(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電気機器ユニット
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240809BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240809BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2021138599
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】古谷 峻千
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-109363(JP,A)
【文献】特開平06-177568(JP,A)
【文献】特開2018-190921(JP,A)
【文献】特開2006-210516(JP,A)
【文献】特開2003-070259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に配置されるとともに、ファン及び主回路部を備える電気機器と、
前記筐体の内部で前記ファンによる通風方向での前記主回路部の下流側に配置されるとともに、前記主回路部の入力を行う主回路入力部及び前記主回路部の出力を行う主回路出力部の少なくともいずれか1つと、
を備え
、
前記ファンは、前記主回路部と、前記主回路入力部及び前記主回路出力部と、の間に配置されている、
電気機器ユニット。
【請求項2】
前記筐体の内部で前記ファンの排気側に配置されるとともに、前記主回路部に接続される主回路用部品と、
前記筐体の内部で前記ファンの吸気側に配置されるとともに、前記主回路部を制御する制御回路用部品と、
を備える
請求項1に記載の電気機器ユニット。
【請求項3】
前記通風方向の両側で前記内部に通じる通気口が形成されている前記筐体を備える請求項1又は請求項2に記載の電気機器ユニット。
【請求項4】
前記通風方向は、鉛直方向に対応する前記筐体の上下方向に交差する方向である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気機器ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気機器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体に配置されたファンによって筐体内部に冷却風を流通させる電力変換装置がある。
しかしながら、筐体の天壁等の適宜の一部に配置されるファンを備える場合、筐体内部に配置される複数の電気機器のレイアウトの自由度が筐体の形状に応じて規制され、筐体内部での複数の電気機器の配置効率及び冷却効率を向上させることができない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-188622号公報
【文献】国際公開第2019/097712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、筐体内部での複数の構成要素の配置効率及び冷却効率を向上させることができる電気機器ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電気機器ユニットは、筐体と、電気機器と、主回路入力部及び主回路出力部の少なくともいずれか1つとを備える。電気機器は、筐体の内部に配置される。電気機器は、ファン及び主回路部を備える。主回路入力部は主回路部の入力を行う。主回路出力部は主回路部の出力を行う。主回路入力部及び主回路出力部の少なくともいずれか1つは、筐体の内部でファンによる通風方向での主回路部の下流側に配置される。ファンは、主回路部と、主回路入力部及び主回路出力部と、の間に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の電気機器ユニットの構成を示す斜視図。
【
図2】実施形態の電気機器ユニットの筐体の一部を破断して上下方向(Z軸方向)の上方から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電気機器ユニットを、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の電気機器ユニット10の構成を示す斜視図である。
図2は、実施形態の電気機器ユニット10の筐体の一部を破断して上下方向(Z軸方向)の上方から見た図である。
【0009】
以下、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は、各軸に平行な方向である。例えば、電気機器ユニット10の左右方向は、X軸方向に平行である。電気機器ユニット10の前後方向は、Y軸方向に平行である。電気機器ユニット10の上下方向及び鉛直方向は、Z軸方向に平行である。Z軸方向の正方向は、電気機器ユニット10の下部から上部に向かう方向である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、実施形態の電気機器ユニット10は、例えば、電気設備等に備えられる盤である。盤は、電力変換装置、電源装置及びモータ駆動装置等を構成する配電盤、分電盤及び制御盤等である。
電気機器ユニット10は、筐体11と、筐体11内に設けられた複数の電気機器12及び複数の回路用部品13と、を備える。
筐体11は、前後方向の前部11Fに形成された開口部21を開閉する開閉扉22を備える。筐体11には、例えば、左右方向の両端部(つまり左右の側部)11R,11Lに吸気口23及び排気口24が形成されている。吸気口23及び排気口24は、筐体11の内部を流通する冷却用の空気を換気する。
【0011】
複数の電気機器12は、筐体11の内部に配置されている。複数の電気機器12の各々は、例えば、電力変換器31と、ファン32と、を備える。電力変換器31は、例えば、主回路部を構成する複数の半導体素子31a及び入出力部を構成する複数の導体31b等の回路構成要素を備える。電力変換器31は、例えば、インバータ等である。
電力変換器31の複数の半導体素子31aは、例えば、通電切替用のスイッチング素子であるトランジスタ及び整流用のダイオード等である。複数の導体31bは、例えば、電力変換器31の通電の入力及び出力の少なくともいずれかを行う。各導体31bの外形は、例えば金属による棒状又は板状等である。
【0012】
電力変換器31の複数の半導体素子31aは、例えば、ヒートシンクを有する基板上に配置されている。複数の半導体素子31aは、例えば、基板に設けられたヒートシンク等の冷却媒体によって冷却される。複数の半導体素子31aは、例えば、ファン32の吸気側に配置されている。
電力変換器31の複数の導体31bは、例えば、ファン32による冷却風の通風方向Fに沿って配置されている。各導体31bの少なくとも一部は、ファン32による冷却風の通風方向Fでの電力変換器31の下流側に配置されている。例えば、電力変換器31の基板上の回路構成要素に接続された各導体31bの少なくとも一部は、ファン32の排気側に配置されている。各導体31bの少なくとも一部は、ファン32の送風による冷却風によって冷却される。
【0013】
ファン32は、例えば、送風方向Fでの電力変換器31の複数の半導体素子31aと各導体31bの少なくとも一部との間に配置されている。例えば、ファン32は、送風方向Fでの上流側の複数の半導体素子31aと、送風方向Fでの下流側の各導体31bの少なくとも一部との間に配置されている。
ファン32の通風方向Fは、筐体11の上下方向に交差する方向である。例えば、ファン32の通風方向Fは、筐体11の左右方向に平行であって、筐体11の吸気口23及び排気口24に連なる方向である。
【0014】
複数の回路用部品13の各々は、ファン32の送風による冷却風によって冷却される冷却対象物である。複数の回路用部品13は、例えば、第1回路用部品13a及び第2回路用部品13bを備える。第1回路用部品13aは、例えば、各電気機器12の電力変換器31を制御する制御回路用の部品である。第1回路用部品13aは、例えば、基板及びリレー等の部品である。第2回路用部品13bは、例えば、各電気機器12の主回路部に接続される部品である。第2回路用部品13bは、例えば、導体、ヒューズ、コンデンサ及びトランス等の部品である。
【0015】
第1回路用部品13a及び第2回路用部品13bは、筐体11の内部で各電気機器12のファン32による通風方向Fでの各電気機器12の両側に配置される。第1回路用部品13aは、ファン32の吸気側、例えば通風方向Fでの各電気機器12の上流側に配置されている。第2回路用部品13bは、ファン32の排気側、例えば通風方向Fでの各電気機器12の下流側に配置されている。相対的に第2回路用部品13bに設定される所定の上限温度は第1回路用部品13aに設定される所定の上限温度よりも高い。
【0016】
このような構成のもと、ファン32を駆動させることにより、筐体11の吸気口23を介して外気が筐体11内に引き込まれて冷却風となり、この冷却風が筐体11内を水平方向(上下方向に交差する方向、通風方向F)に流れる。そして、排気口24から冷却風が排気される。この吸気口23から排気口24へと冷却風が流れる間に、第1回路用部品13aや第2回路用部品13bが冷却される。同時に、電力変換器31の複数の半導体素子31aはヒートシンク等の冷却媒体を介して冷却され、複数の導体31bはファン32の送風による冷却風によって冷却される。
【0017】
以上説明した実施形態によれば、電気機器ユニット10は、ファン32の通風方向Fに対して、主回路部を構成する複数の半導体素子31aの下流側に入出力部を構成する複数の導体31bを備えることにより、冷却効率を向上させることができる。例えば、ファン32の通風方向Fでの複数の半導体素子31aの上流側に複数の導体31bが配置される場合に比べて、各電気機器12での主な発熱部位の1つである各導体31bの放熱による熱が複数の半導体素子31aに伝達することを抑制することができる。
【0018】
また、筐体11の内部に配置される各電気機器12がファン32を備えることにより、筐体11の内部での各種用品の配置効率を向上させることができる。例えば、筐体11の天壁にファンを設ける場合、ファンが筐体11の天壁から外方に向かって突出することによって、突出部位の周囲に用品配置に用いることができない無駄な空間が生じるおそれがある。筐体11の天壁にファンを設ける場合と比較して筐体11の高さを抑えることができるので、電気機器ユニット10の高さ方向を抑えることもできる。
【0019】
電気機器ユニット10は、ファン32の通風方向Fの吸気側及び排気側の両側に配置される第1回路用部品13a及び第2回路用部品13bを備えることにより、第1回路用部品13a及び第2回路用部品13bの配置効率及び冷却効率を向上させることができる。例えば、筐体11の一部に配置される冷却用のファンを備える場合に比べて、各回路用部品13a,13bの所望の冷却効率を確保するためにレイアウトの自由度が規制されることを抑制することができる。1つのファン32の上流側の冷却風の流れと下流側の冷却風の流れの両方を用いて第1回路用部品13aや第2回路用部品13bを冷却できる。
【0020】
ファン32を第1及び第2回路用部品13a,13bの中央(両者13a,13bの間)に配置することで、各回路用部品13a,13bに満遍なく強い風(冷却風)を当てることができる。電気機器12に設けられたファン32を利用して各回路用部品13a,13bも冷却するので、例えば第1回路用部品13a側及び第2回路用部品13b側の各々に冷却用のファンを備えることを不要とし、電気機器ユニット10の部品点数も低減できる。
【0021】
制御回路用の部品である第1回路用部品13aと主回路部に接続される部品である第2回路用部品13bとはファン32の吸気側及び排気側に分離されていることにより、相互の発熱による伝熱を抑制することができる。第1回路用部品13aはファン32の吸気側に配置されていることによって、例えば第1回路用部品13aがファン32の排気側に配置される場合に比べて、第2回路用部品13bの発熱による熱の伝達を抑制することができる。
【0022】
筐体11の内部で適宜に配置される複数のファン32を備えることにより、筐体11の内部で冷却風の通風方向Fを適宜に設定することができる。冷却風の通風方向Fに応じて複数の回路用部品13の所望の冷却効率を確保しながら配置効率を向上させることができる。
【0023】
ファン32の通風方向Fの両側に吸気口23及び排気口24が形成されている筐体11を備えることにより、各電気機器12の両側に配置される第1回路用部品13a及び第2回路用部品13bの冷却効率を向上させることができる。例えば、筐体11の一部に配置される冷却用のファンを備える場合に比べて、筐体11内部の空間に無駄なスペースが生じることなく、筐体11の内面の近傍まで効率的に複数の構成要素を配置することができる。
【0024】
筐体11の上下方向に交差する方向、例えば左右方向に平行な通風方向Fのファン32が配置された各電気機器12を備えることにより、上下方向の上部及び下部に至るまでの空間に複数の構成要素を配置することができる。例えば、筐体11の上下方向の形状及び寸法が適宜に規制される場合であっても、筐体11内部の複数の構成要素に対する所望の冷却効率を確保しつつ、配置効率を向上させることができる。
【0025】
以下、変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、ファン32の通風方向Fは筐体11の左右方向に平行であるとしたが、これに限定されない。例えば、通風方向Fは、筐体11の適宜の方向に設定されてもよい。また、複数の電気機器12のファン32は、筐体11の内部での冷却風の気流形状が適宜の形状となるように配置されてもよい。
【0026】
上述した実施形態では、各電気機器12の電力変換器31での通電の入力又は出力を行う導体31bは、例えば、編線又は積層板によって可撓性を有するフレキシブル導体等であってもよい。各電気機器12は、フレキシブル導体である導体31bを備えることにより、表面積の増大によって冷却効率を向上させることができるとともに、振動の減衰又は絶縁を行うことができる。
【0027】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、電気機器ユニット10は、ファン32の通風方向Fに対して、主回路部を構成する複数の半導体素子31aの下流側に入出力部を構成する複数の導体31bを備えることにより、冷却効率を向上させることができる。例えば、ファン32の通風方向Fでの複数の半導体素子31aの上流側に複数の導体31bが配置される場合に比べて、各電気機器12での主な発熱部位の1つである各導体31bの放熱による熱が複数の半導体素子31aに伝達することを抑制することができる。
【0028】
また、筐体11の内部に配置される各電気機器12がファン32を備えることにより、筐体11の内部での各種用品の配置効率を向上させることができる。例えば、筐体11の天壁にファンを設ける場合、ファンが筐体11の天壁から外方に向かって突出することによって、突出部位の周囲に用品配置に用いることができない無駄な空間が生じるおそれがある。筐体11の天壁にファンを設ける場合と比較して筐体11の高さを抑えることができるので、電気機器ユニット10の高さ方向を抑えることもできる。
【0029】
電気機器ユニット10は、ファン32の通風方向Fの吸気側及び排気側の両側に配置される第1回路用部品13a及び第2回路用部品13bを備えることにより、第1回路用部品13a及び第2回路用部品13bの配置効率及び冷却効率を向上させることができる。例えば、筐体11の一部に配置される冷却用のファンを備える場合に比べて、各回路用部品13a,13bの所望の冷却効率を確保するためにレイアウトの自由度が規制されることを抑制することができる。1つのファン32の上流側の冷却風の流れと下流側の冷却風の流れの両方を用いて第1回路用部品13aや第2回路用部品13bを冷却できる。
【0030】
ファン32を第1及び第2回路用部品13a,13bの中央(両者13a,13bの間)に配置することで、各回路用部品13a,13bに満遍なく強い風(冷却風)を当てることができる。電気機器12に設けられたファン32を利用して各回路用部品13a,13bも冷却するので、例えば第1回路用部品13a側及び第2回路用部品13b側の各々に冷却用のファンを備えることを不要とし、電気機器ユニット10の部品点数も低減できる。
【0031】
制御回路用の部品である第1回路用部品13aと主回路部に接続される部品である第2回路用部品13bとはファン32の吸気側及び排気側に分離されていることにより、相互の発熱による伝熱を抑制することができる。第1回路用部品13aはファン32の吸気側に配置されていることによって、例えば第1回路用部品13aがファン32の排気側に配置される場合に比べて、第2回路用部品13bの発熱による熱の伝達を抑制することができる。
【0032】
筐体11の内部で適宜に配置される複数のファン32を備えることにより、筐体11の内部で冷却風の通風方向Fを適宜に設定することができる。冷却風の通風方向Fに応じて複数の回路用部品13の所望の冷却効率を確保しながら配置効率を向上させることができる。
【0033】
ファン32の通風方向Fの両側に吸気口23及び排気口24が形成されている筐体11を備えることにより、各電気機器12の両側に配置される第1回路用部品13a及び第2回路用部品13bの冷却効率を向上させることができる。例えば、筐体11の一部に配置される冷却用のファンを備える場合に比べて、筐体11内部の空間に無駄なスペースが生じることなく、筐体11の内面の近傍まで効率的に複数の構成要素を配置することができる。
【0034】
筐体11の上下方向に交差する方向、例えば左右方向に平行な通風方向Fのファン32が配置された各電気機器12を備えることにより、上下方向の上部及び下部に至るまでの空間に複数の構成要素を配置することができる。例えば、筐体11の上下方向の形状及び寸法が適宜に規制される場合であっても、筐体11内部の複数の構成要素に対する所望の冷却効率を確保しつつ、配置効率を向上させることができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0036】
10…電気機器ユニット、11…筐体、12…電気機器、13a…第1回路用部品、13b…第2回路用部品、23…吸気口、24…排気口、32…ファン