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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】モータ制御装置及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
H02P27/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021006524
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110849
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中澤 一瑛
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-316218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを制御するモータ制御装置において、
モータ制御用のPWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出するエッジ検出部と、
前記エッジ検出部により検出された立ち上がりエッジの検出情報を記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部とは別の記憶部であり、前記エッジ検出部により検出された立ち下がりエッジの検出情報を記憶する第2記憶部と、
前記第1記憶部に記憶された前記立ち上がりエッジの検出情報に基づいて、ソフトウェア処理用変数への前記立ち上がりエッジの検出情報を格納する第1の割り込み処理を実行する第1処理部と、
前記第2記憶部に記憶された前記立ち下がりエッジの検出情報に基づいて、ソフトウェア処理用変数への前記立ち下がりエッジの検出情報を格納する第2の割り込み処理を実行する第2処理部と、を備え
前記第1記憶部は、前記PWM信号の立ち上がりがあり、かつ、前記立ち上がりの後のレベル持続時間が第1フィルタ設定時間を超えた場合に、前記立ち上がりに係る前記立ち上がりエッジの検出情報を記憶するモータ制御装置。
【請求項2】
前記第2記憶部は、前記PWM信号の立ち下がりがあり、かつ、前記立ち下がりの後のレベル持続時間が第2フィルタ設定時間を超えた場合に、前記立ち下がりに係る前記立ち下がりエッジの検出情報を記憶する、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記モータは、車両のエンジンルームに配置されるファンユニット用のブラシレスモータである、請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
モータを制御するモータ制御方法において、
モータ制御用のPWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出するエッジ検出ステップと、
第1記憶部に、前記エッジ検出ステップにより検出された立ち上がりエッジの検出情報を記憶するステップと、
前記第1記憶部とは異なる第2記憶部に、前記エッジ検出ステップにより検出された立ち下がりエッジの検出情報を記憶するステップと、
前記第1記憶部に記憶された前記立ち上がりエッジの検出情報に基づいて、ソフトウェア処理用変数への前記立ち上がりエッジの検出情報を格納する第1の割り込み処理を実行するステップと、
前記第2記憶部に記憶された前記立ち下がりエッジの検出情報に基づいて、ソフトウェア処理用変数への前記立ち下がりエッジの検出情報を格納する第2の割り込み処理を実行するステップと、を備え
前記立ち上がりに係る前記立ち上がりエッジの検出情報の前記第1記憶部への記憶が、前記PWM信号の立ち上がりがあり、かつ、前記立ち上がりの後のレベル持続時間が第1フィルタ設定時間を超えた場合に行われるモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置及びモータ制御方法に関し、特に、モータ制御用のPWM(Pulse Width Modulation)信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに基づいてモータを制御するモータ制御装置及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PWM信号の立ち上がりエッジを検出し、一の立ち上がりエッジから次の一の立ち上がりエッジまでのオン時間を計測し、PWM2周期分の時間に対するPWM2周期分の合計のオン時間の割合をデューティ比として出力する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-31374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PWM信号の立ち上がりエッジを検出した後に、すぐにPWM信号の立ち下がりが発生した場合、立ち上がりエッジの検出情報が立ち下がりエッジの検出情報によって上書きされてしまうおそれがある。同様に、PWM信号の立ち下がりエッジを検出した後に、すぐにPWM信号の立ち上がりが発生した場合、立ち下がりエッジの検出情報が立ち上がりエッジの検出情報によって上書きされてしまうおそれがある。このような上書きが行われると、PWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのそれぞれの検出情報に基づく各割り込み処理を所望の態様で実現できないおそれがある。そして、このような問題点は、PWM信号の周期(入力周波数)が高速化すると顕著となる。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、PWM信号の周期が高速化しても、PWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのそれぞれの検出情報に基づく各割り込み処理を確実に実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、モータを制御するモータ制御装置において、
モータ制御用のPWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出するエッジ検出部と、
前記エッジ検出部により検出された立ち上がりエッジの検出情報を記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部とは別の記憶部であり、前記エッジ検出部により検出された立ち下がりエッジの検出情報を記憶する第2記憶部と、
前記第1記憶部に記憶された前記立ち上がりエッジの検出情報に基づいて、第1の割り込み処理を実行する第1処理部と、
前記第2記憶部に記憶された前記立ち下がりエッジの検出情報に基づいて、第2の割り込み処理を実行する第2処理部と、
を備えるモータ制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、PWM信号の周期が高速化しても、PWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのそれぞれの検出情報に基づく各割り込み処理を確実に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例のブラシレスモータが使用された装置の構成を示す斜視図である。
図2】ブラシレスモータの制御装置の構成の要部を示すブロック図である。
図3】本実施例の制御装置による動作の説明図である。
図4】比較例による動作の説明図である。
図5】本実施例のレベル時間フィルタの説明図である。
図6】比較例によるレベルフィルタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。以下では、まずブラシレスモータMが使用された装置の構成の概要を説明してから、ブラシレスモータMの制御装置10(モータ制御装置の一例)について説明する。
【0010】
図1は、本実施例のブラシレスモータMが使用された装置の構成を示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施例のブラシレスモータMは、例えば、吸い込み式のファンユニットF(図1)を駆動する装置の一部(すなわちファンモータ)として使用される。なお、ブラシレスモータMは、例えば、3相モータである。ファンユニットFは、ブラシレスモータMによる回転駆動力により回転することで、冷却対象物(例えばラジエータ)に空気を送ることができる。
【0012】
図2は、ブラシレスモータMの制御装置10の構成の要部を示すブロック図である。
【0013】
図2に示すように、制御装置10は、エッジ検出部12と、第1記憶部14と、立ち上がり割り込み処理部16(第1処理部の一例)と、第2記憶部18と、立ち下がり割り込み処理部20(第2処理部の一例)とを、備えている。
【0014】
エッジ検出部12は、ハードウェアによるエッジ検出回路の形態であり、エッジ検出部12には、モータ制御用のPWM信号が入力される。なお、モータ制御用のPWM信号は、制御装置10よりも上位のECU(Electronic Control Unit)により生成されてもよいし、制御装置10内で生成されてもよい。モータ制御用のPWM信号は、ブラシレスモータMの駆動に関する目標値を表す信号であり、所定のデューティ範囲でデューティ(単一周期あたりのオン時間の割合)が変化する。例えば、デューティが高い状態は、ブラシレスモータMの高出力状態又は高回転状態に対応し、デューティが低い状態は、ブラシレスモータMの低出力状態又は低回転状態に対応する。
【0015】
PWM信号は、例えば所定周波数のキャリア信号(例えば三角波信号)に基づいて生成される。この場合、所定周波数が高くなるほど、PWM信号の周期が短くなる(すなわち高速化する)。
【0016】
エッジ検出部12は、モータ制御用のPWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出する。PWM信号の立ち上がりエッジは、PWM信号のレベル(出力レベル)がLowレベルからHighレベルに変化する際の、当該変化に起因して生じる。PWM信号の立ち下がりエッジは、PWM信号のレベル(出力レベル)がHighレベルからLowレベルに変化する際の、当該変化に起因して生じる。
【0017】
本実施例では、エッジ検出部12は、レベル時間フィルタによってノイズ信号を除去する態様で、モータ制御用のPWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出する。
【0018】
具体的には、エッジ検出部12は、PWM信号のHighレベルへの立ち上がりがあり、かつ、立ち上がりの後のHighレベルの持続時間(すなわちオン時間)がフィルタ設定時間ΔT1(第1フィルタ設定時間の一例)を超えた場合に、当該立ち上がりに係る立ち上がりエッジを検出する。フィルタ設定時間ΔT1は、設計時に設定される適合値であり、例えば、利用するデューティ範囲のうちの最小デューティに係るオン時間よりも短く設定される。
【0019】
また、エッジ検出部12は、PWM信号のLowレベルへの立ち下がりがあり、かつ、立ち下がりの後のLowレベルの持続時間(すなわちオフ時間)がフィルタ設定時間ΔT2(第2フィルタ設定時間の一例)を超えた場合に、当該立ち下がりに係る立ち下がりエッジを検出する。フィルタ設定時間ΔT2は、設計時に設定される適合値であり、例えば、利用するデューティ範囲のうちの最大デューティに係るオフ時間よりも短く設定される。なお、フィルタ設定時間ΔT1とフィルタ設定時間ΔT2は同じであってもよい。
【0020】
第1記憶部14は、例えばレジスタにより実現される。第1記憶部14には、エッジ検出部12により検出された立ち上がりエッジの検出時間情報(立ち上がりエッジの検出情報の一例)が記憶される。第1記憶部14に記憶される立ち上がりエッジの検出時間情報は、エッジ検出部12により新たな立ち上がりエッジが検出されるごとに更新されてよい。
【0021】
第2記憶部18は、例えばレジスタにより実現される。ただし、第2記憶部18は、第1記憶部14とは異なる。第2記憶部18には、エッジ検出部12により検出された立ち下がりエッジの検出時間情報(立ち下がりエッジの検出情報の一例)が記憶される。第2記憶部18に記憶される立ち下がりエッジの検出時間情報は、エッジ検出部12により新たな立ち下がりエッジが検出されるごとに更新されてよい。
【0022】
立ち上がり割り込み処理部16は、例えばCPUがプログラムを実行することで実現される。立ち上がり割り込み処理部16には、エッジ検出部12により立ち上がりエッジが検出されると、第1記憶部14に記憶された立ち上がりエッジの検出時間情報に基づいて、立ち上がり割り込み処理を実行する。立ち上がり割り込み処理の内容は、例えば第1記憶部14からソフトウェア処理用変数へ立ち上がりエッジの検出時間情報の格納等である。
【0023】
立ち下がり割り込み処理部20は、例えばCPUがプログラムを実行することで実現される。立ち下がり割り込み処理部20には、エッジ検出部12により立ち下がりエッジが検出されると、第2記憶部18に記憶された立ち下がりエッジの検出時間情報に基づいて、立ち下がり割り込み処理を実行する。立ち下がり割り込み処理の内容は、例えば第2記憶部18からソフトウェア処理用変数へ立ち下がりエッジの検出時間情報の格納等である。
【0024】
次に、図3以降を参照して、本実施例の制御装置10の効果について、比較例と対比しながら、説明する。
【0025】
図3は、本実施例の制御装置10による動作の説明図であり、横軸に時間を取り、上から順に、PWM信号の時系列波形、第1記憶部14内の状態の時系列、第2記憶部18内の状態の時系列、及び、立ち上がり割り込み処理部16と立ち下がり割り込み処理部20の各処理タイミングが、示されている。
【0026】
図4は、比較例による動作の説明図であり、横軸に時間を取り、上から順に、PWM信号の時系列波形、エッジ時間情報記憶部(図示せず)内の状態の時系列、及び、立ち上がり割り込み処理部(図示せず)と立ち下がり割り込み処理部(図示せず)の各処理タイミングが、示されている。
【0027】
比較例は、本実施例に対して、第1記憶部14及び第2記憶部18に代えて、一の記憶領域のみを備えているエッジ時間情報記憶部が利用される点が異なる。
【0028】
図4に示すように、比較例の場合、時刻t1でPWM信号の立ち上がりエッジが生じると、矢印300に示すように、エッジ時間情報記憶部に、当該立ち上がりエッジの時間情報(図4では、「立ち上がり時間情報(k)」と略)が記憶される。この例では、時刻t1の後、当該立ち上がりエッジの検出に応じて実行される立ち上がり割り込み処理の開始の時刻t11までの時刻t2にて、PWM信号の立ち下がりエッジが生じている。この場合、矢印301に示すように、エッジ時間情報記憶部に、時刻t1に係る立ち上がりエッジの時間情報に上書きされる態様で、時刻t2に係る立ち下がりエッジの時間情報(図4では、「立ち下がり時間情報(k)」と略)が記憶される。そして、時刻t2の後、時刻t11で立ち上がり割り込み処理が開始される。なお、このような時間の遅れ(すなわち、立ち上がりエッジの検出時から、立ち上がり割り込み処理の開始時までの時間)は、ソフトウェア処理に起因して生じる。すなわち、立ち上がりエッジの検出時から、立ち上がりエッジの時間情報の記憶までは、エッジ検出部12によるハードウェア処理により比較的少ない遅延(図4の矢印310参照)で実現できる反面、立ち上がりエッジの検出時から立ち上がり割り込み処理の開始時までは、立ち上がり割り込み処理部16によるソフトウェア処理により比較的大きい遅延(以下、「割り込み処理までの遅延」とも称する)が生じる。このような割り込み処理までの遅延は、立ち下がりエッジの場合も同様である(図4の矢印311参照)。
【0029】
そして、図4に示す例では、時刻t11で開始された立ち上がり割り込み処理において、立ち上がりエッジの時間情報を参照するためにエッジ時間情報記憶部へアクセスする際には(図4の矢印320’参照)、エッジ時間情報記憶部内の立ち上がりエッジの時間情報は、時刻t2に係る立ち下がりエッジの時間情報で上書きされてしまっている。この場合、立ち上がり割り込み処理を所望の態様で実現できないおそれがある。このような問題は、立ち下がり割り込み処理についても同様に生じる。
【0030】
このように、比較例では、割り込み処理までの遅延に起因して、立ち上がり割り込み処理又は立ち下がり割り込み処理の開始までに、エッジ時間情報記憶部内の時間情報が更新(上書き)されてしまう可能性がある。このような可能性は、PWM信号の周期が短くなる(すなわち高速化する)ほど高くなる。
【0031】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、第1記憶部14と第2記憶部18とが別々に設けられるので、立ち上がりエッジの時間情報が立ち下がりエッジの時間情報により上書きされたり、立ち下がりエッジの時間情報が立ち上がりエッジの時間情報により上書きされたりする可能性を無くすことができる。この結果、本実施例によれば、割り込み処理までの遅延に起因して、立ち上がり割り込み処理又は立ち下がり割り込み処理の開始までに、立ち下がりエッジ又は立ち上がりエッジが発生した場合でも、比較例で生じるような上述した問題点が生じることがない。
【0032】
具体的には、本実施例の場合、時刻t1でPWM信号の立ち上がりエッジが生じると、矢印300に示すように、第1記憶部14に、当該立ち上がりエッジの時間情報(図3では、「立ち上がり時間情報(k)」と略)が記憶される。なお、エッジ検出部12においてレベル時間フィルタが利用される場合は、第1記憶部14への立ち上がりエッジの時間情報の記憶処理が若干遅れうる(図5参照)が、ここでは、フィルタ設定時間ΔT1やフィルタ設定時間ΔT2は、十分小さいものとする。この例では、時刻t1の後、当該立ち上がりエッジの検出に応じて実行される立ち上がり割り込み処理の開始の時刻t11までの時刻t2にて、PWM信号の立ち下がりエッジが生じている。この場合、矢印301に示すように、第2記憶部18に、時刻t2に係る立ち下がりエッジの時間情報(図3では、「立ち下がり時間情報(k)」と略)が記憶される。
【0033】
そして、本実施例の場合、時刻t2の後の時刻t11で開始された立ち上がり割り込み処理において、立ち上がりエッジの時間情報を参照するために第1記憶部14へアクセスする際にも(図3の矢印320参照)、第1記憶部14内の立ち上がりエッジの時間情報は依然として保持されている。この場合、立ち上がり割り込み処理を立ち上がりエッジの時間情報に基づいて所望の態様で実現できる。これは、立ち下がり割り込み処理についても同様である。
【0034】
このようにして、本実施例によれば、PWM信号の周期が高速化しても、PWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのそれぞれの検出時間情報に基づく各割り込み処理を確実に実行することができる。換言すると、本実施例によれば、PWM信号の周期の高速化が可能となる。例えば、1000Hzから4000Hzといった比較的高い入力周波数にも対応することも可能となる。この結果、PWM信号の発生源(例えば上位のECU)の仕様が多様化する場合でも、制御装置10の汎用性を高めることができる。
【0035】
図5は、本実施例の制御装置10におけるレベル時間フィルタの説明図であり、横軸に時間を取り、上から順に、PWM信号の時系列波形、フィルタクロックの時系列、第1記憶部14内の状態の時系列、及び第2記憶部18内の状態の時系列が、示されている。なお、図5では、レベル時間フィルタの説明用に、前出の図3よりも、フィルタ設定時間ΔT1やフィルタ設定時間ΔT2(いずれも図示せず)が長く設定された場合を示している。
【0036】
フィルタクロックは、レベル時間フィルタを実現するために利用される信号であり、PWM信号の周期よりも十分小さい周期でオン/オフするパルス信号である。この場合、例えば、上述したフィルタ設定時間ΔT1やフィルタ設定時間ΔT2は、フィルタクロックのカウント数で管理されてよい。
【0037】
図6は、比較例によるレベルフィルタの説明図であり、横軸に時間を取り、上側601は、正常な判定態様を示し、下側602は、望ましくない判定態様を示し、上側601及び下側602には、それぞれ、上側から順に、PWM信号の時系列波形、及び、前回エッジ検出極性の時系列が示されている。
【0038】
レベルフィルタの場合、エッジ切り替わり割込みが発生後、PWM信号を読み込み、現在の信号レベルを確認する。このとき、現在の信号レベルが“High”の場合は、前回エッジ検出極性が立ち下がりである場合に、立ち上がりエッジを検出する。また、現在の信号レベルが“Low”の場合は、前回エッジ検出極性が立ち上がりである場合に、立ち下がりエッジを検出する。
【0039】
このようなレベルフィルタの場合、PWM信号の周期が短くなる(すなわち高速化する)と、正常な(すなわちノイズ信号でない)立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジを、ノイズとして誤判定する可能性が高くなる。
【0040】
具体的には、例えば、図6の上側601では、まず、時刻t61で立ち下がりエッジを検出して、エッジ切り替わり割込み処理が発生する。この場合、時刻t62でレベルフィルタによるエッジ切り替えの確認を行う。この場合、PWM信号レベルは“Low”で立ち下がりエッジの検出に対して、前回エッジ検出極性は“立ち上がり”なのでレベルフィルタは通過する。しかしながら、図6の下側602では、PWM信号レベルは“High”で立ち上がりエッジの検出に対して前回エッジ検出極性は“立ち上がり”なので、エッジ切り替え前後で信号レベルは変化していないと判断する。すなわち、この場合、時刻t61で発生した立ち下がりエッジや時刻t62で発生した立ち上がりエッジはノイズと誤判定されることになる。
【0041】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、比較例によるレベルフィルタとは異なり、レベル時間フィルタを利用するので、比較例において生じる問題点を解消することができる。
【0042】
具体的には、本実施例によれば、上述したように、エッジ検出部12は、前回エッジ検出極性を参照することなく、立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジを検出する。従って、仮に図6の下側602のようなPWM信号が発生した場合でも、オフ時間(図6のΔT3参照)がフィルタ設定時間ΔT2を超えている限り、時刻t61の立ち下がりによる立ち下がりエッジを検出することができる。従って、オフ時間がフィルタ設定時間ΔT2以下となるようなノイズ信号に起因したPWM信号のレベル低下を、立ち下がりエッジとして誤検出することを防止できるとともに、オフ時間がフィルタ設定時間ΔT2を超えるが比較的短くなるようなPWM信号のレベル低下を、立ち下がりエッジとして適切に検出できる。これは、立ち上がりエッジについても同様である。
【0043】
例えば図5に示す例では、時刻t1で発生したPWM信号のHighレベルへの変化は、その後のオン時間がフィルタ設定時間ΔT1を超えることで、立ち上がりエッジとして検出される。なお、これにより、第1記憶部14内の前回の立ち上がりエッジの時間情報(図5では、「立ち上がり時間情報(k-1)」と略)が、時刻t1の立ち上がりエッジの時間情報(図5では、「立ち上がり時間情報(k)」と略)で上書きされる。また、図5に示す例では、時刻t2で発生したPWM信号のLowレベルへの変化は、その後のオフ時間がフィルタ設定時間ΔT2を超えることで、立ち下がりエッジとして検出される。なお、これにより、第2記憶部18内の前回の立ち下がりエッジの時間情報(図5では、「立ち下がり時間情報(k-1)」と略)が、時刻t2の立ち下がりエッジの時間情報(図5では、「立ち下がり時間情報(k)」と略)で上書きされる。
【0044】
そして、図5に示す例では、時刻t3で発生したPWM信号のHighレベルへの変化は、その後のオン時間(時刻t3から時刻t4までの時間)がフィルタ設定時間ΔT1を超えないことで、ノイズとして判定される。
【0045】
このようにして、本実施例によれば、レベル時間フィルタを利用することで、PWM信号の周期が短くなる(すなわち高速化する)場合でも、ノイズに起因したPWM信号の立ち上がりや立ち下がりによる誤判定の可能性を低減しつつ、正常なPWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを精度良く検出できる。
【0046】
なお、本実施例では、フィルタ設定時間分、エッジ検出時間情報の第1記憶部14又は第2記憶部18への格納(記憶)が遅れるが、常に一定の遅れ時間が両エッジで発生するため、エッジ間の時間差分には影響しない。
【0047】
ところで、図1に示したファンユニットFは、車両のエンジンルーム(図示せず)に配置される。車両のエンジンルームにおいては、各種の電磁波によるノイズの混入が生じやすい。この点、本実施例による制御装置10は、上述したように、ノイズ対策が実現されているので、かかるエンジンルーム内における厳しい環境下においても信頼性の高い動作を実現することができる。
【0048】
また、本実施例によれば、上述したように、制御の信頼性を高め、ブラシレスモータMの制御に関して省電化を実現できる。これにより、電力供給におけるカーボンフリー化の推進に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」及び目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献することが可能となる。
【0049】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部または複数を組み合わせることも可能である。
【0050】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0051】
[付記1]
モータを制御するモータ制御装置(10)において、
モータ制御用のPWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出するエッジ検出部(12)と、
前記エッジ検出部により検出された立ち上がりエッジの検出情報を記憶する第1記憶部(14)と、
前記第1記憶部とは別の記憶部であり、前記エッジ検出部により検出された立ち下がりエッジの検出情報を記憶する第2記憶部(18)と、
前記第1記憶部に記憶された前記立ち上がりエッジの検出情報に基づいて、第1の割り込み処理を実行する第1処理部(16)と、
前記第2記憶部に記憶された前記立ち下がりエッジの検出情報に基づいて、第2の割り込み処理を実行する第2処理部(20)と、
を備えるモータ制御装置。
【0052】
付記1の構成によれば、立ち上がりエッジの検出情報を記憶する第1記憶部と、立ち下がりエッジの検出情報を記憶する第2記憶部が別々に設けられる。これにより、PWM信号の周期が高速化しても、第1記憶部内の立ち上がりエッジの検出情報が、第1の割り込み処理で利用される前に、立ち下がりエッジの検出情報に上書きされてしまう可能性や、第2記憶部内の立ち下がりエッジの検出情報が、第2の割り込み処理で利用される前に、立ち上がりエッジの検出情報に上書きされてしまう可能性を、低減できる。従って、PWM信号の周期が高速化しても、PWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのそれぞれの検出情報に基づく各割り込み処理を確実に実行できるモータ制御装置が得られる。
【0053】
[付記2]
前記第1記憶部は、前記PWM信号の立ち上がりがあり、かつ、前記立ち上がりの後のレベル持続時間が第1フィルタ設定時間(ΔT1)を超えた場合に、前記立ち上がりに係る前記立ち上がりエッジの検出情報を記憶する、付記1に記載のモータ制御装置。
【0054】
付記2の構成によれば、ノイズに起因してPWM信号の立ち上がりが発生した場合でも、立ち上がりの後のレベル持続時間が第1フィルタ設定時間を超えない限り、当該立ち上がりに係る立ち上がりエッジの検出情報が第1記憶部に記憶されない。これにより、ノイズによるPWM信号の立ち上がりに起因して第1の割り込み処理が実行されてしまう可能性を低減できる。
【0055】
[付記3]
前記第2記憶部は、前記PWM信号の立ち下がりがあり、かつ、前記立ち下がりの後のレベル持続時間が第2フィルタ設定時間(ΔT2)を超えた場合に、前記立ち下がりに係る前記立ち下がりエッジの検出情報を記憶する、付記1又は付記2に記載のモータ制御装置。
【0056】
付記3の構成によれば、ノイズに起因してPWM信号の立ち下がりが発生した場合でも、立ち下がりの後のレベル持続時間が第2フィルタ設定時間を超えない限り、当該立ち下がりに係る立ち下がりエッジの検出情報が第2記憶部に記憶されない。これにより、ノイズによるPWM信号の立ち下がりに起因して第2の割り込み処理が実行されてしまう可能性を低減できる。
【0057】
[付記4]
前記モータは、車両のエンジンルームに配置されるファンユニット(F)用のブラシレスモータ(M)である、付記1から付記3のうちのいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【0058】
付記4の構成によれば、PWM信号の周期の高速化と相まってファンユニット用のブラシレスモータの高性能化を実現できる。また、付記3の構成との組み合わせにより、ノイズが発生しやすいエンジンルームにおいても、ファンユニット用のブラシレスモータのロバストな性能を確保できる。
【0059】
[付記5]
モータを制御するモータ制御方法において、
モータ制御用のPWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出するエッジ検出ステップと、
第1記憶部(14)に、前記エッジ検出ステップにより検出された立ち上がりエッジの検出情報を記憶するステップと、
前記第1記憶部とは異なる第2記憶部(18)に、前記エッジ検出ステップにより検出された立ち下がりエッジの検出情報を記憶するステップと、
前記第1記憶部に記憶された前記立ち上がりエッジの検出情報に基づいて、第1の割り込み処理を実行するステップと、
前記第2記憶部に記憶された前記立ち下がりエッジの検出情報に基づいて、第2の割り込み処理を実行するステップと、
を備えるモータ制御方法。
【0060】
付記5の構成によれば、立ち上がりエッジの検出情報と、立ち下がりエッジの検出情報とを、それぞれ別の第1記憶部と第2記憶部に記憶する。これにより、PWM信号の周期が高速化しても、第1記憶部内の立ち上がりエッジの検出情報が、第1の割り込み処理で利用される前に、立ち下がりエッジの検出情報に上書きされてしまう可能性や、第2記憶部内の立ち下がりエッジの検出情報が、第2の割り込み処理で利用される前に、立ち上がりエッジの検出情報に上書きされてしまう可能性を、低減できる。従って、PWM信号の周期が高速化しても、PWM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのそれぞれの検出情報に基づく各割り込み処理を確実に実行できるモータ制御方法が得られる。
【符号の説明】
【0061】
10 制御装置
12 エッジ検出部
14 第1記憶部
16 立ち上がり割り込み処理部
18 第2記憶部
20 立ち下がり割り込み処理部
F ファンユニット
M ブラシレスモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6