b 小径部、32,32b 大径部、
40c~40k 延長部、41c~41k 先端部、42c~42k 基端部。