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特許7535948高エネルギー密度の組成勾配電極およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】高エネルギー密度の組成勾配電極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20240809BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240809BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240809BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240809BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240809BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/04 Z
H01M4/13
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2020564351
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 US2019033965
(87)【国際公開番号】W WO2019227016
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】62/676,049
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511242269
【氏名又は名称】24エム・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】24M Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジュンジェン
(72)【発明者】
【氏名】バッツァレッラ,リカルド
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500465(JP,A)
【文献】特開2016-189325(JP,A)
【文献】特開2002-151055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体上に配設され、第1の気孔率を有する第1の電極材料であって、固体電極材料を含む第1の電極材料と、
前記第1の電極材料上に配設され、前記第1の気孔率よりも大きい第2の気孔率を有する第2の電極材料と、を備え、
前記第2の電極材料は、液体電解質中の活物質と導電性材料との半固体混合物を含む、電極。
【請求項2】
前記第1の気孔率は、5%未満である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記第1の気孔率は、約30%~約60%である、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記第2の気孔率は、約30%~約60%である、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記電極は、少なくとも200mAh/gの比容量を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記第1の電極材料は、スズ、シリコン、アンチモン、アルミニウム、および酸化チタンから選択される高容量材料を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
電極であって、
集電体と、
前記集電体上に配設され、第1のエネルギー密度を有する第1の電極材料であって、固体電極材料を含む第1の電極材料と、
前記第1の電極材料上に配設され、前記第1のエネルギー密度よりも小さい第2のエネルギー密度を有する第2の電極材料と、を備え、
前記第2の電極材料は、液体電解質中の活物質と導電性材料との半固体混合物を含む、電極。
【請求項8】
前記第1の電極材料は、固体高容量電極層を備える、請求項7に記載の電極。
【請求項9】
前記固体高容量電極層は、シリコンを含む、請求項8に記載の電極。
【請求項10】
前記固体高容量電極層は、スズを含む、請求項8に記載の電極。
【請求項11】
前記電極は、約150~2000μmの厚さを有する、請求項7に記載の電極。
【請求項12】
前記第1の電極材料は、約1μm~約80μmの厚さを有する、請求項7に記載の電極。
【請求項13】
前記第1の電極材料は、前記電極の全厚さの約10%未満の厚さを有する、請求項7に記載の電極。
【請求項14】
前記第2の電極材料は、前記電極の全厚さの少なくとも約80%の厚さを有する、請求項7に記載の電極。
【請求項15】
前記第2の電極材料は、少なくとも約150μmの厚さを有する、請求項7に記載の電極。
【請求項16】
前記第1の電極材料は、複合高容量電極層を含む、請求項7に記載の電極。
【請求項17】
前記複合高容量電極層は、約10体積%~約20体積%の高容量材料を含む、請求項16に記載の電極。
【請求項18】
前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間に配設されたリチウム含有材料をさらに備える、請求項7に記載の電極。
【請求項19】
前記電極の気孔率は、前記電極の厚さ方向に変化する、請求項7に記載の電極。
【請求項20】
電極であって、
集電体と、
前記集電体上に配設され、第1の表面積を有する第1の電極材料であって、固体電極材料を含む第1の電極材料と、
前記第1の電極材料上に配設され、前記第1の表面積よりも大きい第2の表面積を有する第2の電極材料と、を備え、
前記第2の電極材料は、液体電解質中の活物質と導電性材料との半固体混合物を含む、電極。
【請求項21】
前記第1の電極材料は、固体高容量電極層を備える、請求項20に記載の電極。
【請求項22】
前記固体高容量電極層は、シリコンを含む、請求項21に記載の電極。
【請求項23】
前記固体高容量電極層は、スズを含む、請求項21に記載の電極。
【請求項24】
前記電極は、約150~2000μmの厚さを有する、請求項20に記載の電極。
【請求項25】
前記第1の電極材料は、約1μm~約80μmの厚さを有する、請求項20に記載の電極。
【請求項26】
前記第1の電極材料は、前記電極の全厚さの約10%未満の厚さを有する、請求項20に記載の電極。
【請求項27】
前記第2の電極材料は、前記電極の全厚さの少なくとも約80%の厚さを有する、請求項20に記載の電極。
【請求項28】
前記電極の全厚さは、少なくとも約150μmである、請求項20に記載の電極。
【請求項29】
前記第1の電極材料は、複合高容量電極層を含む、請求項20に記載の電極。
【請求項30】
前記複合高容量電極層は、約10体積%~約20体積%の高容量材料を含む、請求項29に記載の電極。
【請求項31】
前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間に配設されたリチウム含有材料をさらに備える、請求項20に記載の電極。
【請求項32】
理論的エネルギー密度は、前記電極の厚さ方向に変化する、請求項20に記載の電極。
【請求項33】
前記電極の気孔率は、前記電極の厚さ方向に変化する、請求項20に記載の電極。
【請求項34】
電極を形成する方法であって、
固体高容量電極材料を含む第1の電極材料を集電体上にスパッタリングすることと、
液体電解質中の活物質と導電性材料との半固体混合物を含む第2の電極材料を、前記第1の電極材料上に配設することと、を含む、方法。
【請求項35】
前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間にリチウム含有材料を配設することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記固体高容量電極材料は、スズ、シリコン、アンチモン、アルミニウム、および酸化チタンから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の電極材料は、第1の気孔率を有し、前記第2の電極材料は、第2の気孔率を有し、前記第2の気孔率は、前記第1の気孔率よりも大きい、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の電極材料は、第1のエネルギー密度を有し、前記第2の電極材料は、第2のエネルギー密度を有し、前記第2のエネルギー密度は、前記第1のエネルギー密度よりも小さい、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月24日に出願された「高エネルギー密度の組成勾配電極およびその製造方法」と題する米国仮特許出願第62/676,049号の優先権および利益を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
消費者は、急速に充電でき、かつ目的のアプリケーションを必要なだけ実行するのに十分なエネルギーを蓄えることができる電池を望んでいる。所望の理論的エネルギー密度を達成するために、電池メーカーは、電極の厚さを増大させて、電極の総イオン/電子貯蔵容量を増加させてきた。しかしながら、これらのより厚い電極は、電極の厚さの関数としてこれらの電極の部分にわたる伝導率が低下するため、しばしば活物質の一部がイオン/電子貯蔵にほとんど利用できない結果となる。電池メーカーはまた、理論的エネルギー密度を高めるために電極(例えば、アノード)に高容量の材料を使用しているが、これらの材料は電極の使用中に体積的に膨張および収縮することが多く、電池を損傷させる可能性がある。したがって、電極および完成した電池における不活性構成要素を減らし、エネルギー密度と全体的な性能を向上させることは、エネルギー貯蔵システム開発の永続的な目標である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載の実施形態は、一般に、集電体上に配設されて第1の気孔率を有する第1の電極材料と、第1の電極材料上に配設されて第2の気孔率を有する第2の電極材料とを含む高エネルギー密度電極を製造するデバイス、システムおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、第2の気孔率は、第1の気孔率よりも小さい。いくつかの実施形態では、第2の気孔率は、第1の優先順位に実質的に等しい。いくつかの実施形態では、第2の気孔率は、第1の気孔率よりも大きい。
【0004】
いくつかの実施形態では、第2の電極材料は、液体電解質中の活物質と導電性材料との混合物を含む。いくつかの実施形態では、第1の電極材料は、第2の電極材料とは異なる組成を有し得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料は、スズなどの高容量材料、SnーFeなどのスズ合金、一酸化スズ、シリコン、SiーCoなどのシリコン合金、一酸化シリコン、アルミニウム、アルミニウム合金、一酸化金属(CoO、FeOなど)または酸化チタンを含み得る。いくつかの実施形態では、シリコンおよび/またはシリコン合金および/または一酸化シリコンは、第2層よりも第1層において(例えば、体積パーセントで)より高い濃度を有する。いくつかの実施形態では、リチウム含有材料は、第1の電極材料と第2の電極材料との間に配設することができる。いくつかの実施形態では、第1の電極材料の一部を除去して集電体の一部を露出させることができ、その結果、第2の電極材料が第1の電極材料上に配設されるとき、第2の電極材料の一部が直接、集電体の露出部分上に配設され得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】一実施形態による、多層電極の概略図である。
図2】一実施形態による、多層電極の概略図である。
図3】一実施形態による、拡張領域を含む多層電極の概略図である。
図4】一実施形態による、多層電極の概略図である。
図5】一実施形態による、多層電極の概略図である。
図6】多層電極をともなう半電池の挙動をグラフで表したものである。
図7】多層電極をともなうセルの充電曲線および放電曲線をグラフで表したものである。
図8】多層電極をともなうセルの充電曲線および放電曲線をグラフで表したものである。
図9】多層電極をともなうセルの充電曲線および放電曲線をグラフで表したものである。
図10】多層電極をともなうセルの容量保持をグラフで表したものである。
図11】多層電極をともなうセルの容量保持をグラフで表したものである。
図12】多層電極をともなうセルの容量保持をグラフで表したものである。
図13】多層電極をともなうセルの寿命の始まりと寿命の終わりとの容量の比較をグラフで表したものである。
図14】多層電極をともなうセルの充電曲線および放電曲線をグラフで表したものである。
図15】多層電極をともなうセルの充電曲線および放電曲線をグラフで表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に記載の実施形態は、一般に、集電体からの距離と共に増加する気孔率を有する高エネルギー密度電極を製造するデバイス、システム、および方法に関する。
【0007】
従来の電池システムは、異なるイオン電気化学ポテンシャルでイオン源およびイオンシンクを分離することによって電気化学エネルギーを貯蔵する。電気化学ポテンシャルの違いにより、正極と負極との間に電圧差が生じ、電極が導電性要素で接続されている場合、電流が発生する。正極と負極との間の電気化学ポテンシャルの違いは、より高い電圧システムを生成することができ、より高いエネルギー密度のセルに貢献する。従来の電池システムでは、負極および正極は、2つの導電性要素の並列構成を介して接続されている。外部要素は電子のみを伝導するが、内部要素はセパレータおよび電解質によって分離されており、イオンのみを伝導する。電荷の不均衡は負極と正極との間で維持できないため、外部および内部の流れは、同じ速度でイオンおよび電子を供給する。生成された電流は外部デバイスを駆動することができる。充電式電池は、放電中の電池とは反対方向に電流およびイオン電流を駆動する反対の電圧差を印加することによって再充電することができる。よって、二次電池の活物質は、イオンを受容して提供する能力を有していなければならない。電気化学ポテンシャルが増加すると、電池のカソードとアノードとの間に大きな電圧差が生じ、電池の単位質量あたりの電気化学的に貯蔵されたエネルギーが増加する。
【0008】
家庭用電化製品の電池は、リチウムイオン電池技術の進歩にともない、エネルギー密度が徐々に増加している。製造された電池の貯蔵エネルギーまたは充電容量は、(1)活物質の固有の充電容量(mAh/g)、(2)電極の体積(cm)(すなわち、電極の厚さ、電極の面積、および層(スタック)の数の積)、および(3)電極媒体における活物質の負荷(例えば、電極媒体のcmあたりの活物質のグラム数)の関数である。したがって、商業的訴求力(例えば、エネルギー密度の増加およびコストの減少)を高めるために、一般に、面積電荷容量(mAh/cm)を増加させることが望ましい。面積電荷容量は、例えば、より高い固有電荷容量を有する活物質を利用すること、電極配合物全体における活性電荷貯蔵材料の相対的割合(すなわち、「負荷」)を増加させること、および/または特定の電池形状因子で使用される電極材料の相対的割合を増加させることによって、増加させることができる。換言すれば、不活性構成要素(例えば、セパレータおよび集電体)に対する活性電荷貯蔵構成要素(例えば、電極)の比率を高めることは、電池の全体的な性能に貢献しない構成要素を排除または削減することで、電池の全体的な性能を向上させることができる。面積電荷容量を増加させ、したがって不活性構成要素の相対的な割合を減少させることを達成するための1つの方法は、電極の厚さを増加させることによる。
【0009】
従来の電極組成物は、一般に、特定の性能および製造上の制限のために、約100μmより厚くすることができない。例えば、i)100μmを超える厚さ(片面コーティングされた厚さ)を有する従来の電極は通常、厚みが増すにつれて急速に増大する電極の厚さを通した拡散の制限(気孔率、屈曲度、インピーダンスなど)により、速度能力が大幅に低下する。ii)従来の厚い電極は、乾燥および後処理の制限、例えば、溶媒除去速度、電極の亀裂につながる乾燥中の毛細管力、層間剥離につながる集電体への電極の不十分な接着(例えば、従来の電極を製造するために使用される高速ロールツーロールカレンダープロセス中)、溶媒除去プロセス中の結合剤の移動、および/またはその後の圧縮プロセス中の変形のせいで、製造が困難である。iii)特定の理論に束縛されないが、従来の電極に使用される結合剤は、電極の細孔構造の障害となり、利用可能な細孔の体積を減少させ、電極の機能構成要素(つまり、活性構成要素および導電性構成要素)間の空間のかなりの部分を占めることで屈曲度(すなわち、有効経路長)を増大させ、イオンの拡散に対する抵抗を増加させる可能性がある。従来の電極で使用される結合剤は、電極活物質の表面を少なくとも部分的にコーティングすることができ、それにより、活物質へのイオンの流れが遅くなるかまたは完全に遮断されることで、屈曲度が増加することも知られている。
【0010】
さらに、既知の従来の電池は、高容量または高速度能力のいずれかを有するが、両方を有さない。第1のC速度、例えば、0.5Cで第1の充電容量を有する電池は、一般に、第2のより高いC速度、例えば、2Cで放電されるとき、第2のより低い充電容量を有する。これは、従来の電極(例えば、結合剤をともなう固体電極)の内部抵抗が高いために従来の電池内部で発生するエネルギー損失が大きく、電圧が低下して電池がローエンドの電圧カットオフにより早く到達するためである。より厚い電極は、一般により高い内部抵抗を有するため、より低速度の能力を有する。例えば、鉛蓄電池は、1CC速度ではうまく機能しない。多くの場合、鉛蓄電池は0.2CC速度で評価され、この低いC速度でも、100%の容量を達成することはできない。対照的に、ウルトラコンデンサは非常に高いC速度で放電でき、それでもなお100%の容量を維持することができるが、従来の電池よりもはるかに低い充電容量を有する。したがって、より厚くすることが可能であり、しかも優れた速度能力および充電容量などの優れた性能特性を有する電極が必要とされている。物理的特性および組成の勾配は、電気活性種の拡散を助けることができる。組成の勾配は、活物質組成を含み得る。
【0011】
したがって、本明細書に記載の実施形態は、一般に、z方向(「[001]方向」とも称する)、すなわち、集電体の表面に垂直な方向の組成勾配(以下、「電極厚さ」)を有する電極に関する。言い換えれば、電極は、機械的、化学的、および/または電気化学的性能の向上のために電極を調整するために、少なくとも部分的に異方性および/または不均一になるように設計することができる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「組成」は異方性であり得、物理的、化学的、もしくは電気化学的組成またはそれらの組み合わせを指し得る。例えば、いくつかの実施形態では、集電体の表面に直接隣接する電極材料は、集電体の表面からさらに離れた電極材料よりも気孔率が低くなり得る。特定の理論に束縛されることを望まないが、例えば、気孔率勾配の使用は、イオン伝導率の低下を経験することなく、より厚くすることができる電極をもたらし得る。いくつかの実施形態では、集電体の表面に隣接する電極材料の組成は、集電体の表面からさらに離れた電極材料とは化学的に異なり得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は、一般に、記載された値のプラスマイナス10%を意味し、例えば、約250μmは、225μm~275μmを含み、約1,000μmは、900μm~1,100μmを含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「半固体」という用語は、例えば、粒子懸濁液、コロイド懸濁液、乳濁液、ゲル、またはミセルなどの液相および固相の混合物である材料を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「活性炭ネットワーク」および「ネットワーク化された炭素」という用語は、電極の一般的な定性的状態に関する。例えば、活性炭ネットワーク(またはネットワーク化された炭素)をともなう電極は、電極内の炭素粒子が、電極の厚さおよび長さを通して粒子間の電気的接触および電気伝導率を促進する個々の粒子の形態および相互の配置を取るようになっている。逆に、「非活性炭素ネットワーク」および「ネットワーク化されていない炭素」という用語は、炭素粒子が、電極を通して適切な電気伝導を提供するために十分に接続されていない可能性がある、個々の粒子島または多重粒子凝集島として存在する電極に関する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「エネルギー密度」および「体積エネルギー密度」という用語は、電気化学セルが動作するために含まれている、電極、セパレータ、電解質、集電体などの材料の単位体積(例えば、L)あたりの電気化学セルに貯蔵されるエネルギー(例えば、MJ)の量を指す。具体的には、電気化学セルのパッケージングのために使用される材料は、体積エネルギー密度の計算から除外される。
【0017】
本明細書で使用される場合、「高容量材料」または「高容量アノード材料」という用語は、電気活性種の取り込みを容易にするために電極に組み込むことができる、300mAh/gを超える不可逆容量をともなう材料を指す。例としては、スズ、SnーFeなどのスズ合金、一酸化スズ、シリコン、SiーCoなどのシリコン合金、一酸化シリコン、アルミニウム、アルミニウム合金、一酸化金属(CoO、FeOなど)または酸化チタンを含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「複合高容量電極層」という用語は、高容量材料と従来のアノード材料との両方をともなう電極層、例えば、シリコンーグラファイト層を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「固体高容量電極層」という用語は、単一の固相高容量材料、例えば、スパッタされたシリコン、スズ、SnーFeなどのスズ合金、一酸化スズ、シリコン、SiーCoなどのシリコン合金、一酸化シリコン、アルミニウム、アルミニウム合金、一酸化金属(CoO、FeOなど)または酸化チタンをともなう電極層を指す。
【0020】
いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極材料の任意の物理的、化学的、および/または電気化学的特性を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる電極材料の気孔率の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる活物質または活物質濃度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる導電性材料または導電性材料濃度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる電解質または電解質濃度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる添加剤(例えば、電解質添加剤)または添加剤濃度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる密度(単位体積あたりの単位質量)の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる材料の結晶化度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる立方晶、六方晶、正方晶、菱面体晶、斜方晶、単斜晶、および三斜晶の結晶構造のうちの少なくとも1つの間の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたるpHの変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたるイオン伝導率の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる電子伝導率の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたるエネルギー密度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる理論的エネルギー密度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたるヤング率の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる降伏強度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる引張強度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電気化学セルの動作中の電極の厚さ全体にわたる体積膨張/収縮電位の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極勾配全体にわたる電極材料の塑性変形能の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる電解質中の活物質、導電性材料、および添加剤のうちの少なくとも1つの溶解性の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる結合剤の割合の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる電極材料の加工性の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる電極材料の流動性の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたるイオン貯蔵電位の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる最初の充電/放電サイクルの後に経験される容量減退の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる粘度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる密度の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、組成勾配は、電極の厚さ全体にわたる表面積の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、電極の厚さ全体にわたる表面積の変化は、活物質濃度の変化に起因し得る(すなわち、集電体に遠い活物質よりも近い活物質のほうが濃度が高い、またはその逆)。いくつかの実施形態では、電極の厚さ全体にわたる表面積の変化は、活物質組成の変化に起因し得る(すなわち、集電体に近い活物質組成は、集電体から離れた活物質組成とは異なる)。
【0021】
いくつかの実施形態では、電極の厚さを通して組成勾配を達成するために、いくつかの組成的に異なる電極材料を集電体上に(例えば、積層構造として)配設することができる。いくつかの実施形態では、組成的に異なる電極材料の数は、1より大きくてもよく、約2より大きくてもよく、約3より大きくてもよく、約4より大きくてもよく、約5より大きくてもよく、約6より大きくてもよく、約7より大きくてもよく、約8より大きくてもよく、約9より大きくてもよく、約10より大きくてもよく、または約15より大きくてもよく、それらの間のすべての値および範囲を含む。いくつかの実施形態では、第1層は集電体上に配設することができ、第2層は第1層上に配設することができ、後続の層は、最上層が配設されて完成電極を形成するまで前の層の上に配設することができる。いくつかの実施形態では、第1の1つ以上の層は、任意の適切な順序で、任意の適切な方法を使用して、第2の1つ以上の他の層と結合することができ、結合した層を集電体上に同時に配設して、完成電極を形成することができる。いくつかの実施形態では、単一の電極材料が、電極の厚さ方向に組成勾配(異方性)を有する集電体上に形成され得る。
【0022】
図1は、集電体110上に配設された第1の電極材料120と、第1の電極材料120上に配設された第2の電極材料130とを含む電極100の概略図である。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120および/または第2の電極材料130は、固体電極材料、半固体電極材料、高容量材料、およびそれらの組み合わせ(総称して「電極材料」)のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0023】
電極100は、カソード、アノードとして、または電気化学デバイスにおける他の任意の方法で使用することができる。いくつかの実施形態では、電極100は、2013年4月29日に提出された「高速度能力を有する半固体電極」と題する米国特許第8,993,159号(「’159特許」)に記載されているような一連の材料および任意の適切な形状因子を含み得、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
同様に、集電体110は、カソード集電体、アノード集電体として、または必要に応じて他の任意の目的のために使用されるように構成することができる。考えられる材料、電気化学的適合性特性、形状因子、および集電体110の用途の例は、’159特許にさらに詳細に記載されている。集電体110は、‘159特許に記載されている集電体と実質的に同様であり得るため、本明細書では詳細に説明されていない。
【0025】
いくつかの実施形態では、電極材料は、活物質、導電性材料、電解質、添加剤、結合剤、および/またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、活物質は、エネルギーを貯蔵するためにファラデー反応または非ファラデー反応を受け得るイオン貯蔵材料および/または任意の他の化合物もしくはイオン錯体であり得る。活物質はまた、固液懸濁液を含む非レドックス活性相と混合されたレドックス活性固体を含む多相材料、または支持液相と密接に混合された液体イオン貯蔵材料を有するミセルもしくは乳濁液を含む液液多相混合物であり得る。様々な作用イオンを利用するシステムは、Li、Na、または他のアルカリイオンが作用イオンであり、さらにCa2+、Mg2+、またはAl3+のようなアルカリ土類作用イオンである水性システムを含み得る。いくつかの実施形態では、負極貯蔵材料および正極貯蔵材料を電気化学的に結合して電気化学セルを形成することができ、負極は、正極よりも低い絶対電位で目的の作用イオンを貯蔵する。セル電圧は、2つのイオン貯蔵電極材料のイオン貯蔵電位の差によっておおよそ決定することができる。
【0026】
作用イオンの不溶性貯蔵ホストである負および/または正のイオン貯蔵材料を使用する電気化学セルは、材料の他のすべての構成要素が電解質に実質的に不溶性のままである間、作用イオンを吸収または放出し得る。いくつかの実施形態では、電解質が電気化学的組成物で汚染されないので、これらのセルは特に有利であり得る。さらに、負および/または正のリチウムイオン貯蔵材料を使用するセルは、非水性電気化学組成物を使用する場合に特に有利であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、イオン貯蔵レドックス組成物は、従来のリチウムイオン電池で作用することが証明された材料を含む。いくつかの実施形態において、正の半固体電気活性材料は、リチウム正電気活性材料を含み、リチウムカチオンは、負極と正極との間を往復し、液体電解質に懸濁された固体のホスト粒子に挿入される。いくつかの実施形態では、リチウムカチオンは、固体の高容量材料の固体マトリックスに挿入することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、レドックス活性化合物は、有機または無機であり得、リチウム金属、ナトリウム金属、リチウム金属合金、溶解リチウムをともなうまたはともなわないガリウムおよびインジウム合金、溶融遷移金属塩化物、チオニル塩化物など、または電池の動作条件下で液体になり得るレドックスポリマーおよび有機物を含み得るが、これらに限定されない。そのような液体形態はまた、希釈剤または溶媒である別の非レドックス活性液体で希釈またはそれと混合され得、そのような希釈剤と混合してより低融点の液相を形成することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、レドックス活性電極材料は、電池の正極または負極のいずれかに有用な電位で目的の作用イオンを貯蔵する有機レドックス化合物を含み得る。そのような有機レドックス活性貯蔵材料は、ポリアニリンまたはポリアセチレンベースの材料などの「p」ドープ導電性ポリマー、ポリニトロキシドまたは有機ラジカル電極(H.Nishide等、Electrochim.Acta、50,827ー831、(2004)、およびK.Nakahara等、Chem.Phys.Lett.、359,351ー354(2002)に記載されているものなど)、カルボニルベースの有機物、およびLi、Li、Liなどの化合物(例えば、M.Armand等、Nature Materials、DOI:10.1038/nmat2372を参照)および有機硫黄化合物を含むオキソカーボンおよびカルボン酸塩を含む。いくつかの実施形態において、従来の活物質は、コバルト、マンガン、ニッケルーカドミウムーマンガン、リン酸塩、リチウムマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸塩、リチウムコバルト酸化物、LiNi0.8Co0.15Al0.05、リチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.5Mn1.5など)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3など)、リチウム金属、炭素、リチウム挿入炭素、リチウム窒化物、リチウム合金およびリチウム合金形成化合物シリコン、ビスマス、ホウ素、ガリウム、インジウム、亜鉛、スズ、酸化スズ、アンチモン、アルミニウム、酸化チタン、モリブデン、ゲルマニウム、マンガン、ニオブ、バナジウム、タンタル、金、プラチナ、鉄、銅、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、酸化モリブデン、酸化ゲルマニウム、酸化シリコン、炭化シリコン、およびその他の適切な化学物質を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、電極材料用の導電性材料は、例えば、グラファイト、カーボン粉末、パイロライトカーボン、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンマイクロファイバー、カーボンナノチューブ(CNT)、単層CNT、多層CNT、「バッキーボール」を含むフラーレンカーボン、グラフェンシートおよび/またはグラフェンシートの集合体、その他の導電性材料、金属(Cu、Al、粉末など)、合金、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、電極材料用の電解質は、例えば、アルコールまたは非プロトン性有機溶媒などの極性溶媒を含み得る非水性液体電解質を含み得る。Liイオン電池電解質の構成要素として多くの有機溶媒、特に、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレンなどの環状炭酸エステル族およびそれらの塩素化またはフッ素化誘導体、ならびに、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ブチルメチル、炭酸ブチルエチルおよび炭酸ブチルプロピルなどの非環状ジアルキル炭酸エステル族が提案されている。Liイオン電池電解質溶液の構成要素として提案されている他の溶媒は、γーブチロラクトン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2ーメチルテトラヒドロフラン、1,3ージオキソラン、4ーメチルー1,3ージオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオノニトリル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、テトラグライムなどを含む。いくつかの実施形態では、これらの非水溶媒は、塩が溶解されてイオン伝導率を提供する多成分混合物として使用することができる。いくつかの実施形態では、リチウム伝導率を提供する塩は、LiClO、LiPF、LiBF、LiFSI、LiAsF6、LiTFSI、LiBETI、LiBOBなどを含み得る。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、カソード側の電解質分子をアノード側の電解質分子から分離するように構成された選択透過性膜を含み得る。この選択透過性膜は、2019年1月8日に提出され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「選択透過性膜を含む電気化学セル、その製造システムおよび方法」と題する米国特許出願第16/242,849号(「’849出願」)に記載されているように、複数の電解質(すなわち、アノード側の陽極液およびカソード側の陰極液)の使用を可能にすることができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、結合剤は、デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレングリコール、ポリアクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(フッ化ビニリデン)、ゴム、エチレンープロピレンージエンモノマー(EPDM)、親水性結合剤、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンコポリマー、ポリ(3,4ーエチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリ(フッ化ビニリデンーcoーヘキサフルオロプロピレン)(PVDFーHFP)、無水マレイン酸グラフトポリフッ化ビニリデン(MPVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、SBRとカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物(SBR+CMC)、ポリアクリロニトリル、フッ素化ポリイミド、ポリ(3ーヘキシルチオフェン)ーbーポリ(エチレンオキシド)、ポリ(1ーピレンメチルメタクリレート)(PPy)、ポリ(lーピレンメチルメタクリレートーcoーメタクリル酸)(PPyーMAA)、ポリ(lーピレンメチルメタクリレートーcoートリエチレングリコールメチルエーテル)(PPyE)、ポリアクリル酸およびこのリチウム塩(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム、フッ素化ポリアクリル酸、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、電極材料に十分な機械的支持を提供するように構成された他の適切なポリマー材料、ならびにそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、電極材料は、約0.01重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%、約2重量%~約19重量%、約3重量%~約18重量%、約4重量%~約17重量%、約5重量%~約16重量%、約6重量%~約15重量%、または約5重量%~約20重量%(すべての値および範囲を含む)の結合剤を含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、電極100の厚さは、少なくとも約30μmであり得る。いくつかの実施形態では、半固体電極の厚さは、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約250μm、少なくとも約300μm、少なくとも約350μm、少なくとも約400μm、少なくとも約450μm、少なくとも約500μm、少なくとも約600μm、少なくとも約700μm、少なくとも約800μm、少なくとも約900μm、少なくとも約1,000μm、少なくとも約1,500μm、および最大約2,000μm(それらの間のすべての厚さを含む)であり得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120の厚さは、電極100の全厚さの約50%未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120の厚さは、電極100の全厚の約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約3%未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120の厚さは、約80μm未満、約70μm未満、約60μm未満、約50μm未満、約40μm未満、約30μm未満、約20μm未満、約10μm未満、約5μm未満、約2μm未満、または約1μm未満であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、第2の電極材料130の厚さは、電極100の全厚さの少なくとも約20%であり得る。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130の厚さは、電極100の全厚の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%であり得る。いくつかの実施形態では、第2の電極材料120の厚さは、少なくとも約30μmであり得る。いくつかの実施形態では、第2の電極材料120の厚さは、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約250μm、少なくとも約300μmであり得る。少なくとも約350μm、少なくとも約400μm、少なくとも約450μm、少なくとも約500μm、少なくとも約600μm、少なくとも約700μm、少なくとも約800μm、少なくとも約900μm、少なくとも約1,000μm、少なくとも約1,500μm、および最大約2,000μm(それらの間のすべての厚さを含む)であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、従来の固体電極製造プロセスに従って製造された固体電極材料を含み得る。いくつかの実施形態では、固体電極材料は、活物質と、導電性添加剤と、溶媒に溶解または分散された結合剤とを含むスラリーを形成することによって製造することができる。スラリーは、電気化学セル内の電極集電体または他の適切な構造に配設された後、乾燥され(例えば、溶媒を蒸発させることによって)、かつ指定された厚さにカレンダー処理される。固体電極材料の製造はまた、一般に、構築されている電池構造に従って、材料の混合、鋳造、カレンダー処理、乾燥、切断、および加工(曲げ、圧延など)を含み得る。電極材料が乾燥されてカレンダー処理にかけられると、電極材料を電解質で(例えば、圧力下で)湿らせることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、蒸着プロセスによって製造された固体電極材料を含む得、蒸着プロセスは、蒸着、電気ビーム蒸着、電気化学蒸着、ゾルゲル、スパッタリング、および物理スプレー法を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、第1の電極材料120上に分散された純粋な導電剤を含み得る。電解質として第1の電極材料120上に導電性スラリーを(活物質なしで)コーティングすることは、従来のセル製造プロセスにおける電解質放出のための代替方法として役立つ。導電剤は、特に体積膨張材料を用いて、サイクル中に第1の電極材料120に流れ込み、空隙を埋めることができる。言い換えれば、導電剤の使用は、電極の電子伝導性を維持するのを助けることができ、それにより、第1の電極材料120のサイクル安定性を改善することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、半固体電極材料を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の半固体電極材料は、(i)半固体電極の低減された屈曲度およびより高い電子伝導率に起因して、固体電極材料より厚く(例えば、250μm~最大2,000μm、またはそれより厚く)、(ii)従来の電極材料よりも高い活物質の負荷で、(iii)より少ない装置を使用する単純化された製造プロセスによって、作ることができる。これらの比較的厚い半固体電極は、活性成分に対する不活性成分の体積、質量、およびコストの寄与を減少させ、それにより、半固体電極材料を含む電極の商業的訴求力を高める。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、乾燥工程がなくても第1の電極材料120上に配設することができる。乾燥工程を省くことで、処理時間および製造コストを削減できる可能性がある。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130をセパレータ(図示せず)上に配設することができ、次に、第2の電極材料130をともなうセパレータを、集電体110上に配設された第1の電極材料120と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、結合剤を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、実質的に結合剤を含んでいなくてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の半固体電極材料は、結合剤なしであり得る。代わりに、半固体電極材料において従来の電極の結合剤が通常占めていた体積は、現在、1)屈曲度を減少させ、イオン拡散に利用できる総塩を増加させる効果があり、それによって、従来の厚い電極を高速で使用した場合に典型的な塩類の枯渇効果に対抗する電解質、2)電池の充電容量を増加させる効果を有する活物質、または3)電極の電子伝導率を増加させる効果を有し、それによって、従来の厚い電極の高い内部インピーダンスに対抗する導電性添加剤によって占められている。本明細書に記載の半固体電極の減少した屈曲度およびより高い電子伝導率は、半固体電極から形成された電気化学セルの優れた速度能力および電荷容量をもたらす。
【0040】
本明細書に記載の半固体電極材料は、従来の電極材料よりも実質的に厚くすることができるので、不活性物質に対する活物質の比率をはるかに高くすることができる。いくつかの実施形態では、この増大した活性対不活性材料比は、本明細書に記載の半固体電極材料を含む電池の全体的な充電容量およびエネルギー密度を増加させることができる。
【0041】
本明細書に記載されるように、固体電極材料は、典型的には密度が高く(より低い気孔率を有する)、一方、半固体電極材料は、典型的にはより密度が低い(より高い気孔率を有する)。特定の理論に束縛されることを望まないが、固体電極材料のより低い気孔率は、電極の厚さ全体にわたるイオンの屈曲度の増大のために、利用可能な活物質へのイオン伝導のより低い確率をもたらす可能性がある。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、固体電極材料を含み得、第2の電極材料130は、電極の厚さ全体にわたる組成勾配が気孔率の変化を含むように、半固体電極材料を含み得る。特定の理論に束縛されることを望まないが、電極100の厚さ全体にわたる気孔率勾配を作成することにより、電極100の総理論的エネルギー密度は、従来の電極材料の使用のためにより高く、イオンに対する従来の活性物質の接近性は、半固体電極材料全体にわたる高いイオン流動のために、高いままである。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は固体電極材料を含むと説明し、第2の電極材料130は半固体電極材料を含むと説明したが、他の構成および化学的性質が可能である。例えば、いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、第1の組成物を有する半固体電極材料を含み得、第2の電極材料130は、第2の組成物を有する半固体電極材料を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、第1の気孔率を有する半固体電極材料を含み得、第2の電極材料130は、第1の気孔率よりも大きい第2の気孔率を有する半固体電極材料を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、第1のイオン貯蔵容量を有する半固体電極材料を含み得、第2の電極材料130は、第1のイオン貯蔵容量よりも小さい第2のイオン貯蔵容量を有する半固体電極材料を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、第1のイオン伝導率を有する半固体電極材料を含むことができ、第2の電極材料130は、第1のイオン伝導率よりも大きい第2のイオン伝導率を有する半固体電極材料を含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、第1の気孔率を有し得、第2の電極材料130は、第1の気孔率よりも小さい第2の気孔率を有し得る。いくつかの実施形態では、第2の気孔率は、第1の気孔率よりも大きくすることができる。いくつかの実施形態では、第2の気孔率は、第1の気孔率と実質的に等しくすることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1の気孔率は、約3%未満または約5%未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の気孔率は、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、約45%から約50%、約50%から約55%、または約55%から約60%であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、第2の気孔率は、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、約45%~約50%、約50%~約55%、または約55%~約60%であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、第1の表面積を有し得、第2の電極材料130は、第1の表面積よりも大きい第2の表面積を有し得る。いくつかの実施形態では、第2の表面積は、第1の面積よりも小さくすることができる。いくつかの実施形態では、第2の表面積は、第1の表面積と実質的に等しくすることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、約1m/g未満の表面積をともなう活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、約1m/g~約2m/g、約2m/gから約3m/g、約3m/g~約4m/g、約4m/g~約5m/g、または約5m/gより大きい表面積をともなう活物質を含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、約1m/g未満の表面積をともなう活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、約1m/g~約2m/g、約2m/gから約3m/g、約3m/g~約4m/g、約4m/g~約5m/g、または約5m/gより大きい表面積をともなう活物質を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、電気化学セルの動作中、イオンは、第1の速度で第2の電極材料130を通って、第1の速度よりも小さい第2の速度で第1の電極材料120へ往復させ得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、第1のイオン貯蔵容量を有し得、第2の電極材料130は、第1のイオン貯蔵容量よりも小さい第2のイオン貯蔵容量を有し得る。いくつかの実施形態では、完成電極は、集電体110、第1の電極材料120、および第3の電極材料130の厚さの合計に実質的に等しい厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、完成した組成勾配電極の厚さは、第1の電極材料120のみまたは第2の電極材料130のみのいずれかから形成され、かつ完成した組成勾配電極と同じ厚さを有する電極よりも大きい電力密度を有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、シリコンベース(Si、SiO、Si合金)および/またはスズベース(Sn、SnO、Sn合金)などの帯電において、第2の電極材料130よりも高い濃度の高膨張活物質を含み得る。
【0051】
より高膨張の活物質は、サイクル中の膨張ー圧縮力のために、充電および放電サイクルの後に小さな粒子に移行する可能性がある。これらの力は、サイクル中の電子ネットワークを減少させる傾向があり、集電体の近くのより高膨張の材料は、電子経路を確保することができる。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130として半固体電極を有することは、これらの膨張力を吸収する傾向がある。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120において高膨張性活物質の高い気孔率を有することにより、第2層においてより高い電子伝導率のネットワークおよびより低い膨張率の活物質を有する半販売電極が多孔質領域に移動し、それによって電子ネットワークを維持することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成勾配を有する完成電極100(例えば、第1の電極材料120と第2の電極材料130とを含む)のエネルギー密度は、約0.2MJ/L、約0.25MJ/L、約0.3MJ/L、約0.35MJ/L、約0.4MJ/L、約0.45MJ/L、約0.5MJ/L、約0.55MJ/L、約0.6J/L、約0.65MJ/L、約0.7MJ/L、約0.75MJ/L、約0.8MJ/L、約0.85MJ/L、約0.9MJ/L、約0.95MJ/L、約1.0MJ/L、約1.05MJ/L、約1.1MJ/L、約1.15MJ/L、約1.2MJ/L、約1.25MJ/L、約1.3MJ/L、約1.35MJ/L、約1.4MJ/L、約1.45MJ/L、約1.5MJ/L、約1.55MJ/L、約1.6MJ/L、約1.65MJ/L、約1.7MJ/L、約1.75MJ/L、約1.8MJ/L、約1.85MJ/L、約1.9MJ/L、約1.95MJ/L、約2.0MJ/L、約2.05MJ/L、約2.1MJ/L、約2.15MJ/L、約2.2MJ/L、約2.25MJ/L、約2.3MJ/L、約2.35MJ/L、約2.4MJ/L、約2.45MJ/L、約2.5MJ/L、約2.55MJ/L、約2.6MJ/L、約2.65MJ/L、約2.7MJ/L、約2.75MJ/L、約2.8MJ/L、約2.85MJ/L、約2.9MJ/L、約2.95MJ/L、約3.0MJ/L、約3.5MJ/L、約4.0MJ/L、約4.5MJ/L、または約5.0MJ/L(これらの間のすべての値および範囲を含む)より大きくすることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120のエネルギー密度は、約0.2MJ/L、約0.25MJ/L、約0.3MJ/L、約0.35MJ/L、約0.4MJ/L、約0.45MJ/L、約0.5MJ/L、約0.55MJ/L、約0.6J/L、約0.65MJ/L、約0.7MJ/L、約0.75MJ/L、約0.8MJ/L、約0.85MJ/L、約0.9MJ/L、約0.95MJ/L、約1.0MJ/L、約1.05MJ/L、約1.1MJ/L、約1.15MJ/L、約1.2MJ/L、約1.25MJ/L、約1.3MJ/L、約1.35MJ/L、約1.4MJ/L、約1.45MJ/L、約1.5MJ/L、約1.55MJ/L、約1.6MJ/L、約1.65MJ/L、約1.7MJ/L、約1.75MJ/L、約1.8MJ/L、約1.85MJ/L、約1.9MJ/L、約1.95MJ/L、約2.0MJ/L、約2.05MJ/L、約2.1MJ/L、約2.15MJ/L、約2.2MJ/L、約2.25MJ/L、約2.3MJ/L、約2.35MJ/L、約2.4MJ/L、約2.45MJ/L、約2.5MJ/L、約2.55MJ/L、約2.6MJ/L、約2.65MJ/L、約2.7MJ/L、約2.75MJ/L、約2.8MJ/L、約2.85MJ/L、約2.9MJ/L、約2.95MJ/L、約3.0MJ/L、約3.5MJ/L、約4.0MJ/L、約4.5MJ/L、または約5.0MJ/L(これらの間のすべての値および範囲を含む)より大きくすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2の電極材料130のエネルギー密度は、約0.2MJ/L、約0.25MJ/L、約0.3MJ/L、約0.35MJ/L、約0.4MJ/L、約0.45MJ/L、約0.5MJ/L、約0.55MJ/L、約0.6J/L、約0.65MJ/L、約0.7MJ/L、約0.75MJ/L、約0.8MJ/L、約0.85MJ/L、約0.9MJ/L、約0.95MJ/L、約1.0MJ/L、約1.05MJ/L、約1.1MJ/L、約1.15MJ/L、約1.2MJ/L、約1.25MJ/L、約1.3MJ/L、約1.35MJ/L、約1.4MJ/L、約1.45MJ/L、約1.5MJ/L、約1.55MJ/L、約1.6MJ/L、約1.65MJ/L、約1.7MJ/L、約1.75MJ/L、約1.8MJ/L、約1.85MJ/L、約1.9MJ/L、約1.95MJ/L、約2.0MJ/L、約2.05MJ/L、約2.1MJ/L、約2.15MJ/L、約2.2MJ/L、約2.25MJ/L、約2.3MJ/L、約2.35MJ/L、約2.4MJ/L、約2.45MJ/L、約2.5MJ/L、約2.55MJ/L、約2.6MJ/L、約2.65MJ/L、約2.7MJ/L、約2.75MJ/L、約2.8MJ/L、約2.85MJ/L、約2.9MJ/L、約2.95MJ/L、約3.0MJ/L、約3.5MJ/L、約4.0MJ/L、約4.5MJ/L、または約5.0MJ/L(これらの間のすべての値および範囲を含む)より大きくすることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成勾配を有する完成電極100(例えば、第1の電極材料120と第2の電極材料130とを含む)の比エネルギーは、約0.2MJ/kg、約0.25MJ/kg、約0.3MJ/kg、約0.35MJ/kg、約0.4MJ/kg、約0.45MJ/kg、約0.5MJ/kg、約0.55MJ/kg、約0.6J/kg、約0.65MJ/kg、約0.7MJ/kg、約0.75MJ/kg、約0.8MJ/kg、約0.85MJ/kg、約0.9MJ/kg、約0.95MJ/kg、約1.0MJ/kg、約1.05MJ/kg、約1.1MJ/kg、約1.15MJ/kg、約1.2MJ/kg、約1.25MJ/kg、約1.3MJ/kg、約1.35MJ/kg、約1.4MJ/kg、約1.45MJ/kg、または約1.5MJ/kg(これらの間のすべての値および範囲を含む)より大きくすることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120の比エネルギーは、約0.2MJ/kg、約0.25MJ/kg、約0.3MJ/kg、約0.35MJ/kg、約0.4MJ/kg、約0.45MJ/kg、約0.5MJ/kg、約0.55MJ/kg、約0.6J/kg、約0.65MJ/kg、約0.7MJ/kg、約0.75MJ/kg、約0.8MJ/kg、約0.85MJ/kg、約0.9MJ/kg、約0.95MJ/kg、約1.0MJ/kg、約1.05MJ/kg、約1.1MJ/kg、約1.15MJ/kg、約1.2MJ/kg、約1.25MJ/kg、約1.3MJ/kg、約1.35MJ/kg、約1.4MJ/kg、約1.45MJ/kg、または約1.5MJ/kg(これらの間のすべての値と範囲を含む)より大きくすることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、第2の電極材料130の比エネルギーは、約0.2MJ/kg、約0.25MJ/kg、約0.3MJ/kg、約0.35MJ/kg、約0.4MJ/kg、約0.45MJ/kg、約0.5MJ/kg、約0.55MJ/kg、約0.6J/kg、約0.65MJ/kg、約0.7MJ/kg、約0.75MJ/kg、約0.8MJ/kg、約0.85MJ/kg、約0.9MJ/kg、約0.95MJ/kg、約1.0MJ/kg、約1.05MJ/kg、約1.1MJ/kg、約1.15MJ/kg、約1.2MJ/kg、約1.25MJ/kg、約1.3MJ/kg、約1.35MJ/kg、約1.4MJ/kg、約1.45MJ/kg、または約1.5MJ/kg(これらの間のすべての値と範囲を含む)より大きくすることができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、高容量アノード材料を、約10体積%、約20体積%、約30体積%、約40体積%、約50体積%、約60体積%、約70体積%、約80体積%、約90体積%、または約100体積%を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、炭素、グラファイト、または結合剤の有無にかかわらず他の活物質と組み合わされた高容量アノード材料を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、高容量アノード材料を、約60体積%未満、約55体積%未満、約50体積%未満、約45体積%未満、約40体積%未満、約35体積%未満、約30%体積%未満の、約25体積%未満、約20体積%未満、約15体積%未満、約10体積%未満、または約5体積%未満含み得る。いくつかの実施形態では、第2の電極材料130は、高容量材料を実質的に含んでいなくてもよい。
【0059】
上記のように、電極100は、2つの異なるアノード材料の層を含む。いくつかの実施形態では、電極100は、代替的に、2つ以上の異なるカソード材料の層を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120および/または第2の電極材料130は、リチウムイオン電池のカソードとして使用することができる任意の材料を含み得る。電気化学セルで使用することができるカソード材料の例は、上記の参照により組み込まれた’159特許に記載されている。
【0060】
典型的には、リチウムイオン電池で使用されるカソードにおける集電体110は、導電性炭素でコーティングされたアルミニウムから作られている。導電性炭素コーティングは、導電性を改善し、かつ集電体110の機械的強度を増加させることができ、それにより、集電体110の亀裂の可能性を低減する。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120は、導電性炭素層の代わりに裸アルミニウム集電体上に配設することができる。いくつかの実施形態では、カソード内の第1の電極材料120は、上記のように、アノード内と同じ方法を介して製造および/または堆積することができる。いくつかの実施形態では、カソードの第1の電極材料120は、上記のように、アノードの第1の電極材料120の厚さと同じまたは同様の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、カソード内の第2の電極材料130は、半固体カソードであり得、上記のように、アノード中と同じ方法を介して堆積することができる。いくつかの実施形態では、カソードの第2の電極材料130は、上記のように、アノードの第2の電極材料130の厚さと同様の厚さを有し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、第2の電極材料130内の高容量アノード材料の体積パーセントは、第1の電極材料120内の高容量アノード材料の体積パーセントよりも約10~80%少なくてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、組成勾配を有する完成電極100(例えば、第1の電極材料120と第2の電極材料130とを含む)のサイクル寿命は、約200回の充電/放電サイクル超、約250サイクル超、約300サイクル超、約350サイクル超、約400サイクル超、約450サイクル超、約500サイクル超、約550サイクル超、約600サイクル超、約650サイクル超、約700サイクル超、約750サイクル超、約800サイクル超、約850サイクル超、約900サイクル超、約950サイクル超、約1,000サイクル超、約1,050サイクル超、約1,100サイクル超、約1,250サイクル超、約1,300サイクル超、約1,350サイクル超、約1,400サイクル超、約1,450サイクル超、約1,500サイクル超、約1,550サイクル超、約1,600サイクル超、約1,650サイクル超、約1,700サイクル超、約1,750サイクル超、約1,800サイクル超、約1,850サイクル超、約1,900サイクル超、約1,950サイクル超、約2,000サイクル超、約2,500サイクル超、約3,000サイクル超、約5,000サイクル超、または約10,000サイクル超であり得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、組成勾配を有する完成電極100を含む(例えば、第1の電極材料120と第2の電極材料130とを含む)電気化学セルの充電速度は、1Cの速度で電極材料100gあたり約5時間未満、約4.5時間未満、約3時間未満、約3時間未満、約2.5時間未満、約2時間未満、約1.5時間未満、または約1時間未満(これらの間のすべての値および範囲を含む)であり得る。いくつかの実施形態では、半固体電極の第2の電極材料130と従来の(すなわち、「乾いた」)第1の電極材料120とを有することにより、通常、従来の電池製造プロセスの最後のステップである電解質充填プロセスを回避することができる。これにより、第2の電極材料130に存在する電解質が第1の電極材料120を飽和させることを可能にすることで、第1の電極材料120におけるより高い負荷につながる可能性もある。
【0064】
リチオ化前
多くの電極、例えば、リチウムイオン電極、特にアノードは、電池形成段階(すなわち、電極を含む電気化学セルの充電および放電を含む最初のサイクルステップ)で不可逆的な容量損失を被る可能性がある。アノードによるカソード活物質からのリチウムイオンの消費により、不可逆的な容量損失が発生する可能性があり、アノードは、これらのリチウムイオンを固体電解質界面(SEI)層の形成に使用する。この消費されたリチウムの量は、その後の電荷貯蔵での使用に利用できなくなるので、望ましくない不可逆的な容量損失を表す。さらに、この不可逆的な容量損失は、リチウムイオンがアノード材料に不可逆的にトラップされるため、アノードの体積膨張をともなう可能性がある。この体積膨張の問題は、半固体アノード配合物内の高容量アノード材料(例えば、シリコンまたはスズ)を含む半固体アノードで悪化する。なぜなら、グラファイトなどの従来の材料と比較して、高容量アノード材料は、より大量のリチウムを取り込むことができる(およびより高エネルギーのセル設計を可能にする)からである。例えば、グラファイトは6個の炭素原子ごとに約1個のリチウム原子を取り込むことができるが、シリコンは理論的にはすべてのシリコン原子ごとに約4.4個のリチウム原子を取り込むことができる。
【0065】
このより高い容量により、従来の電気化学セルに比べて、単位面積あたりの電荷容量がはるかに高い電気化学セルを形成することができるが、取り込まれるリチウムイオンの数が多いということは、高容量の材料を含む半固体アノードがカソードからより多くのリチウムを消費してSEI層を形成するため、不可逆容量がさらに大きくなることを意味する。さらに、シリコンは、リチウムイオンがシリコン原子に取り込まれるため、かなりの体積膨張を経験する。繰り返される体積変化(すなわち、膨張および/または収縮)は、充電容量に悪影響を及ぼし、電気化学セルの寿命を縮め得る不可逆的な機械的損傷を引き起こす可能性がある。シリコン電極の応力および形態に対するリチオ化の影響の詳細な説明は、Journal of Power Sources195(2010)5062ー5066、V.Sethuraman等による“In situ Measurements of Stress Evolution in Silicon Thin Films During Electrochemical Lithiation and Delithiation”に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電極は、例えば、半固体電極材料の混合中に予備リチオ化されるか、または電極の組み立て中に予備リチオ化される、予備リチオ化電極であり得る。いくつかの実施形態では、そのような予備リチオ化は、電気化学セル形成の前、および第1の充電/放電サイクルが完了する前に、電極内にSEI層を形成するのを助けることができる。いくつかの実施形態では、電極の予備リチオ化は、アノードの予備リチオ化であり得る。いくつかの実施形態では、リチウムイオンが電池形成プロセスにおいてより容易かつ早期にアノード活物質によって貯蔵されるように、リチウム含有材料をアノードに配設することによって、予備リチオ化を実施することができる。
【0067】
図2は、集電体210上に任意の適切な順序で配設された第1の電極材料220と、第2の電極材料230と、リチウム含有材料240とを含む電極200の概略図である。いくつかの実施形態では、第1の電極材料220および/または第2の電極材料230は、固体電極材料、半固体電極材料、高容量材料、およびそれらの組み合わせ(総称して「電極材料」)のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、電極200はアノードである。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電極材料は、電極200の調製中および電気化学セルの形成前にリチウム含有材料240で予備リチオ化することができ、それにより、少なくとも部分的に、上記の不可逆的な容量損失および体積膨張の問題を克服する。本明細書に記載の半固体電極材料は、リチウム含有材料の半固体電極材料への混合を可能にする。特定の理論に束縛されることを望まないが、これが可能であり得るのは、本明細書に記載の半固体電極材料は、半固体電極組成物に混合された電解質を含むためである。電解質は、リチウム含有材料240によって提供されるリチウムイオンの媒体を提供して、半固体電極材料に含まれる活物質、特に半固体アノード材料に含まれる活物質(例えば、グラファイト)または高容量材料(例えば、シリコンまたはスズ)と相互作用する。これにより、混合ステップ中にSEI層を形成することができ、その結果、そのような予備リチオ化電極200が電気化学セル内の第2の電極(図示せず。例えば、カソード)と対になると、第2の電極からのリチウムイオンは、予備リチオ化電極200内にSEI層を形成するために使用されることはない。別の言い方をすれば、予備リチオ化のおかげで、第2の電極(例えば、カソード)からのリチウムイオンは、予備リチオ化電極200における不可逆的な容量損失に寄与しない。いくつかの実施形態では、第2の電極からのリチウムイオンは、予備リチオ化電極200における不可逆的な容量損失に寄与しないので、第2の電極(例えば、カソード)が電気化学セル形成後にその初期容量を維持することを可能にし得る。さらに、電極200に含まれる電解質はまた、リチウム含有材料240を周囲環境(例えば、周囲環境の水分または湿度)から保護することができ、それにより、リチウム含有材料240が混合プロセス中に安定した状態を保つことを可能にする。
【0069】
いくつかの実施形態では、予備リチオ化は、電極200の製造中のある時点で、リチウム含有材料240を電極200に配設することによって実行し得る。いくつかの実施形態では、リチウム含有材料240は、第1の電極材料220と第2の電極材料230との間に配設することができる。いくつかの実施形態では、リチウム含有材料240は、集電体210と第1の電極材料220との間に配設することができる。いくつかの実施形態では、リチウム含有材料240は、第2の電極材料230と、続いて配設される電極材料層(図示せず)との間に配設することができる。いくつかの実施形態では、リチウム含有材料240は、第2の電極材料230と、イオン透過性であり、かつ電極200を第2の電極から分離するように構成されたセパレータ(図示せず)との間に配設することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、リチウム含有材料240は、シート、スラリー、懸濁液、複数の粒子、粉末、合金溶液、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の適切な形状因子に従って形成することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、リチウム含有材料240は、リチウム金属と結合剤とを含み得る。いくつかの実施形態では、リチウム含有材料240は、炭素質(例えば、グラファイト)材料をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、リチウム含有材料240は最初、電極材料の乾燥中に除去される溶媒を含み得る。
【0072】
本明細書に記載の半固体電極の予備リチオ化によって提供される別の利点は、アノードがカソードと対になる前に完全に帯電するように、アノードを予備リチオ化し得ることである。これにより、アノード内にSEI層を形成するために利用可能なリチウムを含まないカソードの使用が可能になる。したがって、リチウム金属の代わりに炭素ベースのアノード材料を使用することができ、サイクルの安定性と安全性の向上につながる。さらに、アノードに含まれる高容量材料へのリチウムイオンの挿入も混合ステップ中に行うことができ、これにより、混合ステップ中に高容量材料の任意の膨張を発生させることが可能になる。別の言い方をすれば、予備リチオ化は、半固体アノードを予備膨張させることができ、その結果、半固体アノードは、電気化学的セル形成およびその後の充電/放電サイクル中に、より少ない膨張を経験する。このようにして、半固体アノードの膨張による電気化学セルへの物理的損傷は、実質的に低減されか、場合によっては排除される可能性がある。したがって、そのような予備リチオ化された半固体アノードを含む電気化学セルは、予備リチオ化されていないアノード(例えば、半固体アノード)と比較して、実質的により高い機械的安定性およびより長い寿命を有し得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、追加の電解質を、事前リチオ化プロセスの後または最中に追加することができる。予備リチオ化では、電解質が消費されてSEIが生成され、電解質が追加されると、電極内に局所的に電解質がない状態で電極が還元される。
【0074】
電極の予備リチオ化のためのデバイス、方法、およびシステムの追加の例は、2015年11月3日に提出された「半固体電極における電極材料の予備リチオ化」と題する米国特許出願第2016/0126543(「’543出版物」)に見受けられ、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
高容量材料
いくつかの実施形態では、より高いエネルギー密度および容量は、例えば、アノードおよび/またはカソードで使用される材料の改善、および/またはアノード/カソードの厚さの増加(すなわち、不活性材料に対する活物質のより高い比率)によって達成することができる。家庭用電化製品のアノードに使用されている最新の材料の1つは、例えば、その高容量と低電圧のために、シリコン(Si)、スズ(Sn)、シリコン合金、またはスズ合金である。典型的には、この高容量活物質は、その高い一次充電容量および関連する一次充電不可逆容量のために、グラファイトと混合される。シリコンの初期の充電理論容量は4,200mAh/gであって、不可逆容量は300mAh/gより大きい。したがって、Siを利用する一般的なアノードは、不可逆容量を減らすために、シリコンとグラファイトの混合物を含有する。加えて、シリコンはリチウムの挿入中に非常に大きな体積変化を経て、材料の体積を300%を超えて増加させる。この大きな体積膨張を制限するために、現行の高容量アノードは、アノード混合物に10~20%のシリコンを利用し、全体の容量が約700~約4,200mAh/gのアノードをもたらす。
【0076】
従来のカソード組成物は、約150~200mAh/gの容量を有し、200μmより厚くすることはできない。なぜなら、高速ロールツーロールカレンダー処理を使用して製造された従来の電極は、平坦な集電体よりも約200μm厚くすると剥離する傾向があるためである。また、より厚い電極は、(例えば、J.Electrochem.Soc.Vol.153、A835ーA839(2006)、Yu等の”Effect of electrode parameters on LiFePO cathodes”に記載されているように)エネルギー効率を低下させるより高いセルインピーダンスを有する。したがって、高容量アノードを従来のカソードと適合させるために、現行の最先端の電池は、アノードの厚さを低減することに焦点を合わせてきた。例えば、厚さが約40~50μmおよびさらに薄いアノードが開発されている。これらのアノード材料のそのような薄いコーティングは、単一のグラファイト粒子の厚さレベルに近づき始めている。従来のコーティングプロセスにおける厚さおよび関連する負荷密度の制限は、高エネルギーアノードで利用可能な高容量を最大限に活用する電池の開発を妨げてきた。
【0077】
高容量材料が、例えば、電極100または電極200に組み込まれる場合、動作中の関連する膨潤は、電極およびそれから構成される電気化学セルに損傷を引き起こす可能性がある。しかしながら、電極内の高容量材料と共に本明細書に記載の半固体電極材料を使用すると、高容量材料の膨潤による電極の損傷が少ないという、驚くべき予想外の結果が出る。
【0078】
図3は、集電体310上に配設された第1の電極材料320と、第2の電極材料320上に配設された第2の電極材料330とを含む電極300の側面図である。いくつかの実施形態では、第1の電極材料320および/または第2の電極材料330は、固体電極材料、半固体電極材料、高容量材料、およびそれらの組み合わせ(総称して「電極材料」)のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の電極材料320の一部分を除去して(例えば、レーザーアブレーションによって)、集電体310の一部分を露出させることができる。いくつかの実施形態では、第1の電極材料320の一部分の除去によって、複数の拡張領域330a、330b、330cを形成することができる。いくつかの実施形態では、第2の電極材料330が第1の電極材料320上に配設される場合、第2の電極材料330の少なくとも一部分は、複数の拡張領域330a、330b、330c内に介在させることができる。いくつかの実施形態では、第1の電極材料320の一部分を除去して複数の拡張領域330a、330b、330cを形成するのではなく、集電体310への第1の電極材料320の選択的堆積によって複数の拡張領域330a、330b、330cを形成してもよい。いくつかの実施形態では、集電体310への第1の電極材料320の選択的堆積は、まずマスク材料を集電体310に配設し、次に第1の電極材料320を集電体310に配設し、マスクを除去して複数の拡張領域330a、330b、330cを画定することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、第1の電極材料120および第2の電極材料130のうちの少なくとも1つは、高容量材料を含み得る。いくつかの実施形態では、高容量材料は、シート、バルク材料、マイクロスケール粒子、ナノスケール粒子、またはそれらの組み合わせなどの任意の適切な形状因子を有し得る。いくつかの実施形態では、高容量材料は、シリコン、ビスマス、ボロン、ガリウム、インジウム、亜鉛、スズ、アンチモン、アルミニウム、酸化チタン、モリブデン、ゲルマニウム、マンガン、ニオブ、バナジウム、タンタル、鉄、銅、金、白金、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、酸化モリブデン、酸化ゲルマニウム、酸化シリコン、炭化シリコン、その他の高容量材料または合金、およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、イオンを貯蔵可能な任意の材料を含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、電極300は、約66重量%~70重量%のSiと、約15重量%~22重量%のCoと、約4重量%~12重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、約15重量%~20重量%のNiと、約10重量%~15重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、約15重量%のFeと、約15重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、約20重量%のTiと、約10重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、約15重量%のMoと、約15重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、15重量%のCoと、5重量%のNiと、約10重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のCと、約10重量%のCoと、約10重量%のNiと、約10重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、約5重量%のCoと、約15重量%のNiと、約10重量%のSiとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、約5重量%のFeと、約10重量%のNiと、約15重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、10重量%のCoと、約5重量%のNiとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約74重量%のSiと、2重量%のSnと、約24重量%のCoとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約73重量%のSiと、約2重量%のSnと、約25重量%のNiとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSi、10重量%のFe、約10重量%のTi、および約10重量%のCoを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSi、約15重量%のFe、約5重量%のTi、および約10重量%のCを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約74.67重量%のSi、16重量%のFe、5.33重量%のTi、および4重量%のCを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約55重量%のSi、29.3重量%のAl、および約15.7重量%のFeを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約70重量%のSiと、前駆体からの約20重量%のCと、および約10重量%のグラファイトとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約55重量%のSiと、約29.3重量%のAlと、約15.7重量%のFeとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約60~62重量%のSiと、約16~20重量%のAlと、約12~14重量%のFeと、約8%のTiとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約50重量%のSnと、約27.3重量%~35.1重量%のCoと、約5重量%~15重量%のTiと、約7.7重量%~9.9重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約50重量%のSnと、約39~42.3重量%のCoと、約7.7~11重量%のCとを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、約35~70モル%のSi、約1~45モル%のAl、約5~25モル%の遷移金属、約1~15モル%のSn、約2~15モル%のイットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、電極300は、例えば、Sn-Co-C、Sn-Fe-C、Sn-Mg-C、またはLa-Ni-Sn合金などのスズ金属合金を含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、例えば、SnOまたはSiOアモルファス酸化物などのアモルファス酸化物を含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、例えば、SnーSiーAlーB-O、SnーSbーS-O、SnOーP、またはSnOーBーPーAlアノードなどのガラス状アノードを含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、例えば、CoO、SnO、またはVなどの金属酸化物を含み得る。いくつかの実施形態では、電極300は、例えば、LiNまたはLi2.6CoO.4Nなどの金属窒化物を含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、高容量材料を含む電極100は、アノードであり得、第1の電極材料120は、高容量材料を含み得、第2の電極材料130は、半固体電極材料を含み得る。いくつかの実施形態では、複数の拡張領域330a、330b、330cを形成するために除去される、高容量材料を含む第1の電極材料120の部分は、第2の電極材料330が第1の電極材料320上に配設されるときに、半固体電極材料によって実質的に充填され得る。特定の理論に束縛されることを望まないが、電気化学セルが動作しているとき、高容量材料は最大約400%膨張し、第1の電極材料320を膨張させることができる。いくつかの実施形態では、第2の電極材料330は、電気化学セルの動作中に第1の電極材料320が膨張および/または収縮するときに変形するように構成され得る。
【0082】
図4は、集電体410と、第1の電極材料420と、第2の電極材料430とを含む電極400を示している。集電体410、第1の電極材料420、および第2の電極材料430は、図1を参照して上記したように、集電体110、第1の電極材料120、および第2の電極材料130と実質的に類似または同一であり得るため、本明細書では詳細に説明しない。いくつかの実施形態では、第1の電極材料420は、スパッタリングまたは電気めっきされたシリコンを含み得、第2の電極材料430は、半固体電極材料を含み得る。動作中、第1の電極材料420(例えば、スパッタされたシリコン電極)は、サイクル中に亀裂を発生させ、複数の別個の部分(例えば、420a、420b、420c)に分割する可能性がある。これらの亀裂は、水平方向(例えば、x方向またはy方向)の電子の移動を制限する可能性がある。言い換えれば、電子は、第2の電極材料430内でのみ効率的に水平移動することができる可能性がある。この電子移動性の低下は、第1の電極材料420を含む電気化学セルにおいて、より低いエネルギー密度または電力密度性能を引き起こす可能性がある。
【0083】
ここで図5を参照して、いくつかの実施形態では、電極500は、集電体510と、第1の電極材料520と、第2の電極材料530と、第1の電極材料520と第2の電極530との間に配設された第3の電極材料540とを含み得る。集電体510、第1の電極材料520、および第2の電極材料530は、図1を参照して上記したように、集電体110、第1の電極材料120、および第2の電極材料130と実質的に類似または同一であり得るため、本明細書では詳細に説明しない。いくつかの実施形態では、第1の電極材料520は、スパッタされた、または電気めっきされたシリコンを含み得る。いくつかの実施形態では、第3の電極材料540は、グラファイトを含み得る。第1の電極材料520の構成要素(例えば、シリコン)は、電気化学セル内の電解質溶液と連続的に反応する可能性があり、第1の電極材料520の表面上のSEIを制御することは困難である可能性がある。第1の電極材料520がスパッタリングまたは電気めっきされるいくつかの実施形態では、第1の電極材料520は低い気孔率(すなわち、電解質との反応のためのより少ない表面積)を有するが、化学反応は依然として電解質との界面で起こり得る。したがって、第1の電極材料520を、例えば、グラファイトを含む第3の電極材料540でコーティングすることにより、これらの界面化学反応を最小限に抑えることができる。言い換えれば、いくつかの実施形態では、第1の電極材料520の亀裂が発生し得るが、第3の電極材料540でコーティングすることにより、亀裂を最小化または低減することができる。さらに、第3の電極材料540および第2の電極材料530内の導電性材料(例えば、グラファイト)は、第1の電極材料520の亀裂から生じた間質領域に移動することができる。これらの間質領域に導電性材料が存在すると、電子の垂直方向の移動(つまり、z方向)が促進され、シリコンの亀裂によって引き起こされる性能低下を是正することができる。
【0084】
高容量材料を含む電極および電気化学セルの追加の例、およびそれらを製造する方法は、2016年9月6日に提出された「半固体カソードと高エネルギー密度アノードとを有する非対称電池」と題する米国特許第9,437,864号に見受けられ、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
上記で様々なシステム、方法、およびデバイスの実施形態を説明したが、それらは、限定ではなく、例としてのみ提示されたことが理解されるべきである。上記の方法およびステップが特定の順序で発生する特定の事象を示す場合、本開示の利益を有する当業者は、特定のステップの順序が変更可能であり、そのような変更が本発明の変形に従うものであることを認識するであろう。加えて、ステップのいくつかは、可能な場合は並行プロセスで同時に実行することもでき、上述したように順次実行することもできる。実施形態を特に示し記載してきたが、形態および詳細において様々な変更が行われ得ることが理解されるであろう。
【0086】
実施例1(Si/半固体グラファイトおよびLi)
電気化学セルの実施例1(「Ex1」とも称する)を、半固体/SiアノードおよびLi金属アノードを使用して調製した。半固体カソードを、60体積%のグラファイト粉末および2体積%の炭素導電性添加剤と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。アノードスラリーを、ローラーミルおよび遠心分離混合プロセスを使用して調製した。混合は、1100rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。スラリーを、厚さ250μmの電極にし、ポーチセル構成のLi金属アノードに対してテストした。セルを、Maccor電池テスターを使用してテストし、V=0.005V~1Vの電圧範囲で循環させた。セルを、C/10で一定の電流速度で一定の電流ー定電圧を使用して充電した。セルを、C/10で放電した。図6は、この二重層アノードセルの最初のサイクルを示している。
【0087】
例2(LiMnPO4/半固体カソードおよびLi)
電気化学セルの実施例2(「Ex2」とも称する)を、半固体NMC/従来のコーティングLiMnPO4カソードおよびLi金属アノードを使用して調製した。従来のコーティングLiMnPO4スラリーの第1層を、80重量%のLiMnPO4と、10重量%カーボンブラックと、10重量%のPVDFとを混合し、次に遠心分離ミキサーにおいてNMPで希釈することによって作製した。混合は、1100rpmで30分間行った。NMP含有スラリーを、裸Al上で鋳造し、次に乾燥させてNMPを除去した。次に、乾燥した従来のカソードをカレンダー処理して、気孔率を30%未満に制御した。半固体カソードを、55体積%のNMC811粉末および2体積%のカーボンブラックと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。スラリーを、厚さ250μmの電極にし、ポーチセル構成のLi金属アノードに対してテストした。
【0088】
実施例3(SiO/ハードカーボン半固体アノードおよびNMC半固体カソード)
電気化学セルの実施例3(「Ex3」とも称する)を、半固体/従来のアノードおよびLi金属アノードを使用して調製した。第1層の従来のコーティングハードカーボンスラリーを、80重量%のハードカーボンと、10重量%のカーボンブラックと、10重量%のPVDFとを混合し、次に遠心分離ミキサーにおいてNMPで希釈することによって作製した。混合は、1100rpmで30分間行った。NMP含有スラリーを発泡ニッケルフォーム上で鋳造し、次に乾燥させてNMPを除去した。次に、乾燥した従来のカソードをカレンダー処理して、気孔率を20%未満に制御した。半固体アノードを、40体積%の一酸化シリコン粉末および10体積%のカーボンブラックと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。アノードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1100rpmで30秒間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。スラリーを、厚さ250μmの電極にし、ポーチセル構成のLi金属アノードに対してテストした。
【0089】
実施例4(SiO/ハードカーボン半固体アノードおよび半固体カソード)
電気化学セルの実施例4(「Ex3」とも称する)を、半固体/従来のアノードおよび半固体のnmcカソードを使用して調製した。第1層の従来のコーティングSiOスラリーを、80重量%のSiOナノワイヤと、10重量%のカーボンブラックと、20重量%のPVDFとを混合し、遠心分離ミキサーにおいてNMPで希釈することによって作製した。混合は、1100rpmで30分間行った。NMP含有スラリーを銅上で鋳造し、次に乾燥させてNMPを除去した。次に、乾燥した従来のカソードをカレンダー処理して、気孔率を30%未満に制御した。半固体アノードを、50体積%のグラファイト粉末および2体積%のカーボンブラックと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。アノードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1100rpmで30秒間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。スラリーを、厚さ250μmの電極にし、ポーチセル構成のLi金属アノードに対してテストした。半固体カソードを、50体積%のNMC622および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。カソードスラリーを、厚さ200μmの電極にした。セルを、Maccor電池テスターを使用してテストし、V=4.2V~2.2Vの電圧範囲で循環させた。セルを、C/10で定電流速度の定電流定電圧を使用して充電した。セルを、C/10で放電した。この半固体セルの形成曲線を、図7に示す。
【0090】
実施例5(通常の半固体セル)
電気化学セル実施例5(「Ex5」とも称する)を、半固体カソードおよび半固体グラファイトアノードを使用して調製した。半固体カソードを、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。カソードスラリーを、厚さ200μmの電極にした。次に、カソードを高密度化して、66体積%を超える固体負荷を達成した。アノードグラファイト半固体スラリーを、60体積%のグラファイト粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを1100rpmで2分間混合した。アノードスラリーを、厚さ250μmの電極にした。
【0091】
実施例6(半固体カソードおよび半固体/Si)
電気化学セルの実施例6(「Ex6」とも称する)を、半固体カソードおよび2層の半固体グラファイト/スパッタSiアノードを使用して調製した。半固体カソードを、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。カソードスラリーを、厚さ200μmの電極にした。次に、カソードを高密度化して、66体積%を超える固体負荷を達成した。スパッタリング機を使用して、Siの第1層を、2μmで制御された厚さで銅上にスパッタリングした。半固体スラリー内のグラファイトのアノードの第2層を、60体積%のグラファイト粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを1100rpmで2分間混合した。アノードスラリーを、250μmの厚さのスパッタSi電極に鋳造した。
【0092】
実施例7(半固体Siーグラファイト/スパッタSi)
電気化学セルの実施例7(「Ex7」とも称する)を、半固体カソードおよび2層の半固体Siーグラファイト/スパッタSiアノードを使用して調製した。半固体カソードを、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。カソードスラリーを、厚さ200μmの電極にした。次に、カソードを高密度化して、66体積%を超える固体負荷を達成した。スパッタリング機を使用して、Siの第1層を、2μmで制御された厚さで銅にスパッタリングした。半固体スラリー内のグラファイトのアノードの第2層を、40体積%のグラファイト粉末、20体積%の凝集Si、および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを1100rpmで2分間混合した。アノードスラリーを、200μmの厚さのスパッタSi電極に鋳造した。
【0093】
表1において、Ex5セルを、Ex6およびEx7セルと比較する。表1は、半固体グラファイトアノードと、2層半固体グラファイト/スパッタSiアノードと、2層半固体Siグラファイト/スパッタSiアノードとをともなうセルの寿命開始時(BOL)エネルギー密度および比エネルギーを示している。電極に高容量材料を追加すると、容量が大幅に向上する。2層の半固体グラファイト/スパッタSiアノードを使用することで6%の改善が達成され、一方で2層の半固体Siーグラファイト/スパッタSiアノードを使用することで21%の改善が達成される。
【表1】
【0094】
実施例8(半固体の従来の鋳造シリコンアノードおよび半固体カソード)
電気化学セルの実施例8(「Ex8」とも称する)を、半固体カソードおよび2層の半固体グラファイト/従来のSiアノードを使用して調製した。半固体カソードを、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。カソードスラリーを、厚さ200μmの電極にした。従来のコーティングSiナノ粒子スラリーの第1層を、70重量%のSiと、5重量%カーボンブラックと、15重量%のポリイミド結合剤とを混合し、次に遠心分離ミキサーにおいてNMPで希釈することによって作製した。混合は、1100rpmで30分間行った。NMP含有スラリーを銅上で鋳造し、次に乾燥させてNMPを除去した。次に、乾燥した従来のカソードをカレンダー処理して、気孔率を30%未満に制御した。第1層の厚さは、40μmであった。アノード第2層グラファイト半固体スラリーを、53体積%のグラファイト粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを1100rpmで2分間混合した。アノードスラリーを、250μmの厚さのSi電極に鋳造した。
【0095】
実施例9(半固体グラファイトスパッタシリコンアノードおよび半固体カソード)
電気化学セルの実施例9(「Ex9」とも称する)を、半固体カソードおよび2層の半固体グラファイト/スパッタSiアノードを使用して調製した。半固体カソードを、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。カソードスラリーを、厚さ200μmの電極にした。スパッタリング機を使用して、Siの第1層を、2μmで制御された厚さで銅にスパッタリングした。アノード第2層グラファイト半固体スラリーを、53体積%のグラファイト粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを1100rpmで2分間混合した。アノードスラリーを、250μmの厚さのSi電極に鋳造した。
【0096】
図8は、Ex8セルの最初の充電および放電の電圧対比容量のプロットを示している。図9は、Ex9セルの最初の充電および放電の電圧対比容量のプロットを示している。双方のセルを、4.3V~2.7Vに放電した。充電率はC/20で、放電率はC/10であった。
【0097】
図10は、4.2V~3.0Vまでの電圧放電でのEx8セルの容量保持プロットを示している。これらの条件下で、100サイクル後、セルはその容量の約90%を保持している。図11は、4.3V~2.7Vまでの電圧放電でのEx8セルの容量保持を示している。このより大きな放電深度では、セルは100サイクル後に容量の約60%しか保持しない。図12は、4.3V~2.7Vまでの電圧放電でのEx9セルの容量保持プロットを示している。100サイクル後、Ex9セルはその容量の約95%を保持していた。図10および図11のセルは、同様の放電深度で操作され、スパッタシリコンをともなうEx9セルは、その容量のかなり多くを保持していた。図10図11、および図12のセルは、それぞれC/4およびC/3の充電および放電速度で操作された。
【0098】
図13は、形成後の最初のサイクルのセル電圧対比容量、およびEx9に従って構築された電池のサイクル試験の最後のサイクルを示す。これは、Ex9に従って構築されたセルの容量保持に関して図12に提示されたものと同様の情報である。このプロットは、このバッテリ設計に関連する最小の容量損失を示しており、それは、充電/放電曲線が、寿命の開始時と終了時で同様の軌跡をたどっているためである。
【0099】
実施例10(スズ/グラファイトデュアルアノード対811カソード)
電気化学セル実施例10(「Ex10」とも称する)を、半固体カソードおよび2層半固体グラファイト/スズ金属アノードを使用して調製した。半固体カソードを、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。カソードスラリーを、厚さ200μmの電極にした。第1層のスズを、10μmで制御された厚さで銅上に電気化学的に堆積した。アノード第2層グラファイト半固体スラリーを、53体積%のグラファイト粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを1100rpmで2分間混合した。アノードスラリーを、250μmの厚さのSn電極に鋳造した。図14は、4.2~2.6Vの電圧のEx10セルの最初のサイクルの電圧対容量のプロットを示している。0.4Vの特徴付けられたされたLiーSn合金化電圧は、図16の充電曲線における3.4Vの明らかな平坦域に割り当てることができ、2種類のアノード化学反応を示している。
【0100】
例11(Sn/Si/グラファイトアノード)
電気化学セル実施例11(「Ex11」とも称する)を、半固体カソードおよび3層半固体Sn/Si/グラファイトアノードを使用して調製した。半固体カソードを、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。カソードスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1400rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー4S/cmの導電率とを有していた。カソードスラリーを、厚さ200μmの電極にした。スパッタリング機を使用して、第1層Siを、2μmで制御された厚さで銅上にスパッタリングした。第2層Snを、10μmで制御された厚さで、スパッタリングされたSi上に電気化学的に堆積する。アノード最上層グラファイト半固体スラリーを、53体積%のSiグラファイト混合粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを1100rpmで2分間混合した。アノードスラリーを、250μmの厚さのSn/Si電極に鋳造した。
【0101】
実施例12(2層カソードおよび半固体アノード)
電気化学セル実施例12(「Ex12」とも称する)は、2層カソードおよびグラファイト半固体アノードを使用して調製した。2層カソードは、スパッタリングされたLiCoOの第1層と、LiMnNiCoOの半固形層とから構成した。第1層の厚さは、500nmであった。第2層の厚さは、200μmであった。LiMnNiCoOカソードの半固体層を、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。半固体層のスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1200rpmで2分間行った。半固体スラリーは、0.9kPaを超える混合圧痕と、1.5×10ー3S/cmの導電率を有していた。アノード第2層グラファイト半固体スラリーを、53体積%のグラファイト粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを900rpmで30分間混合した。アノードスラリーを、厚さ250μmの銅集電体に鋳造した。図15は、4.3~2.5Vの電圧のEx12セルの最初のサイクルの電圧対容量のプロットを示している。
【0102】
実施例13(二重電解質をともなう3層カソード)
電気化学セル実施例13(「Ex13」とも称する)は、LiPONコーティングをともなう3層カソードおよびグラファイト半固体アノードを使用して調製された。3層カソードは、スパッタリングされたLiCoOの第1層、中間のLiMnNiCoOの半固体層、およびカソードの表面を埋めるためのスパッタリングされたLiPONから構成した。第1層の厚さは、500nmであった。第2層の厚さは、200μmであり、最上層の厚さは、20nmであった。LiMnNiCoOカソードの半固体層を、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/アセトニトリル/のLiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。半固体層のスラリーを、遠心分離ミキサーを使用して調製した。混合は、1200rpmで2分間行った。アノード第2層グラファイト半固体スラリーを、53体積%のグラファイト粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを900rpmで30分間混合した。アノードスラリーを、厚さ250μmの銅集電体に鋳造した。セルを、陰極液と陽極液との分離を可能にするためにポーチセル形式で組み立てた。
【0103】
実施例14(両側二重電極)
電気化学セル実施例14(「Ex14」とも称する)は、2層LiCoO/LiMnNiCoOカソードコーティングおよび2層グラファイト/Si半固体アノードを使用して調製した。2層カソードは、スパッタリングされたLiCoOの第1層と、LiMnNiCoOの半固形層とから構成した。第1層の厚さは、500nmであった。第2層の厚さは、200μmであった。LiMnNiCoOカソードの半固体層を、50体積%のNMC811および2体積%の活性炭と、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。アノード側では、スパッタリング機を使用して、Siの最1層を、2μmで制御された厚さで銅にスパッタリングした。アノード第2層グラファイト半固体スラリーを、53体積%のグラファイト粉末および2体積%の導電性カーボンと、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/LiPFベースの電解質とを混合することによって調製した。遠心分離ミキサーを使用して、スラリーを1100rpmで2分間混合した。アノードスラリーを、220μmの厚さのSi電極に鋳造した。
図1
図2
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図5
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図8
図9
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図11
図12
図13
図14
図15