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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】直線作動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20240809BHJP
   F16H 57/025 20120101ALI20240809BHJP
【FI】
F16H19/04 G
F16H57/025
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021161615
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023051125
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-04-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】工藤 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小野 圭太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 洋史
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-102754(JP,U)
【文献】実開平03-065049(JP,U)
【文献】特公昭47-46291(JP,B1)
【文献】実開平02-022450(JP,U)
【文献】実開昭55-040205(JP,U)
【文献】登録実用新案第3116593(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/04
F16H 57/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンと、
前記ピニオンと噛み合うラックと、
外形が略直方体状又は略立方体状であり、前記ピニオンを収容するとともに、対向する2つの面に前記ラックが貫通する穴部が設けられたケースと、
前記ケースにおいて互いに平行であり前記ラックとは非平行な3つの辺部の各々から外側に突き出るように設けられた脚部と
を備え
単一の前記脚部が、前記ラックが垂直方向となるように前記直線作動装置が水平面に取り付けられる場合と、前記ラックが水平方向となるように前記直線作動装置が水平面に取り付けられる場合とに共通して用いられ、
前記単一の脚部に、略U字状で第1方向に延びる第1切欠き部と、略U字状で前記第1方向と直交する第2方向に延びる第2切欠き部とが形成され、
前記第1切欠き部と前記第2切欠き部とは、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向の位置が一致している、
直線作動装置。
【請求項2】
前記ケース内に収容され周方向に回転可能な中空軸をさらに備え、
前記ピニオンは前記中空軸の外周面に設けられ、
前記中空軸に対し、周方向に回転可能な入力軸が嵌合する、
請求項に記載の直線作動装置。
【請求項3】
回転電機から回転動力が伝達される減速機をさらに備え、
前記減速機の出力軸に前記ピニオンが設けられている、
請求項に記載の直線作動装置。
【請求項4】
前記ラックが垂直方向となるように前記直線作動装置が水平面に取り付けられる場合に、前記ラックが、前記直線作動装置の前後方向における取付けピッチの中央に位置するともに、前記直線作動装置の左右方向における取付けピッチの中央に位置する、請求項1~のいずれか一項に記載の直線作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直線作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、外部からの動力により回動するピニオンギヤと、適宜長さの操作棒でその長手側面に沿い刻設したラックギヤとを、ケーシング内に噛合して、該ラックギヤにより操作棒が往復動するようにしたラックピニオン機構を用いた伝動装置が記載されている。ケーシングは前後両面が開放された適宜厚みを持つ方形にして、その一辺に取り付け座を設け、かつ、外周面の上下左右各面には、各々縦横両中心線より適宜量偏心した位置に操作棒挿通孔が一対ずつ設けてある。ピニオンギヤは中空軸と一体であり、前記中空軸の軸装着孔に入力軸が嵌挿係合する。これにより、ラックギヤと噛合するピニオンギヤとの支持体がケーシング内で取付座に対して直角方向又は平行する方向に変換でき、中空軸の軸装着孔に減速電動機の軸を嵌挿係合することで、減速電動機と組み合せて使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭63-24283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の伝動装置においては、ラックギヤと噛合するピニオンギヤとの支持体の取付方向を変換する際に、ラックギヤと噛合するピニオンギヤとの支持体をケーシングから一旦取り外し、方向を変えて再度組み付ける必要がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術に鑑み、直線作動装置の使用状況に合わせて同装置のラックの運動方向を容易に変えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る直線作動装置は、ピニオンと、前記ピニオンと噛み合うラックと、外形が略直方体状又は略立方体状であり、前記ピニオンを収容するとともに、対向する2つの面に前記ラックが貫通する穴部が設けられたケースと、前記ケースにおいて互いに平行であり前記ラックとは非平行な3つの辺部の各々から外側に突き出るように設けられた脚部とを備える。単一の前記脚部が、前記ラックが垂直方向となるように前記直線作動装置が水平面に取り付けられる場合と、前記ラックが水平方向となるように前記直線作動装置が水平面に取り付けられる場合とに共通して用いられ、前記単一の脚部に、略U字状で第1方向に延びる第1切欠き部と、略U字状で前記第1方向と直交する第2方向に延びる第2切欠き部とが形成され、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部とは、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向の位置が一致している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、直線作動装置の使用状況に合わせて同装置のラックの運動方向を容易に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】直線作動装置の斜視図である。
図2】フランジが取り外された直線作動装置の正面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4A】第2脚部の斜視図である。
図4B】第2脚部の別の斜視図である。
図5A】直線作動装置の取付け例を示す説明図である。
図5B】直線作動装置の別の取付け例を示す説明図である。
図5C】直線作動装置の右側面図である。
図6】直線作動装置とモータ付き平行軸歯車減速機との組付けの様子を示す斜視図である。
図7】モータ付き平行軸歯車減速機の断面図である。
図8】モータ付き平行軸歯車減速機の正面図である。
図9A】組み付けられた直線作動装置及びモータ付き平行軸歯車減速機の断面図である。
図9B】組み付けられた直線作動装置及びモータ付き平行軸歯車減速機の部分断面図である。
図10A】別の実施形態に係る直線作動装置の取付け例を示す説明図である。
図10B】別の実施形態に係る直線作動装置の取付け例を示す別の説明図である。
図11】直線作動装置の別の取付け例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0010】
図1図3に示すように、直線作動装置(あるいはリニアアクチュエータ)10は、略直方体状のケース1を備えている。ケース1は、正面部C1と背面部C2と左側面部C3と右側面部C4と上面部C5と下面部C6とを有する。直線作動装置10の左から右へと向かう方向(図2において左から右へと向かう方向)をx軸正方向とし、直線作動装置10の前から後ろへと向かう方向(図2において紙面手前から紙面奥へと向かう方向)をy軸正方向とし、直線作動装置10の下から上へと向かう方向(図2において下から上へと向かう方向)をz軸正方向とする。
【0011】
上面部C5及び下面部C6には穴部が設けられ、両穴部を貫通するようにz軸方向に延びるラック2が設けられている。ラック2は、ケース1内において上面部C5の穴部付近に設けられたすべり軸受(ブッシュ)5aと、同じくケース1内において下面部C6の穴部付近に設けられたすべり軸受(ブッシュ)5bとにより、ラック2の長手方向に往復運動できるように支持されている。
【0012】
正面部C1には、外周が丸く、正面部C1の上下方向の寸法又は左右方向の寸法のいずれか小さい方の寸法よりも直径が小さい開口部1dが形成されている。この開口部1dを覆うようにフランジ7が設けられている。また、ケース1内にはy軸方向に延びる中空軸4が設けられている。中空軸4は、ケース1内において背面部C2の付近に設けられた軸受8aと、フランジ7の内側に設けられた軸受8bとにより、周方向に回転可能なように支持されている。ピニオン3は、中空軸4の外周面に一体成型されるか又は中空軸4の外周面に締結されており、ラック2のx軸負方向の面に刻設されたラックギヤ2aと噛合している。
【0013】
中空軸4にはキー溝4aが形成されており、キー溝4aに対応するキーが形成された入力軸(後述)が、フランジ7に形成された穴部を通り抜けて中空軸4と嵌合する。この入力軸が周方向に回転することで、中空軸4及びピニオン3も回転し、ピニオン3と噛合するラック2がその長手方向に沿って直線運動を行う。入力軸の回転方向が変わることで、ラック2は往復運動する。
【0014】
右側面部C4と下面部C6との境界となる辺部には、その全体にわたり、ケース1の正面視における左上角部と右下角部とを結ぶ対角線と平行にケース1の外側へ突き出るように第1脚部6aが形成されている。
また、左側面部C3と下面部C6との境界となる辺部には、その全部にわたり、ケース1の正面視において左下角部と右上角部とを結ぶ対角線と平行にケース1の外側へ突き出るように第2脚部6bが形成されている。
さらに、左側面部C3と上面部C5との境界となる辺部には、その全部にわたり、ケース1の正面視において左上角部と右下角部とを結ぶ対角線と平行にケース1の外側へ突き出るように第3脚部6cが形成されている。
【0015】
第1脚部6aには、z軸方向に延びる2つのボルト孔6a1がy軸方向に間隔を置いて設けられている。また、第3脚部6cには、x軸方向に延びる2つのボルト孔6c1がy軸方向に間隔を置いて設けられている。
【0016】
図4Aに示すように、第2脚部6bには、上面視横U字状の切欠き部6b1が2つ、y軸方向に間隔を置いて設けられている。切欠き部6b1は、z軸方向に突き抜けるように形成されている。
図4Bに示すように、第2脚部6bには、右側面視逆U字状の切欠き部6b2が2つ、y軸方向に間隔を置いて設けられている。切欠き部6b2は、x軸方向に突き抜けるように形成されている。
2つの切欠き部6b1の一方と2つの切欠き部6b2の一方とは、y軸方向位置が一致している。また、2つの切欠き部6b1の他方と、2つの切欠き部6b2の他方とは、y軸方向位置が一致している。
【0017】
図5Aに示すように、ラック2の長手方向が垂直方向となるように、第1脚部6a及び第2脚部6bを水平面Hに接触させて直線作動装置10を取り付けることができる。直線作動装置10は、第1脚部6aのボルト孔6a1と第2脚部6bの切欠き部6b1とに挿入されるボルト(不図示)により水平面Hに固定される。
図5Bに示すように、ラック2の長手方向が水平方向となるように、第2脚部6b及び第3脚部6cを水平面Hに接触させて直線作動装置10を取り付けることができる。直線作動装置10は、第2脚部6bの切欠き部6b2と第3脚部6cのボルト孔6c1とに挿入されるボルト(不図示)により水平面Hに固定される。
【0018】
このように、ケース1内部の機構を組み換えることなく、直線作動装置10の向きを変えるだけで、ラック2の運動方向を変えることができる。
【0019】
図3及び図5Cに示すように、ラック2の中心2bから両ボルト穴6a1の中心までのy軸方向間隔はいずれもPであるとともに、ラック2の中心2bから両ボルト穴6c1の中心までのy軸方向間隔はいずれもPである。言い換えると、ラック2の中心2bは、y軸方向の取付ピッチの中央に位置する。
また、図3及び図5Aに示すように、ラック2の中心2bからボルト穴6a1の中心までのx軸方向間隔と、ラック2の中心2bから切欠き部6b1のボルト締結部の中心までのx軸方向間隔とは、いずれもL1である。言い換えると、ラック2の中心2bは、x軸方向の取付ピッチの中央に位置する。さらに、図5Aに示すように、ラック2の中心2bから第1脚部6aの右端面までのx軸方向間隔と、ラック2の中心2bから第2脚部6bの左端面までのx軸方向間隔とは、いずれもL2である。ここで、第1脚部6aの右端面及び第2脚部6bの左端面はいずれも、yz平面に平行な面である。
図5Bに示すように、中空軸4の中心から第2脚部6bにおける切欠き部6b2のボルト締結部の中心までのz軸方向間隔と、中空軸4の中心から第3脚部6cのボルト孔6c1の中心までのz軸方向間隔とは、いずれもL1である。また、中空軸4の中心から第2脚部6bの下端面までのz軸方向間隔と、中空軸4の中心から第3脚部6cの上端面までのz軸方向間隔とは、いずれもL2である。ここで、第2脚部6bの下端面及び第3脚部6cの上端面はいずれも、xy平面に平行な面である。
加えて、図3及び図5Cに示すように、第1脚部6aの2つのボルト孔6a1のうち、正面部C1側にあるボルト孔6a1の中心と、第2脚部6bの2つの切欠き部6b1のうち、正面部C1側にある切欠き部6b1のボルト締結部の中心とは、y軸方向位置が一致している。また、第1脚部6aの2つのボルト孔6a1のうち、背面部C2側にあるボルト孔6a1の中心と、第2脚部6bの2つの切欠き部6b1のうち、背面部C2側にある切欠き部6b1のボルト締結部の中心とは、y軸方向位置が一致している。
図5Cに示すように、第2脚部6bの2つの切欠き部6b2のうち、正面部C1側にある切欠き部6b2のボルト締結部の中心と、第3脚部6cの2つのボルト孔6c1のうち、正面部C1側にあるボルト孔6c1の中心とは、y軸方向位置が一致している。また、第2脚部6bの2つの切欠き部6b2のうち、背面部C2側にある切欠き部6b2のボルト締結部の中心と、第3脚部6cの2つのボルト孔6c1のうち、背面部C2側にあるボルト孔6c1の中心とは、y軸方向位置が一致している。
このように、ラック2の中心2bは、x軸方向の取付ピッチの中央に位置し、かつy軸方向の取付ピッチの中央に位置する(図3)。また、x軸方向の取付ピッチとz軸方向の取付ピッチとはいずれも等しい(図5A及び図5B)。そのため、直線作動装置10を外部機器へ取り付ける際の、取付穴等の寸法取りが容易になる。
【0020】
続いて図6に、外部駆動機構であるモータ付き平行軸歯車減速機20に直線作動装置10が組み付けられる様子を示す。図7及び図8にはモータ付き平行軸歯車減速機20を示す。
モータ付き平行軸歯車減速機20は、モータ21と平行軸歯車減速機22とが組み合わされたものである。モータ21は、穴部21dが形成されたモータハウジング21cと、穴部21dを通じてモータハウジング21cの内部から外部へと突出したモータ出力軸21aとを備えている。モータ出力軸21aの先端部には、ピニオン歯切り部21bが形成されている。
【0021】
平行軸歯車減速機22は、減速機ハウジング22cを備えている。減速機ハウジング22cには穴部22dが形成されており、この穴部22dを通じてモータ出力軸21aが減速機ハウジング22cの内部に挿入されている。平行軸歯車減速機22はさらに、減速機ハウジング22cの内部に挿入されているモータ出力軸21aのピニオン歯切り部21bと噛み合う入力歯車25と、丸シャフトの減速機出力軸23と、入力歯車25と出力軸23とを接続する数段の歯車(不図示)とを備えている。さらに、減速機ハウジング22cの、直線作動装置10への取付面22cには、減速機出力軸23を支えるベアリングやオイルシールを固定するボス部24が設けられている。ボス部24には穴部22eが形成され、この穴部22eを通じて減速機ハウジング22cの内部から外部へと減速機出力軸23が突出している。
【0022】
モータ21に電力が供給されるとモータ出力軸21aが回転し、平行軸歯車減速機22により減速されて減速機出力軸23が回転する。
【0023】
図6に戻り、直線作動装置10の中空軸4の軸装着孔にはキー溝4aが形成されている(図2も参照)。平行軸歯車減速機22の減速機出力軸23には、平行キー23aが装着されている。減速機出力軸23が中空軸4への入力軸となるように、中空軸4の内周部とキー溝4aに、減速機出力軸23の外周部と平行キー23aとが嵌挿係合する。また、直線作動装置10のケース1の正面部C1と、減速機ハウジング22cの取付面22cとが、接合され、図示しないボルトにより締結される。
【0024】
図9Aは、モータ付き平行軸歯車減速機20を直線作動装置10に取り付けた状態の断面図であり、図9Bは断面斜視図である。直線作動装置10のケース1の正面部C1よりも内側にフランジ7が取り付けられている。フランジ7には、平行軸歯車減速機22のボス部24が収まる凹部7aが設けられている。
【0025】
図8は、モータ付き平行軸歯車減速機20を減速機出力軸23側から見た正面図である。減速機出力軸23は、減速機ハウジング22cの取付面22cの中心からずれた位置にある。つまり、減速機出力軸23は、取付面22cの中心からオフセットしている。また、図2に示しているように、中空軸4は、直線作動装置10のケース1における正面部C1の中心からオフセットしている。減速機出力軸23のオフセット量と中空軸4のオフセット量とを同程度とすることにより、正面部C1の寸法と取付面22cの寸法とを同程度とすることができる。
【0026】
モータ付き平行軸歯車減速機20の減速機出力軸23が回転することにより、嵌挿係合している中空軸4に設けられているピニオン3が回転し、ピニオン3と噛み合っているラックギヤ2aが刻設されているラック2が直線運動する。モータ付き平行軸歯車減速機20の減速機出力軸23の回転方向を切り替えることにより、ラック2は往復動する。
【0027】
減速機ハウジング22cの取付面22cと寸法が同程度の取付面と、減速機出力軸23と径及びオフセット量が同程度の出力軸とを有するものであれば、各種のモータ付き平行軸歯車減速機を直線作動装置10に組み付けることができる。これにより、平行軸歯車減速機の減速比の変更、あるいはモータの特性の変更を行うことができる。例えば、一定速度の回転が求められるのであれば、AC電源を入力しただけで駆動する安価な誘導モータや同期モータを組み付けることができる。低速から高速までの変速回転が求められるのであれば、ブラシレスモータを組み付けることができる。高精度の位置決めが求められるのであれば、ステッピングモータやサーボモータなどを組み付けることができる。このように、直線作動装置10と組み付けるモータ付き平行軸歯車減速機を用途に合わせて選ぶことができる。
【0028】
本実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
・直線作動装置の使用状況に合わせて同装置の向きを変えるだけで、同装置を分解することなく、ラックの運動方向(垂直方向又は水平方向)を容易に変えることができる。ラックの運動方向が垂直方向であっても水平方向であっても取付ピッチが同一寸法のため(図5A及び図5B)、設計を間違えるリスクが少なくなる。製品在庫の削減にも繋がる。
・x軸方向及びy軸方向のいずれにおいても、取付ピッチの中央にラックが位置するため、装置設計が容易になる。
・直線作動装置と組み合わせるモータ付き平行軸歯車減速機におけるモータの種類及び減速比を適宜、選択することができる。
【0029】
また、従来は、ケーシングの上下左右各面に、各々縦横両中心線より適宜量偏心した位置に操作棒挿通孔が一対ずつ設けられていた。そのため、操作棒が挿通されない操作棒挿通孔を通して外部から異物が混入したり、内部の潤滑油が漏れる虞があった。
これに対し、本実施形態によれば、使用状況にかかわらず、ラック2が挿通されないラック挿通用穴部がケース1に存在しないため、異物の混入及び内部からの潤滑油漏れを抑えることができる。
【0030】
[他の実施形態]
図10A及び図10Bに他の実施形態を示す。両図における直線作動装置30は、ラック33を有するラック・ピニオン機構部31と、平行軸歯車減速機32とを備えている。ラック・ピニオン機構部31におけるピニオン(不図示)は、平行軸歯車減速機32の出力軸(不図示)に刻設又は配設されている。図10Aにおいては、ラック33の運動方向が垂直方向となるように直線作動装置30が水平面Hに取り付けられている。図10Bにおいては、ラック33の運動方向が水平方向となるように直線作動装置30が水平面Hに取り付けられている。
【0031】
先に述べた、中空軸4にピニオン3が設けられる実施形態と比較すると、図10A及び図10Bに示した実施形態によれば、平行軸歯車減速機32は固定のものとなるので、減速比等を容易に変更することは難しくなる。しかし、平行軸歯車減速機32の出力軸に直接、ピニオンが刻設又は配設されているため、ピニオンの径を小さくすることができる。これにより、直動するラック33の推力を大きくすることができる。
【0032】
また、モータ付き平行軸歯車減速機のケースから、正反対の2つの方向に減速機出力軸を突出させ、両突出部の一方を1台目の直線作動装置10の中空軸4と係合させ、両突出部の他方を2台目の直線作動装置10の中空軸4と係合させることができる。このように、2台の直線作動装置10を単一のモータ付き平行軸歯車減速機により駆動することができる。さらに、2台の直線作動装置10の少なくとも一方における背面部C2に穴部を設けて背面部側から入力軸を中空軸4へ挿入できるようにして、背面部側にモータ付き平行軸歯車減速機を配置することができる。このとき、背面部とモータ付き平行軸歯車減速機とが直に接している必要はない。
【0033】
図11に示すように、モータ付き減速機20aから正反対の方向に突出した2つの出力軸の各々と直線作動装置10とを、カップリング40を経由して接続することもできる。
【0034】
直線作動装置10のケース1は、略直方体状に限られず、略立方体状であってもよい。
【0035】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
ピニオンと、
前記ピニオンと噛み合うラックと、
外形が略直方体状又は略立方体状であり、前記ピニオンを収容するとともに、対向する2つの面に前記ラックが貫通する穴部が設けられたケースと、
前記ケースにおいて互いに平行であり前記ラックとは非平行な3つの辺部の各々から外側に突き出るように設けられた脚部と
を備える直線作動装置。
[付記2]
単一の前記脚部が、前記ラックが垂直方向となるように前記直線作動装置が水平面に取り付けられる場合と、前記ラックが水平方向となるように前記直線作動装置が水平面に取り付けられる場合とに共通して用いられる、付記1に記載の直線作動装置。
[付記3]
前記ケース内に収容され周方向に回転可能な中空軸をさらに備え、
前記ピニオンは前記中空軸の外周面に設けられ、
前記中空軸に対し、周方向に回転可能な入力軸が嵌合する、
付記1又は2に記載の直線作動装置。
[付記4]
回転電機から回転動力が伝達される減速機をさらに備え、
前記減速機の出力軸に前記ピニオンが設けられている、
付記1又は2に記載の直線作動装置。
[付記5]
前記ラックが垂直方向となるように前記直線作動装置が水平面に取り付けられる場合に、前記ラックが、前記直線作動装置の前後方向における取付けピッチの中央に位置するともに、前記直線作動装置の左右方向における取付けピッチの中央に位置する、付記1~4のいずれか一項に記載の直線作動装置。
【0036】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 直線作動装置
1 ケース
1d 開口部


C1 正面部
C2 背面部
C3 左側面部
C4 右側面部
C5 上面部
C6 下面部

2 ラック
2a ラックギヤ
3 ピニオン
4 中空軸
4a キー溝
5a、5b すべり軸受
6a、6b、6c 脚部
6b1、6b2 切欠き部
7 フランジ
8a、8b 軸受

20 モータ付き平行軸歯車減速機
21 モータ
22 平行軸歯車減速機
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11