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特許7535922フレキシブル回路基板の成形装置及び成形方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】フレキシブル回路基板の成形装置及び成形方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/00 20060101AFI20240809BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H05K3/00 L
H05K3/00 J
H05K1/02 B
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020196206
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084366
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】メクテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】重岡 赳志
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-010967(JP,A)
【文献】特開2012-023133(JP,A)
【文献】特開2005-096408(JP,A)
【文献】特開昭61-297125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる絶縁層および銅箔層を含むフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形装置であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具と挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第1温度で前成形する、第1成形治具と、
前記前成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具と挟持して前記第1温度よりも高温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第2温度で成形する、第2成形治具と、
を備える、フレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項2】
前記第2成形治具は、前記成形を行う前に前記第2温度に昇温されている、
請求項1に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項3】
前記第1温度は、約20℃乃至約30℃であり、
前記第2温度は、約120℃乃至約200℃である、
請求項1又は2に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項4】
前記第2成形治具は、
前記第2載置治具とともに前記フレキシブル回路基板を挟み込む成形ブロックと、
前記成形ブロックを支持する支持部と、
前記第2載置治具と前記成形ブロックに挟持されたフレキシブル回路基板の温度を測定する熱電対と、
前記成形ブロックを加熱するヒータと、
を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項5】
前記第2載置治具は、ヒータを備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項6】
前記第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持する抑え治具を、さらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項7】
前記第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持している前記抑え治具を、前記第2載置治具に固定する抑え治具留め部を、さらに備える、請求項6に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項8】
前記抑え治具は、前記第2成形治具が前記フレキシブル回路基板に当接するための開口部を、さらに備える、請求項6又は7に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項9】
前記第1載置治具と前記第2載置治具は、それぞれ別の載置治具である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項10】
前記第1載置治具と前記第2載置治具は、同一の載置治具である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂は液晶ポリマーからなる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項12】
熱可塑性樹脂からなる絶縁層および銅箔層を含むフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形装置であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具と挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第1温度で成形する、第1成形治具と、
前記成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具と挟持して前記第1温度よりも低温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第2温度で後成形する、前記第1成形治具とは別の第2成形治具と、
を備える、フレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項13】
前記第1成形治具は、前記成形を行う前に前記第1温度に昇温されており、
前記第2成形治具は、前記後成形を行う前に前記第2温度に冷却されている、
請求項12に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項14】
前記第1温度は、約120℃乃至約200℃であり、
前記第2温度は、約20℃乃至約50℃である、
請求項12又は13に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項15】
前記第2成形治具は、
前記第2載置治具とともに前記フレキシブル回路基板を挟み込む成形ブロックと、
前記成形ブロックを支持する支持部と、
前記第2載置治具と前記成形ブロックに挟持されたフレキシブル回路基板の温度を測定する熱電対と、
前記第1成形治具で加熱されたフレキシブル回路基板を冷却する冷却部と、
を備える、請求項12乃至14のいずれか一項に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項16】
前記第2成形治具は、冷却媒体が流通し前記冷却部に接続された流入ホースおよび流出ホースを備える、請求項15に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項17】
熱可塑性樹脂からなる絶縁層および銅箔層を含むフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形装置であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具と挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第1温度で前成形する、第1成形治具と、
前記前成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具と挟持して前記第1温度よりも高温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第2温度で成形する、第2成形治具と、
前記成形され、第3載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第3載置治具と挟持して前記第2温度よりも低温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第3温度で後成形する、前記第2成形治具とは別の第3成形治具と、
を備える、フレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項18】
前記第2成形治具は、前記成形を行う前に前記第2温度に昇温されており、
前記第3成形治具は、前記後成形を行う前に前記第3温度に冷却されている、
請求項17に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項19】
前記第1温度は、約20℃乃至約30℃であり、
前記第2温度は、約120℃乃至約200℃であり、
前記第3温度は、約20℃乃至約50℃である、
請求項17又は18に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項20】
前記第1乃至第3載置治具のうち少なくとも一つは別の載置治具である、請求項17乃至19のいずれか一項に記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項21】
前記第1乃至第3載置治具は、同一の載置治具である、請求項17乃至19のいずれかに記載のフレキシブル回路基板の成形装置。
【請求項22】
熱可塑性樹脂からなる絶縁層および銅箔層含むフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形方法であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具及び第1成形治具とで挟持してフレキシブル回路基板が塑性変形しない第1温度で前成形する、第1工程と、
前記前成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具及び第2成形治具とで挟持して前記第1温度よりも高温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第2温度で成形する、第2工程と、
を備える、フレキシブル回路基板の成形方法。
【請求項23】
熱可塑性樹脂からなる絶縁層および銅箔層を含むフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形方法であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具及び第1成形治具とで挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第1温度で成形する、第1成形治具と、
前記成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具及び前記第1成形治具とは別の第2成形治具とで挟持して前記第1温度よりも低温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第2温度で後成形する、第2工程と、
を備える、フレキシブル回路基板の成形方法。
【請求項24】
熱可塑性樹脂からなる絶縁層および銅箔層を含むフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形方法であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具及び第1成形治具とで挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第1温度で前成形する、第1工程と、
前記前成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具及び第2成形治具とで挟持して前記第1温度よりも高温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第2温度で成形する、第2工程と、
前記成形され、第3載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第3載置治具及び前記第2成形治具とは別の第3成形治具とで挟持して前記第2温度よりも低温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第3温度で後成形する、第3工程と、
を備える、フレキシブル回路基板の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル回路基板の成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル回路基板に関しては、スマートフォンやノートパソコンをはじめとする電子機器に広く用いられている。
【0003】
近年においては、こうした電子機器の小型化が要求されている。この電子機器の製造にあたっては、フレキシブル回路基板の折り曲げや組み込みがなされる。小型化した電子機器の製造では、フレキシブル回路基板の省スペース化を要する。すなわち、限られたスペースにフレキシブル回路基板を配置する必要がある。
【0004】
このため、フレキシブル回路基板を所望の形状に成形することが求められ、折り曲げなどの成形に係る要求が高まっている。具体的には、曲げ角度、曲げ半径及びスプリングバックが比較的小さい成形が要求されている。こうしたことから、特許文献1および2には、熱可塑性を利用したフレキシブル回路基板の加熱成形について記載されている。詳しくは、特許文献1には、オーブンを用いたフレキシブル回路基板の加熱による成形が記載され、特許文献2には、フレキシブル回路基板の折り曲げるための成形装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-023133号公報
【文献】特開2005-096408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のフレキシブル回路基板の加熱成形においては、曲げ半径が小さい場合、フレキシブル回路基板の曲げ応力により、配線が破断する等の内部破壊が発生したり、層間剥離が発生することがあった。また、絶縁層が比較的厚い、あるいは層数が比較的多く、フレキシブル回路基板の基板厚が比較的厚い場合にも同様の問題があった。
【0007】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、フレキシブル回路基板の成形において、曲げ半径が小さい場合または基板厚が厚い場合であっても、内部破壊および層間剥離を抑制することが可能なフレキシブル回路基板の成形装置及びその成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係るフレキシブル回路基板の成形装置は、
熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁層を積層させたフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形装置であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具と挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第1温度で前成形する、第1成形治具と、
前記前成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具と挟持して前記第1温度よりも高温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第2温度で成形する、第2成形治具と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第2成形治具は、前記成形を行う前に前記第2温度に昇温されていてもよい。
【0010】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第1温度は、約20℃乃至約30℃であり、
前記第2温度は、約120℃乃至約200℃であってもよい。
【0011】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第2成形治具は、
前記第2載置治具とともに前記フレキシブル回路基板を挟み込む成形ブロックと、
前記成形ブロックを支持する支持部と、
前記第2載置治具と前記成形ブロックに挟持されたフレキシブル回路基板の温度を測定する熱電対と、
前記成形ブロックを加熱するヒータと、
を備えていてもよい。
【0012】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第2載置治具は、ヒータを備えていてもよい。
【0013】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持する抑え治具を、さらに備えていてもよい。
【0014】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持している前記抑え治具を、前記第2載置治具に固定する抑え治具留め部を、さらに備えていてもよい。
【0015】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記抑え治具は、前記第2成形治具が前記フレキシブル回路基板に当接するための開口部を、さらに備えていてもよい。
【0016】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第1載置治具と前記第2載置治具は、それぞれ別の載置治具であってもよい。
【0017】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第1載置治具と前記第2載置治具は、同一の載置治具であってもよい。
【0018】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記熱可塑性樹脂は液晶ポリマーからなってもよい。
【0019】
本発明の第2の態様に係るフレキシブル回路基板の成形装置は、
熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁層を積層させたフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形装置であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具と挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第1温度で成形する、第1成形治具と、
前記成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具と挟持して前記第1温度よりも低温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第2温度で後成形する、第2成形治具と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第1成形治具は、前記成形を行う前に前記第1温度に昇温され、
前記第2成形治具は、前記後成形を行う前に前記第2温度に冷却されていてもよい。
【0021】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第1温度は、約120℃乃至約200℃であり、
前記第2温度は、約20℃乃至約50℃であってもよい。
【0022】
本発明の第3の態様に係るフレキシブル回路基板の成形装置は、
熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁層を積層させたフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形装置であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具と挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第1温度で前成形する、第1成形治具と、
前記前成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具と挟持して前記第1温度よりも高温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第2温度で成形する、第2成形治具と、
前記成形され、第3載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第3載置治具と挟持して前記第2温度よりも低温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第3温度で後成形する、第3成形治具と、を備えることを特徴とする。
【0023】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第2成形治具は、前記成形を行う前に前記第2温度に昇温され、
前記第3成形治具は、前記後成形を行う前に前記第3温度に冷却されていてもよい。
【0024】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第1温度は、約20℃乃至約30℃であり、
前記第2温度は、約120℃乃至約200℃であり、
前記第3温度は、約20℃乃至約50℃であってもよい。
【0025】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第1乃至第3載置治具のうち少なくとも一つは別の載置治具であってもよい。
【0026】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記第1乃至第3載置治具は、同一の載置治具であってもよい。
【0027】
また、前記フレキシブル回路基板の成形装置において、
前記フレキシブル回路基板の前記複数の絶縁体は、接着剤層を介して積層されていてもよい。
【0028】
本発明の第1の態様に係るフレキシブル回路基板の成形方法は、
熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁層を積層させたフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形方法であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具及び第1成形治具とで挟持してフレキシブル回路基板が塑性変形しない第1温度で前成形する、第1工程と、
前記前成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具及び第2成形治具とで挟持して前記第1温度よりも高温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第2温度で成形する、第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明の第2の態様に係るフレキシブル回路基板の成形方法は、
熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁層を積層させたフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形方法であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具及び第1成形治具とで挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第1温度で成形する、第1成形治具と、
前記成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具及び第2成形治具とで挟持して前記第1温度よりも低温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第2温度で後成形する、第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の第3の態様に係るフレキシブル回路基板の成形方法は、
熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁層を積層させたフレキシブル回路基板を成形する、フレキシブル回路基板の成形方法であって、
第1載置治具に載置されたフレキシブル回路基板を、前記第1載置治具及び第1成形治具とで挟持して前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第1温度で前成形する、第1工程と、
前記前成形され、第2載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第2載置治具及び第2成形治具とで挟持して前記第1温度よりも高温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形する第2温度で成形する、第2工程と、
前記成形され、第3載置治具に載置された前記フレキシブル回路基板を、前記第3載置治具及び第3成形治具とで挟持して前記第2温度よりも低温であり前記フレキシブル回路基板が塑性変形しない第3温度で後成形する、第3工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、曲げ半径が小さい場合または基板厚が厚い場合であっても、内部破壊および層間剥離を抑制することが可能なフレキシブル回路基板の成形装置及びその成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置の構成図である。
図2】第1の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置における第1成形治具の構成図である。
図3】第1の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置における第2成形治具の構成図である。
図4】第1の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置における第1載置治具の構成図である。
図5】第1の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形方法の一連の流れを示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態においてフレキシブル回路基板を第1載置治具に載置する方法を説明する図である。
図7】第1の実施形態においてフレキシブル回路基板が第1載置治具に載置された状態を示す図である。
図8】第1の実施形態におけるフレキシブル回路基板の前成形を説明する図であり、第1載置治具及び第1成形治具による挟持前の状態を示す図である。
図9】第1の実施形態におけるフレキシブル回路基板の前成形を説明する図であり、第1載置治具及び第1成形治具による挟持状態を図示する図である。
図10】第1の実施形態においてフレキシブル回路基板の前成形を説明する図であり、第1載置治具及び第1成形治具による挟持後の状態を図示する図である。
図11】第1の実施形態においてフレキシブル回路基板の成形を説明する図であり、第2載置治具及び第2成形治具による挟持前の状態を図示する図である。
図12】第1の実施形態においてフレキシブル回路基板の成形を説明する図であり、第2載置治具及び第2成形治具による挟持状態を図示する図である。
図13】第1の実施形態においてフレキシブル回路基板の成形を説明する図であり、第2載置治具及び第2成形治具による挟持後の状態を図示する図である。
図14】第2の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置の構成図である。
図15】第2の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置における第2成形治具の構成図である。
図16】第2の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形方法の一連の流れを示すフローチャートである。
図17】第2の実施形態におけるフレキシブル回路基板の後成形を説明する図であり、第2載置治具及び第2成形治具による挟持前の状態を図示する図である。
図18】第2の実施形態におけるフレキシブル回路基板の後成形を説明する図であり、第2載置治具及び第2成形治具による挟持状態を図示する図である。
図19】第2の実施形態においてフレキシブル回路基板の後成形を説明する図であり、第2載置治具及び第2成形治具による挟持後の状態を図示する図である。
図20】第3の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置の構成図である。
図21】第3の実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形方法の一連の流れを示すフローチャートである。
図22】フレキシブル回路基板の抑え治具の構成図である。
図23】フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持している抑え治具を説明するための斜視図である。
図24】フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持している抑え治具を説明するための断面図である。
図25】抑え治具留め部を有するフレキシブル回路基板の抑え治具の構成図である。
図26】フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持している抑え治具留め部を有する抑え治具を説明する斜視図である。
図27】フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持している抑え治具留め部を有する抑え治具を説明する断面図である。
図28】開口部を有するフレキシブル回路基板の抑え治具の構成図である。
図29】フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持している開口部を有する抑え治具を説明する斜視図である。
図30】フレキシブル回路基板の曲げ状態を維持している開口部を有する抑え治具を説明する断面図である。
図31】フレキシブル回路基板の一例を示す断面図である。
図32】成形されたフレキシブル回路基板の一例を示す画像である。
図33】フレキシブル回路基板の曲げ角度に係る時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付す。また、図面は模式的なものである。このため、構成要素の大きさ、各構成要素の位置関係、寸法や比率等は現実のものと異なる場合がある。
【0034】
(第1の実施形態)
図1~4を参照して、本実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置(FPC成形装置)1に係る構成を説明する。図1は、FPC成形装置1の全体の構成図である。図2は、FPC成形装置1の第1成形治具10の側面図であり、図3は、第2成形治具20の側面図である。そして、図4は、載置治具40の側面図である。
【0035】
図1に図示しているように、本実施形態に係るFPC成形装置1は、第1成形治具10と、第2成形治具20と、載置治具40と、筐体50と、レール60と、を備える。
【0036】
以下に説明するように、本実施形態に係るFPC成形装置1は、熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁層を積層させてなるフレキシブル回路基板FPCを成形するように構成されている。このフレキシブル回路基板FPCは、熱可塑性樹脂として、例えば、低融点液晶ポリマー(LCP)材を適用してもよい。すなわち、接着剤層を介さずに低融点LCP材を熱融着させ積層させてもよい。なお、一方で、フレキシブル回路基板FPCの複数の絶縁体は、接着剤層を介して積層させてもよい。
【0037】
図2は、図1における第1成形治具10を、Y軸正方向に見た場合の側面図を示している。第1成形治具10は、Z軸方向に移動可能な支持部11と、支持部11の下端に接続された成形ブロック12と、成形ブロック12に固定された熱電対13を備えている。この第1成形治具10は、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40とで挟持して前成形を行う。
【0038】
支持部11は、Z軸方向に延在し、成形ブロック12を支持する。この支持部11は、アルミニウム、鉄、ステンレスなど剛性を有する部材から構成される。成形ブロック12は、フレキシブル回路基板FPCに当接してフレキシブル回路基板FPCを成形する。成形ブロック12は、支持部11と同様に、アルミニウム、鉄、ステンレスなどのフレキシブル回路基板FPCを成形し得る剛性を有する部材から構成される。
【0039】
熱電対13は、成形ブロック12の温度を測定する。本実施形態では、熱電対13により測定された成形ブロック12の温度を通じて、フレキシブル回路基板FPCの温度が把握される。このため熱電対13は、成形ブロック12の一端に設置されているが、成形ブロック12の温度を測定するために適切な任意の箇所に設置してもよい。
【0040】
図3は、図2の第1成形治具10と同様に、第2成形治具20をY軸正方向に見た場合の側面図を図示している。第2成形治具20は、第1成形治具10と同様に、Z軸方向に移動可能な支持部21と、支持部21の下端に接続された成形ブロック22と、成形ブロック22に固定された熱電対23とを備えている。加えて、第2成形治具20はヒータ24を備えている。この第2成形治具20は、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40とで挟持して成形を行う。
【0041】
第2成形治具20の支持部21及び成形ブロック22は、アルミニウム、鉄、ステンレスなどによって構成される。ただし、第2成形治具20がヒータ24により加熱されるため、支持部21と成形ブロック22は、剛性だけでなく、熱耐性を有する部材によって構成されてもよい。熱電対23も、第1成形治具10の熱電対13と同様に、成形ブロック22の温度を測定する。これにより、フレキシブル回路基板FPCの温度が把握される。
【0042】
図3では、ヒータ24は、成形ブロック22に組み込まれている。そして、ヒータ24により、成形ブロック22はフレキシブル回路基板FPCが塑性変形する温度まで加熱される。このヒータ24は、例えば、電熱式ヒータなどでよい。また、ヒータ24の設置の箇所については、成形ブロック22の中央部に限られない。すなわち、ヒータ24はフレキシブル回路基板FPCを加熱し、塑性変形させるために適切な任意の箇所に設置し得る。
【0043】
図4は、載置治具40をY軸正方向に見た場合を図示している。載置治具40は、上記の第1成形治具10又は第2成形治具20とでフレキシブル回路基板FPCを挟持する。このため、載置治具40は、フレキシブル回路基板FPCを挟持し得る剛性と、第2成形治具20のヒータ24の加熱に耐え得る熱耐性を有する。
【0044】
このため、載置治具40は、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属のほか、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:Poly Ether Ether Ketone)などの高耐熱性樹脂で構成されてもよい。すなわち、載置治具40は、加工温度に応じた耐熱温度を有する金属又は樹脂材などによって構成されてもよい。例えば、約120℃以下の低温加工ではアクリル樹脂を選択でき、約300℃以上の高温加工ではアルミニウムなどの金属を選択することができる。
図4に示すように、載置治具40は、斜面40F1及び斜面40F2を有する。この両方の斜面が、成形ブロック12又は成形ブロック22に対向して、フレキシブル回路基板FPCを挟持する。
【0045】
筐体50は、図1に示すように、第1成形治具10及び第2成形治具20と、それぞれの成形治具に対向する位置に存在する載置治具40を覆うように設置されている。筐体50は、フレキシブル回路基板FPCを塵芥などから保護する。筐体50は、強化プラスチックなどによって構成される。筐体50は、成形する前のフレキシブル回路基板FPCを筐体内部に搬入する入口50aと、成型した後のフレキシブル回路基板FPCが搬出する出口50bを有する。
【0046】
筐体50内には、支持部11及び21をZ軸方向に沿って動かすための駆動装置(図示せず)が設けられており、支持部11及び21の上端は当該駆動装置機構に接続されている。なお、支持部11及び21は、連動してZ軸方向に上下動してもよい。
【0047】
レール60は、図1に示すように、Y軸方向に沿って設けられており、載置治具40をY軸正方向に移動させる。なお、本実施形態では、載置治具40はレール60に着脱可能である。
【0048】
次に、図5図13を参照して、上述したFPC成形装置1によるフレキシブル回路基板の成形方法を説明する。
【0049】
<フレキシブル回路基板FPCの成形方法>
図5は、本実施形態に係るフレキシブル回路基板FPCの成形方法の一連の流れを示すフローチャートである。
【0050】
本実施形態に係るフレキシブル回路基板FPCの成形方法では、はじめに、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40に固定する(ステップS100)。詳しくは、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40の一斜面(斜面40F1または斜面40F2)に固定する。
【0051】
図6(a)には、図4に示す載置治具40を、X軸負方向に見た図が図示されており、載置治具40の斜面40F1が図示されている。そして、この斜面40F1は、フレキシブル回路基板FPCを固定するための固定ガイドピン42a、42b、42cを有する。
【0052】
一方で、図6(a)には、逆丁字型のフレキシブル回路基板FPCが図示されており、さらに、フレキシブル回路基板FPCの固定点P1、P2、P3が図示されている。フレキシブル回路基板FPCを載置治具40に固定する際、この固定点P1、P2、P3を、上記の斜面40F1の固定ガイドピン42a、42b、42cに対応させるようにフレキシブル回路基板FPCを載置する。
【0053】
これにより、図6(b)に図示するように、フレキシブル回路基板FPCは斜面40F1から滑落することなく固定される。また、図7は、この図6(b)の載置治具40及びフレキシブル回路基板FPCを、Y軸正方向に見た場合の側面図である。
【0054】
なお、フレキシブル回路基板FPCの載置治具40への固定方法は上記に限られない。例えば、固定ガイドピン42に関しては、3本に限られず、2本、4本又は5本など、任意の本数でもよい。また、固定ガイドピン42に代えて又は加えて、載置治具40の斜面にフレキシブル回路基板FPCの形状に対応したザグリ加工を施してもよい。すなわち、このザグリ加工部にフレキシブル回路基板FPCが嵌合することで固定してもよい。
【0055】
再び図5を参照し、本実施形態に係る成形方法の説明を続ける。上記のようにフレキシブル回路基板FPCを載置治具40に固定した後、フレキシブル回路基板FPCが載置された載置治具40をレール60により第1成形治具10に対応する位置(本実施形態では第1成形治具10の直下の位置)まで移動させる。そして、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第1成形治具10とで挟持して第1温度にて前成形を行う(ステップS102)。
【0056】
本実施形態において、第1温度とは、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形しない程度の温度である。第1の温度は、例えば、約20℃~約30℃であることが望ましい。また、第1温度によるフレキシブル回路基板FPCの挟持時間(成形時間)は、例えば、約120秒であることが望ましい。そして、上記の前成形とは、この第1温度にてフレキシブル回路基板FPCを所望の角度に曲げる加工である。
【0057】
ここで、図8図10を参照して、ステップS102の前成形について詳述する。この図8図10が図示するように、第1成形治具10は駆動部(図示せず)により駆動されて、Z軸方向に摺動する。図8は、フレキシブル回路基板FPCが載置された載置治具40が第1成形治具10の直下に位置していることを図示している。そして、図8は、フレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第1成形治具10とで挟持する前の状態であることを図示している。
【0058】
図9は、図8の状態から第1成形治具10がZ軸負方向に移動し、載置治具40及び第1成形治具10とでフレキシブル回路基板FPCを挟持している状態を図示している。この挟持状態における載置治具40と第1成形治具10との間のクリアランスは、予め設定された値に制御される。このクリアランスは、例えば、フレキシブル回路基板FPCの厚さと同程度に設定することが望ましい。これにより、フレキシブル回路基板FPCが過度に押圧されることを防止し得る。
【0059】
また、図9では、成形ブロック12および載置治具40は、成形ブロック12の曲げ加工部(凹部)E1と、載置治具40の曲げ加工部(凸部)E2とが嵌合するようにフレキシブル回路基板FPCを挟持している。このため、フレキシブル回路基板FPCは、曲げ加工部E1及びE2における、曲げ角度θで曲げられることとなる。曲げ角度θを自在に設定することで、フレキシブル回路基板FPCを任意の角度で曲げることができる。
【0060】
図10は、図9の状態から第1成形治具10がZ軸正方向に移動し、フレキシブル回路基板FPCが曲げられた状態が図示されている。すなわち、図10には、フレキシブル回路基板FPCが載置治具40及び第1成形治具10とで挟持された後の状態が図示されている。以上が、ステップS102に係るフレキシブル回路基板FPCの前成形である。
【0061】
再び図5を参照して、ステップS102に続くステップについて説明する。ステップS102にて前成形されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40とともにレール60により第2成形治具20に対応する位置(本実施形態では第2成形治具20の直下の位置)まで移動させる。そして、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第2成形治具20とで挟持して第2温度にて成形を行う(ステップS104)。
【0062】
本実施形態において、第2温度とは、上述の第1温度よりも高い温度である。詳しくは、第2温度は、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形する程度の温度であり、かつ、絶縁層を接着させている接着剤層が絶縁層から溶出しない程度の温度である。第2温度は、例えば、約120℃~約200℃であることが望ましい。また、第2温度によるフレキシブル回路基板FPCの挟持時間は、例えば、約120秒であることが望ましい。そして、上記の成形とは、この第2温度にてフレキシブル回路基板FPCを塑性変形させ、曲がり形状を維持させる加工である。
【0063】
ここで、図11図13を参照して、このステップS104の成形について詳述する。第1成形治具10と同様に、図11図13が図示するように、第2成形治具20は駆動部(図示せず)により駆動されて、Z軸方向に摺動する。好ましくは、成形ブロック22は、ヒータ24により、事前に上記の第2温度まで加熱されている。
【0064】
図11は、載置治具40が第2成形治具20の直下に位置しており、フレキシブル回路基板FPCが、載置治具40及び第2成形治具20とで挟持する前の状態を図示している。
【0065】
図12は、図11に示す状態から第2成形治具20がZ軸負方向に移動し、載置治具40及び第2成形治具20とでフレキシブル回路基板FPCを挟持している状態を図示している。この場合、第1成形治具10と同様に、載置治具40と第2成形治具20との間のクリアランスは予め設定されている。このクリアランスは、例えば、フレキシブル回路基板FPCの厚さと同程度に設定することが望ましい。これにより、フレキシブル回路基板FPCの過度の押圧を防止し得る。
【0066】
また、図12では、第1成形治具10と同様に、成形ブロック22および載置治具40は、成形ブロック22の曲げ加工部(凹部)E3と、載置治具40の曲げ加工部(凸部)E2とが嵌合するようにフレキシブル回路基板FPCを挟持している。このため、フレキシブル回路基板FPCは、曲げ加工部E3及びE2における、曲げ角度θで曲げられることになる。曲げ角度θを自在に設定することで、フレキシブル回路基板FPCを任意の角度で曲げることができる。なお、第1成形治具10の曲げ加工部E1と第2成形治具20の曲げ加工部E3の形状は同様であることが望ましい。
【0067】
図13は、図12に示す状態から第2成形治具20がZ軸正方向に移動し、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形し、曲げられている状態が維持していることを図示している。すなわち、図13には、フレキシブル回路基板FPCが、載置治具40及び第2成形治具20とで挟持された後の状態が図示されている。このステップS104の完了により、本実施形態に係るフレキシブル回路基板FPCの成形は終了する。
【0068】
上述した本実施形態におけるフレキシブル回路基板の成形方法は、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第1成形治具10とで挟持して第1温度で前成形する第1工程(ステップS102)と、載置治具40に載置された前成形されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第2成形治具20とで挟持して第1温度よりも高温でありフレキシブル回路基板FPCが塑性変形する第2温度で成形する第2工程(ステップS104)とを備える。
【0069】
このように第1の実施形態では、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形しない第1温度にて前成形を行った後、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形する第2温度で成形を行う。これにより、本実施形態によれば、フレキシブル回路基板FPCに作用する曲げ応力を緩和することができる。その結果、基板厚が厚いフレキシブル回路基板FPCを成形する場合や、曲げ半径が小さい場合でも、内部破壊や層間剥離の発生を抑制することができる。
【0070】
加えて、第1の実施形態によれば、第2成形治具20の成形ブロック22が事前に加熱されているため、フレキシブル回路基板FPCの塑性変形する成形を挟持後直ちに行うことができる。このため、フレキシブル回路基板FPCの成形に要する時間を短縮することができる。
【0071】
なお、本実施形態におけるフレキシブル回路基板FPCの前成形及び成形は、第1成形治具10および第2成形治具20をレール60の移動方向に対して垂直方向に摺動させることにより実施した。すなわち、第1成形治具10及び第2成形治具20はZ軸方向に摺動した。これに限らず、前成形及び成形は、レール60に水平方向に実施してもよい。この場合、第1成形治具10及び第2成形治具20は、X軸方向またはY軸方向に摺動するように構成されてもよい。
【0072】
また、本実施形態においては、第1成形治具10の支持部11及び第2成形治具20の支持部21が連動して、Z軸方向に摺動した。このため、第1温度による前成形の挟持時間と、第2温度による成形の挟持時間はいずれも同じ時間(約120秒)である。一方で、本実施形態においては、第1成形治具10及び第2成形治具20が連動して摺動しなくてもよい。すなわち、前成形の挟持時間及び成形の挟持時間は各々設定されてもよい。例えば、前成形及び成形を行うための任意の適切な条件に応じて、挟持時間(成形時間)を各々個別に設定してもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、凹状形状の第1成形治具10及び第2成形治具20と、凸状形状の載置治具40とが嵌合するようにして、フレキシブル回路基板FPCの前成形及び成形を行った。一方で、本実施形態におけるフレキシブル回路基板FPCの前成形及び成形は、上記に限られない。例えば、凸状形状の第1成形治具10及び第2成形治具20と、凹状形状の載置治具40により、フレキシブル回路基板FPCの前成形及び成形を行ってもよい。すなわち、フレキシブル回路基板FPCの前成形及び成形を行うため、適切な任意の形状の第1成形治具10、第2成形治具20及び載置治具40により行ってもよい。
【0074】
また、上述したフレキシブル回路基板FPCの成形については、第2成形治具20をヒータ24によって加熱することによって実施した。これに限られず、さらに載置治具40も加熱して成形を実施してもよい。すなわち、載置治具40がヒータを備え、そして、フレキシブル回路基板FPCを成形する際に載置治具40が加熱されてもよい。
【0075】
なお、上述した本実施形態に係るFPC成形装置1及び成形方法においては、同一の載置治具40を用いる場合で説明した。すなわち、同一の載置治具40がフレキシブル回路基板FPCを載置しつつ、レール60によりY軸正方向に沿って、第1成形治具10及び第2成形治具20に対応する位置まで移動する。そして、それぞれの位置で、第1成形治具10と、第2成形治具20とでフレキシブル回路基板を挟持する。これにより、前成形及び成形を実施した。
【0076】
本実施形態はこれに限られず、異なる載置治具を用いても実現可能である。すなわち、互いに別の載置治具である、第1載置治具と、第2載置治具が、それぞれ第1成形治具10及び第2成形治具20に対応する位置に固定されてもよい。この場合は、フレキシブル回路基板FPCを、第1載置治具及び第1成形治具10とで挟持して前成形したのち、前成形されたフレキシブル回路基板FPCを第1載置治具から取り外す。そして、第1載置治具から取り外したフレキシブル回路基板FPCを第2載置治具に載置し、その後、第2載置治具及び第2成形治具20とでフレキシブル回路基板FPCを挟持して成形する。このようにしてフレキシブル回路基板FPCの成形を実現してもよい。
【0077】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態においては、フレキシブル回路基板FPCの成形において、塑性変形しない温度で前成形した後、塑性変形する温度で成形した。第2の実施形態においては、前成形を行わず、塑性変形する温度で成形した後、冷却しつつ後成形する。以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0078】
図14は、本実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置(FPC成形装置)1Aの全体の構成図である。図14において第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付している。
【0079】
本実施形態に係るFPC成形装置1Aは、第1成形治具20と、第2成形治具30と、載置治具40と、筐体50と、レール60と、を備える。
【0080】
第1成形治具20は、第1の実施形態における第2成形治具20と同様である。すなわち、本実施形態の第1成形治具20は、第1の実施形態において図3を参照して説明したように、支持部21と、成形ブロック22と、熱電対23と、ヒータ24を備える。そして、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40とで挟持して成形を行う。
【0081】
図15は、第2成形治具30を、図14のY軸正方向に見た側面図である。第2成形治具30は、Z軸方向に移動可能な支持部31と、支持部31の下端に接続された成形ブロック32と、成形ブロック32に固定された熱電対33を備えている。さらに、第2成形治具30は、第1成形治具20で加熱されたフレキシブル回路基板FPCを冷却するための冷却部34と、冷却媒体の流入ホース35と、流出ホース36とを備えている。この第2成形治具30は、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40とで挟持して後成形を行う。
【0082】
第2成形治具30の冷却部34は、例えば、水冷又は空冷を採用できる。このため、上記の流入ホース35及び流出ホース36には、冷却媒体としての水又は空気が流通する。水冷や空冷に限らず、冷却部34としてペルチェ素子を採用してもよい。この場合は、流入ホース35及び流出ホース36は不要である。
【0083】
以上が、本実施形態に係るFPC成形装置1Aの構成である。次に、図16図19を参照して本実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形方法を説明する。
【0084】
<フレキシブル回路基板FPCの成形方法>
次に、上述したFPC成形装置1Aによるフレキシブル回路基板FPCの成形方法について説明する。図16は、第2の実施形態に係るフレキシブル回路基板FPCの成形方法の一連の流れを示すフローチャートである。
【0085】
本実施形態に係るフレキシブル回路基板FPCの成形方法では、はじめに、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40に固定する(ステップS200)。本ステップは、第1の実施形態のステップS100と同様である。すなわち、図6及び図7と同様に、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40の一斜面に固定する。
【0086】
次に、フレキシブル回路基板FPCが載置された載置治具40をレール60により、第1成形治具20に対応する位置(本実施形態では第1成形治具20の直下の位置)まで移動させる。そして、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第1成形治具20とで挟持して第1温度にて成形を行う(ステップS202)。
【0087】
本実施形態において、第1温度とは、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形する程度の温度であり、かつ、絶縁層を接着させている接着剤層が絶縁層から溶出しない程度の温度である。第1温度は、例えば、約120℃~約200℃であることが望ましい。また、第1温度によるフレキシブル回路基板FPCの挟持時間は、例えば、約120秒であることが望ましい。
【0088】
なお、このステップS202における、第1成形治具20の動作については、第1の実施形態における図8図10と同様である。
【0089】
次に、ステップS202にて成形されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40とともにレール60により第2成形治具30に対応する位置(本実施形態では第2成形治具30の直下の位置)まで移動させる。そして、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第2成形治具30とで挟持して第2温度にて後成形を行う(ステップS204)。
【0090】
本実施形態において、第2温度とは、第1温度よりも低い温度である。すなわち、上述の塑性変形したフレキシブル回路基板FPCを冷却する程度の温度である。第2温度は、例えば、約20℃~約50℃であることが望ましい。また、第2温度によるフレキシブル回路基板FPCの挟持時間は、例えば、約120秒であることが望ましい。
【0091】
フレキシブル回路基板FPCは、絶縁層や接着剤層のほか、銅箔層が含まれる場合がある。フレキシブル回路基板FPCを第1温度から第2温度まで冷却する場合、この銅箔層の剛性により、絶縁層においてスプリングバックが発生する場合がある。
【0092】
したがって、フレキシブル回路基板FPCの銅箔層におけるスプリングバックの発生を抑制するため、本実施形態において、第1温度から第2温度に冷却する場合は、載置治具40及び第2成形治具30とでフレキシブル回路基板FPCを挟持する。すなわち、上記の後成形とは、この第2温度にてフレキシブル回路基板FPCを冷却し、絶縁層のスプリングバックを抑制する加工である。
【0093】
ここで、図17図19を参照して、ステップS204の後成形について詳述する。図17図19が図示するように、第2成形治具30は駆動部(図示せず)により駆動されて、Z軸方向に摺動する。加えて、冷却部34により成形ブロック32は、上記の第2温度で冷却される。
【0094】
図17は、フレキシブル回路基板FPCが載置された載置治具40が第2成形治具30の直下に位置していることを図示している。そして、図17は、フレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第2成形治具30とで挟持する前の状態を図示している。なお、フレキシブル回路基板FPCは、ステップS202において成形されているため、既に曲がっている状態である。
【0095】
図18は、図17の状態から第2成形治具30がZ軸負方向に移動し、載置治具40及び第2成形治具30とでフレキシブル回路基板FPCを挟持している状態を図示している。この挟持状態における載置治具40と第2成形治具30との間のクリアランスは、予め設定された値に制御される。このクリアランスは、例えば、フレキシブル回路基板FPCの厚さと同程度に設定することが望ましい。これにより、フレキシブル回路基板FPCが過度に押圧されることを防止し得る。
【0096】
また、図18では、成形ブロック32および載置治具40は、成形ブロック32の曲げ加工部(凹部)E4と、載置治具40の曲げ加工部(凸部)E2とが嵌合するようにフレキシブル回路基板FPCを挟持している。このため、フレキシブル回路基板FPCは、曲げ加工部E4及びE2における、曲げ角度θで曲げられることになる。曲げ角度θを自在に設定することで、フレキシブル回路基板FPCを任意の角度で曲げることができる。なお、第1成形治具20の曲げ加工部E3と第2成形治具30の曲げ加工部E4の形状は同様であることが望ましい。
【0097】
図19は、図18に示す状態から第2成形治具30がZ軸正方向に移動し、フレキシブル回路基板FPCが、載置治具40及び第2成形治具30とで挟持された後の状態が図示されている。このステップS204の完了により、本実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形は終了する。
【0098】
上述した、本実施形態におけるフレキシブル回路基板の成形方法は、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第1成形治具20とで挟持してフレキシブル回路基板FPCが塑性変形する第1温度で成形する第1工程(ステップS202)と、載置治具40に載置された成形されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第2成形治具30とで挟持して第1温度よりも低温である第2温度で後成形する第2工程(ステップS204)とを備える。
【0099】
第2の実施形態によれば、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形する第1温度にて成形を行った後、冷却する第2温度で後成形を行う。これにより、フレキシブル回路基板FPCの銅箔層の剛性による、絶縁層におけるスプリングバックの発生を抑制することができる。
【0100】
さらに、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、第1成形治具20の成形ブロック22が事前に加熱されているため、フレキシブル回路基板FPCの塑性変形する成形を挟持後直ちに行うことができる。このため、フレキシブル回路基板FPCの成形に要する時間を短縮することができる。
【0101】
また、第2成形治具30の成形ブロック32が事前に冷却されているため、フレキシブル回路基板FPCの後成形も挟持後直ちに行うことができる。このため、フレキシブル回路基板FPCの後成形に要する時間を短縮することができる。
【0102】
なお、第1の実施形態と同様に、本実施形態における成形及び後成形は、上述のレール60の垂直方向のみに限らず、水平方向に実施してもよい。この場合、第1成形治具20及び第2成形治具30は、X軸方向またはY軸方向に摺動するように構成されてもよい。また、本実施形態においても、第1温度による成形時間(挟持時間)と、第2温度による後成形の成形時間(挟持時間)がいずれも約120秒で行っている。一方で、成形の挟持時間及び後成形の挟持時間は各々個別に設定されてもよい。例えば、成形及び後成形を行うための任意の適切な条件に応じて、成形時間を各々個別に設定し、設定された時間に従って第1成形治具20及び第2成形治具30を互いに独立して摺動させてもよい。
【0103】
また、上述したフレキシブル回路基板FPCの成形については、第1成形治具20をヒータ24によって加熱することによって実施した。これに限られず、さらに載置治具40も加熱して成形を実施してもよい。すなわち、載置治具40がヒータを備え、そして、フレキシブル回路基板FPCを成形する際に載置治具40が加熱されてもよい。
【0104】
なお、上述した本実施形態に係るFPC成形装置1A及び成形方法においては、同一の載置治具40を用いる場合で説明したが、本実施形態はこれに限られず、異なる載置治具40を用いても実現可能である。すなわち、別の載置治具である、第1載置治具と、第2載置治具が、それぞれ第1成形治具20及び第2成形治具30に対応する位置に固定されてもよい。
【0105】
この場合は、第1の実施形態と同様に、フレキシブル回路基板FPCを、第1載置治具及び第1成形治具20とで挟持して成形したのち、成形されたフレキシブル回路基板FPCを第1載置治具から取り外す。そして、第1載置治具から取り外したフレキシブル回路基板FPCを第2載置治具に載置し、その後、第2載置治具及び第2成形治具30とでフレキシブル回路基板FPCを挟持して後成形する。このようにしてフレキシブル回路基板FPCの成形を実現してもよい。
【0106】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態においては、フレキシブル回路基板FPCの成形において、塑性変形しない温度で前成形した後、塑性変形する温度で成形した。第3の実施形態においては、塑性変形しない温度で前成形した後、塑性変形する温度で成形し、その後、冷却しつつ後成形する。以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0107】
図20は、本実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形装置(FPC成形装置)1Bの全体の構成図である。図20において第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付している。
【0108】
本実施形態に係るFPC成形装置1Bは、第1成形治具10と、第2成形治具20と、第3成形治具30と、載置治具40と、筐体50と、レール60と、を備える。
【0109】
第1成形治具10は、第1の実施形態における第1成形治具10と同様である。すなわち、本実施形態の第1成形治具10は、第1の実施形態において図2を参照して説明したように、支持部11と、成形ブロック12と、熱電対13を備える。そして、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40とで挟持して前成形を行う。
【0110】
第2成形治具20は、第1の実施形態における第2成形治具20と同様である。すなわち、本実施形態の第2成形治具20は、第1の実施形態において図3を参照して説明したように、支持部21と、成形ブロック22と、熱電対23と、ヒータ24を備える。そして、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40とで挟持して成形を行う。
【0111】
第3成形治具30は、第2の実施形態における第2成形治具30と同様である。すなわち、本実施形態の第3成形治具30は、第2の実施形態において図15を参照して説明したように、支持部31と、成形ブロック32と、熱電対33と、冷却部34と、流入ホース35と、流出ホース36を備える。そして、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40とで挟持して後成形を行う。
【0112】
以上が、本実施形態に係るFPC成形装置1Bの構成である。次に、図21を参照して本実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形方法を説明する。
【0113】
<フレキシブル回路基板FPCの成形方法>
次に、上述したFPC成形装置1Bによるフレキシブル回路基板FPCの成形方法について説明する。図21は、第3の実施形態に係るフレキシブル回路基板FPCの成形方法の一連の流れを示すフローチャートである。
【0114】
本実施形態に係るフレキシブル回路基板FPCの成形方法では、はじめに、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40に固定する(ステップS300)。本ステップは、第1の実施形態のステップS100と同様である。すなわち、図6及び図7と同様に、フレキシブル回路基板FPCを載置治具40の一斜面に固定する。
【0115】
次に、フレキシブル回路基板FPCが載置された載置治具40をレール60により、第1成形治具10に対応する位置(本実施形態では第1成形治具10の直下の位置)まで移動させる。そして、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第1成形治具10とで挟持して第1温度にて前成形を行う(ステップS302)。
【0116】
本実施形態において、第1温度とは、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形しない程度の温度である。第1温度は、例えば、約20℃~約30℃であることが望ましい。また、第1温度によるフレキシブル回路基板FPCの挟持時間は、例えば、約120秒であることが望ましい。このステップS302の前成形における、第1成形治具10の動作は、図8図10と同様である。
【0117】
次に、前成形されたフレキシブル回路基板FPCが載置された載置治具40をレール60により、第2成形治具20に対応する位置(本実施形態では第2成形治具20の直下の位置)まで移動させる。そして、載置治具40に載置された前成形されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第2成形治具20とで挟持して第2温度にて成形を行う(ステップS304)。
【0118】
本実施形態において、第2温度とは、上述の第1温度よりも高い温度である。詳しくは、第2温度は、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形する程度の温度であり、かつ、絶縁層を接着させている接着剤層が絶縁層から溶出しない程度の温度である。第2温度は、例えば、約120℃~約200℃であることが望ましい。また、第2温度によるフレキシブル回路基板FPCの挟持時間は、例えば、約120秒であることが望ましい。このステップS304における、第2成形治具20の動作は、図11図13と同様である。
【0119】
次に、成形されたフレキシブル回路基板FPCが載置された載置治具40をレール60により、第3成形治具30に対応する位置(本実施形態では第3成形治具30の直下の位置)まで移動させる。そして、載置治具40に載置された成形されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第3成形治具30とで挟持して第3温度にて後成形を行う(ステップS306)。
【0120】
本実施形態において、第3温度とは、上述の塑性変形したフレキシブル回路基板FPCを冷却する程度の温度であり、より詳しくは、第2温度よりも低く、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形しない程度の温度である。第3温度は、例えば、約20℃~約50℃であることが望ましい。また、第3温度によるフレキシブル回路基板FPCの挟持時間は、例えば、約120秒であることが望ましい。なお、このステップS306における、第3成形治具30の動作は、図17図19と同様である。このステップS306の完了により、本実施形態に係るフレキシブル回路基板の成形は終了する。
【0121】
上述した本実施形態におけるフレキシブル回路基板の成形方法は、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第1成形治具10とで挟持して第1温度で前成形する第1工程(ステップS302)と、載置治具40に載置された前成形されたフレキシブル回路基板FPCを、載置治具40及び第2成形治具20とで挟持して第1温度よりも高温でありフレキシブル回路基板FPCが塑性変形する第2温度で成形する第2工程(ステップS304)と、載置治具40に載置された成形されたフレキシブル回路基板を、載置治具40及び冷却部34を有する第3成形治具30とで挟持して第2温度よりも低温である第3温度で後成形する第3工程(ステップS306)を備える。
【0122】
このように第3の実施形態では、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形しない第1温度にて前成形を行った後、フレキシブル回路基板FPCが塑性変形する第2温度で成形を行う。その後、第3温度でフレキシブル回路基板FPCを挟持しつつ冷却する後成形を行う。
【0123】
これにより、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、フレキシブル回路基板FPCに作用する曲げ応力を緩和することができる。このため、基板厚が厚いフレキシブル回路基板FPCを成形する場合や、曲げ半径が小さい場合でも、内部破壊や層間剥離の発生を抑制することができる。加えて、第2の実施形態と同様に、フレキシブル回路基板FPCの銅箔層の剛性による、絶縁層におけるスプリングバックの発生を抑制することができる。
【0124】
さらに、本実施形態によれば、第2成形治具20の成形ブロック22が事前に加熱されているため、フレキシブル回路基板FPCの塑性変形する成形を挟持後直ちに行うことができる。このため、フレキシブル回路基板FPCの成形に要する時間を短縮することができる。同様に、第3成形治具30の成形ブロック32が事前に冷却されているため、フレキシブル回路基板FPCの後成形を挟持後直ちに行うことができる。このため、フレキシブル回路基板FPCの後成形についても要する時間を短縮することができる。
【0125】
なお、第1の実施形態と同様に、本実施形態における成形及び後成形は、上述のレール60の垂直方向のみに限らず、水平方向に実施してもよい。この場合、第1成形治具10、第2成形治具20、及び、第3成形治具30は、X軸方向またはY軸方向に摺動するように構成されてもよい。
【0126】
また、上述したフレキシブル回路基板FPCの成形については、第2成形治具20をヒータ24によって加熱することによって実施した。これに限られず、さらに載置治具40も加熱して成形を実施してもよい。すなわち、載置治具40がヒータを備え、そして、フレキシブル回路基板FPCを成形する際に載置治具40が加熱されてもよい。
【0127】
また、本実施形態においても、第1温度による前成形の挟持時間と、第2温度による成形の挟持時間と、第3温度による後成形の挟持時間とがいずれも同じ時間(約120秒)で行っている。一方で、前成形の挟持時間と、成形の挟持時間と、後成形の挟持時間とは各々個別に設定されてもよい。例えば、前成形と、成形と、後成形とを行うための任意の適切な条件に応じて、挟持時間を各々変更させ、第1成形治具10と、第2成形治具20と、第3成形治具30とを互いに独立して摺動させてもよい。
【0128】
なお、上述した本実施形態に係るFPC成形装置1B及び成形方法においては、同一の載置治具40を用いる場合で説明したが、本実施形態はこれに限られず、異なる載置治具40を用いても実現可能である。すなわち、別の載置治具である、第1載置治具、第2載置治具、及び、第3載置治具が、それぞれ第1成形治具10、第2成形治具20、及び、第3成形治具30に対応する位置に固定されている場合である。この場合は、フレキシブル回路基板FPCを、第1載置治具及び第1成形治具10とで挟持して前成形したのち、前成形されたフレキシブル回路基板FPCを取り外す。そして、第2載置治具に載置した後、第2載置治具及び第2成形治具20とで挟持して成形する。同様に、成形されたフレキシブル回路基板FPCを取り外し、第3載置治具に載置し、第3載置治具及び第3成形治具30とで挟持して後成形する。このようにしてフレキシブル回路基板FPCの成形を実現してもよい。
【0129】
(載置治具の抑え治具)
上述した第1の実施形態~第3の実施形態に適用できる抑え治具44について、図22図24を参照して説明する。
【0130】
図22は、抑え治具44の構成図である。抑え治具44は、抑え治具板44a及び抑え治具板44bの一端が結合したものとして構成される。抑え治具板44aは、表面44aF1及び裏面44aF2を有する。同様に、抑え治具板44bについても、表面44bF1及び裏面44bF2を有する。
【0131】
この抑え治具44は、載置治具40とともに用いられる。そして、載置治具40に載置されたフレキシブル回路基板FPCの曲げ状態を維持する。詳しくは、第1成形治具10及び載置治具40により前成形され、曲げ状態になっているフレキシブル回路基板FPCの形状を維持する。
【0132】
抑え治具44は、挟持による成形に耐え得る剛性及び熱耐性を有する。このため、載置治具40と同様に、抑え治具44は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:Poly Ether Ether Ketone)などの高耐熱性樹脂で構成されてもよい。
【0133】
図23は、上述の第1の実施形態~第3の実施形態において、フレキシブル回路基板FPCの曲げ状態を維持するため、抑え治具44を適用した場合の一例を図示している。この場合、2個の抑え治具44U及び抑え治具44Lを用い、フレキシブル回路基板FPCを挟み込むようにして適用する。
【0134】
図23に示すように、抑え治具44Lは載置治具40上に載置される。詳しくは、載置治具40の斜面40F1と、抑え治具板44aの裏面44aF2とが対向し、かつ斜面40F2と裏面44bF2とが対向するように、抑え治具44Lは載置治具40上に載置される。
【0135】
そして、この抑え治具44Lの表面44aF1及び表面44bF1に、フレキシブル回路基板FPCを固定する。さらに、このフレキシブル回路基板FPCの上に、抑え治具44Uを載置する。このようにして、フレキシブル回路基板FPCは抑え治具44Lと抑え治具44Uにより挟持され、曲げ形状が維持される。
【0136】
以上のようにして、フレキシブル回路基板FPCが抑え治具44U及び抑え治具44Lに挟み込まれるようにして載置治具40に載置される。
【0137】
図24は、図23を、Y軸正方向に見た断面図である。この図24が図示しているように、載置治具40の曲げ加工部E2と、抑え治具44Uの曲げ加工部E5及び抑え治具44Lの曲げ加工部E6とが嵌合するように載置されている。このため、フレキシブル回路基板FPCは、曲げ加工部E2、E5及びE6における曲げ角度θで曲げられることとなる。曲げ角度θを自在に設定することで、フレキシブル回路基板FPCを任意の角度で曲げることができる。
【0138】
以上のように、抑え治具44を第1の実施形態~第3の実施形態に適用することにより、前成形されたフレキシブル回路基板FPCの曲げ状態をしっかりと維持できる。そのため、銅箔層などの曲げ応力を緩和し、フレキシブル回路基板FPCの内部破壊や銅箔層の破断することを抑制することができる。
【0139】
(抑え治具における抑え治具留め部)
上述した抑え治具44に適用できる抑え治具留め部について、図25図27を参照して説明する。抑え治具留め部は、抑え治具44がフレキシブル回路基板FPCをより確実に抑えるための機構である。
【0140】
図25は、抑え治具留め部に係る、抑え治具44及び抑え治具留めピン46を図示している。この例では、抑え治具留め部は、抑え治具44に設けられた抑え治具留め孔H1~H4と、抑え治具留めピン46から構成される。そして、抑え治具留め部は、抑え治具留め孔H1~H4に、抑え治具留めピン46を貫通させ載置治具40に固定して実現される。
【0141】
なお、図25では、抑え治具板44aに設けられた抑え治具留め孔H1~H4が図示されている。同様に、対向する抑え治具板44bにも抑え治具留め孔H1~H4が設けられてもよい。なお、抑え治具留めピン46は、抑え治具44と同様に、ポリエーテルエーテルケトンなどの高耐熱性樹脂で構成されてもよい。
【0142】
図26は、抑え治具44に、上述の抑え治具留め部を適用した場合の一例を図示している。図26では、図23と同様に、2個の抑え治具44U及び抑え治具44Lを用いてフレキシブル回路基板FPCの曲げ状態を維持している。また、図26で図示している抑え治具44U及び抑え治具44Lと、フレキシブル回路基板FPCと、載置治具40との位置関係についても、図23と同様である。
【0143】
図27は、上述の図26を、Y軸正方向に見た断面図である。この図27が図示しているように、抑え治具留めピン46に関しては、抑え治具44U及び抑え治具44Lを貫通している。そして、抑え治具44及びフレキシブル回路基板FPCを載置治具40に固定する。
【0144】
さらに図26および図27に示すように、抑え治具留めピン46が、抑え治具44U及び抑え治具44Lを貫通するように設けられている。詳細には、抑え治具44Uの抑え治具留め孔H3Uと、抑え治具44Lの抑え治具留め孔H1Lとが、それぞれ対向して位置する。そして、抑え治具留めピン46aは、この対応する両方の抑え治具留め孔を貫通するように設置される。同様に、抑え治具44Uの抑え治具留め孔H4Uと、抑え治具44Lの抑え治具留め孔H2Lとが対向して位置し、抑え治具留めピン46bが貫通するように設置される。
【0145】
上記は、抑え治具44U及び抑え治具44Lにおける、それぞれの抑え治具板44aに、抑え治具留めピンによりフレキシブル回路基板FPCを固定する場合である。この抑え治具板44aに対向する抑え治具板44bについても同様にしてフレキシブル回路基板FPCを固定してもよい。
【0146】
以上のように、抑え治具留め部が適用された抑え治具44によれば、抑え治具留めピン46を用いて、抑え治具44及びフレキシブル回路基板FPCを載置治具40にしっかりと固定することができる。このため、より安定に抑え治具44が載置治具40に固定され、フレキシブル回路基板FPCの曲げ状態が維持することができる。
【0147】
(抑え治具における開口部)
上述した抑え治具44が、さらに開口部A1を有する場合について、図28図30を参照して説明する。
【0148】
図28は、開口部A1を有する抑え治具44を図示している。この開口部A1は、第2成形治具20及び第3成形治具30が、フレキシブル回路基板FPCに当接するために設けられている。すなわち、加熱された成形ブロック22及び冷却された成形ブロック32を、フレキシブル回路基板FPCに直接接触させるために設けられている。これにより、より直接的にそれぞれの成形ブロックの温度を、フレキシブル回路基板FPCに伝導することができる。その結果、各工程の処理時間(成形時間)を短縮することができる。
【0149】
開口部A1は、成形ブロックがフレキシブル回路基板FPCに当接し得る大きさを有する。言い換えると、図28における、開口部A1のY軸方向の横幅とZ軸方向の縦幅が、成形ブロック22及び成形ブロック32のY軸方向の横幅とZ軸方向の縦幅を包摂し得る大きさを有する。
【0150】
図29は、上述の第1の実施形態~第3の実施形態において、開口部A1を有する抑え治具44を適用した場合の一例を図示している。フレキシブル回路基板FPCの上部に位置する抑え治具44Uは、開口部A1を有する。他方、フレキシブル回路基板FPCの下部に位置する抑え治具44Lは、開口部A1を有しない。抑え治具44U及び抑え治具44Lと、フレキシブル回路基板FPCと、載置治具40との位置関係については、図23と同様である。
【0151】
図29が図示しているように、抑え治具44Uが開口部A1を有するため、フレキシブル回路基板FPCの曲げ部分が露出している。これにより、成形ブロック22及び成形ブロック32が、このフレキシブル回路基板FPCに当接することができる。
【0152】
図30は、図29を、Y軸正方向に見た断面図である。この図30が図示しているように、抑え治具44Uは開口部A1を有しているものの、抑え治具44U及び抑え治具44Lとでフレキシブル回路基板FPCを挟み込んでいる。このため、フレキシブル回路基板FPCの曲げ状態を維持することができる。すなわち、抑え治具44における開口部A1以外の部分で、フレキシブル回路基板FPCを固定し得る。このため、開口部A1を有しない抑え治具44と同様に、フレキシブル回路基板FPCの曲げ状態を維持することができる。
【0153】
このように、開口部A1を有する抑え治具44によれば、第2成形治具20及び第3成形治具30がフレキシブル回路基板FPCに当接する。これにより、成形ブロック22及び成形ブロック32の温度が直接伝導し、より効率的にフレキシブル回路基板FPCを加熱及び冷却することができる。
【0154】
なお、開口部A1を有する抑え治具44は、さらに上述した抑え治具留め部を有していてもよい。これにより、フレキシブル回路基板FPCの効率的な加熱及び冷却に加えて、より安定に載置治具40に固定し、フレキシブル回路基板FPCの曲げ状態を維持することができる。
【0155】
(実施例)
上述した第3の実施形態により、実際にフレキシブル回路基板FPCを成形した実施例について、図31図33を参照して説明する。
【0156】
図31は、本実施例に用いたフレキシブル回路基板FPCの構成を図示している。このフレキシブル回路基板FPCは、片面に銅箔層CF1が設けられた液晶ポリマーLCP1と、両面に銅箔層CF2及び銅箔層CF3が設けられた液晶ポリマーLCP2とを接着剤層Adで接着させている。銅箔層CF1の上面がカバーフィルムF1に、銅箔層CF2の下面がカバーフィルムF2に、それぞれ覆われている。
【0157】
図32は、このフレキシブル回路基板FPCを、第3の実施形態により成形した後の画像である。この画像のフレキシブル回路基板FPCにおける曲げ角度は、約51°である。また、曲げ半径は、約0.64mmである。そして基板厚は、約0.32mmである。この画像が示すように、上記の各曲げ条件においても、液晶ポリマーLCP1及びLCP2との間には層間剥離が発生していない。
【0158】
図33は、図32のフレキシブル回路基板FPCの曲げ角度の推移を示すグラフである。図33は、横軸が経過日数であり、縦軸が曲げ角度である。図33が示すように、フレキシブル回路基板FPCの成形を行った日から30日を経過した後でも、フレキシブル回路基板FPCの曲げ角度は約51°を維持している。すなわち、成形後30日経過しても、フレキシブル回路基板FPCにおいてスプリングバックが発生していないことが分かる。
【0159】
以上のように、本実施例によれば、第3の実施形態によるフレキシブル回路基板の成形方法を用いて、フレキシブル回路基板FPCを内部崩壊や層間剥離の発生を抑制しつつ成形し得ること、およびスプリングバックが発生しないことが実証されている。
【0160】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0161】
1、1A、1B フレキシブル回路基板の成形装置
10、20、30 成形治具
11、21、31 支持部
12、22、32 成形ブロック
13、23、33 熱電対
24 ヒータ
34 冷却部
35 流入ホース
36 流出ホース
40 載置治具
40F1、40F2 斜面
42a、42b、42c 固定ガイドピン
44 抑え治具
44a、44b 抑え治具板
44aF1、44bF1 表面
44aF2、44bF2 裏面
46、46a、46b、46c 抑え治具留めピン
50 筐体
60 レール
FPC フレキシブル回路基板
P1、P2、P3 フレキシブル回路基板の固定点
E1、E2、E3、E4、E5、E6 曲げ加工部
H1、H2、H3、H4 抑え治具留め孔
A1 開口部
LCP1、LCP2 液晶ポリマー
CF1、CF2、CF3 銅箔層
F1、F2 カバーフィルム
Ad 接着剤層
θ 曲げ角度
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