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特許75359841つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20240809BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240809BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G01R31/08
H02J13/00 301A
H02J3/00 170
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021148865
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2022049007
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】202041039933
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベーダーンタ・プラダーン
(72)【発明者】
【氏名】オー・ディ・ナイドゥ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-16762(JP,A)
【文献】特開2017-17832(JP,A)
【文献】特開昭61-11673(JP,A)
【文献】米国特許第4559491(US,A)
【文献】特開平6-70449(JP,A)
【文献】特開2017-208902(JP,A)
【文献】国際公開第2020/144150(WO,A1)
【文献】特開昭61-207130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08-31/11
H02H 3/00-3/52
H02J 3/00、13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの変電所を接続する1つ以上の伝送線路であって、各々の変電所にそれぞれのソースインピーダンスを有する等価ソースが関連付けられる1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するための方法であって、
各々の変電所における末端電圧および線路電流をもたらす電圧および電流測定値と、前記1つ以上の伝送線路または前記変電所におけるスイッチング事象に関連する状態信号とを取得するステップと、
伝送線路における擾乱に関連する事象を、前記取得した測定値および前記取得した状態信号のうちの1つ以上から検出するステップと、
線路パラメータと、前記事象の前および後の測定値を含む前記事象に関連する前記電圧および電流測定値とを使用して、前記事象に基づいて各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定するステップと
を含み、
前記擾乱は、前記1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける故障であり、
各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定するステップは、
前記伝送線路上の故障位置を推定するステップと、
前記推定された故障位置を使用して故障電流を計算するステップと、
各々が前記1つ以上の伝送線路のそれぞれの末端に関する2つのバスインピーダンスを、該当の末端の末端電圧の変化および前記計算された故障電流を使用して計算するステップと、
前記線路パラメータおよび前記推定された故障位置を使用して、線路インピーダンスならびに前記末端と前記推定された故障位置との間に位置する線路セクションのインピーダンスであるセクションインピーダンスのうちの1つ以上を計算するステップと、
前記計算された線路インピーダンスおよび前記計算されたセクションインピーダンスのうちの1つ以上と、前記2つのバスインピーダンスとを使用して、各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記線路パラメータは、伝送線路の特性インピーダンスおよび伝搬定数のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記線路パラメータは、前記伝送線路の線路長をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ソースインピーダンスは、故障電流または前記変電所の末端における注入電流を使用してさらに推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各々のバスインピーダンスを計算するステップは、前記バスインピーダンスに補正係数を乗算するステップを含み、前記補正係数は、故障電圧と前記計算された故障電流との比、および前記線路セクションのシャントアドミタンスを使用して計算され、前記故障電圧は、前記推定された故障位置を使用して計算され、前記シャントアドミタンスは、前記推定された故障位置および前記線路パラメータを使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ソースインピーダンスを推定するステップは、シャントアドミタンスの寄与を除去するステップを含み、前記シャントアドミタンスの寄与は、前記少なくとも1つの伝送線路のシャントアドミタンスならびに前記故障位置および前記線路パラメータを使用して計算される前記線路セクションのシャントアドミタンスのうちの1つ以上を使用して計算される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記推定されたソースインピーダンスは、大きさおよび角度の両方を有する複素ソースインピーダンスである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記推定されたソースインピーダンスは、変電所装置における保護機能および制御機能の一方の設定に使用される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するためのコンピュータプログラム製品であって、
プロセッサによって実行されたときに請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を該プロセッサに実行させる命令を含んでいる非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含んでいる、コンピュータプログラム製品。
【請求項10】
少なくとも2つの変電所を接続する1つ以上の伝送線路であって、各々の変電所にそれぞれのソースインピーダンスを有する等価ソースが関連付けられる1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するための装置であって、
各々の変電所における末端電圧および線路電流をもたらす電圧および電流測定値と、前記1つ以上の伝送線路または前記変電所におけるスイッチング事象に関連する状態信号とを取得するように構成されたデータ取得ユニットと、
前記データ取得ユニットに通信可能に結合し、
前記1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける擾乱に関連する事象を、前記取得した測定値および前記取得した状態信号のうちの1つ以上から検出し、
線路パラメータと、前記事象の前および後の測定値を含む前記事象に関連する前記電圧および電流測定値とを使用して、前記事象に基づいて前記等価ソースのソースインピーダンスを推定する
ように構成された信号処理ユニットと、
前記信号処理ユニットに通信可能に結合した制御ユニットと
を備え、
前記擾乱は、前記1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける故障であり、
前記信号処理ユニットは、
前記伝送線路上の故障位置を推定し、
前記推定された故障位置を使用して故障電流を計算し、
各々が前記1つ以上の伝送線路のそれぞれの末端に関する2つのバスインピーダンスを、該当の末端の末端電圧の変化および前記計算された故障電流を使用して計算し、
前記線路パラメータおよび前記推定された故障位置を使用して、線路インピーダンスならびに前記末端と前記推定された故障位置との間に位置する線路セクションのインピーダンスであるセクションインピーダンスのうちの1つ以上を計算し、
前記計算された線路インピーダンスおよび前記計算されたセクションインピーダンスのうちの1つ以上と、前記2つのバスインピーダンスとを使用して、各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定する
ように構成される、装置。
【請求項11】
前記線路パラメータは、伝送線路の特性インピーダンスおよび伝搬定数のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記線路パラメータは、前記伝送線路の線路長をさらに含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ソースインピーダンスは、故障電流または前記変電所の末端における注入電流を使用してさらに推定される、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記信号処理ユニットは、各々のバスインピーダンスを、前記バスインピーダンスに補正係数を乗算することによって計算するように構成され、前記補正係数は、故障電圧と前記計算された故障電流との比、および前記線路セクションのシャントアドミタンスを使用して計算され、前記故障電圧は、前記推定された故障位置を使用して計算され、前記シャントアドミタンスは、前記推定された故障位置および前記線路パラメータを使用して計算される、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記信号処理ユニットは、前記ソースインピーダンスを、シャントアドミタンスの寄与を除去することによって推定するように構成され、前記シャントアドミタンスの寄与は、前記少なくとも1つの伝送線路のシャントアドミタンスならびに前記故障位置および前記線路パラメータを使用して計算される前記線路セクションのシャントアドミタンスのうちの1つ以上を使用して計算される、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は変電所サーバであり、
前記変電所サーバは、1つ以上の測定機器およびスイッチング装置に通信可能に結合しているか、または、
前記装置は、前記1つ以上の伝送線路の末端に関連付けられたインテリジェント電子装置であり、前記1つ以上の伝送線路の別の末端に関連付けられた別のインテリジェント電子装置に通信可能に結合している、請求項10~15のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明の実施形態は、送電システムに関する。より具体的には、実施形態は、送電線路におけるソースインピーダンスの推定に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線路におけるさまざまな解析(例えば、線路保護に関連する解析)は、例えば線路末端から見た送電システムの等価モデルに依存する。末端バスMおよびNの間に接続された二重回路伝送線路を考える。典型的には、相互接続された高電圧伝送システムにおいて、各々のこのような線路は、他の伝送線路を介してネットワークの残りの部分に接続される。動作要件に応じて、1つ以上のリアクトルまたは1つ以上のコンデンサ(複数可)などのシャント要素も、バスに接続することができる。負荷要素は、下流のより低い電圧レベルのネットワークおよび/または直接的なハイテンション(HT)負荷タッピングであってよい。
【0003】
そのような等価モデルを、距離リレーの動作特性を設定するために使用することができる。モデルを、「Power swing and out-of-step Considerations on transmission lines」、IEEE PSRC WG D 6、2005で説明されているように、電力動揺ブラインダおよび脱調ロジックを設定するために使用することもできる。
【0004】
典型的な等価モデルの構成要素であるソースインピーダンスが、「A Tutorial on Calculating Source Impedance Ratios for Determining Line Length」、M.J.Thomson、A.Somani、SEL、2015に記載のように、アンダー/オーバーリーチ要素を設定し、パイロット保護方式を設計するために、短い線路であるか、中程度の線路であるか、あるいは長い線路であるかどうかを識別する線路のソースインピーダンス比(SIR)を定めるために使用される。
【0005】
ソースインピーダンスの情報は、L.Eriksson、M.M.Saha、およびG.D.Rockefellerの「An Accurate Fault Locator with Compensation for Apparent Reactance in The Fault Resistance Resulting from Remote-End Infeed」、IEEE Transactions on Power Apparatus and Systems、vol.PAS-104、no.2、pp.423-436、Feb.1985で説明されているように、シングルエンドの測定値のみを使用する場合の線路上の故障の位置特定などの特定の解析に関して、不可避になる。
【0006】
ソースインピーダンスを、ネットワークのインピーダンス行列(ZBUS)が入力として利用可能である場合に、便利に計算することができる。ネットワークのトポロジに何らかの変化があり、それらが正しく把握されている場合、更新されたZBUSを使用し、この手法によってソースインピーダンスを計算し直すことができる。しかしながら、変電所レベルの課題において、ネットワーク全体のトポロジの情報を利用できない可能性がある。したがって、この方法は、変電所の技術者/オペレータにとって、ソースインピーダンスを見つけるためにほとんど役に立たない。
【0007】
関心対象の線路の近傍における限られた測定値のみを使用してソースインピーダンスを推定するために、さまざまな手法が研究されている。
【0008】
「Power swing and out-of-step considerations on transmission lines」、IEEE PSRC WG D 6、2005において、端部バスにおける短絡電流レベルおよび線路からの故障電流への寄与についての情報を使用して、ソースインピーダンスを近似的に計算する方法が提示されている。この方法の限界は、各々のバスにおいて短絡実験を実行または段階化しない限り、両方のバスにおいて必要なデータを同時に取得することが困難な場合があることである。
【0009】
一方法が、J.MooneyおよびJ.Peerの「Application Guidelines for Ground Fault Protection」、proceedings of the 24th Annual Western Protective Relay Conference、Spokane、WA、October 1997において提案されており、ボルト型短絡をIEDバス(例えば、2つの末端バスMおよびNのうちのバス「M」)において実行することを提案している。調整された故障電流(すなわち、線路からの故障への寄与分を故障電流から引いたもの)で除算されたときの公称システム電圧が、IEDバスのソースインピーダンスの尺度を与える。
【0010】
「A Tutorial on Calculating Source Impedance Ratios for Determining Line Length」、M.J.Thomson、A.Somani、SEL、2015で提案された方法は、リモート端部バスに短絡を配置することを提唱している。ここで、線路を通る電流で除算したときの公称システム電圧に対するIEDバス電圧の降下が、ローカルバスにおけるソースインピーダンスを与える。
【0011】
米国特許第8050878号明細書(B2)においては、ネットワーク特性を決定するために、線路遮断器が開状態であるときの上流の測定電圧と遮断器を閉じたときのローカルバス電圧との間の差が使用される。差が、遮断器を閉じた後の線路電流によって除算され、ネットワーク特性が決定される。推定されたネットワーク特性は、バスにおけるボルト型短絡に起因する電流に対するインピーダンスであるように見受けられる。また、この方法は、そのようなネットワーク特性の遮断器の状態に基づく計算に限定されるように見受けられる。さらに、任意の状態変化の事象について、この方法は、測定値を利用し、したがって1つの位置においてのみネットワーク特性を推定するように見受けられる。換言すると、この方法は、伝送線路の等価モデルに関連するソースインピーダンスの推定に、関係していないように思われる。
【0012】
上述の方法などの先行技術の方法は、ソースインピーダンスの大きさの値の近似評価に適している。しかしながら、ソースインピーダンスの大きさのみの推定は、特定の機能(例えば、角度が大きな役割を果たす保護機能)にとって充分ではない。さらに、先行技術の方法は、正常動作の最中にシステムに故障を生じさせなければならないが、これが必ずしも常には実現可能でないという課題に直面する可能性がある。
【0013】
したがって、大きさだけでなく角度も決定するソースインピーダンスを推定するための改善された技術が、必要とされている。さらに、そのような技術は、ソースインピーダンスを決定するために故障を生じさせる必要性を、排除するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の概要
本発明は、先行技術の限界の少なくともいくつかを克服するソースインピーダンスの推定における改善に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するための方法を提供する。1つ以上の伝送線路は、少なくとも2つの変電所を接続する。さまざまな実施形態によれば、本方法を、2つの変電所(すなわち、2つの末端線路)を接続する伝送線路について実施することができる。しかしながら、これを、例えば共通の末端を2つの他の末端に接続して有している伝送線路(例えば、バスMをバスNおよびPに接続する線路、またはバスMおよびNをバスpに接続する線路)など、3つ以上の末端を有する他の伝送線路に拡張することが可能であり得る。一例として、送電システムは、2つの変電所を平行架空線路で接続する三相システムであってよい。各々の変電所に、それぞれのソースインピーダンスを有する等価ソースが関連付けられる。等価ソースは、変電所に接続された2つ以上の伝送線路の組み合わせ、伝送線路、リアクトル、および/または負荷の組み合わせ、あるいはさまざまな電源/サブシステムの組み合わせを表すことができる。
【0016】
本方法は、電圧および電流測定値ならびに状態信号を取得することを含む。電圧および電流測定値は、各々の変電所における末端(または、バス)電圧および線路電流をもたらす。例えば、測定を、1つ以上の伝送線路の各々の末端(例えば、変電所末端またはバス(バスバー))において行うことができる。線路電流は、末端に入射する電流または末端から循環する電流を含む。線路電流は、シャント要素を通る電流も含むことができる。状態信号は、1つ以上の伝送線路または変電所におけるスイッチング事象に関する。これらの事象は、必ずしもこれらに限られるわけではないが、線路遮断器、末端における遮断器、シャント要素、などのスイッチング(オン/オフ)を含むことができ、このようなスイッチを、伝送線路または変電所に設けることができる(例えば、末端に接続される)。
【0017】
本方法は、1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける擾乱に関連し、あるいは変電所のうちの1つにおける(例えば、変電所末端(末端)またはバスバー(バス)における)電流注入に関連する事象を検出することをさらに含む。例えば、事象は、1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける故障などの擾乱であり得る。別の例を挙げると、事象は、末端またはバスにおける故障である。さらに別の例を挙げると、事象は、シャント要素のスイッチング(オン/オフ)である。シャント要素の例として、リアクトル、コンデンサ、および負荷が挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【0018】
さまざまな実施形態によれば、事象は、取得された測定値および取得された状態信号のうちの1つ以上から検出される。
【0019】
本方法は、事象に基づいて各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定することをさらに含む。さまざまな実施形態によれば、推定されたソースインピーダンスは、複素値を有し、すなわち大きさおよび角度の両方を有する。ここで、ソースインピーダンスは、線路パラメータならびに事象に関連する電圧および電流測定値を使用して推定され、事象に関連する測定値は、事象の前および後の測定値を含む。伝送線路の線路パラメータは、伝送線路の特性インピーダンス、伝搬定数、および線路長のうちの1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0020】
一実施形態によれば、擾乱は、1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける故障である。この実施形態によれば、各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定することは、
・伝送線路上の故障位置を推定することと、
・推定された故障位置を使用して故障電流を計算することと、
・各々が1つ以上の伝送線路のそれぞれの末端(すなわち、変電所末端またはバスバー(バス))に関する2つのバスインピーダンスを、該当の末端の末端電圧の変化および計算された故障電流を使用して計算することと、
・線路パラメータおよび推定された故障位置を使用して、線路インピーダンスならびに末端と推定された故障位置との間に位置する線路セクションのインピーダンスであるセクションインピーダンスのうちの1つ以上を計算することと、
・計算された線路インピーダンスおよび計算されたセクションインピーダンスのうちの1つ以上と、2つのバスインピーダンスとを使用して、各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定することと
を含む。
【0021】
上記の実施形態において、各々のバスインピーダンスを計算することは、随意により、バスインピーダンスに補正係数を乗算することを含む。ここで、補正係数は、故障電圧と計算された故障電流との比、および線路セクション(すなわち、末端と故障位置との間に位置する線路セクション)のシャントアドミタンスを使用して計算される。ここでは、故障電圧は、推定された故障位置を使用して計算され、シャントアドミタンスは、推定された故障位置および線路パラメータを使用して計算される。
【0022】
加えて、上記の実施形態において、ソースインピーダンスを推定することは、随意により、シャントアドミタンスの寄与を除去することを含む。ここで、シャントアドミタンスの寄与は、少なくとも1つの伝送線路のシャントアドミタンスならびに故障位置および線路パラメータを使用して計算される線路セクションのシャントアドミタンスのうちの1つ以上を使用して計算される。
【0023】
一実施形態によれば、変電所のうちの1つ(例えば、変電所末端またはバス)において、擾乱がバス上の故障(バス故障)であることに起因し、あるいはシャント要素のスイッチング(オン/オフ)に起因する電流注入が存在する。この実施形態によれば、各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定することは、
・変電所の末端における注入電流または故障電流を、該当の末端について得られた電流測定値から求めることと、
・各々が1つ以上の伝送線路のそれぞれの末端(すなわち、変電所末端またはバス)に関する2つのバスインピーダンスを、該当の末端の末端電圧の変化と、注入電流または故障電流とを使用して計算することと、
・線路パラメータを使用して線路インピーダンスを計算することと、
・計算された線路インピーダンスおよび2つのバスインピーダンスを使用して、各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定することと
を含む。
【0024】
上記の実施形態において、シャント要素は、リアクトル、コンデンサ、および負荷のいずれかである。さらに、ソースインピーダンスを推定することは、随意により、線路パラメータを使用して計算されたシャントアドミタンスの寄与を除去することを含む。
【0025】
推定されたソースインピーダンスを、保護機能および制御機能のうちの少なくとも1つに関連する等価モデルを調整するために利用することができる。一例として、推定されたソースインピーダンスは、変電所装置における保護機能および制御機能の一方の設定に使用される。
【0026】
本方法は、コンピュータプログラム製品に実現可能である。したがって、一実施形態において、本発明は、1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するためのコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は、プロセッサによって実行されたときに本方法(すなわち、場合により本方法の一部または全部)をプロセッサに実行させる命令を含んでいる非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を備える。
【0027】
本方法を、電力システムまたは変電所装置によって実施することができる。例えば、本方法をサーバによって実施することができる。このサーバは、変電所サーバ、あるいは(例えば、測定機器、IED、またはリレーからの)取得された電圧および電流測定値ならびに(例えば、スイッチング装置またはリレーからの)状態信号を受信する遠隔配置のサーバであってよい。別の例を挙げると、本方法を、インテリジェント電子装置(IED)によって実施することができ、IEDは、ローカル端(末端)の電圧および電流測定値を有し、リモート端のIEDに通信可能に結合する。この例において、IEDはスイッチング状態(または、状態信号)も有する。
【0028】
したがって、一態様において、本発明は、少なくとも2つの変電所を接続する1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するための装置を提供する。さまざまな実施形態によれば、装置を2つの変電所を接続する2つの末端線路において使用することができる。しかしながら、装置を、例えば共通の末端を2つの他の末端に接続して有している伝送線路(例えば、バスMをバスNおよびPに接続する線路、またはバスMおよびNをバスpに接続する線路)など、3つ以上の末端を有する他の伝送線路の場合などの他の構成において使用してもよい。本方法に関連して上述したように、各々の変電所に、それぞれのソースインピーダンスを有する等価ソースが関連付けられる。
【0029】
装置は、電圧および電流測定値と、状態信号とを取得するように構成されたデータ取得ユニットを備え、電圧および電流測定値は、各々の変電所(例えば、1つ以上の伝送線路の各々の末端)における末端電圧および線路電流をもたらす。状態信号は、1つ以上の伝送線路または変電所におけるスイッチング事象に関する。
【0030】
さらに、装置は、データ取得ユニットに通信可能に結合し、1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける擾乱または変電所のうちの1つにおける電流注入に関連する事象を検出するように構成された信号処理ユニットを備える。ここで、信号処理ユニットは、取得された測定値および取得された状態信号のうちの1つ以上から事象を検出するように構成される。あるいは、事象を別のユニット/モジュールによって検出してもよく、事象情報を(例えば、データ取得ユニットを介して)信号処理ユニットへの入力としてもたらすことができる。
【0031】
さらに、信号処理ユニットは、線路パラメータならびに事象に関連する電圧および電流測定値を使用して、事象に基づいて各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定するように構成される。ここで、事象に関連する測定値は、事象の前および後の測定値を含む。
【0032】
装置は、信号処理ユニットに通信可能に結合した制御ユニットをさらに備える。ソースインピーダンスの変化に起因して等価モデルを調整する必要があり得る。そのような状況において、制御ユニットは、推定されたソースインピーダンスに基づいて保護機能および制御機能の少なくとも一方を実行するように等価モデルを調整するように構成される。あるいは、制御ユニットは、更新されたソースインピーダンスを、別の変電所装置で使用するための入力として提供することができる。
【0033】
一実施形態において、擾乱は、伝送線路における故障である。この実施形態によれば、信号処理ユニットは、
・伝送線路上の故障位置を推定し、
・推定された故障位置を使用して故障電流を計算し、
・各々が1つ以上の伝送線路のそれぞれの末端(すなわち、変電所末端またはバス)に関する2つのバスインピーダンスを、該当の末端の末端電圧の変化および計算された故障電流を使用して計算し、
・線路パラメータおよび推定された故障位置を使用して、線路インピーダンスならびに末端と推定された故障位置との間に位置する線路セクションのインピーダンスであるセクションインピーダンスのうちの1つ以上を計算し、
・計算された線路インピーダンスおよび計算されたセクションインピーダンスのうちの1つ以上と、前記2つのバスインピーダンスとを使用して、各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定する
ように構成される。
【0034】
上記の実施形態において、信号処理ユニットを、各々のバスインピーダンスをバスインピーダンスに補正係数を乗算することによって計算するように構成することもでき、補正係数は、故障電圧と計算された故障電流との比、および線路セクション(すなわち、末端と故障位置との間に位置する線路セクション)のシャントアドミタンスを使用して計算される。ここで、故障電圧は、推定された故障位置を使用して計算され、シャントアドミタンスは、推定された故障位置および線路パラメータを使用して計算される。
【0035】
さらに、信号処理ユニットを、ソースインピーダンスをシャントアドミタンスの寄与を除去することによって推定するように構成することもでき、シャントアドミタンスの寄与は、少なくとも1つの伝送線路のシャントアドミタンスならびに故障位置および線路パラメータを使用して計算される線路セクションのシャントアドミタンスのうちの1つ以上を使用して計算される。
【0036】
一実施形態によれば、末端のうちの1つにおける電流注入は、バス上の故障またはシャント要素のスイッチングのうちの1つである擾乱に起因する。この実施形態によれば、信号処理ユニットは、
・末端における注入電流または故障電流を、該当の末端について得られた電流測定値から求め、
・各々が1つ以上の伝送線路のそれぞれの末端(すなわち、変電所末端またはバス)に関する2つのバスインピーダンスを、該当の末端の末端電圧の変化、ならびに末端における注入電流または故障電流を使用して計算し、
・線路パラメータを使用して線路インピーダンスを計算し、
・計算された線路インピーダンスおよび2つのバスインピーダンスを使用して、各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定する
ように構成される。
【0037】
上記の実施形態において、信号処理ユニットを、線路パラメータを使用して計算された伝送線路のシャントアドミタンスの寄与を除去するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】二重回路伝送線路を有する送電システムの概略図である。
図2図1の送電システムの等価モデルを示している。
図3】本発明のさまざまな実施形態によるソースインピーダンスを推定するための方法のフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態によるパイモデルによって表された伝送線路を有する等価2ポートモデルを示している。
図5】本発明の一実施形態によるソースインピーダンスを推定するための方法のフローチャートである。
図6】線路の中間点における模擬故障後のバス電圧の例示的なグラフ結果である。
図7】線路の中間点における模擬故障後の線路電流の例示的なグラフ結果である。
図8】本発明の別の実施形態によるパイモデルによって表された伝送線路を有する等価2ポートモデルを示している。
図9】本発明の別の実施形態によるソースインピーダンスを推定するための方法のフローチャートである。
図10】模擬シャントスイッチング事象後のバス電圧の例示的なグラフ結果である。
図11】模擬シャントスイッチング事象後の線路電流の例示的なグラフ結果である。
図12】本発明の一実施形態によるソースインピーダンスを推定するためのサーバが設けられた送電システムの概略図である。
図13】本発明の一実施形態によるソースインピーダンスを推定するためのインテリジェント電子装置が設けられた送電システムの概略図である。
図14】本発明の一実施形態によるソースインピーダンスを推定するための装置のブロック図である。
図15】例示的なシナリオによる伝送線路における2ソース等価ソースの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
送電線路(例えば、線路保護)におけるさまざまな解析は、送電システムの等価モデルに依存する。図1に示される送電システムを考える。この送電システムは、末端(または、バス)MおよびNを接続する二重回路伝送線路、すなわち図示の回路1および回路2を有する。さらに、図示のように、伝送線路を、(例えば、他の伝送線路を介して)ネットワークの残りの部分に接続することができる。また、動作の要件に応じて、図1に示されるようにバスに接続されたリアクトルまたはコンデンサなどのシャント要素が存在できる。負荷要素は、下流のより低い電圧レベルのネットワークおよび/または直接的なハイテンション(HT)負荷タッピングを呈し得る。
【0040】
図1の送電システムの等価モデルが、図2に示されており、関心対象の線路を除くシステムの構成要素はすべて、対応するインピーダンスの背後の2つの等価ソースにまとめられている。図2において、等価ソースは、等価ソースMおよび等価ソースNとして示されている。この実施形態において、等価ソースは、(図1の)ネットワーク線路の組み合わせである。しかしながら、等価ソースは、他の電力システム機器またはサブシステムの組み合わせであってもよい。例えば、等価ソースは、伝送線路、発電機、変圧器、リアクトル、および/または負荷のうちの1つ以上からなるグルーピング、または当業者にとって明らかであると考えられる他のそのような組み合わせを呈することができる。
【0041】
典型的には、図2に示されている等価モデルと同様の等価モデルが、さまざまな電力システム装置において、例えば、他のシステム/装置の設定の中でもとりわけ、距離リレーの動作特性を設定する、電力動揺ブラインダおよび脱調ロジックを設定する、などの目的で使用される。
【0042】
典型的な等価モデルのコンポーネントであるソースインピーダンス(例えば、等価ソースMまたはNのインピーダンス)が、線路のソースインピーダンス比(SIR)を定めるために使用される。これは、例えば、アンダー/オーバーリーチ要素を設定し、パイロット保護方式を設計するために、短い線路であるか、中程度の線路であるか、あるいは長い線路であるかを識別することができる。
【0043】
本発明は、ソースインピーダンス(すなわち、等価ソースのインピーダンス)として知られるインピーダンスZSMおよびZSN図2を参照)の推定を扱う。この問題を解決するための直接的な手法は、インピーダンスを導出するためにシステムZBUSを使用することである。しかしながら、変電所レベルの課題として、ネットワークトポロジ全体の情報が常に利用可能であるとは限らない。したがって、本発明において、本発明の発明者の手法は、インピーダンスの推定値を、変電所レベルの測定値および伝送線路データのみを用いて見つけることである。それらは、両端におけるバス電圧および線路電流の測定値、末端バスに入射する線路上の電流、接続されたシャント要素を通る電流、および線路自体のモデルパラメータである。
【0044】
本方法および装置が、図2に示される等価モデルに関連して説明されることに、留意されたい。しかしながら、本発明を他の伝送線路の構成に拡張することが可能であり得る。
【0045】
本発明は、これらに限定されないが、推定プロセスのために、線路の故障、バスの故障、線路上の短絡、または末端バス上のスイッチング事象などの事象の最中の測定値を利用する。本発明は、ソースインピーダンスを推定するために、事象に続く伝送線路の両端におけるデジタル変電所測定値を利用する。追加の電流注入(または、故障電流)に起因して測定されるバス電圧の変化が、等価ソースのソースインピーダンスを計算するために使用される。
【0046】
図3を参照すると、図3は、(例えば、図1に示される送電システムなどの送電システムにおける等価ソースについて)1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するための本発明のさまざまな実施形態による方法のフローチャートである。
【0047】
302において、本方法は、電圧および電流の測定値ならびに状態信号を取得することを含む。電圧および電流を、変圧器または変流器、ロゴスキーコイル、あるいは他の適切な電圧または電流センサ、などの測定機器によって求めることができる。
【0048】
電圧および電流の測定値は、各々の変電所における末端(例えば、変電所末端またはバスバー(バス))電圧および線路電流をもたらす。換言すると、1つ以上の伝送線路の各々の末端における電圧および電流の測定値は、対応する測定機器によって取得される。線路電流は、末端に入射する電流または末端から循環する電流を含む。線路電流は、シャント要素(末端に設けられている場合)からの電流も含むことができる。状態信号は、1つ以上の伝送線路または変電所におけるスイッチング事象に関連する。これらの事象は、必ずしもこれらに限られるわけではないが、線路遮断器、末端における遮断器、シャント要素、などのスイッチング(オン/オフ)を含むことができ、このようなスイッチを、伝送線路または変電所に設けることができる(例えば、末端に接続される)。状態信号(または、スイッチング状態)は、スイッチング装置から直接取得可能であり、あるいは対応するスイッチング装置を監視および/または制御するために設けられたインテリジェント電子装置(IED)またはリレーなどの他の装置を介して取得可能である。
【0049】
304において、本方法は、1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける擾乱に関連し、あるいは変電所のうちの1つにおける(例えば、変電所末端またはバスにおける)電流注入に関連する事象を検出することを含む。さまざまな実施形態によれば、事象は、取得された測定値および取得された状態信号のうちの1つ以上から検出される。
【0050】
線路上の故障を、線路上の保護IEDの状態出力に基づいて検出することができる。例えば、トリップ出力が「1」である場合、故障が線路上に発生したと結論付けることができ、故障は、取得された測定値から検出された可能性がある。バスの故障を含む故障事象を、線路遮断器の状態に基づいて検出することもできる。線路を開くことによって故障が解消される場合、遮断器の状態が変化する。故障の発生を示すオペレータ(例えば、変電所のオペレータ)によって設定されるフラグを、故障の検出に使用することも可能である。
【0051】
同様に、シャント要素のスイッチング事象を、装置の状態または人間によるフラグに基づいて行うことができる。例えば、シャント要素が線路末端において追加/除去される場合、対応する遮断器の状態が変化する。別の例を挙げると、オペレータによって設定されるフラグが、シャント要素のスイッチング(オン/オフ)を示すことができる。
【0052】
306において、本方法は、事象に基づいて各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定することを含む。さまざまな実施形態によれば、推定されたソースインピーダンスは、複素値を有し、すなわち大きさおよび角度の両方を有する。ここで、ソースインピーダンスは、線路パラメータならびに事象に関連する電圧および電流の測定値を使用して推定され、事象に関連する測定値は、事象の前後の測定値を含む。伝送線路の線路パラメータは、伝送の特性インピーダンス、伝搬定数、および線路長のうちの1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0053】
以下で、本方法の実施形態を説明するが、一実施形態においては、事象が線路の故障であり、別の実施形態においては、事象が変電所末端におけるシャント注入である。
【0054】
伝送線路をパイモデルによって表した等価2ポートモデルを示している図4に示されるネットワークを考える。ノード「F」(バスF)が、線路上の故障発生地点を表す架空のノードである。二重回路線路が、高電圧(HV)伝送においてきわめて一般的であるため、以下の解析および議論に使用されることに留意されたい。しかしながら、解析は、後述されるように、単一回路線路にも適用可能である。
【0055】
実施形態:線路故障に関連する測定値を使用したソースインピーダンスの推定
図4のネットワークを考える。バスFにおける故障を、同じバスにおける故障電流Ifltの注入と考えることができる。ネットワーク内のこの余分な電流注入により、末端バスMおよびNにおける電圧が変化する。ここで、末端MおよびNを、変電所末端またはバスバー(すなわち、バス)と考えることができる。以下の(1)に示されるように、各々のバスについて以下のインピーダンスを定義する。
【0056】
【数1】
【0057】
各々のバスのソースインピーダンス(または、バスインピーダンス)は、対応するバス電圧の変化と故障電流との比である。シンボルVおよびIは、それぞれ電圧および電流フェーザを表し、これらは、例えば変電所の測定機器(例えば、変流器および変圧器)から得られた測定値に離散フーリエ変換(DFT)を適用することによって得ることができる。上付き文字の「0」は、定常状態を示し、「f」は、故障状態の量を示す。故障電流の注入に起因するバス電圧の変化を、以下の(2)に示されるように、ネットワークパラメータに関して表すこともできる。
【0058】
【数2】
【0059】
(2)から、ZMFおよびZNFを、以下の(3)に示されるように計算することができる。
【0060】
【数3】
【0061】
(2)の上記関係において、線路のシャントアドミタンスブランチの電流は無視される。方程式を解いてZsMおよびZsN(すなわち、等価ソースMおよびNのそれぞれのソースインピーダンス)を求めると、下記の(4)に示されるように、次の結果が得られる。
【0062】
【数4】
【0063】
伝送線路の等価パイ回路モデルを仮定すると、
Zl=Zcsinh(γl),Zl1= Zcsinh(γdl),Zl2=Zcsinh(γ(1-d)l)
であり、ここでZcは特性インピーダンスであり、γは線路の伝搬定数である。明らかなように、Zl1およびZl2(すなわち、末端と故障位置との間の線路セクションのインピーダンス)、ならびにすべての関連の量は、本方法のこの実施形態の前提条件である故障位置「d」に依存する。一例として、これを、線路の両端からの測定値を使用して計算される故障点電圧が同じになるはずであるという単純な原理を使用することによって、見つけることができる。「d」を計算するために、以下を使用することができる。
【0064】
【数5】
【0065】
(1)において定義された量ZMFおよびZNF(すなわち、バスインピーダンス)は、両方の端部バスからの定常状態および故障後の電圧フェーザおよび故障電流フェーザを使用して計算される。ひとたび故障位置が求められると、故障電流Iflt(バス「F」から離れる方向に正と考えられる)を計算することができる。これを行うために、以下の(6(6a、6b))に示されるように、最初に、各々の末端バスMおよびNからの故障電流寄与を求めることができる。
【0066】
【数6】
【0067】
次いで、(7)に示されるように、バスM側およびバスN側からの寄与を合計することによって、総故障電流が求められる。
【0068】
【数7】
【0069】
故障位置および故障電流フェーザを、他の方法を使用して計算することもでき、本方法が上記の計算に限定されないことに留意されたい。
【0070】
本方法の上述の実施形態の各ステップが、図5のフローチャートに示されている。上述したように、実施形態を、故障が線路上で検出された後に実行することができる。
【0071】
502において、故障位置「d」が、(5)のように、両端における電圧および電流測定値ならびに線路パラメータを使用することによって推定される。
【0072】
504において、故障電流Ifltが、(7)のように、故障位置dならびに両端における電圧および電流測定値を使用して計算される。
【0073】
506において、バスインピーダンスZMFおよびZNFが、(1)のように、それぞれのバス電圧の変化と故障電流との比として計算される。
【0074】
508において、線路および/またはセクションのインピーダンス(インピーダンスZl,Zl1,Zl2)が、線路パラメータおよび故障位置dを使用して計算される。
【0075】
510において、等価ソースのソースインピーダンス(ZsMおよびZsN)が、(4)を使用し、すなわちバスインピーダンスならびに線路および/またはセクションのインピーダンスを使用して、推定される。
【0076】
式(1)および式(2)において、シャントアドミタンスブランチの電流は無視されている。これらを考慮に入れるために、シャントアドミタンスブランチがシステムに存在する場合、以下の補正を行うことができる。
【0077】
【数8】
【0078】
ひとたび故障位置dが分かると、故障点電圧VFを、故障回路の線路セクションMFのパイ等価モデル方程式においてVMおよびIM1の測定値を使用することによって見つけることができることに、留意されたい。
【0079】
補正2(C2):
上記のステップ5のように得られたZsMおよびZsNの値から、線路シャントアドミタンスからの寄与を、次のように除去する。
【0080】
【数9】
【0081】
図2に示したタイプの試験システムを、数値例として考える。PSCAD環境においてシミュレーションを行う。線路(それぞれ120km)は、シミュレーションにおいて周波数依存位相モデルで表される。線路の特性インピーダンスZcは、244.16∠-3.4745Ωであり、伝搬定数γは、1.0806×10-06∠86.461である。各々の回路の線路インピーダンスは、31.661∠82.922にほぼ等しい。等価ソースは、それぞれインピーダンスの背後の50Hz、220kVの電圧源としてモデル化され、位相角度差は5.5である。ソースインピーダンスの値、すなわちZsMおよびZsNは、この例示の目的に関して、63.32∠84.81および158.3∠79として保持される。0.2sにおいて伝送線路の回路1の中間点に故障が発生する。故障に続いて、バス電圧および線路電流が、図6および図7に示されるように変化する。
【0082】
計算のために、故障の始まりの時点から30ms~50ms(ミリ秒)に及ぶウィンドウ内の電圧および電流測定値のみを使用した。これは、故障の始まりの時点から少なくとも2.5サイクル後に回路遮断器の動作によって故障が除去され、その後は故障した回路の故障後の線路電流測定値は得られないと仮定して行われる。解析の各ステップの結果を以下に示す。
【0083】
1.(5)を使用して推定された故障位置:d=0.5002
2.得られたdの値を(6)および(7)に使用して計算された故障電流:Iflt=2.2835∠14.936kA
【0084】
【数10】
【0085】
実施形態:シャント注入に関連する測定値を使用したソースインピーダンスの推定
この実施形態に関して、図8に示されるようなパイモデルによって伝送線路を表した等価2ポートモデルが考慮される。例えばバスMなどの末端バスにおけるシャント要素(例えば、リアクトル/コンデンサ/負荷)のスイッチング事象に起因する電流注入を考える。上述の実施形態に関して行ったように、各々のバスMおよびNについて以下のインピーダンス(すなわち、バスインピーダンス)を定義する。
【0086】
【数11】
【0087】
ここで、Iinjは、バスにおけるシャント電流の注入を表す(バス内への方向に測定された場合に正と見なされる)。電流の注入に起因するバス電圧の変化を、やはり以下のようにネットワークパラメータに関して表すことができる。
【0088】
【数12】
【0089】
(9)から、ZMFおよびZNFを、以下の(10)に示されるように計算することができる。
【0090】
【数13】
【0091】
式(10)を解いてZsMおよびZsN(すなわち、等価ソースのソースインピーダンス)を見つけると、(11)に示される結果が得られ、これを(12)に示される式にさらに簡略化することができる。
【0092】
【数14】
【0093】
(12)において、IM=IM1+IM2、IN=IN1+IN2であり、上付き文字の「0」は、定常状態の量を表し、「I」は、スイッチング事象後のエンティティの値を表す。(9)の式を、式(2)においてd=0を保つことによって求めることができることに、留意されたい。バスNにおけるシャント注入の場合、式(2)においてd=1を保つことによって(9)~(12)と同様の式を導出することができる。
【0094】
本方法の上述の実施形態の各ステップが、図9のフローチャートに示されている。上述したように、本実施形態を、スイッチング事象が末端バスで検出された後に実行することができる。
【0095】
902において、注入された電流Iinjが、変電所の測定値から直接取得される。
904において、バスインピーダンス(ZMFおよびZNF)が、式(8)のように、それぞれのバス電圧の変化と注入された電流との比として計算される。
【0096】
906において、線路インピーダンスZlが、線路パラメータを使用して計算される。
908において、等価ソースのソースインピーダンス(ZsMおよびZsN)が、得られたZMFおよびZNFを(11)に使用して推定される。あるいは、ソースインピーダンス(ZsMおよびZsN)は、(12)のように、ZMF、ZNF、ならびに両端において測定された線路電流の変化を使用することによって推定される。
【0097】
上記の実施形態において、線路シャントアドミタンスの影響を随意により考慮してもよい。それらの影響を考慮するために、以下の補正を適用する必要がある。
【0098】
【数15】
【0099】
線路故障の実施形態に関する試験システムと同様の試験システムを、シャント注入に関連する上記の実施形態の数値例として検討する。本発明の発明者は、0.2sにおいてバスMにシャントリアクトルのスイッチングを生じさせ、得られた測定値を使用してソースインピーダンスを推定する。バスへとスイッチングされるリアクトルは、220kVの公称線路間バス電圧において100MVarの定格を有する。スイッチングに続いて、バス電圧および線路電流が、図10および図11に示されるように変化する。解析の各ステップの結果を以下に示す。
【0100】
【数16】
【0101】
バス故障の場合に、同様の手法を採用することができ、スイッチング事象に起因して注入される電流の代わりに、バスにおける故障電流を、取得された測定値から求めることができる。
【0102】
上述した方法は、二重回路線路に限定されず、単一回路線路に容易に拡張することができる。単一回路伝送線路の場合、以下の調整を行う必要がある。
【0103】
【数17】
【0104】
(b)バス注入:第2の回路が存在しないため、式(12)を使用して、IM=IM1およびIN=IN1の変更だけでソースインピーダンスが得られる。
【0105】
本方法は、コンピュータプログラム製品に実現可能である。したがって、一実施形態において、本発明は、1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスを推定するためのコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は、光ディスク(例えば、DVD、CD、または他のディスク型コンピュータストレージ製品)、あるいはコンピュータプログラムまたは機械可読命令を格納することができるハードドライブまたは他のメモリ装置であってよいが、必ずしもこれらに限られない。一例として、コンピュータプログラム製品は、サーバまたは変電所装置の一部であってよい命令を含むメモリであってよい。
【0106】
コンピュータプログラム製品は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含む。そのような非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の例は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、外部メモリ装置(例えば、USBメモリ、フラッシュドライブ、など)、または他の同様のタイプの記憶媒体であってよいが、必ずしもこれらに限られない。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサによって実行されたときに上記の方法(すなわち、場合により方法の一部または全部)をプロセッサに実行させる命令を含む。これらの命令は、方法を定義するプログラムまたは機械可読命令(すなわち、上述の方法を定義する命令)である。これらの命令を、コンピュータ処理装置、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、およびデジタル信号プロセッサのうちの1つ、あるいはこれらの組み合わせであってよいプロセッサで実行することができる。そのような命令が実行されるとき、方法の1つ以上のステップが実行される。
【0107】
上述の方法を、電力システムまたは変電所装置によって実施することができる。例えば、図12に示されるように、本方法をサーバによって実施することができる。このサーバは、変電所サーバ、あるいは(例えば、測定機器、IED、またはリレーからの)取得された電圧および電流測定値ならびに(例えば、スイッチング装置またはリレーからの)状態信号を受信する遠隔配置のサーバであってよい。別の例を挙げると、図13に示されるように、本方法を、インテリジェント電子装置(IED)によって実施することができ、IEDは、ローカル端(末端)電圧および電流測定値を有し、他端に対応する測定値/データを受信するためにリモート端のIEDに通信可能に結合する。この例において、IEDは状態信号も有する。
【0108】
図14が、送電システムにおけるソースインピーダンスを推定するためのそのような装置(例えば、サーバまたはIED)のブロック図である。図示のように、装置は、(例えば、通信バス(1412)を介して)互いに通信可能に結合したデータ取得ユニット(1402)、信号処理ユニット(1404)、制御ユニット(1406)、通信ユニット(1408)、およびメモリユニット(1410)を備える。
【0109】
装置のさまざまなモジュールは、プロセッサ、I/Oなどのハードウェア装置で実現される。プロセッサは、本明細書において上述した方法のさまざまなステップのうちの1つ以上を実行するために、それぞれの命令を実行することによって各々のモジュールを(個別に、または同時に)呼び出すように構成される。そのような命令は、メモリユニットに格納されてよい。各々のモジュールは、本方法の1つ以上のステップを実行するように構成される。例えば、データ取得ユニットが、ステップ302を実行することができる一方で、信号処理ユニットは、ステップ304および306を実行することができる。
【0110】
さまざまな実施形態によれば、データ取得ユニットは、測定機器(あるいは、IEDまたはリレー)およびスイッチング装置(あるいは、関連のIEDまたはリレー)から(例えば、1414によって示されるように)電圧および電流測定値ならびに状態信号を取得するように構成される。さらに、信号処理ユニットは、データ取得ユニットに通信可能に結合し、1つ以上の伝送線路のうちの1つにおける擾乱または末端のうちの1つにおける電流注入に関連する事象を検出するように構成される。
【0111】
信号処理ユニットは、取得された測定値および取得された状態信号のうちの1つ以上から事象を検出するように構成される。あるいは、事象を、別のモジュール(例えば、事象検出モジュール(図示せず))によって検出してもよく、データ取得ユニットおよび/または信号処理ユニットへと入力として供給することができる。
【0112】
さらに、信号処理ユニットは、線路パラメータならびに事象に関連する電圧および電流測定値を使用し、事象に基づいて各々の等価ソースのソースインピーダンスを推定するように構成され、事象に関連する測定値は、事象の前後の測定値を含む。
【0113】
装置は、信号処理ユニットに通信可能に結合した制御ユニットをさらに備える。ソースインピーダンスの変化に起因して等価モデルを調整する必要があり得る。そのような状況において、制御ユニットは、推定されたソースインピーダンスに基づいて保護機能および制御機能の少なくとも一方を実行するように等価モデルを調整する(例えば、1416によって示される)ように構成される。そのような調整を、通信ユニットを介して関連の装置(例えば、装置がサーバである場合のリレー)へとプッシュすることができる。あるいは、メモリを、調整に従って更新することができる。いくつかの場合、必要に応じて、更新されたソースインピーダンスを、対応する装置における使用のために別の装置に通信することができる。
【0114】
一実施形態において、装置のさまざまなモジュールは、図5の実施形態によるソースインピーダンスの推定に関連するステップを実行するように構成される。別の実施形態において、装置のさまざまなモジュールは、図9の実施形態によるソースインピーダンスの推定に関連するステップを実行するように構成される。これらの実施形態において、信号処理ユニットを、シャントアドミタンスブランチまたは線路シャントアドミタンスに関する補正を実行するように構成することもできる。
【0115】
したがって、本発明は、1つ以上の伝送線路におけるソースインピーダンスの同時推定のためにシステム事象の最中のデジタル変電所データを利用する。バスにおけるシャント注入、バス故障、および線路上の故障などの事象を、推定に利用することができる。さらに、本発明は、ソースインピーダンスの大きさをもたらすだけでなく、複素ソースインピーダンスを提供する。本発明は、ソースインピーダンス推定のための入力として故障位置情報のみを利用し、外部ネットワークトポロジの情報を必要としない。換言すると、これは計算に関して単純であり、実装において非反復的である。
【0116】
本発明は、以下の目的の達成に役立つことができる。第1に、ソースインピーダンスのオンライン推定は、リレーの適応的設定を容易にすることができ、したがってリレーの信頼性およびセキュリティを改善することができる。第2に、変電所レベルの測定値のみに依存する方法は、変電所エンジニアにとってすぐに使用することが可能である。第3に、線路上の故障および末端バスにおけるシャント要素のスイッチングなどの事象を利用することができる方法は、常に可能または許容可能であるとは限らないステージングバス故障と比較して、より実用的に重要である。
【0117】
本発明を、以下の保護機能を改善するために使用することができる。
・距離リレー性能を改善し、適応的な設定機能を可能にする。
【0118】
・シングルエンドの故障位置特定アルゴリズムの精度を改善する。
・システム不均一性係数および距離リレーリーチ計算を計算するために使用することができる。
【0119】
・ソースインピーダンス情報は、再生可能エネルギーの多いシステムを保護するために、異なる位相選択方法(フェーザまたは重畳量または進行波ベース)を適応的に切り替えるために使用することができる。
【0120】
・短絡比(SCR)の計算に役立つことができ、過電流リレー調整に使用されると考えられる。
【0121】
【数18】
【0122】
【数19】
【0123】
さらに、式(E2)は、シングルエンドの故障位置特定アルゴリズムの基本原理も形成し、ここでVM,IM、およびIfMは測定可能な入力であり、「d」は未知であって、未知の故障抵抗Rfと共に推定される。ソースインピーダンス推定値は、項DMを特徴付けるために使用されるそのようなアルゴリズムにとって不可欠である。
【0124】
システム不均一性係数は、3つのインピーダンスZsM,Zline、およびZsNに関連する角度間の変動を表す。これは、ソースインピーダンス推定値の直接的な結果であり、特定の解析の適合において有用であり得る。例えば、システムが均一であり、すなわち3つのインピーダンスがすべてほぼ同じ角度を有する場合、式(E2)の虚部のみを解いて、Rfの推定を必要とせずに「d」を直接求めることができる。これは、このような状況において、(E2)の右辺の第2項の虚部が0に近づく傾向にあるためである。
【0125】
推定されたソースインピーダンスを、IEDバスMにおいて実施される電流ベースまたは電圧ベースの位相選択戦略の間の決定に使用することができる。例えば、IEDバスの背後の弱いソース(すなわち、高いソースインピーダンスZsM)は、典型的には、バスMからの増分(または、故障)電流の寄与を小さくすると考えられる。このような場合、増分電圧ベースの位相選択戦略に切り替えることがより良好である。
【0126】
以下の式に表されるように、推定されたソースインピーダンスを使用して、末端バスMおよびNの各々における短絡MVAを推測することもできる。
【0127】
【数20】
【0128】
このような情報は、故障電流レベルの監視および過電流リレー特性の適応的調整に有用である。
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