(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム、および通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/04 20090101AFI20240809BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20240809BHJP
H04W 4/90 20180101ALI20240809BHJP
H04W 28/08 20230101ALI20240809BHJP
H04W 72/02 20090101ALI20240809BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W4/38
H04W4/90
H04W28/08
H04W72/02
(21)【出願番号】P 2020197663
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【氏名又は名称】福屋 好泰
(72)【発明者】
【氏名】田中 康孝
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 信二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信彦
【審査官】田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-151054(JP,A)
【文献】特開2016-162406(JP,A)
【文献】特開2015-130099(JP,A)
【文献】国際公開第2006/090480(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0163352(US,A1)
【文献】特開2018-046446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知器から検知結果を受信する受信部と、
受信した前記検知結果に基づく情報を上位機器へと周期的に無線送信する送信部と、
前記送信部による送信間隔をランダムに制御する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、
前記検知結果に基づいてイベントの発生を認識する前には、前記情報を無線送信する第一の送信間隔を当該情報の無線送信の度にランダムに設定し、
前記検知結果に基づいて前記イベントの発生を認識した後には、前記情報を無線送信する第二の送信間隔であって、前記第一の送信間隔よりも短い送信間隔である当該第二の送信間隔を当該情報の無線送信の度にランダムに設定し、
前記第一の送信間隔または前記第二の送信間隔で前記情報を送信するよう前記送信部を制御する、通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検知結果が変化した時点で前記情報を送信するよう前記送信部を制御する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記受信部は複数の前記検知器から前記検知結果を受信し、
前記制御部は、前記複数の検知器から受信した前記検知結果のいずれかに基づいてイベントの発生を認識
する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第一の送信間隔と前記第二の送信間隔の一方または両方の送信間隔を乱数に基づいてランダムに設定に制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第一の送信間隔および前記第二の送信間隔
の各々は、一定範囲内において定められる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第二の送信間隔が定められる一定範囲の最大値は、前記第一の送信間隔が定められる一定範囲の最小値よりも小さいことを特徴とする、請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記送信部は、複数の前記検知結果に基づく情報を前記周期的に無線送信する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記複数の検知結果に基づく情報は同一である、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記受信部は有線通信を介して前記検知器から前記検知結果を受信する、請求項1から請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記検知器はガス検知器であり、
前記イベントは前記ガス
検知器が所定濃度以上または所定濃度以下のガスを検知することである、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記第一の送信間隔は3分以内である請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
前記第二の送信間隔は30秒以内である請求項1に記載の通信装置。
【請求項13】
前記送信部は長距離広域無線ネットワークモジュールを含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項14】
イベントを検知する検知器と、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の通信装置と、
を備える通信システム。
【請求項15】
検知器から検知結果を受信する受信ステップと、
受信した前記検知結果に基づく情報を上位機器へと周期的に無線送信する送信ステップと、
前記送信ステップにおける送信間隔をランダムに制御する制御ステップと、
を備え、
前記制御ステップは、
前記検知結果に基づいてイベントの発生を認識する前には、前記情報を無線送信する第一の送信間隔を当該情報の無線送信の度にランダムに設定し、
前記検知結果に基づいて前記イベントの発生を認識した後には、前記情報を無線送信する第二の送信間隔であって、前記第一の送信間隔よりも短い送信間隔である当該第二の送信間隔を当該情報の無線送信の度にランダムに設定し、
前記第一の送信間隔または前記第二の送信間隔で前記情報を送信するよう制御する、通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線で通信を行う通信装置、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の通信装置と無線通信を行い、各通信装置から受信したデータに基づいて特定の処理を実行する上位システムが知られている。当該通信装置と上位システムの間には通信を確立させるためのゲートウェイが介在しており、通信装置とゲートウェイとの間で行われる通信として、電波による無線通信が通用されている。例えば、商業施設や工業施設などの施設において、施設内に設置された複数の検知器と、これら複数の検知器から受信したデータを、ゲートウェイを介して監視システムへと無線通信によって送信する複数の通信装置と、を備える通信システムが用いられている。当該通信装置は、無線信号を送信する無線通信モジュールと、当該無線通信モジュールを制御するCPUを備えている。
【0003】
ここで、通信装置のCPUは、所定の周期で無線通信モジュールを制御することで、通信装置は予め定められた一定の周期で無線信号を送信するが、偶発的に、複数の読取装置において無線信号の送信タイミングが重複してしまう場合があり、その場合には送信された電波同士が干渉し、通信に悪影響を及ぼす場合があった。
【0004】
上記した無線信号の重複送信に起因する通信エラーを防止する技術が特許文献1に開示されている。当該特許文献1には、通信装置として機能する無線端末を複数備えた無線通信ネットワークシステムが開示されており、これら複数の無線端末では、無線信号の送信周期は同一に設定されているが、最初の送信タイミングが端末間で重複しないよう、各端末に固有に付与された製造番号に基づいて最初の送信タイミングが決定されている。このようにして最初の送信タイミングを各無線端末間で重複しないよう決定しているので、例え同一の送信周期で無線信号を送信したとしても、無線信号の重複送信を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の商業施設や工業施設などの施設においては、その延床面積に比例して設置すべき検知器および通信装置の数が増加することとなるが、特許文献1に記載された通信態様を採用した場合、全ての通信装置が同一の送信周期で無線信号を送信することとなるため、一の通信装置の送信周期内に他の全ての通信装置が無線信号を送信する必要があり、送信周期によっては利用可能な通信装置の数が制限されてしまうこととなる。
【0007】
上記の課題に鑑み本発明は、利用数に制限が生じない通信装置、通信システム、および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の通信装置は、検知器から検知結果を受信する受信部と、受信した前記検知結果に基づく情報を上位機器へと周期的に無線送信する送信部と、前記送信部による送信間隔をランダムに制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記送信間隔は、第一の送信間隔と、前記第一の送信間隔よりも短い間隔である第二の送信間隔と、を含み、前記制御部は、前記第一の送信間隔と前記第二の送信間隔の一方または両方をランダムに制御することを特徴とする。
【0010】
また、前記制御部は、受信した前記検知結果に基づいてイベントの発生を認識した場合、前記送信間隔を前記第二の送信間隔に制御することを特徴とする。
【0011】
また、前記受信部は複数の前記検知器から前記検知結果を受信し、前記制御部は、前記複数の検知器から受信した前記検知結果のいずれかに基づいてイベントの発生を認識した場合、前記送信間隔を前記第二の送信間隔に制御することを特徴とする。
【0012】
また、前記制御部は、前記第一の送信間隔と前記第二の送信間隔の一方または両方の送信間隔を乱数に基づいてランダムに制御することを特徴とする。
【0013】
また、前記乱数に基づいてランダムに制御される送信間隔は一定範囲内において定められることを特徴とする。
【0014】
また、前記送信部は、複数の前記検知結果に基づく情報を前記周期的に無線送信することを特徴とする。
【0015】
また、前記複数の検知結果に基づく情報は同一であることを特徴とする。
【0016】
また、前記受信部は有線通信を介して前記検知器から前記検知結果を受信することを特徴とする。
【0017】
また、前記検知器はガス測定器であり、前記イベントは前記ガス測定器が所定濃度以上または所定濃度以下のガスを検知することを特徴とする。
【0018】
また、前記第一の送信間隔は3分以内であることを特徴とする。
【0019】
また、前記第二の送信間隔は30秒以内であることを特徴とする。
【0020】
また、前記送信部は長距離広域無線ネットワークモジュールを含むことを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の通信システムは、イベントを検知する検知器と、上記に記載の通信装置と、を備えることを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の通信方法は、イベントを検知する検知器から検知結果を受信する受信ステップ、受信した前記検知結果に基づく情報を上位機器へと周期的に無線送信する送信ステップ、前記送信ステップにおける送信間隔をランダムに制御する制御ステップ、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の通信装置、通信システム、および通信方法によれば、利用数に制限が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る監視システムの概略図である。
【
図2】(a)上記監視システムが備えるガス検知器のハードウェア構成図、(b)当該ガス検知器の機能ブロック図である。
【
図3】(a)上記監視システムが備える通信装置のハードウェア構成図、(b)当該通信装置の機能ブロック図である。
【
図4】上記通信装置の動作を示すメインフローである。
【
図5】(a)上記動作フローにおける間隔制御処理の流れを示すフロー、(b)割込処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る通信装置、通信システム、および通信方法の実施形態を、監視システムを例にして、以下、図面に基づいて説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の監視システム1は、工業施設や商業施設などの建物内におけるガス漏れの発生を監視するシステムであり、複数のガス検知器10a~10m(以下、これらをまとめて示す場合はガス検知器10という。)と、複数の通信装置20a~20c(以下、これらをまとめて示す場合は通信装置20という。)と、上位機器である監視装置30と、を備えている。本実施形態では、建物内が複数の監視エリアに区分けされており、監視エリアの各々に、複数のガス検知器10a~10c,10d~10i,10j~10mと、これら複数のガス検知器10a~10c,10d~10i,10j~10mと有線通信可能な通信装置20a,20b,20cと、が設置されている。監視装置30は、監視エリアの各々に設置された通信装置20とネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0027】
ガス検知器10は、建物内の壁面や天井などの所定位置に設置され、設置場所の周囲に生じたガス漏れを検知する機器であって、
図2に示すように、センサ12がアナログデジタル変換回路(以下、ADC13という。)を介してマイクロコントローラユニット(以下、MCU14という。)に接続され、当該MCU14には送信部150として機能する有線通信モジュール15が接続された構成となっている。
【0028】
センサ12は、代表的には可燃性ガスや毒性ガスの濃度を検出するセンサ12であって、半導体表面でのガス吸着に応じて電気伝導度(抵抗値)を変化させる半導体式センサや、COガスを所定電位で電解し、ガス濃度に応じた電解電流を発生させる定電位電解式センサなどが用いられる。
【0029】
上記の通り、センサ12の出力は、ADC13を介してMCU14の入力に電気的に接続されている。当該構成により、センサ12から出力されたアナログ信号は、ADC13によってデジタル信号へと変換されてMCU14へと入力される。なお、MCU14がADC13を内蔵したものであっても構わない。MCU14は、中央処理装置(以下、CPU16という。)が、メモリ17に予め記憶された検知プログラムを実行することで、センサ12からの出力を取得する取得部141、取得した出力信号に基づいて周囲のガス濃度を測定する測定部142、測定したガス濃度と警報を発すべき閾値143とを比較する比較部144、比較した結果を検知結果として出力する出力部145、として機能させる。
【0030】
上記MCU14から出力された検知結果は、有線通信モジュール15を介して通信装置20へと送られる。当該ガス検知器10と通信装置20との通信方式は特に限定されないが、本実施形態では、有線通信モジュール15としてRS485通信モジュールを用いており、一つの通信装置20aに対して複数のガス検知器10a~10cがデイジーチェーン接続されている。よって、検知結果は、複数のガス検知器10a~10cを次々に伝送される、いわゆるバケツリレー方式によって通信装置20aへと伝送される。なお、当該通信態様は、通信装置20bに対してデイジーチェーン接続された複数のガス検知器10d~10i、及び通信装置20cに対してデイジーチェーン接続された複数のガス検知器10j~10mも同様である。
【0031】
上記のセンサ12、ADC13、MCU14、及び有線通信モジュール15、並びに、これらに電力を供給する電源回路が実装された基板はハウジングに収容され、建物内の所定箇所に設置されている。なお、当該ハウジングには、設置箇所周囲の気体を取り入れるための開口がセンサ12の正面に形成されている。
【0032】
次に、通信装置20は、複数のガス検知器10から受信した検知結果を監視装置30に送信する装置であって、
図3に示すように、ガス検知器10と有線通信を行う有線通信モジュール21(RS485モジュール)と、監視装置30と通信を行う長距離広域無線ネットワークモジュール22(LoRaモジュール)と、有線通信モジュール21および長距離広域無線ネットワークモジュール22を制御するMCU23と、を備えている。長距離広域無線ネットワークモジュール22は、電波による長距離の無線通信を行うためのモジュールであって、その出力がアンテナ24に接続されている。
【0033】
上記通信装置20のMCU23が有するメモリ25には、有線通信モジュール21および長距離広域無線ネットワークモジュール22を制御して、ガス検知器10および監視装置30と通信する通信制御プログラムが予め記憶されている。MCU23が有するCPU26が、当該プログラムを実行することで、有線通信モジュール21を、ガス検知器10から検知結果を受信する受信部210として機能させ、長距離広域無線ネットワークモジュール22を、検知結果を監視装置30へと送信する送信部220として機能させる。
【0034】
監視装置30は、建物内に設置された複数の通信装置20から検知結果を受信し、受信した検知結果に基づいて建物内におけるガス漏れを監視するコンピュータであって、ゲートウェイを介してネットワークに接続されている。当該監視装置30は、受信した検知結果が、ガス漏れの発生を指標する場合には、建物内に設置された各アラーム(不図示)に対して警報命令を送信する。
【0035】
ここで、本実施形態の通信装置20は、平常時には検知結果を監視装置30に対して第一の間隔で周期的に送信し、ガス漏れが検知された異常時には当該第一の間隔よりも短い第二の間隔で検知結果を周期的に送信することとしている。そして、当該第一の間隔や第二の間隔はランダムに決定することとしている。以下、
図4を参照しながら具体的なフローを説明する。
【0036】
図4は通信装置20のMCU23が実行するメインフローを示すものであり、先ず、当該MCU23は第一取得処理(s10)を実行する。第一取得処理(s10)は、通信装置20のMCU23が起動した際に、当該通信装置20に有線接続された複数のガス検知器10から検知結果を取得する処理である。
(1)具体的には、MCU23は、有線通信モジュール21を制御する制御信号を出力する。当該制御信号には、検知結果を取得すべきガス検知器10を指定するアドレスと、当該ガス検知器10に対する検知結果の送信要求が含まれる。通信装置20の有線通信モジュール21は、入力された制御信号に基づいて、ガス検知器10の有線通信モジュール15と通信する通信信号を出力する。
(2)当該通信信号が入力されたガス検知器10の有線通信モジュール15は、通信信号に自己のアドレスが指定されていない場合には、次のガス検知器10に対して当該通信信号を出力する。当該通信信号が入力された次のガス検知器10も同様に、通信信号に自己のアドレスが指定されていない場合には更に次のガス検知器10に対して通信信号を出力する。このように、アドレスと送信要求を含む通信信号は、いわゆるバケツリレー方式によって、複数のガス検知器10に伝送される。
(3)一方、ガス検知器10の有線通信モジュール15は、入力された通信信号に自己のアドレスが指定されている場合には、送信要求を含む制御信号を当該ガス検知器10のMCU14へと出力する。ガス検知器10のMCU14は、送信要求に応答すべく検知結果を含む制御信号を当該ガス検知器10の有線通信モジュール15へと出力し、当該有線通信モジュール15は検知結果を含む通信信号を通信装置20に対して出力する。この通信信号は、上記バケツリレー方式と同じ方式で通信装置20へと伝送される。
(4)通信信号が入力された通信装置20の有線通信モジュール21は、通信信号に含まれる検知結果を制御信号に含めて通信装置20のMCU23へと出力する。上記の処理を各ガス検知器10のアドレスを指定して行うことで、通信装置20は各ガス検知器10から検知結果を取得する。通信装置20のMCUは、各ガス検知器10を識別する検知器識別情報に対応づけて検知結果をメモリ25に記憶する。
【0037】
通信装置20のMCU23は、上記第一取得処理(s10)により検知結果を取得すると、送信処理(s20)を実行する。送信処理(s20)は、各ガス検知器10から取得した検知結果を監視装置30に送信する処理であって、メモリ25に記憶された検知器識別情報と検知結果を含めた制御信号を長距離広域無線ネットワークモジュール22に対して出力する。長距離広域無線ネットワークモジュール22は、入力された制御信号に基づいて通信信号を生成しアンテナを介して当該通信信号を出力する。通信信号が入力された監視装置30のCPUは、通信信号に含まれる検知器識別情報と検知結果をメモリに記憶させるとともに、検知結果が異常を指標する場合には建物内に設けられた警報器を作動させる。
【0038】
通信装置20のMCU23は、上記の送信処理(s20)を実行すると、その都度、間隔設定処理(s30)を実行する。間隔設定処理(s30)は、検知結果の送信間隔を設定する処理であって、検知結果の内容に応じてカウンタ値をランダムに設定する。なお、当該カウンタ値は1秒毎に発生する割込処理(s60)においてカウントダウンされ、カウンタ値が0になった時点で送信処理が実行される。これにより、通信装置20は、検知結果をその内容に応じてランダムに設定された間隔で繰り返し送信されることとなる。
【0039】
具体的には、
図5(a)に示すように、間隔設定処理(s30)では、取得した検知結果に応じて第一間隔設定処理(s32)または第二間隔設定処理(s33)が実行され、その後に割込設定処理(s34)が実行される。
(1)第一間隔設定処理(s32)は、検知結果が平常を指標する場合(s31:Yes)において、送信間隔を第一の間隔に設定する処理である。当該第一の間隔は、第一基準間隔(代表的には30秒)を中心とした所定レンジ内(代表的には、30秒に対して±20%の時間を加味した24秒~36秒の範囲内)においてランダムに決定されるものであり、当該所定レンジ内の値(24~36)となるように発生させた乱数をカウンタ変数へと代入することで設定される。
(2)第二間隔設定処理(s33)は、検知結果が異常を指標する場合(s31:No)において、送信間隔を第二の間隔に設定する処理である。当該第二の間隔は、第二基準間隔(代表的には10秒)を中心とした所定レンジ内(代表的には、10秒に対して±20%の時間を加味した8秒~12秒の範囲内)においてランダムに決定されるものであり、当該所定レンジ内の値(8~12)となるように発生させた乱数をカウンタ変数へと代入することで設定される。
(3)上記の第一間隔設定処理(s32)または第二間隔設定処理(s33)が実行されると、割込設定処理(s34)が実行される。割込設定処理(s34)は、1秒毎にタイマー割込を発生させるための処理であり、1秒に対応するシステムクロック数および割り込みを許可するフラグが所定のレジスタに設定される。
【0040】
図4に戻り、通信装置20のMCU23は、上記の間隔設定処理(s30)を実行した後に、第二取得処理(s40)および確認処理(s50)を実行する。第二取得処理(s40)は、上記の第一取得処理(s10)と同様に、複数のガス検知器10から検知結果を取得する処理である。確認処理(s50)は、各ガス検知器10の検知結果に変化が生じたか否かを確認する処理であって、例えば、新たに取得した検知結果とその前回に取得した検知結果の排他的論理和をとる。当該排他的論理和が“真”の場合には、検知結果に変化が生じたものとして送信処理(s20)を実行して変化後の検知結果を送信する。そして、上記したように、送信処理(s20)の後には間隔設定処理(s30)及び第二取得処理(s40)が実行される。
【0041】
一方、確認処理(s50)において排他的論理和が“偽”の場合には、検知結果に変化が生じていないものとして第二取得処理(s40)を繰り返し実行することとなる。このように繰り返し第二取得処理(s40)を実行している際に、上記割込設定処理(s34)において設定された割り込みが発生すると、
図5(b)に示す割込処理(s60)が実行される。
【0042】
割込処理(s60)では、間隔設定処理(s30)において設定されたカウンタ値がカウントダウンされる(s61)。当該カウントダウンの結果、カウンタ値が“0”でない場合(s62:No)には、送信間隔(第一の送信間隔または第二の送信間隔)が未だ経過していないものとし、割込処理(s60)が終了される。一方で、カウンタ値が“0”になった場合(s62:Yes)には、送信間隔が経過したものとして送信処理(s63)が実行され、検知結果が監視装置30へと送信される。そして、送信処理(s63)が実行されると間隔設定処理(s63)が実行される。当該間隔設定処理(s63)は上記の間隔設定処理(s30)と同様の処理であり、当該処理によって次の送信間隔が改めて設定される。
【0043】
上記の割込処理(s60)が終了すると、
図4に示すメインフローに戻り、各処理を実行する。
【0044】
上記のフローに基づいて動作する通信装置20の通信態様を、
図1に示された通信装置20aとガス検知器10a~10cを例にして説明する。
(1)通信装置20aは、起動すると第一取得処理(s10)を実行して各ガス検知器10a~10cから検知結果を取得する。
図6に示すように、この時点において、ガス検知器10a~10cはガス漏れを検知していないので、通信装置20aは、各ガス検知器10a~10cから平常を指標する検知結果を取得する。
(2)通信装置20aは送信処理(s20)を実行し、各ガス検知器10a~10cから取得した検知結果(平常)を監視装置30に送信する。
(3)通信装置20aは間隔設定処理(s30)を実行する。上記のように第一取得処理(s10)において取得した検知結果はいずれも平常を指標しているため(s31:Yes)、第一間隔設定処理(s32)が実行される。本例では、第一間隔設定処理(s32)において生成された乱数の値が“34”であり、当該値がカウンタ変数に代入される。
(4)通信装置20aは割込設定処理(s34)を実行する。当該処理を実行することで1秒毎にタイマー割込が発生することとなる。
(5)通信装置20aは、第二取得処理(s40)を実行し、ガス検知器10a~10cから取得した検知結果を確認する(s50)。確認した結果、取得した全ての検知結果に変化がない場合(s50:No)には第二取得処理(s40)および確認処理(s50)を繰り返し実行する。このように第二取得処理(s40)や確認処理(s50)を繰り返し実行している間に発生する割込処理(s60)において、カウンタ変数がカウントダウンされる(s61)。
(6)割込処理においてカウントダウンされたカウンタ変数が“0”になった場合(s62:Yes)、すなわち34秒が経過した場合には、送信処理(s63)によって検知結果が監視装置30に送信される。
(7)送信処理(s63)が実行されると、間隔設定処理(s64)が実行される。この時点において、第二取得処理(s40)によって取得した検知結果はいずれも平常を指標しているため、第一間隔設定処理が実行される。当該第一間隔設定処理において生成された乱数の値がカウンタ変数に代入される。
(8)ここで、ガス検知器10cがガス漏れを検出すると、通信装置20aは、第二取得処理(s40)において、ガス検知器10cから異常を指標する検知結果を取得する。すると、通信装置20aは、検知結果に変化が生じたものとして(s50:Yes)、送信処理(s20)を実行し、異常を指標する検知結果を監視装置30へと送信する。
(9)通信装置20aは、送信処理(s20)を実行すると、間隔設定処理(s30)を実行する。この時点において、第二取得処理(s40)で取得していた検知結果は異常を含むため、間隔設定処理(s30)では、第二間隔設定処理(s33)が実行される。本例では、第二間隔設定処理(s33)において生成された乱数の値が“10”であり、当該値がカウンタ変数に代入される。通信装置20は、第二間隔設定処理(s33)を実行すると、割込設定処理(s34)を実行する。
(10)通信装置20は、上記の通り間隔設定処理(s30)を実行すると、第二取得処理(s40)を実行し、取得した検知結果に変化が生じたか否かを確認する(s50)。本例では、前回の第二取得処理(s40)で取得した検知結果に変化は生じていないので第二取得処理(s40)および確認処理(s50)を繰り返し実行する。このように第二取得処理(s40)や確認処理(s50)を繰り返し実行している間にタイマー割込が発生し、割込処理(s60)においてカウンタ変数がカウントダウンされる(s61)。
(11)カウントダウンされたカウンタ変数が“0”になった場合(s62:Yes)、すなわち10秒が経過した場合には、送信処理(s63)によって検知結果が監視装置30に送信される。
(12)通信装置20aは、送信処理(s63)を実行すると、間隔設定処理(s64)を実行し、第二間隔設定処理において発生された乱数の値をカウンタ変数に代入する。
(13)上記割込処理が終了すると、通信装置20は第二取得処理(s40)および確認処理(s50)を繰り返し行う。ここで、ガス濃度が低下し、ガス検知器10cがガス漏れを検知しなくなると、装置は、第二取得処理(s40)において、平常を指標する検知結果を取得する。この場合には、検知結果に変化が生じたものとして送信処理(s20)を実行し、平常を指標する検知結果を監視装置30へと送信する。
(14)通信装置20aは、送信処理(s20)を実行すると、間隔設定処理(s30)を実行する。この時点において、第二取得処理(s40)で取得した検知結果は平常であるため、間隔設定処理(s30)では、第一間隔設定処理(s32)が実行され、当該処理において生成された乱数の値がカウンタ変数に代入される。
【0045】
上記のようにして、通信装置20aは、有線接続されたガス検知器10a~10cから検知結果を取得し、取得した検知結果を監視装置30へと送信する。このように、通信機器20が有するMCU23は、検知結果を送信する送信間隔をランダムに制御する制御部230(
図3)として機能している。
【0046】
本実施形態の監視システム1によれば、複数の通信機器が同時期に検知結果を送信したとしても、次の送信時期が乱数に基づいて生成されるカウント値によって定まるため、これら複数の通信機器の送信タイミングが重なり続くことが防止される。そのため、複数の通信機器の間における通信が互いに干渉することによって生じる受信エラーが継続することを防止することができる。
【0047】
以上、本発明に係る通信装置、通信システム、及び通信方法を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
【0048】
(1)上記実施形態では、ガス検知器10から通信装置20に送られる検知結果は、ガス検知器20において測定されたガス濃度を指標するデータであり、通信装置20が取得したデータを閾値と比較して平常であるか異常であるかを判定し、当該判定結果を監視装置30へと送信する態様であっても構わない。すなわち、通信装置20は、複数のガス検知器10から受信した検知結果に基づいて当該検知結果をそのまま監視装置30に送信してもよいし、ガス検知器10から受信した検知結果に基づいて判定した結果を監視装置30に送信してもよい。
【0049】
(2)上記実施形態では、第一基準間隔を30秒として、当該30秒を中心とした所定レンジ内において第一の間隔を設定することとしているが、第一基準期間は30秒に限られず、3分以内であれば構わない。また、上記の実施形態では、第二基準間隔を10秒として、当該10秒を中心とした所定レンジ内において第二の間隔を設定することとしているが、第二基準期間は10秒に限られず、30秒であっても構わない。
【0050】
(3)上記実施形態では、第一の間隔と第二の間隔の両方を乱数に基づいて設定する態様であったが、第一の間隔または第二の間隔を乱数に基づいて設定する態様であっても構わない。
【0051】
(4)上記実施形態では、タイマー割り込みを1秒毎に発生させているが、タイマー割り込み1秒毎に限られず、10ms毎や100ms毎など、1秒未満の間隔であってもよいし、1秒以上の間隔であっても構わない。なお、タイマー割り込みが発生するたびにカウンタ変数がカウントダウンされるので、当該タイマー割り込みの間隔も考慮してカウンタ変数の値が定められる。
【0052】
(5)上記実施形態のメインフローでは通信装置20からの要求に応じて複数のガス検知器10の各々が検知結果を送信しているが、当該態様に限定されず、複数のガス検知器10が検知結果を定期的に通信装置20へと送信し、通信装置20は当該検知結果を受信して一旦メモリ25に記憶させておき、当該メモリ25に記憶された検知結果を定期的に確認することで状態の変化を確認するものであっても構わない。
【0053】
(6)上記の実施形態では、通信装置20は、複数のガス検知器10から受信した検知結果を、1度の送信処理において1回のみ送信していたが、1度の送信処理において同じ検知結果を複数回送信しても構わない。
【0054】
(7)上記実施形態では、通信装置20と複数のガス検知器10がデイジーチェーン接続により直列的に有線接続されているが、当該接続態様に限定されず、通信装置20に対して複数のガス検知器が並列的に有線接続された態様であっても構わない。
【0055】
(8)上記実施形態では、測定したガス濃度が閾値を超えた場合に異常と判定しているが、検知対象となるガスの種類、例えば酸素は、ガス濃度が低くなると危険であるため、測定したガス濃度が閾値を下回った場合に異常と判定しても構わない。
【0056】
(9)上記実施形態では、周囲のガス濃度を検知するガス検知器10を例に説明したが、周囲の温度を検知する温度検知器、ニオイを検知するニオイ検知器、圧力を検知する圧力検知期器などの検知器であって、ガス漏れ(異常なガス濃度の変化)、異常な温度変化、異臭、異常な圧力の変化などのイベントを検知する検知器であっても構わない。
【0057】
(10)上記実施形態では、ガス漏れを監視する監視システム1を例に説明したが、上記の変形例で挙げたように、温度、ニオイ、圧力を監視する監視システムであっても構わない。また、監視を目的としたシステムに限られず、複数の通信装置20が上記機器と通信するための通信システムとして用いても構わない。
【符号の説明】
【0058】
1 監視システム(通信システム)
10 ガス検知器(検知器)
20 通信装置
210 受信部
220 送信部
230 制御部
30 監視装置(上位機器)