(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】破砕装置
(51)【国際特許分類】
B02C 18/14 20060101AFI20240809BHJP
B02C 23/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B02C18/14 B ZAB
B02C23/00 A
(21)【出願番号】P 2020193805
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】牧 和久
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123382(JP,A)
【文献】特開平07-204531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C13/00-13/31
B02C18/00-18/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッター部とスペーサー部からなる破砕刃を有する破砕装置において、
前記スペーサー部に付着した付着物を掻き取るスクレーパーを備え、
装置側面から見たときに、前記スクレーパーは、前記スペーサー部に向かう傾斜部を有し、
処理対象物を投入する投入口の真上方向から見たときに、前記スクレーパーの
掻き取り部分を有する傾斜部と前記スペーサー部は重なるように配置されており、かつ前記スクレーパーの傾斜部が前記スペーサー部の上方に重なる領域を有する
とともに、前記スクレーパーは、装置の幅方向に対して一様に連続した面を有することを特徴とする、破砕装置。
【請求項2】
前記スクレーパーの傾斜部の延長線と前記スペーサー部とが交わる交点と、前記破砕刃の中心とを結ぶ直線が、前記破砕刃の中心を通る水平線に対して成す角度は、10度~20度であることを特徴とする、請求項1に記載の破砕装置。
【請求項3】
前記スクレーパーの傾斜部が、装置の鉛直方向に対して成す角度は、45度以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の破砕装置。
【請求項4】
処理対象物を投入する投入口の真上方向から見たときに、前記スクレーパーは、前記スペーサー部の下方に重なる領域を併せて有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の破砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を破砕する破砕装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、家庭や工場などから排出される廃棄物等の処理対象物を処理する手段の一つとして、処理対象物を一定の大きさに破砕する破砕装置が知られている。
【0003】
このような破砕装置としては、複数の回転刃を有するものが知られている。また、このような破砕装置においては、処理対象物を破砕する際、回転刃とケーシングの間に処理対象物が落下することを抑制する構造を設けることがある。
例えば、特許文献1には、破砕装置に設けられた回転する複数の刃の間にスペーサーが配置され、そのスペーサーとケーシングとの間の間隙に落下防止板を配置し、未破砕物の落下を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すように、破砕装置において未破砕物が落下することを抑制する構造を設けることは知られている。しかし、特許文献1に示すような落下防止板を設けた場合、落下防止板上に処理対象物が滞留し、回転刃による破砕処理が進行しなくなるという問題が生じる。
したがって、未破砕物の落下を抑制するとともに、処理対象物の滞留を抑制することができる構造を設けることが求められる。
【0006】
また、破砕装置においては、回転刃の間にスペーサーを設置する際、スペーサーに挟まった処理対象物を掻き取るスクレーパーを設けることも知られている。スクレーパーは、スペーサーに近接するように設けられる。このため、スクレーパーには、処理対象物の掻き取り機能だけではなく、未破砕物の落下を抑制する機能など、他の機能を付与することが可能である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、未破砕物の落下を抑制するとともに、処理対象物の滞留を抑制することができるスクレーパーを備えた破砕装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、スクレーパーの配置及び構造に関し、スペーサー部に向かって傾斜し、かつスペーサー部の上方に重なるような配置及び構造とすることで、処理対象物がカッター部及びスペーサー部側に効率的に移動し、未破砕物の落下を抑制するとともに、処理対象物の滞留を抑制できることを見出して本発明を完成した。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の破砕装置は、カッター部とスペーサー部からなる破砕刃を有する破砕装置において、スペーサー部に付着した付着物を掻き取るスクレーパーを備え、装置側面から見たときに、スクレーパーは、スペーサー部に向かう傾斜部を有し、処理対象物を投入する投入口の真上方向から見たときに、スクレーパーの傾斜部とスペーサー部は重なるように配置されており、かつスクレーパーの傾斜部がスペーサー部の上方に重なる領域を有することを特徴とするものである。
この特徴によれば、スペーサー部に付着した付着物を掻き取るように設けられたスクレーパーは、破砕刃とケーシングの空間(間隙)を満たすように配置されることで未破砕物の落下を抑制するとともに、スクレーパーの傾斜部を介して処理対象物がスペーサー部に向かって滑り落ちていくようにすることができる。さらに、スクレーパーの傾斜部がスペーサー部の上方に重なる領域を設けることで、傾斜部を滑り落ちた処理対象物はスペーサー部の回転方向に沿って効率的に移動することができる。これにより、未破砕物の落下を抑制するとともに、処理対象物の滞留を抑制する機能を、スクレーパーに付与することが可能となる。
【0010】
さらに、本発明の破砕装置の一実施態様としては、スクレーパーの傾斜部の延長線とスペーサー部とが交わる交点と、破砕刃の中心とを結ぶ直線が、破砕刃の中心を通る水平線に対して成す角度は、10~20度であることを特徴とする。
この特徴によれば、上記角度を規定することで、スクレーパーの傾斜部とスペーサー部とが重なる領域の広さを規定することができる。また、特定の範囲内となるように上記角度を規定することにより、未破砕物の落下を抑制するとともに、処理対象物の滞留抑制に好適となる領域を形成することが可能となり、本発明の効果をより一層発揮することが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の破砕装置の一実施態様としては、スクレーパーの傾斜部が、装置の鉛直方向に対して成す角度は、45度以下であることを特徴とする。
この特徴によれば、上記角度を特定の範囲内となるように規定することで、スクレーパーの傾斜部上への処理対象物の滞留抑制に好適となる構造を形成することが可能となり、本発明の効果をより一層発揮することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の破砕装置の一実施態様としては、処理対象物を投入する投入口の真上方向から見たときに、スクレーパーは、スペーサー部の下方に重なる領域を併せて有することを特徴とする。
この特徴によれば、スペーサー部の上部だけではなく、スペーサー部の下部においても、付着物を掻き取る機能をスクレーパーに付与することが可能となる。これにより、スクレーパーの機能を高めることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の破砕装置の一実施態様としては、処理対象物を投入する投入口の真上方向から見たときに、スクレーパーは、装置の幅方向に対して一様に連続した面を有することを特徴とする。
この特徴によれば、スクレーパーが装置の幅方向に連続した面を有することで、未破砕物の落下をより一層抑制することができる。特に、傾斜部間の隙間への処理対象物の落下や引っ掛かりがないので、処理対象物の移動は途中で止まることがない。これにより、破砕刃に向かってスムーズに処理対象物が滑り落ちていくことが可能となり、本発明の効果をより一層発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、未破砕物の落下を抑制するとともに、処理対象物の滞留を抑制することができるスクレーパーを備えた破砕装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施態様に係る破砕装置の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様に係る破砕装置におけるスクレーパー近傍の概略説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施態様に係る破砕装置の構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第3の実施態様に係る破砕装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明にかかる破砕装置の実施態様を説明する。
なお、実施態様は破砕装置の一例を示すものである。本発明に係る破砕装置は、実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施態様に係る破砕装置を変形してもよい。
【0017】
本発明における破砕装置は、処理対象物を破砕する装置であって、破砕刃としてカッター部及びスペーサー部を備えるものであればよい。なお、以下の実施態様においては、二軸型破砕機の構造を有するものについて説明するが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の破砕装置により破砕される対象である処理対象物については、特に限定されない。例えば、家庭や工場などから排出される一般廃棄物や産業廃棄物、あるいは下水のし渣などが挙げられる。特に、粘性を有するものや繊維質からなるものなど、破砕装置への投入時に破砕刃周辺での滞留が生じやすいものを、本発明の処理対象物として好適に用いることが可能である。
【0019】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様に係る破砕装置1Aの構造を示す概略説明図である。
図1(A)は側面図であり、
図1(B)は上方から見た平面図である。
【0020】
[破砕装置]
本発明の第1の実施態様の破砕装置1Aは、
図1(A)に示すように、駆動モータ2と、駆動モータ2により駆動される駆動軸5aと、駆動軸5aの回転動力が伝達されて駆動する従動軸5bと、駆動軸5a及び従動軸5bの周囲に配設された複数枚の破砕刃6と、スクレーパー7Aと、を備えている。
また、破砕装置1Aは、破砕刃6と駆動軸5a、及び、破砕刃6と従動軸5bの組み合わせにより構成されたカッターユニット4a及び4bを収容するケーシング3を備えている。
以下、本実施態様の破砕装置1Aに係る各構成について説明する。
【0021】
[駆動モータ]
駆動モータ2は、駆動軸5aに回転動力を伝達することにより、破砕刃6を回転させるためのものである。
駆動モータ2の回転機構としては、どのようなものを使用してもよい。例えば、電動モータ、油圧モータ、水圧モータ、空気圧モータ等が挙げられる。
【0022】
[駆動軸]
駆動軸5aとは、駆動モータ2の回転動力により回転する軸部材である。また、駆動軸5aの周囲には、破砕刃6が配設されており、駆動軸5aの回転とともに破砕刃6が所定の速度で回転する。
駆動軸5aの形状は、周囲に配設された破砕刃6を固定するものであればよく、例えば、駆動軸5aに凸部、破砕刃6に凹部を設けて、これらの凸部と凹部を嵌合させる構成や、駆動軸5aを断面多角形状とし、破砕刃6の中心部に駆動軸5aと略同一の多角形状の軸穴を設けて咬合する構成が挙げられる。
【0023】
[従動軸]
従動軸5bとは、駆動モータ2の回転動力が駆動軸5aを介して伝達されることにより回転する軸部材である。
また、駆動軸5aと同様に、従動軸5bの周囲には、破砕刃6が配設されており、従動軸5bの回転とともに破砕刃6が所定の速度で回転する。なお、従動軸5bと破砕刃6の固定に係る形状については特に限定されない。例えば、駆動軸5aと破砕刃6の固定に係る形状と同様に構成することが挙げられる。
【0024】
駆動軸5aから従動軸5bへの回転動力の伝達手段としては、特に限定されないが、例えば、各軸の上端に設置されたプーリーをベルトで連結する手段や、歯車により連結する手段等が挙げられる。なお、本実施態様においては、破砕刃6を回転させる回転軸として、駆動軸5aと従動軸5bからなるものについて示したが、これに限定されない。例えば、それぞれの軸が独立して駆動するものを用いることが挙げられる。
また、駆動軸5aと従動軸5bの回転速度の関係は特に限定されない。例えば、駆動軸5aと従動軸5bを異なる速度で回転させることや、駆動軸5aと従動軸5bを同じ速度で回転させることが挙げられる。回転軸の回転速度の関係については、回転動力の伝達手段に係る構造設計の容易性や駆動に係る電力使用量などを鑑み、適宜設定することが可能である。
【0025】
[破砕刃]
破砕刃6は、ディスク状のカッター部61と、カッター部61より小さい径のスペーサー部62が同心で重なって構成される。なお、カッター部61とスペーサー部62は一体に設けられてもよく、別体としてもよい。ここでいう「一体」とは、1つのカッター部61と1つのスペーサー部62を組み合わせて一体化したもののほか、カッター部61とスペーサー部62を交互に複数枚積層した組み合わせを一体化したものや、複数のカッター部61と複数のスペーサー部62の組み合わせを一体化したもの等が挙げられる。
これにより、例えば、カッター部61とスペーサー部62を一体とした場合、部品点数を少なくし、組み立てに係る作業性を高めることができる。一方、カッター部61とスペーサー部62を別体とした場合、カッター部61やスペーサー部62の仕様に変更が生じた場合や、いずれかに不具合などによる交換が必要となった場合に、交換に係る対応が容易となる。
【0026】
図1(B)に示すように、破砕刃6は、複数の破砕刃6が積層されるように駆動軸5a及び従動軸5bの周囲にそれぞれ配設されて、カッターユニット4a及び4bを構成している。カッターユニット4a及び4bは、一方のカッターユニットのスペーサー部62により形成された隙間に、他方のカッターユニットのカッター部61が係合するようにして、ケーシング3の内部に設置される。
【0027】
また、
図1(B)に示すように、カッターユニット4aは、破砕装置1Aの上部から見て、反時計回りに回転し、カッターユニット4bは、時計回りに回転する。そして、処理対象物が破砕装置1Aの上方から投入されると、処理対象物はカッターユニット4a及び4bの間を通過し、破砕刃6のカッター部61により切断される。
【0028】
破砕刃6の材質は、特に限定されないが、例えば、工具鋼、クロムモリブデン鋼やステンレス鋼等の金属材料、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素等のセラミックス材料等が挙げられる。強度が高く破損しにくいという観点から、工具鋼、クロムモリブデン鋼やステンレス鋼等の金属材料を用いることが好ましい。
【0029】
[ケーシング]
ケーシング3は、上記カッターユニット4a及び4bを収容するものである。また、
図1(A)に示すように、ケーシング3は、上部(図示上側)に処理対象物が投入される投入口3aが形成され、下部(図示下側)に処理対象物(破砕物)を排出する排出口3bが形成されている。
【0030】
[スクレーパー]
スクレーパー7Aは、処理対象物を処理した際に、スペーサー部62に絡みついた付着物を掻き取る機能を有する。また、本実施態様におけるスクレーパー7Aは、未破砕物の落下を抑制するとともに、投入された処理対象物の滞留を抑制し、破砕刃6側に円滑に移動させる機能を有する。
【0031】
図1(A)に示すように、スクレーパー7Aはスペーサー部62に向かって傾斜する傾斜部70を有している。また、スクレーパー7Aは、ケーシング3の側壁31の両側に設置されている。
また、
図1(B)に示すように、スクレーパー7Aは、カッターユニット4aのカッター部61の間に配置され、かつカッター部61の間に配置されたスペーサー部62に近接するように設置される。
これにより、本実施態様におけるスクレーパー7Aは、カッターユニット4a及び4bとケーシングの側壁31との間の空間(間隙)を満たすことができる。したがって、本実施態様におけるスクレーパー7Aにより、スペーサー部62に付着した付着物を掻き取ると同時に、カッターユニット4a、4b側から排出口3b側に未破砕物が落下することが抑制される。
【0032】
図2は、本実施態様におけるスクレーパー7Aの近傍に係る概略説明図(側面図及び平面図)である。なお、
図2には、駆動軸5a側のスペーサー部及びスクレーパーの構造を示している。また、
図2の上段部分は側面図であり、
図2の下段部分は上方から見た平面図である。
【0033】
図2に示すように、本実施態様におけるスクレーパー7Aは、傾斜部70がスペーサー部62に向かって傾斜している。また、処理対象物を投入する投入口3aの真上方向から見たときに、傾斜部70は、スペーサー部62の上方に重なる領域A1を形成している。これにより、投入口3aから投入された処理対象物が傾斜部70を滑り落ちることができる。また、領域A1を形成することにより、傾斜部70を滑り落ちた処理対象物はカッターユニット4a、4b(破砕刃6)の回転方向に沿って効率的に移動する。したがって、本実施態様におけるスクレーパー7Aにより、処理対象物の滞留を抑制することが可能となる。
【0034】
本実施態様におけるスクレーパー7Aの傾斜部70の傾きは、特に処理対象物の滞留抑制、すなわち処理対象物の移動効率に関わるものである。このため、本発明の効果を十分に得るためには、傾斜部70の傾きを規定することが好ましい。
【0035】
傾斜部70の傾きを規定する手段として、
図2に示すように、傾斜部70の延長線L2とスペーサー部62とが交わる交点Pと、破砕刃6の中心である軸心5cとを結ぶ直線L1が、破砕刃6の中心(軸心5c)を通る水平線に対して成す角度θ1を規定することが挙げられる。
【0036】
ここで、角度θ1は、10度以上とすることが好ましい。例えば、角度θ1が10度未満の場合、スクレーパー7Aとスペーサー部62の重なる領域A1の面積が狭くなり、スペーサー部62側に滑り落ちた処理対象物がスクレーパー7Aとスペーサー部62の間に滞留しやすくなるという問題が生じる。
また、角度θ1は、20度以下とすることが好ましい。例えば、角度θ1が20度より大きい場合、スクレーパー7Aとスペーサー部62の重なる領域A1の面積は広くなる。一方、カッターユニット4a、4bにおけるのみ口の幅Wが小さくなる。ここで、のみ口の幅Wとは、
図1に示すように、投入口3a側から見たときに、カッター部61の刃が処理対象物に対して露出している幅を指すものである。のみ口の幅Wが小さくなると、処理対象物がスクレーパー7Aで停滞してしまい、結果として処理対象物の滞留が生じるおそれがある。
【0037】
上述したように、角度θ1を規定することで、スクレーパーの傾斜部とスペーサー部とが重なる領域A1の広さを規定することができる。また、角度θ1を特定の範囲内となるように規定することにより、未破砕物の落下を抑制するとともに、処理対象物の滞留抑制に好適となる領域A1を形成することが可能となり、本発明の効果をより一層発揮することが可能となる。
【0038】
また、傾斜部70の傾きを規定する他の手段としては、
図2に示すように、スクレーパー7Aの傾斜部70が、破砕装置1Aの鉛直方向に対して成す角度θ2を規定することが挙げられる。
【0039】
ここで、角度θ2は、45度以下とすることが好ましい。例えば、角度θ2が45度より大きい場合、処理対象物が傾斜部70上を滑り落ちていくために十分な傾斜が得られず、傾斜部70上に処理対象物の滞留が発生するという問題が生じる。
【0040】
上述したように、角度θ2を特定の範囲内となるように規定することで、スクレーパー7Aの傾斜部70上への処理対象物の滞留抑制に好適となる構造を形成することが可能となり、本発明の効果をより一層発揮することが可能となる。
【0041】
角度θ1及びθ2は、どちらか一方を規定するものであってもよく、両方を規定するものであってもよい。角度θ1あるいは角度θ2を単独で規定した場合であっても、それぞれの角度を規定することによる効果を得ることができる。なお、本実施態様におけるスクレーパー7Aとしては、角度θ1及びθ2の両方を規定することが好ましい。これにより、スクレーパー7Aによる未破砕物の落下抑制及び処理対象物の滞留抑制の効果を十分に発揮することが可能となる。
【0042】
また、本実施態様におけるスクレーパー7Aは、
図1及び
図2に示すように、傾斜部70をケーシング3の側壁31に対して直接接続させ、側壁31とスクレーパー7Aの間に水平面を有する箇所が存在しないような形状及び配置とすることが好ましい。さらに、ケーシング3の投入口3aと傾斜部70とが連続して接続されるような形状及び配置とすることがより好ましい。これにより、処理対象物は破砕刃6側に向かってより確実に滑り落ちていくことができる。これにより、処理対象物が滞留することを抑制することが可能となる。
【0043】
以上のように、本実施態様の破砕装置1Aでは、装置側面から見たときには、スクレーパーがスペーサー部に向かう傾斜部を有するとともに、処理対象物を投入する投入口の真上方向から見たときには、スクレーパーの傾斜部がスペーサー部の上方に重なる領域を有するように配置されている。また、スクレーパーは、破砕刃とケーシングの空間(間隙)を満たすように配置されている。これにより、未破砕物の落下を抑制するとともに、スクレーパーの傾斜部を介して処理対象物がスペーサー部に向かって滑り落ちていくようにすることができる。さらに、スクレーパーの傾斜部がスペーサー部の上方に重なる領域を設けることで、傾斜部を滑り落ちた処理対象物はスペーサー部の回転方向に沿って効率的に移動することができる。したがって、本実施態様の破砕装置1Aにより、未破砕物の落下を抑制するとともに、処理対象物の滞留を抑制する機能を、スクレーパーに付与することが可能となる。
【0044】
[第2の実施態様]
図3は、本発明の第2の実施態様における破砕装置の構成を示す概略説明図である。なお、
図3には、駆動軸5a側のスペーサー部及びスクレーパーの構造を示している。また、
図3の上段部分は上方から見た平面図であり、
図3の中段部分は側面図であり、
図3の下段部分は下方から見た平面図である。
【0045】
本実施態様における破砕装置1Bは、第1の実施態様における破砕装置1Aにおいて、処理対象物を投入する投入口3aの真上方向から見たときに、スクレーパー7Bとして、第1の実施態様におけるスクレーパー7Aに加え、スペーサー部62の下方に重なる領域A2を併せて有するものである。なお、本実施態様における破砕装置1Bの構成のうち、第1の実施態様の破砕装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0046】
本実施態様におけるスクレーパー7Bは、傾斜部71を備え、処理対象物を投入する投入口3aの真上方向から見たときに、スペーサー部62の上方と重なる領域A1を形成する第一スクレーパー72(第1の実施態様におけるスクレーパー7Aに相当)と、掻き取り部分73を備え、装置上方から見たときに、スペーサー部62の下方と重なる領域A2を形成する第二スクレーパー74とからなる。
【0047】
本実施態様における第一スクレーパー72は、第1の実施態様におけるスクレーパー7Aと同様の構造とすることができ、説明については省略する。
【0048】
一方、本実施態様における第二スクレーパー74は、スペーサー部62に絡みついた付着物と接触する掻き取り部分73を備え、スペーサー部62の駆動軸5aの軸心5cよりも下側(重力方向)になるように設置されている。また、
図3に示すように、第二スクレーパー74は、処理対象物を投入する投入口3aの真上方向から見たときに、スペーサー部62の下方と重なる領域A2を形成している。これにより、スペーサー部62の回転方向に対向する形で掻き取り部分73を配置することができ、スクレーパー7Bとしての機能強化が可能となる。
【0049】
図3では、本実施態様におけるスクレーパー7Bとして、第一スクレーパー72と第二スクレーパー74の2つに分かれたものを示したが、これに限定されるものではない。例えば、スクレーパー7Bとして、第一スクレーパー72と第二スクレーパー74の構造を一体としてもよい。これにより、スクレーパー7Bとしての強度を高めることが可能となる。また、側壁31とスクレーパー7Bの接地面積が増加することにより、ケーシング3とスクレーパー7Bの固定強度を高めることができる。
【0050】
以上のように、本実施態様における破砕装置1Bでは、スクレーパーとして、スペーサー部の上下方向に対し、重なる領域A1、A2を設けることで、スクレーパーによる未破砕物の落下抑制及び処理対象物の滞留抑制に加え、スクレーパーの掻き取り性能を高めることが可能となる。これにより、スクレーパーの機能向上が可能となる。
【0051】
[第3の実施態様]
図4は、本発明の第3の実施態様における破砕装置の構成を示す概略説明図である。なお、
図4(A)は側面図であり、
図4(B)は上方から見た平面図である。また、
図4において、駆動モータの図示を省略している。
【0052】
本実施態様における破砕装置1Cは、第1の実施態様における破砕装置1Aにおいて、処理対象物を投入する投入口3aの真上方向から見たときに、スクレーパー7Cとして、第1の実施態様におけるスクレーパー7Aの上面に、破砕装置1Cの幅方向に対して一様に連続した面75を設けるものである。なお、本実施態様における破砕装置1Cの構成のうち、第1の実施態様の破砕装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0053】
本実施態様におけるスクレーパー7Cは、傾斜部70の上部に面75を設けるものである。面75は、
図4(B)に示すように、傾斜部70を破砕装置1Cの幅方向に覆うように設けられる。これにより、破砕装置1Cの幅方向、すなわち回転軸(駆動軸5a及び従動軸5b)の軸方向において傾斜部70間の隙間がなくなるため、処理対象物は面75上を途中で止まることなくスムーズに滑り落ちることが可能となり、処理対象物の滞留を効果的に抑制することが可能となる。
【0054】
面75としては、傾斜部70の上部に設けられるものであればよく、傾斜部70全面を覆う必要はない。例えば、
図4(B)に示すように、ケーシング3の側壁31側からカッター部61の直前まで延伸させることが挙げられる。これにより、カッターユニット4a及び4bの駆動に影響を及ぼすことなく、未破砕物の落下を抑制し、処理対象物の滞留を抑制することが可能となる。
【0055】
面75は、処理対象物の滞留を抑制するため、あるいは処理対象物の移動効率を高めるために、表面処理を行うものとしてもよい。例えば、面75を突起物のない円滑面(鏡面)とすることや、円滑面を形成するためのコーティングを施すものとしてもよい。また、面75は、
図4(B)に示すように、カッター部61と接触しないような構造を有する場合、処理対象物の重量に対しての耐久性を有するものであればよい。したがって、面75としては、表面が円滑なプラスチック材を用いるものとしてもよい。これにより、処理対象物がスクレーパー7Cを効率的に滑り落ちていき、破砕刃6側に移動させることが可能となるとともに、スクレーパー7Cとしての重量を軽くし、設置に係る固定強度に大きな影響を与えることを抑制し、装置設計を容易とすることが可能となる。
【0056】
以上のように、本実施態様における破砕装置1Cでは、処理対象物を投入する投入口の真上方向から見たときに、スクレーパーが装置の幅方向に対して一様に連続した面を有することで、未破砕物の落下をより一層抑制することができる。特に、傾斜部間の隙間への処理対象物の落下や引っ掛かりがないので、処理対象物の移動は途中で止まることがない。これにより、破砕刃に向かってスムーズに処理対象物が滑り落ちていくことが可能となり、本発明の効果をより一層発揮することが可能となる。
【0057】
なお、上述した実施態様は破砕装置の一例を示すものである。本発明に係る破砕装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る破砕装置を変形してもよい。
【0058】
例えば、第2の実施態様の破砕装置1Bにおけるスクレーパー7Bのうち、第一スクレーパー72に、第3の実施態様の破砕装置1Cにおける面を設けるものとしてもよい。これにより、第2の実施態様におけるスクレーパー7Bは付着物の掻き取り機能が強化されるとともに、処理対象物の移動効率を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の破砕装置は、処理対象物の破砕処理に使用される。例えば、家庭や工場などから排出される廃棄物や、下水のし渣等の破砕処理に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
1A,1B,1C 破砕装置、2 駆動モータ、3 ケーシング、3a 投入口、3b 排出口、31 側壁、4a,4b カッターユニット、5a 駆動軸、5b 従動軸、5c 軸心、6 破砕刃、61 カッター部、62 スペーサー部、7A,7B,7C スクレーパー、70 傾斜部、71 傾斜部、72 第一スクレーパー、73 掻き取り部分、74 第二スクレーパー、75 面、A1,A2 領域、L1 交点Pと軸心5cを結ぶ直線、L2 傾斜部70の延長線、P 延長線L2とスペーサー部62の交点、W のみ口の幅、θ1,θ2 角度