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特許7535952ガスバック用手袋及びガスバック取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ガスバック用手袋及びガスバック取付構造
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/015 20060101AFI20240809BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A41D19/015 610Z
A41D19/00 P
A41D19/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021002222
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107340
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔵品 稔
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-137488(JP,U)
【文献】実開昭59-100594(JP,U)
【文献】特開昭49-109152(JP,A)
【文献】特開平5-269690(JP,A)
【文献】特開2015-14059(JP,A)
【文献】実開昭62-174877(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D19/00-19/04
F16L55/18
G21F7/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導管に対する作業を行う際に作業者の手及び腕と前記ガス導管の作業領域とに被せるガスバックが取り付けられるガスバック用手袋であって、
前記作業者の手指を覆い、かつガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成された手指覆い部であって、前記ガス導管に対する作業を行うために前記手指を動作させることが可能な軟らかい材料で構成された前記手指覆い部と、
前記手指覆い部に繋がるように設けられ、前記作業者の腕を覆い、かつガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成された腕覆い部であって、前記手指覆い部よりも硬い構成とされると共に外周面が凹凸の無い滑らかな形状とされた筒状部と、前記筒状部における前記手指覆い部と反対側の端部に前記筒状部と一体で形成されると共に前記外周面から半径方向外側に向かって突出し断面形状が拡大された拡大部と、を備え、前記外周面に前記ガスバックの挿入口が取り付けられる前記腕覆い部と、
を有するガスバック用手袋。
【請求項2】
前記手指覆い部の延長筒部が前記筒状部の内周面の内側に重なるように配置され、前記腕覆い部の前記筒状部は、前記手指覆い部に気密が保たれる状態で接合されている請求項に記載のガスバック用手袋。
【請求項3】
前記筒状部は、前記手指覆い部よりも硬い部材で構成された筒部本体と、前記手指覆い部から連続して筒状に延びると共に前記筒部本体の外周面に被覆された被覆部と、を備え、
前記手指覆い部の前記被覆部を含む部分は、ゴム製とされており、
前記筒部本体は、樹脂製又は金属製とされている請求項1に記載のガスバック用手袋。
【請求項4】
前記筒状部は、前記ガスバックの挿入口の取付荷重による直径の変化率が5%以下である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のガスバック用手袋。
【請求項5】
前記手指覆い部の少なくとも一部は、ゴム製とされており、
前記筒状部の少なくとも一部は、樹脂製又は金属製とされている請求項に記載のガスバック用手袋。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のガスバック用手袋と、
伸縮可能な材料で構成されると共に挿入口が形成された環状の伸縮部を有するガスバックと、を備え、
前記伸縮部が前記筒状部の外周面に密着されることで前記筒状部の外周面に前記ガスバックの挿入口が取り付けられると共に前記伸縮部が前記拡大部に接触する構成とされたガスバック取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバック用手袋及びガスバック取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種作業を行う際に、ゴム手袋が使用される場合がある。例えば、下記特許文献1には、略筒状の袖部と、袖部に連なる手袋本体とを備え、袖部の途中に、周長が最大周長の50%以上、90%以下の最小周長部を備えた絞りを設けたゴム手袋が開示されている。このゴム手袋では、装着した際に最小周長部によって袖部を腕に固定することで、袖部が手袋本体の方にずれ落ちたりゴム手袋の全体が手からずれたり外れたりすることを防止している。これにより、例えばゴム手袋を水仕事に使用した際に、ゴム手袋の中に水が入るのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-241496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ガス導管に対する作業(例えば、栓(プラグ)の開閉作業など)を行う際には、ガスが放散しないように、作業者の手及び腕とガス導管の作業位置に被せるガスバックを使用する。一般的に、ガスバックの挿入口は、裸腕に取り付ける仕様となっている。その理由は、作業者の衣服の上からガスバックの挿入口を取り付けると、衣服の袖を通じてガスが漏れるからである。しかし、冬場は寒いので、作業者が長袖の衣服を着用したままでガス導管に対する作業を行いたいという要望がある。
【0005】
このため、例えば、作業者が長袖の衣服にゴム手袋を装着した状態で、ゴム手袋の上からガスバックの挿入口を取り付けることが考えられる。しかし、上記特許文献1に記載のゴム手袋では、ゴム手袋の上からガスバックの挿入口を取り付ける場合については考慮されていない。例えば、上記ゴム手袋の上からガスバックの挿入口を取り付けると、ゴム手袋のしわを通じてガスバック中のガスが大気中に放散される可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ガスバックを取り付けた状態でガスバック中のガスが大気中に放散されることを防止又は抑制することができるガスバック用手袋及びガスバック取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に記載のガスバック用手袋は、ガス導管に対する作業を行う際に作業者の手及び腕と前記ガス導管の作業領域とに被せるガスバックが取り付けられるガスバック用手袋であって、前記作業者の手指を覆い、かつガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成された手指覆い部であって、前記ガス導管に対する作業を行うために前記手指を動作させることが可能な軟らかい材料で構成された前記手指覆い部と、前記手指覆い部に繋がるように設けられ、前記作業者の腕を覆い、かつガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成された腕覆い部であって、前記手指覆い部よりも硬い構成とされると共に外周面が滑らかな形状とされた筒状部を備え、前記外周面に前記ガスバックの挿入口が取り付けられる前記腕覆い部と、を有する。
【0008】
第1態様に記載のガスバック用手袋によれば、作業者の手指を覆う手指覆い部は、ガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成されると共に、ガス導管に対する作業を行うために手指を動作させることが可能な軟らかい材料で構成されている。また、作業者の腕を覆う腕覆い部は、手指覆い部に繋がるように設けられており、ガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成されている。腕覆い部は、手指覆い部よりも硬い構成とされると共に外周面が滑らかな形状とされた筒状部を備えている。この筒状部の外周面にガスバックの挿入口が取り付けられることで、筒状部の外周面とガスバックの挿入口との間に隙間ができにくく、筒状部の外周面とガスバックの挿入口との気密性が保持される。さらに、手指覆い部が手指を動作させることが可能な柔らかい材料で構成されていることで、ガス導管に対する作業を行うことができる。このため、ガスバック用手袋では、ガスバックを取り付けた状態でガス導管に対する作業を行う際に、ガスバック中のガスが大気中に放散されることを防止又は抑制することができる。さらに、ガスバック用手袋は、作業者が長袖の衣服を着用した状態で装着することが可能である。このため、ガスバック用手袋にガスバックを取り付けることで、ガスバックを使用した作業を行うことができる。
【0009】
第2態様に記載のガスバック用手袋は、第1態様に記載のガスバック用手袋において、前記腕覆い部は、前記手指覆い部と一体的に設けられ、又は前記手指覆い部と別体とされ前記手指覆い部に気密が保たれる状態で接合されている。
【0010】
第2態様に記載のガスバック用手袋によれば、腕覆い部は、手指覆い部と一体的に設けられ、又は手指覆い部と別体とされ手指覆い部に気密が保たれる状態で接合されているので、手指覆い部、腕覆い部、又は手指覆い部と腕覆い部の接合部分からガスが漏れるのを抑制することができる。
【0011】
第3態様に記載のガスバック用手袋は、第1態様又は第2態様に記載のガスバック用手袋において、前記筒状部は、前記ガスバックの挿入口の取付荷重による直径の変化率が5%以下である。
【0012】
第3態様に記載のガスバック用手袋によれば、筒状部は、ガスバックの挿入口の取付荷重による直径の変化率が5%以下であるので、筒状部の外周面とガスバックの挿入口との間に隙間ができにくくなる。このため、筒状部の外周面とガスバックの挿入口との気密性を保持することができる。
【0013】
第4態様に記載のガスバック用手袋は、第1態様から第3態様までのいずれか1つの態様に記載のガスバック用手袋において、前記手指覆い部の少なくとも一部は、ゴム製とされており、前記筒状部の少なくとも一部は、樹脂製又は金属製とされている。
【0014】
第4態様に記載のガスバック用手袋によれば、手指覆い部の少なくとも一部は、ゴム製とされているので、ガスを通しにくい構成とすることが可能であると共に、手指を動作させることができる。また、筒状部の少なくとも一部は、樹脂製又は金属製とされているので、ガスを通しにくい構成とすることが可能であると共に、筒状部の断面形状が変形しにくく、筒状部の外周面とガスバックの挿入口との気密性を保持することができる。
【0015】
第5態様に記載のガスバック用手袋は、第1態様から第4態様までのいずれか1つの態様に記載のガスバック用手袋において、前記筒状部における前記手指覆い部と反対側の端部は、前記外周面から半径方向外側に向かって断面形状が拡大された拡大部を有する。
【0016】
第5態様に記載のガスバック用手袋によれば、筒状部における手指覆い部と反対側の端部は、外周面から半径方向外側に向かって断面形状が拡大された拡大部を有している。これにより、例えば、筒状部における拡大部よりも手指覆い部側の外周面にガスバックの挿入口が取り付けられる。このため、ガス導管に対する作業を行う際に、拡大部がガスバックの挿入口に引っ掛かることで、ガスバック用手袋がガスバックの挿入口の中にずれ落ちることを抑制することができる。
【0017】
第6態様に記載のガスバック取付構造は、第1態様から第5態様までのいずれか1つの態様に記載のガスバック用手袋を備え、前記筒状部の外周面に前記ガスバックの挿入口が取り付けられている。
【0018】
第6態様に記載のガスバック取付構造によれば、上記ガスバック用手袋を備えており、筒状部の外周面にガスバックの挿入口が取り付けられている。このため、ガス導管に対する作業を行う際に、ガスバック中のガスが大気中に放散されることを防止又は抑制することができる。また、ガスバック取付構造では、作業者が長袖の衣服を着用した状態でガスバック用手袋を装着し、ガスバックを使用した作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の技術によれば、ガスバックを取り付けた状態でガスバック中のガスが大気中に放散されることを防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るガスバック用手袋を作業者が装着した状態を示す図である。
図2】第1実施形態に係るガスバック用手袋を示す外観図である。
図3】(A)は、第1実施形態に係るガスバック用手袋を示す断面図であり、(B)は、図3(A)中の3B-3B線に沿った断面図である。
図4】ガスバック用手袋にガスバックの挿入口を取り付けた状態でガス導管に対する作業を行う例を示す図である。
図5】ガスバック用手袋の腕覆い部にガスバックの挿入口を取り付けた状態を示す拡大断面図である。
図6】第2実施形態に係るガスバック用手袋を示す断面図である。
図7】比較例のガスバック用手袋を作業者が装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1図5を用いて、第1実施形態に係るガスバック用手袋について説明する。
【0023】
図1には、第1実施形態に係るガスバック用手袋10を作業者Pが装着した状態が示されている。図1に示されるように、ガスバック用手袋10は、作業者Pの手指を覆う手指覆い部12と、手指覆い部12に繋がるように設けられると共に作業者Pの腕を覆う腕覆い部14と、を備えている。作業者Pは、長袖の袖部100Aを備えた作業着100を着用しており、ガスバック用手袋10は、作業者Pの袖部100Aの上から装着されている。このため、腕覆い部14の少なくとも一部は、袖部100Aの先端側と重なっている。
【0024】
本実施形態では、作業者Pは、両手にガスバック用手袋10を装着しているが、片手(例えば、利き腕である右手)にガスバック用手袋10を装着してもよい。両手のガスバック用手袋10は、左右対称であるので、本実施形態では、右手側のガスバック用手袋10について説明する。
【0025】
図2には、ガスバック用手袋10の外観図が示されており、図3には、ガスバック用手袋10の断面図が示されている。図2及び図3に示されるように、手指覆い部12は、作業者Pの掌の表裏を覆う本体部12Aと、本体部12Aの一方側からそれぞれ延びた5本の指部12Bと、本体部12Aの他方側(指部12Bと反対側)から筒状に延びた手首部12Cと、を備えている。
【0026】
手指覆い部12は、ガス導管110(図4参照)に対する作業を行うために作業者Pの手指を動作させることが可能な軟らかい材料で構成されている。手指覆い部12は、変形しやすい薄い部材で構成されていることが好ましい。また、手指覆い部12は、ガス(例えば、メタンを主成分とする都市ガスなど)を通さない材料又はガスを通しにくい材料で構成されている。例えば、手指覆い部12のメタンの透過率(cm/m・24hr・atm,1mm)は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。ここで、気体の透過率は、一定圧力下での材料部品の単位厚さ当たり、単位面積当たり、及び単位時間当たりの気体の体積で示す。メタンの透過率は、温度25℃、65%RHでメタンを100とした場合の値である。
【0027】
手指覆い部12は、例えば、ゴム製とされている。手指覆い部12がゴム製とされることで、面方向に伸縮が可能であり、作業者Pが手指を動作しやすくなる。また、手指覆い部12がゴム製とされることで、ガスを通しにくくなる。
【0028】
ゴムの例としては、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エピクロロヒドリンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、臭素化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0029】
腕覆い部14は、作業者Pの腕を覆う筒状部14Aを備えている。筒状部14Aは、略円筒状の筒部本体16と、手指覆い部12の手首部12Cから連続して筒状に延びると共に筒部本体16の外周面に被覆された被覆部18と、を備えている。すなわち、被覆部18は、手指覆い部12を構成する部材が延長されて筒部本体16の外周面に被覆されている。被覆部18は、筒部本体16と図示しない接着剤等により接合されている。
【0030】
筒部本体16は、軸方向に沿って貫通する貫通部22を備えている。筒部本体16は、一例として、作業者Pの手首付近から肘部の下側付近までを覆っている。筒部本体16は、手指覆い部12よりも硬い部材で構成されている。筒部本体16の厚みは、手指覆い部12の厚みよりも厚い。筒部本体16の長手方向における手指覆い部12と反対側の端部には、筒部本体16の外周面から半径方向外側に向かって断面形状が拡大された拡大部17が設けられている。一例として、拡大部17は、筒部本体16の外周面から半径方向外側に突出する突出部とされている。被覆部18は、一例として、筒部本体16の外周面における拡大部17に近接する位置まで設けられており、拡大部17の表面には、被覆部18は設けられていない(図3参照)。
【0031】
筒状部14Aは、筒部本体16の外周面に被覆部18が被覆されていることで、手指覆い部12よりも硬い構成とされている。また、筒状部14Aは、略円筒状の筒部本体16の外周面に被覆部18が被覆されていることで、被覆部18の外周面が滑らかな形状とされている。ここで、滑らかな形状とは、筒状部14A(すなわち、被覆部18)の外周面に凹凸がほとんど無い形状をいう。例えば、筒部本体16の表面の十点平均表面粗さRzは、8.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることがさらに好ましい。ここで、筒部本体16の表面の十点平均表面粗さRzとは、JIS B0601(1994)に規定された表面粗さである。十点平均表面粗さRzは、23℃・55RH%の環境下において、接触式表面粗さ測定装置(サーフコム570A、東京精密社製)を用いて測定された値である。
【0032】
筒部本体16及び被覆部18は、ガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成されている。例えば、筒部本体16及び被覆部18のメタンの透過率(cm/m・24hr・atm,1mm)は、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。被覆部18は、例えば、上記のようにゴム製とされている。筒部本体16は、例えば、樹脂製又は金属製とされている。
【0033】
筒部本体16が樹脂製又は金属製とされることで、筒状部14Aが手指覆い部12よりも硬くなると共に、ガスを通しにくくなる。本実施形態では、筒部本体16を備えた筒状部14Aは、半径方向に沿った断面形状が全く又はほとんど変化しないように硬い構成とされている。例えば、筒状部14Aは、ガスバック150の挿入口156(図4参照)の取付荷重による直径の変化率が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。ここで、筒状部14Aの直径の変化率とは、ガスバック150の挿入口156を取り付けない場合の筒状部14Aの直径に対する、当該筒状部14Aの直径とガスバック150の挿入口156を取り付けた後の筒状部14Aの直径との差の比率をいう。
【0034】
筒部本体16を構成する樹脂の例として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリイミド、ポリアミド、ナイロン、セルローストリアセテートなどが挙げられる。また、筒部本体16を構成する金属の例として、例えばアルミニウム合金、亜鉛、鉄、銅、錫、チタン、ステンレスなどが挙げられる。
【0035】
腕覆い部14は、手指覆い部12と一体的に設けられている。より具体的には、腕覆い部14を構成する筒部本体16と手指覆い部12とが別体とされており、手指覆い部12から連続して筒状に延びた被覆部18が筒部本体16に気密が保たれる状態で接合されている。
【0036】
図4には、作業者Pが装着したガスバック用手袋10の上から、ガスバック150を取り付けたガスバック取付構造Sが示されている。図4に示されるように、ガスバック150は、ガス導管110に対する作業を行う際に、作業者Pの手及び腕とガス導管110に対する作業を行う作業領域全体に被せることで、ガスバック150内のガスが外部に放散されない(すなわち、漏れ出さない)ようにするものである。ガス導管110に対する作業としては、例えば、ガス導管110に管を取り付けたり、継手を替えたり、ガス導管110に設けられた栓の開閉作業を行ったりする作業などが挙げられる。図4には、ガス導管110に接続部114を介してサービスチーズ112を取り付ける例が示されている。図4に示す例では、作業者Pの手及び腕とガス導管110に取り付けるサービスチーズ112を含んだ作業領域全体にガスバック150を被せている。サービスチーズ112は、開口部が3箇所にあるT字状のねじ込み継手であり、サービスチーズ112の下部の第1の開口部が接続部114を介してガス導管110に取り付けられる。また、図示を省略するが、サービスチーズ112の上部の第2の開口部に他の管が接続され、サービスチーズ112の上部の第3の開口部に栓が取り付けられる。
【0037】
ガスバック150は、長手方向に延びた筒部150Aと、筒部150Aの長手方向の一端側に設けられたガスバック用手袋10への取付部150Bと、筒部150Aの長手方向の他端側に設けられたガス導管110の接続部114への取付部150Cと、備えている。ガスバック150は、例えば、透明なシート状の樹脂部材で構成されている。
【0038】
筒部150Aは、長手方向に延びた略円筒状の部材である。筒部150Aは、作業者Pが装着したガスバック用手袋10の腕覆い部14の上部付近(手指覆い部12と反対側の端部付近)からサービスチーズ112の取り付けを行う作業位置までの全体を覆う形状とされている。
【0039】
図5に示されるように、取付部150Bは、筒部150Aから半径方向内側に延びた側面部152と、側面部152の半径方向内側端部に設けられた環状の伸縮部154と、伸縮部154の中心に設けられた挿入口156と、を備えている。伸縮部154は、伸縮可能な材料で構成されており、例えば、ゴム製とされている。
【0040】
ガスバック150の取付部150Bは、ガスバック用手袋10の筒状部14Aの上部(手指覆い部12と反対側の端部側)の外周面に取り付けられている。取付部150Bの伸縮部154が伸びた状態で、ガスバック用手袋10の筒状部14Aに取り付けられることで、取付部150Bの挿入口156が筒状部14Aの外周面に密着されている。本実施形態では、筒状部14Aは、筒部本体16と、筒部本体16の外周面に被覆された被覆部18とを備えており、被覆部18がゴム製とされている。このため、伸縮部154の圧縮力により挿入口156が被覆部18に食い込み、ガスバック150の挿入口156と筒状部14Aの外周面との密着性が保持されるようになっている。
【0041】
また、本実施形態では、筒状部14Aにおける拡大部17よりも手指覆い部12側の外周面にガスバック150の挿入口156が取り付けられている。
【0042】
図4に示されるように、ガスバック150の取付部150Cは、ガス導管110とサービスチーズ112とを接続する接続部114に取り付けられる。取付部150Cは、筒部150Aから半径方向内側に延びた側面部152と、側面部152の半径方向内側端部に設けられた環状の装着部170と、を備えている。装着部170は、例えば、伸縮可能な部材で構成されており、例えば、ゴム製とされている。装着部170は、中心部に取付口を備えている。装着部170は、接続部114を囲むように取り付けられており、接続部114に密着している。なお、装着部170の構成は変更可能である。
【0043】
本実施形態では、例えば、ガス導管110にサービスチーズ112を取り付ける際にガス導管110から漏れ出したガスによってガスバック150の内圧が上昇し、ガスバック150が膨らむようになっている。
【0044】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
本実施形態のガスバック用手袋10では、作業者Pの手指を覆う手指覆い部12は、ガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成されると共に、ガス導管110に対する作業を行うために手指を動作させることが可能な軟らかい材料で構成されている。また、作業者Pの手指を覆う腕覆い部14は、手指覆い部12に繋がるように設けられており、ガスを通さない材料又は通しにくい材料で構成されている。腕覆い部14は、筒状部14Aを備えている。筒状部14Aは、筒部本体16を備えることで、手指覆い部12よりも硬い構成とされると共に外周面が滑らかな形状とされている。
【0046】
筒状部14Aの外周面にガスバック150の挿入口156が取り付けられることで、筒状部14Aの外周面とガスバック150の挿入口156との間に隙間ができにくく、筒状部14Aの外周面とガスバック150の挿入口156との気密性が保持される。さらに、手指覆い部12が手指を動作させることが可能な柔らかい材料で構成されていることで、ガス導管110に対する作業(例えば、ガス導管110にサービスチーズ112を取り付ける作業)を行うことができる。このため、ガスバック用手袋10では、ガスバック150を取り付けた状態でガス導管110に対する作業(例えば、サービスチーズ112の取付作業)を行う際に、ガス導管110からのガスによりガスバック150の内圧が高まっても、ガスバック150中のガスが大気中に放散されることを防止又は抑制することができる。また、作業者Pは、長袖の袖部100Aを備えた作業着100を着用した状態で、ガスバック用手袋10を装着することが可能である。このため、ガスバック用手袋10の腕覆い部14にガスバック150を取り付けることで、ガスバック150を使用した作業を行うことができる。
【0047】
また、ガスバック用手袋10では、腕覆い部14は、手指覆い部12と一体的に設けられる。より具体的には、筒部本体16が手指覆い部12と別体とされており、手指覆い部12から連続して延びた被覆部18が筒部本体16に気密が保たれる状態で接合されている。このため、手指覆い部12、腕覆い部14、又は筒部本体16と被覆部18との接合部分からガスが漏れるのを抑制することができる。
【0048】
また、ガスバック用手袋10では、筒状部14Aは、ガスバック150の挿入口156の取付荷重による直径の変化率が5%以下である。このため、筒状部14Aの外周面とガスバック150の挿入口156との間に隙間がより確実にできにくくなり、筒状部14Aの外周面とガスバック150の挿入口156との気密性を保持することができる。
【0049】
また、ガスバック用手袋10では、手指覆い部12は、ゴム製とされており、筒状部14Aを構成する筒部本体16は、樹脂製又は金属製とされている。このため、手指覆い部12は、ガスを通しにくい構成とすることが可能であると共に、手指を動作させてガス導管110に対する作業(例えば、サービスチーズ112の取付作業)を行うことができる。また、筒状部14Aの一部を構成する筒部本体16は、樹脂製又は金属製とされているので、ガスを通しにくい構成とすることが可能であると共に、筒状部14Aの断面形状が変形しにくい。このため、筒状部14Aの外周面とガスバック150の挿入口156との気密性を保持することができる。
【0050】
また、ガスバック用手袋10では、筒状部14Aにおける手指覆い部12と反対側の端部に、筒状部14Aの中間部側の外周面から半径方向外側に向かって断面形状が拡大された拡大部17が設けられている。そして、筒状部14Aにおける拡大部17よりも手指覆い部12側の外周面にガスバック150の挿入口156が取り付けられている。このため、ガス導管110に対する作業(例えば、サービスチーズ112の取付作業)を行う際に、拡大部17がガスバック150の挿入口156に引っ掛かることで、ガスバック用手袋10がガスバック150の挿入口156の中にずれ落ちることを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態のガスバック取付構造Sは、ガスバック用手袋10を備え、筒状部14Aの外周面にガスバック150の挿入口156が取り付けられている。このため、ガス導管110に対する作業(例えば、サービスチーズ112の取付作業)を行う際に、ガスバック150中のガスが大気中に放散されることを防止又は抑制することができる。また、ガスバック取付構造Sでは、作業者Pが長袖の袖部100Aを備えた作業着100を着用した状態でガスバック用手袋10を装着し、ガスバック150を使用した作業を行うことができる。このため、冬場のガスバック150を使用した作業でも、寒さを軽減することができる。
【0052】
ここで、図7を用いて、比較例のガスバック用手袋200について説明する。
【0053】
図7に示されるように、作業者Pは、長袖の袖部100Aを備えた作業着100を着用しており、袖部100Aの上からガスバック用手袋200を装着している。ガスバック用手袋200は、作業者Pの手指を覆う手指覆い部202と、手指覆い部202から連続して延びて作業者Pの腕を覆う延長袖部204と、を備えている。ガスバック用手袋200では、手指覆い部202と延長袖部204とが一体で形成されており、手指覆い部202及び延長袖部204の厚さはほぼ等しい。手指覆い部202及び延長袖部204は、ガスを通さない材料又はガスを通しにくい材料とされており、例えば、ゴム製とされている。手指覆い部202及び延長袖部204は、軟らかいため、作業者Pは手指を動作させてガス導管110に対するサービスチーズ112の取付作業などを行うことが可能である。
【0054】
ガスバック用手袋200では、作業者Pの袖部100Aの上に延長袖部204が重なっており、延長袖部204にはしわが入りやすい。このため、ガスバック用手袋200の延長袖部204の上からガスバック150の挿入口156(図4参照)を取り付けると、延長袖部204のしわを通じてガスバック150中のガスが大気中に放散される場合がある。
【0055】
これに対して、本実施形態のガスバック用手袋10では、腕覆い部14の筒状部14Aは、筒部本体16を備えることで、手指覆い部12よりも硬い構成とされると共に外周面が滑らかな形状とされている。このため、筒状部14Aの外周面とガスバック150の挿入口156との気密性が保持されるので、ガスバック150中のガスが大気中に放散されることを防止又は抑制することができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
次に、図6を用いて、第2実施形態のガスバック用手袋50について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0057】
図6に示されるように、ガスバック用手袋50は、作業者Pの手指を覆う手指覆い部52と、手指覆い部52に繋がるように設けられると共に作業者Pの腕を覆う腕覆い部54と、を備えている。手指覆い部52は、本体部12Aと、5本の指部12Bと、手首部12Cと、を備えている。手指覆い部52は、手首部12Cから腕覆い部54の内側に筒状に延びた延長筒部52Aを備えている。手指覆い部52は、第1実施形態の手指覆い部12と同様にゴム製とされている。
【0058】
腕覆い部54は、作業者Pの腕を覆う筒状部54Aを備えている。筒状部54Aは、筒部本体16を備えており、筒部本体16の外周面が露出している。手指覆い部52の延長筒部52Aは、筒部本体16の内周面の内側に重なるように配置されており、延長筒部52Aと筒部本体16とは接着剤56により接合されている。本実施形態では、腕覆い部54は、手指覆い部52と別体とされ、手指覆い部52に気密が保たれる状態で接合されている。筒状部54Aは、筒部本体16の外周面が露出していることで、手指覆い部52よりも硬い構成とされると共に外周面が滑らかな形状とされている。
【0059】
図示を省略するが、作業者Pがガスバック用手袋50を装着した状態で、筒状部54Aを構成する筒部本体16の外周面にガスバック150の挿入口156(図4参照)が取り付けられる。
【0060】
本実施形態のガスバック用手袋50では、第1実施形態のガスバック用手袋10と同様の構成により、同様の効果を得ることができる。
【0061】
さらに、ガスバック用手袋50では、腕覆い部54は、手指覆い部52と別体とされ、手指覆い部52に気密が保たれる状態で接合されている。このため、手指覆い部52、腕覆い部54、又は手指覆い部52の延長筒部52Aと腕覆い部54の筒部本体16との接合部分からガスが漏れるのを抑制することができる。
【0062】
なお、第1実施形態のガスバック用手袋10では、筒部本体16の外周面における拡大部17以外の部位に手指覆い部12から延長された被覆部18が設けられているが、本開示の技術は、この構成に限定されるものではない。例えば、手指覆い部から延長された延長筒部が筒部本体の一部(例えば、手指覆い部側の端部)の外周面のみと重なるように配置され、延長筒部と筒部本体とが接着剤等により接合される構成でもよい。
【0063】
また、第2実施形態のガスバック用手袋50では、筒部本体16の内周面の一部に手指覆い部52から延長された延長筒部52Aが配置されているが、本開示の技術は、この構成に限定されるものではない。例えば、手指覆い部から延長された延長筒部が筒部本体の内周面のほぼ全体と重なるように配置され、延長筒部と筒部本体とが接着剤等により接合される構成でもよい。
【0064】
また、第1及び第2実施形態のガスバック用手袋10、50は、各構成部材の形状や材料を変更してもよい。第1及び第2実施形態では、手指覆い部12、52は、ゴム製とされているが、これに限定されず、例えば、樹脂製などでもよい。手指覆い部を薄い樹脂製の部材とすることで、作業者の手指を動作させることが可能である。また、手指覆い部の一部をゴム製とし、他の部分をゴム以外の部材としてもよい。
【0065】
また、第1及び第2実施形態のガスバック用手袋10、50は、腕覆い部14、54における手指覆い部12と反対側の端部に、外周面から半径方向外側に向かって断面形状が拡大された拡大部17が設けられているが、拡大部17の形状は変更可能である。拡大部は、外周面から半径方向外側に向かって断面形状が拡大された形状であれば、例えば、円錐状に広がる傾斜面を備えた形状、又は外周面から鋭角に屈曲された形状などでもよい。また、第1及び第2実施形態では、拡大部17が設けられた部位における筒部本体16の内径は等しいが、例えば、拡大部の外径が大きくなる側に向かって筒部本体の内径が大きくなる構成でもよい。
【0066】
また、第1及び第2実施形態のガスバック用手袋10、50は、作業者Pの腕の肘部よりも先端側を覆う腕覆い部14、54を備えていたが、本開示の技術は、この構成に限定されるものではない。例えば、腕覆い部の長手方向の中間部に肘部の動作に合わせて変形可能な変形部を設け、腕の肘部よりも上側を覆う構成としてもよい。
【0067】
また、第1及び第2実施形態では、ガス導管110に対する作業として、サービスチーズ112の取付作業を行う例が記載されていたが、本開示の技術は、この例に限定されるものではない。例えば、ガス導管110に対する他の作業(例えば、栓の開閉作業、継手を替えたりする作業など)を行う際にも、作業者の手及び腕を含む作業領域全体にガスバックを被せることで、他の作業を行うことができる。また、ガスバック150の構成も第1及び第2実施形態の構成に限定されるものではない。ガス導管に対する作業内容に応じて、ガスバックの構成も変更可能である。
【0068】
なお、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
10…ガスバック用手袋、12…手指覆い部、14…腕覆い部、14A…筒状部、17…拡大部、50…ガスバック用手袋、52…手指覆い部、54…腕覆い部、54A…筒状部、110…ガス導管、112…サービスチーズ(ガス導管に対する作業の箇所)、150…ガスバック、156…挿入口、P…作業者、S…ガスバック取付構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7