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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/07 20060101AFI20240809BHJP
   H10N 52/00 20230101ALI20240809BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G01R33/07
H10N52/00 A
H10N52/00 U
H10N52/00 P
H01L29/82 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021006274
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2021148773
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020043602
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】挽地 友生
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164117(JP,A)
【文献】特開2017-125783(JP,A)
【文献】特開2013-253886(JP,A)
【文献】特開2006-133240(JP,A)
【文献】特開2010-54301(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168353(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0317622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00-33/26
H10N 52/00
H01L 29/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設けられた磁気スイッチを備える半導体装置であって、
前記磁気スイッチは、第1の直線の上に配置される第1の電極及び第2の電極と、前記第1の直線と直交する第2の直線の上に配置される第3の電極及び第4の電極とを含むホール素子と、
複数のスイッチを有し、前記ホール素子の駆動電流の方向を、前記第1の電極から前記第2の電極へ向かう第1の方向、前記第2の電極から前記第1の電極へ向かう第2の方向、前記第3の電極から前記第4の電極へ向かう第3の方向、及び前記第4の電極から前記第3の電極へ向かう第4の方向の4方向から1方向を選択可能に構成される第1のスイッチ回路と、
前記ホール素子から伝送される信号をサンプリングする第1の動作と、前記ホール素子から伝送される信号と前記第1の動作によってサンプリングされた信号との差分信号の値と基準値とを比較した結果に基づく結果信号を出力する第2の動作と、を交互に行う比較回路と、
前記比較回路から出力される前記結果信号を保持し、保持した信号をラッチ出力信号として出力するラッチ回路と、
前記第1の動作が行われる第1の期間では前記第3の方向に前記駆動電流を流し、前記第2の動作が行われる第2の期間では前記第1の方向に前記駆動電流を流すように、前記スイッチの開閉状態を制御する第1のモードと、前記第1の期間では前記第2の方向に前記駆動電流を流し、前記第2の期間では前記第4の方向に前記駆動電流を流すように、前記スイッチの開閉状態を制御する第2のモードとの一方のモードを、前記ラッチ出力信号に基づいて選択可能に構成される制御回路と、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記ラッチ出力信号が入力される第1の入力端子と、
前記第1の期間と前記第2の期間との合計期間を1周期とする基準クロック信号が入力される第2の入力端子と、
前記第1の入力端子から入力される前記ラッチ出力信号に基づいて、前記第2の入力端子から入力される前記基準クロック信号に同期する4個の制御信号を生成する制御信号生成回路と、
前記4個の制御信号のうち、1個目の制御信号を出力する第1の制御信号出力端子と、2個目の制御信号を出力する第2の制御信号出力端子と、3個目の制御信号を出力する第3の制御信号出力端子と、4個目の制御信号を出力する第4の制御信号出力端子と、を有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記ラッチ出力信号が入力される第1の入力端子と、
前記第1の期間と前記第2の期間との合計期間を1周期とする基準クロック信号が入力される第2の入力端子と、
前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子と接続される論理演算素子を含み、前記第1の入力端子から入力される前記ラッチ出力信号に基づいて、前記第2の入力端子から入力される前記基準クロック信号に同期する、4個の制御信号を得る論理回路と、
前記4個の制御信号のうち、1個目の制御信号を出力する第1の制御信号出力端子と、2個目の制御信号を出力する第2の制御信号出力端子と、3個目の制御信号を出力する第3の制御信号出力端子と、4個目の制御信号を出力する第4の制御信号出力端子と、を有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記論理回路は、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子と前記論理演算素子との間に設けられる第2のスイッチ回路を有し、
前記第2のスイッチ回路は、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子と前記論理演算素子との間を、相互に切替可能な第1の経路及び第1の経路とは異なる第2の経路を含んで構成される請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第1の経路を経由して入力される前記ラッチ出力信号に基づいて、前記第2の入力端子から入力される前記基準クロック信号に同期する前記4個の制御信号として、第1の制御信号、第2の制御信号、第3の制御信号及び第4の制御信号を生成し、前記第1の制御信号を前記第1の制御信号出力端子から出力し、前記第2の制御信号を前記第2の制御信号出力端子から出力し、前記第3の制御信号を前記第3の制御信号出力端子から出力し、前記第4の制御信号を前記第4の制御信号出力端子から出力するように構成され、
前記第2の経路を経由して入力される前記ラッチ出力信号に基づいて、前記第2の入力端子から入力される前記基準クロック信号に同期する前記4個の制御信号として、第5の制御信号、第6の制御信号、第7の制御信号及び第8の制御信号を生成し、前記第5の制御信号を前記第1の制御信号出力端子から出力し、前記第6の制御信号を前記第2の制御信号出力端子から出力し、前記第7の制御信号を前記第3の制御信号出力端子から出力し、前記第8の制御信号を前記第4の制御信号出力端子から出力するように構成される請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子と、前記制御信号生成回路と、前記第1から第4の制御信号出力端子と、を有し、前記ラッチ出力信号に基づいて、前記第1のモード及び前記第2のモードの一方に対する他方のモードを選択可能に構成される第2の制御回路と、
前記ラッチ出力信号が入力される端子及び前記4個の制御信号を出力する端子を、前記制御回路の前記第1の入力端子及び前記第1から第4の制御信号出力端子とするか、前記第2の制御回路の前記第1の入力端子及び前記第1から第4の制御信号出力端子とするかを切り替え可能に構成された制御回路選択スイッチと、をさらに備える請求項2記載の半導体装置。
【請求項7】
第1の電源に接続される第1の駆動端子と、
第2の電源に接続される第2の駆動端子と、をさらに備え、
前記ホール素子は、前記複数のスイッチを介して、前記第1の駆動端子及び前記第2の駆動端子とそれぞれ接続され、
前記複数のスイッチは、
前記第1の制御信号出力端子から出力される制御信号が入力される制御端子を含み、前記第1の駆動端子と前記第1の電極との間の経路を開閉可能な第1のスイッチと、
前記第1の制御信号出力端子から出力される制御信号が入力される制御端子を含み、前記第2の電極と前記第2の駆動端子との間の経路を開閉可能な第2のスイッチと、
前記第2の制御信号出力端子から出力される制御信号が入力される制御端子を含み、前記第1の駆動端子と前記第3の電極との間の経路を開閉可能な第3のスイッチと、
前記第2の制御信号出力端子から出力される制御信号が入力される制御端子を含み、前記第4の電極と前記第2の駆動端子との間の経路を開閉可能な第4のスイッチと、
前記第3の制御信号出力端子から出力される制御信号が入力される制御端子を含み、前記第1の駆動端子と前記第2の電極との間の経路を開閉可能な第5のスイッチと、
前記第3の制御信号出力端子から出力される制御信号が入力される制御端子を含み、前記第1の電極と前記第2の駆動端子との間の経路を開閉可能な第6のスイッチと、
前記第4の制御信号出力端子から出力される制御信号が入力される制御端子を含み、前記第1の駆動端子と前記第4の電極との間の経路を開閉可能な第7のスイッチと、
前記第4の制御信号出力端子から出力される制御信号が入力される制御端子を含み、前記第3の電極と前記第2の駆動端子との間の経路を開閉可能な第8のスイッチと、を有する請求項2から6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記比較回路は、第1の電圧と、前記第1の電圧と電圧が異なる第2の電圧とから選択される何れか一方の電圧を前記基準値として出力する出力端を含む基準電圧回路と、
前記ホール素子から伝送される信号が入力される第1の入力端と、前記第1の期間と前記第2の期間との合計期間を1周期とする基準クロック信号が入力される第2の入力端と、前記第1の期間でサンプリングした信号と前記第2の期間に前記ホール素子から伝送される信号との差分信号の値を出力する出力端とを含むサンプルアンドホールドアンプと、
前記サンプルアンドホールドアンプの出力端と接続される第1の入力端と、前記基準電圧回路の出力端と接続される第2の入力端と、前記第1の入力端から入力される信号の値と、前記第2の入力端から入力される前記基準値とを比較した結果に基づく結果信号を出力する出力端とを含むコンパレータと、を有する請求項1から7の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
第1の入力端及び第2の入力端と、前記第1の入力端と開閉可能な第1の経路を介して接続されると共に前記第2の入力端と開閉可能な第2の経路を介して接続される第1の出力端と、前記第2の入力端と開閉可能な第3の経路を介して接続されると共に前記第2の入力端と開閉可能な第4の経路を介して接続される第2の出力端と、前記ラッチ出力信号が入力される制御端子と、を有し、前記制御端子から入力される前記ラッチ出力信号に基づいて、前記第1の経路及び前記第4の経路を閉じ、前記第2の経路及び前記第3の経路を開いた第1の接続状態と、前記第1の経路及び前記第4の経路を開き、前記第2の経路及び前記第3の経路を閉じた第2の接続状態と、に切り替え可能に構成されるチョッパースイッチをさらに備え、
前記チョッパースイッチは、前記比較回路よりも前段に設けられ、
前記比較回路は、
所定の基準電圧を出力する基準電圧回路と、前記ホール素子から伝送される信号が入力される第1の入力端と、前記第1の期間と前記第2の期間との合計期間を1周期とする基準クロック信号が入力される第2の入力端と、前記第1の期間でサンプリングした信号と前記第2の期間に前記ホール素子から伝送される信号との差分信号の値を出力する出力端と、を含むサンプルアンドホールドアンプと、
前記サンプルアンドホールドアンプの出力端と接続される第1の入力端と、前記基準電圧回路の出力端と接続される第2の入力端と、前記第1の入力端から入力される信号の値と、前記第2の入力端から入力される前記基準値とを比較した結果に基づく結果信号を出力する出力端とを含むコンパレータと、を有する請求項1から7の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ホール素子は、前記半導体基板に対し垂直な磁束密度に応じた出力を得る水平ホール素子である請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ホール素子は、前記半導体基板に対し平行な磁束密度に応じた出力を得る垂直ホール素子であることを特徴する請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ホール素子は、複数のホール素子セルを有し、前記複数のホール素子セルが並列接続されて構成される請求項1から11の何れか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール素子は、磁気センサとして非接触での位置や角度の検出が可能であることから様々な用途に用いられている。ホール素子の用途の一例としては、磁気スイッチがある。磁気スイッチは、例えば、ホール素子と、増幅器や比較器を含む周辺回路とを有し、ホール素子及び周辺回路が半導体チップの上に集積化されて形成されている。磁気スイッチは、磁気の検出方法に着目した分類として、S極とN極との両極の磁界を検出可能な両極磁界検出型や時間経過と共にS極とN極とが交互に変わる交番磁界を検出可能な交番磁界検出型があることが知られている。
【0003】
交番検出型の磁気スイッチや両極検出型の磁気スイッチでは、S極側閾値とN極側閾値との間の対称性が重要である。一方、ホール素子そのもの並びにホール素子の後段に配設される増幅器及び比較器が持つオフセット電圧の影響によって非対称性が発生する。
【0004】
磁気スイッチには、ゼロ磁場印加時に内在及び外乱ノイズによる出力信号のチャタリングを防止する観点から、ヒステリシス幅が設定されることがある。ヒステリシス幅はS極側閾値である動作点とN極側閾値である復帰点との差分で定義される。動作点と復帰点との平均値で定義されるのが磁気オフセットである。磁気オフセットは、磁極間における感度の対称性を表す尺度として用いられ、理想的にはゼロである。
【0005】
動作点や復帰点にズレが生じている場合、交番磁界検出の用途では、出力パルス信号のデューティ比や位相のズレが拡大する。出力パルス信号のデューティ比や位相のズレは、交番検出型磁気スイッチが主に用いられるBL(ブラシレス)DCモーターにおいて、回転数ゆらぎ及び振動の原因となるため、好ましくない。
【0006】
また、両極検出型磁気スイッチでは、組み合わせて使用する磁石の極性管理がなされていない場合、磁性体検出機構の検出距離バラツキへとつながり、オフセット電圧が生じ得る。オフセット電圧を除去する手法の一つとしてスピニングカレント法が知られている。スピニングカレント法を用いてホール素子と後段の増幅器のオフセット電圧を除去しつつ、さらに比較器のオフセット電圧に起因する非対称性を除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載される技術は、いわゆる2方向駆動のスピニングカレント法を用いる技術である。スピニングカレント法には、上述した2方向駆動のスピニングカレント法の他に4方向駆動のスピニングカレント法がある。2方向駆動のスピニングカレント法と4方向駆動のスピニングカレント法には、それぞれ一長一短がある。2方向駆動のスピニングカレント法は、処理時間の高速(短時間)化の観点において、4方向駆動のスピニングカレント法よりも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-2851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載される技術のような従来の2方向駆動のスピニングカレント法を用いた技術は、磁気スイッチにおける磁電変換特性の対称性の観点において、4方向駆動のスピニングカレント法を用いた技術よりも劣る。具体的に説明すれば、従来の2方向駆動のスピニングカレント法を用いた技術では、磁気スイッチにおける磁電変換特性が、必ずしもS極側とN極側とで線対称にならない場合がある。
【0010】
従来の2方向駆動のスピニングカレント法を用いた技術は、ホール素子のオフセット電圧の絶対値が電流駆動方向間で異なる場合、オフセット電圧が残ってしまう。オフセット電圧が残ってしまうと、磁気スイッチの磁電変換特性は、非対称になってしまう。従って、従来の2方向駆動のスピニングカレント法を用いた技術では、対称性の良い磁電変換特性が得られない場合が起こり得る。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑み、2方向駆動のスピニングカレント法を用いて、磁電変換特性の対称性を安定的に確保可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板に設けられた磁気スイッチを備える半導体装置であって、前記磁気スイッチは、第1の直線の上に配置される第1の電極及び第2の電極と、前記第1の直線と直交する第2の直線の上に配置される第3の電極及び第4の電極とを含むホール素子と、複数のスイッチを有し、前記ホール素子の駆動電流の方向を、前記第1の電極から前記第2の電極へ向かう第1の方向、前記第2の電極から前記第1の電極へ向かう第2の方向、前記第3の電極から前記第4の電極へ向かう第3の方向、及び前記第4の電極から前記第3の電極へ向かう第4の方向の4方向から1方向を選択可能に構成される第1のスイッチ回路と、前記ホール素子から伝送される信号をサンプリングする第1の動作と、前記ホール素子から伝送される信号と前記第1の動作によってサンプリングされた信号との差分信号の値と基準値とを比較した結果に基づく結果信号を出力する第2の動作と、を交互に行う比較回路と、前記比較回路から出力される前記結果信号を保持し、保持した信号をラッチ出力信号として出力するラッチ回路と、前記第1の動作が行われる第1の期間では前記第3の方向に前記駆動電流を流し、前記第2の動作が行われる第2の期間では前記第1の方向に前記駆動電流を流すように、前記スイッチの開閉状態を制御する第1のモードと、前記第1の期間では前記第2の方向に前記駆動電流を流し、前記第2の期間では前記第4の方向に前記駆動電流を流すように、前記スイッチの開閉状態を制御する第2のモードとの一方のモードを、前記ラッチ出力信号に基づいて選択可能に構成される制御回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、2方向駆動のスピニングカレント法を用いて、磁電変換特性の対称性を安定的に確保可能な半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置の概略図である。
図2】本実施形態に係る半導体装置におけるサンプルアンドホールド比較器の一例を示す回路図である。
図3】実施形態に係る半導体装置における制御回路の一例を示す回路図である。
図4】制御回路における論理回路の制御論理パターンの一例を示す説明図である。
図5】(a)~(d)は本実施形態に係る半導体装置における水平ホール素子の駆動電流の方向を説明する説明図である。
図6】(a)は磁束密度Binに対する増幅器の入力電圧の関係を説明する概略図である。(b)は上記水平ホール素子を流れる駆動電流の方向が第2の方向対の場合における磁束密度Binに対する増幅器の入力電圧の関係を説明する概略図である。
図7】本実施形態に係る半導体装置の水平ホール素子を流れる駆動電流の方向が第1の方向対の場合における磁束密度Binに対する増幅器の出力電圧の関係を説明する概略図である。
図8】本実施形態に係る半導体装置の水平ホール素子を流れる駆動電流の方向が第1の方向対の場合における磁束密度Binに対するラッチ回路の出力電圧の関係を説明する概略図である。
図9】本実施形態に係る半導体装置の水平ホール素子を流れる駆動電流の方向が第2の方向対の場合における磁束密度Binに対する増幅器の出力電圧の関係を説明する概略図である。
図10】本実施形態に係る半導体装置の水平ホール素子を流れる駆動電流の方向が第2の方向対の場合における磁束密度Binに対するラッチ回路の出力電圧の関係を説明する概略図である。
図11】本実施形態に係る半導体装置の水平ホール素子自身の磁気オフセットが正である場合における磁束密度Binに対する増幅器の出力電圧及びラッチ回路の出力電圧の関係を説明する概略図である。
図12】本実施形態に係る半導体装置の水平ホール素子自身の磁気オフセットが負である場合における磁束密度Binに対する増幅器の出力電圧及びラッチ回路の出力電圧の関係を説明する概略図である。
図13】制御回路に入力される基準クロック信号、磁束密度Bin及び磁気の検知状態の関係を説明する概略図である。
図14】制御回路に入力される基準クロック信号、ラッチ出力信号並びに制御回路から出力される駆動制御信号及び伝達制御信号のタイミングチャートである。
図15】第2の実施形態に係る半導体装置の概略図である。
図16】(a)~(d)は本実施形態に係る半導体装置の垂直ホール素子の駆動電流の方向を説明する説明図である。
図17】第3の実施形態に係る半導体装置の概略図である。
図18】本実施形態に係る半導体装置におけるサンプルアンドホールド比較器の一例を示す回路図である。
図19】本実施形態に係る半導体装置の水平ホール素子自身の磁気オフセットが正である場合における磁束密度Binに対する増幅器の出力電圧及びラッチ回路の出力電圧の関係を説明する概略図である。
図20】本実施形態に係る半導体装置の水平ホール素子自身の磁気オフセットが負である場合における磁束密度Binに対する増幅器の出力電圧及びラッチ回路の出力電圧の関係を説明する概略図である。
図21】部分Paを拡大して示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置を、図面を参照して説明する。実施形態に係る半導体装置は、半導体基板に設けられた磁気スイッチを備えている。なお、説明に際し、半導体基板に作用する磁束密度からアナログ信号への変換特性を「磁電変換特性」と呼称し、当該磁束密度から論理信号への変換特性を「磁電変換スイッチング特性」と呼称する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置1Aの構成を示す概略図である。
【0017】
半導体装置1Aは、半導体基板2に設けられた磁気スイッチ10Aを備えている。磁気スイッチ10Aは、駆動端子11P、11Nと、出力端子12と、水平ホール素子20と、第1のスイッチ回路としてのスイッチSP1~SP4、SN1~SN4と、スイッチSS1~SS4と、増幅器30と、比較回路としてのサンプルアンドホールド比較器(以下、「SH比較器」とする。)40Aと、制御回路50と、ラッチ回路80Aとを備えている。
【0018】
水平ホール素子20は、電極21~24を有し、半導体基板2に対して垂直な磁束密度Binに応じた出力を得る磁気検出素子である。電極21~24は、半導体基板2の不純物拡散層やウェル層で形成される抵抗体に設けられている。電極21~24は、後述するように、電極21、22を通る第1の直線L1(図5(a)参照)と電極23、24を通る第2の直線L2(図5(a)参照)とが直交する位置に配設される。換言すれば、第1の電極としての電極21及び第2の電極としての電極22は、第1の直線L1の上に配置される。第3の電極としての電極23及び第4の電極としての電極24は、第2の直線L2の上に配置される。
【0019】
各スイッチSP1~SP4、SN1~SN4、SS1~SS4は、開閉自在な電路の両端に設けられる第1端及び第2端と、制御端子としての開閉制御端とを有している。各スイッチSP1~SP4、SN1~SN4、SS1~SS4は、開閉制御端から入力される制御信号のレベルに応じて、経路を開いた開状態(開放)と、閉じた閉状態(短絡)とを切替可能に構成されている。スイッチSP1~SP4、SN1~SN4、SS1~SS4は、開閉制御端から入力される制御信号のレベルが、ハイ(以下、単に「H」とする。)で閉状態となり、ロー(以下、単に「L」とする。)で開状態となるように制御される。
【0020】
増幅器30は、水平ホール素子20から伝送される信号が入力される正相入力端子INP及び逆相入力端子INNと、正相入力端子INP及び逆相入力端子INNから入力された二つの信号の差を増幅して出力する出力端子OTと、を有する差動増幅回路で構成されている。
【0021】
SH比較器40Aは、具体的には後述するように、増幅器30から出力される信号S1が入力される入力端子41と、ラッチ回路80Aからフィードバックされた信号S3が入力される入力端子42と、基準クロック信号CLKが入力される入力端子44と、信号が出力される出力端子43と、を有している。
【0022】
制御回路50は、具体的には後述するように、基準クロック信号CLKが入力される入力端子51aと、信号S3が入力される入力端子51bと、制御信号としての駆動制御信号Sd1~Sd4を出力する出力端子56a~56dと、伝達制御信号St1、St2を出力する出力端子56e、56fと、を有している。
【0023】
ラッチ回路80Aは、信号S2が入力される信号入力端子と、基準クロック信号CLKに対して位相が逆の信号である逆相基準クロック信号CLKXが入力される反転クロック入力端子と、ラッチ出力信号としての信号S3が出力される出力端子と、信号S2、逆相基準クロック信号CLKXに基づいて信号S3を生成するラッチ出力信号生成部(図示省略)と、を有している。ラッチ回路80Aは、いわゆるデータラッチするように構成されている。
【0024】
第1の駆動端子としての駆動端子11Pは、電源電圧VDDを供給する第1の電源(図示省略)に接続される。また、駆動端子11Pは、スイッチSP1~SP4の各第1端と接続されている。
【0025】
第1のスイッチとしてのスイッチSP1の第2端は、第6のスイッチとしてのスイッチSN2の第1端と、電極21と、スイッチSS1の第1端と、に接続されている。これらの接続点は節点P1を形成している。
【0026】
第5のスイッチとしてのスイッチSP2の第2端は、第2のスイッチとしてのスイッチSN1の第1端と、電極22と、スイッチSS4の第1端と、に接続されている。これらの接続点は節点P2を形成している。
【0027】
第3のスイッチとしてのスイッチSP3の第2端は、第8のスイッチとしてのスイッチSN4の第1端と、電極23と、スイッチSS3の第1端と、に接続されている。これらの接続点は節点P3を形成している。
【0028】
第7のスイッチとしてのスイッチSP4の第2端は、第4のスイッチとしてのスイッチSN3の第1端と、電極24と、スイッチSS2の第1端と、に接続されている。これらの接続点は節点P4を形成している。
【0029】
スイッチSN1~SN4の各第2端は、第2の駆動端子としての駆動端子11Nと接続されている。駆動端子11Nは、電源電圧VSSを供給する第2の電源(図示省略)に接続される。
【0030】
スイッチSS1、SS2の各第2端は、増幅器30の正相入力端子INPと接続されている。スイッチSS3、SS4の各第2端は、増幅器30の逆相入力端子INNと接続されている。
【0031】
増幅器30の出力端子OTは、SH比較器40Aの入力端子41と接続されている。SH比較器40Aの出力端子43は、ラッチ回路80Aの信号入力端子と接続されている。ラッチ回路80Aの出力端子は、磁気スイッチ10Aの出力端子12と、制御回路50の入力端子51bと、SH比較器40Aの入力端子42と、接続されている。
【0032】
SH比較器40A及び制御回路50の構成について、さらに説明する。
図2は、SH比較器40Aを示す回路図である。
【0033】
SH比較器40Aは、入力端子41、42、44と、サンプルアンドホールドアンプ(以下、「SHA」とする。)45と、基準電圧回路46と、コンパレータ47と、出力端子43と、を有している。
【0034】
SHA45は、入力端子41と接続される第1の入力端と、入力端子44と接続される第2の入力端と、入力端子42と接続される第3の入力端と、出力端と、を有している。基準電圧回路46は、入力端子42と接続される入力端46aと、出力端46bと、可変電圧源46cと、を有している。可変電圧源46cは、出力端46bと接続される第1端と、GNDに接続(接地)されている第2端と、を有している。コンパレータ47は、SHA45の出力端と接続される非反転入力端と、出力端46bと接続される反転入力端と、出力端子43と接続される出力端と、を有している。
【0035】
図3は、制御回路50の一例を示す回路図である。図4は制御回路50における論理回路57の制御論理パターンの一例を示す説明図である。
【0036】
制御回路50は、入力端子51a、51bと、制御信号生成回路としての論理回路57及びスイッチ回路58と、第1の制御信号出力端子から第4の制御信号出力端子としての出力端子56a~56dと、出力端子56e、56fと、を備えている。
【0037】
制御回路50は、入力端子51aから入力される基準クロック信号CLK及び入力端子51bから入力される信号S3に基づいて、4個の制御信号としての駆動制御信号Sd1~Sd4と、2個の制御信号である伝達制御信号St1、St2との6個の制御信号を生成可能に構成されている。基準クロック信号CLKは、Hレベルとなる第1の期間Φ1とLレベルとなる第2の期間Φ2との合計期間である期間Tを1周期とする周期信号である。
【0038】
駆動制御信号Sd1~Sd4は、それぞれ、出力端子56a~56dから出力される。伝達制御信号St1、St2は、それぞれ、出力端子56e、56fから出力される。
【0039】
論理回路57は、入力端子51a、51bとそれぞれ接続される2個の入力端と、出力端子56a~56fとそれぞれ接続される6個の出力端と、2個の入力端と6個の出力端とを接続する複数の論理演算素子と、を有している。論理回路57は、図4に示される、少なくとも第1の制御論理パターン及び第2の制御論理パターンの一方に従ってLレベル又はHレベルの制御信号、すなわち駆動制御信号Sd1~Sd4及び伝達制御信号St1、St2を出力可能に構成される。
【0040】
複数の論理演算素子は、例えば、インバータ52a、52b、54a~54eと、NAND素子53a~53dと、EXOR素子55と、を含んでいる。複数の論理演算素子は、スイッチ回路58と共に入力端子51a、51bと出力端子56a~56fとの間において信号伝送可能な経路を形成している。
【0041】
インバータ52aと、NAND素子53b、53cと、EXOR素子55とは、その入力端が、入力端子51aと接続されている。また、インバータ52bは、その入力端が、入力端子51bと接続されている。NAND素子53a~53d及びEXOR素子55は、第1の入力端及び第2の入力端のうち、第2の入力端が、スイッチ回路58又はインバータ52bとスイッチ回路58とを介して、入力端子51bと接続されている。
【0042】
第2のスイッチ回路としてのスイッチ回路58は、開閉状態が互いに異なる、スイッチSL1a、SL2aの対、スイッチSL1b、SL2bの対及びスイッチSL1c、SL2cの対を有している。対の一方のスイッチSL1a、SL1b、SL1cが閉状態ならば、対の他方のスイッチSL2a、SL2b、SL2cが開状態となる。また、対の一方のスイッチSL1a、SL1b、SL1cが開状態ならば、対の他方のスイッチSL2a、SL2b、SL2cが閉状態となる。
【0043】
スイッチSL1a、SL1b、SL1cが閉状態、スイッチSL2a、SL2b、SL2cが開状態になると、NAND素子53a~53d及びEXOR素子55の第2の入力端は、第1の経路を介して入力端子51bと接続される。スイッチSL1a、SL1b、SL1cが開状態、スイッチSL2a、SL2b、SL2cが閉状態になると、NAND素子53a~53d及びEXOR素子55の第2の入力端は、第1の経路と異なる第2の経路を介して入力端子51bと接続される。
【0044】
NAND素子53a~53d及びEXOR素子55の第2の入力端が第1の経路を介して入力端子51bと接続される場合に出力される制御論理のパターンは、第1の制御論理パターンに対応している。また、NAND素子53a~53d及びEXOR素子55の第2の入力端が第2の経路を介して入力端子51bと接続される場合に出力される制御論理のパターンは、第2の制御論理パターンに対応している。
次に、磁気スイッチ10Aの作用について説明する。
【0045】
図5(a)~図5(d)は、水平ホール素子20において定義される駆動電流の方向を説明する説明図である。
【0046】
磁気スイッチ10Aでは、スイッチSP1~SP4、SN1~SN4を介して、水平ホール素子20の駆動電流の方向を4個から何れか1個を選択可能に構成されている。スイッチSP1~SP4、SN1~SN4の開閉状態が制御回路50によって制御されることによって、水平ホール素子20の駆動電流の方向を適宜切り替えることができる。以下、説明の便宜を考慮して、電極21から電極22へ向かう方向を「第1の方向」と呼称し、電極22から電極21へ向かう方向を「第2の方向」と呼称する。また、駆動電流が電極23から電極24へ向かう方向を「第3の方向」と呼称し、電極24から電極23へ向かう方向を「第4の方向」と呼称する。
【0047】
また、第1の方向と第3の方向との対を「第1の方向対」と呼称し、第2の方向と第4の方向との対を「第2の方向対」と呼称する。直線L1と直線L2とは直交する関係にあることから、第1の方向及び第2の方向と第3の方向及び第4の方向とは、それぞれ直交する関係にある。従って、「第1の方向対」及び「第2の方向対」は、それぞれ、直交する二つの方向の対である。
【0048】
水平ホール素子20は、XYZ三次元直交座標系におけるX-Y平面上に対して平行に形成されている。水平ホール素子20に、表から裏に紙面を垂直に貫く方向(Z軸方向)の磁束密度Binが与えられた環境下において、駆動電流の方向が第1の方向の場合、電極24と電極23との間に正のホール起電力を発生し、駆動電流の方向が第2の方向の場合、電極24と電極23との間に負のホール起電力を発生する。また、駆動電流の方向が第3の方向の場合、電極21と電極22との間に正のホール起電力を発生し、駆動電流の方向が第4の方向の場合、電極21と電極22との間に負のホール起電力を発生する。水平ホール素子20は、一般的には、駆動電流の方向毎に一定の規則性を持って、その出力信号であるホール起電力よりも絶対値の大きいオフセット電圧を発生する。
【0049】
水平ホール素子20の出力信号は、電極21~24からスイッチSS1~SS4を経由して増幅器30へ伝送される。スイッチSS1~SS4は、伝達制御信号St1、St2に基づいて、スイッチSS2、SS3の開閉状態と、スイッチSS1、SS4の開閉状態とが異なるように開閉制御される。
【0050】
駆動電流の方向が第1の方向の場合、スイッチSS2、SS3が閉状態、スイッチSS1、SS4が開状態であるため、電極23はスイッチSS3を介して逆相入力端子INNと接続される。駆動電流の方向が第2の方向の場合、スイッチSS1~SS4の開閉状態は駆動電流の方向が第1の方向の場合におけるスイッチSS1~SS4の開閉状態と同じである。従って、電極23はスイッチSS3を介して逆相入力端子INNと接続され、電極24はスイッチSS2を介して正相入力端子INPと接続される。
【0051】
駆動電流の方向が第3の方向の場合、スイッチSS1、SS4が閉状態、スイッチSS2、SS3が開状態であるため、電極23はスイッチSS3を介して逆相入力端子INNと接続される。駆動電流の方向が第4の方向の場合、スイッチSS1~SS4の開閉状態は駆動電流の方向が第3の方向の場合におけるスイッチSS1~SS4の開閉状態と同じである。従って、電極23はスイッチSS3を介して逆相入力端子INNと接続され、電極24はスイッチSS2を介して正相入力端子INPと接続される。
【0052】
増幅器30は、正相入力端子INPと逆相入力端子INNとの差動入力電圧ΔVを所定の増幅率Gで増幅し、増幅後の信号を出力端子OTからSH比較器40Aへ出力する。増幅器30には、入力オフセット電圧VOSAが存在し、出力端子OTから出力される信号S1は、入力オフセット電圧VOSAの影響を受ける。信号S1は、差動入力電圧ΔVと入力オフセット電圧VOSAとの和と増幅率Gとの積、すなわち(ΔV+VOSA)・Gで表される。信号S1に含まれる入力オフセット電圧VOSAは、上述したスピニングカレント法を実行する過程で相殺される。
【0053】
SH比較器40Aは、信号S1をサンプリングする動作と、直前の期間の信号S1との差分信号としての差分電圧信号と所定の基準電圧とを比較し、比較した結果に基づく結果信号を出力する比較判定動作とを行う。第1の動作としての信号S1のサンプリングは、SHA45によって行われる。第2の動作としての比較判定動作は、コンパレータ47によって行われる。信号S1のサンプリングと比較判定動作とは、交互に行われる。
【0054】
SH比較器40Aは、第1の期間Φ1における信号S1をサンプリングし、サンプリングした第1の期間Φ1における信号S1と第2の期間Φ2における信号S1との差分電圧信号と所定の基準電圧との比較判定を行う。SH比較器40Aは、差分電圧信号と所定の基準電圧との比較判定の結果とレベルとが対応した信号S2を出力する。信号S2のレベルは、例えば、差分電圧信号が所定の基準電圧よりも低い場合にはLレベル、差分電圧信号が所定の基準電圧と同じ又はそれよりも高い場合にはHレベルのように、比較判定の結果に応じて切り替えられる。
【0055】
基準値としての所定の基準電圧は、可変電圧源46cによって生成される。生成される電圧は、ラッチ回路80Aから出力される信号S3に応じて、第1の電圧か第1の電圧と電圧が異なる第2の電圧かの何れかに切り替えられる。
【0056】
第1の期間Φ1と第2の期間Φ2との差分処理を用いて、水平ホール素子20及び増幅器30のオフセット電圧を相殺する。SH比較器40Aにおいては、第1の期間Φ1と第2の期間Φ2にわたる所謂オートゼロ処理を実行し、SH比較器40A自体のオフセット電圧を相殺することもできる。
【0057】
信号S2はSH比較器40Aからラッチ回路80Aに入力される。ラッチ回路80Aは、第2の期間Φ2の最後のタイミング、すなわち逆相基準クロック信号CLKXの立下りエッジで、入力されている信号S2のレベルと逆のレベルを保持し、保持した信号を信号S3として出力する。従って、信号S3は、基準クロック信号CLKの1周期に相当する期間Tごとに信号S3のレベルに応じて更新される。
【0058】
図6(a)は水平ホール素子20を流れる駆動電流の方向が第1の方向対(第1の方向及び第3の方向の対)の場合における磁束密度Binに対する増幅器30の入力電圧の関係を説明する概略図である。図6(b)は水平ホール素子20を流れる駆動電流の方向が第2の方向対(第2の方向及び第4の方向の対)の場合における磁束密度Binに対する増幅器30の入力電圧の関係を説明する概略図である。
【0059】
図6(a)及び図6(b)の各図において、横軸は半導体基板2に作用する磁束密度Bin、縦軸は電圧Vを表している。実線LID1~LID4は、それぞれ、第1~4の方向に対応した磁束密度Binに対する増幅器30の差動入力電圧ΔVを表している。差動入力電圧ΔVは、水平ホール素子20から出力される二つの電圧、すなわち一方の正相電圧と他方の逆相電圧とを加算した電圧に相当する。磁束密度Binが0(ゼロ)のときにおける差動入力電圧ΔV(以下、「縦軸切片」とする。)は、ゼロ磁場におけるオフセット電圧を表す。直線の傾きは磁電変換係数を表す。実線LID1、LID4の傾きは、磁電変換係数Kに等しい(∂ΔV/∂Bin=K)。実線LID2、LID3の傾きは、磁電変換係数-Kに等しい(∂ΔV/∂Bin=-K)。
【0060】
破線BL1は駆動電流が第1の方向に流れる場合のオフセット電圧ΔV1と駆動電流が第3の方向に流れる場合のオフセット電圧ΔV3の差分の磁電変換特性を表す。破線BL2は駆動電流が第2の方向に流れる場合のオフセット電圧ΔV2と駆動電流が第4の方向に流れる場合のオフセット電圧ΔV4の差分の磁電変換特性を表す。
【0061】
オフセット電圧ΔV1とオフセット電圧ΔV3との差分演算処理及びオフセット電圧ΔV2とオフセット電圧ΔV4との差分演算処理は、SH比較器40Aによって実行される。破線BL1、BL2の傾きは、磁電変換係数Kと磁電変換係数-Kとの差であり、実線LID1、LID4の傾きの2倍(=2K)になっている。
【0062】
ここで、水平ホール素子20を流れる駆動電流の方向が、第1の方向及び第2の方向である場合のオフセット電圧をオフセット電圧VOS2、第3の方向及び第4の方向である場合のオフセット電圧をオフセット電圧VOS1とすると、オフセット電圧ΔV1~ΔV4は下記式(1)~(4)で表される。
ΔV1=+K・Bin+VOS2 (1)
ΔV3=-K・Bin+VOS1 (2)
ΔV2=-K・Bin+VOS2 (3)
ΔV4=+K・Bin+VOS1 (4)
【0063】
続いて、第1の方向対を成す各方向間の差分は、下記式(5)、(6)で表される。第2の方向対を成す各方向間の差分は、下記式(7)、(8)で表される。
ΔV1-ΔV3=+2K・Bin+(VOS2-VOS1) (5)
ΔV3-ΔV1=-2K・Bin-(VOS2-VOS1) (6)
ΔV2-ΔV4=+2K・Bin+(VOS2-VOS1) (7)
ΔV4-ΔV2=-2K・Bin-(VOS2-VOS1) (8)
【0064】
各方向間でそれぞれオフセット電圧は異なるので、オフセット電圧の影響は、差分処理では打ち消されない。第1の方向対を成す各方向間の差分及び第2の方向対を成す各方向間の差分は、縦軸切片が(VOS2-VOS1)または(VOS1-VOS2)となる非理想的な特性となる。
【0065】
ここで、傾きの値「2K」から差動入力電圧ΔVがゼロ(ΔV=0)となる磁束密度Bin(横軸切片)を求めると、第1の方向対及び第2の方向対に対応した水平ホール素子20の磁気オフセットBOSDP1、BOSDP2は、それぞれ下記式(9)、(10)で表すことができる。
OSDP1=(VOS2-VOS1)/2K (9)
OSDP2=(VOS1-VOS2)/2K (10)
【0066】
図7及び図8は、それぞれ、図6(a)に示される場合、すなわち磁気オフセットBOSDP1が正(BOSDP1=(VOS2-VOS1)/2K>0)である場合の磁束密度Binに対する信号S1及び信号S3の関係を説明する概略図である。
【0067】
図9及び図10は、それぞれ、図6(b)に示される場合、すなわち磁気オフセットBOSDP2が負(BOSDP2=(VOS1-VOS2)/2K<0)である場合の磁束密度Binに対する信号S1及び信号S3の関係を説明する概略図である。図7及び図9に示される破線BLOD1~BLOD4は、それぞれ、第1~4の方向に対応した磁束密度Binに対する信号S1を表している。
【0068】
図7及び図9によれば、破線BLOD1~BLOD4は、実線LID1~LID4に対して、縦軸方向に電圧GVOSAだけシフトしている。ここで、電圧GVOSAは、増幅率Gと入力オフセット電圧VOSAとの積である。磁気オフセットBOSDP1が正であれば、磁電変換スイッチング特性は、図8に示されるように、動作点BOP及び復帰点BRPが共に磁束密度正方向(図中右方向)にシフトする。磁気オフセットBOSDP2が負であれば、磁電変換スイッチング特性は、図10に示されるように、動作点BOP及び復帰点BRPが共に磁束密度負方向(図中左方向)にシフトする。
【0069】
上記式(9)、(10)において、|VOS2-VOS1|が0又は磁気オフセットBOSDP1、OSDP2が無視できる程に|VOS2-VOS1|が小さい(この状態を「略0」と呼称する。)、すなわちオフセット電圧VOS2とオフセット電圧VOS1とが等しい又は磁気オフセットBOSDP1、BOSDP2が無視できる程に差異が小さければ(この状態を「同程度」と呼称する。)、磁気オフセットBOSDP1、BOSDP2を無視することができる。
【0070】
しかしながら、半導体装置1Aにおいて、|VOS2-VOS1|が略0となるホール素子を常に適用できるとは限らない。そこで、本実施形態では、いわゆる4方向駆動信号処理を用いることなく、オフセット電圧の差分(VOS2-VOS1)の影響を打ち消す新たな技術を提案している。
【0071】
上記式(9)、(10)の右辺は、絶対値が等しく、符号が正負逆の関係である。このことに着目し、本実施形態では、検出している磁場の極性、すなわちラッチ回路80Aの出力信号である信号S3のレベルに応じて、駆動電流の方向を、第1の方向対とするか第2の方向対とするかを切り替えている。
【0072】
磁気スイッチ10Aにおいて、信号S3のレベルに応じて駆動電流の方向を切り替えない場合、動作点BOP及び復帰点BRPは、磁束密度Bin=0に対して非対称である。すなわち、磁気スイッチ10Aは、信号S3のレベルに応じて駆動電流の方向を切り替えない場合、例えば、図8及び図10に示されるように、非対称な磁電変換スイッチング特性を有している。
【0073】
磁気スイッチ10Aは、信号S3のレベルに応じて駆動電流の方向を切り替えることによって、S極側の動作点BOPを、Bin=0の直線に対して反転させたN極側の復帰点BRPを得る。すなわち、磁気スイッチ10Aは、信号S3のレベルに応じて駆動電流の方向を切り替えることによって、Bin=0の直線に対して線対称な磁電変換スイッチング特性を得る。
【0074】
図11は、水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが正である場合に、磁束密度Binに対する信号S1及び信号S3の関係を説明する概略図である。
【0075】
図11において、実線LDP1は、駆動電流の方向対が第1の方向対である場合に磁気オフセットBOSDPが正となる磁電変換特性を示している。実線LDP2は、駆動電流の方向対が第2の方向対である場合に磁気オフセットBOSDPが負となる磁電変換特性を示している。破線BLidは、磁気オフセットBOS=0となる理想的な磁電変換特性を示している。白抜き矢印(1)、(1a)、(2)、(3)、(3a)及び(4)は、磁電変換特性のヒステリシスの軌跡を表している。
【0076】
また、図11に示される磁電変換特性は、信号S3がHレベルかつ第1の期間Φ1では第3の方向が選択され、信号S3がHレベルかつ第2の期間Φ2では第1の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第1の期間Φ1では第2の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第2の期間Φ2では第4の方向が選択される場合の例である。この例は、第1の制御論理パターンに対応している。
【0077】
第1の制御論理パターンでは、第1の制御信号としての駆動制御信号Sd1が出力端子56aから出力される。同様に、第2、3、4の制御信号としての駆動制御信号Sd2、Sd3、Sd4が、それぞれ、出力端子56b、56c、56dから出力される。また、伝達制御信号St1、St2が、それぞれ、出力端子56e、56fから出力される。
【0078】
駆動制御信号Sd1~Sd4及び伝達制御信号St1、St2に基づくスイッチSP1~SP4、SN1~SN4及びスイッチSS1~SS4の開閉動作によって、信号S3がHレベルかつ第1の期間Φ1では第3の方向が選択され、信号S3がHレベルかつ第2の期間Φ2では第1の方向が選択される。
【0079】
信号S3がHレベルで磁束密度BinがS極側に増加する段階では、実線LDP1に対応した磁電変換特性の軌跡を辿る(白抜き矢印(1))。SH比較器40Aに入力される電圧、すなわち信号S1の電圧が第1の電圧としての基準電圧VBOPを上回る(ΔV・G>VBOP)と、信号S3はLレベルへ遷移する。基準電圧VBOPは、磁電変換特性において、磁束密度Binが動作点BOPにおける電圧である。
【0080】
信号S3のレベル遷移に伴って、SH比較器40Aの基準電圧は、基準電圧VBOPから第2の電圧としての基準電圧VBRPに切り替えられる。基準電圧VBRPは、磁電変換特性において、磁束密度Binが復帰点BRPにおける電圧である。基準電圧VBRPは、基準電圧VBOPに対して正負が逆の電圧である。
【0081】
信号S3がLレベルの場合、駆動電流の方向は、第2の方向又は第4の方向が選択されるため、実線LDP2に対応した磁電変換特性へシフトする(白抜き矢印(2))。その後、さらに磁束密度BinがS極側に増加する場合、電圧Vは実線LDP2に沿ってさらに正側に増大する(白抜き矢印(3a))。一方、磁束密度BinがS極減少、Bin=0、さらにN極増加に転じる際の軌跡は白抜き矢印(3)である。さらに、磁束密度BinがN極側に増加し、SH比較器40Aに入力される電圧、すなわち信号S1の電圧が基準電圧VBRPを負側に上回る(ΔV・G<VBRP)と、信号S3はHレベルへ遷移する。信号S3のレベル遷移に伴って、SH比較器40Aの基準電圧は、基準電圧VBRPから基準電圧VBOPに切り替えられる。
【0082】
信号S3がHレベルの場合、駆動電流の方向は、第3の方向又は第1の方向が選択されるため、実線LDP1に対応した磁電変換特性へシフトする(白抜き矢印(4))。その後、さらに磁束密度BinがN極側に増加する場合、電圧Vは実線LDP1に沿ってさらに負側に増大する(白抜き矢印(1a))。一方、磁束密度BinがN極減少、Bin=0、さらにS極増加に転じる際の軌跡は、上述した白抜き矢印(1)である。本実施形態では、磁電変換特性におけるヒステリシスの軌跡の形状が平行四辺形状になる。
【0083】
磁気スイッチ10Aでは、実線LDP1に対応した磁電変換特性と実線LDP2に対応した磁電変換特性との間を遷移する。上述した水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが正となる場合、磁束密度BinがS極側に増加する方向に変化する際には、第3の方向及び第1の方向の駆動電流が用いられる。また、磁束密度BinがN極側に増加する方向に変化する際には、第2の方向及び第4の方向の駆動電流が用いられる。従って、動作点BOPは、その設計値(以下、「動作点設計値」とする。)BOPidから磁気オフセットBOSDPの分だけ低感度側(Bin=0から離れる方向)にシフトしている。また、復帰点BRPは、その設計値(以下、「復帰点設計値」とする。)BRPidから磁気オフセットBOSDPの分だけ低感度側にシフトしている。
【0084】
水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが正となる場合、下記式(11)~(16)が成立している。ここで、BHYS、BHYSid及びBOSは、それぞれ、ヒステリシス幅、ヒステリシス幅BHYSの設計値及び磁気スイッチ10Aの磁電変換スイッチング特性上の磁気オフセットである。
OP=BOPid+BOSDP (11)
RP=BRPid-BOSDP (12)
HYS=BHYSid+2BOSDP (13)
OS=(BOP+BRP)/2=0 (14)
OPid=VBOP/(2GK) (15)
RPid=VBRP/(2GK) (16)
【0085】
上記式(11)及び上記式(12)によれば、動作点BOP及び復帰点BRPは、その設計値である動作点設計値BOPid及び復帰点設計値BRPidからのずれ量の絶対値がBOSDPと等しく、かつ逆符号である。従って、磁気スイッチ10Aでは、磁電変換スイッチング特性の対称性が確保されたまま、S極及びN極の両極において感度がシフトしたかのように動作する。上述した水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが正となる場合、磁気スイッチ10Aは、S極及びN極の両極において低感度にずれたかのように動作する。
【0086】
図12は、水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが負である場合に、磁束密度Binに対する信号S1及び信号S3の関係を説明する概略図である。
【0087】
図12において、実線LDP1、実線LDP2、破線BLid並びに白抜き矢印(1)、(1a)、(2)、(3)、(3a)及び(4)は、図11と同様である。また、図12に示される磁電変換特性は、信号S3がHレベルかつ第1の期間Φ1では第2の方向が選択され、信号S3がHレベルかつ第2の期間Φ2では第4の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第1の期間Φ1では第3の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第2の期間Φ2では第1の方向が選択される場合の例である。この例は、第2の制御論理パターンに対応している。
【0088】
第2の制御論理パターンでは、第5の制御信号としての駆動制御信号Sd1が出力端子56aから出力される。同様に、第6、7、8の制御信号としての駆動制御信号Sd2、Sd3、Sd4が、それぞれ、出力端子56b、56c、56dから出力される。また、伝達制御信号St1、St2が、それぞれ、出力端子56e、56fから出力される。
【0089】
駆動制御信号Sd1~Sd4及び伝達制御信号St1、St2に基づくスイッチSP1~SP4、SN1~SN4及びスイッチSS1~SS4の開閉動作によって、信号S3がHレベルかつ第1の期間Φ1では第2の方向が選択され、信号S3がHレベルかつ第2の期間Φ2では第4の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第1の期間Φ1では第1の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第2の期間Φ2では第3の方向が選択される。
【0090】
信号S3がHレベルで磁束密度BinがS極側に増加する段階では、実線LDP2に対応した磁電変換特性の軌跡を辿る(白抜き矢印(1))。SH比較器40Aに入力される電圧、すなわち信号S1の電圧が基準電圧VBOPを正側に上回る(ΔV・G>VBOP)と、信号S3はLレベルへ遷移する。信号S3のレベル遷移に伴って、SH比較器40Aの基準電圧は、基準電圧VBOPから基準電圧VBRPに切り替えられる。
【0091】
信号S3がLレベルの場合、駆動電流の方向は、第3の方向又は第1の方向が選択されるため、実線LDP1に対応した磁電変換特性へシフトする(白抜き矢印(2))。その後、さらに磁束密度BinがS極側に増加する場合、電圧Vは実線LDP1に沿ってさらに正側に増大する(白抜き矢印(3a))。
【0092】
一方、磁束密度BinがS極減少、Bin=0、さらにN極増加に転じる際の軌跡は白抜き矢印(3)である。さらに、磁束密度BinがN極側に増加し、SH比較器40Aに入力される電圧、すなわち信号S1の電圧が基準電圧VBRPを負側に上回る(ΔV・G<VBRP)と、信号S3はHレベルへ遷移する。信号S3のレベル遷移に伴って、SH比較器40Aの基準電圧は、基準電圧VBRPから基準電圧VBOPに切り替えられる。
【0093】
信号S3がHレベルの場合、駆動電流の方向は、第2の方向又は第4の方向が選択されるため、実線LDP2に対応した磁電変換特性へシフトする(白抜き矢印(4))。その後、さらに磁束密度BinがN極側に増加する場合、電圧Vは実線LDP2に沿ってさらに負側に増大する(白抜き矢印(1a))。一方、磁束密度BinがN極減少、Bin=0、さらにS極増加に転じる際の軌跡は、上述した白抜き矢印(1)である。
【0094】
磁気スイッチ10Aでは、実線LDP1に対応した磁電変換特性と実線LDP2に対応した磁電変換特性との間を遷移する。上述した水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが負となる場合、磁束密度BinがS極側に増加する方向に変化する際には、第2の方向及び第4の方向の駆動電流が用いられる。
【0095】
また、磁束密度BinがN極側に増加する方向に変化する際には、第3の方向及び第1の方向の駆動電流が用いられる。従って、動作点BOPは、動作点設計値BOPidから磁気オフセットBOSDPの分だけ高感度側(Bin=0に近づく方向)にシフトしている。また、復帰点BRPは、復帰点設計値BRPidから磁気オフセットBOSDPの分だけ高感度側にシフトしている。
【0096】
上述した水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが負となる場合、下記式(17)~(19)が成立している。なお、磁電変換スイッチング特性上の磁気オフセットBOSは、上述した式(14)と同じ、すなわち0である。
OP=BOPid-BOSDP (17)
RP=BRPid+BOSDP (18)
HYS=BHYSid-2BOSDP (19)
【0097】
上記式(17)及び上記式(18)によれば、動作点BOP及び復帰点BRPは、その設計値である動作点設計値BOPid及び復帰点設計値BRPidからのずれ量の絶対値がBOSDPと等しく、かつ逆符号である。従って、磁気スイッチ10Aでは、磁電変換スイッチング特性の対称性が確保されたまま、S極及びN極の両極において感度がシフトしたかのように動作する。上述した水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが負となる場合、磁気スイッチ10Aは、S極及びN極の両極において高感度にずれたかのように動作する。
【0098】
続いて、磁束密度Bin及び信号S3が示す磁気の検知状態の関係について説明する。
図13は、基準クロック信号CLK、磁束密度Bin及び磁気の検知状態の関係を説明する概略図である。なお、説明に際して、ラッチ回路80Aは、時刻t=0にリセットされているものとする。また、磁束密度Bin及び信号S3の時刻t=0における値である初期値は、それぞれ、磁束密度Bin=0及び信号S3=Hレベルとする。
【0099】
基準クロック信号CLKは、第1の期間Φ1でHレベル、第2の期間Φ2でLレベルになる周期信号である。ラッチ回路80Aは、第2の期間Φ2の最後のタイミングで信号S3がオフセットキャンセルされた磁電変換特性に基づき、磁束密度Binの判定結果を更新する。
【0100】
磁束密度Binが時刻t=0から時間の経過とともに動作点BOPを正側に(図中、下から上へ)超えてS極検知の状態に遷移すると、最初に第1の期間Φ1を迎える時刻t1からS極検知の判定動作を開始する。時刻t1では直前の検知状態であるN極検知が保持される。その後、磁束密度Binが動作点BOPを超えた状態、すなわちS極検知の状態が維持されたまま期間Tを経過して時刻t2になると、ラッチ回路80Aは、S極検知を示すLレベルの信号S3を出力する。すなわち、時刻t2において、磁束密度Binの判定結果は、N極検知からS極検知に更新される。
【0101】
さらに時間が経過して磁束密度Binが、S極からN極に変化して、復帰点BRPを負側に(図中、上から下へ)超えた状態に遷移すると、最初に第1の期間Φ1を迎える時刻t3からN極検知の判定動作を開始する。時刻t3では直前の検知状態であるS極検知が保持される。その後、磁束密度BinがN極検知の状態が維持されたまま期間Tを経過して時刻t4になると、ラッチ回路80Aは、N極検知を示すHレベルの信号S3を出力する。すなわち、時刻t4において、磁束密度Binの判定結果は、S極検知からN極検知に更新される。磁束密度Binが周期的に変動する場合、上述した動作を繰り返す。
【0102】
このようにして、LレベルとHレベルとの間を遷移する信号S3は、ラッチ回路80Aから、出力端子12、制御回路50及びSH比較器40Aへ送られる。制御回路50には、信号S3とともに基準クロック信号CLKが入力される。制御回路50では、入力される信号S3及び基準クロック信号CLKに基づいて、駆動制御信号Sd1~Sd4及び伝達制御信号St1、St2が生成される。
【0103】
図14は、制御回路50に入力される基準クロック信号CLK及び信号S3並びに制御回路50から出力される駆動制御信号Sd1~Sd4及び伝達制御信号St1、St2のタイミングチャートである。なお、本図に示されるタイミングチャートは、上述した第1の制御論理パターンが適用されている場合である。また、図13と同様に、ラッチ回路80Aは、時刻t=0にリセットされているものとし、磁束密度Bin及び信号S3の時刻t=0における値である初期値は、それぞれ、磁束密度Bin=0及び信号S3=Hレベルとする。
【0104】
制御回路50は、信号S3に基づいて、N極検知時のテーブル(図4)に従う第1のモードと、S極検知時のテーブル(図4)に従う第2のモードとが切り替えられる。図14に示すタイミングチャートでは、時刻0<t<t2及びt≧t4ではN極検知、時刻t2≦t<t4ではS極検知となる。
【0105】
N極検知では、駆動制御信号Sd1、Sd2及び伝達制御信号St2、St1が、基準クロック信号CLKに同期して動作する。駆動制御信号Sd1と駆動制御信号Sd2とは、Lレベル及びHレベルのレベルが互いに異なる状態、すなわち逆相で出力される。伝達制御信号St2と伝達制御信号St1も、駆動制御信号Sd1と駆動制御信号Sd2と同様に、逆相で出力される。
【0106】
故に、N極検知となる、時刻0<t<t2及びt≧t4では、駆動制御信号Sd1及び伝達制御信号St2は、第1の期間Φ1でHレベルとなり、第2期間Φ2でLレベルとなる。駆動制御信号Sd2及び伝達制御信号St1は、第1の期間Φ1でLレベルとなり、第2期間Φ2でHレベルとなる。
【0107】
一方、S極検知では、駆動制御信号Sd3、Sd4及び伝達制御信号St1、St2が、基準クロック信号CLKに同期して動作する。駆動制御信号Sd3及び駆動制御信号Sd4は、逆相で出力される。伝達制御信号St1及び伝達制御信号St2は逆相で出力される。
【0108】
従って、S極検知となる、時刻t2<t<t4では、駆動制御信号Sd3及び伝達制御信号St1は、第1の期間Φ1でHレベルとなり、第2期間Φ2でLレベルとなる。駆動制御信号Sd4及び伝達制御信号St2は、第1の期間Φ1でLレベルとなり、第2期間Φ2でHレベルとなる。
【0109】
このように、磁気スイッチ10Aは、所定の基準電圧を複数候補から切り替えて出力可能に構成されるSH比較器40Aを備えている。磁気スイッチ10A及び磁気スイッチ10Aを備える半導体装置1Aによれば、信号S3のレベルに応じて駆動電流の方向を切り替えることによって、S極側の動作点BOPをBin=0の直線に対して反転させたN極側の復帰点BRP又はN極側の復帰点BRPをBin=0の直線に対して反転させたS極側の動作点BOPを得ることができる。S極側の動作点BOPをBin=0の直線に対して反転させたN極側の復帰点BRPを得るか、N極側の復帰点BRPをBin=0の直線に対して反転させたS極側の動作点BOPを得るかは、スイッチSL1a、SL1b、SL1c及びスイッチSL2a、SL2b、SL2cの開閉状態を切り替えることによって変更することができる。
【0110】
本実施形態によれば、信号S3のレベルに応じて駆動電流の方向を切り替える2方向駆動のスピニングカレント法を用いて、残留オフセット電圧の影響をS極側及びN極側に対して線対称に生じさせることができるので、対称性の高いヒステリシス特性を得ることができる。従って、本実施形態によれば、動作点BOPと復帰点BRPの絶対値が等しい磁電変換スイッチング特性、すなわち、S極及びN極で線対称な磁電変換スイッチング特性を得ることができる。
【0111】
上述したように、磁気スイッチ10A全体の磁電変換スイッチング特性は、S極及びN極で線対称な磁電変換スイッチング特性になる。従って、本実施形態によれば、信号S3のレベルに応じて駆動電流の方向を切り替える2方向駆動のスピニングカレント法を用いて、4方向駆動のスピニングカレント法と同程度に残留オフセット電圧の影響を抑圧可能な磁電変換スイッチング特性を得ることができる。
【0112】
また、2方向駆動のスピニングカレント法を用いるため、1方向当たりの処理時間が同じであっても、4方向駆動のスピニングカレント法に対して、磁極の検知判定に要する処理時間を半分にすることができる。従って、磁気スイッチ10A及び磁気スイッチ10Aを備える半導体装置1Aは、4方向駆動のスピニングカレント法を用いる磁気スイッチ及びこれを備える半導体装置に対して、1方向当たりの処理時間が同じであっても、短時間で信号処理することができる。
【0113】
なお、4方向駆動のスピニングカレント法を用いる磁気スイッチ及びこれを備える半導体装置において、基準クロック周波数を高くすれば、1周期当たりの処理時間を同じにすることができるかもしれない。しかしながら、基準クロック周波数を高くする場合、増幅器や比較器の帯域幅を上げざるを得ず、消費電力が増大してしまう。従って、磁気スイッチ10A及び磁気スイッチ10Aを備える半導体装置1Aは、4方向駆動のスピニングカレント法を用いる磁気スイッチ及びこれを備える半導体装置に対して、全駆動方向(1周期)当たりの処理時間が同じであっても、低消費電力で信号処理することができる。
【0114】
本実施形態によれば、信号S3のレベルに応じて、駆動電流の方向を、水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが、正となるように割り当てるか、負となるように割り当てるかによって、異なる2パターンの線対称な磁電変換スイッチング特性を得ることができる。水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが正となる場合、見かけ上の感度のずれを低感度側へのずれとすることができる。水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPが負となる場合、見かけ上の感度のずれを高感度側へのずれとすることができる。また、本実施形態によれば、異なる2パターンの線対称な磁電変換スイッチング特性から所望する1パターンの線対称な磁電変換スイッチング特性を切り替えて選択することができる。
【0115】
本実施形態によれば、事前の調整作業によって動作点BOP及び復帰点BRPの最適化が可能になる。例えば、駆動電流の方向の組み合わせ毎の磁気オフセットBOSDPのバラツキがシステマティックであって磁気オフセットBOSDPの極性が既知の場合、事前に、磁気オフセットBOSDPのずれ量を予め見越した基準電圧VBRP、VBRPの絶対値を調整すればよい。
【0116】
一方、駆動電流の方向の組み合わせ毎の磁気オフセットBOSDPのランダムバラツキが大きく、極性が既知でない場合、まず、半導体装置1Aが備える磁気スイッチ10Aの磁電変換スイッチング特性における磁気オフセットBOSを測定する。そして、磁電変換スイッチング特性における磁気オフセットBOSの測定結果を考慮したヒューズトリミングやEEPROM書き込み等の調整工程を追加すればよい。
【0117】
本実施形態によれば、水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPの大きさに関わらず残留オフセット電圧の影響をS極側及びN極側に対して線対称に生じさせることができる。従って、水平ホール素子20自身の磁気オフセットBOSDPを抑えるために、必ずしも複数のホール素子セルを並列接続した水平ホール素子20を適用しなくてもよい。本実施形態によれば、チップ占有面積及び消費電流を増大させることなくS極及びN極で線対称な磁電変換スイッチング特性を得ることができる。
【0118】
[第2の実施形態]
図15は、第2の実施形態に係る半導体装置1Bの構成を示す概略図である。
図16(a)~(d)は、半導体装置1Bが備える垂直ホール素子60の構成及び接続状態を示す概略図である。
【0119】
半導体装置1Bは、半導体装置1Aに対して、節点P1から節点P4に接続される水平ホール素子20の代わりに、垂直ホール素子60を備えている点で相違するが、その他の点は同様である。そこで、本実施形態では、垂直ホール素子60を中心に説明し、半導体装置1Aと重複する説明については省略する。
【0120】
半導体装置1Bは、半導体基板2に設けられた磁気スイッチ10Bを備えている。磁気スイッチ10Bは、駆動端子11P、11Nと、出力端子12と、垂直ホール素子60と、スイッチSP1~SP4、SN1~SN4及びスイッチSS1~SS4と、増幅器30と、SH比較器40Aと、制御回路50と、ラッチ回路80Aとを備えている。
【0121】
垂直ホール素子60は、電極61~65を有し、例えば、電極61から電極65が、Y軸方向に沿って所定距離を隔てて配置されている。Y軸方向に沿う方向における最も端に位置する二つの電極61、65は配線66で接続(短絡)されている。電極61、65は、配線66を介して節点P3と接続されている。電極62は節点P2と接続される。電極63は節点P1と接続されている。電極64は節点P4と接続されている。
【0122】
上述したように構成される磁気スイッチ10Bでは、磁気スイッチ10Aと同様に、第1の電流駆動方向~第4の電流駆動方向を定義することができる。例えば、駆動電流が、電極61~65のうち中心に位置する3番目の電極63から最も端である1番目の電極61及び5番目の電極65へ流れる方向を、第1の電流駆動方向とする(図16(a)参照)。駆動電流が、電極61及び電極65から、それぞれ、電極63へ流れる方向、すなわち第1の電流駆動方向と反対方向を、第2の電流駆動方向とする(図16(b)参照)。駆動電流が、電極61~65のうち2番目に位置する電極62から4番目に位置する電極64へ流れる方向を、第3の電流駆動方向とする(図16(c)参照)。駆動電流が、電極64から電極62へ流れる方向、すなわち第3の電流駆動方向と反対方向を、第4の電流駆動方向とする(図16(d)参照)。
【0123】
上述した例に従えば、垂直ホール素子60は、第1の電流駆動方向において電極64と電極62との間に正のホール起電力を発生し、第3の電流駆動方向において電極63と電極61、65との間に正のホール起電力を発生する。一方、垂直ホール素子60は、第2の電流駆動方向において電極64と電極62との間に負のホール起電力を発生し、第4の電流駆動方向において電極63と電極61、65との間に負のホール起電力を発生する。
【0124】
このように構成される半導体装置1B及び磁気スイッチ10Bは、半導体装置1A及び磁気スイッチ10Aと同様に動作させることができる。半導体装置1A及び磁気スイッチ10Aと同様の動作が行われることによって、半導体装置1B及び磁気スイッチ10Bは、半導体装置1A及び磁気スイッチ10Aと同様の効果が得られる。
【0125】
このように、本実施形態によれば、信号S3のレベルに応じて駆動電流の方向を切り替える2方向駆動のスピニングカレント法を用いて、線対称な磁電変換スイッチング特性を得ることができる。すなわち、4方向駆動のスピニングカレント法と同程度に残留オフセット電圧の影響を抑圧可能な磁電変換スイッチング特性を得ることができる等、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる
【0126】
また、垂直ホール素子60は、水平ホール素子20と比べると、その非対称な幾何学構造に起因して、自身の磁気オフセットBOSDPが大きい傾向にある。従って、本実施形態における線対称な磁電変換特性を得られる利点は、第1の実施形態における線対称な磁電変換特性を得られる利点と比べてより顕著な利点といえる。
【0127】
なお、図16に示される垂直ホール素子60は、Y軸に沿う方向に電極61~65が配置され、磁束密度Binの方向がX軸と平行な方向である例であるが、垂直ホール素子60はこの例に限られない。垂直ホール素子60は、電極61~65が配置される方向と、磁束密度Binの方向とが直交する関係にあればよい。例えば、垂直ホール素子60は、X軸に沿う方向に電極61~65が配置され、磁束密度Binの方向がY軸と平行な方向でもよい。
【0128】
[第3の実施形態]
図17は、第3の実施形態に係る半導体装置1Cの構成を示す概略図である。
【0129】
半導体装置1Cは、半導体装置1Aに対して、信号S3に基づいて入力端子と出力先を切り替えるチョッパースイッチ70をさらに備える点と、SH比較器40Aの代わりにSH比較器40Cを備える点と、ラッチ回路80Aの代わりにラッチ回路80Cを備える点とで相違するが、その他の点は同様である。そこで、本実施形態では、上記相違する点を中心に説明し、半導体装置1Aと重複する説明については省略する。
【0130】
半導体装置1Cは、半導体基板2に設けられた磁気スイッチ10Cを備えている。磁気スイッチ10Cは、駆動端子11P、11Nと、出力端子12と、水平ホール素子20と、スイッチSP1~SP4、SN1~SN4と、スイッチSS1~SS4と、チョッパースイッチ70と、増幅器30と、SH比較器40Cと、制御回路50と、ラッチ回路80Cとを備えている。
【0131】
チョッパースイッチ70は、比較回路としてのSH比較器40Cよりも前段に配設される。図17に例示される半導体装置1Cでは、スイッチSS1~SS4の各第2端と増幅器30の正相入力端子INP及び逆相入力端子INNとの間に接続されている。
【0132】
チョッパースイッチ70は、差動入力部と、差動出力部と、差動入力部と差動出力部とを接続する経路を2通りに切り替え可能な切替部と、当該経路を切り替える制御信号である信号S3が入力される制御端子と、を有している。
【0133】
チョッパースイッチ70において、差動入力部は、第1の入力端及び第2の入力端を含んでいる。第1の入力端及び第2の入力端は、それぞれ、スイッチSS1、SS2及びスイッチSS3、SS4の各第2端と接続されている。差動出力部は、第1の出力端及び第2の出力端を含んでいる。第1の出力端及び第2の出力端は、それぞれ、正相入力端子INP及び逆相入力端子INNと接続されている。
【0134】
チョッパースイッチ70の切替部は、第1の入力端及び第2の入力端と第1の出力端及び第2の出力端との間を、それぞれ開閉可能に接続する4個の経路を有している。上記4個の経路は、第1の入力端と第1の出力端とを開閉可能に接続する第1の経路と、第1の入力端と第2の出力端とを開閉可能に接続する第2の経路と、第2の入力端と第1の出力端とを開閉可能に接続する第3の経路と、第2の入力端と第2の出力端とを開閉可能に接続する第4の経路と、から成る。上記4個の経路は、制御端子から入力される制御信号に基づいて、その開閉状態が切り替え可能である。
【0135】
チョッパースイッチ70は、第1の経路及び第4の経路が閉じて第2の経路及び第3の経路が開いている第1の接続状態と、第1の経路及び第4の経路が開いて第2の経路及び第3の経路が閉じている第2の接続状態とに切り替え可能に構成されている。ここで、第1の接続状態は、ストレート結線状態であり、第2の接続状態は、クロス結線状態である。
【0136】
チョッパースイッチ70は、第1の接続状態、すなわちストレート結線状態では、第1の入力端及び第2の入力端から入力された信号が同じ極性のまま第1の出力端及び第2の出力端から出力可能である。また、第2の接続状態、すなわちクロス結線状態では、第1の入力端及び第2の入力端から入力された信号の極性を反転させて(逆の極性にして)第1の出力端及び第2の出力端から出力可能である。
【0137】
図18は、SH比較器40Cの一例を示す回路図である。
SH比較器40Cは、SH比較器40Aに対して、基準電圧回路46の代わりに基準電圧回路48を有する点とで相違するが、その他の点は実質的に相違しない。
【0138】
基準電圧回路48は、所定の基準電圧(定電圧)を出力可能に構成されている。すなわち、SH比較器40Cは、SH比較器40Aから基準電圧を可変する機能が省略されており、水平ホール素子20の動作点BOP及び復帰点BRPを設定するための基準電圧が1本化(1個に統合)されている。これは、チョッパースイッチ70が差動入力される信号の極性を反転出力可能なため、増幅器30以降に入力される信号の極性を正及び負の何れか一方に統一することができるからである。本実施形態の説明では、所定の基準電圧を、正極性の電圧である基準電圧VBOPとする。
【0139】
ラッチ回路80Cは、ラッチ回路80Aに対して、入力される信号S2に対して出力する信号S3を決定するロジック、すなわち、ラッチ出力信号生成部(図示省略)が異なるが、その他の点は実質的に同様である。ラッチ回路80Cは、入力される信号S2及び逆相基準クロック信号CLKXに基づいて、信号S2と同じレベルを有する信号又は信号S2と逆のレベルを有する信号を信号S3として出力可能に構成されている。すなわち、ラッチ回路80Cは、トグル動作可能に構成される、いわゆるトグル型ラッチ回路である。
【0140】
次に、磁気スイッチ10Cの作用について説明する。
磁気スイッチ10Cでは、磁気スイッチ10Aと同様にして、水平ホール素子20の出力信号がスイッチSS1~SS4を経由して差動入力部である第1の入力端子及び第2の入力端子からチョッパースイッチ70に入力される。また、ラッチ回路80Aから出力される信号S3が制御端子からチョッパースイッチ70に入力される。
【0141】
チョッパースイッチ70は、信号S3のレベルに応じて、差動入力される信号の極性を反転させずにそのまま出力する第1の接続状態及び差動入力される信号の極性を反転させて出力する第2の接続状態との何れか一方に遷移する。従って、チョッパースイッチ70は、信号S3のレベルに応じて、差動入力される信号をそのまま又は差動入力される信号の極性を反転させて出力する。チョッパースイッチ70に差動入力される信号は、信号S3のレベルに応じて極性が切り替えられるため、Bin=0(後述する図19及び図20)の直線に対して線対称な磁電変換スイッチング特性が得られる。
【0142】
チョッパースイッチ70の第1の出力端子及び第2の出力端子から出力された信号は、正相入力端子INP及び逆相入力端子INNに入力される。増幅器30内での動作は、上述した通りである。
【0143】
増幅器30に続くSH比較器40Cでは、SH比較器40Aと同様に、サンプリングした第1の期間Φ1における信号S1と第2の期間Φ2における信号S1との差分信号としての差分電圧信号と、所定の基準電圧との比較判定が行われる。SH比較器40Cは、差分電圧信号と所定の基準電圧との比較判定の結果とレベルとが対応した信号S2を出力する。所定の基準電圧は、基準電圧回路48から出力され、信号S3のレベルの如何によらない定電圧である。信号S2はSH比較器40Cからラッチ回路80Cに入力される。
【0144】
ラッチ回路80Cは、第2の期間Φ2の最後のタイミング、すなわち逆相基準クロック信号CLKXの立下りエッジで、トグル動作を行う。このトグル動作を具体的に説明すれば、信号S2のレベルがHレベルの場合、現在保持している信号S3のレベルから逆のレベルに切り替えられた信号S3が出力される。信号S2のレベルがLレベルの場合、現在保持している信号S3のレベルを保持した信号S3が出力される。ラッチ回路80Cから出力された信号S3は出力端子12、制御回路50及びチョッパースイッチ70に伝送される。制御回路50における動作は上述した通りである。
【0145】
続いて、磁気スイッチ10Cの磁電変換スイッチング特性について説明する。
磁気スイッチ10Cでは、磁気スイッチ10Aと同様に、駆動電流の方向の組み合わせを切り替えるだけでなく、さらに第1の方向対選択時のオフセットキャンセル後の磁電変換特性を信号S3に応じて、チョッパースイッチ70に入力される信号の極性を反転させて出力するか、反転させずに出力するかのどちらに切り替える。
【0146】
図19は、半導体装置1Cの水平ホール素子20自身の磁気オフセットが正である場合における磁束密度Binに対する信号S1及び信号S3の関係を説明する概略図である。
【0147】
図19において、実線LDP1Sは、駆動電流の方向対が第1の方向対である場合に磁気オフセットBOSDPが正となる磁電変換特性を示している。実線LDP2Cは、駆動電流の方向対が第2の方向対である場合に磁気オフセットBOSDPが負となる磁電変換特性を示している。破線BLid1は、駆動電流が第1の方向対である場合に両方向における磁電変換特性の差分をとった磁電変換特性である。破線BLid2は、駆動電流が第2の方向対である場合に両方向における磁電変換特性の差分をとった磁電変換特性である。白抜き矢印(1)、(1a)、(2)、(3)、(3a)及び(4)は、磁電変換特性のヒステリシスの軌跡を表している。
【0148】
また、図19に示される磁電変換特性は、信号S3がHレベルかつ第1の期間Φ1では第3の方向が選択され、信号S3がHレベルかつ第2の期間Φ2では第1の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第1の期間Φ1では第4の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第2の期間Φ2では第2の方向が選択される場合の例である。また、この例では、信号S3がHレベルの期間では、チョッパースイッチ70は第1の接続状態としてのストレート結線状態にある。信号S3がLレベルの期間では、チョッパースイッチ70は第2の接続状態としてのクロス結線状態にある。
【0149】
磁気スイッチ10Cは、チョッパースイッチ70を備えることによって、チョッパースイッチ70に入力される信号の極性を反転させて出力することができる。従って、実線LDP1Sと後述する図20に示される実線LDP1Cとは、横軸である磁束密度Binに対して対称な線分となる。また、実線LDP2Cと後述する図20に示される実線LDP2Sとは、横軸である磁束密度Binに対して対称な線分となる。
【0150】
白抜き矢印(1)は、信号S3がHレベルであって、磁束密度BinがS極側に増加するときの実線LDP1Sに対応した磁電変換特性上の軌跡を表している。SH比較器40Cに入力される電圧、すなわち信号S1の電圧が基準電圧VBOPを上回る(ΔV・G>VBOP)と、信号S3はLレベルへ遷移する。
【0151】
信号S3がLレベルへ遷移すると、選択される駆動電流の方向が第2の方向対に切り替わり、さらにチョッパースイッチ70がストレート結線状態からクロス結線状態に切り替わる。信号S3のレベル遷移に伴って、実線LDP1Sに対応した磁電変換特性上の軌跡から実線LDP2Cに対応した磁電変換特性上の軌跡へと遷移する(白抜き矢印(2))。その後、さらに磁束密度BinがS極側に増加する場合、電圧Vは実線LDP2Cに沿ってさらに負側に増大する(白抜き矢印(3a))。
【0152】
一方、磁束密度BinがS極減少、Bin=0、さらにN極増加に転じる際の軌跡は白抜き矢印(3)である。さらに、磁束密度BinがN極側に増加し、信号S1の電圧が基準電圧VBOPを上回る(ΔV・G>VBOP)と、信号S3はHレベルへ遷移する。
【0153】
信号S3がHレベルへ遷移すると、選択される駆動電流の方向が第1の方向対に切り替わり、さらにチョッパースイッチ70がクロス結線状態からストレート結線状態に切り替わる。信号S3のレベル遷移に伴って、実線LDP2Cに対応した磁電変換特性上の軌跡から実線LDP1Sに対応した磁電変換特性上の軌跡へと遷移する(白抜き矢印(4))。その後、さらに磁束密度BinがN極側に増加する場合、電圧Vは実線LDP1Sに沿ってさらに負側に増大する(白抜き矢印(1a))。一方、磁束密度BinがN極減少、Bin=0、さらにS極増加に転じる際の軌跡は、上述した白抜き矢印(1)である。
【0154】
図20は、半導体装置1Cの水平ホール素子20自身の磁気オフセットが負である場合における磁束密度Binに対する信号S1及び信号S3の関係を説明する概略図である。また、図21は、部分Pa(図20参照)を拡大して示した拡大図である。
【0155】
図20において、実線LDP1Cは、駆動電流の方向対が第1の方向対である場合に磁気オフセットBOSDPが正となる磁電変換特性を示している。実線LDP2Sは、駆動電流の方向対が第2の方向対である場合に磁気オフセットBOSDPが負となる磁電変換特性を示している。破線BLid1は、駆動電流が第1の方向対である場合に両方向における磁電変換特性の差分をとった磁電変換特性である。破線BLid2は、駆動電流が第2の方向対である場合に両方向における磁電変換特性の差分をとった磁電変換特性である。白抜き矢印(1)、(1a)、(2)、(3)、(3a)及び(4)は、磁電変換特性のヒステリシスの軌跡を表している。
【0156】
また、図20に示される磁電変換特性は、信号S3がHレベルかつ第1の期間Φ1では第4の方向が選択され、信号S3がHレベルかつ第2の期間Φ2では第2の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第1の期間Φ1では第3の方向が選択され、信号S3がLレベルかつ第2の期間Φ2では第1の方向が選択される場合の例である。また、この例では、信号S3がHレベルの期間では、チョッパースイッチ70は第1の接続状態としてのストレート結線状態にある。信号S3がLレベルの期間では、チョッパースイッチ70は第2の接続状態としてのクロス結線状態にある。
【0157】
白抜き矢印(1)は、信号S3がHレベルで磁束密度BinがS極側に増加するときの実線LDP2Sに対応した磁電変換特性の軌跡を表している。SH比較器40Cに入力される電圧、すなわち信号S1の電圧が基準電圧VBOPを上回る(ΔV・G>VBOP)と、信号S3はLレベルへ遷移する。
【0158】
信号S3がLレベルへ遷移すると、選択される駆動電流の方向が第1の方向対に切り替わり、さらにチョッパースイッチ70がストレート結線状態からクロス結線状態に切り替わる。信号S3のレベル遷移に伴って、実線LDP2Sに対応した磁電変換特性上の軌跡から実線LDP1Cに対応した磁電変換特性上の軌跡へと遷移する(白抜き矢印(2))。その後、さらに磁束密度BinがS極側に増加する場合、電圧Vは実線LDP1Cに沿ってさらに正側に増大する(白抜き矢印(3a))。
【0159】
一方、磁束密度BinがS極減少、Bin=0、さらにN極増加に転じる際の軌跡は白抜き矢印(3)である。さらに、磁束密度BinがN極側に増加し、信号S1の電圧が基準電圧VBOPを上回る(ΔV・G>VBOP)と、信号S3はHレベルへ遷移する。
【0160】
信号S3がHレベルへ遷移すると、選択される駆動電流の方向が第2の方向対に切り替わり、さらにチョッパースイッチ70がクロス結線状態からストレート結線状態に切り替わる。信号S3のレベル遷移に伴って、実線LDP1Cに対応した磁電変換特性上の軌跡から実線LDP2Sに対応した磁電変換特性上の軌跡へと遷移する(白抜き矢印(4))。
【0161】
その後、さらに磁束密度BinがN極側に増加する場合、電圧Vは実線LDP2Sに沿ってさらに負側に増大する(白抜き矢印(1a))。一方、磁束密度BinがN極減少、Bin=0、さらにS極増加に転じる際の軌跡は、上述した白抜き矢印(1)である。本実施形態では、磁電変換特性におけるヒステリシスの軌跡の形状は8の字状である。このように、本実施形態の磁電変換特性におけるヒステリシスの軌跡の形状は、第1、2の実施形態の磁電変換特性におけるヒステリシスの軌跡の形状、すなわち平行四辺形状と異なっている。
【0162】
本実施形態では、例えば基準電圧VBOP等、所定の基準電圧を1個適用して磁電変換特性を切り替えることができる。また、本実施形態では、1個の基準電圧を適用して磁電変換特性を切り替えるため、磁気スイッチ10Cは基準電圧回路46よりも回路規模が小さい基準電圧回路48を適用することができる。従って、磁気スイッチ10Cは、磁気スイッチ10A、10Bよりも回路規模を小さく構成することができる。
【0163】
本実施形態によれば、1個の基準電圧に対して磁電変換特性を切り替えることによって、基準電圧VBOP及び基準電圧VBRPからなる2個の基準電圧に対して磁電変換特性を切り替える第1、2の実施形態よりもS極/N極間の非対称性の原因である基準電圧のバラツキを抑制することが容易である。また、磁気スイッチ10Cの基準電圧VBOPのバラツキは、磁気スイッチ10A、10Bにおける2個の独立した基準電圧VBOP及び基準電圧VBRPのバラツキよりも抑制される。従って、本実施形態によれば、S極/N極間の対称性が良好な磁電変換スイッチング特性を得ることができる。
【0164】
なお、本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した例以外にも様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更をすることができる。例えば、駆動制御信号Sd1~Sd4及び伝達制御信号St1、St2を所定時間遅延させて出力する遅延素子やバッファをさらに設けてもよい。
【0165】
上述した半導体装置1C及び磁気スイッチ10Cは、ホール素子として水平ホール素子20を備える例であるが、半導体装置1B及び磁気スイッチ10Bのように、ホール素子として水平ホール素子20の代わりに垂直ホール素子60を備えていてもよい。また、チョッパースイッチ70は、同様の機能を有する他の回路でもよい。すなわち、磁気スイッチ10Cにおいて、上述した差動入力部、差動出力部、切替部及び制御端子を有し、制御端子から入力される信号S3に基づいて、入力された信号を同相又は逆相に切り替えて出力可能な回路を、チョッパースイッチ70に代えて適用可能である。
【0166】
例えば、チョッパースイッチ70に代えて、制御端子から入力される信号S3に基づいて入(短絡)又は切(開放)するスイッチを信号伝送経路に並列に配置して構成されるスイッチ回路を適用することができる。このスイッチ回路が適用される磁気スイッチ10Cは、チョッパースイッチ70が適用される磁気スイッチ10Cと比べて、直列抵抗成分が抑制され、より良好な雑音特性を得ることができる。従って、チョッパースイッチ70の代わりに上記スイッチ回路を適用すれば、再現性のよい磁電変換スイッチング特性を有する磁気スイッチ10Cを提供することができる。
【0167】
磁気スイッチ10Cは、チョッパースイッチ70及び極性反転機能を有していない増幅器30に代えて、極性反転機能を有する増幅器30を備えてもよい。
【0168】
また、上述した磁気スイッチ10A~10Cは、交番検知型の磁気スイッチであるが、両極検知型の磁気スイッチとして構成されてもよい。磁気スイッチ10A~10Cが両極検知型の磁気スイッチとして構成される場合、磁気スイッチ10A~10Cを、信号S3の信号レベルに応じて、増幅器30の増幅率又は増幅器30の増幅率及びSH比較器40A、40Cの所定の基準電圧の絶対値を、切り替え可能に構成すればよい。
【0169】
増幅器30の増幅率又は増幅器30の増幅率及びSH比較器40A、40Cの所定の基準電圧の絶対値を切り替え可能な構成は、例えば、論理回路、信号S3に基づいて開閉するスイッチを含むスイッチ回路又はこれらの組み合わせた回路によって形成可能である。なお、磁気スイッチ10A~10Cを両極検知型の磁気スイッチとして形成する場合、組み合わされる磁石の極性が管理されていないとしても、本実施形態に係る半導体装置を備える磁性体検出機構の検出距離のバラツキを低減することができる。
【0170】
また、上述した磁気スイッチ10A~10Cは、いわゆる片極検出型磁気スイッチとして構成されてもよい。片極検出型磁気スイッチは、S極及びN極の何れか一方の極性に、動作点BOP及び復帰点BRPの両方を有する磁気スイッチである。磁気スイッチ10A~10Cが片極検出型磁気スイッチとして構成される場合、製造時に制御論理の切替工程を追加すれば、S極及びN極の何れか一方の極性に動作点BOP及び復帰点BRPの両方を有するように、動作点BOP及び復帰点BRPを調整することができる。
【0171】
上述した実施形態において、水平ホール素子20は、正方形の四隅に形成された電極21~24を有している構成が例示されているが(例えば、図1、17参照)、これに限定されない。水平ホール素子20は、少なくとも駆動電流の方向が上述した第1~4の方向の4方向を定義可能な形状であればよい。すなわち、水平ホール素子20は、正方形の他、十字型、八角形、円形等の形状に形成されていてもよい。また、電極21~24の数は、4個以上でもよい。
【0172】
また、上述した実施形態において、5個の電極61~65、すなわち5端子を有する垂直ホール素子60が例示されているが、これに限定されない。垂直ホール素子60は、少なくとも駆動電流の方向が上述した第1~4の方向の4方向を定義可能に構成されていればよい。
【0173】
上述した実施形態において、論理回路57は、図3に例示される論理演算素子及び回路構成に限定されない。上述した入力信号が入力された場合に同じ論理演算結果が得られる回路であれば、使用する論理演算素子及び回路構成は問わない。
【0174】
また、上述した実施形態において、制御論理パターンを切り替える手段の一例として、制御論理パターンを切り替えるスイッチ回路58を説明したが、制御論理パターンを切り替える手段は、これに限定されない。例えば、スイッチSL1a、SL2a、SL1b、SL2b、SL1c、SL2cは、機械式スイッチ、トランジスタ等の電子式スイッチ、又はこれらの組み合わせでもよい。
【0175】
また、スイッチSL1a、SL2a、SL1b、SL2b、SL1c、SL2cは、制御端子を有するスイッチでもよい。制御端子から入力される信号に応じて開閉動作可能なスイッチSL1a、SL2a、SL1b、SL2b、SL1c、SL2cを適用する場合、注目する要因の変化に応じて第1の制御論理パターンと第2の制御論理パターンとを自動的に切替可能な半導体装置及び磁気スイッチを構築することができる。
【0176】
例えば、注目する要因をホール素子の電圧オフセットの非対称性の極性とし、磁気スイッチ10A~10Cに、ホール素子の電圧オフセットの非対称性の極性を検知する検知回路をさらに設ける。検知回路はホール素子の電圧オフセットの非対称性の極性を検知した結果に基づく信号を出力する。磁気スイッチは、検知回路から出力される信号をスイッチSL1a、SL2a、SL1b、SL2b、SL1c、SL2cの各制御端子に入力するように構成される。このように構成される磁気スイッチ及びこれを備える半導体装置は、ホール素子の電圧オフセットの非対称性の極性に応じて、第1の制御論理パターン又は第2の制御論理パターンに制御論理パターンを切り替えることができる。
【0177】
なお、ホール素子の電圧オフセット差分の絶対値を評価する回路をさらに設け、この回路の評価結果を示す信号に基づいて、増幅器30の増幅率G、SH比較器40Aの基準電圧VBOP及び基準電圧VBRPの少なくとも何れかを補正する構成としてもよい。この場合、磁電変換スイッチング特性上の磁気オフセットBOSをゼロに出来るだけでなく、ホール素子の磁気オフセットBOSDPで生じる動作点BOP及び復帰点BRPの設計値からのズレを抑制することができる。
【0178】
さらに、制御論理パターンを切り替える手段は、第1の制御論理パターンに従った制御動作を行う制御回路と、第2の制御論理パターンに従った制御動作を行う第2の制御回路と、上記制御回路及び上記第2の制御回路の一方に切り替える制御回路選択スイッチとを備えて構成されていてもよい。
【0179】
例えば、図3に例示されるスイッチSL1a、SL1b、SL1cを「入」にし、スイッチSL2a、SL2b、SL2cを「切」にした接続状態の制御回路50を第1の制御論理パターンに従った制御動作を行う制御回路とする。また、スイッチSL1a、SL1b、SL1cを「切」にし、スイッチSL2a、SL2b、SL2cを「入」にした接続状態の制御回路50を第2の制御回路とする。この場合、制御回路選択スイッチは、制御回路と第2の制御回路とを並列接続し、信号S3が入力される先及び駆動制御信号Sd1~Sd4及び伝達制御信号St1、St2が出力される元となる回路を、制御回路とするか、第2の制御回路とするかを切替可能に構成されていればよい。
【0180】
上述した実施形態において、スイッチ回路58は、制御回路50に備えられているが、制御回路50とは別の独立した回路として形成されていてもよい。この場合、スイッチ回路58によって信号レベルが切り替えられた基準クロック信号CLK及び信号S3が制御回路50に入力される。
【0181】
上述した実施形態において、水平ホール素子20及び垂直ホール素子60は単一の素子である場合を説明しているが、磁気オフセットBOSDPの大きさを抑える観点から、複数のホール素子セルを並列接続した構成を採用してもよい。複数のホール素子セルを並列接続した構成によれば、動作点BOP及び復帰点BRPの設計値からのズレ分を小さくできる。従って、複数のホール素子セルを並列接続して構成されるホール素子を適用した磁気スイッチ10A~10Cは、複数のホール素子セルを並列接続せずに構成される、すなわち単一素子であるホール素子を備える磁気スイッチ10A~10Cよりも設計値に近い磁電変換スイッチング特性を得ることができる。
【0182】
また、処理速度を重視する場合、複数のホール素子セルを並列接続して構成されるホール素子を備える磁気スイッチ10A~10Cの方が、ホール素子の出力抵抗及び時定数を抑圧することができるので、単一素子で構成されるホール素子を備える磁気スイッチ10A~10Cよりも処理速度を高速化できる。
【0183】
上述した実施形態において、駆動端子11Pが第1の電源に、駆動端子11Nが第2の電源に接続される場合、すなわち磁気スイッチ10A~10Cの駆動電源が定電圧源である場合を説明したが、磁気スイッチ10A~10Cの駆動電源は定電流源でもよい。
【0184】
駆動電源として定電圧源を適用する場合、駆動用の定電流源回路が不要になるので、駆動電源として定電流源を適用する場合と比べて回路規模が小さくなる利点がある。また、駆動電源として定電流源を適用する場合には、駆動電源として定電圧源を適用する場合と比べてホール素子の残留オフセット電圧が比較的小さくなる利点がある。
【0185】
また、上述した実施形態において、磁気スイッチ10A~10Cの信号処理は電圧モードである場合を説明したが、その一部又は全部を電流モードにしてもよい。電流モードの信号処理は、電圧モードの信号処理よりも高速であるので、電圧モードの信号処理を採用した場合と比べて基準クロック周波数を上げやすい。従って、信号処理が電流モードの磁気スイッチ10A~10Cは、信号処理が電圧モードの磁気スイッチ10A~10Cと比べて、検知精度及び信号処理速度をさらに高めることができる。
【0186】
上述した実施形態では、差動入力単相出力型の増幅器30及び単相入力型のSH比較器40A、40Cを適用した磁気スイッチ10A~10Cの構成例が説明されている。しかしながら、増幅器30及びSH比較器40A、40Cは、この例に限定されない。磁気スイッチ10A~10Cにおいて、差動入出力型の増幅器30及び差動入力型のSH比較器40A、40Cが適用されてもよい。この場合、電源等から重畳する同相雑音に対して、相対的にロバストな磁気スイッチ10A~10Cを提供することができる。
【0187】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0188】
1A~1C 半導体装置
2 半導体基板
10A~10C 磁気スイッチ
20 水平ホール素子
21~24 電極
30 増幅器
40A、40C SH比較器
50 制御回路
51a、51b 入力端子
56a~56f 出力端子
57 論理回路(制御信号生成回路)
58 スイッチ回路(第2のスイッチ回路)
60 垂直ホール素子
70 チョッパースイッチ
80A、80C ラッチ回路
SP1~SP4、SN1~SN4 スイッチ(第1のスイッチ回路)
Φ1、Φ2 第1の期間、第2の期間
CLK 基準クロック信号
S3 信号(ラッチ出力信号)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21