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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】加工装置および方法並びにロボット
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/26 20060101AFI20240809BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20240809BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20240809BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20240809BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240809BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G21C19/26
G21F9/30 531E
G21F9/30 535F
B24B27/06 J
B24B27/00 A
B24B55/06
B25J13/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021102515
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001663
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 英司
(72)【発明者】
【氏名】森家 康文
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-066863(JP,A)
【文献】特開2000-108013(JP,A)
【文献】特開2001-038621(JP,A)
【文献】特表2018-522252(JP,A)
【文献】特開2020-122766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/26
G21F 9/30
B24B 27/06
B24B 27/00
B24B 55/06
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの多関節アームの先端部に装着される支持体と、
カッタと、
前記支持体に支持されて前記カッタを回転軸により駆動回転するカッタ駆動装置と、
前記支持体に支持されて前記支持体に対して前記カッタ駆動装置を前記回転軸の軸方向に沿って移動しながら被加工面に対して接近または離反させるカッタ移動装置と、
前記支持体に対して前記カッタ駆動装置を前記回転軸の軸方向に交差すると共に前記被加工面に沿う支持軸を支点として揺動させることで前記被加工面に対する前記カッタの加工角度を変更するカッタ揺動装置と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記カッタ移動装置は、前記回転軸の軸方向に沿うと共に前記被加工面に対して傾斜する方向に沿って前記支持体に固定されるガイドレールと、前記カッタ駆動装置を前記ガイドレールに沿って移動自在に支持するガイド部材とを有する、
請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記カッタ揺動装置は、前記支持軸に対して前記カッタ側または前記カッタとは反対側で前記支持体に配置される流体シリンダ装置を有する、
請求項1または請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記流体シリンダ装置は、前記被加工面に交差する方向に沿って往復移動自在な駆動ロッドと、前記駆動ロッドの先端部と前記カッタ駆動装置のいずれか一方に設けられる連結ピンと、前記駆動ロッドの先端部と前記カッタ駆動装置のいずれか他方に設けられて前記連結ピンが係合する長孔とを有する、
請求項3に記載の加工装置。
【請求項5】
前記支持体は、前記カッタに対向する位置に開口部が設けられ、前記カッタ駆動装置は、前記開口部とは反対側における前記カッタの径方向の外側にカバーが設けられる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項6】
前記支持体は、前記カッタが前記被加工面を加工することで発生する加工粉を回収する加工粉回収装置が設けられる、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項7】
前記加工粉回収装置は、加工粉を吸引するポンプを有し、前記ポンプは、前記カッタ駆動装置の駆動力により駆動する、
請求項6に記載の加工装置。
【請求項8】
前記加工粉回収装置は、前記ポンプが吸引した加工粉を貯留する回収ボックスを有する、
請求項7に記載の加工装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の加工装置を用いた加工方法であって、
カッタを回転させる工程と、
前記カッタの回転軸の軸方向に沿って移動しながら前記カッタを被加工面に対して接近または離反させる工程と、
前記カッタを前記回転軸の軸方向に交差する方向に沿うと共に前記被加工面に沿う支持軸を支点として揺動させることで前記被加工面に対する前記カッタの加工角度を変更する工程と、
を有することを特徴とする加工方法。
【請求項10】
支持アームの先端部に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の加工装置が装着されるロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工対象物を加工してその一部を除去する加工装置および方法、加工装置を備えるロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電プラントにて、原子炉圧力容器内の炉心燃料が原子炉格納容器の中の構造物と一緒に溶融して固化すると放射性廃棄物としての燃料デブリが発生する。この燃料デブリなどの放射性廃棄物は、多量の放射線を発するものであることから、原子炉格納容器から外部に取り出す必要がある。原子炉格納容器から放射性廃棄物を取り出す場合、放射性廃棄物を切削や研削などにより小さな塊や粉体に加工して外部に搬出する。放射性廃棄物を加工して外部に搬出する技術としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
【文献】特開2020-122766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加工装置は、回転するカッタを被切削面側に移動すると共に、被切削面に沿って移動することで、カッタの切削位置と切削角度を変更して被切削面に対する切削を行うものである。今後、原子炉格納容器からの放射性廃棄物の効率的な除去を可能とする上で、放射性廃棄物の加工作業における更なる作業効率の向上が求められている。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、加工作業における作業効率の向上を図る加工装置および方法並びにロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の加工装置は、カッタと、前記カッタを回転軸により駆動回転するカッタ駆動装置と、前記カッタ駆動装置を支持体に対して前記回転軸の軸方向に沿って移動しながら被加工面に対して接近または離反させるカッタ移動装置と、前記支持体に対して前記カッタ駆動装置を前記回転軸の軸方向に交差すると共に前記被加工面に沿う支持軸を支点として揺動させることで前記被加工面に対する前記カッタの加工角度を変更するカッタ揺動装置と、を備える。
【0007】
また、本開示の加工方法は、カッタを回転させる工程と、前記カッタの回転軸の軸方向に沿って移動しながら前記カッタを被加工面に対して接近または離反させる工程と、前記カッタを前記回転軸の軸方向に交差する方向に沿うと共に前記被加工面に沿う支持軸を支点として揺動させることで前記被加工面に対する前記カッタの加工角度を変更する工程と、を有する。
【0008】
また、本開示のロボットは、支持アームの先端部に前記加工装置が装着される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の加工装置及び方法並びにロボットによれば、加工作業における作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の加工装置を表す側面図である。
図2図2は、加工装置を表す平面図である。
図3図3は、カッタ駆動装置を表す図2のIII-III断面図である。
図4図4は、カッタ移動装置を表す図2のIV-IV断面図である。
図5図5は、カッタ揺動装置を表す図1のV-V断面図である。
図6図6は、加工装置による加工方法を説明するための概略図である。
図7図7は、加工装置による加工方法を説明するための概略図である。
図8図8は、加工装置による加工方法を説明するための概略図である。
図9図9は、加工装置による加工方法を説明するための概略図である。
図10図10は、加工装置におけるカッタ交換方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
<加工装置>
図1は、本実施形態の加工装置を表す側面図、図2は、加工装置を表す平面図である。なお、以下の説明では、被加工面に平行で加工装置の移動方向をX方向、被加工面に平行で加工装置の移動方向であるX方向に直交する方向をY方向、被加工面に直交する方向をZ方向として説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、加工装置10は、ロボット100の多関節アーム101の先端部に着脱装置102により着脱自在に装着される。加工装置10は、加工対象部として、原子炉圧力容器内にある放射性廃棄物(例えば、燃料デブリ)を加工して除去するものである。但し、加工対象部は、放射性廃棄物に限るものではなく、例えば、建築物の解体現場やトンネルの壁面など、小さいスペースを用いて広範囲にわたって加工する作業に好適である。また、加工装置10による加工は、切削または研削であるが、これに限定されるものではない。
【0014】
加工装置10は、支持体11と、カッタ12と、カッタ駆動装置13と、カッタ移動装置14と、カッタ揺動装置15とを備える。
【0015】
支持体11は、X方向に沿って配置される。支持体11は、平面部11aと、傾斜部11bと、側壁部11cと、後壁部11dとを有する。支持体11は、平面部11aが被加工面Sに平行をなすように配置される。平面部11aは、X方向の一方側に傾斜部11bが一体に設けられる。傾斜部11bは、平面部11aの端部に傾斜角度をもって連続する。平面部11aおよび傾斜部11bは、Y方向の一方側に側壁部11cが一体に設けられる。側壁部11cは、平面部11aおよび傾斜部11bの端部に直交する方向に沿って連続する。傾斜部11bおよび側壁部11cは、Y方向の一方側に後壁部11dが一体に設けられる。後壁部11dは、傾斜部11bおよび側壁部11cの端部に直交する方向に沿って連続する。
【0016】
平面部11aは、開口部21が形成される。開口部21は、長方形状をなす。また、平面部11aは、外側、つまり、被加工面S側にシール部材22が固定される。シール部材22は、平面部11aとほぼ同形状をなす。シール部材22は、開口部23が形成される。開口部23は、開口部21と同形状の長方形状をなす。
【0017】
支持体11は、後壁部11dの外側に接続部24が設けられる。ロボット100は、多関節アーム101を有し、多関節アーム101の着脱装置102が接続部24を介して支持体11に連結可能となる。
【0018】
カッタ駆動装置13は、支持体11に支持される。カッタ駆動装置13は、カッタ12を駆動回転可能である。カッタ12は、円板形状をなす。カッタ12は、円板形状をなす台金の外周面に砥粒が溶着されると共に、外周面の角部から平面側にかけて砥粒が溶着されて構成される。カッタ駆動装置13は、支持体の傾斜部11bに対向するように配置され、カッタ12は、平面部11aの開口部21に対向するように配置される。カッタ12は、開口部21を通して被加工面Sを加工可能である。
【0019】
カッタ移動装置14は、支持体11に支持される。カッタ移動装置14は、支持体11における側壁部11cに配置される。カッタ移動装置14は、カッタ駆動装置13を支持体11に対してX方向に沿って移動しながら被加工面Sに対して接近または離反させる。すなわち、カッタ移動装置14は、カッタ駆動装置13を加工方向であるX方向の一方側(図1の右方側)に移動するとき、被加工面Sに最も接近した位置にあるカッタ駆動装置13を被加工面Sから離反するように移動する。
【0020】
カッタ揺動装置15は、カッタ駆動装置13に支持される。カッタ揺動装置15は、カッタ移動装置14を介して支持体11に連結される。カッタ揺動装置15は、支持体11(カッタ移動装置14)に対してカッタ駆動装置13をY方向に沿う軸線を支点として揺動させることで、被加工面Sに対するカッタ12の加工角度θを変更する。
【0021】
加工装置10は、カッタ駆動装置13がカッタ12を駆動回転した状態で、カッタ移動装置14がカッタ駆動装置13を加工方向に移動させると共に被加工面Sから離反するように移動させるのに同期して、カッタ揺動装置15がカッタ駆動装置13を揺動させてカッタ12の加工角度θを変更する。そのため、加工装置10は、駆動回転するカッタ12が加工角度θを変更しながら加工方向に移動することで、被加工面Sを加工(研削または切削)し、放射性廃棄物を除去する。
【0022】
<カッタ駆動装置>
図3は、カッタ駆動装置を表す図2のIII-III断面図である。
【0023】
図3に示すように、カッタ駆動装置13は、モータ31と、ハウジング32と、動力伝達機構33と、回転軸34とを有する。
【0024】
モータ31は、L字形状をなすブラケット41を介してボルト(図示略)によりハウジング32に連結される。ハウジング32は、中空形状をなし、内部に動力伝達機構33が収容される。回転軸34は、一端部がハウジング32の内部に配置され、動力伝達機構33に駆動連結される。回転軸34は、他端部がハウジング32の外部に配置され、カッタ12が連結される。
【0025】
モータ31は、軸心O1を中心として駆動回転する駆動軸42を有する。軸心O1は、X方向と平行をなす。駆動軸42は、軸方向の各端部が軸受43によりハウジング32に回転自在に支持される。駆動軸42は、円板形状をなす駆動歯車44が固定される。回転軸34は、軸方向の各端部が軸受45によりハウジング32に回転自在に支持される。回転軸34は、軸心O2を中心として回転する。軸心O2は、X方向と平行をなし、軸心O1と軸心O2は、互いに平行をなし、Y方向に間隔を空けて配置される。回転軸34は、円板形状をなす従動歯車46が固定される。駆動歯車44と従動歯車46は、噛み合い、回転力を伝達する。動力伝達機構33は、駆動歯車44と従動歯車46により構成される。カッタ12は、ハウジング32に隣接して配置され、回転軸34の他端部に固定される。
【0026】
そのため、モータ31が駆動すると、駆動軸42が軸心O1を中心に駆動回転し、駆動軸42と一体の駆動歯車44が回転する。駆動歯車44が回転すると、回転力が駆動歯車44に噛み合う従動歯車46に伝達され、従動歯車46が軸心O2を中心として回転する。従動歯車46が回転すると、従動歯車46と一体の回転軸34が回転する。回転軸34が回転すると、回転軸34と一体のカッタ12が回転する。
【0027】
<カッタ移動装置>
図4は、カッタ移動装置を表す図2のIV-IV断面図である。
【0028】
図2および図4に示すように、カッタ移動装置14は、案内機構51と、移動機構52とを有する。案内機構51は、ガイドレール53と、ガイド部材54とを有する。移動機構52は、モータ55と、ハウジング56と、動力伝達機構57、ボールねじ軸58と、ナット59とを有する。
【0029】
支持体11は、側壁部11cに基板61が固定される。ガイドレール53は、基板61の外面に固定される。ガイドレール53は、X方向に沿うと共に、Z方向の一方に向けて傾斜して配置される。ガイドレール53は、加工方向であるX方向の一方側(図4の右方側)に向けて延出されると共に、支持体11の平面部11aから離間する方向であるZ方向の一方側(図4の上方側)に向けて傾斜する。ガイドレール53は、支持体11の傾斜部11bに平行をなす。
【0030】
カッタ駆動装置13は、後述する支持軸71を介して支持部材62が連結される。支持部材62は、上端部が支持軸71に連結され、下端部にガイド部材54が固定される。ガイド部材54は、ガイドレール53に嵌合し、ガイドレール53に沿って移動自在に支持される。
【0031】
モータ55は、基板61の外面に配置される。ボールねじ軸58は、基板61の外面側で、ガイドレール53とモータ55との間に配置される。モータ55のおよびボールねじ軸58の一端部にハウジング56が配置される。ハウジング56は、中空形状をなし、内部に動力伝達機構57が収容される。
【0032】
モータ55は、軸心O3を中心として駆動回転する駆動軸63を有する。駆動軸63は、軸受64によりハウジング56に回転自在に支持される。駆動軸63は、円板形状をなす駆動歯車65が固定される。ボールねじ軸58は、軸方向の一端部が軸受66に回転自在に支持され、軸方法の他端部が軸受67によりハウジング56に回転自在に支持される。ボールねじ軸58は、軸心O4を中心として回転する。軸心O3と軸心O4は、互いに平行をなすと共に、ガイドレール53と平行をなす。ボールねじ軸58は、円板形状をなす従動歯車68が固定される。駆動歯車65と従動歯車68は、噛み合い、回転力を伝達する。動力伝達機構57は、駆動歯車65と従動歯車68により構成される。
【0033】
支持部材62は、ガイド部材54によりガイドレール53に移動自在に支持され、下部に連結部材69が一体に固定される。ナット59は、連結部材69に固定される。ボールねじ軸58は、連結部材69に固定されたナット59が螺合する。
【0034】
そのため、モータ55が駆動すると、駆動軸63が軸心O3を中心に駆動回転し、駆動軸63と一体の駆動歯車65が回転する。駆動歯車65が回転すると、回転力が駆動歯車65に噛み合う従動歯車68に伝達され、従動歯車68が軸心O4を中心として回転する。従動歯車68が回転すると、従動歯車68と一体のボールねじ軸58が回転する。ボールねじ軸58が回転すると、ボールねじ軸58の回転力がナット59により連結部材69の直線移動力に変換され、連結部材69が移動する。
【0035】
すなわち、連結部材69と一体の支持部材62は、ガイド部材54介してガイドレール53に移動自在に支持される。ナット59は、連結部材69に固定されており、回転不能である。ボールねじ軸58が回転すると、ボールねじ軸58に螺合するナット59は、回転せずにボールねじ軸58の軸方向である軸心O4方向に移動し、連結部材69および支持部材62は、ガイドレール53に沿って移動する。すると、支持部材62に支持軸71を介して連結されたカッタ駆動装置13がガイドレール53に沿って移動する。
【0036】
<カッタ揺動装置>
図5は、カッタ揺動装置を表す図1のV-V断面図である。
【0037】
図1図2および図5に示すように、カッタ揺動装置15は、Y方向に平行な軸心O5に沿う支持軸71を有する。支持軸71は、軸方向の一端部がカッタ駆動装置13のハウジング32に固定され、他端部に支持部材62が回動自在に連結される。カッタ駆動装置13は、支持体11に対して軸心O5を中心として回動自在である。カッタ揺動装置15は、支持軸71に対してカッタ12とは反対側に配置される。すなわち、支持軸71に対してX方向の一方側にカッタ揺動装置15が配置され、他方側にカッタ12が配置される。なお、カッタ揺動装置15は、支持軸71に対してカッタ12側に配置してもよい。
【0038】
カッタ揺動装置15は、流体シリンダ装置である。カッタ揺動装置15は、流体シリンダ72と、駆動ロッド73と、長孔74と、連結ピン75とを有する。
【0039】
流体シリンダ72は、油圧シリンダまたはエアシリンダである。流体シリンダ72は、流体の給排により軸方向に移動自在な駆動ロッド73を有する。流体シリンダ72は、カッタ駆動装置13のブラケット41に固定され、被加工面Sに交差するZ方向に沿って駆動ロッド73が往復移動自在である。駆動ロッド73は、先端部に長孔74が形成された連結部76が固定される。長孔74は、X方向に沿って長い。一方、支持部材62は、X方向の一方側に支持部材77が連結される。支持部材77は、Y方向に平行な連結ピン75が固定される。連結ピン75は、連結部76の長孔74に係合する。
【0040】
なお、流体シリンダ72の駆動ロッド73先端部に長孔74が形成された連結部76を固定し、カッタ駆動装置13の支持部材77に長孔74に係合する連結ピン75を設けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、流体シリンダ72の駆動ロッド73先端部に連結ピン75を固定し、カッタ駆動装置13の支持部材77に連結ピン75に係合する長孔74を設けてもよい。
【0041】
そのため、流体シリンダ72に対して流体を給排して駆動することで、駆動ロッド73を収縮させると、連結部76を支点として流体シリンダ72の本体が上昇する。流体シリンダ72の本体が上昇すると、ブラケット41を介して連結されたカッタ駆動装置13の後部が上昇する。すると、カッタ駆動装置13は、支持体11に対して軸心O5を中心として、図1にて反時計回り方向に回動する。一方、流体シリンダ72に対して流体を給排して駆動することで、駆動ロッド73を伸長させると、連結部76を支点として流体シリンダ72の本体が下降する。流体シリンダ72の本体が下降すると、ブラケット41を介して連結されたカッタ駆動装置13の後部が下降する。すると、カッタ駆動装置13は、支持体11に対して軸心O5を中心として、図1にて時計回り方向に回動する。支持体11に対してカッタ駆動装置13が回動すると、支持体11の平面部11a、つまり、被加工面Sに対するカッタ12の加工角度θを変更する。
【0042】
また、図1および図2に示すように、加工装置10は、カッタ12を覆うカバー81が設けられる。支持体11は、カッタ12に対向する平面部11aに開口部21が形成され、カッタ駆動装置13は、開口部21とはZ方向の反対側にカバー81が配置される。カバー81は、円筒の周方向の一部が切り欠掛けた円弧形状をなす。カバー81は、カッタ12の径方向の外側に配置され、カッタ12の外周部の一部を覆う。
【0043】
また、加工装置10は、カッタ12が被加工面Sを加工することで発生した加工粉を回収する加工粉回収装置91が設けられる。加工粉回収装置91は、加工粉を吸引するポンプ92を有する。ポンプ92は、カッタ駆動装置13の駆動力により駆動する。すなわち、図3に示すように、ポンプ92は、カッタ駆動装置13のハウジング32に固定される。ポンプ92は、内部に回転翼93が回転自在に支持される。回転翼93は、軸心O1を中心に回転自在に支持される。モータ31の駆動軸42は、先端部がハウジング32を貫通して回転翼93に連結される。また、ポンプ92は、加工粉を吸引するノズル94が設けられる。ノズル94は、先端部が被加工面Sに向けて延出される。加工粉回収装置91は、ポンプ92が吸引した加工粉を貯留する回収ボックス95を有する。回収ボックス95は、支持体11の傾斜部11bに固定される。回収ボックス95は、ポンプ92から加工粉回収ホース(図示略)が連結される。
【0044】
そのため、カッタ駆動装置13により駆動回転するカッタ12が被加工面Sに接触することで、放射性廃棄物を加工する。このとき、加工装置10は、被加工面Sに向けて摩耗の低減や冷却のための加工液を供給し、カッタ12が被加工面Sを加工することで加工粉が発生する。加工粉回収装置91は、カッタ駆動装置13の駆動力によりポンプ92が駆動し、ポンプ92は、ノズル94から加工液や加工粉を吸引する。吸引した加工液や加工粉は、加工粉回収ホースを通して回収ボックス95に貯留される。なお、回収ボックス95の内部にメッシュなどによる濾過部を設け、加工粉を濾過部で濾過し、加工液を外部に排出したり、循環して再利用したりしてもよい。
【0045】
なお、カッタ12の外周辺を覆うカバー81は、加工粉回収装置91ポンプ92の外面に固定されるが、カッタ駆動装置13のハウジング32に直接固定してもよい。
【0046】
<加工方法>
ここで、加工装置10による放射性廃棄物の加工方法について説明する。図6から図10は、加工装置による加工方法を説明するための概略図である。
【0047】
図1および図2に示すように、加工装置10は、ロボット100の多関節アーム101の先端部に着脱装置102により接続部24を介して装着される。ロボット100は、多関節アーム101を作動することで加工装置10を移動し、加工対象部としての放射性廃棄物の被加工面S上に配置する。このとき、加工装置10は、支持体11の平面部11aに固定されたシール部材22の下面が被加工面Sに接触する。加工装置10は、この配置位置で、回転するカッタ12をX方向およびZ方向に移動しながら被加工面Sの加工を行い、放射性廃棄物を除去する。
【0048】
まず、図6に示すように、カッタ12およびカッタ駆動装置13をX方向の他方側(図6の左方側)に位置させる。また、被加工面Sに対するカッタ12の加工角度θを90度より小さくする。このとき、カッタ12は、外周面が開口部21,23を通して被加工面Sに微小隙間をもって対向する。この状態で、カッタ駆動装置13によりカッタ12を駆動回転する。そして、カッタ移動装置14によりカッタ駆動装置13を加工方向であるX方向の一方側(図6の右方側)に向けて移動する。また、カッタ揺動装置15によりカッタ駆動装置13を、図6にて反時計回り方向に回動する。
【0049】
すると、カッタ駆動装置13が傾斜したガイドレール(図4参照)53に沿って加工方向であるX方向の一方側(図6の右方側)に向けて移動することで、カッタ12は、同方向に向けて移動しながら、被加工面Sから離間していく。一方で、カッタ12の移動に同期して、カッタ駆動装置13が支持軸71を中心に図6にて反時計回り方向に回動することで、カッタ12の外周面が被加工面Sに接近し、押圧する。そのため、回転するカッタ12は、外周面および加工方向の前方側の角部が被加工面Sを加工(研削または切削)し、放射性廃棄物を除去する。
【0050】
このとき、カッタ移動装置14とカッタ揺動装置15の作動によりカッタ駆動装置13が移動しながら回動し、カッタ12は、加工角度θが大きくなるように変化しながら、被加工面Sを加工する。すなわち、カッタ駆動装置13が加工方向に沿って移動するとき、カッタ揺動装置15における流体シリンダ72の駆動ロッド73を収縮させ、カッタ駆動装置13を図6にて反時計回り方向に回動させる。このとき、カッタ12は、外周面が被加工面Sを押圧する。このときの流体シリンダ72によるカッタ12の押圧力は、所定値に調整される。そして、カッタ12が被加工面Sから加工反力を受けると、流体シリンダ72は、駆動ロッド73が伸長する方向に応力を受け、この応力(加工反力)が緩和される。そのため、カッタ12は、被加工面Sを押圧する押圧力が一定に保持され、外周面が被加工面Sに倣って移動することができる。
【0051】
カッタ駆動装置13の移動動作および回動動作により、カッタ12の加工角度θが大きくなるように変化すると、図7に示すように、被加工面Sに対するカッタ12の加工角度θが90度になる。そして、カッタ駆動装置13の移動動作および回動動作が継続すると、図8に示すように、カッタ12の加工角度θが90度より大きくなる。すなわち、カッタ12は、加工方向に移動しながら加工角度θが徐々に大きくなるように変化することで、カッタ12における被加工面Sへの接触位置がカッタ12の外周面における軸方向(X方向)に変化していく。そのため、カッタ12は、被加工面Sに対する接触範囲(加工範囲)が大きくなり、局所的な摩耗が抑制される。
【0052】
その後、カッタ駆動装置13の移動動作および回動動作がさらに継続すると、図9に示すように、カッタ12の加工角度θが90度よりさらに大きくなる。そして、カッタ12が開口部21,23におけるX方向の一方側の端部まで移動すると、カッタ駆動装置13の移動動作および回動動作が停止し、加工装置10による放射性廃棄物の加工作業が終了する。加工装置10による放射性廃棄物の加工作業を継続する場合、図1および図2に示すように、ロボット100により多関節アーム101を作動することで加工装置10を移動し、放射性廃棄物の別の被加工面S上に配置し、加工作業を行う。
【0053】
なお、カッタ12は、長期間の仕様により摩耗することで交換が必要になる。このとき、図10に示すように、加工装置10を作動し、カッタ12を支持体11におけるX方向の他方側の端部に移動すると共に、カッタ12の加工角度θを、図6の初期加工時よりも小さくする。すると、カッタ12は、一部が支持体11の外方に露出し、カッタの交換作業が可能になる。
【0054】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る加工装置は、カッタ12と、カッタ12を回転軸34により駆動回転するカッタ駆動装置13と、カッタ駆動装置13を支持体11に対して回転軸34の軸方向に沿って移動しながら被加工面Sに対して接近または離反させるカッタ移動装置14と、支持体11に対してカッタ駆動装置13を回転軸34の軸方向に交差すると共に被加工面Sに沿う支持軸71を支点として揺動させることで被加工面Sに対するカッタ12の加工角度θを変更するカッタ揺動装置15とを備える。
【0055】
第1の態様に係る加工装置によれば、カッタ移動装置14によりカッタ駆動装置13を移動しながら被加工面Sに対して接近または離反させると共に、カッタ揺動装置15によりカッタ駆動装置13を揺動させることで被加工面Sに対するカッタ12の加工角度θを変更する。そのため、カッタ12は、加工方向に移動しながら加工角度θが変化することとなり、カッタ12における被加工面Sへの接触位置が変化していく。すると、カッタ12は、被加工面Sに対する加工範囲を大きく確保することができ、カッタ12の局所的な摩耗を抑制することができる。
【0056】
また、カッタ移動装置14によりカッタ12を一定の速度で移動し、カッタ揺動装置15によりカッタ12を所定の押圧力で被加工面Sに押圧することができる。そのため、カッタ12により被加工面Sを適切に加工して除去することができる。その結果、カッタ12の交換頻度を少なくすることができると共に、被加工面Sを効率良く加工することができ、加工作業における作業効率の向上を図ることができる。
【0057】
第2の態様に係る加工装置は、カッタ移動装置14として、回転軸34の軸方向に沿うと共に被加工面Sに対して傾斜する方向に沿って支持体11に固定されるガイドレール53と、カッタ駆動装置13をガイドレール53に沿って移動自在に支持するガイド部材54とが設けられる。これにより、カッタ駆動装置13をガイド部材54によりガイドレール53に沿って移動させることで、カッタ駆動装置13を移動しながら被加工面Sに対して接近または離反させることができ、カッタ移動装置14の簡素化を図ることができる。
【0058】
第3の態様に係る加工装置は、カッタ揺動装置15として、支持軸71に対してカッタ12側またはカッタ12とは反対側で支持体11に配置される流体シリンダ装置を有する。これにより、カッタ揺動装置15としての流体シリンダ装置によりカッタ駆動装置13を容易に回動させることができる。
【0059】
第4の態様に係る加工装置は、流体シリンダ装置として、被加工面Sに交差する方向に沿って往復移動自在な駆動ロッド73と、駆動ロッド73の先端部とカッタ駆動装置13のいずれか一方に設けられる連結ピン75と、駆動ロッド73の先端部とカッタ駆動装置13のいずれか他方に設けられて連結ピン75が係合する長孔74とが設けられる。これにより、カッタ揺動装置15としての流体シリンダ装置によりカッタ駆動装置13を回動させるとき、連結ピン75が長孔74に沿って移動することで、カッタ移動装置14によるカッタ駆動装置13の移動のずれを吸収することができる。
【0060】
第5の態様に係る加工装置は、支持体11にカッタ12に対向する位置に開口部21が設けられ、カッタ駆動装置13は、開口部21とは反対側におけるカッタ12の径方向の外側にカバー81が設けられる。これにより、カッタ12は、開口部21を通して被加工面Sを加工することができ、また、カッタ12による被加工面Sの加工により発生する加工粉の飛散をカバー81により抑制することができる。
【0061】
第6の態様に係る加工装置は、支持体11にカッタ12が被加工面Sを加工することで発生する加工粉を回収する加工粉回収装置91が設けられる。これにより、加工粉回収装置91によりカッタ12による被加工面Sの加工により発生する加工粉の飛散を抑制することができる。
【0062】
第7の態様に係る加工装置は、加工粉回収装置91として、加工粉を吸引するポンプ92が設けられ、ポンプ92は、カッタ駆動装置13の駆動力により駆動する。これにより、加工粉回収装置91のための駆動装置を別途設ける必要がなく、構造の簡素化を図ることができる。
【0063】
第8の態様に係る加工装置は、加工粉回収装置91として、ポンプ92が吸引した加工粉を貯留する回収ボックス95が設けられる。これにより、カッタ12による被加工面Sの加工により発生する加工粉を回収ボックス95に貯留することで、加工粉の飛散を抑制することができる。
【0064】
第9の態様に係る加工方法は、カッタ12を回転させる工程と、カッタ12の回転軸34の軸方向に沿って移動しながらカッタを被加工面Sに対して接近または離反させる工程と、カッタ12を回転軸34の軸方向に交差する方向に沿うと共に被加工面Sに沿う支持軸71を支点として揺動させることで被加工面Sに対するカッタ12の加工角度θを変更する工程とを有する。これにより、カッタ12の交換頻度を少なくすることができると共に、被加工面Sを効率良く加工することができ、加工作業における作業効率の向上を図ることができる。
【0065】
第10の態様に係るロボットは、多関節アーム(支持アーム)101の先端部に加工装置10が装着される。これにより、ロボット100の多関節アーム101を移動することなく、加工装置10が被加工面Sに対する加工を行うことができ、装置の小型化を可能とすることができる。
【0066】
なお、上述した実施形態では、カッタ12を円板形状としたが、円板形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、カッタ移動装置14としてモータ55やボールねじ軸58を適用したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、流体シリンダ装置やラックアンドピニオン装置などを適用してもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、カッタ揺動装置15として流体シリンダ72を適用したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、流体シリンダ装置やラックアンドピニオン装置などを適用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 加工装置
11 支持体
12 カッタ
13 カッタ駆動装置
14 カッタ移動装置
15 カッタ揺動装置
21 開口部
22 シール部材
23 開口部
24 接続部
31 モータ
32 ハウジング
33 動力伝達機構
34 回転軸
O1,O2,O3,O4,O5 軸心
41 ブラケット
42 駆動軸
43 軸受
44 駆動歯車
45 軸受
46 従動歯車
51 案内機構
52 移動機構
53 ガイドレール
54 ガイド部材
55 モータ
56 ハウジング
57 動力伝達機構
58 ボールねじ軸
59 ナット
61 基板
62 支持部材
63 駆動軸
64 軸受
65 駆動歯車
66 軸受
67 軸受
68 従動歯車
69 連結部材
71 支持軸
72 流体シリンダ
73 駆動ロッド
74 長孔
75 連結ピン
76 連結部
77 支持部材
81 カバー
91 加工粉回収装置
92 ポンプ
93 回転翼
94 ノズル
95 回収ボックス
100 ロボット
101 多関節アーム(支持アーム)
102 着脱装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10