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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ナットホルダー
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/14 20060101AFI20240809BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20240809BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20240809BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
F16L3/14 B
F16B2/08 H
F16B37/04 B
F16B41/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021215330
(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公開番号】P2023098520
(43)【公開日】2023-07-10
【審査請求日】2023-07-23
(73)【特許権者】
【識別番号】508333228
【氏名又は名称】AWJ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152793(JP,A)
【文献】特開平09-264315(JP,A)
【文献】特開平09-042258(JP,A)
【文献】特開2000-130643(JP,A)
【文献】特開2010ー048289(JP,A)
【文献】特開2005ー003014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00 - 3/26
F16B 2/08
F16B 37/04
F16B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管が挿通されるように環状に形成された配管挿通部と該配管挿通部の対向端部から互いに対向するようにかつ放射方向に向けてそれぞれ延設された一対の板状連結部とから構成するとともに、ボルトが挿通されるボルト挿通孔を前記一対の板状連結部にそれぞれ形成してなる配管支持具に用いられるナットホルダーであって、前記一対の板状連結部のうち、いずれか一方の板状連結部を保持側連結部として該保持側連結部に差し込まれるようになっているナットホルダーにおいて、
前記ボルトに螺合されるナットが嵌め込まれるとともに前記ボルトの先端が貫通する貫通孔が形成されてなるナット嵌合部を突設したナット保持部と、
前記ナット保持部の周縁のうち、互いに反対側となる各縁部に前記保持側連結部の各側方縁部を抱き込むように前記ナット嵌合部の非突設側に折り返し状に延設された一対の側方ガイド部と、
前記ナット保持部の周縁のうち、前記一対の側方ガイド部が延設された各縁部をつなぐ直交縁部に前記保持側連結部の先端が当接する差込ガイド部とを備え
前記差込ガイド部は、前記保持側連結部の先端に当接されることで、該保持側連結部のボルト挿通孔に対し、前記ナット嵌合部を配管径方向に沿って位置決めできるようになっていることを特徴とするナットホルダー。
【請求項2】
前記ナット嵌合部を、横断面が六角形状の周壁と該周壁の先端側を閉じるように設けられ前記貫通孔が設けられてなる嵌合底とで構成した請求項1記載のナットホルダー。
【請求項3】
前記ナット嵌合部を差込方向に沿って複数設けた請求項1又は請求項2記載のナットホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管を支持する際に用いられるナットホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備工事や衛生設備工事においては、用途や目的に応じてさまざまな配管が用いられており、材質で分類すると概ね金属管と樹脂管に大別される。
【0003】
例えば、給水管には、ポリエチレンや硬質ポリ塩化ビニルで内面を被覆したライニング鋼管や、硬質ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管などの樹脂管が用いられており、給湯管には、ステンレス鋼管や耐熱性硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管が用いられている。
【0004】
これらの配管は、横走り管であれば、吊りバンドで天井や上階スラブから吊持し、立ち上がり管であれば、立てバンドで壁に振れ止めする形で建物内に設置される。
【0005】
吊りバンドや立てバンドといった配管支持バンドは、帯状の鋼材を面外方向に環状に湾曲加工することでその内側に配管が挿通できるように構成された配管挿通部と、該配管挿通部の各端部から互いに対向するように放射方向にそれぞれ延びる一対の板状連結部とで構成してあって、吊りバンドの場合には、かかる一対の板状連結部を、天井面や上階床スラブ下面に固定された吊りボルトの下端にタンバックルと呼ばれる接続具を介して連結することにより、配管挿通部に挿通された配管を天井や上階床スラブから吊持できるようになっており、立てバンドの場合には、上述した一対の板状連結部を、壁面から延びるブラケットの先端に連結することにより、配管挿通部に挿通された配管を壁に振れ止めできるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-48289号公報
【文献】特開2005-3014号公報
【文献】特開2000-46245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配管支持バンドの構成要素である一対の板状連結部をタンバックルやブラケットの先端に連結するにあたっては、該一対の板状連結部に設けられたボルト挿通孔をタンバックルやブラケットに形成されたボルト挿通孔に位置決めした上、これらのボルト挿通孔にボルトを挿通してナットを螺合することになるが、ナットをボルトにねじ込んでいく際にボルトが共回りしない工夫が適宜施されている(特許文献1,2,3)。
【0008】
一方、配管支持バンドを用いた配管支持作業、特に天井等からの吊持作業は脚立等を用いた高所作業となることが多く、作業安全性の観点からは、両手での作業をできるだけ減らすことが望ましい。
【0009】
しかしながら、上述した特許文献記載の発明はいずれも、ボルトが材軸方向に固定されていないため、他方の手でボルト頭部を押さえておかないと、ナットを螺合する際にボルトが抜け出してしまう。
【0010】
加えて、ナットは、ボルトよりも小さくて摘みにくいため、作業中に落としやすく、高所作業である場合にはナットの紛失を招くおそれもある。
【0011】
このように、従来知られている発明は、ナットの螺合に伴うボルトの共回りを防止することはできても、ボルトがボルト挿通孔から抜け出さないように該ボルトの頭部を他方の手で押さえておかねばならないばかりか、小さくて摘みにくいナットを落としてしまうという懸念もあり、作業安全性や作業効率という点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、配管を固定する際に作業安全性や作業効率を高めることが可能なナットホルダーを提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るナットホルダーは請求項1に記載したように、配管が挿通されるように環状に形成された配管挿通部と該配管挿通部の対向端部から互いに対向するようにかつ放射方向に向けてそれぞれ延設された一対の板状連結部とから構成するとともに、ボルトが挿通されるボルト挿通孔を前記一対の板状連結部にそれぞれ形成してなる配管支持具に用いられるナットホルダーであって、前記一対の板状連結部のうち、いずれか一方の板状連結部を保持側連結部として該保持側連結部に差し込まれるようになっているナットホルダーにおいて、
前記ボルトに螺合されるナットが嵌め込まれるとともに前記ボルトの先端が貫通する貫通孔が形成されてなるナット嵌合部を突設したナット保持部と、
前記ナット保持部の周縁のうち、互いに反対側となる各縁部に前記保持側連結部の各側方縁部を抱き込むように前記ナット嵌合部の非突設側に折り返し状に延設された一対の側方ガイド部と、
前記ナット保持部の周縁のうち、前記一対の側方ガイド部が延設された各縁部をつなぐ直交縁部に前記保持側連結部の先端が当接する差込ガイド部とを備え
前記差込ガイド部は、前記保持側連結部の先端に当接されることで、該保持側連結部のボルト挿通孔に対し、前記ナット嵌合部を配管径方向に沿って位置決めできるようになっているものである。
【0014】
また、本発明に係るナットホルダーは、前記ナット嵌合部を、横断面が六角形状の周壁と該周壁の先端側を閉じるように設けられ前記貫通孔が設けられてなる嵌合底とで構成したものである。
【0015】
また、本発明に係るナットホルダーは、前記ナット嵌合部を差込方向に沿って複数設けたものである。
【0016】
本発明に係るナットホルダーにおいては、配管支持具の構成要素である一対の板状連結部のうち、いずれか一方の板状連結部を保持側連結部として該保持側連結部に差し込まれるようになっていて、上記一対の板状連結部に形成されたボルト挿通孔に挿通されるボルトに螺合されるナットが嵌め込まれるとともにボルトの先端が貫通する貫通孔が形成されてなるナット嵌合部が突設されたナット保持部と、ナット嵌合部の非突設側に折り返し状に延設された一対の側方ガイド部と、保持側連結部の先端が当接する差込ガイド部とを備えており、配管固定作業を行うにあたっては、配管支持具の保持側連結部に取り付ける前に、ナット嵌合部に予めナットを押し込む。
【0017】
ここで、ナットは、ナット嵌合部に嵌合される、すなわち脱落が防止される形でナット保持部に保持されるため、押込み操作によってナットを嵌め込んだ後は、該ナットが自然に抜け落ちるおそれはない。
【0018】
次に、本発明に係るナットホルダーを配管支持具の保持側連結部に取り付ける。
【0019】
保持側連結部は、一対の板状連結部のうち、いずれか都合のよい方を適宜選択すればよい。
【0020】
取付けにあたっては、一対の側方ガイド部が保持側連結部の各側方縁部を抱き込むように折り返し状に設けてあるので、該保持側連結部の各側方縁部に沿って側方ガイド部で誘導あるいは案内される形で、本発明に係るナットホルダーを保持側連結部に差し込めばよい。
【0021】
ここで、一対の側方ガイド部は、差込操作における誘導あるいは案内機能を有するだけでなく、保持側連結部のボルト挿通孔に対し、ナット嵌合部を配管材軸方向に沿って適切に位置決めする機能も有する。
【0022】
差込操作は、保持側連結部の先端が差込ガイド部に当接するまで行えばよいが、該差込ガイド部がストッパーの役割を果たすので、操作の完了タイミングが明確であるとともに、差込ガイド部は、保持側連結部のボルト挿通孔に対し、ナット嵌合部を配管径方向に沿って適切に位置決めする機能を発揮する。
【0023】
次に、配管支持具が吊りバンドである場合には、その配管挿通部に配管を挿通するとともに一対の板状連結部の間にタンバックルに設けられた延設部を挟み込み、その状態で一対の板状連結部に形成されたボルト挿通孔をタンバックルの延設部に形成されたボルト挿通孔に位置決めした上、それらのボルト挿通孔にボルトを挿通して該ボルトの先端をナット嵌合部に嵌め込まれたナットに螺合するとともに、かかる作業と相前後してタンバックルを天井や上階スラブに取り付けられた吊りボルトの下端に連結して配管を固定する。
【0024】
ここで、ナットは、ナット嵌合部に嵌合される、すなわち回動や押出しが制限される形でナット保持部に保持されるため、ボルトを回してもナットが共回りすることはないし、押し出されるおそれもない。
【0025】
なお、ナット嵌合部には、ボルトの先端が貫通する貫通孔が形成してあるため、ボルトの回動操作が途中で阻害されるおそれはない。
【0026】
一方、配管支持具が立てバンドの場合には、ブラケットを壁面に固定するとともに立てバンドの配管挿通部に配管を挿通した上、一対の板状連結部の間にブラケットの先端を挟み込んで一対の板状連結部に形成されたボルト挿通孔をブラケットの先端に形成されたボルト挿通孔に位置決めした上、それらのボルト挿通孔にボルトを挿通して該ボルトの先端をナット嵌合部に嵌め込まれたナットに螺合することで、配管の振れ止めを完了する。
【0027】
ここで、吊りバンドの場合と同様、ナットは、ナット嵌合部に嵌合される、すなわち回動や押出しが制限される形でナット保持部に保持されるため、ボルトを回してもナットが共回りすることはないし、押し出されるおそれもない。
【0028】
なお、吊りバンドの場合と同様、ナット嵌合部には、ボルトの先端が貫通する貫通孔が形成してあるため、ボルトの回動操作が途中で阻害されるおそれはない。
【0029】
ナット嵌合部は、ボルトに螺合されるナットが嵌め込まれるとともにボルトの先端が貫通する貫通孔が形成されている限り、具体的な構成は任意であるが、横断面が六角形状の周壁と該周壁の先端側を閉じるように設けられ上記貫通孔が設けられてなる嵌合底とで構成するのが典型例となる。
【0030】
また、ナット嵌合部は、配管支持具が吊りバンドの場合、タンバックルとの関係上、単一構成が典型例となるが、立てバンドの場合、ブラケットの先端に設けられたボルト貫通孔の個数に適合するよう、差込方向に沿って複数設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係るナットホルダー1の配置図。
図2】ナットホルダー1が適用される配管支持具30の図であり、(a)はその全体斜視図、(b)は樹脂材21を省略して金属部分のみを描いた全体斜視図。
図3】ナットホルダー1の全体斜視図。
図4】ナットホルダー1の図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)はA-A線に沿う横断面図、(d)はB-B線に沿う横断面図。
図5】ナットホルダー1の使用手順を示した斜視図。
図6】変形例に係るナットホルダー61の配置図。
図7】変形例に係るナットホルダー61の全体斜視図。
図8】変形例に係るナットホルダーの図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)はC-C線に沿う横断面図、(d)はD-D線に沿う横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るナットホルダーの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0033】
本実施形態に係るナットホルダー1は、図1の配置図に示すように配管支持具30に適用されるものであって、該配管支持具の構成要素である一対の板状連結部5a,5bのうち、いずれか一方の板状連結部、本実施形態では図1で手前側に位置する板状連結部5aを保持側連結部として該保持側連結部に差し込まれるようになっている。
【0034】
ここで、配管支持具30は、いわゆる吊りバンドと称されるものであって、天井又は上階床スラブに上端が取り付けられた吊りボルト(図示せず)及びその下端に連結されたタンバックル31を介して配管6を吊持するようになっており、図2に示すように、帯板状の鋼材を面外方向にかつ環状に湾曲形成した環状部4及び該環状部が埋設されるように環状部4に被覆された樹脂材21からなる配管挿通部3と、環状部4の対向端部から互いに対向するようにかつ放射方向に向けてそれぞれ延設された上述の板状連結部5a,5bとで構成してあり、該板状連結部に形成されたボルト挿通孔7,7を図1のタンバックル31の延設部32,32に形成されたボルト挿通孔33,33に位置決めした上、それらのボルト挿通孔にボルト34を挿通して該ボルトの先端にナット35を螺合することで、配管挿通部3の内側空間に挿通された配管6を天井や上階床スラブの下方にて横走り管として吊持できるようになっている。
【0035】
なお、環状部4及び板状連結部5a,5bは、金属のみからなる従来公知の吊りバンドで構成することが可能である。また、環状部4においては、いわゆるスプリングバックを防止するための補剛リブが外周側で突条となって顕れるため、それに対応する形で、樹脂材21についても外周側に凸となるよう被覆形成してある。
【0036】
配管支持具30は、環状部4を埋設物(インサート)とし、合成樹脂又はエラストマーを射出材料としたインサート成形によって製作することが可能であり、合成樹脂やエラストマーは、配管6を流れる流体の温度や支持荷重等に応じて適宜その材種を選定すればよい。
【0037】
本実施形態に係るナットホルダー1は図3及び図4でわかるように、ナット保持部41、一対の側方ガイド部42,42及び差込ガイド部43とで構成してある。
【0038】
ここで、ナット保持部41は、ボルト34に螺合されるナット35が嵌め込まれるナット嵌合部45を矩形状をなす板状本体46に突設してある。
【0039】
ナット嵌合部45は、横断面が六角形状の周壁と該周壁の先端側を閉じるように設けられた嵌合底47とで構成してあるとともに、該嵌合底にはボルト34の先端が貫通する貫通孔44を形成してある。
【0040】
側方ガイド部42,42は、ナット保持部41の構成要素である板状本体46の周縁のうち、互いに反対側となる各縁部に保持側連結部5aの各側方縁部36を抱き込むようにナット嵌合部45の非突設側に折り返し状に延設してある。
【0041】
差込ガイド部43は、ナット保持部41の構成要素である板状本体46の周縁のうち、側方ガイド部42,42が延設された各縁部をつなぐ直交縁部に保持側連結部5aの先端が当接するように構成してある。
【0042】
本実施形態に係るナットホルダー1においては、配管支持具30の構成要素である板状連結部5a,5bのうち、一方の板状連結部5aを保持側連結部とし該保持側連結部に差し込まれるようになっていて、板状連結部5a,5bに形成されたボルト挿通孔7,7に挿通されるボルト34に螺合されるナット35が嵌め込まれるとともにボルト34の先端が貫通する貫通孔44が形成されてなるナット嵌合部45が突設されたナット保持部41と、ナット嵌合部45の非突設側に折り返し状に延設された側方ガイド部42,42と、保持側連結部5aの先端が当接する差込ガイド部43とを備えており、配管固定作業を行うにあたっては、ナットホルダー1を配管支持具30の保持側連結部5aに取り付ける前に、ナット嵌合部45に予めナット35を押し込む(図5(a))。
【0043】
ここで、ナット35は、ナット嵌合部45に嵌合される、すなわち脱落が防止される形でナット保持部41に保持されるため、押込み操作によってナット35を嵌め込んだ後は、該ナットが自然に抜け落ちるおそれはない。
【0044】
次に、図5(b)に示すように、ナットホルダー1を配管支持具30の保持側連結部5aに取り付ける。
【0045】
取付けにあたっては、ナットホルダー1の各側方ガイド部42を、保持側連結部5aの各側方縁部36を抱き込むようにそれぞれ折り返し状に設けてあるので、該保持側連結部の各側方縁部36に沿って側方ガイド部42で誘導あるいは案内される形で、ナットホルダー1を保持側連結部5aに差し込めばよい。
【0046】
ここで、側方ガイド部42,42は、差込操作における誘導あるいは案内機能を有するだけでなく、保持側連結部5aのボルト挿通孔7に対し、ナット嵌合部45、ひいてはそれに嵌め込まれたナット35を配管材軸方向に沿って適切に位置決めする機能も有する。
【0047】
差込操作は、保持側連結部5aの先端37が差込ガイド部43に当接するまで行えばよいが、該差込ガイド部がストッパーの役割を果たすので、操作の完了タイミングが明確であるとともに、差込ガイド部43は、保持側連結部5aのボルト挿通孔7に対し、ナット嵌合部45、ひいてはそれに嵌め込まれたナット35を配管径方向に沿って適切に位置決めする機能を発揮する。
【0048】
次に、配管支持具30の配管挿通部3に配管6を挿通するとともに、図5(c)に示すように、板状連結部5a,5bの間にタンバックル31に設けられた延設部32,32を挟み込み、その状態で板状連結部5a,5bに形成されたボルト挿通孔7,7をタンバックル31の延設部32,32に形成されたボルト挿通孔33,33に位置決めした上、それらのボルト挿通孔にボルト34を挿通して該ボルトの先端をナット嵌合部45に嵌め込まれたナット35に螺合するとともに、かかる作業と相前後してタンバックル31を天井や上階スラブに取り付けられた吊りボルト(図示せず)の下端に連結して配管6を固定する。
【0049】
ここで、ナット35は、ナット嵌合部45に嵌合される、すなわち回動が制限される形でナット保持部41に保持されるため、ボルト34を回してもナット5が共回りすることはないし、ナット嵌合部45の嵌合底47によって押し出されるおそれもない。
【0050】
なお、ナット嵌合部45には、ボルト34の先端が貫通する貫通孔44が形成してあるため、ボルト34の回動操作が途中で妨げられるおそれはない。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係るナットホルダー1によれば、ナット35がナット嵌合部45に嵌合されることで脱落が防止されるため、押込み操作によってナット35を嵌め込んだ後は、該ナットが自然に抜け落ちるおそれはない。
【0052】
また、本実施形態に係るナットホルダー1によれば、ナット35がナット嵌合部45に嵌合されることで回動が制限されるため、ボルト34の締め込み操作に伴うナット5の共回りを防止することができるとともに、ナット嵌合部45の嵌合底47によってナット35が押し出されるおそれもない。
【0053】
また、本実施形態に係るナットホルダー1によれば、ナットホルダー1の各側方ガイド部42が、保持側連結部5aの各側方縁部36を抱き込むようにそれぞれ折り返し状に設けられているため、該側方ガイド部が差込操作における誘導あるいは案内機能を発揮し、かくしてナットホルダー1を簡単かつ確実に保持側連結部5aに取り付けることが可能となる。
【0054】
加えて、側方ガイド部42,42が、保持側連結部5aのボルト挿通孔7に対し、ナット嵌合部45、ひいてはそれに嵌め込まれたナット35を配管材軸方向に沿って適切に位置決めする機能を発揮するとともに、差込ガイド部43が、保持側連結部5aのボルト挿通孔7に対し、ナット嵌合部45、ひいてはそれに嵌め込まれたナット35を配管径方向に沿って適切に位置決めする機能を発揮するため、ボルト34を確実にナット35に螺合することが可能となる。
【0055】
本実施形態では、本発明に係るナットホルダーが適用される配管支持具を、金属のみからなる従来公知の吊りバンドの環状部4に樹脂材21が被覆されてなるものを配管支持具30としたが、上記配管支持具は、配管が挿通されるように環状に形成された配管挿通部と該配管挿通部の対向端部から互いに対向するようにかつ放射方向に向けてそれぞれ延設された一対の板状連結部とから構成するとともに、ボルトが挿通されるボルト挿通孔を一対の板状連結部にそれぞれ形成してなるものである限り、その構成は任意であって、樹脂材21が被覆されていないもの、すなわち金属のみからなる従来公知の吊りバンドに適用してもかまわないし、配管挿通部の開閉操作を、図2(b)に示したように開口からなる断面欠損部を設けることで行うことに代えて、ヒンジを設けることで行うようにした吊りバンドに適用することも可能である。
【0056】
さらには、吊りバンドに限定されるものでもなく、立てバンドを配管支持具として該立てバンドに本発明のナットホルダーを適用してもかまわない。
【0057】
図6及び図7に示したナットホルダー61は、立てバンドである配管支持具60に本発明のナットホルダーを適用した例を示したものであって、該配管支持具の構成要素である一対の板状連結部5a´,5b´のうち、いずれか一方の板状連結部、本実施形態では図6で手前側に位置する板状連結部5a´を保持側連結部として該保持側連結部に差し込まれるようになっている。
【0058】
ここで、配管支持具60は、壁面から延びるブラケット71の先端に連結することで、配管6を壁に固定できるようになっており、帯板状の鋼材を面外方向にかつ環状に湾曲形成した環状部4´及び該環状部が埋設されるように環状部4´に被覆された樹脂材21からなる配管挿通部3´と、環状部4´の対向端部から互いに対向するようにかつ放射方向に向けてそれぞれ延設された上述の板状連結部5a´,5b´とで構成してあり、該板状連結部に形成された二組のボルト挿通孔7,7をブラケット71の先端に形成された二組のボルト挿通孔73,73に位置決めした上、それら二組のボルト挿通孔にボルト34,34を挿通して該ボルトの先端にナット35をそれぞれ螺合することで、配管挿通部3´の内側空間に挿通された配管6を壁に振れ止めできるようになっている。
【0059】
なお、環状部4´及び板状連結部5a´,5b´は、金属のみからなる従来公知の立てバンドで構成することが可能である。また、環状部4´においては、いわゆるスプリングバックを防止するための補剛リブが外周側で突条となって顕れるため、それに対応する形で、樹脂材21についても外周側に凸となるよう被覆形成してある。
【0060】
配管支持具60は、環状部4´を埋設物(インサート)とし、合成樹脂又はエラストマーを射出材料としたインサート成形によって製作することが可能であり、合成樹脂やエラストマーは、配管6を流れる流体の温度や支持荷重等に応じて適宜その材種を選定すればよい。
【0061】
本変形例に係るナットホルダー61も上述したナットホルダー1と同様、ナット保持部41´、一対の側方ガイド部42´,42´及び差込ガイド部43´とで構成してあるが、本変形例のナット保持部41´は、ボルト34に螺合されるナット35が嵌め込まれるナット嵌合部45を、矩形状をなす板状本体46´に差込方向に沿って2つ突設してあるとともに、該ナット嵌合部の嵌合底47にボルト34の先端が貫通する貫通孔44をそれぞれ形成してある。
【0062】
側方ガイド部42´,42´は、ナット保持部41´の構成要素である板状本体46´の周縁のうち、互いに反対側となる各縁部に保持側連結部5a´の各側方縁部36´を抱き込むようにナット嵌合部45の非突設側に折り返し状に延設してある。
【0063】
差込ガイド部43´は、ナット保持部41´の構成要素である板状本体46´の周縁のうち、側方ガイド部42´,42´が延設された各縁部をつなぐ直交縁部に保持側連結部5a´の先端が当接するように構成してある。
【0064】
以下、配管支持具60の板状連結部5a´,5b´に形成されたボルト挿通孔7,7が二組であることに対応して、ナット嵌合部45を差込方向に沿って2つ突設した点を除き、本変形例に係るナットホルダー61は、上述したナットホルダー1と同様であるので、説明を省略する。
【0065】
また、本実施形態では、本発明のナット嵌合部を、横断面が六角形状の周壁と該周壁の先端側を閉じるように設けられた嵌合底47とで構成するとともに、該嵌合底にボルト34の先端が貫通する貫通孔44を形成して構成したが、ナット嵌合部は、ナットが嵌め込まれるとともにボルトの先端が貫通する貫通孔が形成されていれば足りるものであり、横断面が六角形状の周壁に代えて、図8に示すように、外周面が円筒状で内周面が六角形状をなす周壁を用いて構成してもかまわない。
【0066】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、側方ガイド部42,42と板状本体46との間に板状連結部5aが差し込まれるスペースを確実に形成するなどの製作上の事情により、図8に示すように、側方ガイド部42,42と同程度の形状を有する開口81,81を板状本体46に設けるようにしてもかまわない。
【符号の説明】
【0067】
1 ナットホルダー
3 配管挿通部
5a 板状連結部(保持側連結部)
5b 板状連結部
6 配管
7 ボルト挿通孔
30 配管支持具(吊りバンド)
34 ボルト
35 ナット
41 ナット保持部
42,42 側方ガイド部
43 差込ガイド部
44 貫通孔
45 ナット嵌合部
47 嵌合底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8